IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第103話【絶対防御禁止領域】

 

 

 IS学園敷地内の自然公園エリアにて。教師二名とゴーレムⅢが交戦中。

 

「あーーーーー!! オラァッ!!」

 

 その一撃は地面を砕き、大地を揺らした。

 先ほどからこの一帯は局所的な小地震を起こしていた。一人の教師の手によって。

 

「榊原先生! 突出し過ぎです! 先程山田先生から敵ISはこちらのシールドを」

「シャラープ! いま私は怒り一色なのよ! アイムアングリーなのよ!」

 

 鬼の形相でIS用ウォーハンマーで叩き、叩き。叩きつける榊原菜月に同僚のエドワース・フランシィはドン引きしながらもマシンガンで援護していた。

 

 榊原は生粋のパワーファイター。女性らしからぬ鈍重でデカイ武器を好む彼女の一撃は押して叱るべしというところか。

 所々外したハンマーの衝撃で地面が陥没していた。

 

 榊原の名誉のためにあえて言うなら。彼女は先程の真耶の通信をちゃんと聞いているし、力任せに振るってるように見えて的確にゴーレムⅢの攻撃を回避し、的確に打撃を与えている。

 彼女はちゃんと聞いた上でゴーレムⅢをミンチにしようとしているのだ。

 

「榊原先生本当に落ち着いてくださいな! 死にますよ本当に!」

「こんな1・0思考のデク人形なんか即粉砕よ粉砕! 粉砕っ!!」

「あーもう本当に何があったんですか!」

「今日。夜ね………婚活パーティーがあるのよ!」

「………………はぁ?」

 

 心底理解不能とばかりにフランシィは首を傾げた。

 こんな非常時にいったい何を、と。

 

「ええ分かってるわよあんたの言いたいことなんて。でもね? 私はあと数年たてば三十路なのよ。良いわよねあなたは。既に可愛い旦那さんがいるんだから」

「え、えっと」

『………………』

 

 激情を全面に出していた彼女がいきなり急転直下のクールダウン。

 そんな彼女にフランシィとゴーレムⅢ(故意か偶然かは定かではないが)は思わず立ち尽くした。

 

「今日のメンバーはほんと良いメンバーなのよ。高学歴から普通まで。知的からスポーツマンまで破格のレパートリーの選り取り見取り。それが今日の夜あったのよ。行く予定だったのよ」

「そ、それで」

 

 遠くから他の教師が交戦しているなかで榊原の自分語りは続く。

 ゴーレムⅢの向こう側にいるであろうマッド科学者も思わずIS越しに耳を傾けた。

 

「そしたらこいつが出たのよ。そしたらどうなると思う? 事後処理よ! 事後処理で残業よ! 政府対応とかその他諸々とか! しかも一番会いたくない未登録のISコア!? 完全に厄ネタじゃない! テロリストの方がまだマシよ! 絶対婚活パーティーいけないじゃないのよぉっ!! ウキャー!!」

 

 ハンマーの柄が砕ける勢いで振り回す榊原菜月。

 

 この時、ゴーレムⅢのAIに原因不明のバグが発生した。いや、これはAIに直結したコアのバグと言うべきか。

 ゴーレムⅢのコアには無人機故に他のISと違って搭乗者の経験、精神構造を学習することは出来ない。

 従って能動的拡張は起こらず、逆に命令されたことを忠実にこなすのだ。

 

 そして今、ハンマーを狂乱状態で振るう榊原を前に、確かにゴーレムⅢは一歩後ずさったのだ。

 

 最新型AIはこのバグ、この行動が何かを検索し、理解した。

 

 これは人間でいう恐れだと。

 やっと答えを導きだしたゴーレムⅢの鼻先には。巨大な鉄塊と泣き叫ぶ鬼の顔があった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ほんと、マジで冗談じゃないっての! 性懲りもなく何度もさぁ!!」

 

 鈴の双天牙月とゴーレムⅢのブレードが重厚な鋼鉄音を響かせる。

 そのまま鈴はゴーレムⅢを蹴り飛ばし。事前にチャージしていた龍砲をぶっぱなした。

 

 今回の甲龍のメイン武装である龍砲は元の単発式から変更がなされ。右をCBFでも使った拡散衝撃砲。左は発射時に回転を加えることで衝撃を増した貫通衝撃砲となっている。

 腕部衝撃砲の崩拳もボルテック・チェーン(プラズマ技術はレーデルハイト工業の技術を参考)に換装していた。

 

