他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

68 / 83
※今回はヴァニラパートのみです。。


第19話 「夜天の魔導書」

なのはさんと一緒に朝練を終えて帰宅し、丁度朝ご飯を終えたところでクロノさんから連絡が入った。どうやら無限書庫で闇の書について調査をしていたユーノさんやリニス達から報告が入ったらしい。

 

幸い今日は日曜日で学校はない。翠屋に向かう士郎さんや桃子さんに事情を説明すると、恭也さんも付き添ってくれることになった。まずは朝食の後片付けを始める。

 

「洗った食器を回してくれ。拭いてしまっておくから」

 

「恭也さん、ありがとうございます。なのはさん、洗い物だけ速攻で済ませたらすぐに出よう」

 

「うん! あ、はやてちゃんも来るって言ってたから、待ち合わせ出来るよ。エルシオール、おいで」

 

≪Yes, my master.≫【はい、マスター】

 

桜色のペンジュラムがふよふよと飛んできて、洗い物をしているなのはさんの首にかかった。私も同じようにハーベスターを準備しておいた。

 

洗い物は恭也さんも手伝ってくれたおかげですぐに片付いた。そのまま家を出ると、待ち合わせ場所の臨海公園まで駆け足で向かう。

 

「あ、なのはちゃん、ヴァニラちゃん。おはよう~」

 

待ち合わせ場所に着くと、こちらに気付いたはやてさんが手を振ってきた。シグナムさんとシャマルさんも一緒に来ている。

 

「はやてさん、おはよう。シグナムさんとシャマルさんもおはようございます」

 

「おはよう、みんな。ゴメン、待たせちゃったかな? 」

 

「いや、我等もつい今しがた到着したところだ」

 

ザフィーラさんはヴィータさんと一緒に留守番らしい。ザフィーラさんと意気投合していた恭也さんは少しだけ残念そうな表情をしていたが、さすがにまだ全員揃ってアースラ、という訳にもいかないのだろう。取り敢えず全員が揃ったところでアースラに連絡を入れる。

 

『みんな揃った? じゃぁ座標を固定。ゲートを開くよ~』

 

エイミィさんがそう言うと、目の前に魔法陣が展開され、光が溢れた。

 

 

 

昨夜アースラに泊まっていたミントさんやアリシアちゃんはプレシアさんやフェイトさんと一緒に、既にブリーフィングルームで私達を待っていた。

 

「すみません、お待たせしました」

 

「あぁ、来たか。じゃぁ早速だが始めるとしようか」

 

クロノさんが若干やつれたような表情でそう言った。

 

「クロノさん…またお疲れですか? 」

 

「いや昨夜はちゃんと寝たし、さっきまでは別に疲れていなかったんだ。というか、ちょっとした気疲れだから気にしなくてもいい。取り敢えずユーノ、報告を頼む」

 

全員が適当に席に座ると、ユーノさんとリニスが説明を開始した。その説明を聞きながら、何となくミントさんとフェイトさんを見る。

 

(…一昨日とはずいぶん雰囲気が変わったなぁ)

 

ミントさんは随分と元気になったように見えた。フェイトさんの計画は無駄になってしまったかもしれないが、元気があるのは悪いことではない。少し安心した私はユーノさんとリニスの説明に集中することにした。

 

 

 

以前グレアム提督にお会いした時にも聞いたのだが、闇の書は本来「夜天の魔導書」という、色々な魔法を記録して研究資料にするための、健全な魔導書だったらしい。グレアム提督の使い魔、リーゼロッテさんとリーゼアリアさんが捜索に協力する際に、その情報も提供してくれたため、ユーノさん達は「闇の書」と「夜天の魔導書」という2つのキーワードからの捜索を行うことが出来たようだ。

 

『おかげで随分と色々なことが判ったよ。どうやら歴代の所有者の誰かが、魔法の記録をしやすくしようとして、各地を簡単に転移できるような術式を組み込んだらしいんだ。でもこの術式は魔導書が本来持っていた防衛プログラムと競合するものだったみたいだね』

 

その時点でも若干の不具合はあったようなのだが、無理をすれば使えないことはない状態だったため、その所有者は不整合を無視し続けたらしい。

 

