IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第116話【光明未だ見えず】

 

 

 どうも皆さん、うおっと! 

 疾風・レーデルハイトです。

 

 現在侵入者の通称『副隊長』のファング・クエイクと交戦中。

 

 そう、あの死亡フラグとかヘタこきまくって情報勝手に吐き出しちゃった。何処か愛されキャラで何処かドSハートを刺激する彼女である。

 

 そんな死亡フラグ三段重ね、いやもっと重ねがら戦闘開始。

 

 こんな間の抜けた相手、即座にぶっ飛ばして次に向かおうと。

 思った訳ですが………

 

「うおらぁ! 大人しく捕まれイレギュラーー!!」

「誰が捕まるか馬鹿……」

「くらえ! ワイヤードフィストぉっ!」

「拳飛んだぁ!?」

 

 この人結構強い! 

 

 会長と比べるとどうか? と聞かれると悩むところだが。なんともパターンが読みづらい! 

 一見滅茶苦茶な動きをしてるようで確実にこっちを追い込むように動いてくる。

 

 しかも………

 

「行けビーク!!」

「ぬぐっ! アンネイムドは、こんじょぉぉおお!!」

「いいのかそれで!?」

 

 全然動じないし。多少のダメージはコラテラルと割り切ってぶつかってくる。

 ファング・クエイクは一見第二世代に見えることがあるほど突出したものはない。だがそのマシンポテンシャルは単純に高く、扱いやすい。

 第三世代能力を廃しても戦えるだけのパフォーマンス。第二世代の汎用性に第三世代技術を加えたのがファング・クエイクだった。

 

 ………いや、拳がワイヤーロケットパンチは初耳だな。悔しいがカッコいいぜ畜生。

 

 そんなこんなで中々決めきれない。

 まだ致命傷は貰ってないが、この突撃力はほんと危ないぞ………

 ………あと逐一出される死亡フラグ台詞が一切機能してないの地味に腹立つ。

 

「ふーう。なかなかやるじゃないですかセカンドマン。とても動かして半年とは思えない。代表候補生に見合った実力だ」

「そっちこそ。機密部隊とは思えないほど型破りだ。色んな意味で」

「アハハ、よく言われます」

「それで口も固かったら今頃隊長な気もしますがね」

「それもよく言われます!」

 

 言われちゃ駄目でしょう。しっかりせぇ。

 

「まあそんな他人からアホの子認定されてる私ですが。これでも任務は必ず果たしていく優秀な子だと自負してますのよ。じゃないと副隊長なんてなれませんしね」

「逆に今まで世間に認知されてないことに驚いてる」

「そこは言わないでほしい! コホン。とまあ、こちらとしても時間がかかるのは望ましくないです。私のISがファング・クエイクベースなのはもうバレていますし、もう形振り構わずやるのが得策と判断しました………なのでここからマジモード、です!」

 

 ファング・クエイク・ステルスの背部に展開光。

 肩のウェポンアタッチメントと腰に出現したのは丸みを帯びたスラスターパーツだった。

 

 もう隠す気はない、あれはファング・クエイクの第三世代であるISの代名詞。

 個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)用に最適化された、カートリッジ・スラスター! 

 

「扱いづらい第三世代兵装とかって話だが、最新型が負けるわけねえだろ! 行くぞおおぉぁあ!!」

 

 特急死亡フラグを立てながら副隊長がブーストを吹かす。

 長距離射撃用アセンがないことが悔やまれるが。元々距離は詰められてるから関係ないな! 

 

 ギュオン! と瞬時加速特有の音と共に副隊長の姿がブレる。

 ギュオンギュオン! と立て続けに放出されるエネルギーダッシュ。イーグル・アイで辛うじて捉えている敵の姿を………後ろ! 

 

 振り向き様インパルスを抜くが空振り、五回目のブーストが乗った拳。フィールドを張る暇を与えずにその拳がイーグルのシールドにねじ込まれ。

 

 ドゴン! 

 

 重厚な衝撃がイーグルと俺を吹き飛ばした。

 その豪腕自体が単発式のパイルバンカー! 

