他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第12話 「魔導師登録」

サリカさんとリニスはかなり意気投合したらしく、昨夜は随分と遅くまで話し込んでいた様子だった。何故それが判ったかというと、2人そろって居間のソファで寝ていたからだ。

 

「サリカさん、リニスさん、そんなところで寝ていると風邪をひきますわよ」

 

「あれ、ミントちゃん? 寝たんじゃなかったの? 」

 

「何を言っているんですか。もう朝ですわよ」

 

時計は6時を指している。

 

「申し送りは8時半からだから、あと1時間寝させて」

 

「それならご自分の部屋に戻って下さいませ」

 

「今から布団に入ったら7時に起きれる自信がないの」

 

「仕方ありませんわね。今日だけですわよ」

 

サリカさんの部屋から肌掛けを持ってきて、ソファに寝ているサリカさんに掛けた。リニスは起き上がって伸びをしていた。

 

「おはようございます。すみません、サリカと話をしていたらつい盛り上がってしまって」

 

「サリカさんも楽しかったのでしょうね。もし二度寝されるのでしたら、肌掛けをお持ちしますわよ」

 

「大丈夫です。ありがとうございます。今日は10時には本局に行かないといけませんから、シャトルの時間を考慮してもそろそろ起きておいた方が良いでしょう。プレシア達も起こしてきますね」

 

リニスはそう言って居間を出て行った。こちらはその間に簡単な朝食の用意をしておく。食パンをトーストして適当な大きさに切り、ベーコン、レタス、トマトを挟んでマヨネーズを適量かければB.L.T.サンドの出来上がり。

 

「ミント、おはよう。何か手伝うことある? 」

 

「おはようございます、フェイトさん。ではこちらのお皿を食卓に運んで頂けますか? 」

 

「うん、判った」

 

まずフェイトが起きてきたので、配膳をお願いする。今日はまだ髪を整えていないらしく、彼女の長い金髪は腰まで下ろされた状態だった。

 

「おはよう、ミントちゃん。随分と早いのね」

 

「おはようございます、プレシアさん。昨夜は早くに休ませて頂きましたし、朝食を用意しようと思ったのですわ。まぁ、それほど大したものでもありませんが」

 

温めたミルクで作ったカフェオレをプレシアさんと、一緒に戻ってきたリニスに手渡すとお礼を言われた。フェイトとサリカさんの分は自分のものと一緒にトレイに乗せて食卓に運ぶ。

 

「10時に筆記試験がスタートだから、30分前には本局に到着しておきたいわよね。空港からシャトルで本局まで30分程度だったかしら? 」

 

「そうですね。ここから空港までは快速レールで40分程度ですが、乗継時間を考慮したら8時には駅に着いていたいところです」

 

「では7時45分には家を出ないといけませんわね」

 

サリカさんの勤務先であるクラナガン総合病院までは家から徒歩20分程。家を出る時間は一緒で問題ないだろう。

 

「ふぁ…おはようございます」

 

「あらサリカさん。すみません、うるさかったですか? まだ6時45分ですわよ」

 

「ううん、大丈夫。良い匂いがしてきたからお腹空いちゃって」

 

折角なので、この後サリカさんも含めた全員で美味しく朝食を頂いた。

 

 

 

=====

 

「じゃぁ、プレシアさん、頑張ってきて下さいね」

 

「ありがとう。これから暫くの間、フェイトのことよろしくお願いするわね。時間が取れる時は私も出来るだけ顔を出すようにするわ」

 

「はい。フェイトちゃんとミントちゃんも行ってらっしゃい。帰りはちょっと遅くなるかもだから、ご飯は適当に済ませておいて」

 

「了解ですわ。では行ってまいりますわね」

 

病院に出勤するサリカさんとは大通りで別れ、俺たちはクラナガンの駅から空港に向かった。管理局員になると、地上本部と本局を結ぶ転送ゲートを使うこともできるようになるそうだが、今日は正規のルートを使うことになっている。

 

「フェイト、ちょっといらっしゃい」

 

快速レールの座席に座ると、プレシアさんがフェイトを呼ぶ。隣に座ったフェイトの髪を、プレシアさんはどこからともなく取り出したブラシで梳かし始めた。

 

「これから暫くはこうしてあげることも出来なくなるけれど、身嗜みは常にきちんとするようにしなさい」

 

「はい、母さん」

 

最後にリボンで髪を束ねると、そこには俺がよく知っているツインテールのフェイト・テスタロッサがいた。

 