『決定的に魔導書がダメージを負ったのは、他の所有者の手に渡ってからだね。その所有者は記録された魔法の破損を自動修復する術式を組み込んだんだ。これが夜天の魔導書の基幹プログラムに悪影響を及ぼした』

 

パソコンなどで言えば、レジストリに余計な文言が書き込まれることで、まるでウイルスに感染したかのような挙動をするようなものらしい。既に魔導書として完成形になっていたところに競合プログラムが複数導入されればバランスも崩すというものだ。

 

『ちなみに守護騎士のプログラムは、元々各地を旅して魔法を記録する持ち主の護衛のために、夜天の魔導書に組み込まれたシステムだったようですが…』

 

「…その辺りの記憶は殆どないな。確かに主の護衛をする、という意識はあるのだが…役に立てず、すまない」

 

リニスがユーノさんの言葉を引き継いで説明するが、シグナムさん達は本能的に主を護衛するということを認識しているだけで、その当時の記憶は無いとのことだった。

 

『いえ、お気になさらず。恐らくですが、競合術式によるシステム改竄でいくつものバグが発生したのでしょう。記憶が無いのはその影響だと考えられます。はっきり言って、現代では考えられないような杜撰なシステム管理ですね』

 

リニスが溜息を吐きながらそう言った。プレシアさんのサポートを行う関係でデバイスマイスターの資格を取得したというリニスにとって、無計画に相性の悪い術式を組み込む行為は理解できないようだ。

 

『…自動修復術式と転移術式が反応しあって基幹プログラムを侵食し、守護騎士プログラムにも一部影響を与えたというのが事の発端ですね』

 

「それだけなのか? それなら術式をアンインストールしてしまえば全て解決するようにも思うが」

 

クロノさんがそう問いかけると、今度はユーノさんが答えた。

 

『説明するだけなら簡単なんだけれどね…実際はリニスが言った、反応っていうのが曲者なんだよ。もう解せない状態まで絡まった糸みたいなものさ』

 

自動修復の術式が記録された魔法だけでなく、システムにまで影響を及ぼすことになってしまい、それに加えて不整合を起こしていた転移機能まで取り込んで、無限に再生、転生を繰り返すようになってしまったのだとか。

 

『更にまずいことに、守護騎士プログラムの一部を取り込んだことで、極限まで魔力を溜め込んだ後に暴走し、その魔力を全て放出した後に転生する新しいプログラムが出来上がってしまいました。これが『夜天の魔導書』が『闇の書』と呼ばれるようになった切欠…防衛プログラム『ナハトヴァール』だそうです』

 

「そんな…だって闇の書が完成すれば大いなる力が手に入るって…」

 

「…いや、それすらもバグとやらによって歪められた記憶なのだろうな…考えてみれば、私達は今まで主達が大いなる力を手にしたところに立ち会ったことすら無い」

 

シャマルさんの言葉をシグナムさんが制する。

 

「じゃぁ私達が今までしてきたことって…」

 

「…破壊を撒き散らすためのエネルギー集め、ということか…」

 

シャマルさんとシグナムさんが悔しそうに俯く。すると隣にいたはやてさんが声を上げた。

 

「なぁ、それ何かの間違いとちゃうんか? 頑張りが報われん話なんて無いやろ? 」

 

『はやて…ゴメン。これは事実なんだ。蒐集すればその魔力を使って主を取り込み、破壊を撒き散らす。蒐集しなければ宿主の魔力と生命力を吸い尽くして転生する。それが今の夜天の魔導書…いや、闇の書なんだ』

 

「せやけど! そのナハトなんとか言うんを上手く制御出来へんかっただけで、それが暴走みたいに…とか…」

 

はやてさんは最後まで言い切れなかった。ユーノさんが悲しそうに首を振ったからだ。闇の書は魔力を蒐集しないことで主の魔力と生命力を吸い取る。はやてさんの足が麻痺しているのは正にこの所為だったのだ。そしてこのまま放置すれば遠からずはやてさんの命は尽きて、闇の書は別の主の下へ転生してしまうということになる。

 

「そんな! ユーノくん、何とかならないの? 」

 