 

「ヒット! 次いくぞー!」

 

 またも個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)

 距離を離そうにも間合いの詰めが早すぎる。

 ここはイーグル・アイの演算処理を上げて対処するしか。

 

「ぬあっとぉ!」

 

 その瞬間、サークルロンドのマニュアル制御をミスったように副隊長の身体が横に吹き飛んだ。

 

 

 

 個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)とは、瞬時加速を連続で使用して移動する技術。

 本来の瞬時加速(イグニッション・ブースト)と比べると一度の加速は0,8倍ほどだが。一度発動すれば曲がれない瞬時加速と違ってこいつは多角的に瞬時加速を発動出来る。総合的な加速力は従来の瞬時加速以上の速力、そして汎用性を得ることが出来る。

 

 余談だが、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)のマルチプル・スラスターにもこのデータが応用されており。更にスカイブルー・イーグルのマルチスラスターも技術系列は違えどこれのダウングレード版と言える。

 

 だが現時点において、この技術は未完成。

 ファング・クエイクは最大6連続で瞬時加速を繰り出せるが。連続で加速する時の余剰推力によってバランスが劣悪となっており。ひとたび間違えばいまの副隊長のようにバランスを崩しあらぬ方向に飛ぶ。

 

 現在、個別連続瞬時加速の成功確率は、40%と。兵器水準的には良くて発展途上、悪くて欠陥兵器扱いされている。

 

 閑話休題。

 

 

 

 チャンス! 

 リボルバー・ブーストの欠点は勿論知っていた。

 

 ここで一気に畳み掛けて! 

 

「ぐぬ! なんとぉ!!」

 

 インパルスを突き出す俺に対して横にスッ転んだ副隊長は強引に次弾のリボルバーを発動。

 体制が取れないままこっちに体当たりをしかけた。

 普通ならここで博打を決めずに体制を整えるところだが持ち前の技術か、はたまたラッキーパンチか。

 

 ウェイトの差はファング・クエイクの方が上だったためイーグルの身体が浮いたが、そこで終わるつもりはない。

 肩のクローアンカー射出。ワイヤーを肩のカートリッジスラスターに巻き付けて振り落とされないように固定し、ブライトネスをコール。

 

「いい加減落ちろ!」

「な、めんなああーー!!」

 

 バコン! と音がして支えていたウェポンラックがカートリッジスラスターごと本体から外れた。なんて思いきりの良さ! 

 バランスが崩れるところを即時にPICでカバー、奴の拳が来る! 

 

 襲い来る拳。機体をよじり、当たるところを予測して極所的プラズマ・フィールドを拳に対して斜めに配置。

 インパクト! 衝撃が頬を揺らすのを気にせず右スラスター点火、ブライトネスを捩じ込んでプラズマバンカーをぶち当てた。

 ファング・クエイクにダメージ確認、三連発打ったところで反らされて左フックしたところをガードして距離を離され。すかさずボルトフレアをコールしてパージされたスラスターを撃ったがファング・クエイクのアームシールドに弾かれ。副隊長は大きな手でスラスターを掴み、距離を取った。

 

「今のでやりきれなかったか。本当に君は学生かい? 今すぐうちでやってけるよ」

「アンネイムドジョークですか。生憎ですが、恩を仇で返すファッキンアメリカなんか糞喰らえしてやりますよ」

「最近の子供ほんと口悪いなぁ」

 

 パージしたウェポンラックをガチョンとはめ直す副隊長。

 あっちはダメージが蓄積されてるだろうが。まだまだ油断できない。

 リボルバー・イグニッション・ブーストの外れパターンを土壇場で修正して反撃するセンス。即座の判断と決断力が高い。

 あんな性格で副隊長とファング・クエイクを任された理由が、少しわかる気がする。

 

「あんたさ、座右の銘は終わり良ければ全て良しでしょ」

「おっ、シェイクスピア。じゃなくてジャパニーズ・コトワザだな? 特にそう言うのはないけど私に当てはまってる気がする。よし、今度から座右の銘それにしようかな!」

「そうかい。だったら隊長に相談してしっかり怒られることだな!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「んじゃあ織斑くん。白式のデータ取るから宜しくね」

「はい、宜しくお願いします」

 

 学園が危機に晒されてることなど露知らず。

 一夏はヒカルノの研究データ採取のために白式を起動した。

 

『──い─か──』

 

「ん?」

「どうした?」

「いまなんか言いました?」

「ううん。なんも言ってないよ」

「そう、ですか」

 

 なんか見知ったような声が聞こえた気がするが。

 

「大丈夫かい? 慣れない場所で眠れなかった?」

「いえ、ぐっすりと寝させて頂きました」

「それは結構。徹夜するのは研究者だけで充分だからね」

 

