IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
「むふー。平和だねぇ………」
「疾風ったら、そんなお行儀の悪い」
「タレ疾風でーす」
「白黒になってから出直しなさい」
いつものカフェテラスのテーブルに顎を乗せ、平和を享受する眼鏡をかけ、最近少し髪が伸びた男。
どうも、我が愛機スカイブルー・イーグルがやっと帰ってきてウキウキマンボーな日本代表候補生兼レーデルハイト工業所属テストパイロット兼生徒会副会長の疾風・レーデルハイト16歳です。
え? 自己紹介が五月蝿い?
アハハ、ごめんごめん。
「まだ一週間すらたってないのに。穏やかな日々が数日続くだけでこれよ。ふあ~」
「なに言ってますの。イーグルが帰ってこなければまだまだ狂気に犯されてたでしょうに」
それは言いっこなーし。
現にEOS実習終了後とISが帰ってくる間に禁断症状が発生したことは。ここだけの秘密な。
「本当ならブルー・ティアーズとバトりたいんだけど。まだ直ってないもんねぇ」
「ええ。本社も今忙しい時期に突入してしまって。近いうちにイギリスに戻りますわ」
「護衛いる?」
「いえ、今回はうちの方から護衛を出すと念を押されたので」
「シャッチョに?」
コクリと頷くセシリア。
あの過保護叔母様プロデュースならボディガードも優秀だろうから。大丈夫だろうけど。とことん嫌われてるな俺。
なんか悪いことしたかなぁ。いまんとこそこのお嬢様のピンチ何回も助けたからプラス感情にならないと足し引きが合わんと思うのだが。
あ、スタートがどん底マイナスだから多生のプラスは微々たるものか。うわかなしっ。
「俺も言うて全力戦闘は控えるようには言われてるけどね。それも今日で最後だ。今日もEOS届けに母さんと父さんくるし」
「例の新機能ですの?」
「そっ、最終チェックだから直ぐ終わるから良いけど。結構不安定なシステムだからさ、念には念を入れる感じってわけよ。実は簪にもアドバイスもらってさ。あいつスゲーよほんと」
本当ならタッグマッチトーナメント前に調整が終わるはずだったんだ。
でも思ったより調整が厳しくて、本社も大分頭を抱えたみたいだ。
「その新機能ってどんなものですの?」
「んー、秘密。御披露目まで乞うご期待ってな」
「………簪さんには見せた癖に」
「うっ。それは言わんでくれよ。本当はお前にいの一番良いのを見せたいし知らせたいんだから。今日の最終調整終わったら一番に見せるからさ………機嫌直して?」
「そういう問題ではありません」
「セシリア~」
自分ではなく簪に頼ったという事実が面白くないお嬢様は若干不機嫌な様子。
だけど本気で怒ってる訳ではない、というのはなんとなくわかったから。結構ホッとしてる。
と、セシリアを見ていると、いつものとこにイヤーカフスがついてないことに気付いた。
「そういやお前IS何処につけてんの? 確かパーソナルロックモードよね」
「ああ、これですか?」
スッと袖口を引くと、右手首にブルー・ティアーズの待機形態であるイヤーカフスの形をしたシールが張り付いていた。
「アクセサリーじゃ飽き足らず、こんな薄っぺらいシールっぽいのになるなんて。量子変換って凄いよなぁ」
「でもこれではまともに機能しないのも事実です。拳銃をバラして持ち歩いてるのと同じですから」
「だからこそ、今は有事に備えて専用機持ちは二人以上の行動を義務付けられてるという訳だ。会長と俺以外は」
会長はISを持たずとも一戦級の実力を持っている。
心配する要素はこれっぽっちもないのが普通だが。病み上がりだから少し心配なのもある。
が、彼女はいま絶好調の有頂天。妹成分を補給したお姉ちゃんは強い。
「整備環境が近くにあるのは、日本組の利点ですわね」
「ああ、だが菖蒲は須佐之男ユニットのオーバーヒートでダウン。紅椿は自己修復待ち。そして一夏は昨日から倉持技研に泊まり込みだ。そのせいで一夏ラバーズどもは、半ばダウナー状態というね」
「さっき鈴様に会って『やる気が出ないー』って言ってましたわ」
「一夏がいねえからだわな」
