「随分と登録されている防御魔法の種類が増えたな」
エルセアのメルローズ・デバイス工房で、アルフレッドさんがトリックマスターの調整をしながらそう言った。
「最近は連日リニスさんに扱かれていますから。フェイトさんとは模擬戦をするだけではなく、連携戦の練習もしておりますわよ」
10月になり、基本的には一年を通して温暖な気候のミッドチルダでも少し肌寒い日が増えてきた頃、俺はフェイト、リニス、アルフと一緒にサリカさんの実家であるメルローズ家にお邪魔していた。夜勤明けのまま直行し、明日一日お休みになっているサリカさんも勿論一緒だ。思った通り、リニス、フェイト、アルフもメルローズ家には歓迎された。
一通り紹介を終えた後サリカさんはクリスティーナさんとお喋りを始め、アルフレッドさんは俺、フェイト、リニス、アルフを伴って工房に向かい、トリックマスターの調整を始めたのだ。
「攻撃魔法の方はそんなには増えていないか…」
「『パルセーション・バスター』と『フライヤー』があれば大抵の局面には対応出来ますわよ」
「まぁ、魔法学院に入学しても最初の2年はまともに魔法を使わせてすら貰えんだろうし、入学前から無理して攻撃魔法の数を増やす必要も無いんだがな。ところでこいつのAIの方はどんな感じだ? 」
「どうもおかしな性癖に目覚めているように思えて仕方ありませんわね」
「そうか。まぁ、こいつは以前からそんな感じだったがな」
≪Yes, meister Melrose. I am very happy to be a partner of a little girl.≫【はい。幼女の相棒になれて最高です】
トリックマスターと2人して「HAHAHA!」みたいな感じで笑いあった後、アルフレッドさんは俺と一緒に作業の様子を見ているリニスとフェイトに声をかけた。
「あんた達が嬢ちゃんと一緒に練習してくれているおかげで、かなり面白いデータが取れて助かっているよ。ありがとう」
「いえ…ところでこのトリックマスターのAIなのですが、あまりにも成長速度が早いように思うのですが」
「それも随分と危ない方向に、ですわね」
「…まぁ確かにそうなんですが、それはこの際置いておくとして、一体どんな育成方法をしたらこんなにもAIが成長するのか、興味を持ったものですから」
「複数のAIを同時起動して、特殊環境下に置いておくんだ。そうすると通常よりもはやい速度でAIは成長する」
「その『特殊環境』というのは…? 」
「すまんが、それは企業秘密ってやつだな」
「まぁ当然といえば当然ですね。ところでトリックマスターのストレージ格納域についてですが…」
「おぅ、それはな…」
リニスは然程ガッカリしたような様子も見せず、アルフレッドさんとデバイス談義を始めてしまった。アルフレッドさんもそうした話が出来る相手が最近いなかった様子で、楽しそうにしている。フェイトとアルフは専門用語が飛び交う話の内容についていけていないようで居心地が悪そうだった。
「フェイトさん、アルフさん、そろそろ夕食の買い出しに参りましょう。わたくしもデバイスマイスター同士のお話は良く判りませんし」
「う、うん、そうだね。行こうか、アルフ」
「ごはんー? 」
「ご飯はまだですわ。材料を買いに行きますわよ」
クリスティーナさんとサリカさんもお互い近況報告の真っ最中だったため、とりあえず買い物に出かけることを伝えると、俺はフェイト、アルフと一緒にメルローズ家を出た。
エルセアはどちらかといえば閑静な住宅街が広がっている印象が強く、実際メルローズ・デバイス工房も住宅エリアの一角にあるのだが、スーパーのような商業施設が立ち並ぶエリアも当然存在する。
「お魚が美味しい季節ですわね」
「この時期ならキノコやお芋も美味しいよ」
「おにくもー」
食料品店を見て回りながらフェイト達を眺めて、ふと自分達が周りからどのように見えているのだろうかと考える。フェイトは見た目通り5、6歳といったところで、落ち着いた雰囲気からもお姉ちゃん的な立ち位置だろう。地球ならともかく、ミッドチルダであれば買い物くらいなら普通にこなせる年齢だ。
俺も年齢はフェイトと同じだが、体格で言うと若干小柄である。まぁこれはブラマンシュの宿命のようなものだが、周りからはきっと次女のように認識されていることだろう。
そして末妹的立ち位置のアルフ。見た目は2、3歳の幼女といったところだろうか。クラナガンでは3人で歩いていると仲の良い姉妹のように見られたことも何度かある。ところでリニスはこの3人と比較しても明らかに大人であり、普段一緒に出歩くことも少ないため、姉妹の中には数えられていないようだ。
