他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第17話 「冬」

夏から進めていた入学試験対策だが、11月になるとリニスも力の入れ具合が変わってきた。今までは魔法の練習と同じ程度の時間を座学に割り当てていたのだが、座学の時間が大幅に延長されたのだ。

 

「ミントもフェイトも、給付奨学金を狙うのでしたら知識は身に着けておいて損はありませんよ」

 

爽やかな笑顔でそう言うリニスが俺達に課したスケジュールは、毎朝5時に起きて棒術の練習、朝ご飯以降の午前中は座学を行い、お昼を食べた後に2時間ほどの休憩を挟んで公共施設での魔法練習。買い物が必要なら帰りに購入し、晩御飯の支度をする。夕食後はまた座学でその後入浴、就寝である。但し平日のみ。週末は早朝の棒術練習以外は自由になっている。

 

先日エルセアでクリスティーナさんに教えてもらった棒術は、最初の1日こそお休みしてしまったが、それ以降は毎日休むことなく続けていた。最近ではアルフもフェイトの横に並んで見よう見まねで棒を振るっている。幼いながらも自らが守るべき対象であるフェイトが自分よりもどんどん強くなることに抵抗を憶えているのかもしれない。

 

棒術の練習は基本的な型を記録しておいてくれたトリックマスターとバルディッシュが細かい指示を出しながら監修してくれる形式なのだが、魔法の話をしている時と同じように真面目なトリックマスターとのやり取りが行われる時間でもある。

 

「ここで…左足をこう、ですわね」

 

≪No, master. The foot step is a margin. You have to be careful in center of balance. Please use your waist to change the center.≫【いえ、足の動きは付随的なものです。むしろ腰を使った重心の移動に注意して下さい】

 

「ありがとうございます。こう…でしょうか」

 

≪Yes, it is much better.≫【はい。とても良くなりました】

 

「トリックマスターもいつもこんな感じなら、わたくしに投げられたり蹴られたりしなくて済みますのに」

 

≪That is my pleasure as well. A kind of reward.≫【あれはあれでご褒美ですから】

 

「……」

 

≪Well, Let us continue. If you skip your training for a day, you will need 3 more days to recover it.≫【さぁ、続けましょう。1日練習をお休みすると、取り戻すのに3日かかりますよ】

 

少しだけ見直した途端、すぐこれだ。溜息を吐きながら練習を再開する。隣を見るとフェイトはバルディッシュの指示に従い、黙々と型をこなしていた。アルフはフェイトの動きを真似るように動いているだけなのだが、始めた頃と比べれば明らかに動きが良くなっていた。

 

「門前の小僧、ですわね」

 

次にエルセアに行くのは年が明けてからになる。その時にまた改めてクリスティーナさんに成果を見てもらうことになっているのだが、次回からはアルフも一緒に見てもらうことになるかもしれない。その光景を想像し、少し微笑ましく思った。

 

 

 

=====

 

8月下旬にミッドチルダを出航したアースラからは、偶にデバイス通信が入ってくる。基本的にはプレシアさんからフェイト、リニス宛に入る音声のみの通信だ。巡航任務に就いている艦船との通信には検閲が入ることになっており、特に映像付のものはデバイス通信であっても検閲に時間がかかるためリアルタイムでの通信は絶望的である。一方音声のみであれば検閲も然程厳しくないので、リアルタイムに近い通信が可能なのだ。

 

フェイトとしては出来れば映像付のデータで通話したいと思っていたのだろうが、こればかりは我慢してもらうしかない状態だった。

 

但し、それは勿論アースラが次元航行中の時に限られる。

 

「という訳で、明日の夕食はフェイトさんお手製のカレーでパーティーですわ!」

 

パチパチパチと拍手をするのはリニスとサリカさん。フェイト本人は照れて赤くなりながらも、少し嬉しそうにしている。カレーに必須の玉葱と香辛料は使い魔になりたてのアルフにはまだ厳しいので、食卓にカレーが並ぶ時は、アルフだけ別メニューとして軽く焼いたお肉が振舞われる。尤もアルフ自身はそれが満足な様子で、メニューがカレーになるといつも大喜びしている。

 

明日はアースラがミッドチルダに寄港する。今回は打ち合わせなどの都合もあり、週末は丸々滞在するのだそうだ。艦長であるリンディさんや執務官のクロノは滞在中も仕事に追われることになるだろうが、嘱託魔導師であるプレシアさんにはそれほど大量の仕事は割り当てられていない。このためミッドチルダに滞在する金曜日から月曜日の間はプレシアさんもサリカさんの家に泊まることになったのだ。

