他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第3話 「情報共有」

午前中は海鳴の市街地を中心に捜索したのだが、ジュエルシードはなかなか見つからない。

 

(思った以上に捜索エリアが広いですわね…)

 

出掛けに士郎さんから借りた海鳴市の地図を見ながら大通りを歩いていると、昼前に少し離れた場所で結界が張られた気配があった。

 

(戦闘をするほどの規模ではありませんわね。それにこの魔力パターン…きっとヴァニラさんですわ)

 

恐らく人知れず泣いているのだろう。そう思った俺は結界を敢えて無視して市街地の捜索を続行したのだが、結局収穫はゼロだった。ところが正午を回った頃に、ヴァニラの結界の方角から魔力が膨れ上がるような、ぞわぞわした気配を感じた。

 

(まさか、ジュエルシードが発動したんですの!? )

 

慌ててそちらに向かおうとしたのだが、日曜日の市街地は人で賑わっている。認識阻害をかけているとはいえ、飛行魔法を行使するのは躊躇われた。市街地捜索が完全に裏目に出た形だった。

 

念話でヴァニラの安否を確認しようとした瞬間、血の気の失せた表情のヴァニラが脳裏に浮かんで、少しだけ迷ってしまった。軽く頭を振って気持ちを整理する。

 

(ここは安否確認が先決ですわ! )

 

だが改めて念話を送信しようとした矢先にジュエルシードの気配が消え、続けて結界も解除されたようだった。恐らくヴァニラが封印に成功したのだろう。緊張が途切れてふっと息を吐く。

 

<ミントちゃん! 何だか今、ぞわぞわって、ヘンな感じがしたよ!? >

 

丁度その時、少し慌てたような声でなのはから念話が入った。

 

<どうやら発動してしまったジュエルシードがあったようですわね。大丈夫ですわ。ヴァニラさんの方で封印されたようですから>

 

なのはもどうやらヴァニラに気を遣って直接念話で確認するのを躊躇っていたらしい。すると丁度その本人からも念話が入った。

 

<ロストロギアと思われる青い石を2つ回収しました。今はハーベスターのストレージ内に封印していますので、今夜にでも引き渡します>

 

<ありがとうございます。ですがよく判りましたわね。わたくし、形状や色をお伝えするのを失念しておりましたのに>

 

<昨日、ミントさんが落ちてきた時、一緒に落ちてくる石を見たんです。微弱とはいえ魔力も纏っていましたから、たぶんこれだろうと>

 

成程、確かに俺と一緒に落ちたジュエルシードを見ていたのなら推測は容易いだろう。

 

<ヴァニラちゃん! 大丈夫だった? 怪我とかしてない? >

 

<うん、大丈夫。ありがとう、なのはさん>

 

念話はどうやらなのは宛にも飛ばされていたようだった。声の感じからヴァニラも落ち着いている様子だったし、こちらの会話が終わったとみて、なのはも参加したのだろう。

 

<ねぇ、そろそろお昼だし、一度家に戻ってご飯にしない? >

 

<あ、実はさっきお友達になった人と一緒にいるから、お昼は翠屋に行こうと思っていたの。お昼時だし、車椅子なんだけど大丈夫かな? >

 

すると少しの間沈黙があり、その後すぐになのはからの回答があった。

 

<お兄ちゃんに聞いたら、テラス席なら空いてるだろうって。ミントちゃんも来るよね? >

 

<ええ、伺わせて頂きますわ>

 

前世の知識から、翠屋といえばスウィーツに限らず自家焙煎コーヒーや軽食も非常に美味しいことで有名であることは判っていた。折角海鳴にいるのだから最低でも一度は行っておきたい場所の筆頭である。ジュエルシード回収を優先させなくては、という気持ちも確かにあったのだが、料理好きとしての知的好奇心には抗うことが出来なかった。

 

一応ユーノにも連絡を入れてみたのだが、まだ人間形態になるのは控えた方が良さそうだとのことだったので、今日は諦めて貰うことにした。さすがに飲食店に行くのに、テラス席とは言え動物を連れていくのは好ましくないだろう。