「良く似合っていますわよ」

 

「ありがとう。でもまだ一人では上手く結べなくて。今練習中なんだ」

 

フェイトは少し頬を赤らめながら、そう言った。

 

 

 

空港に到着すると、今度はシャトルで本局に向かう。初めてクラナガンに来た時と同じ、壁面が360度モニターになる、空飛ぶ椅子タイプのシャトルだった。

 

「以前も乗りましたが、どうも落ち着きませんわね」

 

別に高所恐怖症というわけではないのだが、見慣れない景色にふとそう呟いた。

 

「あら、ミントちゃんは空を飛んだことはないの? 」

 

「ええ、実はデバイスを手に入れたのがつい先日のことで、それまではバリアジャケットも使ったことがありませんでしたから」

 

「別に適性がないわけじゃないのよね? 」

 

「未だ飛行魔法は構築しておりませんが、浮遊魔法で試した限りでは、適性はある様子でしたわ」

 

「そう。飛行魔法の術式ならあるけれど、よかったら使う? 」

 

「よろしいのですか? 助かりますわ」

 

「データを転送するわね。デバイスを貸してもらえるかしら」

 

トリックマスターを渡すと、プレシアさんは自身のデバイスを取り出してデータを転送した。

 

「それがプレシアさんのデバイスですか? 」

 

「ええ。在り来たりのストレージデバイスだけれど、許容魔力はSSまで上げてあるわ。はい、終わったわよ」

 

「ありがとうございます。トリックマスター、概要を教えて頂けます? 」

 

≪D rank magic "Maneuverable Soar" has been installed. It is well balanced, and good magic.≫【Dランク魔法『マニューバラブル・ソアー』がインストールされました。安定性の高い、良い魔法です】

 

「あ、高機動飛翔だね。その魔法、私も使ってるよ」

 

フェイトも会話に加わってきた。

 

「構築したのはかなり昔なんだけれど、特に手を加える必要もなかったわ。ランクも低めに設定されているから、扱いやすい筈よ」

 

「改めてありがとうございます。魔導師登録が済んだら公共の魔法練習場に行って練習しますわ」

 

「それよりも、今日本局で使うことになると思いますよ」

 

リニスが微笑みながらそう言ってきた。何でも魔導師登録の際に空戦適性の有無確認があって、飛行魔法の行使も検査項目に含まれるのだとか。

 

「初めてでも大丈夫でしょうか? 」

 

「その為に魔法ランク自体を低く設定してあるのよ。大丈夫、上手くいくわ」

 

魔法ランクというのはそのまま難易度に相当する。ランクが高ければ難易度も高く、使うことが出来る魔導師も限られてくる。逆にランクが低ければ難易度も低く、万人が同じように使うことが出来るのだ。

 

「ついでに少しトリックマスターに登録されていた魔法も確認させて貰ったのだけれど」

 

ふとプレシアさんが言ってきた。

 

「攻撃魔法はAAランクとAAAランク、それにSランクのものが1つずつあるのに、防御魔法がアクティブ・プロテクションのみというのもバランスがあまり良くないわね。もしよかったら、暫くリニスに講師でもさせましょうか? フェイトにも教えているし、折角だから一緒に」

 

「ありがとうございます。それは是非お願いしたいですわね」

 

「ミントが持っている魔法は強力なものや珍しいものが多くを占めていますが、バリエーションが少なすぎです。少し手数を増やすところから始めた方が良いでしょうね」

 

リニスがトリックマスターに登録された魔法のリストを見ながらそう言ってきた。

 

「で、一つ気になるものがあるのですが。何ですか? この『ハイパー・エリア・サーチ』って」

 

「そうね、それは私も知りたいわ。広域探索魔法の一種だとは思うけれど、それにしては消費魔力が大きすぎるし、おまけに魔法ランクがAAって」

 

「あら、『ワイド・エリア・サーチ』とはまた違う魔法ですの? 」

 

「『ワイド・エリア・サーチ』の魔法ランクは精々C程度だよ、ミント」

 

リニスやプレシアさんだけでなく、フェイトからもツッコミを貰ってしまった。正直俺自身も未だ使ったことが無い、プレインストールされていただけの魔法なので「良く判りません」としか言えず、何の説明も出来なかった。

 

「本局に着いたら、データベースで確認してもらうといいわ。リンディかエイミィあたりが好きそうなネタだし」

 

「ありがとうございます。そうさせて頂きますわ」

 

そんな話をしているうちに、シャトルは本局に到着した。

 

 

