第1話 「花火」
「さっきクロノくんも言っていたけど、あまり深刻に捉えなくてもいいと思うよ?」
「そうだよ。それにそのテロリストの首謀者ってアースラで拘束されていて、魔法も使えない状態なんでしょ? 心配することないって」
夕暮れ時の海鳴臨海公園を歩きながら、なのはさんとアリシアちゃんが口々に慰めてくれる。正直なところ、リンディ提督から話を聞いた私はかなりショックを受けていた。覚悟をしていなかった訳ではないけれど、今まであからさまに殺意を向けられた経験が殆ど無かったからだ。もちろんこれがレスター・クールダラスの自分勝手な言い分であることは理解しているし、殺されてやるつもりなどさらさら無い。それでもショックを受けているのは、その感情に対してどう受け止めればいいのか、自分でもよく判っていないからだろう。
確かにレスター・クールダラスは今、アースラで拘束されている。こちらが出向かない限り顔を合わせるようなことはないし、その身柄もルル・ガーデンを含む他の拘束されたテロリスト達と一緒に、数日中にミッドチルダの本局に移送されることが決まっているらしい。そうなってしまえば、もう私が彼と出会うことなどほぼないと言っていいだろう。アリシアちゃんが言うように、心配する要素などどこにも無い筈だ。
「うん、ごめんね? ちょっと弱気になってたみたい。万が一あの人とまた出会うことがあったら、その時は全力で逃げることにするよ」
軽い口調でそう言うと、なのはさんもアリシアちゃんも一緒になって笑ってくれた。遠くで防災行政無線のチャイムが鳴っているのが聞こえる。アースラに詰めていたのは2週間くらいの筈なのに、随分と海鳴の街並みを懐かしく思った。5月も下旬になり、この時間でも寒さは感じない。
「あ、5月っていえば、アリシアちゃんの誕生日! もう来週じゃない」
「ここんとこ、忙しかったからねー」
苦笑交じりにそう言うアリシアちゃんの誕生日は5月29日。今年だと来週の日曜日だ。ジュエルシードとテロリストの対応でバタバタしていたせいで、すっかり忘れてしまっていた。
「過ぎちゃわなくて、良かったよ。じゃぁアリサちゃんやすずかちゃんや、クラスの他の子達も呼んでお祝いしようか」
「あ、そのことなんだけどね、実はフェイトの誕生日も5月29日なんだって! で、ママが一緒にお祝いしたいって」
ちょうどその週末は以前契約した海鳴の一軒家への引越しも予定されているらしい。その状況だと、お祝い自体はアースラでやった方がいいだろう。ただその場合、アリサさんやすずかさん以外のクラスの子達を呼ぶわけにはいかないので、クラスメートとのお祝いは金曜日に実施されるお誕生日会に限定される。
「まぁ、みんなとは学校でも会えるし、今回はママとフェイト優先かな」
「そういえば、いよいよ引越しなんだね。わたしもお手伝いするよ」
今まで一緒に生活していたのが離れ離れになるのは少し寂しい気もするけれど、実際にはほんの数十メートル離れているだけのご近所さんだ。そこにプレシアさんやフェイトさんも暮らすことになるのだから、むしろ今まで以上に賑やかになるのかもしれない。
「そうだね。みんなでお手伝いして、早めに引越しを済ませて、みんなでお祝いしようか」
一瞬、ミッドチルダでお父さんやお母さん、プレシアさんやアリシアちゃんと一緒に私の誕生日パーティーを開いたときの記憶が頭を過ぎった。あの時も楽しかったが、今回は高町家もハラオウン家も、アリサさんやすずかさんも参加するだろうし、とても素敵なパーティーになるだろう。
私はレスター・クールダラスのことは一旦棚上げすることにして、アリシアちゃんの誕生日プレゼントをどうするかを真剣に考え始めた。
数日振りに高町家の玄関をくぐると、桃子さんが作る料理の匂いが漂ってくる。
「お母さん、ただいまー」
「おかえり。みんな、手を洗ってお手伝い、お願いできる?」
いつも通りの桃子さんの対応に笑みが零れる。みんなで「はーい」と返事をすると、いつもの日常に帰ってきたような、そんな気がした。
<あ、そうだヴァニラちゃん。ご飯終わったら、ちょっと相談したいことがあるんだけど>
配膳を手伝いながら、なのはさんが念話を送ってきた。態々念話を使うということは、他の人には聞かれたくないことだろうか。
<相談? どういったこと?>
<うん、魔法の改造っていうか…ちょっと術式の組み換えについて>