 

(さてと…確か翠屋は駅前にあった筈ですわね)

 

うっかり場所を聞くのを忘れてしまっていたのだが、とらハ3では確か駅前商店街の一角にあった筈だった。丁度今いるのが駅の近くだったので、そのまま辺りを散策する。

 

「…ありませんわね」

 

暫く歩き回った後、思わず独り言が零れる。結局もう一度なのはに念話を入れ、実は商店街からは少し離れた高町家の自宅のすぐ裏手にあったことを聞きだした。前世知識との乖離がこんなところにも、と思いながら俺は半ば駆け足で翠屋に向かった。

 

 

 

翠屋に到着すると、テラス席になのはとアリシアの姿があった。ヴァニラはまだ到着していないようだ。車椅子の友人を連れてくると言っていたので、少し時間がかかっているのだろう。

 

(え…? 車椅子…? )

 

その時になって、漸くその単語が引っかかった。海鳴で車椅子と言ったら、心当たりは1人しかいなかった。

 

「あ、ミントちゃん。こっちだよ」

 

なのはが俺の姿を見つけて手を振ってくる。

 

(まぁ、今更ですわね。なるようになりますわよ…たぶん)

 

俺は無理やり笑顔を作ると、なのはとアリシアが座るテラス席に向かった。

 

 

 

=====

 

まず最初に困ったのは、桜台公園から高町家に向かう最短ルートが階段であることだった。身体強化をすればはやてさんごと車椅子を抱えることも出来るだろうが、いくら認識阻害をかけているからといって、そのような姿を衆目に晒すのはさすがに抵抗があった。

 

このため少し遠回りになるのだが、私達は一度駅方面に向かう舗装された坂道を降り、その後高町家に向かうことにしたのだ。

 

「…上ってくるときは、どうしたんですか? 」

 

「反対側にもスロープになってる道があるんよ。まぁここまで上って来たんは初めてなんやけど」

 

はやてさんの車椅子は、一見すると普通の車椅子だったのだが、電動ユニットが取り付けてあり、1人でも気軽に高台まで上ってくることが出来るようになっていた。普通の車椅子を既に持っている場合であれば、最初から電動として設定されている車椅子を購入し直すよりも割安なことが多い。

 

それでもバッテリー込でかなりのお値段がする筈だが、両下肢麻痺ということであれば1級障害者の筈だし、障害者手帳があれば補助や割引も受けられるのだろう。

 

そこまで考えて、ふと違和感を覚えた。

 

(電動車椅子を選択するっていうことは、普段車椅子を押したり介護したりしてくれる人は居ないってことだよね…実際ここには1人で来ている訳だし。さっき両親は他界しているって言っていたけれど、じゃぁ未成年後見人は…? )

 

通常両親を失った子供は施設に入ったり、私達のように里子になったり、或いは養子などになったりするものなのだが、はやてさんの口振りではどうやら一人暮らしをしている様子だった。この場合最低でも未成年後見人という、親権を代行する人がいる筈だ。そしてこの後見人には管財や契約代理などのサポートを行ったり、監護、教育を行ったりする義務がある。

 

万が一この後見人がこうした子供と同居したり出来ない場合、子供が住む場所は後見人が指定することになるのだが、それでも基本的には施設に預けられるパターンが殆どで、幼女の一人暮らしなど聞いたことが無かった。

 

「それにしてもヴァニラちゃんって、見た目に似合わんと随分力持ちなんやね」

 

はやてさんがそう声をかけてきたので、考え事は一時棚上げした。バッテリーを無駄に消耗しないように、桜台公園から電動ユニットをオフにして私が押してきたので力があると思われたようなのだが、実は当然のように身体強化をしている。

 

「これも魔法ですよ。出力は随分落としていますけれど」

 

「そっかぁ。ホンマ便利なもんやね…あ、あそこが目的地やな。手ぇ振っとるで」

 

私達が翠屋に到着すると、既にそこにはなのはさん、アリシアちゃん、ミントさんの姿があった。

 