「そう言ったら『な、なぁ!? べ、別にそんなことないわよ! 一夏なんていようがいまいが変わらないっての!』ですって」
「予想通り過ぎて笑うわ。てか似てたけど違和感凄いな鈴の真似」
「わたくしもそう思いますわ」
いつもお嬢様言葉がデフォルトのセシリアが行きなり砕け全開の鈴口調で喋るのは中々ギャップインパクトがある。
そんなセシリアも良いなと思える辺り、俺は順当に末期症状進行中である。
「しかし大丈夫かなぁ」
「何がですの?」
「一夏の貞操。倉持技研第二研究所にはあの奇人がいるから」
「………あーー、いましたわね」
「事前に教えた対篝火ヒカルノマニュアルが役に立てば良いのだが」
「そんなもの教えましたの?」
教えましたの。他にも更識楯無対処マニュアルもあるが。これは触りだけにしておこう。
矛先が俺に集中したら困るから。
「ところでさ。本国に行くのって直ぐなの?」
「いえ、スケジュール調整とかで大分先になりますわね。一週間後あたりかと」
「一週間かぁ………」
………………うん。
「セシリア」
「はい」
「日本にいる間はさ、特に予定とか組んでる?」
「いえ。家の仕事が少しあるだけで、基本はフリーになりますわね」
「そっか」
これはチャンスじゃないか?
うん、チャンスだ。間違いなく。
「あのさ、えっと」
「?」
「良かったら。近い日に一緒に………」
街に出掛けないか? と言おうとした時だった。
カフェテラスの柱と一体になっているモニターの画像が乱れた。と思ったらカフェテラスの電気が一斉に消えた。
「お?」
「停電?」
まだお昼だから窓からの光で真っ暗になることはなかったが。
突然の停電に周りの生徒も何事かと辺りを見渡す。
だがこれで終わりではなかった。
「はっ!?」
「防御シャッター!? 何故っ」
ガラス窓の外から被さるように次々とシャッターが降りていく。
外からの光源を軒並み潰していき、最後には真っ暗な闇だけが残った。
普通停電した場合、緊急用の電源が確保され。それでも非常灯だけは別ルートで電力供給されてるため直ぐにつく筈なのだが。
「セシリア」
「ええ、二秒たちました。非常電源にも切り替わらない。不自然です」
「ねえ、みんな大丈夫!?」
「いたっ! 誰か足踏んだ!?」
「ご、ごめん! うわっ、コップ落とした!」
「ちょっとどうなってるのよ!?」
マズい、急に真っ暗な閉鎖空間に放り込まれたせいでパニックに。
俺はイーグルの腕部装甲を展開。
プラズマを纏わせ、即席の電球を作り出す。
更にビークを空中に等間隔に起き、即席の光源とした。
「はーいみんなー! 落ち着いてー! ちょっとチカチカして目に悪いけど我慢してねー!!」
「レーデルハイトくん?」
「いったい何が起きたの!?」
「今確認してるからー! みんなはその場でジッとしててよー! あと食いかけの菓子あったら今のうち食べとけよー!! わかった人は返事ー!」
「「はーい!」」
「はい元気でよろしい!」
よし、これでパニックは回避。
日頃の経験からパニック慣れしてるのもあると思うが。こういうのはギャグムードに持ち込めば勝ちなのよ。
「さて、何が起きたろうね」
「停電、ではないということぐらいは」
「ああ、もし非常用含めて全ての電源が落ちたのなら防御シャッターが降りるわけない。現に電源落ちてからシャッターが降りたからな」
つまり、学園のシステムがのっとられた。
またもまたもまたも誰かさんにやられてる可能性大ということだ。
「先ずみんなに連絡だな。こちら疾風、聞こえる奴は返事しろ。返事しないと一夏にあることないこと秘密にしてることとかぶちまこるぞ」
『待て待て! なんで行きなり脅迫するんだお前は!』
『ほんと油断も隙もないわね!』
『今さら一夏にバレるようなことないと思うんだけどな』
『そう思ってるのはお前だけだシャルロット』
『疾風様。こちらは聞こえておりますよ』
『右に同じく』
『あんまり女子を弄くると痛い目あうわよ疾風くん?』
「よし、全員いるな!」
「あなたという人は全く」
『活気が溢れていて何よりだが。もう少し緊張感はないのかお前ら』