 

これを聞いたフェイトが一念発起。プレシアさんが到着する日の夕食は自分がカレーを作ると宣言した。愛娘の手料理ならばプレシアさんも大喜びする筈とのことで、リニスもサリカさんも一も二もなく賛成し、現在に至る。

 

「折角だから今日の内に作り置きませんか? 明日、温め直すと玉葱が融けて甘みとコクが出ますわよ」

 

「そうだね。じゃぁ夕食が終わったら作ろうかな。サリカさん、お願いします」

 

「オッケー、頑張ろうね、フェイトちゃん」

 

「話が纏まったところで、そろそろ出かけましょうか。午後の練習が終わったら、カレーの材料も買ってきましょうね」

 

「うん。私頑張るよ」

 

「そうそう、明日はプレシアを迎えに本局まで行きますから、午後の練習はお休みにしますね。その代り、今日はビシバシ行きますよ」

 

一瞬輝きかけたフェイトの表情がすぐに固まる。

 

「う…うん、私…頑張る、よ」

 

「だ…大丈夫ですわ。明日を乗り切れば週末ですし、久しぶりにプレシアさんとのんびりできますわよ」

 

「そう、そうだよね。そのためにも…今日を生き抜こう」

 

結局その日の練習はかなり密度の濃いものになり、俺もフェイトも何とかその日のスケジュールを全てこなしたものの、お風呂から上がった後は完全に疲れ切っており、2人揃って泥のように眠った。

 

 

 

翌日は予定通り午前中に棒術の練習と座学をこなしたが、お昼ご飯を食べ終わったころからフェイトのテンションが上がりっぱなしになり、結局俺達はアースラ到着予定時刻の1時間も前に本局のポート前ゲートに到着してプレシアさんの帰還を待った。

 

5分でも遅延しようものなら恐らくフェイトは散々取り乱したのだろうが、幸いアースラは予定通りに入港し、プレシアさんもすぐにその元気な姿を見せてくれた。

 

「母さん、お帰りなさい。元気そうで良かった」

 

嬉しそうにプレシアさんに駆け寄るフェイトを、プレシアさんも笑顔で抱きしめる。その横にはリニスも立った。

 

「プレシア、お疲れさまです。お帰りなさい」

 

「ただいま、フェイト。リニスも。サリカさんに迷惑はかけてない? 」

 

「大丈夫だよ。ね、ミント」

 

「ええ。全く問題ありませんわ。お帰りなさいませ、プレシアさん」

 

プレシアさんがこちらにも微笑みかける。そこにてちてちと駆け寄る幼女が1名。アルフだ。

 

「はっ、はじめまして!アルフだよ!」

 

「あら、貴女がフェイトの使い魔ね。ちゃんと挨拶出来てえらいわ。これからよろしくね、アルフ」

 

プレシアさんに褒められて、アルフもフェイトも嬉しそうにしていた。

 

「あら、みなさんお揃いね」

 

不意に声を掛けられたのでそちらを見ると、丁度リンディさんやクロノ、エイミィさんもゲートを抜けてくるところだった。

 

「あ、リンディ提督。こんにちは」

 

「はいこんにちは、フェイトさん。ミントさんもお久しぶりね」

 

「ご無沙汰ですわ、リンディさん。クロノさんとエイミィさんもごきげんよう」

 

「ああ。みんな元気そうで何よりだ。で、すまないが僕とエイミィはこれから会議があるんだ。慌ただしくて申し訳ないが、これで失礼するよ」

 

「みんな、ゴメンねぇ~また今度のんびりお話ししようね」

 

本当に慌ただしくその場を後にするクロノ達を見送る。以前、執務官はヒマなのか、と言ったことを心の中でほんの少しだけお詫びした。

 

「さてと、私もそろそろ巡航記録を提出しに行かないと。プレシアはこれから3日間オフよね? 羨ましいわ」

 

「それはそうよ、あくまでも一嘱託ですもの。艦長や執務官とは違うわ」

 

「次の出航は月曜日の正午だから、それまではフェイトさん達とゆっくりリフレッシュしてきてね」

 

リンディさんもそう言うと手を振りながら歩いて行ってしまった。

 

「わたくし達もそろそろ参りましょうか。今から帰れば18時には家に着けますわ」

 

「そうね。サリカさんは今日は? 」

 

「日勤ですわ。19時には戻ると思います」

 