辛そうにしているはやてさんの代わりに、なのはさんもそう問いかけた。その時、私はグレアム提督達と話をしていた時のことを思い出した。あの時、グレアム提督は「管制人格の起動が出来ていない」と言っていた筈だ。守護騎士達もコンタクトこそ出来ないと言っていたが、彼等を統括する存在として認識している様子だった。もしかしたら今回の件に関しても解決方法を知っているかもしれない。

 

「…ユーノさん、リニス、管制人格って判る? 」

 

『それはアリアやロッテから聞いているよ。一定量の魔力を蒐集することで覚醒し、限界まで魔力を溜め込むと具現化するみたいだね』

 

そもそも闇の書が魔力を蒐集すると書内のページが埋まっていき、666ページが埋まると魔導書として完成するらしいのだが、その直後に具現化した管制人格が主と融合して暴走してしまうらしい。

 

「…書を完成させずに、管制人格の意識だけを覚醒させることは可能? 」

 

『可能だと思いますが…正確な蒐集量は掴めていません。最近の事例では300ページから400ページ程の蒐集が完了した時点で何らかの変化があった様子ですが、過去にはもっと早いタイミングでの覚醒や、書が完成する前に具現化したなどの記録もあるようです』

 

私は以前守護騎士達と話をした際に、管制人格ならより詳しい情報を持っているかもしれないと感じたことを説明した。勿論闇の書を完成させるのは回避しなくてはならないだろうが、完成前に意識を覚醒させることが出来るのであれば、試す価値はあるかもしれない。それについてはシグナムさんも肯定してくれた。

 

『判った。管制人格覚醒についての詳しい情報は引き続き調査するよ。もしかしたらヴァニラが言うように何か打開策を知っているかもしれないしね』

 

ユーノさんがそう言ったところで、はやてさんがおずおずと手を挙げた。

 

「…なぁ、その管制人格言うんは、具体的にはどういう人なん? 具現化するっちゅうことは、シグナム達と同じような人なんやろ? 何かの情報を知っとるかもしれへんちゅうことは判ったんやけど…」

 

「管制人格については私が説明しましょう、主はやて。彼女は我らのように主を護衛するのではなく、直接主と融合して力を与える存在です」

 

彼女、ということは女性なのだろう。融合するという部分がいまいちピンとこなかったのだが、シグナムさんの説明によると、どうやらインテリジェント・デバイスを極限まで擬人化したようなもので、有事の際には主と合体して魔法を行使する際の管制や補助をしてくれるらしい。

 

「成程…夜天の魔導書はベルカのユニゾン・デバイスでもあったのね…」

 

プレシアさんが口にした「ユニゾン・デバイス」という言葉は聞き慣れないものだった。

 

「古代ベルカで開発されたデバイスの一種よ。反応速度や魔力量ではミッド式デバイスを遥かに凌ぐ性能だったらしいけれど、術者に融合適性が求められることや融合事故という、デバイスが術者を乗っ取ってしまう現象の危険性があったことから量産されることが無かったと伝えられているわ。もしバグを全て取り除いて正常化出来るなら、是非この目で見てみたいものね」

 

『ですがプレシア、バグを全て取り除くのはかなり困難と思われます。まず現在の闇の書の状態ですが、主以外の人間が外部からアクセスしようとすると先程お話ししたナハトヴァールが暴走して主を取り込み、転生してしまうようです』

 

しかも、主というのはただ所有者に選ばれるだけでなく、魔導書の完成後にマスター認証を実施する必要があるらしい。

 

「…っちゅうことは、どうにかしよう思うたら結局蒐集はせなあかん言うことでしょうか…? 」

 

「でも、完成しちゃったら暴走するんだよね? どうしたらいいんだろう…」

 

それは答えの出せない問答のようなものだった。暫くの間、沈黙が続く。それを破ったのはクロノさんだった。

 

「…仕方ないだろう。まずは管制人格が起動出来るまで、何らかの方法で蒐集をしよう。書を完成させずに事態を終息させる方法については、管制人格の意見も参考にしないといけないだろうしな」

 

「せやけど、蒐集は対象の身体に極端な負担をかけるんやろ? 場合によっては命に関わることもあるらしいやんか。私は他人様に迷惑をかけるのは嫌や…」

 