専用機組で点呼という名の漫才会話を繰り広げていると、待ってました織斑先生が登場。
「目の前にゴーレムが来るのと比べたらって奴ですよ」
『まあいい。専用機持ちは全員地下の特別区画に集合。今からマップを送る。隔壁に遮られた場合は破壊も許可する』
「了解。といってもいま隔壁破壊できるの俺ぐらいだからな。各自集合しながら現地に向かうということで。オッケー?」
『『『了解!』』』
通信終了。
さてここの事後処理をしなければ。
「あーみんな! これから専用機組は事態収拾に行ってくる! 懐中電灯とビニール袋出しとくからそれで明かり確保してくれ」
「なんでビニール袋?」
「懐中電灯に半透明のビニール袋被せて光らせたら光源になるのよ。ほれ」
「わーほんとだ! レーデルハイトくん物知りー!」
バススロットから出した懐中電灯とビニール袋を近くの生徒に渡し、先生が来るまで現状待機を伝えておいた。
「前から思ってましたけどあなたISのバススロットを便利なバックと勘違いしてません?」
「現に役立ったじゃない。備えあれば憂いなしってね」
「まあいいですわ。一番近いのは鈴さんとシャルロットさんですわね」
「じゃあ行きますか。うおーバリバリぃ!」
「やめなさい!」
プラズマをバリバリ鳴らしてたら怒られた。
アレー?
ーーー◇ーーー
着々と合流し、なるべく隔壁を避けるルートを取って指定された場所に到着。
「ついてみたらそこはなんとも脳波解析されそうな部屋につきましたよっと」
「言い掛かりしかないぞ疾風」
学園一斉停電と思いきやそこはちゃんと明かりがついていて。目の前にはベッドが7つおかれており。見てくれだけならなんともビジネスホテルみたいな感じになっていた。うーん、我ながら説明が下手である。
「では、状況を説明する。現在IS学園は全てのシステムがダウンしている。つまり、ハッキングを受けているものと断定する」
「これで4回目ですね………織斑先生」
「言うな………」
お疲れ様です。いやほんとに。
「今のところ生徒への被害は出ていません。防壁によって閉じ込められていることはあっても、今のところ危険はありません。いま教員が各エリアに向かっています。どうやら全ての防壁を下ろした訳ではないようですが。IS学園は完全に外界と隔離されてしまっています」
話を引き継いだ山田先生の言葉に一同は納得する。
途中途中で見た非常口に通じる道などは全部行く手を遮られていたのだ。
つまり、敵の目的は。俺たちを閉じ込めることにある。と予想された。
「あ、でもトイレとかはいけるみたいです。意外と親切なのかもしれませんね。ハッカーさん」
場をなごませる為に言ったのであろうが。誰一人笑うことなく、かろうじて乾いた笑いを出すだけだった。
なんか山田先生ってこういうの苦手だよな
「あ、えーと。げ、現状について、何か質問はありますでしょうか?」
あ、逃げた。
「はい。IS学園は各個に独立したシステムで動いてると聞きます。しかし今回はその全てがダウンされている。こうも一度にハッキングをされることなどあり得るのでしょうか」
ラウラの質問に良く言ってくれたとその場にいる全員の心が一致した。
と同時に俺はこの先の返答を予想してしまった。
「え、えっと」
「それは問題ではない。いま解決すべきことは敵への攻撃の対処、それだけだ」
「はぁ………」
山田先生の変わりに織斑先生が答え………という答えを出さずにピシャリと言ってのけた。
そっち側から質問させといてこれである。もっと言い方があるでしょう(山田先生の自爆でもあるが)
自分たちが知らなくていいことに関しては真っ向からぶった切る、そういうことだ。俺も経験があるからわかるが、結構モヤッとくるものがある。
「私からもいいでしょうか」
「箒?」
「今回の犯人は前回と同一犯ですか? いえ、この際だから直球で言います。IS学園を度々ハッキングし、三度無人機を送り、今日IS学園を掌握したのは。私の姉、篠ノ之束ですね?」
「犯人は不明だ。確証はない」
あらかじめ用意していたぐらいの即答っぷり。
流石にここまで来るとこっちも黙っちゃいられねえってものですよ。
だったらこれはどうだ!
