他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第28話 「脱出」

俺達は男達に見つからないように集落へ向かう道から外れ、湖側から回り込むようにして集落に近づいた。ブラマンシュのみんなはまだ無事のようだ。

 

「爆弾解体の進捗が確認できなかったのが痛いですが、仕方ありませんわね」

 

「どうするの? 人質になるとは言っても、今の状況だとミントが顔を見せるのはマズいよ」

 

当初の予定ではロストロギア回収から戻った後で人質に志願するつもりだったのだが、遺跡で死んだことになった以上、顔を出すことは出来ない。むしろその前に大立ち回りも演じているため、いくら志願したところで人質として認められない可能性が高いことに、今更ながら思い至った。

 

「だ…大丈夫ですわ。ほら、あれですわよ。昔ユーノさんと一緒に練習した」

 

「え…あ! 変身魔法! 」

 

5年ほど前、ユーノがフェレットへの変身魔法を習得した時、俺も一緒に変身魔法を練習していたのだ。残念ながら俺にはユーノ程には適性が無かったのだが、外見を変えることは出来るようになっていた。思いつきで口にしたのだが、今となってはそれ以外には方法は無いと思われた。

 

「結構長いこと使っていませんが…変身魔法ならぬ、変装魔法ですわね。如何です? 」

 

かつて「ディスガイズ」と名付けた魔法を行使する。数年前までは遊び感覚で頻繁に使っていたが、ここしばらくはお蔵入りになってしまっていた魔法だ。

 

「うん。いい感じでイザベルさんに見える。これならいけるかも」

 

「ディスガイズ」を行使した俺の姿は髪も長く、身長こそ若干足りないもののイザベル母さまによく似ていた。髪色、瞳の色は元々母さま譲りで、顔つきも似ているため、隣に並んで見比べるのでなければ、見慣れていない人には見分けがつかないだろう。

 

ユーノはフェレット形態のまま待機モードに戻したレイジングハートと一緒に服の中に忍ばせ、俺は見張りの隙を見つけて近くの木陰からみんなが捕らわれているところに合流した。丁度遺跡から男達の仲間が戻ったところで、そちらに注意が向いたのが幸いした。

 

「…お母さま」

 

「ミント!? その格好は…? 」

 

母さまの近くに座り込み、小声で事情を説明した。男達がブラマンシュを解放するつもりが無いだろうこと、質量兵器が隠されていること、長老が頑張ってくれているが、解除出来るかどうかは判らないこと、そのため人質としてシャトルに乗り込み、隙をみて起爆スイッチを奪い取る計画であること。

 

「危険ではありますが、今これを出来るのはわたくしだけですわ。勝算もあります。心配をかけて申し訳ありませんが、必ず戻りますから」

 

そう言うと、母さまは俺のことをそっと抱きしめた。

 

「本当なら貴女にはもう危険なことをして欲しくないけれど。本当なら変わってあげたいのだけれど」

 

そう言った後、母さまは俺の額に口づけし、それから俺のことをじっと見つめた。

 

「一つだけ、絶対に無事に帰ってくること。これだけは約束して頂戴」

 

「…勿論ですわ」

 

 

 

男達は予想通り俺達の中から人質を連れだすことにし、結局立候補した俺がシャトルに乗り込むことになった。母さまにはその間ずっと俯いて貰っていたため、男達は同じような顔が並んでいることに気付かなかったようだ。

 

「それにしても本当に子供にしか見えねぇな。本当にこいつ、成人してるのか? 」

 

「何でもそういう種族らしいぞ。以前は不老長寿の研究者が言い値で買ってくれていたらしいな」

 

「なら用が済んだら売り払うか? 」

 

「丁度良い違法研究者でもいたらな」

 

シャトルの貨物スペースに放り込まれた俺を見て、男達がそんな不穏な会話をしていた。怯えるような素振りを見せながら、周囲の状況を確認する。簡素な造りになっていて、男達が乗るスペースまで扉は無い。幸いなことに集落で回収されたと思われるデバイスについても貨物スペースに置いてあった。

 

(トリックマスター…良かった。他のデバイスも見覚えがありますわ。あれはマーカスさんの…あちらはベアトリスさんのデバイスですわね)