「ミント、なんかぼーっとしてるー」
「あら、ごめんなさいアルフさん。少し考え事をしていましたわ」
ちなみにアルフは先日漸く人間形態に変身できるようになり、フェイトとの本契約も無事完了した。契約内容は「自身が望み、満足できる生き方を探して、それを実践しなさい」と言うものだった。つまり、好きに生きなさい、と言うことだ。これに対してアルフはずっとフェイトと一緒に生き、フェイトを守り続けることを宣誓した。
昔は使い魔といえば、必要な時に目的を限定して契約し、用が済んだら解呪するという方法が一般的だったらしいが、今のミッドチルダではあまりそうした形で使い魔を作成する人は少ない。というより、使い魔自体を作成する術者が非常に少ないのだ。
これは心を持った使い魔を、術者の都合で使い捨てにすることが世論的に受け入れ難かったということもあるが、それ以上に使い魔の呪法が使い勝手の悪いものであることも理由として挙げられるだろう。人間形態への変身は個体差もあるが、一般的に1か月程かかる。アルフのように素体が子供なら人間形態も子供からスタートするわけで、いくら生前の記憶が残っているとは言っても、そこから先の育成に時間がかかりすぎるのだ。おまけに常時術者が魔力を提供していないといけない。ここまでするメリットが無ければ、普通の魔導師は使い魔を持とうなどとは考えないものだ。
「それで、結局メニューはどうしようか」
「おにくがいいー」
やたらと肉を所望するアルフに苦笑しつつ、良いメニューが無いか考える。今回はクリスティーナさんへのお土産も兼ねて、お味噌と醤油も持ってきているので味付けには困らないが、アルフはまだ葱類など刺激の強いものが食べられないので、食材は慎重に選ぶ必要があった。
辺りを見回すと、秋茄子が棚に並べられている。この時期の茄子はとても美味しく、豚肉やピーマンと一緒に味噌炒めにすると絶品なのだが、ピーマンにはアルカロイドという成分が含まれており、大量摂取するとイヌ科の動物にはあまりよろしくないらしい。
「茄子はそんなに問題はありませんでしたわね」
味噌は少し前に実際アルフに少量を舐めてもらい、特に問題がないことを確認済みだ。なら一品目は味噌炒めで良いだろう。アルフにはピーマンを少なめに配分すれば良い。
「ひゃっ!おばけー!? 」
突然アルフが叫んだ。驚いてそちらを見ると、そこに置いてあったのはジャック・オー・ランタンだった。
「大丈夫だよ、アルフ。あれはただの作り物だから」
「ジャック・オー・ランタン…ミッドチルダにあるとは思いませんでしたわ」
「ブラマンシュにもあるの? 」
思わず呟いてしまったが、フェイトの問いに慌てて弁明する。
「いいえ、以前本で読んだだけですわ。実際に見るのは初めてです」
「そうなんだ。この時期になると、よく見かけるよ。今くらいが収穫時期なのかな? 」
「かぼちゃの収穫時期は夏ですわね。ただこのくらいの時期まで貯蔵すると甘みが増して美味しくなるのですわ」
フェイトと話をしていたら、無性にかぼちゃが食べたくなってしまった。
「今日は茄子と豚肉の味噌炒めに、かぼちゃの煮物にしましょう。ご飯とお味噌汁も出しますわよ」
「おにく? 」
「ええ。お肉もちゃんと入ってますわ」
「やったー」
嬉しそうにはしゃぐアルフをみてフェイトと少しだけ笑いあった後、俺たちは晩御飯の食材を購入してメルローズ家に帰宅した。
夕食の席で、買い出し中に見かけたジャック・オー・ランタンの話が出た。
「あれはどこかの世界のお祭りで使われるものだった筈だな。確か死んだ後で天国へも地獄へも行けなかった男の霊が憑いているとか、そんな感じのエピソードがあったと思うが」
「アルトセイムではかぼちゃの代わりにかぶを使うこともありましたよ。魔除けとして飾ることが多かったようです」
リニスとアルフレッドさんは随分と打ち解けた様子で雑学知識を披露しあっていた。
「おばけかとおもったんだよ!」
「確かにあれは子供にはちょっと怖く見えるかもしれんな。ミント嬢ちゃんは大丈夫だったか? 」
「わたくしはあの程度では驚きませんわよ」
「おや? 最初にわしの作品を見て、可愛らしい悲鳴を上げたのは誰だったかな? 」
思わず口に含んだ味噌炒めが気管に入りそうになり、思いっきり咽てしまった。
「ミント、大丈夫? 」
「ええ、すみません、フェイトさん…」
