IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第114話【アポなしお断り戦線】

 

 

「………ここが」

「電脳世界」

 

 電脳ダイブにより突入した世界で目に写ったのは。一面の星空だった。

 否、星空というには少し違う。夜のようなダークブルーの空間に複数の幾何学模様が星のように散りばめられ。情報体が流れ星の如く空間を走っていた。

 

「もっと電子的な風景だと思ってましたが、素敵なところですね。こんな時でなければずっと眺めていたいところです」

「うわっ、なんか床がないけどある感じ? 一寸先が足場なしってことはないわよね?」

「そうでないと信じたいな。で、あれか」

「ええ、間違いないでしょう」

 

 少女たちの目の前には白色の扉が6枚。まるで自分たちを待ち構えるかのように悠然と待ち構えていた。

 

「入れってこと?」

「多分、そう。1人につき1つの扉に入って。各々かシステム中枢にまで前進。到達次第、敵を排除する」

「ここで戦力を分散させるのは危険ではないか? 敵の罠の可能性もある」

「そうしたいけど駄目。そのドアを通れるのは一度に1人分のデータ容量のみ。しかも、この先はこちらからでは解析出来ない。今でさえ通信環境が不安定になってるから、途絶える可能性も大」

「ますます罠に見えてきた」

「通信はなくてもみんなの反応は追えるから、何かあった時はこちらで強制ダイブアウト、現実世界に引き戻す」

「どちらにせよ、我々に出来ることはこれ以外ない。そういうことだな?」

「うん」

「行くぞ」

 

 こくんと頷きあって、6人はそれぞれのドアを開け、くぐった。

 

 

 

 

 

 

 

『ワールド・パージ………開始』

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ギュッとブーツを固定し、各部接続箇所の最終チェック、完了。

 

 ISスーツ以上の耐刃耐弾耐熱耐衝撃機能を盛り込んだ、ISスーツとは違う漆黒のバトルスーツに身を包んだ、織斑千冬が顔を上げた。

 

 腰にはIS用ブレードと同じ材質の刀が左右3本、両の手に同様の刀を持つ、計8本の刀を携えていた。

 

「モンド・グロッソ以来か。この髪型にすると身が引き締まる」

 

 仕上げとばかりに千冬はいつもの髪ゴムをほどき、白いリボンでポニーテールを作り上げた。

 完成された姿は異形の侍。または近未来SF風に改造された忍び装束だった。

 

 決戦の場に向かうために武器庫から出た千冬。

 その先には既にその場を立っている筈の疾風の姿があった。

 

「まだいたのか」

「はい、本当なら新機能の最終チェックを母さんたちとやる筈だったのですが。って、なんですその姿?」

 

 いつもの千冬とは違う様相に疾風はずれかけた眼鏡を直した。

 R系のロボゲーやニンジャゲーで見たことあると口走らなかったのは疾風の生存本能の賜物であった。

 

「ISスーツじゃないですよね、それ。バリバリの戦闘用に見えますよ。あれですか? そこまでISに乗らないって織斑先生ってもしかしてISアンチだったりします?」

「フン、単純に生身の方が動きやすいだけさ。うちに置いてある訓練機では私の動きについてこれないからな」

「暮桜はどうしたんです?」

「いま私の手元にないんだ………期待に応えれなくてすまんな。見たかったろ、暮桜」

「見たかったですよそりゃあ、俺をISの世界に引き込んでくれた名機ですから。でも、ISが出たら生身でやるつもりですか? 流石に無茶ですよ」

「私なら問題ない。お前は何も心配しなくていい、安心して持ち場につけ。頼むぞ、レーデルハイト」

 

 託す声色は何時もより優しかった。

 目の前の男は覇気だけで大人しくなるような男ではない。むしろそれに反発する反骨心を誰よりも持ち合わせている。

 

 はぐらかしている自覚は千冬にはあった。それでも託す、頼り甲斐のある目の前の教え子に。

 

「まえに御厨所長が言っていました。織斑先生は間違いなく俺たちの味方だと」

「………」

「信じていいですね?」

「無論だ」

「了解。疾風・レーデルハイト、学園防衛の任につきます! 織斑先生もお気をつけて!」

 