 

これらのデバイスは後でユーノに頼んで船外に転送して貰うことにする。

 

「それにしてもロープで縛るだけで大丈夫なんですか? 」

 

「あぁ、こいつら魔力だけはバカみたいに大きいが、攻撃魔法は使えないんだとよ」

 

「でも死んじまったっていうガキは使ってましたよね? 」

 

「ありゃぁレアケースだな。偶にはそういうのもいるらしい」

 

ブラマンシュの情報としては割と正確なのだろうが、それで油断してくれているのは大歓迎である。

 

「念のためAMFは最大出力で稼働させておけ。離陸したら相互通信は禁止。それと管理局の奴らが次元航行部隊にも応援要請をしている筈だ。2号機が先に離陸して囮になれ。ステルス機能があると言っても過信はするな。その後は独自判断で動け。アジトで合流だ」

 

リーダーらしい男の声が聞こえてきた。恐らくジュエルシードと起爆スイッチはそこにあるのだろう。運が良いことに、俺が乗せられたのは1号機らしい。エンジン音が高まっていき、貨物スペースを覗き込んでいた男達も顔を引っ込めた。

 

「今ですわ。ユーノさん、まずは転送を! 」

 

「判った! 」

 

バリアジャケットの中からユーノが飛び出してきて、転送魔法を発動する。対象はトリックマスター以外のデバイスだ。その間に俺は極小の魔力弾でロープを切断した。

 

「トリックマスター! 早速で悪いのですが、セットアップですわ」

 

≪Sure. And welcome back, my master.≫【了解。それと、おかえりなさいませ、マスター】

 

「ええ…ただいま戻りました」

 

「ディスガイズ」を解除して元の姿に戻ると、即座にセットアップしておく。ほぼ同時に浮遊感があった。シャトルが上昇を開始したのだろう。

 

「こっちは終わったよ」

 

「ありがとうございます、ユーノさん。次は起爆スイッチですわね」

 

サーチャーを作成し、先程リーダーの声が聞こえていた方を探る。内部はかなり広い作りになっていて、中央の椅子にリーダーと思われる男が座っていた。その足元には見覚えのあるトランク。ジュエルシードが収納されているものだ。見える範囲ではそれ以外に男が10人ほど。操縦席にも何人かいる筈だが、さすがにこのエリアを突っ切ってサーチャーを飛ばすのは危険だ。

 

「AMF発生装置がどこにあるのかは、ここからだと判りませんわね。ユーノさん、大丈夫ですか? 」

 

「うん。今はまだフェレット形態だから、魔力消費もそんなにないし、大丈夫だよ。それよりミントこそ大丈夫? 」

 

「ええ、特に問題はありませんわ」

 

魔力はまだ半分程はある。AMF影響下とはいえ、十分に持つ筈だ。それにジュエルシードを奪還出来れば、そこから回復することも可能だろう。

 

「起爆スイッチは…リーダーが持っているのでしたわね」

 

改めてリーダーの姿を確認するが、何処にスイッチを隠し持っているのかはすぐには判らなかった。貨物スペースに窓は無く外の様子は判らなかったが、サーチャーに映った窓からは随分と高度があがっている印象を受ける。

 

遠隔スイッチの有効範囲はそんなには広くない筈だ。次元間航行に入る前にはスイッチが押されてしまうだろうが、押されなかったとしても万一次元間航行に入ってしまってはユーノの転送魔法も範囲外になるため、今度は俺達がブラマンシュに戻れなくなる。

 

「時間がありませんわ。こうなったら一気に室内を制圧しますわよ」

 

「ちょっと待って、ミント。制圧ってどうやって? 」

 

「幸いスペースはそんなに広くありませんし、フライヤーダンスで…」

 

「ダメだよ。今回は対象が壁際にいるから外側に向けて射撃を拡散させることになる。個別に狙い撃つならともかく、一斉射撃だと外壁が傷つく可能性もある」

 

これから宇宙空間に向かうシャトルの外壁を傷つける訳には行かない。

 

「ですが個別に狙い撃っていたりしたらすぐに警戒されて反撃体勢に移られてしまいますわ」

 