 

=====

 

「やあ。先日エルセアに行った時以来だな」

 

「こんにちは、クロノさん。よくお会いしますが、もしかして執務官って暇なのですか? 」

 

「会っていきなり失礼なことを言うなぁ君は」

 

「冗談ですわよ。今日はどうされたのです? 」

 

「かつて大魔導師とまで呼ばれたプレシア・テスタロッサ女史が嘱託とは言え管理局の試験を受けるんだ。多少忙しくても仕事の合間を見て見学にも来るさ」

 

本局の試験会場に到着した俺達を待っていたのは、かなりの数の見学希望者だった。恐らくほとんど全員がアースラスタッフなのだろう。

 

「やっぱり暇なのではありませんか? 午前中は筆記のみですわよ」

 

「そう言わないで頂戴、ミントさん。同じ次元航行艦に配属されることになっているから、みんな気になっているのよ。それに本局に係留中は次元航行艦スタッフって、あまりやることが無いのよね」

 

「かあ、艦長、嘘を吐かないで下さい。僕もついさっき地上本部との打ち合わせを終えて、今日の夕方にはまた出航じゃないですか。艦長だって、朝一で報告書の提出をしているでしょう」

 

クロノが呆れたようにそう言うと、リンディさんはぺろっと舌を出した。

 

「まぁ役職を持っていれば忙しくなるのは当然よね。でも今日はマシな方よ。みんなも今日をオフに出来るように、昨日まで凄く頑張ったのよ」

 

「そんなに期待されるようなものじゃないと思うけれど」

 

プレシアさんも苦笑しながらそう言う。恐らく半分以上は照れだと思うが。

 

「そろそろ筆記試験開始ね。じゃぁ、頑張って」

 

リンディさんにそう言われ、フェイトやリニス、俺にも激励されつつ、プレシアさんは試験会場に入っていった。

 

「さて、次は貴女達の魔導師登録ね。検査会場はこっちよ」

 

リンディさんに先導されて本局の通路を歩いていくと、何故かクロノや他のスタッフもぞろぞろとついてくる。

 

「あの、みなさんはどちらへ? 」

 

「君達が検査を受ける会場だ。筆記試験は見学対象じゃないからな」

 

「暇つぶしの見世物にされた気分ですわ」

 

ある意味、それは正解なのだろう。リンディさんあたりは「将来有望な魔導師の卵だから見学しておく価値あり」と力説しているが、どう考えたって今日の本命はプレシアさんの実技試験だ。深くため息を吐くと、フェイトが軽く肩をつついてきた。

 

「あまり気にしない方が良いと思う。気にしたらきっと負けなんだよ」

 

 

 

検査会場というくらいだから広い講堂のような場所をイメージしていたのだが、俺達が通されたのは、ちょっとした医務室のような部屋だった。

 

「はい、男性陣は暫くの間ここから先は立ち入り禁止~クロノ君もだよ」

 

「エイミィ、ご苦労さま。ごめんなさいね、準備任せちゃって」

 

「いえいえ、あたしも結構楽しみにしてたんで!」

 

「ミントさん、フェイトさん、紹介しておくわね。今日貴女達の魔導師登録を担当してくれるエイミィ・リミエッタ執務官補よ」

 

医務室のような部屋にいたのは、アースラNo.3の権力者と言われるエイミィさんだった。クロノ達男性陣を部屋の外に留めたまま閉じた自動ドアをロックした彼女は、満面の笑顔を俺達に向けた。

 

「初めまして。ミント・ブラマンシュちゃんだね。今日の検査を担当することになったエイミィ・リミエッタだよ。よろしくね~ で、フェイトちゃんは久しぶり!」

 

「は、初めまして。よろしくお願いしますわ。っていうか、エイミィさんってアースラのスタッフだったんじゃないですか? 」

 

思わず疑問が口をついて出てしまった。しまった、と思うが後の祭り。慌ててフォローを入れる。

 

「あ、以前クロノさんにそんなお話を聞いたような気がして。間違っていたら申し訳ありません」

 

「ううん、合ってるよ。でも偶にこうして検査の手伝いとかもしているし、今回は艦長たってのお願いだからね」

 

今回は何とか誤魔化せたようだったが、下手なことは言わないように注意しないといけない。改めて気を引き締めた。

 

「さてと、じゃぁ2人とも服を脱いでそっちのベッドに横になってね」

 

なるほど、男性陣が締め出される訳だ。服を脱いで下着だけになり、ベッドに向かおうとすると突然リニスが「あら? 」と声を上げた。

 

