TS転生して最強の装者になって死ぬだけの話   作:ゆめうつろ

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これが、俺の理想の死に隊。


F1/6 生まれ変わって、出会う

 一目惚れという奴だった、キービジュアルを見たあの日から俺は天羽奏のファンになった。

 

 当然第一話の彼女の死でショックを受けた、それでも視聴は続けた、回想などで出番があれば一嬉、エア奏して一嬉、コミカライズで掘り下げがあって歓喜、XDU専用シナリオで大歓喜(なお動作環境のせいでクリアできなかったので動画で見た)。

 

 公式だけでは飽き足らず二次創作で彼女が活躍しているのを探すのも大好きだった、たまに解釈違いでムッ!とした事もあり、早数年。

 

 無事に夢女子の如き妄想力を得た俺を待っていたのはビルの火災による死であった。

 

 彼女のファンであった俺は当然ながら最後まで生きるのを諦めなかったし、共に逃げ遅れた人を助ける事も諦めなかった。

 

 どうやら善行は積むもので、そのお陰か、俺は前世の記憶を持ったまま、第二の生を得た。

 

 

 だがその第二の生も中々に難易度が高かった、まず女になっていた、これはいい、次に前世の事なんかを両親に話すか、これは生来隠し事が苦手な性分からか、3歳の時にカミングアウトしたら普通に受け入れられた、というか、両親が「NINJA」だった。

 

「おかげで初等教育をする手間が省けたわ」

 

 俺のカミングアウトを聞いた親父の第一声である、というかこの畜生親ども、俺が精神的に成熟していると知るや否や早速「忍び」としての訓練を始めやがった。

 

「ねぇ~パパ~疲れたよ~」

 

「27歳にもなって男として恥ずかしくないのか」

 

「畜生、恥ずかしいに決まってるだろ!しかも今は乙女だよ!」

 

「なら強くなれ!」

 

「くそったれ!」

 

「パソコン届いたわよ」

 

「やったぜ!サンキュー母上殿」

 

「情報戦の授業も追加だな」

 

「ファッキュー親父殿」

 

 だが、逆に母上殿は中々に優しく、結果を出せば欲しいものなどを融通してくれた。

 

 それに、なによりも、二人とも俺を気味悪がらずに接してくれた、それだけで十分俺は幸せだ。

 

 将来はこの忍びの力で人助けをする、それが俺の夢だ。

 

 

 新に得たインターネットの力、得られる情報の拡大、それは俺の世界を広げてくれる。

 

 本題としては6歳にしてようやく趣味のアニメ鑑賞が可能となった、「隠れ里」であるうちにテレビはなかったのである。

 

 どうやら前世とは世界が違うようで、かつて知っていた作品達が影も形もねぇ、ただマジンガーZとゲッターロボはあった、なのにガンダム居ないしウルトラマンや仮面ライダーもいねぇ、畜生。

 

 そしてシンフォギアもねぇ、くそったれ!

 

「おい、どこでそのシンフォギアという言葉を聞いた」

 

「うおっ!親父殿人のパソコンの画面を覗き込むなよ!びっくりするじゃねぇか!」

 

「それよりもシンフォギアって言葉、何処で知った?」

 

 ここで俺は、検索しても出てこないシンフォギアという言葉が親父の口から出てきた事に違和感を持った。

 

「……前世のアニメだよ」

 

「アニメ、か?」

 

「そう、立花響、風鳴翼、雪音クリスの三人が主役でノイズやら世界の脅威やらと戦うアニメ」

 

 そして親父のその一言で俺は、確信した。

 

「天羽奏は、どうしてそこに含まれない?」

 

 俺は言葉に詰まった、感情が極限まで達すると言葉が出なくなるというのは本当の様だ。

 

「今無理なら後でもいい、だが出来るだけ早く教えてくれ」

 

 

 ここは、きっとシンフォギアの世界、あるいはそれに連なる平行世界だ。

 

 

「それは、それは天羽奏が、ツヴァイウィングのライブでのネフシュタンの鎧の起動により発生する惨劇で死に、その時の事故で立花響にガングニールの欠片が適合するからだよ、親父」

 

「そうか、お前のお陰で助かる命が増えるかもしれない、よくやった」

 

 そういうと親父は今までに見たことがないぐらいいい笑顔で笑った、それはまるで覚悟を決めたような顔だった。

 

 だから俺は止めた

 