その後、今度はサリカさんに俺が気絶してしまったことまで暴露されてしまった。デバイス作成にかかった金額の大きさに驚いたためであることは必死に説明したのだが、リニスとフェイトにも生暖かい目で見つめられてしまい、俺が茹蛸のように真っ赤になったことは言うまでもない。
「うぅぅ、穴があったら入りたいですわ」
「まぁまぁ。ところでミントちゃん、これが例のお味噌? とっても美味しいわ」
「お口に合ったようで何よりです。わたくしの味方はクリスティーナさんだけですわ…」
食事を終えた後、アルフレッドさんは再度工房に戻ってトリックマスターの調整を継続し、リニスもその手伝いを兼ねて工房を間借りし、バルディッシュの調整をしている。
クリスティーナさんが居間でアルフの相手をしてくれている間に、フェイトと2人で洗い物をする。ちなみにアルフはクリスティーナさんに抱かれてウトウトし始めた様子だ。ちなみに夜勤明けのままエルセアに直行したサリカさんは、夕食が終わると早々に寝室に引き上げてしまった。
「サリカさん、大丈夫かな」
洗い物をしながら、フェイトが話しかけてきた。
「強行軍でしたからね。ただ快速レールの中でも仮眠は取っていましたし、問題はないでしょう」
時折、工房の方からアルフレッドさんとリニスの笑い声が聞こえてくる。あの2人は随分とウマが合ったようだ。
「そう言えばバルディッシュは先月調整したばかりだけど、またやるんだね」
「最近フェイトさんとわたくしで連携することも多いですから、トリックマスターを調整する際にデータを共有させるのだと思いますわよ」
フェイトの戦闘スタイルは中距離からの射撃魔法と近距離での白兵戦闘がメインで、中距離~遠距離の支援攻撃に特化した俺とは割と相性が良いのだ。ゲームなどで言えば、軽戦士と魔法使いのペアといったところか。
「出来れば盾役の重戦士や回復役の僧侶もパーティーには欲しいところですが」
「ミント、それ何のこと? 」
「ちょっとわたくし達の立ち位置をファンタジーのパーティーに置き換えてみたのですわ」
ミッドチルダでもよく見かけるファンタジー物のゲームや小説などは子供向けにもアレンジされており、フェイトにも多少馴染みがある様子だった。
「盾役の重戦士か。ベルカの騎士とかなら判るけれど、ミッド式魔法の使い手だと難しいんじゃないかな」
「ミッド式は派手な射撃戦がメインですからね。そう言えばクリスティーナさんは元ベルカの騎士らしいですわよ」
「そうなんだ。折角だから、ちょっとお話し聞いてみたいな」
「では洗い物を早めに終わらせて、クリスティーナさんの武勇伝をお伺いしましょうか」
そう言えば俺もクリスティーナさんの現役時代については詳しい話は知らなかった。騎士と呼ばれていた人なのだから、きっと色々ためになる話が聞けるに違いない。洗い物のペースも自然と上がった。
結果から言えば、クリスティーナさんに話を聞いたのは大正解だった。実は彼女が現役時代に使っていたアームド・デバイスは『ハルバード』だったのだ。これは『槍斧』とも呼ばれる、その名の示す通り槍と斧が組み合わさったような形状のポールウェポン(棒状武器)なのだが、同じポールウェポンの一種であるバルディッシュとは戦い方の面でも共通点が多く、特に白兵戦での戦い方において、フェイトの良い講師役になってくれた。
「ありがとうございます。クリスティーナさんの戦い方はとても参考になります」
「そう? 役に立てて良かったわ。ポールウェポンは長さがある分色々な戦い方が出来るけれど、重量もあるから使いこなすには日々のトレーニングは怠っちゃダメよ。あと食事は確り食べて、体力をつけることね」
「はい」
原作でのフェイトは割と食が細いイメージだったが、今のフェイトは食事面ではあまり心配していない。むしろ結構食べる方だと思っている。特にカレーとか。
(もしかしたらアルトセイムの食事が身体に合わなかったのかも知れませんわね)
以前聞いた、あまり美味しくないという食事のことを思い出し、少しだけ苦笑した。
「もし良かったら、明日少し稽古をつけてあげましょうか? ミッド式とはちょっと違うけれど、型を憶えておくだけでも棒術としてフェイトちゃんだけじゃなくミントちゃんも使えると思うし」
「是非、お願いします」
「わたくしもお願いしますわ。折角の錫杖形態も射撃ばかりでは勿体ないですし」
ゲームなどで後衛の魔法使いタイプが白兵戦をする状況というのは、つまり前線が崩壊してジリ貧状態になっている時なのだが、パーティープレイだけでなく単独行動を取ることも珍しくない魔導師としては覚えておいて損はない技術だろう。