そうして俺達は家路についた。フェイトはプレシアさんと手をつないで嬉しそうにし、反対側の手でこれまた嬉しそうにしているアルフの手を引いている。それはごく普通の、幸せな家族の姿だった。

 

 

 

=====

 

帰宅後、まずフェイトとリニスがプレシアさんに対して、アルフを使い魔にした時の状況を詳細にわたって説明した。俺もその場にいた当事者の1人として、要所要所で補足を入れる。

 

「そうね。確かに自分の使い魔の面倒を自分で見るのは当然のことだわ」

 

「ですが、アルフの面倒をフェイト自身で見ることにすると、フェイトは予定していた学生寮には入れません」

 

「そこはもう仕方ないと割り切るしかないわね。こうなった以上、学生寮の線は無いわ」

 

そうなると、取れるオプションも限られてくる。プレシアさんが提示したのは、サリカさんの主張を全面的に認めてこのまま間借りを続けることと、近くに家を借りてリニスと一緒に生活させることの2つだった。

 

「後者はリニスさんがプレシアさんのお手伝いでいなくなることがあることを考慮すると、あまり現実的ではありませんわね」

 

「個人的な理由での長距離転送はまず許可も下りないでしょうから、そういう時はフェイトとアルフだけで留守番させることになってしまいますね」

 

一応リンディさんの計らいで、任務に必要な時にリニスを『召喚』することは認められたそうなのだが、元々滅多なことでは許可が下りない長距離転送である。『送還』については難しいとのことらしい。

 

「私はそれでも大丈夫だよ。料理も出来るようになったし」

 

「それはダメよ。ミントちゃんだってまだ1人では火を使わせて貰えていないのでしょう? 」

 

「恥ずかしながら、その通りですわ。それにフェイトさんが1人で生活する姿を想像したら…」

 

「きっとメニューは毎日カレーになってしまいますね」

 

「…ちゃんとサラダもつけるよ? 」

 

フェイトの反論に苦笑する。とりあえず今問題なのは食事のバランスだけではなく、全般的なことである。地球と比べて幼児の精神年齢が高い次元世界ではあるが、それでも矢張り6歳児を長期間1人だけにするのは使い魔に対するネグレクトと同様に問題だった。

 

「結局そうなるわよね」

 

プレシアさんも苦笑しつつ、デバイスからいくつかの小さな箱を取り出した。

 

「母さん、それは? 」

 

「管理外世界のお菓子だそうよ。リンディが貯め込んでいたのを分けてもらったの。改めてサリカさんにご挨拶しないといけないし、お土産ね」

 

そう言いながらプレシアさんが箱を開けると、そこには落雁が入っていた。さすがはリンディさん、甘いものが大好きなのは伊達ではなさそうだ。

 

その後、リニスと一緒にフェイトがカレーを温め直していると、サリカさんが帰宅した。

 

「プレシアさん、お久し振りです。お疲れさま」

 

「お久し振りね。お邪魔しているわ」

 

この場合、どちらが「おかえりなさい」でどちらが「ただいま」なのだろうと、どうでもいいことを考えながらフェイトと一緒に配膳する。

 

「おかえりなさい、サリカさん。すぐに食事になりますから着替えてきて下さいませ」

 

「はいはーい」

 

 

 

フェイトが作ったカレーは、プレシアさんにも大好評だった。誰でも割と簡単に作れて、失敗することの少ない料理ではあるが、愛娘の手料理と言うだけでもプレシアさんにはとにかく感涙ものだったようだ。

 

「とても美味しいわ。これも管理外世界の料理なの? 」

 

「うん。ミントに教えてもらったお店でルーを買ってきたんだ」

 

プレシアさんに褒められて、嬉しそうにフェイトが答える。

 

「あ、以前お味噌とかお醤油とかを買ってきてくれたお店だっけ? 」

 

「ええ。あのお店は本当に色々な世界の食材や調味料を扱っていますわね。とても助かりますわ」

 

「私も以前一緒に行ってみましたが、扱っている調味料は管理世界のものから管理外世界のものまで、本当に多種多様でしたね」

 

「良いわね。私も今度行ってみようかしら。あ、そうそう。ミントちゃん、前回のメニューもだけど、エイミィにレシピを提供してもいいかしら? 」

 

「ええ、構いませんわよ」

 

「ありがとう。何でも彼女、料理が趣味らしくて。以前作ってもらった、中華だったかしら? あれの話をしたら是非作ってみたいって」

 