 そういうヒカルノ並びに倉持技研の職員の目元にはうっすらと隈が浮かんでいた。

 彼女らは徹夜で白式を万全の状態に直してくれた。

 その恩に報いるためにも、彼女らの研究の助けになれればと一夏は協力を惜しまないと考えた。

 

 リングスキャナーが白式・雪羅をスキャン。

 ヒカルノの端末にデータが送り込まれていく。

 

「うんうん。ちゃんと直ってるね。細かいところの調整は後程やるとして。じゃあ始めようか。織斑くん、データリンクの3番と4番のゲートをオンにしてくれ」

「わかりました」

 

 そこらへんは疾風や楯無と一緒に調整するために覚えたからスムーズに出来た。

 ヒカルノからのアクセスを了承し、白式のデータやフラグメントマップを確認していく。

 

「あの、ヒカルノさん」

「どしたん」

「ヒカルノさんはどうして俺や疾風が動かせたと思います?」

「んーー、そもそも一夏くんはなんでISは女性にしか動かせないと思う?」

「え、えーーっと」

 

 そういえば何でなのか知らない。

 ISは女性にしか動かせないということが世間一般的な常識として埋め込まれてるから深く考えたことはなかった。

 

「問題を変えようか。ISはどうやって人間を男性と女性という別の存在として認識しているのか」

「それって。男と女の違いですか? んー、体型?」

「惜しくもあり惜しくなくもある。では、何故男と女で体型が違う? 何故女性は男性と違って胸があるのか。何故男性にしか髭が生えないのか。男性器や女性器などの明確な違いがあるのか」

「………遺伝子の違い」

「正解! まあ正確には染色体の中にある性染色体の違いだ。性染色体にはXとYの二種類がある。女性はX染色体が二つ、男性にはXとYが一種類ずつ。人間はその違いで男女別れて存在しているのさ。ISはそれを区別して動かしている──というのが世間で伝わっている仮説の一つだ」

「つまり俺と疾風の染色体が特殊だから動かせたと?」

「そういう理由だったら至極簡単なんだけどね。現に原因不明で落ち着いてるだろう?」

 

 確かに。精密検査の時に遺伝子も徹底的に調べている。

 臨海学校の時の束も「よくわからない」と言っていたぐらいだ。

 真偽の程は不明瞭の一言だが。そんな簡単なことに気付かない振りをするのは彼女の天才というアイデンティティが許さないだろう。

 

「結論から言うと。私にはわからん!」

「ザックリしましたね」

「特に興味ないからね。女が動かそうが男が動かそうがどーでもいい。私が興味あんのは篠ノ之束をギャフンと言わせられる物だけさ」

「そうですか」

「フフン。さあさ! 時間がないから続きやろっか! 次、1と2の回線も開いて。そこからスラスター出力をゆっくりと上げてって」

「了解です」

 

 言われた通り回路を開き。スラスターの出力を上げようとフットペダルを踏み込もうと………

 

『………いちか………』

「えっ?」

 

(今のは、プライベート・チャネル?)

 

 一夏は直ぐに通信環境のログをチェックしようとしたが、履歴は残ってなかった。

 

「ヒカルノさん。今プライベート・チャネル開きました?」

「開いてないよ。そもそも今限定モードだからチャネルは開けないよ。外から連絡あったら履歴は残るけど。誰かから通信?」

「いえ、履歴もないんですよね。おっかしいなぁ」

「気のせいじゃない? それよりスラスター出力上げて。ハリハリー」

「は、はい」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 トントントン。

 

「菖蒲、白出汁何処だっけ」

「えーっと」

「あー、あったあった」

 

 トントントン。

 

 包丁がまな板に当たる音。

 卵をとく音。

 魚が焼ける匂い。

 

 何処にでもある家庭的な台所の風景。

 

 広いはずの部屋であるにも関わらず。この家には菖蒲と疾風の二人だけしかいない。

 

(私、なんでこんなところで………何か忘れてるような。そもそも私と疾風様は………)

 

『ワールド・パージ、更新』

 

(………そう。夫婦の契りをかわした者同士。IS学園で彼に告白し。順当に関係を育てていった)

 

 青い学生時代。

 卒業して大学に行き。疾風様は国家代表になって。

 国家代表となった彼にプロポーズを受けて了承した。

 

 白無垢に袖を通した感動は今でも………

 

「どうした。嬉しそうな顔して」

「いえ、神前挙式のことを思い出して」

「箒の神社で上げたんだよな。鈴なんか泣いて泣いて大変だった」

 