「うーん…数秒だけでも無力化出来ればいいんだけど…目潰しみたいな」

 

ユーノがハッとした表情で俺を見る。その瞬間、俺も同じことに思い至った。

 

「「フライヤー・バージョンF!」」

 

そうと決まれば後は実行するのみだ。作戦としてはまずフライヤー・バージョンFで室内にいる男達の視界を奪い、続けて通常のフライヤーで各個撃破。最初に魔導師でもあるリーダーを落とせれば後の展開が楽になるだろう。

 

「トリックマスター、サポートをお願いしますわ」

 

≪Of cause yes. I will do my best.≫【もちろんです。最善を尽くします】

 

フライヤー・バージョンFを1基生成し、追撃用のフライヤー5基を展開する。戸口の縁に隠れて光を直接見ないように準備した。

 

「…参りますわよ」

 

「…うん」

 

「…GO! 」

 

男達がいる部屋にフライヤーを全て放り込み、次の瞬間バージョンFを炸裂させた。

 

「うわっ、何だ!? 」

 

「目が、目が見えねぇ! 」

 

「てめぇら、落ち着けっ! くそっ、何が起きてやがるっ」

 

一瞬遅れて部屋に飛び込むと、パニックを起こしている男達を次々フライヤーで仕留めていく。悲鳴を上げる男達の意識を容赦なく刈り取ると、フライヤーを更に1基追加して操縦席エリアへの通路に配置した。

 

「おい、どうした! 」

 

通路の方から入ってきた男に向かってフライヤーが直射弾を打ち出すが、わずかに狙いがそれてしまった。

 

「くそっ! てめぇ、死んだんじゃなかったのかよ! おい、敵襲だ!! 」

 

「中で銃を使うんじゃねぇぞ! 何かに掴まってろ! 」

 

操縦席の方からそんな声が聞こえ、次の瞬間機体が大きく揺れた。バランスを崩し、壁に叩きつけられる。

 

「くっ! こんなことなら最初から飛行魔法を使っておくのでしたわ! ユーノさん、大丈夫ですか? 」

 

「う…うん、ちょっとびっくりしたけれど、問題ないよ」

 

改めて飛行魔法を発動し、気を失っているリーダーの服を調べる。起爆スイッチと思われるリモコンのようなものは簡単にポケットから出てきた。

 

「ありましたわ! これですわね」

 

スイッチをバリアジャケットのポケットに入れ、次にジュエルシードが入ったトランクに手を伸ばす。その時、今度はシャトルがロールを始めた。飛行しているため身体自体は影響を受けなかったが、いきなり周りの景色が回転したため視覚が混乱する。

 

「っ! トランクが! 」

 

ジュエルシードを収納したトランクが宙を舞った。同時に気絶した男達も椅子から投げ出されるように転がり、うめき声を上げる。

 

「まずいよミント! 早くトランクを確保して戻ろう! 」

 

慌てて転がったトランクに手を伸ばした瞬間、銃声が響いた。トランクのハンドル付近に着弾したようで、火花が散る。思わず手を引っ込めてしまった。

 

「随分とふざけた真似してくれるじゃねぇか」

 

銃を構えていたのは例の魔導師の男だった。他の男達はまだ意識を取り戻してはいない様子だ。

 

「船内で銃を使うのは危険なのではありませんか? 」

 

「てめぇをぶち殺すのが最優先だ」

 

そう言って立て続けに発砲する。俺としてもシャトルと心中するのはイヤだったので、避けるのではなくプロテクションで弾を止めていたのだが、次の瞬間窓の外の景色がガラリと変わった。次元間航行に入ってしまったのだ。

 

「ダメだ。間に合わなかった…」

 

ユーノの呟きを聞いて、魔導師の男は下卑た笑いを浮かべた。

 

「長距離転送は出来ないようだな。こうなっちまえば狭いシャトルの中で逃げ場はねぇぞ」

 

銃を構え、ニヤニヤとした笑みを浮かべたまま男がゆっくりと近づいてきた。プロテクションが間に合わないような至近距離から発砲するつもりだろうか。

 

「…一つ、良いことを教えて差し上げますわ」

 

「あん? 言ってみろよ 」

 