「はい! 質問という名のあてつけします! 織斑先生は結婚のご予定はありますか!」
「とんでもないことぶちまけたぞこいつ!」
「馬鹿ですのあなた!?」
「あと一夏が結婚した場合どんな感情で見送りますか!」
「隙を生じさせぬ二段構え!?」
「虎の尾の上でタップダンス!?」
「更に一夏が一夫多妻制の国に行くといって四人の嫁を囲ったらどうしますかぁ!!」
「待て! 一夏と結婚するのは私だけだ!」
「というかサラッと私たちを巻き込んでないかお前!?」
「とりあえず全員の性根を叩き直す」
「そして織斑先生は律儀に答えましたわ」
「カオス………」
ふぅ(賢者モード)
「よし落ち着きました。ご清聴ありがとうございました」
「あなた定期的に狂気に走るのやめなさいな」
「だって、さっきから全然質問に答えてくれないし。前回の反動もあってもう爆発しちゃったんだもん」
「いじけても可愛くないですからね」
別にいいですぅ。可愛くなくて。
その後は特に誰からも上がらなかったので質問タイムは終了となった。
「それでは、これから学園のシステムを奪還するための作戦を説明します。現在、こちらからのアクセスは完全にシャットアウトされており。システムに届いてすらいません。そこで皆さんにはISコア・ネットワーク経由で電脳ダイブを実行。メインシステムに侵入したハッカーの追放、撃退をしていただきます」
「で、電脳ダイブ!?」
「………とはなんだ?」
専用機持ちの面々が驚く中で、一人箒がおじけずに疑問を出した。
「ISの操縦者保護神経バイパスから電脳世界へと仮想可視可して直接サーバーにアクセスする方法だ」
「専門用語ばかりで更にわからん」
「要するに、ISを使って生身と変わらない感覚でパソコンの中に入って操作出来るってことだ」
「そんなSF映画のようなことが可能なのか!?」
「理論上は完成し、既に成功例もある。あるんだけど………」
「なにか問題でも」
「メリットがないんだよね」
そう電脳ダイブという画期的な響きとは対照的に。その必要性がほとんどない。
要はパソコンを外からキーボードで操作するか。中から操作するかの違いでしかないのだ。
それにどちらが早く操作できるかというと、外の方に軍配が上がる。
それに加え、電脳ダイブ中はISの機能をそれに集中しなければならず。ダイバーはまったくの無防備になってしまう。
「この部屋を見る限り、専用機持ちを1ヵ所に集めての行動になる。リターンに対してリスクが多い」
「あたしも出来ればやりたくないわ………」
「わたくしもです。こんな非常時に無防備な身体を晒すなんて………」
「それでは、わざわざ電脳ダイブとやらをやる意味がないのではないのか?」
「普通はね。でも今回は、外からの通常アクセスが出来ない状況にある」
「その通りだ。今回はISの電脳ダイブによる強行突破、そして侵入者へのダイレクトアタックが必須だ。異論は聞かん、イヤならば辞退するといい」
圧を感じる織斑先生の眼光と言葉に苦言を漏らしていたセシリアたちは気圧された。
言葉通り異論を聞く気は毛頭なさそうだった。
「ちなみに。言葉通り俺たち全員が総辞退したらどうなります?」
「IS学園は事実上崩壊する、と言っておこう」
つまり拒否権もなければ離脱権もなし。
わーとんだブラック企業だー(棒)
「………やらなければならぬのなら、やるしかないだろう」
「ええ、今のわたくしたちはISを動かせません」