 拡散型で怯ませたあと。効果力の貫通衝撃砲でとどめ。そうなるはずだったが。

 煙が晴れたあと、ゴーレムⅢは可変型シールドユニットで防御していた。直撃した貫通衝撃砲も、シールドユニットに若干のヒビをいれる程度にとどまった。

 

 反撃とばかりにゴーレムⅢは両肩と腕の熱線砲を乱射。回避した甲龍に肉薄してブレードを振り下ろそうとした。

 

 その剣を光が弾き飛ばす。

 ゴーレムⅢの右方にはミドルレンジを維持しているセシリアが得物であるスターライトMK-Ⅳが光っていた。

 

「踊りて散りなさい! 我が愛機が奏でるアンサンブルに!!」

 

 セシリアのブルー・ティアーズはビットを射出した。

 

 俊敏に動くビットは逃げ道を塞ぎ、まるで鳥籠のようにレーザーをゴーレムⅢに降り注がせた。

 

 ブルー・ティアーズにも武装が追加された。

 本来は背部のプラットホームの4機しかレーザービットを装備できなかったが。今回はそれに加え。スカート部分に新たに4機を加えた。

 

 総勢8機の射手を巧みに従えるブルー・ティアーズは単純に火力と密度が2倍。いや2乗分の戦力となってアリーナに乱入した不届きものに裁きを下す。

 

 たまらずゴーレムⅢは移動しながらもシールドとブレードでいなしていく。

 新たに向かってくる2本の光線も弾道予測をし。最良の位置にシールドを滑らせた。

 

「甘いですわ。本当にっ」

 

 レーザーはシールドを縫うように歪曲。先ほど撃っていたうちの2本もそれぞれ曲がりくねり。ゴーレムⅢの躯体に殺到する。

 

 精神感応制御による偏光制御射撃(フレキシブル)。セシリアは更に鍛練を積み。最初とは比べ物にならない程の練度を見せた。

 

 当たる瞬間にゴーレムⅢは空中で身をくねらせた。

 間接を明後日の方向に曲げ、まるで糸に吊るされた人形のようにレーザーかわす。だがそれは完全ではなく。4本のうち2本のレーザーがゴーレムⅢの表面をかすり。装甲を溶かして焼いた。

 

「くっ。前とは比べ物にならないほどの性能ですわね」

「戦えない訳でもないってのが救いね。シールドが使えないことを含まなければ」

 

 シールドが異常をきたしていると気づいてから鈴は少し引き気味に戦闘を繰り広げ、隙あらばセシリアの狙撃ルートに誘い込んでいた。

 生粋のインファイターである鈴でも、当たれば致命傷である敵の攻撃には警戒をあらわにしていた。

 

「わたくしは近づかれなければいいですけども。鈴さんはやりづらいですわね」

「間違っても誤射しないでよ? フリじゃないからね」

「善処しますわ」

「確定して!?」

 

 それでもこうして普通に冗談を交えれる程の心的余裕をキープしていられるのは、二人がISドライバーとしての腕を向上させれたことに他ならない。

 

 確かな力には強固な精神力が宿る。

 それを少女であった彼女をIS乗りとして成長させたのだ。

 

「てかさ、あんた気づいてる?」

「敵のシールドジャミングが敵にも作用してることをですか?」

「あー、いやまあそうなんだけどさ。あんた少し焦ってるわよ」

「わたくしが?」

「自覚ないんだ。さっきからレーザーの射線が少しブレてる」

 

 今までの鈴なら気づかない僅かなブレだが。セシリアの鬼のような訓練において、間近で地獄(レーザー)を浴び続けた鈴だからこそ気づけた微小な変化だった。

 

「疾風なら大丈夫よ。あいつがそう簡単にくたばらないのは福音やサイレント・ゼフィルスで実証済みよ。シールド以外にもプラズマあるし」

「べ、別に疾風のことは」

「あのさ。ここまで来て素直にならないのはどうかと思うわよ。絶対に死に別れないとは限らないんだから」

「死に別れ………」

 

 嫌なビジョンを想像してセシリアは激しく首を振った。

 疾風とは、険悪にはならなくなったもののろくに話していない。このまま鈴の言う通り死に別れてしまったら………セシリアは死んでも死にきれない。

 

 つまり、ここで戸惑ってる暇なんか微塵もないということだ。

 

 セシリアは今一度ビットに思念を送って射撃体勢に入らせた。

 