 出汁と卵を混ぜ終え、角形フライパンに注いでいく。

 何回かに分けてクルッと回し、綺麗な出汁巻き卵が出来上がる。

 

「一夏は結局誰と結婚するのか」

「一夏様の甲斐性次第です」

「違いねえ」

 

 出汁巻き卵を切り終えた疾風はテーブルに運んでいく。

 

 菖蒲の方も赤味噌の味噌汁が佳境に入った。

 

「出来ました」

「おっ。菖蒲の味噌汁美味いんだよなぁ。俺も真似しようとしてるけど。なんか違うんだ」

「お袋の味、です」

 

 ご飯、焼き魚、味噌汁、出汁巻き卵、おひたし。

 

 お手本なまでの日本の朝食を前にはしたないと思いつつ喉が鳴ってしまった

 それが何故か無性に気恥ずかしくて、菖蒲は急いで話題の引き出しを引き抜いた。

 

「そういえば! 今度女子会をするんです! たまたまみんな予定が空いたそうで」

「へえ、誰が来るの」

「えーと。簪様に楯無様、鈴様に………それにセシリア様も!」

「セシリア────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────誰だっけ?」

「………え?」

「どっかの女優さん? そんな人知り合いに居たのか?」

 

 疾風様は何を言ってるのだろう。

 

 だってセシリア様は疾風様にとって大切な………

 

 ザザ、ザザジジ………

 

『ワールド・パージ、完了』

 

 頭の中で何か聞こえた気がした。

 その瞬間頭がクリアになり、重くのし掛かっていたモヤが霧散した。

 

「………あれ。私いま」

「どうした? 女子会のメンバーだろ?」

「そ、そうでした。あとシャルロット様が来るんです! 楽しみです」

「そっかぁ。俺も仕事じゃなかった行けてたのになぁ」

「もう疾風様、それじゃ女子会じゃないですよ」

「そうだな」

 

 ご飯をよそい。これで完了。

 

「では」

「はい」

「「いただきます」」

 

 今日もまた、楽しい1日が始まる。

 

 余計なものが何もない。幸福な1日が。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「剣ちゃんそっちどう!?」

「もう少しだ、どうわりゃあ!」

「うわーー!!」

 

 EOSの豪腕が弾丸を弾きながら戦闘員を壁に叩きつけ。投げては叩きつけ、投げては叩きつけを繰り返している。

 

(不味い! このままではあのEOSも加勢に入ってしまう)

 

 普通ならEOSが1機加勢に来たところでたかが知れてるのだが。

 あのEOSはもはやIS1機分の戦闘力と迫力を兼ね備えている。

 

 なんとかEOSを排除出来れば良いのだが。

 

「余所見!」

 

 手に持ったライフルが寸断され。パーツがバラバラに宙に弾けた。

 

 隙がない。というより防戦一方。

 そもそもこの場所にアリア・レーデルハイトがいること事態想定外。

 

 彼女もそんじょそこらのIS乗りと比べても遥かに腕はある。

 ストライカーのペイロードに物を言わせた重射撃スタイルで相手に何もせずに勝利するのが必勝パターン。

 

 だがこれは完全に相手が悪かった。

 銃火器を次々と切り裂かれ。撃った弾丸もプラズマ・フィールドと剣に弾かれる。

 

 更にアリアの絶技、ダンスマカブル・ブレードアーツ。

 あれに絡まれれば終わり。だが積極的に距離を詰めにかかる彼女に遠距離攻撃を仕掛けることすらままならない。

 

 ドパンッ! 

 

「っ!」

 

 右側にタワーシールドを展開し、すんでで青白い弾幕を防ぐ。

 剣司のプラズマショットガンの射撃。充分過ぎる出力で撃たれたそれをシールドでもろに受ければそれだけシールドは消費される。

 

 そして彼の後ろには揃って延びている歩兵戦闘員たち。

 

「お疲れ様」

「なぁに、みんな鍛え方がなってねえから楽だった」

「終わったらうちにスカウトしましょうか」

「そりゃあいい」

 

 恐れていたことが目の前に。

 ディバイン・エンプレス一人にここまでてこずっている状況。

 

 勝てない。ここで戦ってもメリットはない。

 隊長がターゲットを確保すれば任務は完了。

 ここは仲間を見捨ててでも自身の生存を優先し、副隊長と合流して体勢を立て直さなければ。

 

