他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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※連続になりますが、今回もミントパートのみです。。


第27話 「雷撃」

お兄ちゃん騒ぎがあった翌日、はやてへの魔力譲渡を終えた俺はまたルルが収監されている拘束室に向かった。万が一のことを考慮して食事の提供も全て俺が対応しているのだが、既に4日も経っていることもあり手慣れたものだ。既にこうした作業も日常の光景になりつつあった。

 

「…一体いつまでこんなところに閉じ込めておくつもり? 」

 

「貴女が素直に色々なことを喋ってくれるまで、だと思いますわよ」

 

「そう簡単に口を割る訳ないじゃない」

 

拘束室の配膳口から食事を渡す。ふと、ルルの雰囲気が昨日までと少し違っているような気がした。暫くその場に留まって様子を伺うが、どこがどう違っているのかといった詳細までは認識出来なかった。

 

「…気が変わったら、いつでも歓迎しますわよ」

 

「それより私の部下が爆発したって言ったわよね。あれ、いつのことだったかしら? 」

 

不意にルルから質問を受けて、一瞬まじまじと彼女の顔を見つめた。

 

「…何よ」

 

「いえ、別に。貴女達を拘束したのが4日前、彼が爆発したのがその翌日ですから、3日前ですわね」

 

「そう…判ったわ」

 

それだけ言うと、ルルは興味を無くしたかのように俺から視線を外した。それからはいつも通り、話しかけても特に返事は無かった。相変わらず昨日までとは違った雰囲気のような気はするのだが、はっきりとどこが違う、というようなことが判る訳でもない。軽く溜息を吐くと、俺はルルの拘束室を出てブリッジに向かった。

 

 

 

「あら、ミントさん。いらっしゃい」

 

リンディさんが笑顔で迎えてくれる。一応アースラの内部は機密だらけだった筈なのだが、なし崩し的に民間協力者になってしまった俺の扱いは嘱託魔導師であるフェイト達と殆ど変らず、ブリッジに入ってもこうして歓迎して貰える。最近ではクロノも諦めている様子だ。

 

「リンディさん、お疲れさまです」

 

「今日は玄米茶を淹れて貰ったの。ミントさんも如何? 」

 

「ありがとうございます。頂きますわ」

 

緑茶だけでなく、玄米茶にもミルクと砂糖をたっぷり投入するのがリンディさんクオリティ。見た目は怪しい色の飲み物になってしまっているが、これも意外と美味しい。エイミィさんからその玄米茶ラテのようなものを受け取ると、そこに更にミルクを追加した。ちなみに玄米茶1に対してミルク2くらいの割合が個人的にはベストだと思っている。

 

「ところで、今日は何の御用かしら? 」

 

「ジュエルシード探索の現状を確認しに来たのですが…さすがに進捗はなさそうですわね」

 

海中のジュエルシードを確保した後も念のため地上の探索は続けて貰っていたのだが、矢張り新規のジュエルシードは見つかっていない様子だった。尤も海中にあったジュエルシードを封印する前にも1週間地上の探索でヒットなしだったことから、これは想定内のことだ。

 

「残りは4つだったわね。探索でも見つからず、発動もしていないのだから、十中八九テログループの手に渡っているものと考えてよさそうね。尤もだからといって探索をやめる訳にはいかないのだけれど」

 

「問題はそのテログループがどこを拠点にしているのかが判っていないことですよ、艦長。あ、ミントちゃん、お茶のお代わりは? 」

 

エイミィさんがポットを持って来てくれたが、今は大丈夫と首を振る。

 

「…そう言えば、ルル・ガーデンの様子はどうだ? 少しは落ち着いたのか? 」

 

「さっき見てきた限りでは、平常運転の様子でしたわね…ただ少し雰囲気が今までと違っていたような気はしましたけれど」

 

オペレーターに何やら指示を出していたクロノがこちらに問いかけてきたので、何の気なしに先程の感想を伝えた。するとクロノは神妙な顔つきで少し考えるような素振りを見せた。

 

「一応、録画してあった映像データを確認してみよう。エイミィ、準備してくれ」

 

「気のせいかもしれませんわよ? 」

 

「ダメ元でも良いさ。ただ、クルーの中でルル・ガーデンと一番接しているのが君だからな。違和感があったのなら、もしかしたら何かの突破口になるかもしれない」

 

クロノはそう言うと、エイミィさんの席に向かった。俺も慌てて後に続く。

 

