他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第20話 「魔法学院」

「ねぇリンディ。何とかならないものかしら? 」

 

「うーん、気持は判るし、何とかしてあげたいのは山々なんだけど、こればっかりはどうにも…ねぇ」

 

3月末日。ミッドチルダに寄港したアースラだったが、次の航海日程に問題があった。出航予定は今日なのだが、それだと1週間後のフェイトの入学式には間違いなく出席出来ない。このためプレシアさんは放っておいたら本当に血の涙を流しそうな雰囲気だった。出航の見送りに来ていたフェイトをして、見たことがないと言わせるほどの取り乱し振りだ。

 

「クロノ、貴方の書類提出を遅らせれば出航日をずらせるんじゃない? 」

 

「勘弁して下さい。仮に延長出来たとしても精々1日が限度ですし、それで怒られるのは僕なんですよ」

 

「っていうか、1日なら延ばせるんだ…」

 

プレシアさんの理不尽なお願いにクロノが溜息を吐き、エイミィさんがポツリと呟く。

 

「プレシア、こればかりは仕方ないですよ。私がちゃんと式の内容を録画しておきますから、それで我慢して下さい」

 

「ううぅ、何で使い魔の精神リンクでは『視覚共有』や『聴覚共有』ができないのよ…」

 

「よっぽどリアルタイムで入学式の様子を見たいのですわね」

 

「勿論よ!だってミントちゃん、初等科の入学式は一生に一度しかないのよ? 」

 

さすがに任務中の次元航行艦にリアルタイムでプライベートの映像通信を送ることは出来ない。必ず事前に検閲が入るためだ。

 

「あの、艦長。ちょっとよろしいでしょうか」

 

その場にいた、眼鏡をかけた茶髪の青年がリンディさんに話しかけた。

 

「一応デバイスからリアルタイム映像だけ送って貰っても良いですか? 検閲は僕がやっておきます。尤もおめでたいことですから、画面に見いっちゃって検閲が多少緩くなっちゃうかもしれませんが」

 

「「おおっ!」」

 

隣にいた紫髪の男性とエイミィさんが同時に手を叩いた。

 

「アレックス、本気で言っているのか? 完全な規則違反だぞ!」

 

「まぁまぁ、執務官殿。検閲には僕も協力しますから。リアルタイム通信でなければ言い訳も立ちますよね? 」

 

「ランディの言う通りだよ、クロノくん。今計算してみたけど、最低でも0.05秒のラグが発生するからリアルタイムじゃぁないね」

 

「いいわね。じゃぁ今回はそれで行きましょう」

 

「かぁ、艦長!…あぁもう、判ったよ。僕は何も聞いていないからな」

 

「みんな、ありがとう…」

 

こうしてプレシアさんはアースラスタッフの厚意により、ほぼリアルタイムで入学式の映像を見ることが出来ることになった。勿論それとは別口でリニスに記録映像の録画を依頼したことは言うまでもない。

 

 

 

=====

 

クラナガン・セントラル魔法学院は、日本の学校と同じで4月に1学期が始まる。今日はその入学式の日だ。

 

「2人共、準備できた? ハンカチは持った? ティッシュは? 」

 

「大丈夫ですわよ、サリカさん。準備はばっちりですわ」

 

「私も、もう行けるよ」

 

制服に着替え、フェイトと一緒に答える。今日はサリカさんもお休みを貰って入学式に参列してくれることになった。リニスとアルフも準備を整えて玄関で待っている。

 

「フェイトとミントの晴れの日ですからね。プレシアにも頼まれていますし、今日は撮影を頑張りますよ」

 

「よく似合ってるよ、フェイト。やっぱりフェイトには黒い服が良く合うね」

 

「ありがとう。アルフも恰好良いよ」

 

アルフはパンツルック、リニスとサリカさんはタイトスカートのスーツをそれぞれ着用している。そしてもう1人、今日この日のためだけにブラマンシュからやってきたイザベル母さまはシックなドレスを身に纏っていた。

 

「参列出来ないプレシアさんには申し訳ないけれど、やっぱり娘の入学式くらいは出たいじゃない? 」

 

「…それはいいんだけど、この中で最年長にはとても見えないよ…」

 

アルフの呟きは、その場の全員の思いを代弁していた。

 

「後で、みんなで記念写真を撮ろうね。あ、ミント。入学式の間、トリックマスターを貸して頂戴」

 