<そっか。いいよ。じゃぁ後片付けが終わったらにしようか。でも何で態々念話で?>
<にゃはは。ちょっとアリシアちゃんには内緒で進めたくて>
なるほど、誕生日のサプライズということらしい。それなら私に異論があるはずも無い。マルチタスクを使えば食事中でも念話で内緒話は出来るけれど、折角桃子さんが作ってくれたご飯はしっかり集中して味わいたい。こうして内緒話は食後に改めて、ということになった。
ちょうど夕食の準備が出来た頃にアースラで追加の打ち合わせをしていた恭也さんと美由希さんも戻ってきて、夕食は久しぶりにみんな一緒に頂くことが出来た。ただ隠すつもりは全くなかったのだけれど、打ち合わせの際に私たちが参加した魔法戦闘の詳細が恭也さんや美由希さんにも告げられていたようだ。
「ヴァニラちゃんもなのはも、本当にお疲れさま…って言いたいところだけど、何だか随分危ないことにも巻き込まれてたみたいね」
「ハラオウン提督と執務官が揃って平謝り状態だったぞ」
責めるような口調ではなかったけれど、みんなに心配をかけていたのは間違いない。なのはさんと口をそろえて「ごめんなさい」と言うと、それまで発言していなかった士郎さんが口を開いた。
「なのは、ヴァニラちゃん、今回の件で一番怖いと思ったことは何だい?」
唐突な質問に咄嗟に言葉が出ず、私はなのはさんと顔を見合わせた。
「…わたしは、みんなが一緒にいてくれたからあまり怖いと思うことはなかったかなぁ…あ、でもヴァニラちゃんが大怪我をしてなかなか起きてこなかった時は怖かったよ」
なのはさんはそう言ってにゃはは、と笑った。
「ホント、無事でよかったよ」
そんななのはさんにお礼を言うと、私もこの一連の出来事を思い返してみた。最初に両親の死を知って、自分だけ取り残されたような気持ちになったのも怖かったし、アリシアちゃんと一緒に時を超えてしまったと知った時も得体の知れない恐怖感があったように思う。
(毛虫はトラウマになるくらい怖かったし、テロリストが爆発した時や摘出手術の時、それにクロノさんに転生のことを話した時も怖かった…)
思い返してみると、私はずっと怖いと思い続けていたようにも思う。ただ、その中でも今改めて一番怖かったと思えることは、なのはさんやアリシアちゃんが一緒に乗艦しているアースラが攻撃を受けて、ダメージがどんどん蓄積していった時のことだろう。あのままアースラが墜とされていたら、今こうして笑いあうことも出来なかったのだから。それをそのまま伝えると、士郎さんは頷いた。
「なのはもヴァニラちゃんも、その怖いと思う気持ちは守りたいものを守れないことに対する恐れだよ。その気持ち自体は大切なことだから、忘れちゃいけない。そしてその恐れを払うには勇気が必要だ」
「そう言えば、この前TVでも勇気は大事だって言ってたよ! 成功率の足りない分を勇気で補えば100%になるんだって」
笑顔でそういうアリシアちゃんに、士郎さんも笑って答える。
「それも確かに一理あるんだけどね、アリシアちゃん。勇気があれば何でも出来るっていうわけでもないんだよ。時には撤退する勇気だって必要だ」
士郎さんはそう言うと、もう一度私達に向き直った。
「勇気と無謀は違う。なのははさっき、怖いことはあまりなかったと言ったね? それは仲間を信頼出来ているという意味ではいいことなんだが、危険があることをちゃんと理解して度合いを分析し、その上で行動することが出来る心の強さこそ、本当の勇気だよ。ただ闇雲に危険に飛び込んでいくだけじゃダメだ」
優しく諭すように言う士郎さんに、なのはさんもはっとしたように姿勢を正す。
「これからも魔法を使ったり、時空管理局の手伝いをするつもりなら、それなりに危険は付き纏うだろう。でも君達には帰りを待っていてくれる、心配してくれる家族がいる。そのことを忘れずに、無茶は控えること。いいね?」
「「はい」」
「よし、堅い話はここまでにして、食事を終わらせようか。バイトの子達も待っているだろうからね」
そう言って士郎さんは微笑んだ。そうだ、みんなの笑顔を守るなら、まず私やなのはさんが無事に帰ってくることが絶対条件。2週間ほど前にミントさんやクロノさんからも、まずは自身を大切にするように言われたことを思い出した。
食後の後片付けを終えて居間でTVを見ながら、なのはさんに念話を入れた。
<なのはさん、さっき言ってた術式の組み換えの話だけど>