「ごめんね、遅くなっちゃって」

 

「ううん、大丈夫。ミントちゃんもついさっき到着したところだよ」

 

「すみません。道に迷ってしまったのですわ」

 

「にゃはは…ごめんね。わたしが翠屋の場所を伝え忘れてて。で、その子が新しいお友達? 」

 

「八神はやて言います。よろしくな」

 

にこやかに自己紹介が行われる中で、なのはさんから念話が届いた。

 

<車椅子って聞いてもしかしてって思ったんだけど、この子って去年の暮れに言っていた子でしょ? 何があったの? >

 

<詳しくは後で話すよ。まぁ…完全に誤魔化しきれないところまでバレちゃったから>

 

<……>

 

<…大丈夫、だと思うよ。悪い子じゃないみたいだし>

 

<まぁ、ヴァニラちゃんがそう言うなら良いけれど。わたしもお友達が増えて嬉しいし>

 

微笑みを浮かべながら、なのはさんがはやてさんとの会話に戻る。ふとミントさんを見ると、こちらも笑顔を浮かべてはいるものの、どことなく引き攣っているように見えた。

 

「なのはちゃんとアリシアちゃんのことは、すずかちゃんからも聞いとるで。ミントちゃんはお初やろか? 」

 

「わたくしも昨日こちらに来たばかりなのですわ。これからよろしくお願いしますわね」

 

一通り挨拶を終えると、美由希さんがランチプレートを持ってきてくれた。今日は桃子さん特製のチキンカチャトラとパンだった。

 

「お待たせ。ヴァニラちゃん、大丈夫? 」

 

「はい。ご心配をおかけしましたが、大丈夫です」

 

「そっか…何かあったら言ってね。あたし達は家族なんだから」

 

以前桃子さんに言われたのと同じセリフに、何だか胸が温かくなった気がした。

 

 

 

=====

 

「うわ! これめっちゃ美味しいやん! こんな美味しいカチャトラ食べたんは初めてや」

 

カチャトラというのはトマトソースで煮込んだ肉料理だ。地球ではイタリア料理として有名なメニューだが、実はミッドチルダにも同じメニューが存在する。鶏もも肉が柔らかくふわふわした食感になるまで煮込むのがポイントで、俺もクラナガンに滞在していた頃に何度か作ったことがある。レシピとしては割と簡単に出来る一品で、特にサリカさんが大好きだったメニューだ。

 

翠屋のカチャトラはただ鶏肉を玉葱、パプリカ、マッシュルームといった野菜と一緒にトマトソースで煮込むだけではなく、そこにチーズが塗されていた。そしてこのチーズがまた絶妙な旨味を醸し出している。お手軽に作ろうとするとプロセスチーズを使うこともあるのだが、矢張りカチャトラといえばパルメザンチーズだろう。だが、このチーズは更に風味が豊かだった。

 

「マッシュルームがいい味を出していますわ。それにこのチーズ…一般的なパルメザンではありませんわね。ずっと味が濃いです」

 

「ミントちゃんも料理作るん? うん、ええ味や。風味もコクも豊かやし、パルミジャーノ・レッジャーノで間違いないやろ」

 

思わず呟いた俺の独り言に、はやてが的確な答えを返してきた。パルメザンとは本来パルミジャーノの英語読みであった筈なのだが、近年では粉状のハードチーズを総じてパルメザンと呼ぶようになってしまったらしい。

 

前世知識で、はやてが作る料理は「ギガうま」とヴィータに評されていたことを思い出した。尤も先程の会話が10歳にも満たない幼女のものだとはとても信じ難かったのだが。

 

「ええ、料理を作るのは趣味ですわね。はやてさんも料理を? 」

 

「私も趣味みたいなもんや。私、足がこんなやん? 運動とかも出来ひんけど、その代わり本は昔からよう読んどってな。最近はレシピ本にハマっとるんよ。主治医の先生はもっと子供らしい童話とかを読めばいいのにって言うんやけど、実はその手の本は読み飽きてしもうて」