 PICで機体を浮かし、疾風は自分の持ち場に飛翔した。

 今は迷わない、大事な仲間。そして愛する人を守る為に少年は戦場に向かったのだ。

 

「やれやれ、眩しいな………行くか!」

 

 千冬も決意を新たにし、死地に飛び込んだ。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「いいわね剣ちゃん。乙女の学舎&息子の学舎に土足で踏み込む輩は! サーチ&スラッシュ、サーチ&デストロイよ!!」

「殺すなよ? 峰打ち優先な?」

「心は?」

「時と場合による」

「よしっ。見敵必殺!」

「殺意高いなぁ」

 

 愛機、ディバイン・エンプレスに身を包むアリア。

 さっきから両手に持つフラッシュ・モーメントをブンブン振り回している。

 完全に狩人の目となった妻の姿に呆れつつ、「これはこれで良し」と勝手にテンションを上げているバカ夫婦の片割れ、剣司・レーデルハイトはEOSに乗り込んだ。

 

「私からしてみれば、剣ちゃんのEOSの方が殺意高そうだけど?」

「見てくれはな。中身は暴徒鎮圧用の特別仕様だ。対人戦は任せろ。ISは流石にきついから任せるぞ」

「そう言うことはやる気満々に背負ってるクソデカパイルバンカーを外してから言ってね?」

「パ、パイルバンカーは男のロマンだろ!?」

「容易く人を蒸発出来るプラズマショットガンもしまってね?」

「高燃費武装も男のロマンだろう!?」

 

 男の子なら喜びそうなゴテゴテ装備のEOSに乗り込む剣司の姿こそサーチ&デストロイの名に相応しかった。

 そもそもこの男、単機で亡国機業のリーダー格を一度は圧倒した男である。説得力などなかった。

 

「フフッ。でもそんなロマンを求めるあなたも大好きよ、剣ちゃん」

「俺もだ、愛してるぞアリア」

 

 そしてなんの脈絡もなく発生する桃色空間。

 学生カップルでもここまで行かないだろう早業っぷり。もはやバグレベルである。

 

 伊達に毎晩バーニングラブをしてるだけのことはある。

 ISやEOSがなければ人目がないことを良いことに口づけの一つや二つや五つはしていたことだろう。

 

 そう、人目がなければ。

 

(剣ちゃん)

(んっ)

 

 パチリとアイコンタクト。

 剣司はアサルトライフルを右に向け何もないところにぶっぱなした。

 

「イダっ!」

「アウチ!」

「ヌゥ!?」

 

 するとどうだろう。暴徒鎮圧用の硬質ゴム弾がなにもないところで跳ね返り、そこから男の呻き声が聞こえてくるではないか。

 所々何かが破ける音が聞こえ、歩兵らしきものと、ネイビーカラーのIS、ストライカーが姿を現した。

 

「くっ、何故我々を察知出来て」

「お生憎様。このエンプレスにもスカイブルー・イーグルと同じ強化解析型ハイパーセンサーが搭載されてるの。透明人間になって抜き足差し足してもバレバレだからね?」

「チィっ!」

 

 偽装が解けかかった侵入者とIS、アメリカ製造の第二世代IS、ストライカーは二人に発砲を開始。

 だが飛来した弾丸はアリアのプラズマ・フィールドによって弾けて消えた。

 

「光学迷彩装備のストライカー・ステルスに、光学迷彩ギリースーツの歩兵か。こいつら装備が普通じゃねえな」

「ええ、特にあのギリースーツなんて大国でもそう扱ってないものよ? 超大国を除いて」

「アメ(リカ)ちゃんか?」

「それか亡国機業(ファントム・タスク)か。とりあえず無力化して縛り上げましょうか。歩兵は任せるわ」

「任された、お前も気を付けろよ」

「もう、誰に言ってるのよ」

 

 アリアは剣司にキス変わりの投げキッスを送ったあと、プラズマ・フィールドを展開したまま敵兵団に突っ込んだ。

 プラズマに弾かれ、ある者は壁に叩きつけられ、ある者はそのまま宙を舞った。

 

 肉薄するは敵のストライカー。フラッシュ・モーメントを挨拶代わりに上段から振り下ろすアリアに対しストライカーのパイロットはシールドを二枚展開して防いだ。

 