「銃のメリットは離れたところから攻撃出来ることですわ。自らそのメリットを捨てるのは愚の骨頂ですわね」

 

そう言うや否や、俺は錫杖形態のトリックマスターを回転させて男の拳銃を弾き飛ばした。ベルカ式棒術だ。

 

「てめぇっ! 」

 

激昂して殴りかかってくる男の足を払って倒れさせると、容赦なくフライヤーの一撃を叩きこむ。男はそれで動かなくなった。俺はふっと息を吐くと、駆け寄ってきたユーノを肩に乗せた。

 

「ジュウって言ったっけ? あの質量兵器はどうするの? 」

 

「この魔導師以外は次元間航行中の船内で発砲するような愚は犯さないでしょう。わたくしは正直、あれに触りたいとも思いませんし」

 

本物の拳銃など、前世を合せても見たことすら無い。下手に弄って暴発でもされたら厄介だ。それよりも今は操縦者を確保するのが先だろう。俺はジュエルシードが入ったトランクを拾い上げると、シャトルの操縦席に向かった。

 

 

 

そこには男が2人いた。あまり怯えた様子もない男達の態度に、俺は溜息を吐いた。

 

「…ブラマンシュに戻ってとお願いしても無駄なのでしょうね」

 

「当たり前だ。そんなことをするメリットはどこにもない」

 

6基のフライヤーを男達の周りに散開させたが、彼等はそれを一瞥しただけだった。

 

「脅し方が甘いんだよ。AMFの影響下でいつも通り魔法を行使できると思うなよ。それに俺達がいなくなったら、誰がシャトルを止める? てめぇに操縦出来るのか? 」

 

正論だった。確かに魔力は大分減っている上、俺もユーノもシャトルの操縦など出来はしない。操縦席で勝ち誇ったようにしている男達を睨みつけた。

 

「次元間航行に入った時点でてめぇは詰みなんだよ。通常空間に戻れば今度は俺らの仲間がいる。そうすればお前はどのみち殺される」

 

ここで男達を倒すことに全く意味は無い。戦闘力ではこちらが上でも、逃げ道がなければ確かに詰んだも同然だった。唇を噛む俺を見て、男が嫌な笑い声を上げた。

 

「船内じゃぁ銃は使えねぇが、一度アジトに戻ればてめぇを殺す手段なんざいくらでもあるんだぜ。銃で撃ち殺されたいか? 死の呪いでも受けたいか? 」

 

男のセリフに、聞き捨てならない単語があった。

 

「死の…呪い、ですか。質量兵器を使っているからそうだろうとは思っていましたが、やっぱり貴方達はルル・ガーデンのお仲間だったわけですわね」

 

そう言うと、男達は初めて動揺を浮かべた。

 

「! てめぇ、ルル様のことを知って…! 」

 

「あの人の呪いは、わたくしには通用しませんわよ…」

 

「ふ、ふん。はったりはそのくらいにしておけよ」

 

男達と睨みあいを続けながら現状打破の方法について考えを巡らせるが、これといっていいアイディアは思い浮かばなかった。

 

「ミント! 後ろ!! 」

 

ユーノの声に慌てて後ろを振り向くと、あの魔導師の男が銃を構えていた。

 

「…しぶといですわね。しつこい男は嫌われますわよ」

 

「いいよなぁ。銃はいい。AMFが稼働していても弾さえあればいくらだって撃てるんだからな」

 

どこか恍惚とした表情を浮かべる魔導師に、背筋が寒くなった。

 

「取り敢えず、てめぇは死ね」

 

いい終わると同時に魔導師が発砲する。

 

「プロテクション! 」

 

アクティブ・プロテクションを展開したが、驚いたことに今度は銃弾がプロテクションを突き抜けた。幸い弾道がわずかに逸れたため命中はしなかったが、次の攻撃には注意が必要だ。

 

「頭! 船内で銃は止めて下さい! ただでさえ通常の速度制限を大幅に超えて航行しているんですよ!? 外壁に穴が開いたら全員死んじまいますよ!! 」

 

「うるせぇっ! このガキを殺すのが先だ! …さっきまでの銃とは違うぞ。観念しな! 」

 