<そうそう。アリシアちゃんとフェイトちゃんの誕生日って、アースラでお祝いするよね? その時にバーンって派手に打ち上げ花火とか>
<ああ、なるほど。魔法で花火の代用をするんだね>
<そう! 言ってみれば砲撃魔法の平和利用編>
なのはさんの砲撃を思い浮かべる。ディバイン・バスターもスターライト・ブレイカーも、夜空に打ち上げれば桜色の魔力光がそれは綺麗に映えることだろう。
<うん、いいと思うよ。攻撃力を最小限まで絞り込んで、その分魔力光の発光を明るめに設定する感じかな>
ただ、問題もあった。砲撃魔法を花火として使用する場合、ある一定距離を進んだ後で全方位に光を拡散させる必要があり、その構築には結構複雑な演算式が必要だった。また折角花火を模すのだから、1、2発打っておしまいでは締まらない。でも数多く砲撃を撃つならその分魔力も必要だ。それに打ち上げ場所も確保しないといけない。
<あとね、わたし一人だけだとずっと桜色の花火になっちゃうでしょ? だからヴァニラちゃんにも協力して欲しいんだよね>
確かに私の翠色が加われば少しは華やかになるかもしれない。
<ハーベスター、うまい具合に砲撃魔法を花火っぽく拡散させられるかな?>
<≪It would be possible. I recommend you to consult with Mint, because I remember that Trickmaster holds similar magic.≫>【可能です。ミントにも相談することをお勧めします。確かトリックマスターが似たような術式を保有していた筈です。】
<あ、じゃぁミントちゃんにも協力してもらおうよ! そしたら花火も3色になるし>
<そうだね。ミントさんは無限書庫でユーノさんの手伝いをしている筈だから、明日にでもデバイス通信で聞いてみよう>
解決しないといけない問題点を抱えながらも、こうしてアリシアちゃんとフェイトさんの誕生日に花火を打ち上げる計画がスタートした。
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無限書庫とは、管理局の創設以前から存在している巨大なデータベースだ。有形書籍であれば存在しないものはないとさえ言われるこの書庫は「世界の記憶が眠る場所」と称されることもあるらしい。今回俺達が調査をするのは古代ベルカに関する書物であり、その大半は一般人の立ち入りが制限された区画に存在するらしい。このため、俺は特別に無限書庫の立ち入りパスを発行してもらった。
「僕も今はミントと同じ立ち入りパスなんだけど、今回の件が落ち着いたら司書資格も取ろうと思ってるんだ」
ユーノやリニス、アルフと一緒に一般開放区画を歩いていくと、やがてゲートが見えてきた。その手前で数名の司書と思われる人達が作業をしている。
「…はっきり言って、整理なんてされていない状態なんだよ。あの人達は、少しでもここの環境を良くしようと頑張ってくれているんだ」
「ユーノは発掘調査もしつつ、ここの状態を改善していくのが夢なんだそうですよ」
「随分と大変そうですわね。頑張ってくださいませ」
どうやらユーノは折角のデータベースが活用されず放置されている現状に我慢が出来ないらしい。エールを送りつつ、ゲートに向かう。
「このゲートから先は未整理区画だよ。無重力状態になっているから、飛行魔法を用意しておくと移動しやすいかも。あと念のためバリアジャケットも展開しておいて」
「判りましたわ。情報ありがとうございます」
≪"Maneuverable Soar" has been prepared. Please invoke at your suitable time.≫【『マニューバラブル・ソアー』の準備は出来ています。発動は任意のタイミングでどうぞ】
トリックマスターにもお礼を言い、まずはバリアジャケットを展開する。ゲートが光に包まれ、次の瞬間俺達は書架に囲まれた広大な空間にいた。転送先が無重力ということもあって、一瞬体勢が崩れかけるがすぐに高機動飛翔を発動させてバランスを取った。
「こっちの区画の先でアリアとロッテが調査を続けている筈だから、一度挨拶をした後で僕達はあっちの区画を捜索しよう。未整理区画だと、何があるか判らないから十分注意してね」