「ええ、構いませんわよ。ではトリックマスターはお母さまと一緒に」

 

≪Yes, I will record the whole celemony. I have enough free space in my memory as I can record little girl officially.≫【はい。式の全容を録画します。公然と幼女の撮影が出来るのですから、空き容量は十分に確保してあります】

 

無言のままトリックマスターの頭を軽くひっぱたくと、母さまに手渡した。

 

「…他の人の迷惑になるといけませんから、空は飛ばさないように注意しておいて下さいませ」

 

≪What a pity! Do not you think so, Bardiche?≫【残念ですね、バルディッシュ】

 

≪……≫

 

同意を求められたバルディッシュからの返答はなく、ただ一瞬だけキラッと光った。その光は何故かとても悲しそうに見えたが、もしかしたらバルディッシュも空中から撮影したかったのかもしれない。

 

 

 

校門のところで一度全員で写真を撮った後、リニス、アルフ、サリカさん、母さまは来賓として一足先に講堂に向かった。これから俺とフェイトはクラス分けの指示に従って、教室で簡単な説明を受けることになる。

 

校門から校舎に向かう並木道が桜ではなく公孫樹なのがとても残念なのだが、校庭には立派な桜の木が1本あった。地球のソメイヨシノによく似た種類で、今正に満開に咲き誇っている。その木の隣に掲示板があって、クラス割りが貼り出されていた。

 

「あ、ミント。同じクラスだよ」

 

「本当ですわね。ではこれから1年、よろしくお願い致しますわ」

 

「うん。こちらこそよろしく」

 

フェイトと2人で笑いあった後、改めてクラス割りを見直す。俺とフェイトの名前がB組に書かれているのに対して、ユーノの名前はA組にあった。

 

「あ…ユーノさんは隣のクラスですわね」

 

「本当だ…残念だったね、ミント」

 

フェイトはそう言うが、クラスが違っただけで致命的に何かが変わる訳でもない。休み時間なら会える訳だし、お昼も給食制ではなくお弁当か学食なので、一緒に食べることだって出来る。

 

「そう言えば、ユーノさんはいらっしゃらないようですわね」

 

掲示板の周りにいる生徒達の中に、ユーノらしき姿はなかった。

 

「もしかしてミントと別のクラスになったことがショックで、先にクラスに行って落ち込んでいるのかも」

 

「さすがにそこまではないと思いますわよ。むしろ新入生代表挨拶で悩んでいるのではないかと」

 

主席入学を果たしたユーノには、入学式での新入生代表挨拶という大役が任されたらしい。先日デバイス通信で話をした時には、原稿は出来ているとのことだったので、もしかしたら緊張でもしているのかもしれない。フェイトとそんな話をしながらB組の教室へ向かうと、丁度A組の前の廊下にユーノがいた。窓から外を見つめて溜息を吐いている。

 

<どっちかな? >

 

<まだ何とも言えませんわね>

 

フェイトから念話が届いたので、返答してからユーノに声を掛けた。

 

「おはようございます、ユーノさん」

 

「えっ、あ!ミント。おはよう。ブラマンシュ以来だね。フェイトも、元気だった? 」

 

「おはよう。どうしたの? 何だか元気がないみたい」

 

「うん…僕だけA組になっちゃったなぁって思ってさ」

 

凄く嬉しそうな表情で俺を見るフェイトに苦笑で答えつつ、ユーノの肩にポンと手を置いた。

 

「別のクラスになってしまったのは残念ですが、致命的に会えなくなるわけではありませんわよ」

 

「そうだね。お昼とかは一緒に食べられるだろうし」

 

「うん…そうなんだけどね…」

 

どうにも煮え切らない返事が返ってくる。

 

「本当に、どうなさいましたの? クラス割だけが理由ではないのですか? 」

 

「実は…例の挨拶なんだけれど、ちょっと緊張しちゃって」

 

結局、俺もフェイトも半分ずつ正解だったらしい。

 

「原稿は出来ているのでしたわよね? 」

 

「うん。練習もしてはきたけれど」

 

「でしたら、わたくし達の代表としてシャキッとして下さいませ。きっと大丈夫ですわ」

 

「そっか、ミント達の代表でもあるんだよね…ありがとう。うん、頑張るよ」

 

そう言ったところでタイミング良く予鈴が鳴る。

 