「待ってくれ、まだ情報がいる、それにその惨劇を仕組んだのはシンフォギア開発者である櫻井了子!だからまだ動かないでくれ、櫻井了子は、フィーネは物語の黒幕で!とてもじゃないがマトモに太刀打ちできない相手だ!下手に物語と違う動きをされたらこの世界が終わっちまう!!」

 

「……それほどなのか?」

 

 本音としてそれもある、けれど親父に死んで欲しいとは思わない、だから止める。

 

「フィーネは、何万年も転生を繰り返している、詳細は省くが月を破壊する事を目的としてる、月が破壊されれば重力崩壊で地上の人類の殆どが死に絶える事になる、だから下手に手を出さずに、装者達がフィーネを倒すのを……」

 

 俺は再び言葉に詰まった、それまでに出る犠牲の数はどれ程になる?

 

 その中に、「物語」では描写されなかっただけでその犠牲に親父達が含まれない保障は?

 

「お前はどうなんだ」

 

「……そうだな……そうだよ、親父。俺も見過ごせない、救えるなら救いたいと手を伸ばす……」

 

「お前が俺達の子として生まれてきたのは、運命かもしれないな。俺もアイツも全てを救いたいと思う、無理かもしれないとしてもな」

 

 そうだ、無謀で無茶でも、この世界は「精一杯の頑張り」が応えてくれる世界の筈だ。

 

「俺を、この物語の「登場人物」にしてくれ」

 

 それが俺の本当の始まり。

 

 

 

 

 

 この世界の運命を知るのは俺達家族三人だけだ、それも確定した運命じゃない。

 

 武器は俺の記憶の中にある「戦姫絶唱シンフォギア」という「物語」の表面のストーリーという曖昧な情報とこの体一つ。

 

 そして「物語」に立ち向かうならば「登場人物」である必要がある、それはフィーネという黒幕に気取られない為、「役者」として立ち回らなければ、たちまち舞台から下ろされてしまうし、舞台からフィーネが消えてしまうかもしれない。

 

 そうすれば待つのはおそらく「破滅」だ、だからフィーネには立花響を認めて、月読調の代わりにイガリマで消えてもらわねばならない。

 

 違和感の無い立場で、物語を動かせる「役」、意外にも「主役」たる装者でなくとも可能性はある。

 

 それはウェル博士の様な「英雄」、あるいは司令や緒川さんの様な「OTONA」を始めとした二課関係者。

 

 俺が選択するのは装者、あるいは二課関係者だ。

 

 非常に「幸運」な事に、親父が政府の元で「現時点でも」働いていて、風鳴機関や緒川家と若干の繋がりを持っていて黒服を着た方々の教育指導係だった事もあり「俺を潜り込ませる事が出来る」。

 

 

 それを提案した時、当然親父殿は反対し、母上殿も大反対、むしろ母上が怒り狂って怖かったまである。

 

 だが、燃えアニメでありつつも萌えアニメでもあったこの世界。

 

「メタフィクション的に考えて欲しい親父殿、母上殿、映像倫理的に女児を惨死させるアニメはない、必然的に俺……もといワタシのが生存率が高い、むしろお二人のが死ぬ確率……俗に言う「死亡フラグ」が立ちやすい、だから、ワタシに任せて」

 

「アニメじゃないのよ!」

 

「アニメよ!深夜アニメだよ!母上!」

 

 その後数日かけて何とか両親を説得し、俺を二課に送り込む方針に決まった時は一安心した、というか母上は最後までフィーネにカチコミに行って物語を開始前に終わらせようとしてたのは駄目だった、というか油断したらいつでもカチコミに行きそうなので予断は許されなかった。

 

 

 まだツヴァイウィングはデビューしていない、そして天羽奏が適合したのがつい数ヶ月前の話らしく、俺は必死に設定を記憶の中からサルベージした結果、現在が本編の五年前と見積もる。

 

 奏適合したのが14歳、享年が17歳で本編の2年前、俺が今6歳、猶予はよく見積もって3年、いや2年。

 

 ライブ会場での惨劇が起こる時にはおそらく9歳。

 

 そして本編でようやく俺は11歳、かなり無茶せねばならない。

 

 

 

 必死に両親と相談しながら考えた結果、俺は「天才児」キャラで行く事にした。

 

 

 理由は簡単だ、俺は前世では大学生(死亡による中退)だった、前世の両親にも本当に感謝せねばならない、大学に行かせてくれた事に本当に感謝しかない、親孝行できなかったのは未練だが……。

 

