IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 水星の魔女が面白すぎて二次創作書きたい欲がやばい。
 まだ四話しか放送してないのに。

 最推しはグエルくんです。


第117話【SOS】

 

 

「はいお疲れー」

「お疲れ様です」

 

 研究室でのデータ収集を終えた一夏はISを展開状態のまま装備解除して一服ついていた。

 出してくれたお茶をすすってホッと息を吐く。

 

「君のおかげで良いデータが取れたよ。これで終わり、と言いたいとこなんだけど。もーちっと付き合ってほしいんだ! そうそう君がここに来るなんてことないし、取れるデータは取れるだけ取りたいの! この通り! お願いします!!」

「俺でよければ良いですよ」

「神か! いやー、姉と違って一夏くん良い子過ぎるわぁ、姉弟とは思えねえぜ。まあそれも最終調整を完璧にしてからやな。そうと決まりゃチャチャっと終らせてくるわ!」

 

 イヤッフー! と配管工ジャンプを決めながらヒカルノは休憩室を後にする。

 と同時に山田級大戦艦クラスの胸部装甲が盛大にバウンドするのをガッツリ見てしまった一夏はもう一度お茶を一口。

 何故か凄い苦かった。

 

「それにしても。休み以外でIS学園離れるの久々だったなぁ………みんな何してるんだろ」

 

 昨日はIS学園は騒がしいと言っておきながらも。一夏はその騒がしさが自分の日常と化してることに少し驚いた。

 困ることもあるし、酷い目にあうこともある。

 それでもあの学舎の日々は一夏にとってどんな宝石よりも目映い輝ける日々だったのだ。

 

「………なんか我ながら爺臭い。鈴に言われる訳だよな」

 

 何処か気恥ずかしさを覚えた一夏は最後の一口を飲み干そうとした。

 

 ──一夏………

 

「っ!!」

 

 聞こえた。理屈でも道理でもない。

 誰の声かもわからない。

 

 だけど、確かに聞こえた。

 

 助けを呼ぶ声が!! 

 

 スイッチが入ったかのように一夏は椅子を転がしながらも研究室に向かって全力で走った。

 

「あれ、織斑くん? まだ調整はってええ!?」

 

 白式の最終調整をしていた副所長の壇之浦とその一同は目をひんむいた

 白式に飛び乗った一夏が白式を固定していたアームを無理やり振りほどいたからだ。

 

「ちょちょちょっと! まだ細かい調整が終ってないんだけど!?」

「すいません壇之浦さん、俺行かなきゃ!」

「え、でも行きなりそんなこと言われても困ると言うか」

「どうしたどうした。おおっ、なんか物々しい雰囲気?」

「あっ、所長! な、なんか織斑くんが行きなりIS学園に戻ると言い出して」

「まあまあ落ち着いて壇之浦くん、飴ちゃん舐めな」

「ムゴッ!」

 

 狼狽する壇之浦の口に飴をぶちこんだヒカルノはISを纏った一夏を見上げた。

 

「すいませんヒカルノさん。学園がピンチなんです! 今すぐ行かなきゃ!!」

「そうかい、そりゃ大変だ。でもこっから入り口までの道はわかるのかい? 結構距離あって入り組んでるし、職員でもたまに迷子になるんだ、私はしょっちゅう迷う。だから途中で迷ったらそれこそ時間のロスだぜ?」

「だけど!」

「………まあそれは馬鹿正直に行けば、の話さ」

「え?」

 

 ヒカルノは冷静さを失いかけた一夏の脇を通り抜け、コンコンと何もない壁をノックした。

 

「この壁の向こうは外だ。そしてIS学園の方角でもある。言いたいことはわかるよな、一夏くん?」

「………はい!」

 

 ニヒッと笑うヒカルノに一夏は一瞬固まるも直ぐに理解した。

 半歩遅れて気付いた壇之浦はヒィ! と表情を強ばらせ、慌てて止めに入ろうとするがもう遅い。

 

「さあぶち抜け少年!」

「ありがとうございます! はぁぁぁっ!!」

「のあぁぁ!?」

 