エイミィさんの趣味が料理だというのは知らなかったが、同好の志が身近にいることを嬉しく思う。

 

「そう言うことでしたら、後でプレシアさんのデバイスにレシピを転送致しますわ。今まで作った料理のレシピは基本的に全部トリックマスターにも記録してありますし」

 

カレーのレシピだけは、折角だからバルディッシュから転送して貰えるようフェイトに念話で伝えたところ、嬉しそうに了解の返答があった。

 

 

 

ちなみにこれが原因となってアースラ内部で第97管理外世界の料理が大流行することになり、艦内食堂でも正式メニューとしていくつかの料理が採用され、数年後には管理局員だけでなく一般にまで浸透した地球の料理文化がクラナガンで一世を風靡することになるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

=====

 

俺やフェイト、アルフが就寝した後、プレシアさん、サリカさん、リニスの3人で話をし、フェイトがサリカさんの家から通学することがあっさり決まったそうだ。フェイトが入学する頃にはアルフも今よりは成長しているだろうが、念のためリニスも緊急時以外はサリカさんの家に逗留することになった。尤も一度『召喚』されてしまうとなかなか帰ってこれない状態なのだが。

 

「まぁ、サリカがいないのは夜勤の時くらいでしょうから特に問題はないでしょうね」

 

「月に、1、2回は、友人と、お食事に、行くことも、あるよう、ですが、それでも、22時には、戻って、いますわね」

 

錫杖形態のトリックマスターを使って棒術の型を練習しながらリニスの話を聞く。フェイトも隣でバルディッシュを振るっており、更にその隣ではアルフも棒を振るう。

 

「型の、練習も、ミントと、一緒に、出来れば、一人で、やるより、良いかも」

 

フェイトの言葉に少し嬉しくなり、トリックマスターを握る手にも力が入った。

 

≪Master, too much strain is not good. Please keep your hot heart, but keep your cool head.≫【マスター、力み過ぎは良くありません。心は熱く、ですが思考は冷静に】

 

「了解、ですわ」

 

そのまま一通りの型を終え、息を整える。

 

「ミント、少しテンポを上げて合せてみよう」

 

「判りましたわ。参りますわよ」

 

魔力で強化したトリックマスターとバルディッシュがぶつかり合い、まるで火花を散らすように魔力光の残滓が辺りに飛び散る。朝日の中でキラキラと輝く金色と空色はとても幻想的で綺麗だった。

 

 

 

棒術の練習を終え、軽くシャワーで汗を洗い流した後、フェイトとリニスと一緒に朝食を用意する。アルフは既にテーブルについてご飯を待っているようだ。

 

「今日は一日、プレシアさんとお出かけですか? 」

 

「うん。リニスとアルフも一緒に買い物にでも行こうかと思って」

 

「久し振りに家族水入らずでのんびりされるのが良いですわね」

 

「ミントはどうするの? 」

 

「読みかけの本がありますから、そちらを読了してしまいますわ」

 

今日は土曜日なので座学と午後の魔法練習はお休みなのだが、棒術の練習だけは身体が鈍ってしまわないように週末でも毎日続けているのだ。

 

「おはようフェイト、ミントちゃん。ちょっと寝過ごしてしまったわ」

 

プレシアさんが居間に入ってきた。時計を見ると丁度7時だ。

 

「プレシアはここしばらく休めていなかったのでしょう? たまにはゆっくり寝ても罰は当たりませんよ」

 

「そうだよ、母さん。それにまだ全然寝過ごしたっていう時間じゃないし」

 

「2人が棒術の練習をしているっていうから見せてもらおうと思っていたのよ」

 

プレシアさんは少し残念そうにしていたが、また明日もやるからというフェイトの言葉に微笑んだ。

 

「アルフもね、アルフもやってるんだよー」

 

「そうね、3人だったわね。ごめんなさい」

 

アルフの自己主張が微笑ましく、またみんなで笑っているとサリカさんも起きてきた。

 

「おはよー。いつもありがとうね」

 

「いえいえ。早く食べてしまわないと遅れますわよ。今日も日勤でしたわよね」

 

サリカさんを急かして席についてもらうと、配膳を終えた。

 

「「「「「今日の糧に感謝を」」」」」

 

「かんしゃー」

 

アルフの声だけが少しずれたが、それが可愛らしくてまた笑みが零れた。

 

 

 

=====

 

サリカさんが出勤し、テスタロッサ家が外出してしまうと、家に残っているのは俺一人になる。読みかけだった本を読み終えるまでには然程時間もかからず、少しばかり暇を持て余していた。