 

そう言いつつペロッと舌を出すはやてを見ていて、気付いたことがあった。俺がそもそも料理にハマった切欠は、食べてくれる人が「美味しい」といってくれることが嬉しかったからだ。だが、今のはやてにその相手はいない筈だった。

 

俺は、はやてにもあの喜びを味わって欲しいと思った。

 

「はやてさん、今は少し事情があってやらないといけないことがいくつもあるのですが、全部片付いて落ち着いたら一緒に料理を作るというのは如何ですか? 」

 

「! …うん! そうしよ! うわー、楽しみやなぁ。あ、ヴァニラちゃん、なのはちゃん、アリシアちゃんも、その時は一緒にどうや? 」

 

「うん、是非! そうだ、すずかちゃんやアリサちゃんも誘ってあげようよ」

 

どんどんと話が膨らんでいく。だが嬉しそうにしているはやてを見ていると、これで良かったのだろうと思えた。

 

結局食事を終えてからも、俺達は士郎さんが用意してくれたコーヒーや紅茶を頂きながら雑談を続けた。

 

「そうだ、はやてちゃん連絡先教えて! 」

 

「ゴメンな、なのはちゃん。私、携帯持っとらんのよ。自宅の番号でもええ? 」

 

「うん、それでいいよ。あ、でも自宅の電話だとあまり遅くに掛けるのは悪いよね」

 

少し残念そうに言うなのはに、はやてはパタパタと手を振って答えた。

 

「大丈夫やよ。家におらんことも多いけど、夜やったら大抵おるし、結構遅くまで本読んだりして起きとることの方が多いし」

 

「え…? でもご両親にも迷惑なんじゃ? 」

 

「あぁ、ヴァニラちゃんには言っておいたんやけど、両親は昔事故で亡くなっとるんよ。せやから今は絶賛一人暮らし中や」

 

なのはとアリシアはその言葉が良く理解できていない様子だった。それはそうだろう、普通10歳にも満たない幼児が一人暮らしをするなどと言うことはありえないことだからだ。そういう俺自身も実際にはやての口からその言葉を聞くまで、実感できていなかったところがある。

 

「はやてさん、そのことでちょっと聞きたいことがあります」

 

声をかけたのはヴァニラだった。

 

「本来子供は親や後見人が指定した場所に住むことが法律で定められていますが、それは生活環境が確り整っている場合に限ります。はやてさんの年齢で一人暮らしというのは、どう考えてもおかしいですよ」

 

保護責任者遺棄と言うのだったか。ヘルパーさんが24時間介助してくれるのならともかく、本人に「一人暮らし」と言わしめるような生活環境は、明らかにネグレクトだろう。前世でアニメを見ていた時から不自然に思ってはいたのだが、改めて現実として考えてみると恐ろしい話だった。

 

「はやてさんの後見人の方、お名前を伺ってもよろしいですか? 少し、文句を言いたいです」

 

ヴァニラの発言を冗談と受け取ったのか、はやては苦笑しながら答えた。

 

「後見人してくれとるの、外国の人やからなぁ。あまりいじめんといてあげてな。グレアムおじさん…ギル・グレアムさんや。イギリスの人で、父親とは親友同士やったって聞いとる」

 

それを聞いたヴァニラが驚きの表情を浮かべた。ヴァニラには原作知識は無かった筈だが、明らかにこの名前に聞き覚えがある様子だった。

 

「ヴァニラさん、何か心当たりが…? 」

 

「父の…いえ、以前父が働いていた職場の上司がギル・グレアムという名前だったと聞いています」

 

「え? でもヴァニラちゃんのお父さんって…」

 

「うん。ミッドチルダの時空管理局勤め。だからもしかしたら同姓同名の別人かも」

 

はやてが不思議そうな顔をしている。どうやら「ミッドチルダ」や「時空管理局」といった単語は知識にない様子だった。ヴァニラもその辺りを失念して、口を滑らせてしまったのだろう。

 

