他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第27話 「襲撃」

最短距離とはいえ、狭くて暗い坑道の中を飛ぶのは注意が必要で、出口に辿り着くまでに30分程の時間がかかってしまった。坑道から出て、遺跡上空を飛行する俺達の目に飛び込んできたのは、ブラマンシュ集落から立ち上る炎と黒煙だった。

 

「集落が…燃えていますわ! 」

 

集落の広場の辺りに強行着陸したと思われるシャトル2機も見える。襲撃されたのはほぼ間違いないだろう。

 

「連絡を受けてすぐに湖の方に避難するよう伝えておいたんじゃが、今は念話が通じんな。デバイス通信もあれから使えんようじゃ」

 

長老の言葉を聞いて、俺も母さまに念話を飛ばしてみる。

 

<お母さま! 大丈夫ですの!? お母さま! >

 

こちらも矢張り返事は無かったが、フェディキアで感じたような、何かに念話を阻害されているような感覚があった。

 

「…AMF発生装置ですわね。修学旅行の時と同じですわ」

 

あの時はユーノがマリユースと一緒にAMFの発生を止めた筈だ。ただ2機あるシャトルのどちらに装置が搭載されているのか判らない状態で無闇に突っ込むのは無謀だろう。場合によっては両方のシャトルに複数の装置があるかもしれないのだ。

 

「さすがに今回は人手が足りな過ぎるね。AMFを止めるんじゃなくて、それを上回る出力での魔法行使を考えた方が良いと思うよ」

 

ユーノがこちらの考えを読んだかのようなタイミングでそう言った。

 

「AMFを使ってくるということは、相手はまた非魔導師なのでしょう。質量兵器には注意が必要だとは思いますが…いずれにしてもお礼は確りとさせてもらいますわ! 」

 

不安と焦りに押しつぶされそうになりながらも、自らを鼓舞するために敢えて声に出してみた。普通に飛んで15分程度の距離がとてつもなく長く感じる。錫杖形態のままになっているトリックマスターの柄を握りしめる手にも自然と力が入った。

 

≪I will support you, master. Do not worry, and please act as usual practice.≫【サポートします。今までの練習通りに動けば大丈夫です】

 

「ありがとうございます、トリックマスター…参りますわよ! 」

 

≪Sure.≫【了解】

 

 

 

集落まであと少しというところで、急に高機動飛翔の制御が乱れた。AMFの効果範囲に入ったのだろう。魔力を多めにつぎ込み、何とか体勢を整えて着地するとそのまま走って集落に向かう。ユーノが何か叫んだような気がしたが、聞き返しているような余裕は無かった。

 

ブラマンシュの集落では殆どの家が遊牧民のテントのような作りになっているのだが、今その家々は半分近くが業火に包まれていた。いくつかの家をなぎ倒すような形でシャトルが着陸している。何人か見張りのような人間がいるようだが、集落の人達の姿はない。恐らく長老が指示してくれた通り湖の方に避難しているのだろう。

 

「ガキが1人! 足元を狙え! 」

 

無策にいきなり入り口から飛び込んでしまったため、あっさりと見張りに見つかってしまった。続けてパンパンと乾いた音が聞こえる。それと同時に走っている俺の足元で地面が小さく爆ぜた。地面は完全に舗装されている訳ではないのだが、石畳部分に当たると跳弾の恐れもある。

 

「っ! 」

 

足を何かが掠めたような感触があったが、痛みは特にない。バリアジャケットは展開しているものの、「なんちゃってディストーションフィールド」の所為で物理攻撃に対して強度があまりないことを今になって思い出し、俺は近くのまだ無事な家の陰に飛び込んだ。ユーノと長老はいつの間にか見当たらなくなっていた。さっき何か叫んでいたのは、別行動を取るつもりだったのだろう。

 

「トリックマスター、フライヤー6基展開! 」

 

≪All right. "Fliers" are ready.≫【了解。『フライヤー』準備完了】

 

いつもより魔力消費が激しいが、この程度なら未だ大丈夫と自己判断する。銃撃は止んでいた。恐らく家の陰から出てきたところを狙うつもりなのだろう。

 

(相手はAMFを使っている…ならこちらの魔法に対しては警戒心が薄れている筈ですわ)

 

俺はトリックマスターを強く握り締めると、すーっと息を吸い込んだ。

 