 最大までチャージされた月穿の荷電粒子砲が研究室の強化外壁をぶち破った。

 間髪いれずに瞬時加速(イグニッション・ブースト)を発動した一夏と白式に研究員は風圧で転がったりと阿鼻叫喚の渦に呑まれた。

 

「ハッハッハッハ! たーまーやー!!」

 

 ちゃっかり水泳ゴーグルをかけた一人の狂人を除いて。

 

「おーおー若いねぇ。もうあんなとこまで。流石うちで整備した白式ちゃん」

「ケホッケホ」

「おっ、生きていたか壇之浦くん」

「生きてたか。じゃないですよ! 何してくれてんですか! あーあーガッツリ穴空いて。修繕費が、本部からのお叱りがぁぁ………」

 

 頭を抱える壇之浦に見向きもせずヒカルノは端末を開く。

 そこには国際研究所で入手した紅椿の暗号データが入っていた。

 

「よし、思った通り。紅椿の暗号プロテクト解除。やはり白式と織斑くんが鍵になってたか。あたしの見立ては正しかったな」

「所長、それってつまり」

「ああ。これで次世代型量産機計画『オーバーレイズプラン』を始められる」

 

 篠ノ之束の足を掴むヒカルノ最大の計画。

 

 ヒカルノは穴の外に広がる満点の青空を眺める。

 

 空のその向こう、IS本来の在り方。

 そこへの足掛かりを夢見て。ヒカルノは満面の笑みを浮かべたのであった。

 

「ところで所長。これ経費で落としませんからね」

「えっ、マジ?」

「マジです。いくらかかると思ってるんですか」

「あちゃー。わかった、これでも私は高給取りだ。半分払うよ」

「全部ですよ全部!」

「じゃあ三分の一」

「減らすなぁ!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「せい! やぁ! とぉ!」

「ちぃっ!」

 

 副隊長の個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)の連撃で思うように事が運ばないことに盛大な舌打ちを噛ましながら的確に防御していく。

 

 マジで埒があかない。突撃バカと見せかけてちゃんと位置関係調整してんの腹立つ。

 

 こんなところで時間をかけるわけには行かない。

 出すか、奥の手を………いや駄目だ! 

 まだ完全に調整が済んでないし、後がわからないこの状況で使うのは悪手だ。

 なんとか活路を見いだして。

 

 ザザ、ザザー。ピピっ。

 

 なんだ………広域チャネル? 

 白式・雪羅から!? 

 

「──誰でもいい、誰でもいいから応答してくれ!」

「こちら疾風! 一夏か!?」

「疾風! よかった無事だったか! 何が起きてるんだ!?」

 

 どうして一夏が? 

 てか通信妨害されてるのになんで繋がって、いや細かいことは後だ! 

 

「いまIS学園はハッキングを受けて全ての機能が落ちてる! それを見計らってどっか誰かが特殊部隊送り込んで、現在各個に戦闘中! 俺と会長以外の専用機持ちは学園のシステムを取り戻す為に電脳ダイブしてる!」

「電脳ダイブってのはわからないが、やっぱり学園がピンチなんだな!」

「そういうことだ! かくいう俺も敵のISと戦闘中だ!」

「余所見するとは油断大敵………」

「うるさい話中だ!」

 

 突っ込んでくる副隊長の顔面に渾身のカウンターキックをぶちこんでブッ飛ばした。

 

「てかなんでお前ここに来たんだよ! 倉持技研にいたんじゃなかったのか!?」

「その倉持技研から飛んできたんだ! 誰かが助けを呼んでたから。誰かは分からないけど、IS学園が大変だってのはわかったから!」

 

 理屈はわかるけどなんで倉持技研からここの状況が? 

 いやいや、またまた考えるのは後だな! 