「あ、そろそろクラス説明が始まるよ」

 

「ではわたくし達は失礼しますわね」

 

「うん。じゃぁまた後で」

 

廊下にいた生徒達が三々五々教室に入っていく。俺とフェイトもユーノと別れてB組の教室に入った。黒板には既に割り当てられた座席順が記載されていて、それに従って席に着く。俺は一番廊下寄りの列の前の方の席で、フェイトは逆に窓際の後ろの方の席だった。

 

<席、離れちゃったね>

 

<予め決まっていたようですから、仕方ありませんわ>

 

先生が教室に入ってきたので、私語を念話に切り替える。勿論マルチタスク活用で先生の話も確り聞いておくことは忘れない。席順はどうやらランダムで決まっていたようで、名前順などではなかったようだった。

 

「はい、みなさん私語は謹んで下さいね。これから入学式についていくつか説明と注意があります」

 

黒髪でまだ若いが人当たりの良さそうな先生から入学式のスケジュールを渡され、簡単な注意事項などの説明を受ける。とは言っても式次第などはどこの世界も似たようなもので、改めて確認するほどのものでもない。注意事項についても騒がないように、というような当たり前のことだった。

 

 

 

その後、俺達は講堂に移動した。保護者や上級生達は既に席についているようだった。新入生はクラス別に呼ばれて入場していく形式だ。まずはA組が入場し、拍手で迎えられた。続けてB組が入場する。

 

「あれ…全部デバイス? 」

 

講堂に入ると、目を疑うような景色が広がっていた。来賓席と思われるエリアの上空が色とりどりの宝石やらプレートやらで埋め尽くされていたのだ。その中に見覚えのある人形を見つけて愕然とする。

 

<フェイトさん、バルディッシュは? >

 

<リニスに預けておいたんだけど、今はトリックマスターの隣にいるみたい>

 

フェイトに念話を送ると、若干呆れたような口調で返答があった。恐らく来賓の誰かがデバイスを飛ばし始めて、それが我も我もという形になってしまったのだろう。むしろ先生方が止めていないので、もしかしたら黙認されていることなのかもしれない。

 

<リニスさん…>

 

入場行進を終え、指定場所に着席すると、俺はリニスに念話を送ってみた。

 

<あ、トリックマスターとバルディッシュのことですよね? 周りの保護者達がみんな飛ばしている様子だったので、一緒に飛ばしちゃいました。プレシアから依頼されている映像データも確り録っていますからご心配なく>

 

<≪Thank you, Meister Linith. I appreciate for your kind concern.≫>【ご配慮感謝します】

 

<≪Me too. Recording had been started.≫>【同じく。録画は既に開始済みです】

 

<…特にお咎めもない様子ですので、良いと思いますわ。ただトリックマスターは待機モードでもサイズが大きめですから、他のデバイスの邪魔にならないようにお願いしますわね>

 

<≪Sure. I will take care.≫>【留意します】

 

苦笑交じりに念話を切ると、式典に集中した。校長の長い式辞を聞き、在校生の歓迎の言葉を終えるとユーノが壇上に上がる。さっきまで緊張していたような素振りは一切見せず、堂々と入学できることの喜びや希望、これからの目標を述べ、拍手の中「ありがとうございます」と締めたユーノを見て、少しだけカッコイイな、と思った。

 

 

 

入学式は滞りなく終了し、俺達は一度教室に戻ることになった。これから自己紹介や明日からの授業について説明があるとのことで、多少時間がかかりそうだったこともあり、母さま達には一足先に帰宅して貰うことにした。母さまもリニスも録画データのチェックをするのだと、嬉々としてトリックマスターやバルディッシュも拉致していた。

 

教室に戻ると出席番号順に自己紹介をした。基本的にミッドチルダ、特にクラナガンに元々住んでいた生徒が多いのだが、ユーノと同じく学生寮に入寮する生徒や、俺やフェイトと同じように下宿している生徒も数人いた。一通り自己紹介が終わると、先生からお話があった。

 

「本格的な授業は明日から始まります。みなさんは当学院の生徒として、楽しみながらも節度を持った学院生活を送って下さいね。それから困ったことがあったらすぐに先生に相談すること。判りましたね」

 

はーい、とクラスメートの声が揃う。改めて管理世界における教育レベルの高さを認識した。

 