「あまりオープンスペースで話すような内容ではなくなってきましたわよ。一度場所を変えることを提案しますわ」

 

俺がそう言うとヴァニラ達も漸く気付いたようで、慌てたように辺りを見回しながら頷いた。

 

 

 

士郎さん達に一度自宅の方に戻る旨を伝え、俺達は場所を高町家の居間に移した。車椅子は玄関に置いておき、強化した俺とヴァニラではやてを居間まで運ぶ。念のためアリシアにお願いして、ユーノも連れてきてもらった。ラタンバスケットをコーヒーテーブルの上に置き、なのはとアリシアも含めた全員がソファに座る。

 

「ここなら安心ですわね。予め言っておきますが、このフェレットも魔法で姿を変えているだけの、人間の魔導師ですわ。普通に会話も出来ますわよ」

 

「よろしく。ユーノ・スクライアです」

 

喋る動物というのは、はやてにとって漸く登場したファンタジー的な存在だったようだ。目をキラキラとさせながら挨拶をしている。区切りがついたところで、俺ははやてに尋ねた。

 

「早速ですが、はやてさんは魔法のことについてどの程度ご存知なのですか? 」

 

「うーん、ヴァニラちゃんが使うとったのを見たことがあるだけで、基本的には殆ど知らんよ? 」

 

「ではここで情報の共有をしてしまいましょうか」

 

俺とヴァニラで、魔導師は基本的には次元世界と呼ばれる別の世界から来た人間であることを説明する。そして魔法が武力に相当すること、魔法が認知されていない世界における魔法知識の流布は極力避けるべきであることについても話をした。なのはとアリシアからも補足説明が入り、はやても確り理解できた様子だった。

 

「つまり私やなのはちゃんは地球人やけど魔法が使える特殊な体質っちゅうことやな? 」

 

「その理解で問題ありませんわ。では次に…」

 

今度はロストロギアについての説明をする。これについてはユーノが細かく説明をしてくれた。そして現在下手をしたら地球規模の災害が発生しかねないロストロギアが海鳴りに散らばってしまっていること、それを回収するためにヴァニラやなのはに協力を依頼していることを話した。

 

「そう言えば、捜索に行かなくて大丈夫なの? 」

 

アリシアが聞いてきたので、今日の午前中の状況を説明した。

 

「ジュエルシードが発動すれば、魔力反応を感知することは可能ですわ。ただ発動前のジュエルシードが発する魔力は本当に微弱ですの。勿論午後はまた捜索に出るつもりですが、闇雲に探しても見つかるかどうかは運次第ですわね」

 

「なぁ、私にも何か手伝えそうなことないやろか? 」

 

はやてはそう言ってくれるが、正直なところ現状で手伝えることと言えばジュエルシードを見つけたら触らずに連絡をする、くらいのことしかないだろう。そう伝えると、はやては少し残念そうな顔をして俯いてしまった。

 

「ミントさん、はやてさんは携帯電話も持っていませんし、ロストロギアを見つけてすぐに連絡が取れるようにするなら、念話を教えておいた方が良いと思いますよ」

 

ヴァニラがそう提案してきた。

 

「はやてさんの魔力は何かに吸い取られているように少なくなっています。このような例は私は聞いたことが無いのですが病気とは違うようですし、魔力消費が殆どない念話だけなら使用しても問題ないと思います」

 

それを聞いた瞬間、俺の頭に一つのアイディアが閃いた。

 

「では、今夜はわたくしがはやてさんの家に泊めて頂くというのは如何でしょう? 勿論はやてさんさえ良ければ、ですが。いつまでもヴァニラさんのベッドを占領するわけにも参りませんし、何より念話の発信練習はデバイスのサポートがあった方が覚えも早い筈ですわ」

 

基本的に捜索担当者はデバイスを持っている必要がある。これはジュエルシードを見つけた時に封印しなければならないからだ。そして現状デバイスはレイジングハート、トリックマスター、ハーベスターの3機のみ。当然なのは、ヴァニラ、俺の3人が捜索担当になる訳だが、そうすると念話の練習は早朝か夜間に行うことになる。