「『マニューバラブル・ソアー』! 」

 

高機動飛翔で建物の上から飛び出すと、フライヤーを散開させた。

 

「な!? こいつ魔法が使えてるぞ! フィールドは如何した! 」

 

「正常に稼働中です! 使える筈は…」

 

「ちっ! 構わん! 撃て! 」

 

シャトルの周りにいるのは男が5、6人。その男達が俺に向かって銃を構えるが、その時点で既に俺は太陽を背にしていた。以前違法魔導師にやられたのと同じ戦法である。立て続けに発砲音が聞こえるが地上から上空の、それも移動している対象に狙いをつけるのは困難な筈だ。

 

「丸見えですわよ…お行きなさい、フライヤー達」

 

6基のフライヤーが発射した直射弾が次々と男達を撃ち抜いていく。「ぎゃっ」とか「ぐあっ」とかの悲鳴が上がり、男達は武器を取り落した。

 

「非殺傷設定ですわ。良かったですわね、気絶するだけで済みましたわよ」

 

≪Caution. Another group is also aiming at you.≫【警告。別の集団がマスターを狙っています】

 

「了解ですわっ! 」

 

もう1機のシャトルの陰から今度はパンパンという発砲音の他に、タタタタタタというマシンガンのような音も聞こえてくる。ロールで回避しながらアクティブ・プロテクションを生成し、数発の銃弾を受け止めた。

 

前世でも本物の銃の発砲音など聞いたことはなかったのだが、人の命を刈り取る道具であるにも関わらず、その軽い音はまるで玩具が音を立てているかのような錯覚に陥る。

 

「一気に決めますわよ。トリックマスター! 」

 

≪All right. "Flier Dance".≫【了解。『フライヤー・ダンス』】

 

シャトルの陰に隠れていた男達を空色の光が薙ぎ払う。一瞬の後、そこには気を失った男達が倒れ伏していた。

 

「…あっけないですわね」

 

俺は警戒しながら着地すると、男達が取り落した銃器を拾い集め、まだ無事だった家の中に放り込んでおいた。その後倒れている男達をひとまとめにしてチェーン・バインドで縛り上げる。

 

≪Caution. Magical power has been detected in the air behind you.≫【警告。背後空中に魔力反応を感知】

 

「え…後ろ!? 」

 

銃声が聞こえたのと振り向くのはほぼ同時だった。ギンッというような音と共に、俺の手からトリックマスターが弾き飛ばされた。

 

「トリックマスター! 」

 

≪Device core has been shot. Damage report... Casting support 3% down. Communication function disabled. Self-repairing has been started.≫【デバイスコアに命中。ダメージ報告…詠唱支援3%低下。通信機能使用不可。自己修復を開始します】

 

慌てて駆け寄り、錫杖形態のトリックマスターを拾い上げる。2発目、3発目の射撃が外れたのは運が良かったとしか言えないだろう。

 

「大丈夫ですの!? 」

 

≪The damage is not so serious. I can keep constructing your barrier jacket. However, it may take few days to use telecommunication function. Casting support function should be repaired preferentially.≫【ダメージは然程深刻ではありません。バリアジャケットの構築維持可能。但し遠距離通信機能の回復には数日かかりそうです。詠唱支援機能の回復を優先させます】

 

「その程度なら許容範囲ですわ」

 

トリックマスターを握り直すと、空中の人影を睨みつけた。4発目の射撃をアクティブ・プロテクションで受け止めると、高機動飛翔の呪文でこちらも空中に舞いあがる。

 

「後ろから不意打ちとは随分と紳士的ですわね」

 

目の前の男にそう言い放った。他の見張り達と違って明らかに魔力反応がある。全体的に黒っぽいバリアジャケットを身に纏ってはいるものの、手にしているのはデバイスではなく拳銃。先程実弾を撃っていたことから、拳銃は質量兵器だろう。とするとバリアジャケットを構築しているデバイスは別にある筈だ。

 

「複数のAMFを稼働させているのに平然と魔法を使うような化け物相手にはこれくらいがちょうどいいだろう」

 

「そう言う貴方も飛行魔法を行使していらっしゃるようですが、まぁそれは良いでしょう。襲撃の目的は何ですの? 」

 

「さてな。とりあえず今やるべきは全員を捕まえることだ」

 

そう言うと男は改めて拳銃を構えた。こちらも身体強化を最大まで引き上げ、銃弾に備える。

 

