他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第21話 「飛び級」

時が経つのは早いもので、俺達がクラナガン・セントラル魔法学院に入学してから、既に1年近くになる。クラスメートとの関係は全体的に良好だが、特にフェイト、コレット、エステルとの仲が良いのは相変わらずで、A組のユーノとマリユースを含めた6人でつるんでいることが多かった。

 

ミッドチルダに来た当初は例の違法魔導師事件のこともあり、飛び級をしてでも早く魔法技術を身に着けようと思っていたのだが、テスタロッサ家が平和なこの世界ではPT事件は起こらないだろう。となれば焦って卒業を目指すよりも、母さまが言うように友達と楽しく過ごす方が良いに決まっている。

 

いや、その筈なのだが。

 

「僕は飛び級も考えているよ。早めに現場で発掘作業に携わりたいしね」

 

「私も、母さんと一緒に嘱託魔導師の仕事をしてみたいから、飛び級かな」

 

前述の通り今の俺にとって飛び級をするかしないかは然程重要な問題ではなく、あくまでも友人達が飛び級するかどうか次第で決めるつもりだったのだが、特に仲の良いユーノとフェイトは飛び級試験を受ける気満々だった。

 

「オレも出来れば飛び級したいぜ。折角最近いい感じで魔法も使えるようになってきているし、先輩たちに混ざって実技練習はしてみたいしな」

 

「一応倫理と魔法学は修了しているし、2年で履修予定の基礎構築式ももう覚えちゃったから、飛び級の準備は万全だよね~」

 

「私は飛び級試験そのものに興味があるかな。どのくらいの点数が取れるのか、試してみたいわ」

 

マリユースもコレットもエステルも、飛び級に肯定的な様子だ。俺自身も以前ほどの熱意はないものの、友人達と楽しく過ごせるのなら否定する気も一切なかった。

 

 

 

この1年で、コレット達の魔法技術は飛躍的に伸びた。他のクラスメート達も自主的な魔法の練習をしている様子だったが、そうした子達との会話からも魔法関係の知識が向上していることが伺える。初等科1年もそろそろ終わる今、クラス内の話題は専ら魔法に関するものだった。

 

ちなみに、これはDSAA(次元世界スポーツ活動協会)が開催する公式大会の影響もある。毎年7月に地区予選が開催され、その後都市本戦、都市選抜、世界大会と続く大規模な大会は魔法に憧れる少年少女の登竜門と言うこともあり、その時期になると魔法を使いたくてうずうずしてくる生徒が爆発的に増えるのだ。

 

「…10歳になるまでは出場できないんだけれどね」

 

「まぁ、気持ちは何となく判るような気がしますわ」

 

前世的には、高校野球に憧れてテレビ中継に夢中になる小、中学生球児と言ったところか。

 

「こればっかりはねぇ。例え飛び級したとしても、最低あと3年経たないと私たちは出場出来ないから」

 

「でも飛び級さえすれば参加できる試合もあるぜ。学院内の魔法競技大会とか」

 

学院内で開催される魔法競技大会はチーム戦だ。こちらは年齢に関係なく、初等科3年以上の生徒が参加可能である。基本的には陸戦試合陣形でのトーナメント方式で、フロントアタッカー2名、ガードウイング2名、センターガード1名、フルバック1名の計6名で1チームとなる。

 

入学以来よく一緒に魔法の練習をしてきた仲良し6人組は一応全員空戦適性があったのだが、最近はリニスの助言も受け、この陸戦試合陣形で連携の練習も始めている。ポジションとしては近接戦闘を得意とするフェイトとマリユースがフロントアタッカー、中・長距離支援攻撃がメインのコレットと俺がガードウィング、防御・補助系魔法に優れ、司令塔でもあるユーノがセンターガード、そして同じく補助系や若干の回復魔法を操るエステルがフルバックという布陣だ。

 

「折角チーム戦での連携練習もしているんだから、全員で飛び級してチーム組もうぜ! 」

 

結局飛び級の話に逆戻りしてしまった。尤も笑顔で言うマリユースに異論がある訳でもなく、俺達は全員で飛び級試験に挑むことになったのだ。

 

ちなみにクラナガン・セントラル魔法学院の初等科1年生が受験可能な飛び級試験は3段階ある。1段階目は1学年のみスキップするもので、試験の難易度は一番低い。2段階目は一気に3学年をスキップするもので、1段階目と比較すると筆記だけでなく実技も加わり、難易度は段違いだ。そして3段階目はいきなり初等科卒業程度試験及び中等科入学程度試験を受けることになる。