「どうしたの? リニス」

 

「ああ、すみませんフェイト。大したことではないので気にしないで下さい」

 

その直後に、リニスから念話が入った。

 

<ミント、その背中の傷は? 随分最近のもののようですが>

 

<あら目立ちます? 先日ちょっと失敗して、殺傷設定の魔法を受けてしまったのですわ>

 

<そうでしたか。すみません>

 

<構いませんわよ。もう完治しておりますし、痛みもありませんから>

 

そのままベッドに仰向けになると、エイミィさんが体に次々と電極のようなものを張り付けてきた。

 

「冷たくて、少しくすぐったいですわね」

 

「ちょっとだけ我慢してね。すぐ終わるから」

 

隣のベッドで横になっているフェイトにも電極のようなものが張り付けられて、その後エイミィさんが機械の操作を始めた。

 

「うん、やっぱり2人とも凄いね。まずフェイトちゃんだけど、魔力ランクはAAA。平均値は137万で最大発揮時はその3倍以上。まだ6歳だし、これからもっと伸びるね。それから雷の変換資質あり、と」

 

「その電極みたいなもので、そこまで判るのですか? 」

 

「そうだよ。映像データから推測値を出すことも出来るけど、やっぱりこっちの方が正確だしね。で、ミントちゃんなんだけれど、魔力ランクはS-だね。平均値142万、最大発揮時は同じく3倍以上。レアスキルは特に無いみたい」

 

「ありがとうございます」

 

「ミントちゃんは、そっか。生まれ月が9月だからまだ5歳なんだね」

 

「ええ。数えでは6歳ですわ」

 

電極のようなものを外してもらい、ベッドから体を起こしつつお礼を言う。

 

「2人共、もう服を着ても大丈夫だよ。次は魔法の適性を見るから、デバイスを用意してね」

 

俺とフェイトが服を着たのを確認した後で、エイミィさんがドアのロックを解除した。

 

「クロノ君、お待たせ」

 

「あぁ、漸く出番か」

 

通路に締め出されていた男性陣が部屋に入ってきた。クロノは胸ポケットからカード状のデバイスを取り出すと指先で弄ぶようにくるくると回した。

 

「じゃぁこれから各種適性を確認しよう。ついて来てくれ」

 

クロノが向かった先は部屋の奥の壁だったが、そこで何やらコンソールのようなものを操作をすると壁だった場所は一瞬で窓のようになり、その先にかなり広いスペースがあるのが判った。

 

「ここは? 」

 

「訓練施設だ。魔法の試射や模擬戦をやるときに使うことが多いな。他にも本局だけで同じような設備は50以上ある」

 

クロノの説明にフェイトと顔を見合わせた。

 

「凄いですわね」

 

「うん。でも面白そうだ。行ってみよう、ミント」

 

フェイトがまず訓練施設に入ってしまったので、慌ててそれを追う。中に入るとクロノが手にしたカードを指で弾いた。一瞬の後、カード状だったデバイスは錫杖形態に変わり、バリアジャケットが展開される。

 

「君達もセットアップしてくれ。まずは空戦適性を見るから、バリアジャケットを展開したら飛行魔法を行使してみてくれるか? 」

 

「了解ですわ。トリックマスター、セットアップ」

 

≪Standby, ready. Setup.≫【了解。セットアップ】

 

「行くよ、バルディッシュ」

 

≪Get set.≫【準備完了】

 

2人揃ってバリアジャケットを展開する。俺が纏うのはトランスバール皇国軍の制服を模したもので、フェイトは原作通りの黒いバリアジャケットだった。バルディッシュはハルバードのような形状になり、フェイトの手中に収まっている。

 

「さて、ぶっつけ本番になってしまいましたが、参りますわよ。『マニューバラブル・ソアー』」

 

先程プレシアさんから貰ったばかりの高機動飛翔魔法を行使した。浮遊魔法と違って急に高度を取るため一瞬バランスを崩しかけたが、すぐに体勢を立て直せた。この辺りはさすがDランク魔法と言ったところか。隣にはフェイトが既に空中で静止状態を保っている。

 

一瞬遅れて、高揚感に包まれた。

 

(わたくしは今、空を飛んでいるのですわ)

 

思わずその場でくるりと宙返りをする。

 

「はぁ~、気持ちいいものですわね」

 

思わずそう呟くと、フェイトが「判るよ」と言って微笑んだ。

 

 

 