 ちなみに特技はプログラミングだ、将来はシステムエンジニアになるはずだった、クソプログラム組んで無限増幅するファイルを作ってしまい大学のサーバーとPCを破壊し尽くしたという罪と秘密は墓場になんとか持ち込めてよかった。

 

 

 

 

 

 翌年、猛勉強と両親の根回しのお陰で俺は「見習い研究員・兼装者候補」として、どうにか二課に潜り込めた。

 

 意外にも俺を引き入れたのは「フィーネ」つまりは「櫻井了子」だ。

 

 それも、両親に無理を言って「聖遺物」を見つけて来て貰っての手回しあっての事だ。

 

 

 そう、聖遺物……つまりはシンフォギアシステムの素材を見つける事で、新たな装者を見つける必要性を出させる。

 シンフォギアへの適合は「愛」が鍵となる、脳の未知領域こそが適合率の秘密らしい、本当にウェル博士には感謝しかない、いつか感謝を伝えたい。

 

 そして聖遺物だが、99%は案の定ガラクタだったが、たった一つだけ見つけた本物。

 

「岩融(いわとおし)」武蔵坊弁慶が使っていたとされる大薙刀。

 

 それほど歴史のあるモノではない筈だが、それは確かに聖遺物と証明された。

 

 所謂、哲学兵装と分類されるそれは砕けてあってもその力を失っていなかったそうだ。

 

 手に持てば確かに体に力が漲り、一時的にではあるが疲労感が飛ぶ様な活力を得られたそうだ。

 

 持ち主であった「弁慶」という人物に不思議と、自分の行く末を重ねる。

 

「当然、俺は諦めないけどな」

 

 きっと俺は死ぬだろう、でもそれが俺の「生きる事」なのだから。

 

 

 

「へぇ、あなた達が先輩装者ねぇ……ふぅん……まぁせいぜいよろしく、最強はワタシですけど」

 

「なんだ~このちびっ子?」

「櫻井女史……本当にこの子が新しい装者なんですか?」

「嘘だろ翼!?嘘だと言ってくれよ了子さん!」

 

「本当よ二人とも、自己紹」

「秘でーす」

 

「秘って……」

「秘密ってなぁ、お前からかってるのか?」

 

「ワタシは「忍び」であり「天才」、そして「無双」あなた達みたいなただの戦えるだけの歌女とは違うんです~!」

「いきなり喧嘩を売らないで頂戴、「雷電(らいでん)」この子の家は一人前になるまでは本当の名前がもらえないのよ」

 

「まぁせいぜい敬意を持って雷電と呼びなさいな」

 

 傲慢ちきな娘、全てが終わるまで、俺の名前は雷電、真の名前を知るのは両親だけ。

 

「雷電ねぇ、そんなに自信があるなら勝負しようぜ」

「奏!」

「いいですわよ、まず力の差ってのを思い知らせて差し上げますわ」

 

 かつて憧れた彼女が目の前に居る、同じ空間に居る、同じ空気を吸ってる、それどころか言葉を交わしている。

 ああ、奏さんマジ奏さん。

 

「リンカーを使わなければならない貴女に配慮して、「勉学」での勝負としましょう」

「大きな口を叩いた割には弱気な事を言ってくれるな?」

「あら、貴女……小学生に学力で勝てる自信もないのですの?」

 

「んだとぉ?」

 

 マジで喧嘩をするつもりはない、というかとてもじゃないが奏さんを傷つけるのはヤダ。

 でもある程度、「嘗められない」必要はある。

 

 つまり頭でマウントを取る、我ながら最低である。

 

「ハンデとして貴女の今習っている数学の範囲で勝負して差し上げますわ」

 

「いいぜ、ただ勝負するだけじゃつまらない、負けた方が言う事を一つ聞くのはどうだ?アタシが勝ったらそうだな~もっと子供らしく……そうだなレストランでお子様ランチを頼むってのはどうだ?」

 

「言いましたね?言いましたね?ならワタシが勝ったら、そうですね考えておきましょう」

 

 クッソやる気でた、本気で勝つわ。

 

 

 

 そして結果、了子さんに用意してもらったテストで満点とって勝利してやりました。

 

「ウソだろ!?了子さん!アタシの何が駄目だったんだ!?」

「普段から勉強してないからよ……それに数学はその子の得意分野じゃないのよ?どちらかというと聖遺物関係がその子の専攻ね」

 

「さて、当然の如く勝ちましたし、私も鬼ではないので、奏「ちゃん」にはフリフリの服を着て貰ってお子様ランチを頼んでもらいましょうか」

 