「準備出来てるよ。データ抽出も完了…再生するね」

 

エイミィさんが再生したのは十数分前の映像。一通り映像を観た後で、今度は隣のモニターに前日以前のデータも再生される。エイミィさんがコンソールをカタカタと叩くと、ルルの表情がモニター上に数値化された。

 

「成程ね…ぱっと見だと殆ど判らないけれど、口角がほんの少しだけ上がっているね」

 

「つまり…笑っている、ということか? 」

 

それを聞いた途端、嫌な予感がした。全体的にいつもよりも僅かに口角が上がっている様子だったのだが、特に笑ったと思われるデータが残されていたのは、丁度銃の男が爆発してから3日経ったことを告げた直後のことだったのだ。

 

「クロノさん、もしかすると…」

 

「ああ、判っている。テロリスト達の襲撃が計画されている可能性も考慮しておいた方が良いだろうな」

 

今までに恭也さん達が捕えたテロリストは地球で捕縛されたままになっているようだが、今アースラにいるのは人工リンカーコア改め模造レリックを埋め込まれていた魔導師もどきだ。しかもオリジナルレリックを埋め込まれていることが確定的である、ルル・ガーデンもいる。当然、以前捕えられたテロリストとは保持情報量が違う筈だ。

 

「…奪還、或いは口封じですわね」

 

「どんな手で攻撃してくるかは判らないが、次元空間では通常レーダーの精度が極端に落ちる。念のためいつでも通常空間に退避できるようにしておく必要があるだろうな」

 

ちなみに今アースラは通常の宇宙空間ではなく、次元空間内に留まっている。ただ万が一通常空間に出てしまったとしても、艦全体を覆う認識阻害魔法の効果により地球から観測されることはまずないだろう。それでも矢張りこんな大きな艦が地球の衛星軌道上に、誰にも気付かれずに停泊するというのは困難だしリスクも高い。次元空間内だけで対応出来るなら、それに越したことはないのだ。

 

「魔導師同士がこういう状況で戦う場合、本来警戒すべきなのは次元跳躍魔法による攻撃なんだけれど…」

 

リンディさんがそう言って首を傾げる。

 

「勿論その可能性も考慮してはおきますが、基本的には魔法攻撃よりも質量兵器による攻撃を警戒するべきですね」

 

「そうね、今までの経緯から考えると、それが妥当だわ」

 

リンディさんとクロノの話を聞きながら、ふとアースラの武装が気になった。アースラといえばアルカンシェル搭載可能艦ではあるが、アルカンシェルは殲滅力が高すぎることから平時の運用は認められておらず、当然今のアースラには取り付けられていない。だがそれ以外にアースラの兵装というものを見た記憶が無かったのだ。

 

だがその疑問を口にすると、クロノはさも当然のように答えた。

 

「何を言っているんだ? 仮にも次元世界の治安を守る次元航行艦、それもL級艦だぞ。兵装を搭載していない訳がないだろう」

 

「左舷と右舷にそれぞれ5門ずつ、合計10門の中距離魔力砲、ブレード側面には近接迎撃用として魔力ファランクスタイプのCIWSも装備しているんだよ」

 

エイミィさんが図解入りで兵装の説明をしてくれるが、モニターに映し出された華奢な砲塔を見る限り、若干の頼りなさを感じてしまうのは仕方ないだろう。正直、最初に見た時には砲塔ではなく何かをひっかけるフックのようなものとさえ思っていたのだ。

 

「ミントさん、不安かしら? 」

 

リンディさんが俺の横に立つと、そう聞いてきた。

 

「そうですわね…正直に申し上げますと、確かに不安に思うところもありますわ」

 

「気持ちは判るわ。元々アースラの運用目的は治安維持や巡視であって、兵装だって必要最低限のものですものね」

 

「しかも相手がどんな手段を取ってくるのか、全く見えないところもある。魔力防壁は出力を最大まで上げておこう。それから艦長、万が一の時はお願いします」

 

「ええ、判ったわ。プレシアにも協力して貰いましょう」

 

リンディさんもプレシアさんも自身が保有する魔力だけでなく、魔力駆動炉など他の媒体からの魔力供給を受けることで素の魔力量を超える魔力を行使できる。レアスキルのように個人特有のものではないのだが、外部からの魔力供給を制御するのは非常に困難で、使いこなすことが出来る人はそう多くはいないらしい。

 