 

3段階目を受験する生徒も極稀にいるらしいが、大抵の生徒は1段階目か2段階目を受験する。これは試験の難易度が非常に高いこともあるのだが、折角入学した初等科を1年で修了してしまうことに抵抗があるケースが殆どであるらしい。

 

「僕は2段階目を受験する予定だよ。本来なら中等科まで一気に行った方が期間的には得なんだろうけれど、5年生はほら、修学旅行があるし…」

 

「そうだね。私も修学旅行には行っておきたいから、受験するのは2段階目だね」

 

「初等科の修学旅行ってどこだ? 」

 

「第12管理世界フェディキアですわ。聖王教会の総本山ですわね」

 

そう、初等科5年だと修学旅行があるのだ。このため2段階目の飛び級試験は例年人気が高いのだとか。但し前述の通り難易度はとても高い。

 

1段階目の試験でも、1年で学習した倫理や魔法学の総決算試験であるだけでなく、2年で学習するはずの魔法理論についても熟知しておかなければならないのだが、これが2段階目だと更に3年、4年で習得する筈だった一般教養と実技を含めた魔法学知識も加わるため、試験も1日では終わらない。

 

「飛び級は良いけれど、みんな勉強の方は大丈夫? 絵に描いた餅とか洒落にならないわよ? 」

 

「エステルの言う通りだよ。給付奨学生だからって、気を抜いていると他の子達に追い抜かれちゃうよ? 」

 

ちなみにエステルとコレットは奨学金制度に申し込んでいないのだが、成績は常に上位の常連だった。俺やフェイトもリニスの教育もあって何とか入学試験の順位前後をキープしているし、ユーノに至っては常に学年首位だ。

 

「あー、やっぱりオレだよな。頑張らないとなぁ…」

 

マリユースも給付奨学生で成績は一応いつも上位10位以内には入っているのだが、常にトップを独走しているユーノとは違って大抵7位~8位ほどなのだ。飛び級試験は入学試験以上に難しい。しかも人気の高い2段階目である。俺達は自らの復習も兼ねた、マリユース学力強化プロジェクトを立ち上げることにした。

 

 

 

当然のことだが、飛び級の試験範囲などは一般に公開されたりすることはない。過去の中等科の編入試験などから出題傾向を推測することは可能だが、ヤマを張るような勉強方法ではいざという時に対応出来ない。

 

「試験には2種類のものがあります。1つは『落とすための試験』で、もう一つは『受からせるための試験』です。入学試験や飛び級試験は前者ですわね。後者は資格試験や魔導師ランク試験などですわ」

 

「そう。最初から定員が決まっていて、受験者のレベルによって合格ラインが変わるものと、逆に合格ラインが決まっていて、それを超えた受験者全員を合格にするものだね」

 

「今回わたくし達が受けるのは『落とすための試験』ですわ。これは『受からせるための試験』とは違って得意分野も苦手分野も同じように伸ばしていかないと合格は難しいですわよ」

 

合格ラインが予め決まっている魔導師ランク試験や資格試験などであれば、苦手分野を捨てて得意分野をひたすら伸ばすことで合格することも可能だが、受験者を篩にかけることが目的の試験では苦手分野の存在は致命的だ。

 

「ちなみにマリユースの得意科目と苦手科目は?」

 

「得意なのは数学と物理と体育だな。苦手というか、不安なのはベルカ語と魔法理論だ」

 

「体育は試験科目にないから取り敢えず忘れても良いよね。ベルカ語と魔法理論はさすがに確り勉強しておかないと。飛び級した後で周りについていけなくなっても困るから」

 

コレットが甲斐甲斐しくマリユースの面倒を見てくれている。魔法理論は2年から、ベルカ語は3年から学習する科目だ。1年生では授業で習うことが無いので、飛び級試験を受ける生徒は概して不安に思う科目でもある。

 

「でも実際に魔法の練習をしている時の発動は確り出来ていますわよね? 何故理論の方が出来ていませんの? 」

 

「考えるんじゃない、感じるんだ」

 

そう言ってストライク・アーツの構えを取るマリユースに、どこの武術家よ、と呆れたようにツッコミを入れるコレット。

 

「大体ベルカ式魔法の適性が高いくせにベルカ語が苦手とか、ありえないでしょ」

 