はやてさんはそう言うと、俯いてしまった。隣にいたシャマルさんがそっとはやてさんの肩を抱く。その時、ミントさんがクロノさんに問いかけた。

 

「クロノさん、リンカーコアを持っているテロリストを捕縛した時に蒐集することは出来ませんの? 」

 

「…心情的には判るんだが、犯罪者だからといって問答無用で苦痛を与えるのは、管理局員としてどうかと思うぞ」

 

クロノさんが苦笑しながらそう言った。それは問答無用でなければ…つまり、双方合意の上でなら問題ないということだろうか。

 

「ジュエルシードの件が落ち着けば、わたくしのリンカーコアを媒介にしてジュエルシードの魔力を蒐集するという手もありますわよ」

 

ミントさんも同じように考えたのか、そんなことを言い出した。

 

「あかん、あかんて! 私は誰にも迷惑かけとうないし、誰にも痛い思いをして欲しくないんや」

 

「ですが、わたくしははやてさんのお友達ですわ。お友達が困っているなら助けたいと思うものでしょう? 」

 

「あ! それならわたしも同じだよ! わたしも協力したい! 」

 

ミントさんの言葉になのはさんも同調した。

 

「私も、はやてさんの治療の一環としてなら魔力量以上の蒐集が可能かもしれないし」

 

私もそう言ったのだが、ミントさんはゆっくりと首を振った。

 

「これはブラマンシュであるわたくしが適任なのですわ。ジュエルシードから無制限に魔力を供給して貰えますから。それからなのはさんもそうなのですが…特にヴァニラさんはもう少しご自身を大切になさって下さいませ」

 

「え…それって、どういう…? 」

 

ミントさんが言いたいことが一瞬わからずに聞き返してしまった。

 

「適材適所、ということですわ。今回はシャマルさんも治療役に回って下さるでしょうけれど、本来治癒術師という存在は、まず自身の安全を確保した上で他者の治療に当たるべきなのです。先日の次元震でヴァニラさんが両手に大怪我を負った時、完全に治癒出来なかったわたくしの悔しさ、判って下さいませ」

 

ミントさんにそう言われて、私は返す言葉が無かった。次元震が起きた時、もし怪我をしたのが私じゃなかったら、私はその怪我を完全に、即座に治すことが出来た筈だ。他者を治療する人間は、他者よりも先に墜とされてはいけない。それは理屈では判っていたものの、つい先日まで実感すらしていなかった。

 

今回実際に蒐集することになれば、守護騎士達は確り手加減をしてくれるだろうし、シャマルさんも回復系魔法が得意とのことなので命の危険は限りなく少ないだろう。それでもミントさんが言う通り適材適所ならば、私がシャマルさんと一緒に治療に回るのが最善であることは理解出来た。

 

「まぁテロリスト…特にルル・ガーデンとの戦いにミントは必要不可欠だし、仮にさっきの案を承認するとしても、ジュエルシード捜索の都合もあるから最低でも1週間は無理だ。取り敢えずその話はもう少し待ってくれ。それから、ヴァニラ」

 

クロノさんはそう言うと、改めて私の方に向き直った。

 

「さっきミントも言っていたが、君はまず自分が無事に生き延びることを考えてくれ。間違っても攻撃に晒された仲間の身代りになろうなんて思わないでくれよ」

 

「…判りました」

 

私はそう頷くしかなかった。

 

「ところで、他に打ち合わせておかないといけないことは無かったかしら? なければユーノさんやリニスさんにはそろそろ休んで貰おうと思うんだけど。2人共徹夜しているみたいだから」

 

リンディ提督が少し沈んだ空気を断ち切るようにそう言った。

 

「…お2人共、あまり無理はなさらないで下さいませ」

 

『それはこっちのセリフだよ、ミント。さっきの提案は寿命が縮むかと思ったよ』

 

聞けばアルフさんやグレアム提督の使い魔達も一緒に徹夜しており、先に休んでいるとのこと。ユーノさんとリニスは報告のためだけに起きていたのだそうだ。

 

「あぁ、終わる前に聞いておきたいんだけれど、次の調査は管制人格に関する情報収集ということで良いのよね? 」

 