この制御が出来る人は魔導師ランクを取得する際に「条件付き」として通常よりも高いランクを保持できるのだ。ちなみにプレシアさんは基本がSランクの条件付きSSランク、リンディさんは基本がAA+ランクの条件付きS-ランクとのこと。尚、これはあくまでも魔導師ランクであり、個人が保有する魔力量とはまた異なる。

 

そんなことを考えていると、丁度ブリッジにプレシアさんがやってきた。どうやらリンディさんが呼び出していたらしい。一緒にやってきたフェイトに軽く挨拶をする。

 

「ミント、お疲れさま。何かあったの? 」

 

「例のテロリストの件ですわ。アースラが襲撃される可能性が出てきたものですから」

 

俺がそう言うと、フェイトも表情を引き締めた。リンディさんがプレシアさんに状況を説明しているのを横で一緒に聞く。

 

「…襲撃される可能性が高いことは判ったわ。問題は襲撃がいつ、どのような方法で行われるかが判らないことよね」

 

「はっきり言えば今、この場で襲撃があってもおかしくない状況よ。第四種警戒態勢ね」

 

アースラでは第一種から第四種までの警戒態勢があり、第四種が最も厳しい状況であることを示す。軍隊などで使われる第一級や第二級といった戦闘配置とは逆順のようだが、生前に観たことがある怪獣映画で使われていた言葉と同じだったこともあり、すぐに馴染むことが出来た。

 

「ですが艦長、第四種警戒態勢ということになると転送ポートを使用した移動は近距離の戦闘行動に限定されます。そうするとはやてちゃんや守護騎士のみんなも戦闘行動中、アースラに滞在することになりますが」

 

「それは仕方ないわね。むしろアリシアさんやなのはさんが巻き込まれずに済んだことを幸いとしておきましょう。はやてさんには守護騎士がいるから大丈夫だとは思うけれど、念のため武装隊の護衛をつけておいて貰えるかしら」

 

エイミィさんの問いかけにリンディさんが答え、クロノに指示を出す。

 

「姉さんやなのははともかく、リニスとアルフも戻ってこれないね…ユーノもだけど」

 

クロノが艦内に第四種警戒態勢を発令していると、ふとフェイトがそう呟いた。

 

「そうですわね。戦力としてあてに出来る分、残念ではありますが…仕方ありませんわ。ところでクロノさん、わたくしはよろしいのですか? 」

 

「君だって当事者だし、どうせ避難しろと言ったところで居座るつもり満々だろう」

 

フェイトに答えるのと同時にクロノにも声をかけると、ため息交じりにそんな答えが返ってきた。

 

正直なところアリシアはともかく、なのはの攻撃力、ユーノの防御力は惜しいし、リニスに至っては俺達の師匠でもある。アルフにしても近接戦闘では相応の実力を身に着けている。だが今の状況で長距離転送を行うのは非常に危険なのだ。長距離転送ポート稼働中に攻撃を受けても誤転送処理が発生する可能性は極めて低いが、万が一ということもある。

 

「はやてには念のため艦中央の医療ブロックに避難して貰った。守護騎士も一緒だ。何かあった時はシグナムとシャマルがこちらに協力してくれるそうだ。今はヴァニラも一緒に、敵の襲撃に備えて医療ブロックで待機してくれている」

 

クロノがそう言った瞬間、艦内にアラートが響き渡った。

 

「レーダーに感! 投射型質量兵器と思われます! 1時方向から2発が高速接近中! 」

 

「次元魚雷かっ! 魔力砲及びCIWS、迎撃用意! 撃て!! 」

 

クロノの声と共に、モニターに映し出されていたフックのような砲塔の正面に魔法陣が浮かび上がり、次の瞬間砲撃魔法が放たれた。プラズマのようなものを纏って発射される砲撃は砲塔の貧弱さとは裏腹に思っていた以上に迫力があり、思わず見入ってしまう。さすがになのはが使うディバイン・バスターよりも威力は落ちるようだが連射性能は上のようで、連続した砲撃を行っている。

 

アースラに向かっていた2発の魚雷のうち、1発を砲撃魔法が薙ぐ。攻撃を受けた魚雷はその場で爆発するが、もう1発は爆発することなく距離を縮めてきた。だがその魚雷もCIWSの射撃によって爆散し、アースラに届くことはない。

 

次の瞬間、モニター上の一部にアラートが表示された。

 