その後、クロノに頼み込んで暫く空中散歩を楽しませてもらうことにした。空中での加速・減速や姿勢制御もイメージ通りに出来た。ただでさえ高かったテンションが更に高くなる。

 

「そろそろ良いか? 簡単な攻撃魔法と防御魔法の発動をチェックするから、一度降りてくれ」

 

「折角楽しんでおりましたのに。残念ですわ」

 

「仕方ないだろう、時間だって無限にある訳じゃないんだぞ。飛行魔法を楽しみたいのなら、魔導師登録を済ませた後で公共の練習場にでも行ってくれ」

 

折角テンションが上がってきたところだったのだが、少しばかり疲れたような表情でクロノが言うので、渋々地上に降りた。

 

「これからターゲットを出現させる。魔力で構成されたものだから非殺傷設定でも当たれば消滅する。それからターゲットは偶に攻撃も仕掛けてくるから、それをプロテクションないしはシールドなどの魔法で防いでみてくれ。まずはフェイトから」

 

「うん。判った」

 

フェイトの周囲にスフィアが浮かび上がる。直射弾の発射台なのだろう。

 

「フォトン・ランサー、フルオート。ファイア」

 

スフィアから次々と直射弾を発射してターゲットを破壊していくフェイト。矢張り高機動戦闘が得意のようで、ターゲットからの攻撃は防御するよりも回避する方がやりやすい様子だった。とんとんっと軽くステップを踏むように攻撃を躱していく。

 

「フェイト。一応防御魔法の発動も見たいから、回避するだけじゃなくて防御もしてみてくれるか? 」

 

「大丈夫。バルディッシュ」

 

≪Yes, Sir. "Defenser"≫【了解。『ディフェンサー』】

 

バルディッシュが生成する魔力盾がターゲットからの攻撃を弾いた。

 

「追撃、行くよ。『ブリッツ・アクション』」

 

フェイトの姿が一瞬消える。

 

≪Scythe form. "Scythe Slash".≫【サイズフォーム。『サイズ・スラッシュ』】

 

バルディッシュの声が聞こえたのはターゲットの後ろからだった。そのまま鎌のように変形したバルディッシュを一閃すると最後のターゲットが消失し、フェイトの検査は終了した。

 

「フェイトさん、お疲れさま。なかなかかっこ良かったですわよ」

 

「ありがとう。ミントも頑張って」

 

軽くお互いの手を打ち合わせ、立ち位置を入れ替える。

 

「さあ、次はミント、君だ」

 

「判りましたわ。お行きなさい、フライヤー達」

 

とりあえず3基のフライヤーを生成すると、ターゲットの周りに配置させ、一斉放火を浴びせた。時折飛んでくる直射弾は基本的に全てアクティブ・プロテクションで防ぐ。

 

≪Let us surprise them greatly.≫【みなさんを驚かせてやりましょう】

 

いくつかのターゲットを片付け、攻撃を防御した後でトリックマスターが提案してきた。

 

「何をしますの? 」

 

≪Please use "Flier Dance" and...≫【『フライヤー・ダンス』を使って…】

 

「却下ですわ。魔導師登録の検査程度で全力を出す必要もないでしょう」

 

≪What a pity.≫【残念です】

 

「派手なのは構いませんが、わたくしの必殺技ですわよ? そうそう安売りは出来ませんわ」

 

トリックマスターと雑談をしながらもフライヤーは次々とターゲットを攻撃し、プロテクションは攻撃を防ぐ。マルチタスクというのは本当に便利だ。

 

≪How about using "Pulsation Buster"?≫【『パルセーション・バスター』を使用するのは? 】

 

「何か意味がありますの? 」

 

≪It will be rather showy.≫【見た目が派手です】

 

「トリックマスター、ハウス」

 

≪Arf!≫【わん】

 

最後のターゲットを3基のフライヤーの同時攻撃で沈める。全力ではないがフライヤー・ダンスと同じようなものだ。トリックマスターにはこれでよいでしょう、と声を掛けた。

 

「お疲れさま、ミント」

 

「ありがとうございます、フェイトさん」

 

「2人共お疲れ。検査は一通り終了だ。室内に戻ってくれ」

 

クロノに促されて医務室のような部屋に戻ると、何故かアースラスタッフに拍手で迎えられた。

 

「いや~2人共凄いね!その年でそこまでの実力なんて、お姉さんびっくりだよ」

 

エイミィさんがおどけたような口調でそう言いながらカードのようなものを手渡してきた。お礼を言いつつ受け取ると、それは魔導師登録証だった。魔導師ランクの欄には空戦C+の記載がある。