「捕まえるだけなら銃など邪魔なだけでしょうに」

 

「生憎だったな。俺は銃を撃つのが大好きでね! 」

 

そう言うや否や、男が発砲した。最大レベルまで身体強化をしているため、俺の眼にも弾道がはっきり見える。避けるだけなら何とかなりそうだった。

 

「無駄ですわ。フライヤー! 」

 

立て続けに発砲する男の銃弾を躱しながらフライヤーを懐に潜り込ませ、至近距離から直射弾を発射する。

 

「ぐっ! このっ! 」

 

男は器用に身を捩るが、躱しきれなかった直射弾が数発バリアジャケットを掠めた。男のバリアジャケットが大きく抉れる。

 

「掠っただけでこの威力かよ。反則だな」

 

「今更降伏しても遅いですわよ。管理局に突き出して…」

 

そこでふと気が付いた。当初マーカスさんがこのシャトルを追っていた筈だ。1人だけで追うことは無いだろうから、ベアトリスさんや他の局員の人達も一緒だった可能性が高い。その人達はどこにいる? 集落のみんなは湖に避難している筈だが、シャトルに乗ってきた男達がさっき倒した人数だけとは考えにくい。そいつらはどこにいる…?

 

≪We are in serious trouble, master.≫【まずい状況ですね】

 

トリックマスターがそう言うのと同時に銃声が聞こえた。

 

「そこまでだ。地上に降りて杖を捨てろ。ゆっくりとだ」

 

銃声がした方を見ると、数人の男達が湖の方から歩いてくるのが見えた。それぞれブラマンシュの集落の人を人質として引きずっている。先頭の男に引きずられているのはイザベル母さまだった。頭に拳銃を突きつけられている。

 

「…下衆共」

 

転生してからは使ったことすら無かった悪態が口をついて出た。だが母さま達を人質にとられている以上、抵抗出来よう筈もない。俺はそのまま高度を下げ、着地した。

 

「申し訳ありません、トリックマスター」

 

≪Do not mind. I will support you at any time. Let us bide our time for the time being.≫【お気になさらず。私は常にマスターの傍にいます。今は雌伏の時です】

 

小声でそっと囁くと、トリックマスターも微かに返答してくれる。俺はその場にトリックマスターを置くと、数歩下がった。

 

「ガキが、手間かけさせやがって」

 

魔導師の男も地上に降りてきて、俺にバインドをかけた。ストラグル・バインドだろう。バリアジャケットと身体強化が解除されていくのが判った。

 

「さっきのお礼をしないとな! 」

 

男が近寄ってきて、そのまま俺のことを蹴り飛ばした。バインドに拘束された状態のまま地面を転がる。

 

「ミント! 」

 

母さまの叫び声が聞こえた。衝撃で吐き気がこみ上げてくるのと同時に、数年前にクラナガンで違法魔導師に蹴り飛ばされた時のことがフラッシュバックする。

 

力不足で蹂躙され、悔しく惨めに思った出来事。結局、俺はあの時から何も変われていなかったのかも知れない。だが俺は溢れそうになる涙をぐっと堪えた。まだ動ける。ここには守るべき人達がいる。

 

(諦めたら、そこで試合終了…でしたわね)

 

トリックマスターが言うように、今は雌伏の時なのだ。

 

 

 

=====

 

ストラグル・バインドに拘束されたまま男達に引きずられていった先は湖の畔だった。男達の仲間と思われる人間が他に十数名いる。その中で魔力を持っているのはさっきの魔導師の他に数人といったところだったが、総じて魔力量はあまり多くなさそうだった。一番多いのが恐らく先程俺と戦った魔導師で、Aランク程度だろう。その代り全員が質量兵器で武装している。

 

銃口の先にはブラマンシュの人々。幸い死者は出ていない様子だったが、何人か怪我人が出ている様子で、その中の数人は明らかに銃で撃たれているようだ。怒りがこみ上げてくるが、結局何もできない現状を悔しく思い、俺は奥歯を噛みしめた。

 

「魔導師はこっちだ。大人しくしていろ」

 

突き飛ばされ、倒れ込んだところにはマーカスさんやベアトリスさんといった管理局の人達も捕らわれていた。全員ストラグル・バインドで拘束されている。

 