 ストライカーのスラスターを前方に向けてバック瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 

 戦線を離脱。虚をついた、このまま逃げて………

 

「──ゴッ!?」

「足りないわね、速さが」

 

 何が起こったのか。何故瞬時加速(イグニッション・ブースト)をした自分の腹にアリアの剣がめり込んでいるのか。

 

 答えは簡単、彼女より速く動いたということ。

 

「疑似二重瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)。速度は1,5ブーストと言ったところかしら」

「っ!?」

「ダンスマカブル」

 

 ここはアリアとディバイン・エンプレスの距離。

 即座に連剣の構え。そのさきに待つのは敗北。

 

 だが想定外こそ想定内。それを前提としているアンネイムド。

 組織のナンバー3としてストライカーを受領してる彼女にも、意地があった。

 

 自身とアリアの間に安全装置を解除した手榴弾を数個コール。

 即座に起爆したそれを防御するために連剣から防御にシフト。

 

 自爆覚悟によって出来た隙をストライカーのパイロットは掴みとった。

 アリアの脇をすり抜け、向かうは剣司のEOS。

 

 彼を人質にイニシアチブを取る。

 魔改造しようと所詮はEOS、ISの機動には着いてこれない。

 

「もらった!」

「と思うよなぁ」

 

 アサルトライフルを構えるより先に彼方にいた剣司が目の前に迫っていた。

 

 相対的速度では説明がつかない。通常のブーストでは不可能。

 剣司は間違いなくEOSで通常のIS並みの速度を叩き出したのだ。

 

 右手に黒光りするは世界最大火力の単式パイルバンカー、ロワイヤル。

 

 速度を乗せた鉄杭をストライカーのシールドにぶち当て。そのままインパクト。

 静寂に満ちた学園全体に轟くほどの轟音、人の身で扱うことなど考えない埒外の衝撃にストライカーのパイロットは白目を向き嗚咽を漏らす。

 

 即座にISの操縦者保護が発動し意識を取り戻すが、くの時に曲がった身体のまま後方に飛ぶ。

 

 だが意識を失ったままの方が幸運だっただろう。

 

 その先には剣の舞踏会の鐘を鳴らす女帝が待ち構えていたからだ。

 

「ダンスマカブル・ブレードアーツ!!」

 

 彼女が再び意識を失う前に見たのは。

 無数の剣が放つ煌めきだった。

 

 

 

「剣ちゃん大丈夫ー?」

「かゆ、うま」

 

 うん大丈夫ね。と地べたに仰向けに倒れている夫を見下ろすアリア。

 

 同じく後ろに倒れているストライカーの装甲には無数の裂傷の後が。

 登場者は無事だろうが、トラウマになってないことを祈るばかりである。

 

「あーいってぇ。これは駄目だな、身体が駄目になる」

「その程度で済むのは剣ちゃんぐらいなのよ。EOSでハイブーストかましてからロワイヤルやって五体満足なのは」

 

 今回の剣司のEOS・剣司スペシャル。

 その背部には一回きりの圧縮エネルギー放射機構が取り付けられていた。

 それでも通常のISのハイブーストを一回するだけで限界。

 更にハイブーストにかかる戦闘機並みのGとロワイヤルによるEOSの腕を持っていくレベルの衝撃をPIC無しで強行。EOSの中はそれはもうとてつもない振動が襲いかかったことだろう。

 

 それを痛いだけで済ますのが。マッスルジーニアスこと剣司・レーデルハイトなのであった。

 

「わりぃ。もう動けない」

「あとで精密検査ね」

「………今夜は出来そうにないや」

「今日は私が一方的に攻めてあげる」

「たまには良いな、それ」

 

 起きている者が誰もいない廊下。

 

 アリアと剣司は中断されたキスの続きをするのであった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「くらえ! ミストルテイン・キィィィク!!」

「ぐあぁぁぁ! マジのキックだとぉ!?」

 

 楯無の空中回転キックにより無力化された最後の一人はツッコミの断末魔と共に意識がフェードアウト。

 そこはチェーンソーを持てと思ったのは絶対に間違ってはいないと信じながら。

 

 敵団を無力化した楯無はせっせと特殊ファイバーロープで縛り上げる。

 その縛り方は鮮やかの一言で。最低限の労力と時間で最適な無力化を果たす。

 楯無になるために身に付けた技能の一つだ。

 

