他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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※今回はヴァニラパートのみです。。


第32話 「今後」

テロリストの首謀者を拘束して、ジュエルシードも21個全てを回収出来たことで、その日の夜はアースラの食堂を借り切って祝勝会が開かれた。料理が趣味だというエイミィさんがはやてさんと一緒に地球の料理を再現し、以前から監修に付き合っていたというアリサさんやすずかさんも協力して、かなりの量の料理が食堂に並べられた。武装隊の人達も食堂に集まっている。以前ミントさんが提案していた「星を見ながら次元展望公園でバーベキュー」ではないが、それに近い状況だ。

 

「とりあえずテロリストの方は首謀者を拘束したことで、ある程度の沈静化が見込めると思う。これもみんなの協力があってこそだ。本当にありがとう」

 

クロノさんがそういって頭を下げた。

 

「まだ各地に散っているテロリストの残党対策もあるし、闇…夜天の魔導書の対応もしないといけない。やるべきことは山積みだが、まずは一山を越えたということで、こうした席を設けさせてもらった。みんなも楽しんで、英気を養って欲しい」

 

周囲から拍手が起こる。そこでクロノさんがリンディ提督に乾杯の音頭をお願いした。

 

「堅苦しい挨拶はここまでにしましょう。みなさん、お疲れさまでした。乾杯!」

 

乾杯の声が唱和する。周りにいる人達はなのはさんやフェイトさん達も含めて、みんな笑顔だった。ただ、私はこの状況を素直に楽しめていなかった。

 

(怪我をしたミントさんの代わりに咄嗟に解呪しちゃったけど、あれってやっぱり不自然だったよね)

 

高速移動でクロノさんと亡霊のようなモノの間に割り込み、解呪したこと自体には悔いはない。だってそうしなければクロノさんが死んでしまっていた筈だから。ただ、私が解呪出来たことに対して、誰も何も言わないことが不安を煽った。恐らく、私自身の呪いも解呪されている。それはあの光に包まれたときに確信した。それでもまだ転生のことを口にするのは躊躇われた。

 

正直に言えば、そのことを話題に出して欲しくない気持ちは強いのだが、さすがにあの行動の後でその話題が出ないことが不思議なのだ。

 

ふと、フェイトさんと談笑しているなのはさんの顔を伺う。特に何かを疑問に思っている風でもなく、屈託無い笑顔だった。そのなのはさんがこちらに気付き、手を振ってきた。私も微笑みを返し、小さく手を振る。

 

(あの時、なのはさんとフェイトさんは私よりも遅れてブリッジに入ったから、タイミング的に解呪の瞬間は目撃していない筈…でも、明らかにあの現場を目撃したクロノさんとユーノさんが何も言ってこないのは…)

 

「どうされたんですの? 浮かない顔をしていますわよ」

 

不意にミントさんが声をかけてきた。考え事をしていたので少し驚いたが、すぐに笑顔で挨拶を交わす。

 

「うん、ちょっと、さっきのことでね…」

 

とりあえず表向きは他愛もない会話をしながら、念話で不安に思っていることを説明すると、ミントさんは納得したように頷いた。

 

<その気持ちは判りますわ。わたくしも、今日は随分と余計なことを言ってしまっておりますし…ただ、クロノさんも恐らく気を遣ってくれているのですわ。今日のところはゆっくり楽しめと、そういうことだと思いますわよ>

 

<…なんだか最後の晩餐みたいで、それはそれで怖いんだけど>

 

半分冗談めかして言うと、ミントさんはころころと笑った。

 

<まぁ今日はともかく、明日には何か言ってくるとは思いますわ。ところで…ヴァニラさんもやっぱりシャトヤーン様を?>

 

<実際ゲームでは見たことないんだけどね…ヴェールみたいなものを被った青緑色の髪の女性が微笑んでいたよ>

 

その女性は、呪いが解けたと言ったような気がした。そして私は何故か、それが本当であると確信していた。根拠はなかったけれど、直感的に信じることが出来た。

 

<やっぱり、そうなのでしょうね。これでテロリストが再転生するのは回避出来たという認識でいいと思いますわ>

 

<…テロリストの中に、他の転生者がいなければいいね>

 

<勘弁して下さいませ…これ以上、自分勝手な転生者に関わるのは本当に遠慮したいですわ>

 