「ち……畜生!翼!仇を討っておくれ!」

 

「奏……その、わかっ」

 

「ちなみにこんな感じのゴスロリを着てもらいたいと思うけどどうです翼さん」

 

「奏、勝負には誠実であるべきだと思う」

 

「翼ー!?」

 

 タブレットに映した画像を見せたら見事に裏切ってくれた、ちなみにこのゴスロリは俺の「キャラ付け」の資料の参考として考えていたものだ、残念ながら後々にオートスコアラー達と被りそうだから断念したが。

 

「ちきしょう……」

「となれば善は急げ、これから買い物に行って、それから親睦会とでも行きましょう、敗者を辱める戦勝会とも言いますが」

 

 

 無事に奏さんにゴスロリを着せる事に成功した俺を誰か褒めて欲しい。

 

 この為に俺は生きてきたのかもしれない、はぁまじ恥らう奏さん尊い、何時もは顔のいい女、イケメン女子って感じな奏さんがゴスロリ着てモジモジしてるのマジしんどい、死ぬ。

 

 知能レベルが著しく低下してしまう、が練習してきたキャラは何とか維持しなければ。

 

「あら、お似合いですわ奏ちゃん。あ、支払いがワタシが持ちます、持たせてください、あ、レストランもワタシの奢りですわ」

「その、いいの?」

「いいんやで翼さん」

 

「なんで翼だけさん付けなんだ!?アタシももっと敬え!それに何だ今の謎関西弁はッ!?」

「奏ちゃんは奏ちゃんですわ」

「畜生!こうなったらヤケ食いしてやる覚悟しろ」

「あ、お子様ランチ以外は自腹で」

「畜生!ケチ!鬼!外道チビ!」

 

 こうは言うが、二人とも、俺に気を使ってくれている事はわかる、むしろ心配されている事ぐらい分かる。

 こんなチビな姿だ、仕方在るまい、だが変に気を使われたくは無い。

 

 当然仲良くは、ありたい。

 でも必要なら嫌われる覚悟もして置かねばならない。

 

 そしていざという時は、フィーネの手駒になる必要もあるかもしれない。

 

「なんとでも言いなさいなぁ!ワタシの前に道は無し!ワタシの後ろに道が出来るのですわ!!」

 

 それは自分に言い聞かせる言葉、新しい物語を始めよう。

 

 ワタシは、俺は英雄になれなくていい、その笑顔さえ残るのなら。

 

 俺は喜んで礎となろう。

 

 でも、そうだな。

 

「ワタシはイキるのを決してやめませんわ!力の限りイキってやりますわ!」

 

「どういう意味だそれ……?」

 

「奏ちゃんは歌舞伎を知ってますか?翼さんは知ってそうですけど」

 

「確かに歌舞伎は知っているけど、それがどういう関係なの?」

 

「歌舞伎の語源である「傾きもの」は、常識に囚われない者、そこから生まれた斬新な動きや派手な装いが元となって現代の歌舞伎に繋がってる。似ていると思わないかしら?時代を動かしていくアイドルと」

 

「た、確かに言われてみれば……でもそれと「イキる」に何の関係……そうか「粋る」と書いて「イキる」か!だが「粋」とは露骨なモノではないだろう、あなたのそれは「粋がる」つまりは偉ぶる事だろう!」

 

「それは俗人が決めた事ですわ!ワタシの「イキる」は「新しい時代を切り開く」事!「イキり系アイドル」こそワタシの目指す道ですわ!」

 

「なんだかわからんが、すごい自信だ」

 

 奏さんが置き去りになっているのでとりあえず簡単に纏めるとしよう。

 

「自信が無くて天才はやれませんわ!!」

 

「まずいぞ奏!私達も負けて入られない!時代を切り開くのは私達ツヴァイウィングよ!」

「っておい翼!?なんか変なスイッチ入ってないか!?」

 

「フフフ!風鳴翼、あなたは中々見所がありますわね!この天才たる雷電の初めてのライバルとして認めて差し上げますわ!」

「ちょっとまてアタシは!?」

「奏ちゃんはワタシより数学が弱いかわいい生き物なので……」

「残念そうな顔するな!かわいい生き物ってなんだよ!畜生!」

 

 悔しがる奏さん、だがゴスロリで悔しがってる姿くっそかわいいー!!!(語彙消滅)

 

 

 この後、滅茶苦茶お子様ランチを注文されて小遣いが死滅した。


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