プレシアさんの言葉にユーノさんが頷いた。

 

「出来れば管制人格のプログラムを保存するのに、どのくらいの容量が必要なのかも調べて貰えないかしら。古代ベルカのユニゾン・デバイスなんて早々お目にかかれないし、バグから切り離せなかった場合も考慮してデータだけでも保存しておきたいわ」

 

『確かにそれが可能ならレストアも出来るかもしれませんね。了解です』

 

プレシアさんの言葉にリニスが頷く。どうやら万が一に備えて管制人格のバックアップが出来るようなストレージを作成するつもりらしい。

 

「ただ古代ベルカのユニゾン・デバイスの管制人格だから、最低でもゼタバイト…いいえ、ヨタバイトを超えるような容量になると思うわ。そうすると製作は年単位になってしまうわね。ミッドから誰か、腕のいい技術者をサポートで迎えられると嬉しいのだけれど」

 

「あ、あたしはお手伝い出来ますよ! アースラのオペレーターとしてのお仕事もあるから、手が空いている時に限られますけれど…」

 

エイミィさんがそう言うが、プレシアさんは苦笑しながら答えた。

 

「ごめんなさいね、エイミィ。言葉が足りなかったわ。貴女やリニスはもう頭数に入っているの。それでも最低あと2、3人は協力者が欲しいわね」

 

さすがにアリシアちゃんやすずかさんをサポート役にする訳にもいかないだろうと思っていたのだが、プレシアさんはどうやら彼女達もお手伝い程度で参加して貰うつもりだったようだ。

 

「確か3年くらい前に本局の技術部に入った子がかなり優秀だっていう話を聞いているわ。マリエル、だったかしら? でも闇の書のことを公に出来ない以上、引っ張ってくる理由付けが必要ね。守秘制約も課さないといけないでしょうし」

 

リンディ提督が少し考えるようにそう言う。

 

「艦長、マリーなら一応面識もありますよ。守秘の件に関しては大丈夫だと思います。制約は勿論課す必要はあるでしょうけれど、秘密を漏らすような子じゃないんで」

 

「そう? エイミィがそう言うなら大丈夫ね。表向きの招聘理由については考えておくわ。でも少しかかるわよ」

 

「ありがとう、リンディ。リニス達の調査ももう少しかかるでしょうから、それは構わないわ。あと他にも技術者の心当たりはないかしら? 」

 

「そうねぇ…当たってはみるけれど、何人も同時に招聘するのは難しいわね」

 

リンディ提督とプレシアさんがそんな話をしていると、珍しく恭也さんが発言を求めた。

 

「技術者っていうのは、別に地球の人間でも構わないかな? それなら1人、紹介出来ると思うけれど」

 

「そうね、信用できる人なら助かるわ」

 

プレシアさんがそう言って先を促した。

 

「月村忍…すずかちゃんの姉だよ。そもそも彼女が機械工学系の進路を希望しているのは、姉の影響でもあるんだ。為人は俺が保障するよ。すずかちゃんも、そろそろ姉に色々と黙っているのは限界だろうしね」

 

「成程。じゃぁ近いうちにお会い出来るように、お話しをしておいて貰えるかしら」

 

こうして一通りの打ち合わせを終えたのだが、最後にクロノさんがユーノさんを呼び止めた。

 

「一応君達のポート使用はロストロギア調査の名目で、無制限で許可が下りている。あまり無理しないで、出来れば夜はアースラに戻って休んでくれないか? 」

 

『仮眠ならこちらでも取れるけれど…』

 

「難しそうなら3日に1度でもいい。君が長期間いないと、ミントがやたら不機嫌になるんだよ」

 

苦笑しながらそう言うクロノさんに、ミントさんが「そんなことはありませんわ! 」と噛みついていたが、顔が真っ赤になっていたのであまり説得力は無かった。それを聞いていたユーノさんも同じように真っ赤だ。

 

『あ、あぁ、うん。判った。出来るだけ、その、戻るようにするから』

 

ユーノさんはそう言って、そそくさと通信を切った。打ち合わせが終了すると、ミントさんはすぐに立ち上がって言った。

 