「鈴さん! 全開で行きます! 隙を作り出してください!」

「はいよ! アタシたちのコンビネーション。あの木偶の坊に見せつけてやろうじゃない!」

 

 必ず生き残る。愛する人と日常を過ごすためにも。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「え?」

「なんだ!」

 

 突如天井をぶち抜いたゴーレムⅢ。

 すぐ側にいたラウラは虚をつかれつつも直ぐに警戒態勢に入ろうとした。

 だがゴーレムⅢの瞬発力はその上を行き、その豪腕がラウラの頭を掴み上げた。

 

「くっああ………」

「ラウラ!」

 

 ラウラの次に臨戦態勢に入ったシャルロットは直ぐ様武器を呼び出してゴーレムⅢの左腕に狙いを定めた。

 だが撃たれた弾丸は可変シールドユニットに阻まれ、ゴーレムⅢはラウラの頭を握りつぶさんと力を加えた。

 ミシミシと身の毛のよだつ音を響かせる頭部ハイパーセンサーとけたたましいアラート音。ラウラは遮二無二にプラズマ手刀を出し、その豪腕を叩ききらんと振り上げたが、それも右手の大型ブレードに阻まれた。

 なおも力を込めるゴーレムⅢにワイヤーブレードを突き刺すも少し揺れた程度。

 射撃を続けるシャルロットの弾丸も2本のシールドユニットで巧みにさばいていた。

 

 このままではラウラの頭部がつぶれたトマト同然となるのは明白だった。

 

「離せぇぇぇぇ!!」

 

 ゴォン! 

 

 なりふり構ってられないラウラは浮遊していた大型レールカノンをそのままゴーレムⅢの頭に叩きつける。うわっ痛そう、っとシャルロットは一瞬だけ敵であるゴーレムⅢに憐憫を抱いた。

 鐘を突いたかのような低い轟音と共にゴーレムⅢは頭を垂れ、握りしめていた左腕を解放。

 そのまま半歩下がったラウラはレールカノンをほぼ零距離で発射。直前でガードに成功したゴーレムⅢは大きく吹き飛ばされ。可変シールドのうち一枚がちぎれ飛んだ。

 

「ふー。なに?」

「大丈夫ラウラ! 頭にひび入ってない!?」

「問題ない。それより聞け、シャルロット。シュヴァルツェア・レーゲンのシールドが機能していない。絶対防御が発動しなかった。お前はどうだ」

「僕の? ……ほんとだ。機能不全起こしてる」

「奴の仕業、と見て間違いないか」

「そんなことって。そんなものがもし開発されてたら、ISというものが根本からひっくり返るよ!」

「現に目の前にある。認めるしかあるまい」

 

 まったく制作者の気が知れない………いやISが人の手で使われる以上、操作する人間が機能停止すれば超兵器と言われるISは鉄の塊に過ぎないものとなる。

 完璧なまでに合理的、かつ非合理的だ。

 

 もしこの技術が公にされれば、ISどころか世界がひっくり返る。

 対人兵器でもISを殺せるということになるのだから。

 

 以前のワルキューレといい。この世界はいったい何がどうなってるのかと、ラウラは毒づいた後に笑った。

 

(フッ、遺伝子調整体である私が言えた義理ではないな)

 

 二人が思案に暮れていても、敵は待ってくれない。

 ゴーレムⅢは先ほどのお返しとばかりに持てる全ての熱線を放出した。

 

「と、とにかく。今はあいつを倒すことを優先しよう!」

「了解だ。油断するなよシャルロット」

「ラウラもね」

 

 二手に分かれ。シャルロットは両手にガルムを持って弾幕を広げた。

 敵は特に回避もせずに残されたシールドユニットで守りながら熱線を撃つ。

 やはり相手にもシールドがないのは本当なのだろう。時折シールドで防げてない弾丸がゴーレムⅢのワインレッドボディに当たって弾けてるのだ。

 

 シールドエネルギーがない前提なのか。ゴーレムⅢのボディは強固だった。今でさえ、僅かな凹みがつくかつかないかという程。

 ISのアサルトライフルをものともしないとは。一体どんな素材を使ってるのかとシャルロットは問いただしたくなった。

 

 右手で撃ちながら左手を高速切替(ラピッド・スイッチ)でアンチマテリアルライフルに変えて撃つ。するとゴーレムⅢはその重い一撃を察知したかのように急遽回避起動に入った。

 

「棒立ちだったのにライフルの弾速避けられたよ」

「反応速度は一丁前だな」

 