(これが日本の小学校1年生だったら、「節度を持って」などと言ってもきっと理解できませんわね)

 

若干場違いな感想を頂きながらも、クラスの雰囲気に絆された所為か、クスリと笑みが零れた。

 

 

 

=====

 

終礼の後、帰り支度をしていると、隣席の少女から声を掛けられた。

 

「えっと、ブラマンシュさん、でいいのかな? 」

 

「ミントで構いませんわよ。コレット・ヴァーミリオンさんでしたわね」

 

自己紹介の時にハッキリ覚えていたのは、ロングポニーテールに纏められた少女の髪の毛が姓の通り鮮やかな朱色であり、もしかして家族全員が朱色の髪なのだろうかと下らないことを考えていたためだったりする。

 

「私もコレットでいいよ。今日はこれから何か用事とかある? もし良かったらお話し出来たらいいなって思って」

 

「わたくしは別に構いませんわよ。そうですわね…」

 

ふとフェイトの方を見ると、同じように近くの席にいた子と話をしている様子だった。フェイトも最初に出会った時は随分と人見知りの激しい様子だったが、今ではそんな素振りも見せない。自分の存在が少しでも役に立ったのなら喜ばしいことだ。

 

<合流しても? >

 

<うん、全然問題ないよ>

 

フェイトから同意も貰えたのでコレットを連れてフェイトのところに行き、一緒に話をしていた子とも改めて自己紹介をした。その少女はエステル・グリーズと名乗った。肩ほどまであるアッシュグレイの髪がとても綺麗な子だ。

 

コレットは生まれも育ちもクラナガンで、エステルは今はクラナガン在住だが、元はエルセアの出身なのだそうだ。暫く4人で趣味などの話をしているうちに今度は料理の話になった。

 

「ご飯の話をしていたら、何だかお腹空いてきちゃった」

 

「折角だから、お昼食べて行かない? ここ、学食あったよね」

 

コレットとエステルに誘われ、フェイトにも特に異論はない様子だったので学食で昼食を頂くことにした。リニスと母さまには念話で少し帰宅が遅れることを伝えたところ、どうやら映像データ編集に嵌ってしまっている様子で、ゆっくりしてきて構わないとの回答があった。

 

「そうだミント、ユーノも誘ってみたら? 」

 

「そうですわね。少々お待ち下さいませ」

 

ユーノに念話を送ると、直ぐに返事があった。どうやら彼も男の子の友達が一人出来た様子で、一緒に合流してもいいか、とのことだった。3人に聞いてみると、特に問題ないとのことだったので学食で合流することになった。

 

「ミントさんはもう念話が出来るんだね」

 

「ええ。慣れてしまえば然程難しいこともありませんわよ」

 

「うーん、何だか発信する時の感覚が良く判らないんだよね」

 

「もし良かったら教えようか? 私も念話くらいなら出来るし」

 

「「是非!」」

 

そんな話をしていると、丁度ユーノが1人の男の子と一緒にやってきた。

 

「あ、代表挨拶した人だ!」

 

コレットの指摘に微笑みながら、ユーノが挨拶した。

 

「初めまして。ユーノ・スクライアです。ミントやフェイトとは入学前からの友達だよ」

 

「ユーノさん、そちらの方は? 」

 

「彼はマリユース・シュミット。偶々座席が前後で並んで、仲良くなったんだ」

 

「マリユースだ。よろしくな」

 

ユーノはどちらかというと可愛い系の顔なのだが、マリユースは男の子っぽい顔をしていた。髪は若干赤味がかった金髪で、フェイトの金髪と比べるとどちらかというと銅色に近い。

 

その後、昼食を食べながらみんなで色々な話をした。魔導師ランクはエステルがDランクで、コレットとマリユースはEランクなのだそうだ。魔力量については全員Aランクはあるらしいのだが、魔法はまだまともに使ったことが無いらしい。

 

「えっと、コレットとエステルはさっき念話の発信が出来ないって言っていたよね。デバイスは持ってる? 」

 

「ううん、私はまだ持ってないよ。子供が持つようなものじゃないって、登録の時も貸出し用のを借りたの」

 

「私も同じ」

 

「発信については、最初はデバイスの補助があった方が判りやすいのですわ」

 

そう言ってユーノを見ると、確り首から紅い宝石を下げていた。

 

「レイジングハートさん、お願いできます? 」

 

≪Yes ma'am.≫【了解】

 