「ならやれることをやるしかないって訳よね」
「毒食らわば皿まで、です!」
「やろう、みんな」
「ああ、ベストを尽くす」
「………うん」
みんな決意を新たにした。だがそれは内からくる不安を払拭するための自己暗示。
それだけ今の状況での電脳ダイブはハイリスクとなるのだ。
形の同意を得たところで、織斑先生がパンっと手を叩いた。
「それでは篠ノ之、オルコット、凰、デュノア、ボーデヴィッヒ、徳川はアクセスベッドに乗れ。更識簪は我々と共にダイバーのバックアップだ」
「「「了解!」」」
「了解! じゃあ行くかー」
「レーデルハイト、お前はそっちじゃない」
「ヴェ?」
言葉で襟首を掴まされた俺はギギギと錆びたブリキ人形のように上の織斑先生のほうを向いた。
「な、なんでですか。ベッドは7つあるんですよ? 簪がいないのであれば俺が適任のはず。イーグルの性能はご存知でしょう?」
「お前には別の任務についてもらう。電脳ダイブは篠ノ之たちに任せろ」
「つまり俺は電脳ダイブは出来ないと?」
「そうだ」
「なん、だと」
ガクンと俺は膝から崩れ落ちた。
先程のリスクの高い電脳ダイブに何故ここまで落胆の意思を示すのか。みんなが首を傾げるなか。簪だけが俺の側に来てしゃがんできた。
「疾風………」
「………」
「やりたかったの? プラグイン」
「っ! やりたかった! プラグイン! 疾風・レーデルハイトEXE、トランスミッションしたかったぁぁぁ!」
たとえハイリスクローリターンだとしても。プラグインは少年たちの大きな夢なのであった。
ぬおーー! と雄叫びをあげる俺を。菖蒲と簪以外の面々がなんとも言えない目で俺を見下ろしていた。
ーーー◇ーーー
セシリアたちの頭上、簪と会長。織斑、山田先生。そして俺はナビゲートルームからみんなを見下ろしていた
簪と俺を除いた一年生6人は電脳ダイブ用のベッドに寝そべり、そのまま装置の中に収納された。
全員ISを準起動モードに固定。電脳世界へのアンカーを打ち込み、仮想媒体として電脳世界にダイブする。
「それでは、仮想現実の世界に接続します。皆さんは、システム中枢の侵入者を排除してください」
「わかった」
「みんな、きっちり帰ってきて俺に電脳ダイブの感想を伝えるように。オーケー? ていうか誰か変わってくれる気はある? あると言え、あると言ってください」
「駄々をこねるんじゃありませんみっともない。わたくし、しつこい男は嫌いでしてよ」
「すいませんごめんなさいお願いです嫌わないでください」
トラウマを思いだし俺はガクブルと震えた。
時間経過で直るとするなら、まだまだ膨大な時間が必要となりそうだ。
「心配しなくてもちゃんと帰ってきますから。IS学園は任せましたわよ」
「わかった、こっちは任せろ。一夏じゃないが、絶対にお前たちは俺が守ってみせる」
「最近、絶対って言うようになりましたわね?」
「そんなことは………あるかもな」
「フフッ」
「ハハッ」
自信がついたのか。あるいは必ず守りたいという意思の現れか。
この世に絶対はないと自負していたが。一夏の熱血さが移ったのかな。
「なーに? 二人で甘い雰囲気出しちゃってさ」
「そ、そんな甘い雰囲気なんて」
「胸焼けしそうだな」
「簪様。このままだと私が嫉妬で狂いそうなので宜しくお願いします」
「了解。では、接続開始」
みんなの前に『GET READY』の文字と共にカウントが始まった。