「強力な電磁パルスを確認。EMP防壁正常に作動。メインコンピュータには影響ありません。但し先日の爆発で修理した一部の電気回路にて停電発生。魔力修復は完了しています。電力の完全復旧まであと5秒」

 

「EMP攻撃か。本来なら防壁だけで完全に防げたはずだが…まぁ実害も無かったようだし、良しとするか」

 

クロノが言い終わるよりも早く、表示されていたアラートはグリーンの「OK」の文字に変わり、そのまま消えた。だがそれで安心している暇はない。

 

「魚雷、第2射! 来ます! 2時方向から6発、距離12,000! 」

 

「くそっ、迎撃急げ! 索敵、どうなっている!? 」

 

「魚雷の発射元、特定出来ません! 先程の停電から、レーダー索敵範囲が大幅に減衰しています! 」

 

「…爆発の際に、EMP攻撃に反応するような物質を散布されたか。くそっ、どうして気付かなかった! 」

 

艦同士の砲撃、雷撃戦となると、魔導師は途端に無力になる。艦内から次元空間や宇宙空間に対して攻撃を行うことが基本的に出来ないからだ。フライヤーならば強引に艦外に飛ばしてCIWSの代替くらいは出来るかもしれないが、デバイスを介して発射する砲撃魔法は艦の艤装を使う他に方法がない。出来ることといえば精々艦を砲撃から護るための防御魔法の展開くらいなのだ。

 

恐らくリンディさんとプレシアさんが展開したのであろう、その防御魔法が砲撃を掻い潜ってきた魚雷を防ぐ。せめて敵艦の所在が明らかになれば、座標を特定して武装隊を近距離転送で送り込むことによる制圧も可能なのだろうが、現状ではそれも困難だ。

 

「…見ているだけで、何もできないのは辛いね」

 

フェイトが隣でそう言う。現時点では仮にフェイトの魔力量と制御力でファランクス・シフトを使用したとしても、フライヤーよりも若干攻撃範囲の広いCIWS程度にしかならないだろう。敵艦の機関部に攻撃魔法を直撃させて足を止めるような運用をするなら、最低でも敵艦までの距離を1,000メートル程度まで縮めなければならない。

 

(ただでさえレーダーの索敵範囲が狭まる次元空間内…しかも索敵範囲が減衰している状況では対応が後手に回ってしまいますわね。ここはリスクがあっても通常の宇宙空間に出た方が…)

 

そこまで考えた時、ふとかつて自分自身が発した言葉を思い出した。

 

『つまり大昔の遺品で、今は要らない魔法っていうことですわね』

 

ハッとして顔を上げると、丁度同じことに思い至ったと思われるエイミィさんと目が合った。

 

「ミントちゃん! たしか宙域艦隊戦用超広域探索魔法、持ってたよね!? お願い! 使わせて! 」

 

「トリックマスター、『ハイパー・エリア・サーチ』データ転送! 急いで下さいませ! 」

 

≪Sure. I will do it at once.≫【はい、直ちに】

 

アースラのデータベースにアクセス許可を貰い、「スーパー・エリア・サーチ」の基になった艦隊戦用の索敵魔法術式をコピーしていく。コピーしたデータは即座にコンピュータ上で解析が行われ、発動準備が整う。

 

「ありがとう、ミントさん。借りるわね」

 

リンディさんがそう言うと、メインモニターに宙域図が表示された。次元空間内のため、障害物のようなものは一切無い。中央の青いマーカーはアースラを表しているらしい。そこからかなり離れたところに赤い光点が3つ。補足説明文が合せて表示されている。

 

「えっと…スパード級駆逐艦とバーメル級巡洋艦、それにジゼル級ミサイル艦っていうのがそれぞれ1隻ずつ…あまり聞かない名前だね」

 

「昔、辺境世界で使われていた艦名だ。強力な質量兵器を搭載しているから油断はできないが、確か全て無人艦だった筈だ。次元空間内でこれだけの索敵性能があることからも、レーダーとは違う索敵方法を採用しているものと思われる。まずは接近してスキャン、無人である確認が取れたら攻撃だ。人が乗っているようなら武装隊で制圧する! よろしいですね、艦長」

 

「ええ。それでお願いするわ」

 

クロノの指示でアースラが移動を開始した。魚雷による攻撃は相変わらず行われているが、ハイパー・エリア・サーチで敵艦までの宙域を俯瞰できるようになったため、レーダーの指向性を高めることで早めの対応を実施し、確実に迎撃していく。