ここ1年、リニスの協力も得ながらみんなで練習を続けた結果、マリユースが6人の中では一番ベルカ式魔法に適性が高いことが判った。元々格闘技が好きな人に多い魔力を乗せた打撃中心の攻撃をするタイプで、ベルカ式主体のミッド式混合ハイブリッドだ。将来的にはナックルタイプかグローブタイプのアームド・デバイスが欲しいと常々言っている。

 

ちなみにコレットとエステルの適性はミッド式魔法だが、特にコレットは射撃系の魔法を得意とすることからマリユースとの相性も良い。エステルは補助魔法や回復などで、そんな2人をサポートする立ち位置だ。さすがに本格的な練習を始めてから日が浅いため、俺達から見てもまだまだ発展途上なのだが。

 

いずれにしても近接戦闘に特化し、尚且つ使用魔法の大半を感覚で組んでしまっているマリユースは、日頃から使いなれている身体強化や攻撃、防御魔法についても確り構築理論を学ぶ必要があったのだ。逆にこの辺りを得意としているのがユーノやフェイトだ。

 

「ミントちゃんは構築理論の方は? 」

 

「わたくしは自分で勉強するのは問題ないのですが、手持ちの魔法があまりマリユースさんの適性とは合わないので、教師役には向かないのですわ」

 

「あー、じゃぁ私と同じだね。ユーノくんはそう言うの飛び越えて教えるのが上手いし、フェイトちゃんは元々近接のテクニックをいろいろと持っているから」

 

「棒術の型だけならわたくしもやってはいるのですが、確かにフェイトさんは行使する魔法も近接戦闘に役立つものが多いですわね」

 

フェイトが得意とする魔法の中でも、ブリッツ・アクションなどの高速移動魔法は近接攻撃タイプの魔導師には必須だ。

 

「そう言えばミントって、超広域探査魔法を構築しようとしてたよね? あれはどんな感じ? 」

 

「まだまだ先は長いですわね。何しろ基になっている魔法が艦隊戦用ですから、一朝一夕には参りませんわ。ただ構築式を弄るのはパズルのようで結構面白いですわよ」

 

練習場の隅でコレットやエステルとそんな話をしていると、マリユースと練習していたユーノとフェイトも戻ってきた。

 

「ただいまミント。何の話? 」

 

「例の探査魔法のことですわ。なかなか進んでいませんけれど」

 

「あぁ、あれね。元の対象が大雑把過ぎて、コンバートが大変なんだよね…また手伝えることがあったら言ってよ。完成したら僕も使ってみたいし。まぁ発掘調査で使えるかどうかは微妙だけど」

 

「判りましたわ」

 

苦笑しながらユーノに答える。

 

「そう言えばミントが使ってる魔法って独特な構成が多いよね。フライヤーとかパルセーション・バスターとかは特に怖いよ。バインドをかけられたらほぼ回避出来ないのに、下手なプロテクションくらいならあっさり抜いてくるから」

 

「そう言うフェイトさんだって、最近ではバインド発動直前に察知してブリッツ・アクションで回避してしまうではありませんか」

 

「…ミントちゃんの射撃もだけど、フェイトちゃんの機動力も相当だよね」

 

「だけどプロテクションをあっさり抜くって、どんだけ威力が高いんだよ…」

 

「それがさっき言った独特な構成だよ。ミントの使う射撃魔法や砲撃魔法は、普通のものよりも振動数が多く設定されているらしいよ」

 

フェイトの説明に興味を持ったらしいコレット達3人に、重力振動波が空間に干渉する現象について説明した。

 

「えっと…つまり加速度運動で空間にひずみを生じさせて、他の射撃魔法や砲撃魔法を逸らしちゃうっていうこと…? 」

 

「ええ。それでいてこの振動波そのものはソリトンですから、空間歪曲の影響を受けずに直進するのですわ」

 

「あはは…改めて聞くと随分と出鱈目だよね…」

 

「それって、誰でも使えるものなの? 」

 

「砲撃に適性があるなら理論上は誰でも使えますわよ。尤も魔法ランクがAAAですので、本当に誰でも使えるかというと微妙ではありますが」

 

フライヤーにも同じ空間干渉の公式が組み込まれているが、こちらもランク的には同じような物で、フライヤーダンスにもなるとSランク魔法である。ここまで来てしまうと、概ね専用魔法と言ってしまっても齟齬はない。

 

「なあ、それって砲撃じゃないとダメなのか? 」

 