実はストラグル・バインドは魔法による一時的な強化などを無効化する反面、通常のバインドと比較しても拘束力は弱い。それでも尚魔導師達が捕まっているのは、単純に人質の安全を優先しているためだ。

 

「よう、ミント嬢ちゃん。すまねぇな。みっともなく捕まっちまってよ」

 

「…人質を盾にされたのでしょう。仕方ありませんわ」

 

「だが本来ならこんなに簡単に突破されちゃぁ沽券に関わるんだがな」

 

平和ボケしていたのかもな、と自嘲気味に言うマーカスさんと、男達に聞き咎められないように小声で話をする。魔力を余計につぎ込めば念話も可能かもしれないが、通常殆ど魔力を消費しない念話に魔力をつぎ込むのは調整が難しい。AMFの影響下で、更にこの距離であれば小声で話した方が早いのだ。

 

「これで全員か? 誰が長だ? 」

 

「長老は出掛けていて今はいない。私が留守を預かっている」

 

ブラマンシュの男性が手を上げてそう言った。集落で薬剤の処方などをしてくれているダリウスさんだ。問いかけているのは先程の魔導師の男。こいつがリーダーのようだった。

 

「ふん、ならお前だ。ここに次元干渉型のロストロギアがあるだろう」

 

「それはただの噂だ。実際数年前にスクライア一族が発掘調査に来たが、何も見つかっていない」

 

すると男は無言のままダリウスさんの右足を撃ち抜いた。

 

「ぐぁっ! 」

 

周りからも悲鳴が上がるが、男が空に向けて更に一発銃を撃つと直ぐに静かになった。

 

「こっちは信頼できる筋から情報を貰っているんだ。嘘は通用しねぇぞ」

 

「知らん! 本当に何も知らんのだ! 」

 

「そうか。なら次は左足だ」

 

男がダリウスさんに銃を向ける。堪らず俺は叫んでいた。

 

「待って下さいませ! 」

 

視線が俺に集中する。俺はバインドに拘束されたままの状態でゆっくり立ち上がった。

 

「ロストロギアはありますわ。ですがブラマンシュの人には情報が開示されていないのです」

 

「ほう…なら、お前は知っているんだな? 」

 

男の言葉に首肯する。

 

「ならお前でいい。案内しろ」

 

人質の命がかかっているため下手なことは言えないのだが、現状では鍵が無い。ジュエルシードを封印している場所への扉はブラマンシュの鍵とスクライアの鍵が必要だ。俺は長老からブラマンシュの鍵を託されてはいるものの、スクライアの鍵はユーノが持っている。

 

その時、足元から「きゅ」という声が聞こえた。視線を下ろすと、そこにいたのはフェレット形態のユーノだった。首からレイジングハートの待機モードである紅い宝石を掛け、ご丁寧にスクライアの鍵を咥えている。これはチャンスだった。

 

「わたくしが貴方達をロストロギアのところに案内したら、集落のみんなを解放して頂けますか? 」

 

「そうだな。ちゃんと案内出来たらな」

 

男はニヤニヤしながらそう言うと、バインドを解除した。素早くしゃがんで鍵を受け取った後、ユーノを隠すように服の内側に滑り込ませた。幸い男達に気付かれた様子はない。

 

「お前のデバイスはこっちで預かっているからな。変な気は起こすなよ」

 

男の言葉に頷くと、俺は母さまの方に向き直った。

 

「お母さま、ちょっと行って参りますわ」

 

「ミント…気を付けて」

 

「大丈夫ですわ。すぐにみなさんを解放して差し上げますから」

 

 

 

シャトルに乗ってきた男達は全部で25人だった。そのうちの10人がシャトルのところで見張り、10人が湖の畔で集落のみんなと管理局員達の監視。そして残りの5人が俺と一緒に遺跡に向かうことになった。この5人は魔力を持っていないものの、全員が拳銃やサブマシンガンで武装していた。

 

「…ロストロギアを手に入れに来たんですのね? 」

 

「答える必要は無いな」

 

「あのロストロギアはブラマンシュから持ち出すだけで暴走する可能性がある危険なものですわよ? 」

 

「いいから黙って歩け」

 

「…何に使うつもりなのですか? 」

 

「……」

 

歩きながら男達に問いかけてみたが、反応は芳しくなかった。尤も然程回答を期待していた訳でもないので、こちらも口をつぐんで歩き続けた。少し歩くと、AMFの効果範囲から外れたようだ。

