俺の目の前には、珍しく困ったような表情を浮かべるリンディさんがいた。その隣には憮然とした表情を浮かべたクロノもいる。
「それは…本当なら随分と厄介ね。レアスキルのようなものなのでしょうけれど…」
「出来れば誰にも言いたくはなかったのですが、リンディさんやクロノさん達がテロ組織を追う以上、留意しておかなければ命に関わることですわ」
それはルル・ガーデンに関することだった。リンディさんとプレシアさんにたっぷりとお説教を受けた翌日、俺は改めてテロ組織構成員についての情報提供という名目で、本局での聴取を受けることになった。この時散々悩んだ挙句、結局リンディさんとクロノにルルの容姿と名前、そして死をもたらす呪いを操ることを伝えることにしたのだ。
それは俺しか伝えられないことではあるが、俺が説明するのはこの上ない危険を伴うことだった。何しろどこまで話せば呪いが発動するのかが全く判らないのだ。本来なら誰にも言わずに自分だけで決着をつけるのが理想なのだが、ルルだけならまだしも相手は組織だ。まだギリギリ8歳手前の幼女1人の手におえるような問題ではない。
一方、時空管理局は組織をあげてテログループを追っている。しかも現場担当であるクロノ達は今後、俺よりも先にルルと接触する可能性が高い。そしてルルは追い詰められれば平気で呪いの言葉を口にするだろう。心構えが出来ているのといないのとでは雲泥の差があるのだ。
「だが君の情報が正しいということを証明することができるものが何もないのも事実だ」
「勿論それは重々承知しておりますわ。わたくしもあの女性が死の呪いを使うということだけしか判りませんし」
何しろ実証するということは転生について詳しく説明することに他ならず、その説明をした時点で確実に1人はお亡くなりになってしまうのだ。そんな実証は頼まれたとしてもやりたくはないし、これから先ずっと口にするつもりもない。
だがそれでは説明に説得力を欠いてしまう。俺は呪いが暴発してしまう可能性も考慮し、今回リンディさんとクロノの2人同時に話をすることにした。これは以前アレイスターさんが「不特定多数の人間に対して発言した時は呪いは発動しなかった」と教えてくれていたためだ。対象を1人に絞ることで暴発の可能性が高まるのなら、そのリスクは出来るだけ減らしておきたかった。そしてその状況下であっても核心まで話すつもりは無かったのだ。
「でも嘘の証言をすることでミントさんにメリットがあるとは考えにくいわ。ひとまず1つの情報として、留意しておきましょう」
「了解です、艦長。ですが、さすがにこのような話は武装隊にする訳にはいきませんね。彼らの不安を煽ることになります」
嘘は確かに言っていない。話していない情報があることは事実だけれども。いずれにしても、元々確証のない情報だ。落としどころとしては妥当だろう。
「…ミントさんの証言から、テロ組織の内部でも死の呪いを扱うことが出来る人間は限られているか、或いはルル・ガーデンという女性1人だけだと推測出来るわ。彼女はその力を使って地位を得たと言っているのでしょう? 」
「ええ。確かにそう言っていましたわ」
「でもそうすると彼女の目的は何なのかしら? 組織のトップに上り詰めることではないみたいだけれど」
確かに組織そのものを束ねることが目的であれば、彼女は邪魔な人間を悉く殺して、とっくにトップの座に収まっていることだろう。だが実際にルルと話した限りではそうなってはいない様子だったし、何より彼女はあまり組織を取り纏めることに興味を持っているようには見えなかった。
「さすがに何を考えているのかまでは判りませんでしたわね…」
「ここで僕たちが頭を悩ませても、推測以上の結論は出ないだろう。だったら実際にそのルル・ガーデンという女性と出会った時にどういう対応をするべきなのかを考えた方が良い」
「そうね。確かにその方が建設的だわ」
普通に殺しても転生してしまう筈なので、俺にはルルを殺すという選択肢がない。これを転生話抜きでクロノ達に説明するのは困難かと思われたが、幸いクロノもリンディさんも、最初からルルを殺す心算は無い様子だった。さすがは時空管理局局員というところだろう。
「当たり前だ。そもそも殺害以前に、事情も聴かずにいきなり被疑者を攻撃出来る訳ないじゃないか」
「ですが事情なんて聴いていたら、その場で呪いをかけられそうですわね」
「局員として正当に対応しようとすると自分の身が危ない。かといっていきなり攻撃するわけにもいかない…本当、厄介ね…」
リンディさんがふぅと溜息を吐いた。