「無地のネイビーカラーのストライカー………あなたもしかして夏の臨海学校で疾風たちを監視してたストライカー?」

「………………」

「だんまりね。いいわ、無理やり口を割らせるから」

 

 ガキン! とノックバックされたストライカーは即座に体制を立て直して次のアクションに移るためにディバイン・エンプレスに視線を戻した。

 

「総員、抜剣」

「!!」

 

 流れるように彼女の周りに陣取る、10振りの片刃の剣。

 両の手の剣を水平に持ち、剣撃女帝(ブレード・エンプレス)は始まりのゴングを鳴らす。

 

「Shall we dance?」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 よーく耳を澄ませなければ聞こえないほどの足音が無人の廊下を疾駆する。

 そこに居ないはずなのに居る。なにかが居た。

 

「ネームレス3の部隊が交戦に入ったようだ。こちらの任務に変更なし、このままターゲットを捜索する」

「了解」

「あら。こんな美少女を素通りなんて淡白過ぎない?」

「!?」

 

 透明人間たちは思わず振りかえった。

 そこには先程通過した時には影も形もなかった少女が立っていた。

 

「迎賓」と書かれた扇子を持つISスーツ姿の更識楯無だった。

 

 彼女の言う通りすれ違えば誰もが二度見する美少女である楯無。水色の髪にルビー色の瞳というこれまた目立った外見だったのに、精鋭部隊と称される彼らはまるで気付かなかったのだ。

 

「あらそんなに驚いてくれるなんて、たまには忍びらしく忍ぶのもありねぇ。それにしてもアポなしで女子校に不法侵入って、良い大人が恥ずかしくないの? 狙いはなーに? 女子更衣室の盗撮かしら? 常時外から監視したとしても更衣室の中は見えないものねー? キャースケベー!!」

「撃てっ」

 

 お茶らける楯無にほんの少しの苛立ちを覚えるも直ぐに静めた男たちは冷徹に突撃銃という暴力の化身を目の前の少女に向かって躊躇いもなく撃ち放った。

 彼らにとって邪魔者となるならば全て排除する。情の一欠片も持ち合わせるようでは名もなき兵士の面目丸潰れだ。

 

「はいバーリア♪」

 

 だがその暴力の嵐も彼女の前には無力だった。

 

 前に扇子を掲げると銃弾はたちまち速度を失い空中で静止した。

 事前に散布していたアクア・ナノマシンで障壁を作り、弾丸は残らずからめとられる。

 

 パシュっと解かれる水の壁。捕まっていた銃弾は小気味のいい金属音をたてて床に散らばった。

 

「フフッ、なんちゃってAICよ」

「くっ」

「ところでいつまで透明なのかしら? お話をする時はちゃんと相手に姿を見せなさいってお母さんに教わらなかったの? 悪い子はメッ、だぞ」

 

 パチン、と楯無が指を鳴らすのと同時に廊下の一区画がたちまち紅蓮の炎に包まれた。

 

 楯無が得意とする水質操作からの水蒸気爆発。

 風が吹かない屋内ではナノマシンによる分布密度から流動は容易きこと。

 その性能を十全に発揮させる屋内の戦闘は楯無の独壇場。まさに狩り場に相応しい。

 

 だが今回の水蒸気爆発は爆発は派手であったものの威力はそれほどにとどめている。

 だがその炎は見事光学迷彩ギリースーツを焼き払い、装甲服を来た軍人風の侵入者を文字通り炙り出した。

 

「どう? ミステリアス・レイディの十八番、『清き激情(クリア・パッション)』のお味は。この場で爆殺しないことに感謝しなさいな」

 

 怯むことなく果敢に挑みにかかる侵入者たち。

 だがその銃口から銃弾が飛び出ることはなかった。

 

「ぬっ?」

「はっ?」

 

 男たちは呆気に取られて動きを止めてしまった。

 戦場において戦闘中に動きが止まるなどあってはならない、常に行動し、思考を絶やすことなく臨機応変に対応することこそ、なにより兵士に求められるものである。

 

 だが彼らは呆気に取られてしまった。

 

 そう………ISとは違う。なんともカラフルなヒーロー的なスーツを装着した奇天烈奇々怪々な、5人(・・)の更識楯無たちの姿を前に。

 