 

<ミント、聞こえる? >

 

<聞こえていますわよ。無事で良かったです>

 

服の中のユーノが念話で話しかけてきた。ここで出来る限りお互いが別れた後の情報交換をしておいた方が良いだろう。とは言っても、俺は殆ど戦闘していただけなので、あまり有意な情報は入手できていないのだが。

 

<ミントが暴れてくれたおかげで、随分と動きやすかったよ。ありがとう。ナイス囮>

 

<…あまり褒められている気がしませんが、まぁ良いですわ。そちらは何か判りました? >

 

<うん…奴ら、きっとブラマンシュの人を解放するつもりはないよ。シャトルから少し離れた林の中で大量殲滅用と思われる質量兵器を見つけたんだ>

 

<…! どこまでも卑劣ですわね>

 

ユーノの話によると、どうやら発見されたのはスイッチ起爆型の大型爆弾のようだった。そんなものをブラマンシュで爆発させるわけにはいかない。

 

<今、長老が何とか解体出来ないか、頑張ってくれているよ。でも念のため奴らのリーダーが持っているらしいスイッチを手に入れたいんだ。もしそれが難しいなら最悪破壊しておきたい>

 

遠隔操作可能なスイッチなら、恐らく起爆装置に信号を送信するタイプなのだろう。破壊する時の衝撃で信号が送られなければ良いのだが、出来るだけ危険は避けたい。矢張り何とかして奪い取るのが最善策だ。破壊するとしても、ブラマンシュから出来るだけ離れた場所が良い。

 

<スイッチを持っているのはリーダーでしたわね。ならこういう作戦は如何です? >

 

爆弾なら自分たちがいる場所で爆発させるとは考えにくい。奴らはジュエルシードを手に入れたらシャトルで飛び立つだろう。その時に一緒にシャトルに乗り込んで、起爆スイッチとジュエルシードを奪い返し、ユーノの転送魔法でブラマンシュに帰還。

 

<ミント…それ作戦って言えるの? 随分運頼みの要素が強いと思うけれど。おまけに一緒にシャトルって、どうやって乗り込むのさ? >

 

<撤退する時に、最低1人は人質を連れていくと思いますわ。そうしないとギリギリのところで攻撃されてしまうでしょうし。その人質に志願すればいいでしょう>

 

懸念点は、トリックマスターを奪還するまでデバイスが無いことだろうか。ただそれまではレイジングハートが力を貸してくれると申し出てくれた。

 

<まぁ、確かに今は時間が無いし他に良い案がある訳でもないか。でも十分注意して行こう>

 

<判っていますわ>

 

ユーノと話をしていると、不思議と気力が湧いてくる。まだまだ諦めずに頑張れそうだった。

 

 

 

小一時間もすると、俺達は遺跡に到着した。ここからは更に1時間ほど坑道を進み、あの扉の前に辿り着いた。解錠しようとした時に、ユーノからの念話が届く。

 

<思ったんだけど、こいつらって質量兵器でブラマンシュの人達を皆殺しにしようとしているよね? >

 

<そのようですわね>

 

<そしたらさ、この状況ってすごくマズいと思うんだ>

 

ユーノが懸念していたのは、ロストロギア回収後に「お前はもう用済みだ」といわれるパターンだった。その可能性には思い至っていなかったが、言われてみれば確かにそれ以外のルートが無いような気もする。

 

「おい、何してる! さっさと鍵を開けろ! 」

 

「お待ち下さいませ。今開きますわ」

 

表向きは平静を装いながら、マルチタスクで必死に逃げ道を探す。

 

<≪I have an idea, master.≫>【マスター、考えがあります】

 

<レイジングハート! 何か良い案があるの? >

 

<≪Here was a mining gallery. There should be many pits.≫>【ここは元々坑道ですから、縦穴も複数あります】

 

<うん。それで? >

 

<≪I can guide you. Let us fall down.≫>【案内も出来ます。そこに落ちましょう】

 

ユーノに提案するレイジングハートの言葉を聞いて、それだと思った。要は男達が、俺が死んだと思うような状況にすればいいのだ。作戦が決まれば後は実行するのみ。俺は扉を開いて男たちをロストロギアの部屋に招き入れた。

 

「これか…おい、本物なんだろうな? 魔力を殆ど感じないぞ」

 