 

勿論はやてが高町家に泊まるという選択肢もあるのだが、既にお世話になっているヴァニラやアリシアに加え、俺とはやてまで転がり込むのはあまりにも迷惑だろう。

 

「あともう一つ。明日は月曜日で、みなさんは学校ですわよね? その点わたくしは既にミッドで中等科課程まで修了していますし、はやてさんは休学中…まぁ正確には就学義務の猶予とか免除とか言うのでしょうけれど…とにかく一緒に動ける時間が多いというメリットもあります。むしろ暫くお邪魔する形になるかもしれませんが、如何ですか? 」

 

そして、これはみんなには伝えないが、上手く立ち回れば闇の書事件に介入する時のアドバンテージにもなる。勿論これは打算なのだが、俺の説明を聞いていたはやては最初こそ驚いたような表情を見せていたものの、すぐに花が咲くような満面の笑顔を見せた。

 

「うん! うん!! 大歓迎や! むしろ好きなだけおってくれてええんやで! 」

 

こうして俺は地球に滞在する間は八神家で生活することになった。高町家の人達とはヴァニラやなのはを通して連絡を取り合い、連携してジュエルシード捜索を行うことにした。

 

「ユーノさんは万が一のことを考えて、高町家に残って下さいませ。ヴァニラさんは優秀な治癒術師のようですし、確り養生して下さいな」

 

「うん、判ったよ。ミントも気を付けてね。ところで…リニスさんやプレシアさんにもう連絡は入れたの? 」

 

ユーノがそう言った瞬間、明らかにアリシアとヴァニラが動揺した。

 

「トリックマスターの長距離通信機能はまだ回復していませんわ。数日中には回復すると言っていましたが」

 

「ねぇ! 今、ママに連絡するって言った!? 連絡出来るの!? 」

 

「ええ、デバイス間通信を使えば恐らくは可能ですわね」

 

そう言えばデバイス間通信が普及したのはここ十数年のことで、ヴァニラ達がミッドチルダにいた頃には、この技術は無かった筈だった。説明不足を謝り、デバイス間通信について簡単に説明する。

 

「残念ながら今トリックマスターの通信機能は修復中ですが…数日中には連絡できると思いますわよ」

 

「ヴァニラちゃん! 連絡出来るって! 」

 

「う…うん、そうだね」

 

ヴァニラはまだ少し状況に追いつけていない様子だった。いや、もしかしたら飛び越えてしまった26年のブランクを改めて見せつけられることに戸惑っていたのかもしれない。

 

「ねぇミント…フェイトの連絡先で良かったら、レイジングハートに登録してある筈だけど」

 

「…は? 」

 

「マリユースやコレット、エステルの連絡先もあるけど…フェイトなら今プレシアさんと一緒に次元航行艦に乗っているんだよね? 」

 

今度は俺が固まる番だった。そしてフリーズから復活した後、俺はレイジングハート経由でフェイトの連絡先をコールして貰うことにした。

 

「なのはさん達のお話も出ると思います。出来れば士郎さん達にも同席して貰いたいですわね」

 

「うん、判った。呼んでくるね」

 

そう言って翠屋に向かったなのはが戻ってきたのは数分後だった。一緒に来たのは士郎さんと美由希さんだった。

 

「例の、時空管理局と通信できる算段が付いたんだって? 」

 

「ええ。厳密に言えば管理局内の一部隊に所属している友人に、ですが。…なのはさん」

 

俺の言葉に頷いて、なのはがレイジングハートを差し出してくる。ヴァニラとアリシアは緊張した面持ちだ。俺は1度軽く息を吐くと、レイジングハートにフェイトへのコールを依頼した。

 




次回に続く、です。。
当面の間ヴァニラは高町家、ミントは八神家で生活することになりそうです。。
やっぱり両家での生活は欠かせないテンプレですよね。。(笑)

前回は殆どヴァニラ視点だったので、今回はミント視点メインにしてみました。。
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