「怒った簪ちゃんも超絶可愛い。楯無レッド!」

「眼鏡の奥のクールな眼差しに胸キュン。楯無ブルー!」

「緑茶を飲んだ後のまったり顔にほっこり。楯無グリーン!」

「好きな特撮に目を輝かせる簪ちゃん、キュート。楯無イエロー!」

「頬を赤らめる妹可愛すぎない? 尊死。楯無ピンク!」

「「「5人揃って、愛妹戦隊、楯無ファイブ!!」」」

 

 チュドーーーン。

 

 ナパームもかくやという特大の爆発(クリア・パッション)を背後に五色カラフルな戦隊スーツを着た5人の更識楯無が各々決めポーズを着てドヤ顔を決めていた。

 

 何故ドヤ顔なのが分かるのかというとフェイス部分がマスクではなくバイザーを下ろしたヘルメットのようなものだったのだ。

 戦隊というより科学忍者である。

 

 無論、これらは全て楯無の水分身。

 コスチュームまで変わってるのはいつか簪に御披露目するためにコツコツとプログラミングをした。

 要するに、才能と技術の超絶無駄遣いである。

 

「「「………………」」」

 

 だが効果はあったようで、侵入者一同は口を開けたまま固まった。

 あまりの奇抜さに警戒する者もいれば。文字通り呆気に取られる、さらに脳が思考を完結されずに半ばショートしてるという重傷者までいる始末。

 

 彼らとて生半可な集団ではない。

 それこそ想定外こそ想定内を下地にしたプロフェッショナル。

 ならばこそIS学園に潜入という地雷原を疾走する道を選んだ。

 

 だがやはり彼らも人の子。

 想定外の想定外までは想像してなかったのだろう。

 

 というかこんなの誰も想像出来ないだろ!! 

 ロシア国家代表で日本の裏のドンが突然カラフル戦隊スーツを着て妹愛をぶちまけた後に爆発を背後にキメ顔するなんて!! 

 出来るやつがいるなら出てこい!! 

 

 あとに彼らが残したコメントである。

 

「「「トツゲキーー!!!」」」

「フ、ファイトバーック(応戦せよ)!!」

 

 楯無ファイブが侵入者に踊りかかる。

 呆気に取られたものもそうじゃないものも気持ちにケリをつけて応戦。

 正確無比な射撃で楯無たちに銃弾を浴びせていく。

 

 だが相手は水分身。その身体にヒットした弾丸は弾かれ、めりこんで止まり、いなされて明後日の方へ飛んでいく。

 グレネードを投げ込むもまるで効果なし。

 

 彼らにとってこれ以上の恐怖はないだろう。

 持てる手段全てを使っても嬲り尽くされる未来しか見えない恐怖に。

 対IS戦闘を想定してはいたが、これほど理不尽で滑稽にやられるなどあってはならない。

 

 そんな恐怖に晒されるなか。

 恐怖は更に加速した。

 

「更にブンシーン!!」

「ギャー! ブンシン=ジツ!?」

 

 楯無ファイブが楯無フィフティーンに増えた。

 一部はナノマシンレンズで作り上げた虚像。そして残りは全てアクア・ナノマシンで作った水人形。

 

 突如増えた恐怖対象に侵入者はゾンビ映画のやられ役が如く動揺に染まりながら銃を乱射する。

 

「アイエエエ!? ニンジャ!? ニンジャナンデエエエ!?」

「おい馬鹿者! その片言ジャパニーズ言語は死亡フラグになるから絶対にやめろと言っただろうが!!」

「ですが隊長! 攻撃がまるで意味をなしてません! 弾がすり抜けたり弾かれたりです!」

「ヘルプミーヘルプミー!!」

 

 屈強なスペシャリストはもはや阿鼻叫喚だった。

 情けない悲鳴を上げ、残った理性でフレンドリーファイアを起こさないように立ち回るだけで精一杯だった。

 そんな彼らを翻弄するのはISも満足に展開できない16歳の年端もいかない美少女だ。

 

 その彼女(本体)はというと。

 

「あらあら踊ってる踊ってる。更識楯無主催のヒーローショーは如何かしら?」

 