話を聞きながら考えるようにしていたマリユースが唐突に聞いてきた。

 

「どういうことですの? 」

 

「いや、その公式って、防御魔法に組み込めないものかな、って思ってさ」

 

確かに射撃魔法や砲撃魔法を逸らす性質があるのだから、防御魔法にも相性は良さそうに思う。

 

「防御魔法ですか…どうです? トリックマスター」

 

≪It will be possible. However, according to its disposition, it will be ineffectual against Mass weapon.≫【可能です。但し、その性質上、質量兵器に対しては効果が薄いと思われますが】

 

「…だそうですわ。でも急にどうしたのですか? 」

 

「前にアルフさんに模擬戦をして貰った時、バリアブレイクに随分苦労させられたからな。少し強化出来ないかと思ってさ」

 

≪I recommend you to program it as “shield” type or “Field” type. I do not think that this program suits for “barrier” type unfortunately.≫【この術式はシールド系かフィールド系のものに組み込むのが良いでしょう。残念ですがバリアタイプとはあまり相性が良くありません】

 

「え、そうなのか…? 」

 

言われてみれば、攻撃を逸らすということは「受け流す」ことに近い。「受け止める」ことを目的としたバリアタイプの防御魔法とは、そもそも趣旨が異なる。

 

「それならさ、フィールド系の、例えばバリアジャケットとかに組み込んでおいて、バリアを破られた時でも身を躱し易くするのが良いんじゃない? 」

 

≪You are quite correct, Colette. That will be the best solution, I guess.≫【コレットさんの言う通りです。恐らくそれが最善でしょう】

 

この日の成果として、俺達6人のバリアジャケットには「なんちゃってディストーションフィールド」が付与されることになった。

 

 

 

=====

 

そんな事があってから更に数週間が過ぎた。実技だけでなく学科の方の勉強も随分と進めては来たが、そのおかげもあってマリユースの魔法理論も大分板についてきた。

 

「おーう、おはようさん…」

 

廊下で立ち話をしていると、そのマリユースが目の下に酷い隈を作って登校してきた。

 

「顔色悪いよ。どうしたの? 」

 

「ベルカ語の勉強。でもおかげで漸く何とかなりそうな気がしてきたよ」

 

「もう…ちゃんと寝ないと、逆効果だよ? 」

 

コレットに支えられながらフラフラと歩くマリユースの姿は、不謹慎ながら可愛らしいカップルにも見えた。

 

「校内だと魔法は使えないね。フィジカル・ヒールが使えたら良かったんだけど、ごめんね」

 

「あぁ、むしろすまないな、気を使わせて」

 

申し訳なさそうに言うエステルにそう返すと、マリユースはコレットに支えられたままA組の教室に入って行った。

 

実はベルカ語の勉強に当たっては、俺自身が相当の苦労をしていたので気持ちは判らなくもない。テレパスファーの影響で翻訳魔法を常時発動させている俺はベルカ語を「聞くことが出来ない」ため、当初発音方法が全く判らなかったのだ。

 

「わたくしに比べたら、まだ取っ掛かりがある分、覚えるのも早いと思いますわよ」

 

「そっか、ミント一時期大変だったもんね」

 

フェイトが苦笑交じりに慰めてくれる。正直ベルカ語の勉強ではクリスティーナさんやフェイト、リニスにも随分とお世話になった。ただ特訓の甲斐があって翻訳魔法のオン・オフ切り替えは結局出来ないままだったものの、単純な発音については漸くベルカ語として聞き取ることが出来るようになったのだ。

 

「実際、泣いてたよね。比喩じゃなくて、本当に」

 

「そうなの!? ミント、そんなこと一言も言っていなかったから…」

 

「そんな恥ずかしいこと、言えるわけありませんわ! 」

 

自分の顔が真っ赤になっていることを自覚しながら腕をブンブンと振り回した後で、ユーノが笑っていることに気付いた。

 

「もう! からかっていましたのね」

 

「ごめん、そう言うつもりじゃなかったんだけど」

 

苦笑しながらユーノが弁解した所で丁度予鈴が鳴った。A組からコレットが戻ってくる。

 

「なあに、ミントちゃん痴話喧嘩? 」

 

「コレットさんに言われたくありませんわ…」

 

脱力した俺はユーノに「また後で」と告げると、フェイト達と一緒にB組の教室に入った。

 

 

 