「ところで…その、最後まで残っていた3人の男性は…? 」
「彼らなら拘置所だ。黙秘を続けているが、仮に喋ったとしても重要な情報を持っているかどうかは疑問だな。ちなみに全員魔導師じゃぁなかったよ」
何故リンカーコアすら持たない男達が自分の命すら危ない状況で俺にちょっかいをかけてこようなどと思ったのか不思議だったのだが、俺が囚われていた部屋のすぐ下の階層で対爆カプセルが発見されたのだそうだ。どうやら自分達だけはちゃっかり生き残る予定だったらしい。
手籠めにされそうになった立場からすれば腹立たしいことこの上ないが、落ち着いてよく考えてみれば多少なりとも人間らしいところが見えて安心もした。「自分たちの行為こそが正義であり、死をも恐れずにテロ活動を行う」ような狂信者とはできれば関わり合いにはなりたくないのだ。
「そう言えば、ルル・ガーデンにも魔力は特に感じませんでしたわね」
「それって、リンカーコアが無いってこと? それなのにレアスキルが発動できる…別の場所から魔力供給を受けているのかしら? それとも発動にはそもそも魔力が必要ない…? 」
改めて聞いたところ、リンカーコアを持たないにも関わらずレアスキルだけを持っているケースは極稀に存在するのだそうだ。尤もレアスキルを発動するための魔力を自身で生成できないため、殆どの場合は何の役にも立たずに終わるのだとか。
「周囲に膨大な魔力が溢れている時に、その魔力と反応してレアスキルが発動したっていう事例が過去にあったみたいだけど…今回は判らないわね。死の呪いは任意で発動出来るみたいだし」
「それこそ今考えても判りませんよ」
クロノがため息交じりにリンディさんに言った。
結局この日は良い打開案は出てこなかったが、細心の注意を払ったおかげか、クロノやリンディさんに呪いが発動することも無かった。これはこれで1つの前進である。
(今回はリンディさん達が無防備に呪いを受けることが無くなっただけでも良しとしましょう)
トリックマスターを再起動して家路につく。話す内容が内容なので、念のためスリープモードになって貰っていたのだ。当然ログも残していない。
≪Good morning, master. I am bit hungry.≫【おはようございます、マスター。少しお腹が減りました】
「もう夕方ですわよ。っていうか、貴女のお腹が減る訳ないでしょう」
≪I am in adolescent to say that.≫【言ってみたいお年頃なのです】
「お年頃って…中等部2年生とかではないですわよね? 」
≪Sorry, I cannot understand what you mean.≫【意味が良く判りません】
そんな風に雑談をしながら帰宅してドアを開けるとカレーの良い匂いが漂ってくる。
「あ、ミントお帰り。聴取お疲れさま」
「ただいま戻りましたわ。夕食の支度を任せてしまってすみません」
「いいよ。母さんやイザベルさんも楽しみにしててくれたし、リニスも手伝ってくれたから大丈夫」
居間にはプレシアさんとアルフもいた。学校からの連絡を受けてすぐに飛んできたイザベル母さまも一緒にソファに座っている。リニスは台所でフェイトの手伝いをしており、サリカさんももうすぐ帰宅するだろう。みんな笑顔だ。ルル・ガーデンのことを考えると不穏なことばかりだったが、今くらいは俺も一緒に笑っていたい気分だった。
=====
波乱の修学旅行が終わるとDSAAインターミドルの予選が始まり、更に立て続けに夏季休暇に入るため生徒達のテンションも急上昇だ。飛び級組は殆どが10歳に満たないためインターミドルへの出場資格は無いのだが、それでもテレビ中継などで試合を見て盛り上がったりする。
だが今年、俺達仲良し6人組は別の話題で盛り上がっていた。
「えっと、ユーノは中等科卒業程度試験を受験するんだよな? 」
「出来るだけ早く発掘や調査の仕事に携わりたいからね」
「あとフェイトちゃんも受験するって言っていたよね? 」
「うん。早く母さんと一緒に嘱託の仕事をしてみたいから」
ユーノとフェイトは以前から公言していた通り、中等科卒業程度試験を受験する予定だ。合格すれば2人共今年度限りで学院を卒業することになる。コレット、エステル、マリユースの3人は中等科は飛び級せず、普通に3年を過ごす予定らしい。その一方で俺はと言えば、目標がブレまくっていた。
当初原作に介入する気満々だった俺は、魔法学院の課程は最短で修了させるつもりでいた。だがこの世界でPT事件が発生する可能性が限りなく低いことを知り、それなら友達と一緒に楽しんだ方が良いだろうということで、のんびり学生生活を満喫することを考えた。