 少し離れたところで高みの見物と洒落こんでいた。

 

 おもむろにパチンとフィンガースナップすれば、たちまち水分身楯無ファイブの一部が爆散し、風に巻かれる木の葉のように侵入者はクルクルと吹き飛ばされていった。

 

「祟りじゃあ! 祟りじゃあ!」

「ニンジャコワイ! ニンジャコワイ! ゴボボー」

「おぉい吐くなぁっ! 撤退! 一時撤退だ! 後方の部隊と合流をアイエエエー!!」

「タイチョー!!」 

 

 楯無レッドの自爆を受けて隊長とおもしき人物が空中でウルトラC級の空中捻りを披露した。

 もう部隊は総崩れ、我武者羅に撤退を決める。

 

 別動隊と思われる一団も加勢とばかりに戦線に加わろうとしたが全力で逃げ出す部隊と共に愛妹戦隊、楯無ファイブのヒーローアタックに巻き込まれて無力化されていく。

 

「んー。なんだか弱いものイジメみたいよねぇ。彼らも決して弱い部類ではないはずなんだけど」

 

 はぁ………と形だけの溜め息を吐いた後、直ぐににんまりと口角を上げた。

 

「でもお姉さん。そういうのだぁい好き………」

 

 これ以上なく色っぽく艶やかなボイスを噛ましながら楯無はサディスティックに笑った。

 

 自身と同じ姿の水のオートマタを引き連れて更識楯無は尽く敵を無力化していった。

 

 クリア・パッションの爆炎の光が、楯無を怪しく照らしていく。

 

 この場で簪がいたら喜ぶどころか引くことだろう。

 

「ウフフ、フフフ、アーハッハッハッハ!!」

 

 いまのお姉ちゃんは1000%悪役だと。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「うわー、やべぇー」

 

 そんな惨状を覗き見てドン引きしてる男が1人。

 

 ステルスモードで天井に張り付いて敵を待つ親しき隣人。どうも疾風・レーデルハイトです。

 

 先程から監視カメラで学園の状況を確認していたところだったのだが。

 なんかもう会長のとこが凄いことになってる。

 

 なんか自分の分身に戦隊ヒーローコスプレさせたあと自爆特攻させて高笑いをキメている。

 

 本人は戦隊風なんだろうけど、あれはもう子供ギャン泣きよ。

 どっちかと言うと偽レンジャーを従える女幹部よ。

 ………あとで簪に見せよっと。身体測定の仕返し済ませてないし。

 

 ん? 学園の監視カメラは電力カットされてるから使えない筈じゃないかって? 

 

 なんでも会長が学園のシステムとは独立した監視カメラを学園の至るところに設置しまくったらしくて。いま会長のアカウントを借りて盗み見してる。

 

 しかし相手が可哀想に見えてきた。

 見た感じ精鋭っぽいけど。限定展開した第三世代能力で完全に弄ばれてる。

 拘束後の尋問を有利に進めるためなのかなぁと思うが………それでも敵に同情してしまうのは仕方ないと思うの。

 

 チャンネルを変えて母さんと父さんがいる場所を。

 

 ………うわぁ。

 EOSで歩兵をちぎっては投げしてるぅ。

 アサルトライフル程度の弾丸なら装甲で受け止めれるとばかりに掴んでは壁に叩きつけたりEOS用ライフルで腹パンしてる。

 

 母さんは敵のストライカーと戦闘中。

 あー敵さん必死に母さんの射程に入らないようにしてる。ダンスマカブルのゾーンに入ったらその瞬間死だからな。

 タイマンで母さんの相手とは、敵も運が悪い。

 何故こんなとこに元イギリス代表がいるんだ!? ってなってること間違いなし。

 

 織斑先生の姿は見つけられなかった。

 監視カメラが設置できない深部にいるのだろうか。

 

「んーー。生徒の避難は終わった感じか。敵とエンカウントしなかったのはラッキーだったな」

 

 ………しかし遅いよな。

 

 システムダウンからかなり時間が空いてから敵が侵入してきた。

 といっても短時間と言えば短時間だが。

 

 俺から見て、ハッキングと侵入者は別勢力なのは間違いないと思っている。

 だってさ、あの篠ノ之束がこんな(束視点から見て)有象無象を雇ってIS学園攻めちゃうかな。

 