その後、現役時代のクリスティーナさんのエピソードをいくつか聞いてからお風呂に入り、寝ることにした。あまり意識していなかったのだが、クリスティーナさんは聖王教会ではなく時空管理局の所属だったそうだ。同じく時空管理局でデバイスマイスターをしていたアルフレッドさんと知り合ったのだとか。尤も後半は半分以上が惚気話しだったので、適当に相槌を打っていただけだったのだが。
=====
翌朝、目を醒ますと、枕元にアンティークドールが置いてあった。
「おはようございます、トリックマスター。調子は如何です? 」
≪Good morning. I am fine. It is quite invigorating.≫【おはようございます。とても爽快です】
恐らく俺が寝ているうちにアルフレッドさんかリニスが調整を終わらせて持ってきてくれたのだろう。ふと隣のベッドを見ると、まだ夢の中にいるフェイトの枕元には待機モードのバルディッシュが置いてあった。フェイトを起こさないように念話でバルディッシュにも挨拶すると、俺はベッドを抜け出した。
≪I would like to enjoy the sleeping face of a little girl bit more.≫【もうちょっと幼女の寝顔を堪能したいのですが】
デバイスのくせに寝言を言っているトリックマスターを掴んで部屋を出る。お手洗いに向かう途中で人の気配を感じ、居間に行ってみるとサリカさんとリニスがいた。
「おはようございます、サリカさん、リニスさん。随分早いですわね」
≪Morning, Sarica and Meister Linith.≫【おはようございます、お二方】
「おはよう、ミントちゃん。トリックマスターも。私は昨夜早かったからね~朝風呂に入らせてもらおうかと思って」
「私は半分徹夜みたいなものでしたから、今から一眠りしてきますよ」
「あら、大丈夫ですか? 朝ご飯は如何されます? 」
「後にします。今日はサリカもお休みで1日のんびりできそうですし」
立ち上がって大きな欠伸をすると、リニスは「お休みなさい」と言って居間を出た。バルディッシュの調整に時間がかかったというよりは、きっと同業者と仕事をするのが楽しくてついつい遅くなってしまった感じなのだろう。この調子だとアルフレッドさんも朝食には起きてこない可能性が高い。
「じゃぁ、私はお風呂に入ってくるね。朝ご飯はその後で、一緒に作ろうか」
「了解ですわ。ごゆっくり」
リニスとサリカさんを見送り、お手洗いを済ませた後、俺は工房の裏手にある魔法の試射スペースに行ってみた。
「トリックマスター、セットアップ」
≪Standby, ready. Barrier jacket deployed.≫【スタンバイ完了。バリアジャケット構築】
一瞬光を纏った後、バリアジャケットが身体を包む。
「フライヤー3基展開しつつ、高機動飛翔」
≪Sure. Though I will not gain so much altitude.≫【了解。高度は然程取れませんが】
「構いませんわ。ちょっとした確認ですし」
低空での浮遊状態を維持したまま数枚のシールドとプロテクションを展開した。
「えっと、受け流すのがシールド、受け止めるのがプロテクション、でしたわね」
以前リニスに教えてもらった内容を再確認する。
≪That is correct. "Round Shield" is a kind of shield magic, and "Active Protection" is a kind of barrier magic. Also, please do not forget "Field" type.≫【その通りです。『ラウンド・シールド』はシールド系、『プロテクション』はバリア系の魔法ですね。他にもフィールド系をお忘れなく】
「身に纏うタイプでしたわね。覚えていますわ」
以前、アクティブ・プロテクション以外の防御魔法を持っていなかったことを指摘され、リニスには防御面を重点的に鍛えてもらっていたのだ。今では3種類の防御魔法を用途別に展開できるようになっている。
「発動が気持ちスムーズになった気がしますわね」
≪Each magic has been optimized for you, master. The required time has been shortened around 0.05 seconds.≫【今回の調整で各魔法はマスターに最適化されています。発動所要時間は以前と比較して0.05秒ほど短縮されています】