ミントさんが心底げんなりした表情をするのをみて、くすりと笑う。

 

「ありがとう、ミントさん。おかげでだいぶ気が紛れたよ。とりあえず今は楽しもう」

 

「それは良かったですわ。あちらに美味しい料理がありましたの。ご一緒しませんか?」

 

「うん。喜んで」

 

この後、なのはさんやアリシアちゃん達とも合流して随分と楽しませてもらった。たまたま今日が土曜日で、明日の日曜日は学校がお休みのため、アリサさんやすずかさんも含め、みんな今夜はアースラに泊まることにしたらしい。折角なので私もパジャマパーティーに参加させてもらい、かなり遅い時間までみんなでおしゃべりをした。

 

そして一夜明けた日曜日の朝、ミントさんの予測通りクロノさんからの呼び出しがあった。

 

 

 

ブリーフィングルームに到着すると、そこにはクロノさんの他にミントさんとユーノさんもいた。

 

「疲れているところ、朝からすまないな。まずはヴァニラとミント、君達2人に見てもらいたいものがある」

 

「いえ…これは?」

 

「ここ暫くユーノ達に夜天の魔導書に関わる資料を捜索して貰っていたのは知っての通りだが、その時に無限書庫から偶然発見されたんだ」

 

改めて見ると、『Consideration Regarding Reincarnation Phenomenon』(生まれ変わり事象に関わる考察)とのタイトルが記載されている。著者名は『C. Karasuma』となっていた。タイトルからすると内容は転生に関わることだろうし、著者名は聞き覚えがなかったけれど、転生者の可能性もある。そう思ってふとミントさんの顔を見ると、何故か盛大に引きつっていた。

 

「今まで君達に黙っていたのは、余計な気を遣わせたくなかったからだ。その代わり、ユーノには随分と調査や検証をしてもらったよ」

 

クロノさんがそういって目配せをすると、ユーノさんも頷いて言葉を継いだ。

 

「この本に関する説明は僕からするね。内容的にはこのカラスマっていう人の手記なんだ」

 

ユーノさんが説明してくれた内容は、明らかに転生者の手記と思われた。転生に伴う呪いのことや、対象者を特定しないと呪いが発動しない、等といった影響範囲についても記載されていたのだ。

 

「何の予備知識もない状態で見たら眉唾ものの話なんだけど、明らかにあのルル・ガーデンが言っていたことと一致するし、それにあの時、確かにルル・ガーデンは『転生した』って言っていた…それだけでも、この手記の信憑性は高いんだけどね」

 

「僕もユーノから報告を受けて、ざっと目を通したよ。確かに心当たりが多すぎる。で、僕達はある仮説を立てた」

 

クロノさんはそう言うと、ミントさんをじっと見つめた。ミントさんも観念したようにふっと息を吐いた。

 

「わたくし自身も転生者である、ということですわね」

 

「そうだ。あらゆる状況証拠がその可能性を肯定している。昨日のレスター・クールダラスとの会話も含めて、だ」

 

ミントさんが私をじっと見つめてきた。念話など無くても言いたいことは判る。万が一のときはお願いする、そのつもりで私も呼ばれているのだろうことは重々判っていた。ミントさんには確りと頷いて返す。

 

「そうですわね。確かにわたくしは転生者ですわ」

 

一度目を閉じた後、今度は確りとクロノさんを見つめて、ミントさんはそう言った。

 

 

 

結果として、呪いは発動しないままお昼を迎えた。そしてそれまでの間に、私達は転生に関するいろいろな推察をクロノさん達に伝えた。例えば、一度転生した人間は例のトラックのようなモノを亡霊のような姿で捉えること。その状態であれば恐らく自身がそれに触れることで解呪が可能であること。解呪した人間もされた人間も、恐らく死の呪いを使うことは出来なくなること等だ。

 

昨日、実際に発動した呪いを解呪したことから予測はついていた様子だったけれど、私自身も転生者であることを明かした。ただ、昨夜から一番懸念していたことだった割には、驚くほどあっさりと受け入れられてしまった。

 

「これだけ待っても何も起きないってことは、ミントもヴァニラも、呪いはもう解けているっていう認識でいいと思うよ。僕の時もクロノの時も、概ね1時間以内にあのトラックみたいなモノがやってきたからね」