 箒の懸念通り、IS学園まるごとシステムダウンさせるなんてあの人ぐらいしか考えつかないし。

 織斑先生を見て確信もついた。

 本人からしたら知らぬ存ぜぬを貫き通せばそれは真実ではないことになると思ってるのだろう。相手がどう取るかは別として。

 

「まあ結局システムダウンと平行して攻めてきたってことは。IS学園は常日頃近場から監視されてたってことだよなぁ。プライバシーもなにもあったもんじゃねえ。花の女子校だぞここは………っと」

 

 こっちにも来たな。超高感度ソナーに反応あり。

 透明人間のご登場だ。人が着れる光学迷彩スーツって、まだまだSFの域を出ないと思ってたし。実用化したなんて聞いたことない。

 

 そんなインビシブルな敵がまもなく俺の真下を通る────通った。

 

「ハンプティ・ダンプティが落っこちたぁっ!!」

「ぐあああっ!」

 

 ステルスを解除して敵のど真ん中に着陸した。

 着陸と同時に両手から放射状に電撃をバラまいた。

 悲鳴を上げながら感電した兵士が意識をシャットダウンして地に伏した。

 

「こんにちは透明人間諸君。卵は割れたからもう戻らないぜ?」

「っ!」

「おっと撃たせない!」

 

 肩のワイヤークローで後ろの2人を挟み込み電撃を流しつつ前の1人を掴み上げて同じくショック! 

 透明人間だかなんだか知らんが、龍砲も見れるイーグルの目にはただの邪魔な布切れと同じ。

 

 小刻みなフットワークで敵の背後にまわってフレンドリーファイアを誘いつつ。振り向く暇すら与えず電流を流す。

 

 チャージが完了し、再び集団の中にヒーロー着地と同時に解放した放電で一気に複数の意識を刈り取っていく。

 更にプラズマダガーを発生していないビークを敵にぶつけてそれも感電させた。

 

「ラストはあんただな」

「ファック!」

 

 最後に残った1人が苦し紛れに撃った鉛玉も小規模に展開したプラズマ・フィールドで受け止めながらマニピュレーターで敵を掴み上げ、そのまま壁にめり込ませた。

 

 敵の精鋭部隊は、こんなガキンチョ1人に1分もたたずに無力化された。

 こちらのシールドを1減らすことすら叶わずに。

 

「ぐっ、あ」

「ISって非情だよな。世のミサンドリーが増長するのがよく分かるね。よっと」

 

 敵兵の透明マントをビリッと破り捨て。ヘルメットを掴んで無理やり引き剥がすと。茶髪に緑色の目をした二十代後半の青年フェイスが露になった。

 

「東洋人じゃないね。俺の予想だとアメリカあたりかな? イギリスじゃないことを願いたいんだけど。あんた何処所属?」

「………」

「黙って良いことは一つもないと思うんだよね。お互い時間の無駄だからさっさと喋ってくれませんか?」

「………」

「そうですか、飽くまで私は喋りませんと。なら仕方なし」

 

 次の瞬間兵士の目が見開かれ、全身が激しく痙攣した。

 イーグルの手のひらから電撃を直で流したのだ。

 

「ガァァァッ………うぅ」

「質問は既に拷問に変わっているんだぜ、なんて台詞を吐くようなことになるとは。一昔前の俺は考えもしなかったよ。さて、答える気になりましたか。次はもっと電圧を上げます。このままだと死にますよ」

「………っ、ガアアアア!」

 

 再び電撃を見舞った。

 男は朧気となる意識の中でも俺を睨み付けてきた。

 

「なんですかその目は。あー、どうせハッタリだ、俺みたいな元は何処にでもいるような子供に人を殺せるわけがないと思ってますね………残念ながらその期待は的外れです。あそこに転がってる人ですけど、既に何人かお亡くなりになってますよ」

「っ!」

「ハッ、なにを驚いているのですか? イーグルのプラズマはISにもダメージが与えられるほど強力なんです。あんな短時間で無力化しておいて、いちいち相手が気絶するような電撃を調整できる訳ないじゃないですか」

 