レイジングハートがふわりと浮かび上がってこちらに飛んでくる。

 

「すみませんわね、ユーノさん。少しお借りしますわ」

 

「良いけど、トリックマスターは如何したの? 」

 

「バルディッシュと一緒にお母さまとリニスさんに拉致されましたわ」

 

「あぁ、なるほど。画像データだね」

 

ユーノはそう言って苦笑した。

 

話を聞くとマリユースも念話は使ったことが無いそうなので、一緒に練習することにした。それぞれレイジングハートがサポートすると、ほんの数分で発信が出来るようになる。

 

「凄いな。こんなに簡単に出来るようになるなんて思わなかった」

 

「そうだね。相手のリンカーコアにチャンネルを合わせるっていうのかな? 感覚が良く判るようになったね」

 

「でもまだ1対1だけだね。もう少し練習しないと、複数の人に念話を送るのは難しいかな」

 

「大丈夫、すぐに慣れますわよ」

 

そんな話をしながら、ふと気になったことがあった。それは魔導師登録の時に実施した飛行魔法や射撃魔法の検査だ。念話すら使ったことが無いような子供に対してそうした試験を実施するとは考えにくい。

 

「そう言えば、みなさんの魔導師登録の時って、どんな検査内容だったのですか? 」

 

「えっとねー、まずベッドに寝かされてヘンなコードみたいのを付けられたよ」

 

「それから、デバイスを使った時の魔力増幅確認と、飛行魔法適性検査でしょ? 」

 

「それから? 」

 

「っていうか、それだけだよ」

 

周りを見ると、コレットもエステルもマリユースも頷きあっている。

 

「じゃぁ、飛行魔法や射撃魔法などの行使については? 」

 

「あ、それたぶん管理局入局基準の検査だよ。初等科入学レベルで必要な検査だと、普通は使える魔法の種類を聞かれるくらいだね」

 

ユーノの言葉に唖然とする。

 

「え、でもユーノさんは以前、攻撃魔法が使えないからCランクみたいなこと言っていませんでした? 」

 

「うん。使用可能魔法を聞かれてね。変身魔法や防御魔法は使えたから普通よりも高い点数を貰えたけれど、C+には届かなかったんだ」

 

どうやら俺とフェイトが受けたのは初等科3年を過ぎた頃に受ける、入局者や嘱託用の検査だったらしい。クロノが惚けていたのか、エイミィさんがうっかりしていたのかは判らないが、随分とステップを飛ばしてしまっていたようだった。

 

「次にアースラがミッドチルダに寄港したら、執務官殿に問い質しておきますわ」

 

「別にいいんじゃないかな? 資格として使えない訳じゃないんだし。むしろ上位の資格だよ」

 

ユーノがそう言うと、コレット達も「へぇ~」と感心頻りだった。

 

「ブラマンシュもテスタロッサも、もうそこそこ魔法が使えるっていうことだな? 出来ればオレにも色々と教えて欲しいんだけど」

 

マリユースがそう言うと、エステルやコレットも大きく頷いた。

 

「ミントで結構ですわ。教えるのは構わないのですが、みなさんはまだデバイスを持っていないのでしたわよね。学校で貸し出してもらえるのでしょうか」

 

「一度先生に聞いてみたらどうかな? あ、それから私のこともフェイトでいいよ」

 

結局食事を終えた後、先生に聞いてみるということで落ち着いた。食後、雑談を続けながらみんなで職員室に向かう。

 

「あ、そう言えば、A組の先生はミントと同じような口調でしゃべる人だったよ」

 

「そうだな。確かにブラマンシュ…じゃなくて、ミントの口調に似ていたな」

 

「あら、興味がありますわね。どんな方ですの? 」

 

「えっと、使い魔の鳥を連れていたな。先生は丁寧な口調なのに、こっちは凄く口が悪い」

 

「うん、オウムだね。色々酷いことを言うんだけれど、まぁ相手がオウムだから仕方ないよね」

 

マリユースとユーノの会話から察するに、A組の先生は随分と個性的な様子だった。イノリ先生と言うのだそうだ。生徒の使い魔はダメでも、先生なら許されるらしい。矢張り命に対する認識が確りできているかどうかということなのだろう。

 

「B組の先生は普通だったよね。名前、なんて言ったっけ? ニャモ先生? 」

 

「ミナモ先生だよ」

 