 ちなみに楯無の母は楯無の父に子孫生誕魂縛術なる究極の拘束術を繰り出し、その結果生まれたのが簪なのだという。

 今度教えてあげるわねと笑顔で言った母に無邪気に返事していたのは幼さ故だろう。

 

「よし、これで終わり」

 

 戦闘を繰り広げ、これだけの数を女手一人で縛り終えて流石に疲労がチラりと見えた。

 

「学園内に侵入した部隊はあらかた鎮圧済みか。アリアさんがいて助かったわ。疾風くんは依然として交戦中。敵のIS乗り、強敵だけど上手く立ち回れている」

 

 本当に強くなった。

 今の彼となら良い勝負が出来るかもしれない。

 

「国籍はアメリカで間違いないわね。大分崩してるけど、根底はアメリカのコンバットパターンだし。無人機の情報パターンを感知して突入ルートは想定のルートを通ってくれた。後は………織斑先生次第」

 

 楯無でも隠しカメラを仕掛けられない学園の深部。

 そこには学園の枠組みを越えた世界最強が陣取っている。

 

「………それにしてもハッキングの犯人は何故こんなことを」

 

 楯無自身もハッキングと侵入者が別勢力であることは看破していた。

 システムダウンしてから自分たちが作戦会議出来る程の時間を有することが出来た。

 同一犯なら相手の体勢が整わないうちに勝負を決めるのは鉄則。

 

 だが彼らは違う。

 

「常時監視し、学園がダウンしてこれ幸いと侵入。こいつらは後で徹底的に絞り出して………」

 

 楯無の思考が止まる。

 頭の中に浮かんだのはこの場にいないもう一人の男性IS操縦者。

 

(一夏くん、無事かしら。もし彼が倉持技研にいることがコイツらにバレていたら)

 

 そう考えた途端楯無は身震いした。

 そんなことはあってはならないという使命感が再熱し、楯無を動かした。

 

 本調子でないISのエネルギー節約の為にISを待機形態に戻し、楯無は一歩足を踏み出した。

 

 その瞬間。ブシュっと鈍い音が楯無の腹の当たりから鳴った。

 

「えっ?」

 

 ぷしっと鮮血が腹から飛び出し、真っ赤な血がじんわりとISスーツを染め上げる。

 

 振り替えるとそこにはサイレンサー銃を構えた戦闘員の姿が。

 

「なんでっ、ぐぅ!」

 

 もう一度撃たれた弾丸がISスーツを貫通した。

 訳もわからず楯無が前のめりに倒れこんだ。

 

 顔だけを上げて拘束を抜けた男。左腕にはあるべき筈の手がなく、代わりに帯電するナイフが生えていた。

 

(義手にプラズマナイフ。しまった、私としたことが!)

 

 ISスーツごと腹を貫いたのは対ISスーツ貫通弾頭。アメリカで極秘に開発されているという噂を聞いたことがあったが。まさか完成していたとは。

 

「やっと隙を見せたな。更識楯無」

「ぐっ」

「動くな。ISを展開するよりもこちらが貴様の頭を貫く方が早い」

 

 まだ生暖かい銃口を頭に押し当てられる。

 打開策を考えようにも、腹部を貫く痛みと熱さに思考が固まらない。

 

「どうしますか」

「モルヒネを投与。止血と応急処置ののち、操縦者ごとISを持ち帰る」

「了解」

 

 自殺されないように猿轡を噛ました後、首筋に薬液を打ち込まれる。

 途端に襲いかかる倦怠感と眠気。寝ては駄目だと脳が訴えても、その身体は既に楯無の手を離れた。

 

「日本の守り人でありながらISを欲しさにロシアに尻を降った売女め。我らの祖国の為に役立たせてもらうぞ」

 

 薄れ行く意識の中、腹立たしい言葉を投げ掛ける相手に反論する間もなく楯無は暗闇に堕ちていく。

 

(いちか………くん………)

 

 無意識に一夏の名前を呼んだ。

 

 何故呼んだかわからぬまま。更識楯無は意識を手放した。

 

 

 

 





 ・アンネイムド副隊長

 アンネイムドのおとぼけ副隊長。
 腕前はイーリスに及ばないながら、個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)の扱い方は彼女以上というとんでもない逸材です。

 機密部隊というデリケートな場で実力だけで上り詰めた。
 愛すべきアホの子副隊長ちゃんです。

 ちなみに彼女の恋愛相手は少し前、疾風に電撃ビリビリされた茶髪くんです。
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