魔導師が持っている大きめの拳銃。正面から見て三角形に近い銃身は重厚感があり、確かに威力は高そうだ。魔導師が更に発砲した。

 

「っ!…ラウンドシールド! 」

 

咄嗟に受け止めるのではなく、受け流す方向でシールドを展開したのだが、これは失敗だった。弾道が変わった弾丸が操縦席のコンソールに命中し、機器が火を噴いたのだ。

 

「不味い! くそっ、次元間航行の制御ができねぇ! 」

 

不意に窓の外が明るくなった。通常の宇宙空間に出たにしても、この明るさは異常だった。

 

「不味い、不味い! どこかの惑星の大気圏内だ!! 至急離脱するぞ! 」

 

災い転じて福と為す。どこの惑星なのかは判らないが、今シャトルから離脱出来れば助かるかも知れない。

 

「ユーノさん! 船外転送、行けます!? ユーノさん! 」

 

ユーノからの返事が無い。見ると、俺の肩にしがみついたまま蹲るようにしている。

 

「やらせるかよっ! 」

 

魔導師が更に発砲してきた。ユーノに気を取られていたため、シールドの展開が間に合わない。と、目の前に緑色の障壁が現れ、銃弾を逸らせた。ユーノが代わりにシールドを張ってくれたようだ。

 

「…ゴメン、ミント…ちょっと、転送までは…無理、かも」

 

ユーノが苦しそうに言う。俺はこの症状に心当たりがあった。

 

「…魔力素不適合症、ですわね。すみません、ユーノさん」

 

魔力素不適合症を発症している状態で魔法を行使すると、それだけ回復が遅れてしまう。既にシールドを使わせてしまうことになったが、ユーノにはこれ以上負担をかけられない。何か他の方法で脱出する必要があった。

 

 

 

次の瞬間、船外から膨大な魔力の高まりを感じた。それはAMFなどものともしないような、圧倒的な力だった。操縦席の脇にあったハッチが吹き飛び、視界が桜色に染まる。

 

「何だ! 何が起こった!? 」

 

「判りません! ただ船体が大きく破損! このままでは宇宙空間に出ることが出来ません! 不時着します! 」

 

脱出するなら今をおいて他に無かった。俺は咄嗟に船体に開いた穴に向かって駆け出した。

 

「! 逃がすか!! 」

 

魔導師が立て続けに銃を撃ってきた。数発が身体を掠める。

 

 

 

それはまるでスローモーションの映像を見ているようだった。

 

トランクが弾け、ジュエルシードが空中に散乱した。バリアジャケットのポケット部分が破れて、起爆スイッチが空中を舞った。

 

 

 

ジュエルシードは船体に開いた穴から外にこぼれて行った。慌てて手を伸ばすが、届かない。俺の身体もそれを追うように外に投げ出されるが、視界の端に宙を舞う起爆スイッチが映った瞬間、俺は3基のフライヤーを追加で生成し、スイッチを撃ち抜いた。6基のフライヤーは全て男達の方を向いていて、方向転換させるよりも新規のフライヤーを生成する方が早かったからだ。

 

(こうなった以上…スイッチだけは…壊しておかないといけませんでしたから…ね)

 

かつて、フライヤーの生成数が7基を超えると脳に負担がかかるとトリックマスターから聞いていた。戦闘中に意識を失うことになれば問題があるという話だっただろうか。猛烈な頭痛に襲われながら、俺はそんなことを思い出していた。

 

(まだ、ですわ…ジュエルシードを回収しませんと…)

 

シャトルはみるみる小さくなっていく。スイッチがフライヤーによって破壊されるのはこの目で確認した。ユーノは意識を失っているようだが、俺が左手で確り抱いている。右手にはトリックマスター。

 

浮遊魔法を、との言葉は結局口から出ることはなかった。俺は頭痛に耐え切れず、そのまま意識を手放した。

 




永らくおつきあい頂き、ありがとうございます。。
おかげさまでようやく第2部を完結させることができました。。

次回からいよいよ第3部になりますが、満を持してというよりはむしろあっさり終わらせてしまい、さっさと空白期ののんびりモードに移行したいと考えています。。

引き続き、なにとぞよろしくお願いいたします。。
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