そんな話をしているうちに職員室に到着した。

 

「失礼します」

 

ユーノが率先して中に入っていく。俺達もぞろぞろと後に続いた。

 

「あら、貴女達まだ残っていたのね。どうしたの? 」

 

声を掛けてくれたのはミナモ先生だった。丁度良かったのでデバイスの貸し出しや魔法練習場の使用許可などについて確認したのだが、返ってきた答えはあまり芳しいものではなかった。

 

「残念だけど、初等科3年になるまではデバイスの貸し出しが出来ないのよ。魔法練習場の使用についても同じ。まずは魔法を使うことに対する心構えをしっかり学習するルールになっているの」

 

魔法学院で実際に魔法を使う場合、最低1年間は倫理と魔法学の授業を受ける必要がある。これは初等科1年で履修すべき学科で、管理局でも定められた必須授業なのだそうだ。そして2年になると今度は魔法理論の授業が始まる。魔法理論は攻撃、防御、移動、補助、回復などの基本的な魔法陣を学習し、構築式の成り立ちを学習するのだ。

 

1年の時に魔法が使えるようになっている生徒は飛び級で3年生以上のクラスに編入することもあるのだそうだが、少なくとも1年生の間は学院の施設内で魔法を使うことを禁止されている。勿論俺やフェイトのように公共の練習場などで練習する生徒もいるらしいので、あくまでも学院内に限ってのことだ。

 

「とは言っても、さすがに念話程度なら大目に見るけれどね。それ以外、特に殺傷、非殺傷の切り替えが必要な魔法はある程度の授業を受けてからでないと、まず使用許可は下りないわよ」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「あ、でも先輩たちの練習風景を見学するのは問題ないわよ。興味があるなら、今度魔法科の先生にも紹介してあげるけれど」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

コレット達3人は殆ど即答だった。先生達は今日はこれから入学式の後片付けや会議などがあるため魔法の練習はまた後日ということになり、俺達は改めてお礼を言うと職員室を後にした。

 

 

 

「じゃぁ、オレとユーノは寮だから」

 

「みんな、また明日ね」

 

「マリユースさんも寮生だったのですね。了解ですわ。ではまた明日」

 

「またね~」

 

校舎の入り口のところでユーノ達と別れて女子4人で公孫樹の並木道を歩く。

 

「ふと思ったんだけど」

 

エステルがそう切り出した。

 

「魔法を使っちゃいけないのって、学院の施設内だけだよね? で、ミントもフェイトも公共の練習場では魔法を使ってる…」

 

「あ、そうか。ミントちゃんとフェイトちゃんの練習に混ぜて貰えばいいんだ」

 

コレットがポンと手を叩いた。

 

「そうですわね。デバイスは取り敢えずわたくしのものをお貸し出来ますし、やってみましょうか。フェイトさんは如何です? 」

 

「うん、私も別に問題ないよ」

 

「さすがに毎日っていう訳にもいかないだろうけれど、時間が取れる時はお願い」

 

「ではリニスさんやアルフさんにも伝えておきませんと。あと、ユーノさん達も明日誘ってあげましょう」

 

「リニスさんやアルフさんって? 」

 

「リニスは私達の魔法の先生だよ。アルフは私の使い魔」

 

「えーっ!? フェイトさん、使い魔いるの!? 」

 

「凄いね!」

 

校門のところまで4人で雑談をしながら歩いた。コレットとエステルは学院前のバス停からバスを使うそうなので、そこで別れる。

 

「じゃぁ、また明日ね」

 

「はい。ごきげんよう」

 

そこからはフェイトと2人で燥ぎながら帰宅した。初日から3人も友達が増えたのは幸先が良い。これからの学院生活も楽しくなりそうだった。

 

 

 

ちなみに帰宅した時には既に映像データの整理やコンバートが全て完了しており、母さま達に拉致られた俺とフェイトは夜まで延々と入学式の映像観賞会に付き合わされることになった。

 




先生方はあくまでもビジュアルイメージと言うことでお願いします。。
お名前だけ借りてきた感じです。。イノリ先生はミントと口調がかぶりますし。。

最近ミントに料理をさせていませんが、描写が無いだけで本人は結構料理を楽しんでいます。。
移転させるとか言ってサボっていますが、そのうち「他愛もない日常のレシピ」もどこかに載せたいなと思っています。。
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