 

「この手記でも解呪の方法は不明だったからな。君達が解呪のパイオニアというわけだ」

 

クロノさんがからかうように笑みを浮かべながらそう言った。でもすぐに真面目な表情になり、頭を下げた。

 

「君達が転生のことを秘匿してくれたことは評価に値する。おかげで被害は最小限に留めることが出来た。本当にありがとう」

 

「…お礼を言われるようなことではありません。私は結局、自分のせいで他人が死ぬのが嫌だっただけですから。それに…」

 

かつて、呪いのことを知らずに転生の話をしてしまい、そのせいでアレイスターさんは死んでしまった。その時に私は転生の話を他の人にしないことに決めていた。ただそれ以上に転生という事象自体あまり吹聴するような話じゃないし、呪いが解けた状態でも口にしたいとは思わない。

 

「…今の私はヴァニラ・H(アッシュ)です。前世の記憶はあるけれど、それを理由に自分自身を否定したくないんです」

 

私がそう言うと、クロノさんも頷いた。

 

「判った。とりあえず、転生の話はここだけに留めよう。ヴァニラはヴァニラだし、ミントはミントだ。転生者だからといって、それが変わるわけじゃない」

 

「ありがとうございます。それで、このことはリンディ提督には?」

 

「後で僕の方から概要だけ伝えておく。それ以外には話をする必要も無いだろう」

 

そう言ってくれるクロノさんに、自然と頭が下がった。

 

「…一つだけ言っておくが、出来ればそんな他人行儀はやめてくれ。君はもう僕の大切な妹なんだから」

 

顔を上げると、少し赤い顔をしたクロノさんがそっと目線を逸らせた。明らかに照れているその仕草に、こちらも笑みがこぼれる。小さな声でそっと「ありがとう、お兄さん」と呟いた。

 

「聞こえましたわよ。良かったですわね、クロノさん。念願が叶ったではありませんか」

 

「なな何を言っているんだ君は。とりあえず他のメンバーとも今後のことを打ち合わせる必要がある。次は午後、ブリッジに集合だからな」

 

そう言ってブリーフィングルームを後にするクロノさんの顔は茹蛸のように真っ赤だった。とはいえ、私自身もかなり赤面している自覚があるし、「お兄さん」はやっぱり暫く封印しようと思う。

 

 

 

午後のミーティングまでそんなに時間は無かったけれど、お昼を食べていなかった私達は一度食堂に向かった。ちょうど食事を終えたらしいはやてさんや守護騎士のみんなが出てくるところだったので、挨拶を交わす。

 

「なんや、みんなお昼まだだったん? 言うてくれれば待っとったのに」

 

「それは逆に悪いよ。私達も、おしゃべりしていて遅くなっちゃっただけだから」

 

「あはは、そらしょーがないわ。で? 何のおしゃべりしとったん?」

 

はやてさんは軽い気持ちで聞いたのだろうけれど、一瞬言葉に詰まってしまった。と、ミントさんが横から助け舟を出してくれた。

 

「クロノさんですわ。彼がヴァニラさんに『君は僕の妹なんだから、他人行儀は止めてくれ』と言ったんですの。可笑しいと思いません? 彼の言い回しだって、十分他人行儀ですのに」

 

「ほほー、それはなかなかに胸きゅんポイントの高いコメントやな」

 

「まぁ、執務官殿はあの歳で激務をこなすのに、随分と気を張っている様子だからな。多少言い方が堅くなってしまうのは仕方ないだろう」

 

「でも、確かに14歳には見えねーよな」

 

「そういうヴィータかて、見た目と中身にギャップあるで。まぁそこも萌えポイントやけど」

 

守護騎士のみんなも会話に加わってきて、話が逸れたことに私はほっと胸を撫で下ろした。ミントさんにも念話でお礼を言っておく。

 

「そういえばヴァニラちゃん達もご飯を食べに来たのでしょう? もうお昼時間も残り少ないけど大丈夫?」

 

「…午後には全体ミーティングがあるのだろう。急がないと間に合わなくなるぞ」

 

「あ…そうですね。ありがとうございます。じゃぁ、はやてさんも、また後で」

 

「うん。ほな後でなー」

 