「さ、さぁ、折角ですし、今日の分のはやてさんへの魔力譲渡を済ませてしまいますわよ! 」

 

あまりにも初々しい感じがするその態度に、思わず口元が緩む。

 

「あ、ミント。ちょっといいかな? 実はヴァニラやなのはとも相談して、2 on 2で模擬戦をやろうと思ったんだけど、後で時間とれる? 」

 

フェイトさんがミントさんを元気付けようと企画していたのはペアでの模擬戦だった。一応元気は取り戻した様子ではあったが、折角なので企画自体は実行することにしたようだ。それを聞いたミントさんは少し考えるような素振りを見せた後、こう言った。

 

「折角ですし、守護騎士にも参加して貰って3 on 3にしましょう。シグナムさん、シャマルさん、如何です? 良い気分転換になると思いますわよ? 」

 

「そうだな…私も少し身体を動かしたい気分だ。参加させて貰えるか? 」

 

こうして私達はその日の午後に、アースラのトレーニングルームを借りて模擬戦をすることになった。これははやてさんにとっても良い気分転換になったようで、アリシアちゃんと一緒に嬉しそうに応援をしていた。

 

ミントさん、シグナムさん、シャマルさんが1チームで、私はなのはさん、フェイトさんとチームを組むことになったのだが、結果は私達の惜敗だった。原因はダメージを受けたなのはさんを回復させるよりも助けに入ることを優先してしまった私のミスで、少し前にミントさんとクロノさんに言われたことをそのまま実感することになった。

 

「悔しいけど、楽しかった。またやりたいな」

 

なのはさんは笑顔でそう言ったが、私としては色々と課題が残る結果だった。

 

 

 

その日の夜、私はハーベスターに相談を持ちかけた。

 

「やっぱり回復役が最初に落とされるのはマズいよね…防御力を高めるのに良い方法は無いかな? 」

 

≪You may need to consider how you can spare your partner, rather than increasing self-defense. The tactics should be changed according to the circumstances. The best way to learn this will be practice.≫【マスター自身の防御力を高めるより、仲間を生かす方法を熟考するべきでしょう。戦術は状況によって変わりますので、とにかく練習あるのみです】

 

「そっか…ありがとう」

 

今まであまりチームで戦う練習はしたことがないが、今後はテロリスト達との戦闘の中で、なのはさん達をサポートしながら戦う機会も増えてくるだろう。そうした状況で的確な判断を下すには、矢張り練習を重ねるのが一番のようだ。

 

≪Also, I recommend you to establish a magic, which extend your life, in case if you were fatally wounded accidentally.≫【それから万が一マスターが致命傷を負った場合のために、延命系の魔法を構築しておくことをお勧めします】

 

「延命かぁ…それだと、バイタル低下をトリガーにする自動発動の術式をハーベスターにインストールすることになるのかな? 」

 

≪Definitely. Please configure the magical power usage as unlimited, and make sure its effectiveness should be same as "Regeneration" or upper.≫【その通りです。構築に際して使用魔力は無制限、効果は『リジェネレーション』と同等以上に設定して下さい】

 

「随分と大がかりだね。それだと確実にSSSクラスの魔法になっちゃうだろうけど…うん、判った。近いうちに構築してみるね」

 

先日プレシアさんに長距離デバイス間通信ユニットを増設して貰い、管理権限を移譲して貰った際に、念のためリミッターも一部解除しておいた。これによりハーベスターはプログラムされた魔法を行使する際に、私の魔力を無制限で使用できるようになった。

 

「出来上がったらテストしないといけないけれど、さすがにバイタルは低下させられないから疑似的にね」

 

≪All right.≫【了解です】

 

結局この魔法が完成したのは暫く後になってからのことだった。そしてあまり活躍して欲しくは無いこの魔法の名前は「リザレクション」となっていた。

 




投稿が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。。
状況説明&つなぎの回だったこともあって、何度も書き直しが発生していたのですが、やっぱりタブレットでの投稿は相応に時間がかかってしまいました。。

PCのリカバリーですが、HDDを新規購入して自力で直してみることにしました。。
一体型なのでまだ時間はかかりそうですが。。

完全復旧するまではペースが落ちてしまいますが、引き続きよろしくお願いいたします。。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。