そんな俺が飛び級試験を受験したのは、結局仲の良い5人の友人たちが全員飛び級試験を受けることを決めたからだった。本来ならこのまま中等部に進学して、残り3年の学院ライフを満喫するつもりだったのだが、転生者であるルル・ガーデンと出会ったことで、今後の進路について悩む羽目になってしまった。
ルルがテロ組織に所属している訳ではなく、死の呪いについても平気で使うような人間でなければ、友人として上手くやっていけたのかもしれないが、彼女は既に時空管理局に追われる犯罪者である上、人を殺すことに何の躊躇いもない。
(これが普通の犯罪者なら、管理局に任せてのんびりと過ごしていればよいのですが…さすがに死の呪いがあると判っていてクロノさん達に死んで来い、とは言えませんわね)
だが全ての事情を話せない中で、まだ学院を卒業すらしていない俺を戦闘に加えるようなことは、彼らは絶対にしないだろう。まぁ仮に卒業していたとしても、理由も聴かずに俺1人に戦闘を任せてくれるとも思えないが。
(いずれにしても一度本格的に敵対したら学院どころではなくなってしまうでしょうし、矢張り卒業はしておいた方が良いですわね)
「ミント? どうしたの? ぼーっとして…」
エステルの呼びかけにハッと我に返った。随分と長いこと思考の迷路にはまり込んでしまっていたようにも思ったが、実際にはほんの数分のことだったようだ。
「ぼーっとしているように見えましたか? 進路をどうするか考えていたのですが」
「目を開けたまま眠っているのかと思ったわ。で、結局ミントはどうするの? 」
「そうですわね…やっぱり中等科卒業程度試験、受けてみようと思います。ユーノさんやフェイトさんのように、明確な目的がある訳ではありませんが」
卒業後にどうするのかも、これから考える必要があった。例えば、今現在ルルがどこにいるのかを俺は知らない。それを調べるとしても何をどうすればいいのかすら判らなかった。おまけに彼女はテロ組織に属している。以前会った時は魔力こそ感じなかったものの、当然のように質量兵器で武装しているだろうし、仲間だっている。こちらが1人で出来ることなどたかが知れているのだ。
だからと言って全てを管理局任せにして、万が一呪いによる死者が出てしまったら、俺はずっと後悔するだろう。だから嘱託でも何でも、テロ組織と敵対している管理局とは協力する態勢が必要なのだ。
「ミントちゃんも卒業試験かぁ。大分寂しくなっちゃうね」
「別に、永遠に会えなくなるわけじゃないわよ。リニスさんに貰ったデバイスで通信も出来るしね」
「それにもしかしたら、将来同じ職場で働くことになるかもしれないぜ? 」
マリユースとコレットは中等科卒業後は管理局に入局するつもりらしい。エステルは更に学院に残って修士資格を取得するつもりなのだとか。
スクライアとして発掘、調査の仕事に携わる予定のユーノはともかく、既に入局を決めているフェイト達3人は一緒に仕事をすることになるかもしれないし、俺やエステルも絶対に入局しないとは限らない。
「まぁ、将来的にもし同じ職場で働くことになったら、その時はまたよろしくお願いしますわね」
=====
それからの半年はあっという間に過ぎた。次元世界のニュースも意識して見ていると爆破テロの話題もそれなりの頻度で発生していることが判った。時空管理局も頑張って対処してくれている様子ではあるのだが、相変わらずの人手不足の所為か、なかなか収束する気配はない。
「3日前はヴァイゼンでテロがあったみたい。犠牲者は100人近いんだって」
「負傷者を含めたら1000人を超えるそうよ」
爆破テロとしてはかなり大規模だったらしく、連日テレビなどで放送されている。不思議なのは、このテロ組織が爆破テロを行っても、犯行声明を一切出さないことだ。このためこの組織が何のために爆破テロを続けているのか、全く判っていないらしい。
「さすがにミッドチルダに入ってくるのは管理世界の情報ばかりだけれど、彼らは管理外世界でも爆破テロをやっているらしいよ」
「管理外世界じゃぁ、管理局は動けないよね。どうやって対応するの? 」
「特に何もしないんだとさ。っていうか、何も出来ないらしい。管理外っていうことは魔法技術も無いんだろうし、仕方ないと言えば仕方ないけどな」
テレビのモニターが、瓦礫にまみれたヴァイゼンのテロ現場で泣き叫ぶ子供を映し出していた。年齢は恐らく俺達と同じか、もう少し下くらいだろう。