「これならフェイトさんとの模擬戦もばっちりですわね」
≪To tell you the truth, Bardiche has also been optimized for Fate. The required time may have been shortened as well.≫【実際にはバルディッシュもフェイトに最適化されていますから、発動所要時間は同様に短縮されているかと】
「…まぁ、それはそれで良いですわ。お互い切磋琢磨してこそですし」
相変わらず、魔法の話をしている時だけは真面目に受け答えしてくれるトリックマスターに多少冗談を交えて話しつつ、フライヤーを操作する。ふと、試射スペースの入り口にフェイトの姿が見えた。
「おはようございます、フェイトさん」
飛行魔法を中断して地上に降りる。
「おはよう、ミント。早くから頑張ってるね。あ、サリカさんがそろそろ朝ご飯作るって」
「了解ですわ。では参りましょう。ところでフェイトさんは朝ご飯にするならパンと白米のどちらがお好きですか? 」
「私はパンの方が好きかな」
雑談をしながら洗面所で手洗い、うがいをして、その後キッチンに向かった。今日の朝ご飯はトーストに目玉焼き、ほうれん草のバター炒め。
フェイトは嬉しそうに目玉焼きをトーストに乗せて食べていた。
=====
「ゆっくりとで良いわよ。流れるように…相手の手先だけを見ないで、全体の動きを見てね」
クリスティーナさんが試射スペースを使って教えてくれた型は棒術の基本で、攻撃を防御するためのものだった。初めは何度も同じ型をゆっくりと繰り返し、身体に動きを覚えこませるのだそうだ。
朝食を終えて少ししてから稽古を開始したのだが、基本の動きだけで軽く3時間は使っている。それからクリスティーナさんが防御の型に合わせてゆっくりと攻撃を打ち込むようにし、その後徐々にスピードを上げていくのだ。こちらが追い付かなくなり、受け損なうとまた最初からゆっくり始めるのである。最初は興味深そうに眺めていたアルフも飽きてしまったのか、今はスペースの脇にあるベンチでうたた寝していた。
「さすがに、一朝一夕には、無理、ですわね」
「でも、結構、楽しいよ。ミント、頑張ろう」
2人共息は上がってしまっていたが、スピードが乗ってくると本当に攻撃を捌いているような感覚があり、フェイトが言うように確かに楽しかった。
「おはようございます。棒術ですか? 」
お昼近くなってリニスが起きてきたので、一緒に型を見てもらうことにした。
「随分と実践的ですね。これは毎日続けたら面白いことになりそうですね」
「そうね。この型自体はそんなに難しいものではないわ。これを毎日継続するのが大変なのよ。でも続けていれば間違いなく強くなれるわね」
「サリカ、さんは、やらなかったの、ですか? 」
「あの子はあまりこういったことに興味を示さなかったのよ。小さい頃は少しやっていたのだけれど」
「筋肉痛になるのがイヤだったのよね」
不意にサリカさん本人の声が聞こえて、目の前に水の入ったコップが差し出された。
「あぁ、サリカさん、ありがとう、ございます」
「あまり飛ばしすぎないようにね。明日、結構大変だと思うよ? 」
フェイトにも水を渡しながらサリカさんがそう言った。
防御の型はバルディッシュとトリックマスターに動きを記録してもらい、クラナガンに戻っても毎日繰り返すことにした。傍目にはダンスを踊っているような動きに見えるかもしれないが、スピードが上がってくるとまた違うのだそうだ。
リニスも協力してくれることになり、引き続き頑張ろう、とフェイトと2人で言い合ったのだが、その翌日、全身を襲う筋肉痛により2人共早速練習を1日休んでしまったことを、ここに記しておく。
先日の「他愛もない日常のレシピ」ですが、「あとがきが長い」とのお叱りを頂きましたので、移転を検討しています。。
続編はしばらくお待ち下さいませ。。小説として認められるようなら、別作品として掲載しても良いのですが。。
リニスの英語表記は英語版WikiだとRynithやLynithなどもあるようなのですが、劇場版(Movie 1st)の公式英語サブタイトルで「Linith」と表示されたそうですので、本作では「Linith」を正として扱います。。
ミントとフェイトに魔改造フラグがたった。。かもしれません。。