「は? ここって書架ですわよね? 何か危険なことでも…?」
そう言いかけて、ユーノの隣にいるアルフが笑いを堪えている風なことに気が付いた。
「アルフさん、何かご存知ですの?」
「実はさ、数日前にユーノが開いた本から亡霊が飛び出してきてさ」
「はぁ!?」
「あ、アルフ! あのことは内緒で…!」
焦った様子のユーノを宥めてアルフに詳細を確認すると、どうやら書物の簡易防衛プログラムが霊体を模したものになっていたらしい。それを間近でみたユーノが大げさな悲鳴を上げたのだとか。
「まぁ、あたしとリニスでボコったらあっさりと本の中に戻っていったけどね」
「そんなことがあったのですか。聞いておりませんでしたわよ」
「だって、そんな恥ずかしいこと言えないよっ」
真っ赤になるユーノをからかいながら区画を移動していくと、調査をしている猫姉妹の姿が見えた。
「アリア、ロッテ、お疲れさま。また今日もよろしく」
「そっちもお疲れーって、初顔がいるわね」
「初めまして。ミント・ブラマンシュですわ」
クロノの師匠でもあるリーゼアリア、リーゼロッテの姉妹は同時にグレアム提督の使い魔でもある。俺も知識としては知っていたが、直接顔を合わせるのはこれが初めてだった。改めて自己紹介する。何でもアリアの方は魔法戦闘を得意としており、ロッテの方は格闘戦闘が得意なのだとか。かなり凄腕で、さっき言っていたような簡易防衛プログラム程度なら2人で対応可能なのだそうだ。
「それじゃぁこのあたりは2人に任せて、僕達はB009254あたりの区画で調査をするよ」
「はいはーい、頑張ってね」
リーゼ姉妹と別れて移動を続けると、やがて書架だけでなく、無重力状態の空間に数え切れない書物が浮遊している空間に出た。
「これらが全部未整理の書物なのですから、整理するとなると年単位ですね」
リニスが溜息をつきながら言う。
「少しずつでも、片付けていればそれは進歩だよ。頑張ろう」
ユーノがそう言って右手を振るうと、緑色の魔力光とともに彼の周りにあった十数冊の書籍が一斉に開いてページをめくり始めた。驚いたことに、ユーノはそれらを同時に速読しているようだ。
「…さすがにこれはマネできませんわね」
「まぁ、元々スクライアの発掘調査用魔法をベースにしているし、2週間もやっているから慣れているのもあるかもね」
そう言いながら、早くも十数冊を読み終えた様子のユーノが、そのうち数冊をこちらに手渡してきた。
「これはちょっと参考にならない分だから、一度書架に戻そう。こっちがB009254A、こっちはB009254Gにお願いできる?」
「了解ですわ。わたくしには調査よりもそちらの方がお役に立てそうですわね」
ユーノから渡された書物を書架に戻していく。リニスとアルフも少し離れたところで調査をしているようだ。最後の書物を書架に戻し、ふと天井の方に目をやった。
「…無重力とはいえ、書架には上下があるのだからあっちが上ですわよね…」
何もしていなければ、とても静かな空間だった。静か過ぎる状況に、思わず独り言がこぼれた。
≪I have received a device communication call from UMT0013**5XX, individual name "Harvester".≫【UMT0013**5XXからのデバイス通信を受信しました。発信固体名、『ハーベスター』】
「ひゃぁぅっ!?」
突然のコールに驚いて、手を広げた拍子に、書架に並んでいた書物にぶつかって折角戻した書物の倍程の書物が無重力空間に散らばってしまった。そっと溜息を吐く。
「…仕方ありませんわね。ぼんやりしていたわたくしが悪いのですから。トリックマスター、繋いで下さいませ」
≪Sure.≫【了解】
それはヴァニラからの通信だった。アリシアとフェイトの誕生日に砲撃で花火を模したものを打ち上げたいとのことで、フライヤー・バージョンFの術式を参考にしたいらしい。
『ごめんね、忙しいところ邪魔しちゃって』
「いえ、構いませんわよ。そういうことでしたら喜んで協力させて頂きますわ」
『ありがとう。じゃぁ詳細は夜にでも』
ヴァニラに了解した旨を伝えて通信を切ると、俺は周りに散らばってしまった書物を見つめてもう一度溜息を吐いた。
「まずはここを片付けてしまいましょう。幸い散らばってしまった本も他と混ざってはいない様子ですし」