「…居た堪れませんわね」
「ご両親を亡くしてしまったのかも」
画面の中にはこの子供だけでなく、怪我をして搬送されていく人達や力なく座り込んで項垂れる人達の姿もある。
「…私、頑張るよ。こういう人達も笑顔で暮らせるように、嘱託魔導師として頑張ってみる」
フェイトがそう言って拳を握りしめると、コレットとマリユースも力強く頷いた。
フェイトは先日嘱託魔導師試験を受験して、見事合格している。リンディさんの口利きもあって、卒業後はプレシアさんと一緒にアースラで働くのだそうだ。コレットとマリユースはこれから中等科に進むことになるが、そちらを卒業するまでには嘱託資格を取得する予定だそうだ。
「中等科に残る私達としては少し寂しいけれど、フェイトもミントもユーノも、卒験に合格出来て良かったわ。おめでとう」
「ありがとうございます。エステルさんはこれから中等科と修士課程ですわね。頑張って下さいませ」
フェイトとユーノ、それに俺は一緒に中等科卒業程度試験を受験し、3人揃って合格した。クラナガン・セントラル魔法学院に通うのも3月までと言うことになる。今は1か月後の卒業を待つばかりだ。
「そう言えば、ユーノは卒業したらどうするんだ? すぐに部族のところに帰るのか? 」
「そうだね。でも一旦帰って準備を整えたら、もう一度ブラマンシュに行こうと思っているんだ」
こちらを伺うような感じでユーノがマリユースに答えた。
「初耳ですわね。何故急にブラマンシュに? 」
「あれじゃね? 『お嬢さんを僕に下さい』ってやつ」
スパーン! と音がして、マリユースが蹲った。エステルの手にスリッパが握られているから、恐らくあれで叩かれたのだろう。
「マリユースさん…いくらなんでも、8歳でその展開は無いと思いますわよ? 」
そう言ってユーノの方を見ると、思いっきり赤面していた。どうやらかなり意識してしまった様子だ。それに気付いた途端、こちらも気恥ずかしさがこみ上げてくる。
「いや、そうなったらいいなとは思うけど…って、そうじゃなくて! 以前調査していた遺跡の追加調査をしてみたいんだよ」
「追加調査? ユーノさんお1人でですか? 」
「うん。実際には調査っていうよりは自己満足の確認なんだけれどね。以前、僕がブラマンシュにあった筈の次元干渉型ロストロギアについて話をしたの憶えてる? 」
「ええ。フェディキアに行った時に伺いましたわね」
フェイトも一緒に3人で教会堂を見学していた時に、少し話を聞いたのを憶えていた。スクライア一族が調べた文献に記載されていたロストロギアを結局発見できなかったという話だ。確か、文献が記された後で、保管場所が変わった可能性があるという話だったか。
「普通なら保管場所が変わればそういうことも追記されたり、別の文献に記載されたりするものなんだけれどね。まぁ文献自体が古いものだし、色々な理由で消失しちゃっていることも珍しくないから」
ユーノが言うには、そういったロストロギアを移動させるには何らかの理由がある筈で、実際に現地で「誰が」「何時」「何故」「どのように」「どこへ」といった事柄を想像し、検証していくのがとても楽しいのだとか。
「ユーノくんって、根っからの考古学者だよね」
コレットの苦笑交じりの言葉に全員で頷いた後、何故か急に可笑しくなって俺達は暫くの間みんなで笑いあった。
「こうやって笑いあえるのも、考えてみたらあと1か月だけなんだね」
「そこ! センチになるの禁止! 」
「まぁ、オレらはまだあと3年あるしな。でも折角だからあと1か月は6人全員で楽しもうぜ」
「あ、ミントちゃん! 近いうちに、この前食べさせてもらったクリームパスタの作り方、教えて欲しいんだけど」
「構いませんわよ。ではまたみんなでお泊り会でもやりましょうか? 」
「うん、是非! 」
俺達の学院生活最後の1か月は、こんな調子でいつも通り過ぎて行った。
=====
「みんなが急にいなくなっちゃうのは寂しいわね」
卒業式を終えた日の夜、夕食の席でサリカさんがそう呟いた。
「わたくしも寂しいですわ。もう2年半、お世話になっていた訳ですし」
「何だか私の方がお世話になってた気もするけどね。フェイトちゃんは明日出発だっけ? 」
「はい。アースラが明日出航するので、その時に。長い間本当にお世話になりました」
頷くフェイトの隣にはリニスとアルフ、それにプレシアさん。今回は偶々アースラの寄港スケジュールと学院の卒業式が一致したため、プレシアさんは大喜びで出席したのだ。