 ワイヤーブレードを展開しつつもレールカノンを撃ちはなつレーゲンに熱線を掃射するゴーレムⅢ。

 その熱線が第二、三世代故に装甲を廃したラウラの白い肌をかすった。

 

 途端に感じる痛覚とは裏腹に。ラウラは腹のそこから熱いものを感じていた。

 

(ああ、久しく忘れていたな。戦場と言うものを)

 

 一発当たれば致命傷。爆弾やミサイルが爆ぜれば肉体がちぎれ飛ぶ。クールタイムなどありはしない死と隣り合わせのバトルフィールド。

 

 それはラウラがISに乗る前に体感した。兵士の生きざまと性であった。

 

(知らず知らずに。私はIS学園に染まってきたらしい)

 

 入学当初はISにはしゃぐクラスメイトに吐き気すらあった氷冷のラウラともあろうものが。よくもまあ学生生活に馴染めたものだ。

 

 それは妾の子としてこの場に放り込まれたシャルロットも同じだろう。

 

「行くぞラウラ・ボーデヴィッヒ。今一度、戦いの申し子と呼ばれた自分を思い出せ!」

 

 敵のブレードを掻い潜り。背後でAICを発動。

 

 ラウラの視界にはグレースケールを構えて接近する相棒の姿があった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「フォルテ後輩よぉ。俺はもうダメだ。後は任せたぞ」

 

 第一アリーナ上空。アメリカの第三世代IS【ヘル・ハウンド・ver2.5】を着こんだダリルはPICを使って器用に空中に寝そべっていた。

 才能の無駄遣い極まれりである。

 

「甘く見ちゃいけないっスよダリルパイセン。私なんか開始前からもうダメっス。というわけで、レッツゴー(πάμε)!」

「あ、いまお前ギリシャ語で俺を突き放したな? 俺少しだけ勉強したからわかるんだぞコラ」

 

 そんな先輩以上にダウナーでやる気のない口調で先輩を供物にしようとしたのはギリシャの代表候補生フォルテ・サファイアと専用機【コールド・ブラッド】。

 こちらも同じく空中で寝そべって何かをモチャモチャ食べていた。

 しかもその手にはギリシャのお菓子、バクラヴァが握られていた。

 こんなとこでお国柄を出さなくても。

 

「お前さ。ほんとよくそんな甘過ぎるもん食えるよな。気が知れねえぜギリシャ」

「ギリシャのお菓子の辞書に甘過ぎないという言葉はないっス。これ食えばダリルも少しはやる気を出すんじゃないスか?」

「それ食うぐらいなら俺はお前と袂をわかつ」

「ガ、ガチトーンで言わないでくれっス。そんな嫌わなくても」

「バーカ好きに決まってるだろうが」

「だ、ダリルっ………」

 

 こいつら戦闘中だってことを忘れてないか? 

 と何処からかツッコミが入るレベルでやる気のない相手にもゴーレムⅢは(二人の間の熱より高いと自負する)熱線を撃ち続ける。

 

 だが二人は寝返りを撃つような最低限の動きで熱線の弾幕をよけに避けていた。

 

「あれ熱そうだなぁ。フォルテ、ちょっと前出てみろ。少し焼いたほうが良いっておめぇ」

「イヤっスよ。先輩こそその純白の肌を少しでも焼いてくればいいんじゃないスか?」

「嫌だよ、この美肌は俺の密かな自慢うおっと」

「ひょいっと」

 

 先ほどから何発撃ったかなど数えてないが全てダメージとしては通っていない。

 一発当たれば火傷は必須という状況においてもダリルとフォルテは躱し、いなし、防ぎ、弾いていく。

 

「んー。フォルテ」

「はい?」

「飽きた」

「そっすか」

「撃っちまえ」

「ほーいっス」

 

 気まぐれなダリルのオーダーに、フォルテは自身の武器である凍結レーザー銃【(リュコス)】を取り出して何発か放った。

 

 零度の光はそのままゴーレムⅢに向かい。その足元に当たって氷面が出来上がった。

 ゴーレムⅢには当たっていない。

 

「ヘッタクソー」

「五月蝿いっす。でも奴は動いたっすよ」

 

 待ちかねたとばかりにゴーレムⅢは急接近。

 この早さは瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 右手の大型ブレードで百合仲を絶ち切らんとした。

 

「うっし! やるぞフォルテ」

「何時でもオッケーっす!」

 