その日の夕方、結局マリユースは授業が終わった後に倒れてしまい、ユーノが学生寮まで連れて帰った。

 

「もう、無理するから」

 

「でもまだ試験本番まで1週間あるのが不幸中の幸いでしたわね。これが試験前日だったりしたら、目も当てられませんでしたわ」

 

「コレット、心配なら学生寮の方に行ってみたら? 」

 

「…うん、そうする」

 

エステルに促され、コレットは小走りで寮の方に向かった。コレットの姿が見えなくなると、エステルが振り返る。

 

「ミント、今日トリックマスターは? 」

 

「鞄の中ですわ。どうかされました? 」

 

「ちょっと持ってきてくれるかな? フェイトも行くよね? 『お見舞い』」

 

「うん、勿論」

 

嬉しそうに答えるフェイトを見て、軽くため息を吐きながら帰り支度を整える。そう言えばフェイトには前科があったな、と考えながら鞄からトリックマスターを取りだすと、エステルに手渡した。

 

「エステルさん、これは『お見舞い』じゃなくて、『覗き見』ですわよね? 」

 

「まぁ、そうとも言うかもしれないわね」

 

「全く…あまり良い趣味とは言えませんわよ? 」

 

「そう言うミントも、顔が緩んでるわよ」

 

正直、全く興味が無いわけでもない。女子3人で怪しく笑い合うと、足音を忍ばせながら男子寮の方に向かった。

 

 

 

「学院の敷地内で魔法が使えないことを、ここまで悔やんだことは無いわね」

 

「それは言いすぎですわ。でも確かに認識阻害くらいは使いたいところですわね」

 

「2人ともダメだよ。敷地内で魔法使ったら、すぐにばれちゃうよ」

 

隠密行動をするための魔法でも、敷地内で使用すれば検知されてしまう。魔法学院内とはいえ基本的には街中と同じで、念話程度の魔力を殆ど使用しないもの以外は許可制になっている。しかも使用出来るエリアもある程度は決まっているので、フェイトが言うように認識阻害魔法を使うことによって、却って認識されてしまうという矛盾した結果になってしまうのだ。

 

マリユースの部屋はユーノと相部屋になっていて、以前何度か遊びに来たことがあった。間取りは熟知している。部屋のドアは少し開けたくらいならベッドの方からは見えにくい筈だ。尤もその分、入口のところからも中の状況が判り難いのだが。

 

<念話だけなら感知される心配もないし、ここからは念話で>

 

<了解ですわ>

 

<うん、判った>

 

エステルが部屋のドアを開けようとした瞬間、内側から勢いよくドアが開いた。ガン!という音が盛大に響き渡る。

 

「~~~!! 」

 

エステルが頭を押さえて蹲る。どうやらドアの直撃を受けたらしい。

 

「あれ? みんなどうしたの…って、エステル!? ごめん、ぶつけちゃった? 」

 

出てきたのはユーノだった。

 

「だ…大丈夫。そんなに痛くなかったから」

 

言葉とは裏腹に目に涙を浮かべながらエステルが立ちあがる。

 

「マ、マリユースさんのことが心配で、みんなでお見舞いに来たのですわ」

 

「そう、そうだよ。お見舞いに来たんだよ」

 

俺とフェイトが咄嗟に言い訳をまくしたてると、ユーノはにっこり微笑んだ。

 

「丁度コレットも来ているから、中で待ってて。僕はちょっと氷嚢に入れる氷を買いに購買部に行ってくるから」

 

ユーノが立ち去った後、恐る恐る部屋に入ると、恐らく全てを察していたのであろうコレットがとても素敵な笑顔で俺達を待っていた。平身低頭で謝る俺達に無言で黒い笑みを浮かべるコレット。

 

「お前ら、一応オレ病人なんだからさ…少し自粛してくれない? 」

 

 

 

=====

 

マリユースはその後2日と待たずに完全復活した。

 

ちなみに飛び級試験については全員ちゃんと合格したことをここに記しておく。

 




今回は本当に筆が乗りませんでした。。
一生懸命書こうとしていたのですが全然進まず、金曜日の夜時点で半分も書きあがっていませんでした。。
何とか予定時間内に書きあがりはしましたが、いつも以上にグダグダになってしまった気がします。。

先日久し振りに日間ランキングに載っていました。。
いつもいつもみなさまのご愛顧には感謝頻りです。。本当にありがとうございます。。

今後ともぜひよろしくお願い致します。。
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