 初めて男の眼に動揺が走った。倒れ伏した仲間を見たあと、再び俺に焦点をあわせた。

 

「俺は織斑一夏ほど優しくはない。こちとら度重なる襲撃で2人も死にかけてるんだ。相手をぶち殺す覚悟なんて、とっくに決めてるんですよ。上からは侵入者の生死は問うな、可能なら敵から情報を引き出せと命じられてるんです。分かりやすく言うなら、テロリストに人権なしってやつです。あんたが喋らないならそれでも良い。あんたを殺したあとに、まだ生きてるお仲間を叩き起こして1人ずつ焼き殺せば誰か喋るでしょうし」

 

 淡々と喋る少年の声には抑揚はなく。

 男を捉えて離さない両の目は冷徹にギロチンを振り下ろす処刑人の目に見えた。

 

「ファイナルアンサーだ。ここで素直に白状していま生き残ってる奴と共に獄中で余生を過ごすか。あんたを殺して他のやつに聞くか。いやそれだとインパクトにかけるな………そうだ、あんたを殺さずに縛り上げたまま1人ずつ焼いていくか。電子レンジに入れた卵みたく一人一人破裂していけば喋りたくもなるよなぁ?」

 

 ゲスいことをゲスい顔でねっとりとした声色で言ってのける。

 先程会長のことを悪役と言ったのが嘘かのような外道っぷりに男は固く閉ざした口をほんの少し開けてしまった。

 

「………悪魔め」

「ん? ようやく喋ったと思ったら不思議なことを。俺は人間だよ、正義を執行する側のね。正義という大義名分は我らにあり、って奴さ………さあ喋れ! あんたらの生殺与奪は、俺の手の中にある! 喋れよ!」

「お断りだ」

「はっ?」

「我々にも意地がある。命などとうに捨てたのだ、仲間もだ。なめるなよセカンドマン」

「………そうかい」

 

 バリリッ! 

 スカイブルー・イーグルのスラスターが青い稲妻を走らせた。

 確実に相手を焼き殺さんとうねりを上げたのだ。

 

「5秒だ。ゼロになった瞬間、殺す」

「………」

「5、4、3、2、1………じゃあな」

 

 廊下が青く照らされた。

 ドサリと兵士が俺の足元に転がった。ピクリと動くことなく俺はそいつを見下ろした。

 

「………………」

 

 トン、と数回指で男の顔をこずいてやった。

 ユッサユッサと男の身を揺すっていくと。

 

「………………うぅ………」

「ふぅ」

 

 男は生きていた。いや生かすようなレベルの電撃を流したから当然だ。

 

 他の奴らも同様だ。個体差はあれど全員生体反応あり、危険域になったものもいない。

 いつかこんな日が来たときのために。あらかじめ対人制圧用の電圧設定をイーグルの中に組み込んであったのだ。

 

「殺す覚悟なんかあるわけねえだろうが」

 

 会長はわからんが、俺は一介の学生だ。そもそも普通の人なら余生を終えるまで人を殺す覚悟など整うことはない。

 人を殺した責任などごめんこうむる。

 そもそも、ISを使って殺すなど、俺のプライドが許さない。

 

 迫真の演技のつもりだったが、俺もまだまだだな。

 

 ……いやいや、人体を破裂させるなんて言ったら普通口割らないかな? 俺は簡単に割るぞ、たとえそれがブラフだったとしても。

 そっちの方が覚悟完了しすぎだよ。

 

「それほどの相手ってことだよな、こいつらの親元は。さーて縛りますか。一人一人やるの面倒だなぁ」

 

 ぼやきながらも会長から貰った特殊カーボンファイバー製のロープを取り出して早速縛りにかかった。

 

「いつか、本当にヤらなければいけない時が来るのだろうか」

 

 少なくとも今ではないだろうが。

 

 殺さなければならない時が来たとき、俺はどうすれば良いのだろう。

 そんな日が来ないことを祈りながら、俺はせっせと男どもをロープで縛り上げていった。

 

 

 






 いろいろ容赦ない疾風くんだけど。やはり少年ですし。
 人なんか殺したくないに決まってます。

 原作ではそんな気はないくらい優しいですよねぇ。
 織斑の妹さんを除けば(あれからずっと刺され続けてるのね一夏くん)
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