そういってふと書架に目をやると、何故か1冊だけ棚に残っている書物があった。
「これだけ散らばらずに残っているのは、ちょっと不自然ですわね」
よくよく見ると、台座が書架に固定されており、多少の振動などでは外れないようになっていた。ゆっくり引き出してみると台座ごとスライドし、書物が取れるようになっていた。その書物を手にとって、ぱらぱらとページを捲る。内容的にはあまり大したこともない、旧ベルカ王家の物語のようだ。王家の名前は恐らく遥か昔に忘れ去られたものなのだろう。今までに聞いたことのないものだった。
「『Drescher』…ドレスチャー? いえ、ドレシャーですわね…」
そう呟いて、本を台座に戻した次の瞬間、急に書架が大きく振動し、横にゆっくりとスライドし始めた。
「ミント!? 一体何があったの!?」
「何と言われましても、見当もつきませんわよ!」
ユーノだけでなく、リニスやアルフも呆然と動く書架を見つめていた。やがて振動が治まり、書架が完全に停止した時、そこには装飾や彫刻があしらわれた巨大な扉のようなものが現れていた。
「隠し扉だ…こんなものがあったなんて」
ユーノが近づいて扉を調べようとした瞬間、彫刻とばかり思っていた人型が2体、急に動き出した。
「フライヤーっ!」
≪"Flier" invoked.≫【『フライヤー』発動】
咄嗟に放った魔力弾が人型に命中し、一瞬動きを止めた。だがあまりダメージが通ったような気配はない。
「ガーディアン・ゴーレムだ! こんなものがいるなんて…気をつけて! この前戦った傀儡兵よりもずっと強い筈だよ!」
「上等ぉっ! 片方はあたしに任せなっ!」
アルフが1体のゴーレムにパンチを入れる。ゴーレムは大きくよろめいたが、こちらも然程ダメージを受けたようには見えない。
「随分と硬いねぇ。ならもう少し楽しませてもらうよっ!」
アルフに対して反撃するゴーレムの動きはそれほど早くはない。俺ももう1体のゴーレムに複数のフライヤーの攻撃を集中させる。振動波の相乗効果で破壊力はさっきよりも上がっている。
「参りますわよ…フライヤー・ダンスっ!」
ゴーレムの装甲はかなり硬いものだったが、複数フライヤーによる射撃の貫通能力はその速射性とも相まって徐々にゴーレムのダメージを増やしていく。
「フィニッシュですわ!」
最終的に6方向からの一斉射撃に耐えられず、ゴーレムの1体はばらばらに砕けた。
「やるねぇ! ならあたしも、ロッテに教えてもらったやつを試してみるいいチャンスだね!」
大振りパンチを軽やかにかわすと、アルフはゴーレムの頭部に取り付いた。
「ブレイク・インパルスっ!!」
アルフが魔法を発動させた瞬間、ゴーレムは頭部から粉々に砕け散った。笑顔でこちらに手を上げてきたので、俺も笑顔で手あげ、パンっとハイタッチを決めた。
「2人とも、まぁ及第点ですね。次はもう少し早く処理が出来るようにしましょう」
先生モードのリニスに「はい」と返事をすると、学生時代を思い出して懐かしい気がした。ふとユーノを見ると研究者の血が騒いだのか、既に扉の調査に入っているようだ。
「これは…旧王家が所蔵していた書物庫が、そのまま納まっているんだ。扉は開けられそうだよ」
警戒していたのだが、中からゴーレムの大群、というようなことは無かった。ただ扉の中の書架は、今までのものとは様相がかなり異なっていた。
「すごい…迷宮型だ。ここまで大規模なのは滅多にないよ! これから暫くはここの探索だね!」
ユーノは随分興奮しているようで、嬉しそうに入り口付近の書架からいくつか本を抜き取って読み始めた。俺はダメ元でユーノに釘を刺しておくことにした。
「ユーノさん、わたくしは徹夜はしませんわよ! 今日もちゃんとアースラに帰りますからね! 判っていますわよね!?」
俺の言葉に、ユーノは「判ってるー」と答えたものの、確り理解できているかどうかは怪しいものだった。とりあえず俺はそれ以上催促することを放棄し、散らばった書物を片付けながらフェイトとアリシアの誕生日に打ち上げるという花火のことを考え始めた。
B009254Gの迷宮型書庫を発見したのはミントだったというお話。。
後日ガーディアンゴーレムを再生できないことが判って、考古学者が涙目になったとかならなかったとか。。
また少しお仕事の方が忙しくなりそうですが、余裕があるときに更新していきます。。
引き続きよろしくお願いいたします。。