笑顔で食堂を出て行くはやてさんと守護騎士達を見送ると、こちらも笑顔になる。かつては危険なロストロギアの主になったことからストレスを抱え、適応障害も起こしていたはやてさんだったけれど、今では守護騎士達とも良好な関係を築いていて、本当に仲のいい家族のようだった。

 

「ヴァニラさん、参りますわよ」

 

「あ、うん。今いく」

 

ミントさんの声に返事を返すと、私も食堂に入る。軽食のメニューがいくつか残っていたので、みんなで少し遅めの昼食を済ませた。

 

 

 

午後のミーティングにはなのはさんやアリシアちゃんも参加していた。アリサさんとすずかさんは一足先に海鳴へ帰ったようだが、その代わり恭也さんと美由希さんも参加していた。目が合うと軽く手を振って挨拶されたので、こちらも会釈を返す。ご飯を食べていたせいか、私達が一番最後だったようだ。

 

「さて、全員揃ったところで始めようか。今日のミーティングだが、今後のスケジュールを纏めようと思う。エイミィ、頼む」

 

「了解」

 

エイミィさんがコンソールを操作すると、モニターにいくつかの項目が表示される。丁寧に、ミッド語と日本語の両方で記載されていた。どうやらなのはさんや恭也さん、美由希さんに配慮したものらしい。随分といい仕事をするなと思っていたら、なのはさんから念話が入った。

 

<日本語部分は、アリシアちゃんが翻訳してくれたんだよ>

 

なるほど、半年間日本語を勉強してきたアリシアちゃんは通訳として最適な人材だったようだ。なのはさんの隣でこちらに笑顔とVサインを送ってくるアリシアちゃんには、こちらも親指を立てて笑顔を返しておいた。

 

「まずは武装隊の案件だな。テロリストの本体を叩いたとはいえ、まだ各地に残党が残っている。近いところでは、第97管理外世界でも活動が確認されているようだ。本来管理外世界への介入は我々の業務範囲を逸脱するが、今回に限っては管理局法13の8を適用する」

 

クロノさんがポインターを操作して説明を続けると、モニターの表示が切り替わった。どうやら次元犯罪者が管理外世界に潜伏した時の対処マニュアルのようだ。

 

「近隣の管理世界については別働隊が動いてくれる。我々は第97管理外世界での対応に当たることになった。現地協力者である高町恭也氏、美由希氏両名と協力体制を取り、テロリストの拘束に努めること」

 

「了解!」

 

武装隊の人達の返事に対して満足そうに頷くと、クロノさんはまたポインターを操作した。

 

「第97管理外世界での対応を行うため、アースラは暫くこの近隣の次元空間に駐留する。ユーノ、リニス、アルフの3名についてはまだ本局とのポート使用が許可されているから、引き続き無限書庫で夜天の魔導書の管制人格について調査をお願いしたい」

 

クロノさんからの指名に、ユーノさんも力強く頷いた。

 

「必要な情報は粗々揃っているし、アリアやロッテも協力してくれているから、早いタイミングで報告内容を取り纏められると思うよ」

 

「プレシアから頼まれていた管制人格プログラム保存に必要な容量は概ね算出できています。後ほど仕様書に纏めて提出します」

 

リニスもこうした仕事に慣れているのか、受け答えも確りしている。肉体労働が向いていると言っていたアルフさんも満更ではない表情だった。

 

「それからミント…早急にジュエルシードをブラマンシュに送り届けたい気持ちはあるだろうが、先程も言った通りアースラは暫く動けない。申し訳ないが、ブラマンシュへの帰還は暫く待って欲しい。それで、その間はユーノ達の手伝いを頼みたいんだが」

 

「本局まで出られれば、シャトルでブラマンシュまで戻れますわよ?」

 

「すまないが、現時点ではユーノ達のサポートとして許可が下りているのが無限書庫の出入りまでなんだ。正式に本局に出入りする申請はもう少し時間がかかる」

 

「…状況が状況ですから、仕方ありませんわね。了解ですわ」

 

ハーベスターとエルシオール、一部レイジングハートで分散管理していたジュエルシードは、昨夜までに全てミントさんに返還している。別々に管理するよりも、全て纏めてミントさんが持っていたほうがジュエルシードの安定性が高まることが判ったのだそうだ。一元管理していて万が一ミントさんが襲われるようなことがあったら大変なのだが、ユーノさんやリニス、アルフさんまでついているのだから大丈夫なのだろう。そう思ってふと見ると、ユーノさんが小さくガッツポーズをしていた。