5 4 3 2 1 ENTRY。
「ダイブスタート」
システム接続。
6人は眠るように意識を手放し。肉体から仮想現実に吸い込まれる。そんな不思議な感覚に包まれた。
「お疲れ様」
「……え? 俺に言いました?」
唐突に労いの言葉をかけられ思わず反応が遅れた。
「みんなの緊張をほぐす為にあえて道化を演じたでしょ? たいした名俳優っぷりだったわよ?」
「いやいやそんなもんじゃないですよ。それに俺は一つも嘘は言ってないですよ。電脳ダイブ的なトランスミッションしたかったのは本当ですし………それは今じゃないってことだけで」
トントン。自身の胸に光るイーグルのバッジに拳を当てる。
今の俺はIS学園の数少ない自由に動ける戦力。敵の狙いは分からないが。
………プラグインしたかったのは本当だ。後で出来ないかかけあってみよう
「では、お前たちには別の任務を与える」
「はい」
「なんなりと」
「おそらく、ハッカーとは別の勢力が学園にやってくるだろう」
「IS学園は難攻不落の要塞。国家でさえ無闇に立ち入れない」
「だがそれはセキュリティが機能していればの話。今のIS学園は鍵のない宝物庫だ。千載一遇とばかりに来るだろう」
「敵、ですね」
織斑先生が重く頷いた。
「今のあいつらでは戦えない。教員機も先の事件でメンテナンス中だ。悪いが頼らせてもらう」
「任されましょう」
普段のおちゃらけゼロ、完全に更識モードに入っている会長。
普段とのギャップが強くて風邪を引きそうだ。
「それと、今回の事件にあたり。レーデルハイト、お前の両親にも協力してもらうこととなった」
「なんですって?」
なんですって?
「私から避難するように言おうとしたんだが。本人がやる気満々でな。戦力は多いに越したことはない、ということで許可した」
「あの、両親って言ってましたけど。もしかして父も?」
「ああ、EOSで参加するとのことだ」
「おーう………」
さては盛大にぶっぱなせるとテンション上がってるな?
母さんに良いとこ見せようとやる気満々だなダディ?
「わかりました。止めとも無駄でしょうし。それより会長は大丈夫なんです? IS、まだ展開出来るほど修理出来てないんでしょう?」
「私は更識楯無よ? こういう状況下での戦いはむしろ得意分野なんだから、第三世代能力は使えるし。自分の心配だけしてなさい」
「ヘタこいたら盛大に笑ってあげますね」
「ほんと可愛くない子ね」
はい可愛くないですよーだ。
「またお前たち子供に戦わせることになるな。すまない」
「なんかさっきの『行け、敵前逃亡するものはこの場で切り捨てる』って迫力だった人が言うと違和感バリバリですね」
「あいにくああいう方法しか知らんのでな」
「独裁政治しいてる自覚は」
「さあな」
独裁政治圧政者の末路は背後からナイフグサー! が定番だが。この人はその限りではないなぁ。
「では、行くぞ」
「はい………ん?」
いま織斑先生が行くぞって言った?
と思ったら山田先生も立ち上がった。
いや山田先生ならまだわかるけども。
「私も前線に出る。何時までもお前たちばかりにやられせるわけにはいかんさ」
「出るって。ISでですか?」
「ISは使わん」
「………りぴーとあふたみー?」
「ISは使わん。この身体だけで充分だ」
「………………………???」
はぁ?
どっちかというと3のパルストランスミッションだよなコレ。