 

「え…あれっ? 」

 

そんな中で、エイミィさんが声を上げた。

 

「どうした、エイミィ? 」

 

「クロノ君、不味いよ! ルル・ガーデンがいない! 拘束室の扉が開いてるよっ! 」

 

「何だって!? くっ、さっきの停電か! 」

 

ルルは体内にオリジナルのレリックを埋め込まれている。万が一遠隔で爆破されたりしたら、アースラですら轟沈してしまうだろう。俺は咄嗟にトリックマスターを錫杖形態にすると、バリアジャケットをセットアップした。

 

「わたくしが行って参りますわ! クロノさんはヴァニラさんとシャマルさんに協力要請をお願いします!」

 

「ミント、私も一緒に行くよ」

 

「了解した! エイミィ、索敵と並行して艦内モニターの映像を回せ! 」

 

同じくセットアップしたフェイトと一緒にブリッジを飛び出すと、まずははやて達が避難している医療ブロックに向かった。ヴァニラとシャマルもここにいる筈だ。プレシアさんはブリッジに詰めているため封印魔法は使えないが、最悪の場合その場でレリックの摘出をすることになる可能性もある。そのためにはどうしても2人の協力が必要だった。

 

「…オリジナルの、レリックは、確保、できないかも、しれませんわよっ」

 

『残念だが、状況が状況だけに仕方ないだろう。今はそれよりもアースラ乗員の命が最優先だ』

 

走りながらもクロノと通信で連絡を取り合う。医療ブロックに到着すると、既にヴァニラとシャマル、それにシグナムが準備を整えていた。

 

「執務官から話は聞いている。私も同行しよう。魔法を封じてあるのなら、気絶させて取り押さえることも可能だろう」

 

「助かりますわ。それからシャマルさんとヴァニラさんは…」

 

「うん、聞いてる。レリックの摘出とその後の処置だよね」

 

ヴァニラの確認に首肯する。するとシャマルが少し思案するような面持ちで口を開いた。

 

「1つ、良いかしら。激しく動き回る相手に、旅の扉を行使するのは難しいわ。元々万全なバリアジャケットを構築した相手には効果が薄いような、繊細な術式なのよ」

 

バリアジャケットが破損していたり、そもそも展開すらしていなければ先日の手術のようにレリックだけを摘出することも可能らしいのだが、それにしても対象が動き回っているような状態だと正確な摘出は困難らしい。

 

「まぁ相手を無力化する目的で私も同行するのだから、問題は無いと思うがな。テスタロッサも一緒なのだろう? 」

 

「はい。私も全力でサポートします」

 

「期待しているわ。でもどうしても間に合わないと思ったら…その時は身体ごと転移させる可能性もある。そのことは覚えておいてね」

 

つまり爆発の兆候が現れたら、アースラを護るためにルル・ガーデンを切り捨てる、ということだ。可能な限り避けたい事態ではあるが、今回はやむを得ない処置だろう。それについては俺が口を開くよりも先に、クロノが通信を送ってきた。

 

『それで構わない。協力に感謝する。それからルル・ガーデンの所在が判った。最下層のコンテナ格納エリアだ』

 

「すぐに参りますわ! 」

 

そう言って駆け出そうとした俺をヴァニラが引き留めた。

 

「クロノさん、艦内でトランスポーターを使用してもいいですか? 」

 

『…許可する。座標は判るな? 』

 

「はい。行くよ、ハーベスター。みんなも、乗って」

 

≪All right. "Transporter" activated.≫【了解。『トランスポーター』起動】

 

ヴァニラに促されてポータルに飛び乗る。視界が翠の魔力光に包まれ、俺達はそのまま転移した。

 




長いことお休みを頂いておりましたが、ようやく1話書きあがりました。。
でもまだ暫くの間は不定期更新になりそうです。。

活動報告にも書きましたが、最近は機動戦艦ナデシコの二次創作小説にはまっています。。
読んでばかりで書く方がおろそかになっているのが更新遅延の理由の1つなわけですが。。

ただ残念なのは、展開が面白いにも関わらず、途中で更新が途絶えてしまっているお話が非常に多いことです。。
これは自身に対しても戒めとして、たとえ更新が遅くなっても最後まで書き切るように頑張ります。。

引き続きよろしくお願いいたします。。

※一部ご指摘に基づき、レーダーの索敵範囲がEMP攻撃により減衰したとの表現を追記しました。。
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