 

 

 

「最後になるが、ヴァニラとなのは」

 

今後のスケジュールが粗方纏まったところで、クロノさんがこちらに頭を下げた。

 

「君達には今回本当に世話になった。ミントやユーノもそうだが、彼らは当事者でもあるからな。純粋な民間協力者としては過剰なサポートをしてもらい、本当に感謝している」

 

「いえ…お役に立てたのなら良かったです」

 

そう言ってなのはさんの方を見ると、何故か不安げな表情をしていた。

 

「なのはさん? どうかした?」

 

「あ、うん…っとね、何か他にもお手伝い出来ること無いのかなーって」

 

なのはさんはどうやら、このままアースラとの接点が無くなってしまうのではないかと思っている様子だった。

 

「そうだな…今は緊急でお願いしたいことも無い。ヴァニラやアリシア達と学園生活を楽しんでくれ。本来なら今後はあまり連絡なども取らないようにするんだが…」

 

「ええーっ、そんなぁ」

 

「…するんだが!」

 

不満げな声を上げるなのはさんに対して、クロノさんの表情は若干微笑んでいた。これは絶対判っていて、なのはさんの反応を楽しんでいる。普段はあまりこういう悪戯をするようなイメージは無いのだけれど、事件が1つ片付いたことで気持ちが開放的になっているのかも知れない。

 

「…夜天の魔導書対策ですずか嬢やアリサ嬢もまたこっちに来ることになる。調査結果次第ではまた君達にも協力してもらうことになるだろう。このため、引き続きアースラへの乗艦、退艦は任意で出来るようにしておくよ」

 

その瞬間、なのはさんの表情がぱっと明るくなった。

 

「うん! ありがとう、クロノくん!」

 

 

 

こうしてミーティングは終了し、私はなのはさんとアリシアちゃんと一緒に一度海鳴に帰ることになった。帰り際、クロノさんやリンディ提督に挨拶しておこうと、私達はブリッジに向かった。ブリッジにはミントさんやフェイトさんもいたのだけれど、どこか様子がおかしかった。

 

「あの…何かあったんですか?」

 

「え、あぁ、そうね」

 

私が尋ねると、リンディ提督が珍しく言葉を濁した。その隣でミントさんが溜息をついた。

 

「…リンディさん、その態度では何かあったと言っているようにしか見えませんわよ。セキュリティは万全ですわよね? でしたら、いっそヴァニラさんにもお伝えしてしまった方がいいと思いますわ」

 

「僕もミントと同意見です。あまり深刻に捉える必要は無いと思いますが、自衛の意味からも本人にも自覚しておいて貰ったほうがいい」

 

クロノさんの意見に、リンディ提督もふっと息を吐くと頷いた。そしてこちらをじっと見つめる。いつにも増して真剣な表情だ。

 

「実はさっき、レスター・クールダラスの意識が戻ったと連絡があったの。彼は自分が死の呪いを使えなくなったことを認識していたわ。そしてミントさんとヴァニラさん、貴女達との面会を希望したの」

 

そう言って、リンディ提督は言葉を区切った。ただの面会希望だけなら、リンディ提督がここまで話を渋る必要はない筈。言いようのない不安に襲われた。

 

「もちろん面会に行く義務はないし、私としては行かせるつもりもないわ。ただ、これだけは覚えておいて欲しいの。レスター・クールダラスはずっと笑っていたそうよ。そして、こう言ったの」

 

 

 

ミント・ブラマンシュとヴァニラ・H(アッシュ)、この2人を俺は絶対に許さない。特に俺を二度と転生できない身体にしたヴァニラ・H(アッシュ)は、必ず殺してやる、と。

 




ジュエルシードの一件が片付いたため、これで第3部は完結です。。
次回からは最終章にあたる第4部になりますが、お話は普通に続いている感じになります。。

※今回から会話文の末尾を除く「!」「?」後のスペースを全角にしています。。
 会話文末尾はスペースなしです。。
 そのうち本編は全て同じように更新する予定です。。

引き続きよろしくお願いいたします。。
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