 

「こんなに早く発行されるとは思っていませんでしたわ。C+ってどのくらいのレベルなのでしょう? 」

 

「C+って言うのはね、10歳以下の民間魔導師が登録できる最高ランクなんだよ」

 

エイミィさんが少し申し訳なさそうにそう言った。

 

「正直、君達の実力ならBランクにも手が届くんじゃないかと思うが、残念ながら現状の規則ではこれ以上のランクに上がることは出来ない。魔法学院で初等科3年になっても、公式に残る記録は余程のことが無い限り今と同じだろうな」

 

「余程のことってどんなことですの? 」

 

「何らかの事故でリンカーコアが欠損してランクが落ちた場合だ。まぁ10歳未満でも管理局に入局すれば、特例としてランク上限は解除されるが、いずれにしても魔法学院初等科の基本座学は修めてもらう必要があるな」

 

「そもそも初等科入学前からC+ランクとか、なかなか無いことなのよ。フェイトさんもミントさんも、本当に将来入局するつもりはない? 」

 

「あ、私は母さんと一緒に働きたいから、学院を卒業したらたぶん、嘱託試験を受けると思います」

 

フェイトの発言に、明らかにリンディさんの目がハート形になったのを見た。隣のリニスも呆れたような笑いを浮かべている。

 

「その時は是非声を掛けてね。楽しみにしているわ」

 

とりあえずフェイトが嘱託希望を表明してくれたおかげで、こちらに火の粉が飛んでくることはなさそうだった。

 

「あ、そういえば。ちょっと良く判らない魔法がありまして、プレシアさんに聞いたらリンディさんにデータベースで調べてもらうように言われたのですが」

 

「え、何何? 珍しい魔法なの? 」

 

リンディさんより、むしろエイミィさんが食い付いてきた。とりあえずトリックマスターのストレージを開いて、魔法のリストから『ハイパー・エリア・サーチ』を選択する。

 

「これですわ」

 

「あれ? これエリア・サーチ? 」

 

「エイミィ、よく見て下さい。魔法ランクや消費魔力がおかしなことになっているでしょう? 」

 

リニスが横からエイミィさんに説明をしてくれた。その後エイミィさんがキーボードを叩き始める。

 

「あ、データベースに該当1件ありだよ。えっと、『宙域艦隊戦用超広域探索魔法』? 」

 

「宙域艦隊戦って、どんな状況を想定しているのかしら」

 

リンディさんも呆れたような表情で呟いている。

 

「過去に艦隊戦が行われたような歴史なんてありますの? 」

 

「そうだな、確か何度か別世界の艦隊と戦闘になった歴史はあった筈だが、それも数十年単位で昔のことだ。最近は全く起きていないな」

 

「つまり大昔の遺品で、今は要らない魔法っていうことですわね」

 

「まぁ、良いんじゃない? 持っておけば。もしかしたら何かの役に立つかもしれないよ」

 

もう少し使える魔法なら嬉しかったのだが、残念ながら今のところ使い道はなさそうだった。

 

「そのうち改良できないか試してみますわ」

 

「そうだね。『ワイド・エリア・サーチ』よりも広域をカバーできるような、対人・対物探索魔法が出来上がったら是非教えてね」

 

エイミィさんが笑いながらそう言った。

 

「さて、そろそろ筆記試験も終わる時間だ。プレシア女史を迎えたら昼食を食べて、午後の嘱託試験見学に行こう」

 

クロノがそう言うとフェイトが顔を綻ばせる。時計を見ると11時半になるところだった。

 

「じゃぁ、みんな移動しましょう。ご飯は本局の食堂でいいわね。結構美味しいわよ」

 

リンディさんがポンと手を叩き、みんなが医務室を出ていく。最後の一言は俺達に向けられた言葉だろう。フェイトと並んで本局の通路を歩きながら、発行されたばかりの魔導師登録証を眺めた。基本的なデータは全て内蔵チップに登録されているため、カード表面に書いてある情報はそれほど多くはない。

 

「少し遠回りをしてしまいましたが、漸く第一歩ですわ」

 

登録証をポーチに仕舞うと、俺はそう呟いた。

 




ついついベッドに行けずにソファやおこたでうたた寝をしてしまうのは、私自身がモデルになっています。。
気持ちを判ってくれる人はきっといると信じていますが、これって風邪引きやすいんですよね。。

つい先日の風邪も、たぶん原因はこれです。。
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