 ようやく寝転ぶ姿勢から立ち上がった二人。

 ゴーレムⅢが斬りかかる寸前、二人の目の前にコールド・ブラッドの第三世代能力で作り上げられた巨大な氷壁が空中に出現した。

 

 ゴーレムⅢは止まらずにブレードを振るう。ゴーレムⅢのパワーはIや Ⅱ よりも遥かにアップしている。

 目の前氷壁を砕かんとしたゴーレムⅢのブレードは………突如吹き出した炎にまかれた。

 

 イージス。

 

 正式名称【氷炎相転移防壁(ヒンダルフィヤルの城壁)】と呼ばれるこの防御方法は。ヘル・ハウンドとコールド・ブラッドの第三世代能力を織り混ぜた防御コンビネーション。

 

 コールド・ブラッドが生成した氷壁の中にヘル・ハウンドの炎を内包した防壁。

 

 氷壁が砕けることでクッションの役目を果たし。氷の中でくすぶっていた炎は砕かれた氷壁から供給された酸素で即席のバックドラフトを引き起こし、その勢いで敵の攻撃の衝撃を中和、反撃する。

 つまり氷と炎を組み合わせたリアクティブ・アーマー。

 

 二人のコンビ名が絶対防御のイージスと呼ばれるようになった要因がこの絶技。

 これを破るのは至難の技。三年生の間ではイージスペアと更識楯無ペアの対戦を楽しみにしていた者も少なくなかった。

 

 バックドラフト・ファイアという手痛いしっぺ返しを食らったゴーレムⅢは思わず後退する。

 一度距離をとって体勢を整えようとしたが。それを逃すイージスではなかった。

 

「はい残念」

「触れれば火傷だけで済ませないのがウチらイージスっすよ」

 

 氷壁の両サイドから躍り出たダリルとフォルテ。

 ダリルの手には二振りのヒートブレード【黒への導き(エスコート・ブラック)】。フォルテの手には氷で形成した大戦斧が握られていた。

 

「さあ氷炎地獄に堕ちやがれ!」

「水先案内人になってやるっス!」

 

 熱剣と氷斧を振り下ろされたゴーレムⅢはそのままアリーナの地面に叩きつけられた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「うおおおっ!」

「よけろ一夏! 放て、穿千!!」

 

 ゴーレムⅢのブレードを押し返した一夏は直ぐ様横によけ。その後ろでチャージを完了した箒がブラスタークロスボウを撃ち放つ。

 ゴーレムⅢは身をよじって赤い光をよける。そこで空中に身を晒したところを一夏が月穿で近距離砲撃を見舞った。

 

 ゴーレムⅢもとっさにシールドで防御しようとしたが。荷電粒子砲はシールドをそれて胸部に命中して吹き飛んだ。

 

「ナイスだ一夏!」

「箒もな。だけど目立った損傷はなさそうだ。荷電粒子砲の直撃受けて凹むだけって、こっちのメンタルが凹むよ」

「まったく度しがたい固さだ」

「もしかしたら装甲にエネルギーを伝播させて防御力を上げてるのかもしれないな。飽くまで予想だけど」

「一夏が頭良いこと言うと違和感があるな」

「失礼だな。菖蒲さんの電磁シールドを思い出したんだよ」

 

 審議のほどは不明だが。ゴーレムⅢの固さはフルスキンということを加味しても異常である。

 初めからシールドエネルギーなしを想定しているISだ。シールドに回すエネルギーをそのまま別の方に回してるのだとすれば………

 

「俺の零落白夜もあいつには意味がないな。絶対防御が発動しない以上、雪片弐型はビームブレードが出せるだけの武器だ。熱線に対しては効力を発揮できるから全然無駄ってわけじゃないんだけど」

「装甲にエネルギーを纏ってるなら、それだけは消せるんじゃないか?」

「あ、そっか。だけど当てれるかって話だな。あっちはパワーがダンチだし」

「お互いにノーガードで殴り合い、とはいかんな。奴は肉を切られてもなんともないが。私たちは生身だ」

「その分気兼ねなく斬れるから。そこだけは助かるが」

 

 そう言いつつも一夏の表情は暗い。

 

 もし相手が生身の人間だった場合。それは単純な殺しあい。

 相手が殺す気で来たとき、自分は刃を振るえるのか。一夏が零落白夜を使うときに感じる悪いイメージが現実となる時が来たら………

 

(馬鹿! 今は後回しにしろ! 目の前のことに集中するんだ!)