 

「トリックマスター、レイジングハートさんに通信を送ってみて下さいませ」

 

≪All right...OK, connected.≫【了解。繋がりました】

 

数回のコールの後、ユーノが出た。

 

「こんにちは、ユーノさん。今、大丈夫ですか? 」

 

『ミントならいつでも大歓迎だよ。今日はどうしたの? 』

 

実はユーノとは結構頻繁にデバイス通信をしていたりする。今回は偶々俺の方から連絡したのだが、大体ユーノの方から連絡が来ることが多い。ペースとしては3日に1回くらいは確実に連絡がある。

 

「少し暇つ…ではなくて、ユーノさんは年末は如何されるのですか? 」

 

『たぶん、スクライアのみんなとのんびり過ごすことになるかな。ミントはブラマンシュに里帰り? 』

 

「ええ。越年祭もありますしね」

 

『あの、みんなで湖に入るやつだよね。さすがにあの寒さの中で湖に入るのは堪えたなぁ』

 

「今年も入る気はありませんか? 」

 

『…ミントが誘ってくれるなら』

 

「ちょっと間がありましたわよ? 」

 

ちなみにユーノはブラマンシュの発掘調査団にいた関係で、去年も一昨年も越年祭には参加しているのだ。今年はサリカさんも年末年始に無事休みが取れたそうで、参加を表明している。プレシアさんはタイミングが合わず残念ながら次元航行に出てしまっている時期になるが、フェイトとリニス、アルフは巻き込むことに成功した。

 

『じゃぁ、そのフェイトっていう子にも会えるんだね。楽しみにしているよ』

 

「こちらこそ楽しみにしていますわ。じゃぁ、年末に」

 

『また連絡するよ。じゃぁね』

 

ユーノとの通信を終え、今度は母さまに手紙を書く。今年の越年祭は賑やかになりそうだった。

 

 

 

母さまへの手紙を投函しに行ったついでに、夕食の買い出しにスーパーに寄った。出掛けに食糧を確認したところ野菜類はある程度在庫があったのだが、お肉も魚も無かったためだ。売り場を見て回っていると、魚のコーナーに美味しそうなメロが並べられていた。

 

「これは…煮魚にしたら美味しそうですわね」

 

メロは深海に生息する大型の魚で、照り焼きや焼き魚などにしても美味しいのだが、今のブラマンシュ家には「醤油」という強い味方がいる。料理酒や砂糖などと混ぜて煮付けにすると、この上なく美味しくなるのだ。

 

「家に長葱がありましたわね。あれを一緒に煮付けてしまいましょう」

 

だがそうなると、アルフが問題だった。葱は中毒症状を引き起こすため食べさせる訳にはいかない。長いこと使い魔をやっているリニスなら問題ないのだが、未だ素体の特性が強く残っているアルフにとっては死活問題である。

 

「かといって、毎日お肉だとエンゲル係数の問題もありますし、栄養バランスも…」

 

考えながら歩き回っているうちに、別の売り場に来てしまった。普段はあまり立ち寄ることの無いエリアだったが、陳列棚に置かれたドッグフードを見て、ふと考えた。

 

「素体の特性が残っているなら、こういったものも好んで食べるかもしれませんわね」

 

少し悩んだ後、小さ目の箱を買って帰ることにした。この量なら、万一アルフが食べなかった場合でも諦められるし、もし食べるようなら次に買い物に来るまでは持ちそうだったためだ。

 

 

 

その日の食卓にお肉が無いことを知ったアルフは最初呆然としていたのだが、ドッグフードは大層気に入った様子で、いつも以上に良く食べてくれたので内心ホッとしていた。

 

いや、その時はホッとしていたのだが。

 

後日、アルフがみんなの目を盗んでドッグフードを食べていたことが発覚。90cm程度しかないアルフの体重が17kgにまで増えてしまうという事態が起きてしまった。リニスに怒られ、フェイトに心配された挙句、日々の食事制限と夕方の散歩が課されたことをここに記しておく。

 




第1部以上にのんびり、ゆったり時間が流れています。。
ただゆったり過ぎて取り留めもなくなってしまっている訳ですが。。

こんなのんびりしたお話でも読んで下さる方がいらっしゃることを嬉しく思います。。
みなさま、いつもありがとうございます。。今後ともよろしくお願いいたします。。

※90cmくらいの幼女は、通常体重は12~13kgなのだそうです。。
 アルフ。。ずいぶん太っちゃいました。。
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