「現状は安定している、ということですわ。ブラマンシュから移動させたら何が起こるか判りませんが」

 

「よし。運び出すぞ。トランクに入れろ」

 

男達がジュエルシードを持ってきていたトランクに入れ始めた。

 

<ユーノさん、急いで下さいませ>

 

<ちょっと待って…『管理権限、新規使用者設定機能フルオープン』>

 

服の中でレイジングハートが暖かい光を発するのが判った。慌てて両手を胸の前で組んで誤魔化す。発生する魔法陣は最小限に留めているため制御に時間がかかっているようだったが、やがてユーノから念話が入った。

 

<オーケー。ミント、繰り返して。『風は空に、星は天に』>

 

<ユーノさん!? パスワード認証は無意味だから省略するべきだって、学院時代にも言っておきましたわよね!? >

 

<ゴメン! 今度直しておくから! それより今は早く! >

 

男達はジュエルシードを収納し終えて、下卑た笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。

 

<仕方ありませんわね。『風は空に、星は天にっ』>

 

「ご苦労だったな。これでお前さんは用済みだ。ご褒美に鉛玉をくれてやるよ」

 

死刑宣告を聞いた瞬間俺は身体を強化し、男が銃を構えるよりも早く出口から駆け出した。

 

「あっ、おい、こら! 待ちやがれ!」

 

後ろから発砲音が聞こえた。予め示された道を、弾を避けるようにジグザグに走りながら逃げる。逃げながらもユーノの設定したパスワードを繰り返した。

 

<『不屈の心は、この胸にっ! この手に魔法をっ!』>

 

足元で石が弾けた。バランスを崩した先に縦穴が見える。チャンスはここしかなかった。

 

<『レイジングハート、セットアップ!! 』>

 

<≪Stand by, ready. Setup.≫>【準備完了。セットアップ】

 

魔力は出来るだけ漏れださないように抑えているので、光の柱が出来るようなことはない。バリアジャケットの展開と同時に、俺は高機動飛翔の魔法を発動して縦穴に飛び込んだ。

 

「きゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー…………」

 

オーバーハング状態になった縦穴の縁部分に身を隠すと同時に悲鳴を上げ、ロングトーンでだんだん声を小さくしていく。前世で観たとあるアニメで主人公が使った手法だ。最後に少しだけ間をおいて小さく「ぎゃっ」と発声する。

 

「ふん、落ちたか。逃げたりしなければ楽に殺してやったのにな」

 

「まぁ結果は同じだ。行くぞ」

 

男達はそのまま坑道を引き上げて行った。暫くその場に留まり、人の気配が無くなったところでサーチャーを作成する。どうやら男達はちゃんと出口に向かっている様子だった。

 

一旦ジュエルシードが封印されていた部屋に戻り、サーチャーから送られてくる情報に集中する。その後小一時間ほどして男達が遺跡を後にしたことを確認した俺達は大きく息を吐いた。

 

「ありがとうございます、ユーノさん、レイジングハートさん。おかげで助かりましたわ」

 

≪You are welcome, Mint.≫【どういたしまして】

 

「でもこれで終わりじゃない。むしろこれからが本番だよ。まずはトリックマスターを奪還して、それから奴らのシャトルに忍び込まないと」

 

あの男達が集落に帰りつくまでには、あと1時間ほどかかるだろう。空を飛べる俺達は今から坑道を出てもギリギリ先回り出来る筈だ。

 

「そうですわね。ではそろそろ参りましょう」

 

俺は改めてバリアジャケットの内側にユーノを入れて落ちないようにし、飛行魔法を駆使して一気に坑道を抜けた。

 




結局、書き上げてみたらいつもの2倍ほどの文量になってしまったため、急遽前・後編に分けることにしました。。

中途半端には切れなかったので、区切りを調整したところ、文字数は今回の27話が10000文字弱、次回の28話(第2部最終話)が7000文字強ということになってしまいました。。

最終話のボリュームが減ってしまうのは不本意なのですが、だらだらと長文を載せるよりは半分にした方が良いと判断しました。。

このため、第2部の完結は来週になります。。お待ち頂いた方には本当に申し訳ございませんが、引き続きよろしくお願いいたします。。

最終話は既に5月31日20時の予約投稿を設定済みです。。来週はのんびり母のお見舞いに行けそうです。。
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