 

 考えるのは後でも出来る。今は生き残ること。そして箒を守ることを心に刻んで雪片弐型を振るった。

 

 そして箒も心の中で葛藤していた。

 

 目の前で猛威を振るうゴーレムⅢという鋼の乙女。

 対IS用ISという大義名分を得た人を殺すことを目的としたマンキラーマシン。

 

(もしこれを作ったのが本当に姉さんなら………姉さんは私たちを………)

 

 無人機のISに使われてるのが未登録のISコアであることを。箒たちは知らない。

 それでも人が介在しない無人機を作れるのは姉しかいないのではないか。世界でも指折りのセキュリティを持つIS学園をいとも簡単に突破にするハッキング能力。

 

 そして目の前で見せつけられる。シールド無効化のジャミング。

 そんなもの。ISを知り尽くしている姉にしか出来ないのでないか? 

 シールドのないISなど。ISと言えるのか………

 

 箒は以前臨海学校の銀の福音暴走事件で疾風が言ったことを思い出した。

 

『幾らISをスポーツと認識してもそれはISの一面に過ぎない。ISは人を傷付ける力も持っている』

『だけどそれは表に出しては駄目だ。俺はISをただの『兵器』という枠組みに収まるのは嫌だ』

 

 あの時は軟弱なことだと心の中で一蹴した箒。

 

 だけど今の箒なら疾風の気持ちがわかる。

 

 ISが戦闘機や戦車と違い、ここまで自分たちと密接な関係にあるのは。

 ISがスポーツとしての側面を持っているから。

 

 兵器としてではなく、人々を楽しませるためのスポーツとして。

 

 クラス対抗戦、学年別トーナメント、キャノンボール・ファスト。

 今日だって。専用機持ちたちの対戦を心待ちにしていた生徒がいた筈だ。

 

 なのに心のない第三者の手で無茶苦茶にされる。

 

 ましてや、その首謀者が自身の姉だったとしたら。

 

「箒!」

「っ!」

 

 こちらに猛進してくるゴーレムⅢ。

 振り下ろされるブレードを展開装甲のバリアで防ぎ。空裂のビーム斬撃で追い返し、一夏がビームクローでゴーレムⅢを下がらせる。

 

「大丈夫か!」

「す、すまない一夏!」

 

 戦ってる最中に考え事をした自分を攻める箒。

 自然と刀を掴む手にも力が入ってしまう。

 

「箒の考えてること。なんとなくわかるよ」

「え?」

「だけど今は戦うんだ。そして、絶対にお前を死なせない! 箒は、俺が守ってみせる!」

「………まったく」

 

 何故こういうことばかり鋭いのだろうか。

 自分の想いに欠片も気づかないくせにこの男は。

 

 決して口に出さない憎まれ口を叩きつつも。一夏の言葉に箒の胸がジンと熱を持った。

 

 何時だって、一夏の言葉は箒に勇気をくれた。

 ならばそれを糧に戦うことが、今の箒に出来ることだった。

 

「生憎だが。私は守られるだけの女じゃないぞ、一夏!」

「ヘヘ。それでこそ箒だぜ!」

「行くぞ! 絢爛舞踏が必要なら直ぐに言ってくれ!」

「おう!!」

 

 二人同時に瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 迷いを置き去りにしてゴーレムⅢに恐れずに向かっていく。

 

 異形の魔を討たんとする白刃と赤刃は二人の心に呼応するように煌めいた。

 

 

 






 ボルテック・チェーンが文字だけでも出せて良かった。
 甲龍は名前だけ武装多すぎるんよ………

 教師陣の戦闘も書けて良かったなぁ。IS学園の教師は強いんだぞぉ!というのが本の少しでも伝われば幸いです。
 山田先生クラスの教師がわんさかいると思えば。

 イージスもやっと出せたなぁ。
 特にコールド・ブラッドは武装面がなんもわからなくて。
 因みに凍結レーザー銃はアーキタイプ・ブレイカーで使ったので採用。名前は捏造です。

 イージスの正式名称【氷炎相転移防壁(ヒンダルフィヤルの城壁)】。なかなか厨二感ありありではなかろうか。って感じになりました。
 ヒンダルフィヤルというのはブリュンヒルデがいた炎の館です。
 え?この技はアイス・イン・ザ・ファイアじゃないのかって?
 いやぁ、どっちかと言うとあれはファイア・イン・ザ・アイスですし、ね?
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