「本当に色々と面倒をかけてしまってごめんなさいね。でも本当に助かったわ。どうもありがとう」
「いいえ、こちらこそフェイトちゃんにもリニスにも助けて貰いましたから。勿論、アルフちゃんにも」
プレシアさんとサリカさんによるお礼の応酬を聞きながら、ふと右隣に目をやるとユーノと目が合った。ユーノも明日、スクライア一族のところに戻るのだが、学生寮の部屋は卒業と同時に返還している。本人は今夜はホテルにでも泊まるつもりだったようなのだが、サリカさんとイザベル母さまによって拉致されたのだ。
そのイザベル母さまは俺の左隣で微笑んでいた。俺と母さまはもう1週間だけクラナガンに滞在し、その後ブラマンシュに帰る予定だ。例の臨海エリアの店で、醤油と味噌、出汁の素を大量に買い込んで、ブラマンシュに送ってからの出発になる。
「イザベルさんとミントちゃんは、もうちょっといるのよね? 」
「ええ。出発は1週間先ですわ」
「ブラマンシュに帰っちゃった後でも、またいつでも遊びに来てね」
「勿論ですわ。でもコレット達も結構頻繁に遊びに来るようなことを言っていましたわよ」
学院から近いことや、何度もお泊り会を実施して仲良くなったこともあり、コレットやエステル、マリユースも時々サリカさんのところに遊びに行きたいとお願いしており、サリカさんもそれを快諾していた。
「サリカさんも、またブラマンシュに遊びに来て下さいませ。今度はアルフレッドさんやクリスティーナさんも一緒に」
「そうね。また是非行かせてもらうわ」
その翌日、出航するアースラの見送りに本局のポートを訪れた。
「ミント、いろいろありがとう。また連絡するね」
「フェイトが本当にお世話になりましたね。何かあればいつでも連絡して下さい。出来る限り力になりますから」
「ミントとは結構気が合うし、一緒にいてあたしも楽しかったよ。じゃぁ、またね」
フェイト、リニス、アルフが口々にお別れの言葉を述べてくるのだが、それと同時にそれぞれが念話で語りかけてくるのだ。
<ミント、ユーノと幸せにね>
<ユーノは稀にみる優良物件ですよ。絶対にものにして下さいね>
<結婚式には呼んでおくれよ>
みんな気が早すぎである。苦笑しながらそれぞれに<わたくし達はまだ8歳ですから!>と返しておいた。恐らく顔は真っ赤だったのだろう。隣にいたユーノ本人に心配されてしまうレベルだった。プレシアさんとイザベル母さまは確り判っていたようで、生暖かい笑顔を向けてくれていた。
「そろそろ時間だな。じゃぁ行こうか」
クロノがそう言った時に、ふと頭にひらめくものがあり、俺は胸元のリボンを1本解いてフェイトに手渡した。
「思い出にするとかではありませんが、フェイトさんに持っていて貰いたいのですわ」
「ありがとう。じゃぁ私も」
そう言ってフェイトは髪を束ねていたリボンを解いて手渡してくれた。
「また近いうちに会おうね」
「ええ、必ず」
アースラに乗り込むフェイト達を、手を振って見送ると、クロノが念話を送ってきた。
<例の女性のことで、何か判ることがあればいつでも連絡してくれ。S2Uの識別コードは教えてあったな>
<ええ、存じておりますわ。クロノさんも航海お気を付けて>
<ああ、ありがとう>
こうしてアースラは再び次元航行の旅に出て行った。
「…行っちゃったね」
「ええ。次はユーノさんの番ですわね」
「うん…」
「ユーノさん、暗いですわよ? どうせ1週間後にはまた会うのですから、ここは明るく手を振るところですわ」
「そっか、そうだよね。すぐ会えるんだから」
そう言いながら、ユーノは微笑んだ。その微笑みを見た時、何故だかどうしようもなく、ユーノのことを愛おしく思ってしまったのだ。
「じゃぁ、ユーノさん、1週間後に」
そう言うと、俺はすっとユーノの横に回り込んで、彼の頬にチュッとキスをした。
「ミミっ、ミント!? 」
「ですからこれは耳ではなくて、テレパスファーですわ」
その後ユーノは元気よく手を振りながら次元航行船のゲートに消えて行き、俺は満面の笑顔の母さまと一緒に真っ赤な顔をしながら帰宅した。
その後トリックマスターがそのシーンを動画記録していたことが発覚し、悶死している俺を余所に、サリカさんとイザベル母さまはきゃいきゃい言いながら何度もその動画を観続けていた。
前回の流れを断ち切って、結局日常回にしてしまいました。。
でもこれで概ね準備が完了しました。。
次回を第2部最終話にできるかどうかは書いてみないとわかりませんが、文字数が多くなりすぎるようなら途中で切るかもしれません。。
引き続きよろしくお願いいたします。。