 

「とにかく学園の中は頼んだ! 俺も直ぐに終らせるから! 気を付けろよ」

「そっちもな! 俺ももうすぐでそっちに着く!!」

 

 通信カット。試しに中にいる母さんや会長に通信を開いてみる。

 うん、やっぱり未だにジャミングは効いてる。いま白式とだけコンタクトが取れたって訳だ。

 ほんと、ご都合主義でも働いてんのかな。最高にヒーローしてるよ一夏は。

 

「………しかし」

 

 一夏は誰かの助けに応えてここに来たと言った。

 IS学園が危険だと言うことを、通信妨害で外とは隔絶された学園内で一夏に伝えたのは誰か。

 

 もしそれが電脳ダイブに行っている『誰か』だとしたら………。

 

「そろそろ終わりにする! 我が世界に栄光あれぇぇーー!!」

 

 三回の連続ブーストからの背後からの一撃。

 ファング・クエイクの単式パイルバンカー搭載腕部が火を吹き、スカイブルー・イーグルは土煙の中に消えた。

 

「手応えは………!?」

 

 ブースト乗ったバンカーナックルでイーグルは吹き飛ばされず。インパルスのピンポイントフィールドとPICブレーキで微動だにしていなかった。

 

 副隊長の眼が俺の眼と重なった。

 先程圧倒されて冷や汗かいた少年はそこにはなく。代わりに冷えた炎のような光を眼に宿していた。

 

 ヤバい! 直感でそれを察知した副隊長は即座に後退しようとしたがそれは叶わなかった

 イーグルのクローアンカーが肩の装甲に食い付いていたからだ。

 

「悪いな、副隊長さん」

「っ!」

「悠長にやってる暇が、なくなった」

 

 次の瞬間、副隊長の視界が真っ白になった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

(急げ! 急げ! 急げ! 急げっ!!)

 

 流行る気持ちを乗せ。白式・雪羅が連続で瞬時加速(イグニッション・ブースト)を吹かし、IS学園に向かって飛翔する。

 

 疾風と通信が繋がったあと直ぐに音信不通となった。

 通信妨害がかけられている。

 数々のトラブルに見回れたIS学園だが。特殊部隊が攻め混んできたのは始めてだった。

 

 そして誰かが助けを求めている。

 

 ならば行く。行く以外の選択肢はない。

 それが誰であろうと。

 助けを呼ぶ声に手を伸ばすのが、織斑一夏という男なのだから。

 

 そしてついにIS学園が視界に移った。

 

「これは………」

 

 静か過ぎる。いつだって生徒たちの活気があったIS学園が嘘のように静まり返っている。

 まるでゴーストタウンだ。

 

「ん? 反応が」

 

 ISの反応が複数あるなか、白式がその一つをピックアップした。

 

 場所はIS学園通路。そこで微弱な反応あり。

 発信源は………ミステリアス・レイディ。

 しかもそれは通常のIS反応ではなく。IS操縦者の危機的状況を示す、SOS信号だった。

 

 血の気が引いた一夏は迷わずIS学園の外壁に突進。再び月穿を最大チャージして壁をぶち砕いた。

 

「なんだ!?」

「楯無さん、っ!!」

 

 ぶち抜いた先。

 そこには黒いアサルトスーツを着た歩兵一軍に運ばれている楯無だった。

 いつも自信満々を常としている彼女は目を開けずなすがままの状態。そして白式のカメラが楯無の腹部の赤黒い染みを拾った。

 

「その人をっ」

「ファーストマン!?」

「離せぇぇぇぇええええ!!」

 

 ブーストに任せてショルダータックル。雪羅の豪腕を振り回し楯無を拘束していた戦闘員を吹き飛ばし、楯無をその手に取り戻した。

 

「楯無さん! しっかりしてください! 楯無さん!」

「………」

「楯無さん!!」

 

 一向に目を開けない楯無に必死に呼び掛ける一夏。そして必死のあまりその横で再び銃口を向けようとする敵に気付けずにいた。

 

「せめて操縦者をっ」

「はっ!」

 

 気付いたときにはその銃口は楯無を狙っていた。

 即座に盾になろうと身を覆う一夏だがその引き金はあまりにも軽く………

 

「飛べ一夏ぁ!」

「っ!」

 

 耳に飛び込んだ親友の声に一夏は脊髄反射で白式のスラスターをぶっ飛ばして天井に上がった。

 

「でやぁぁ!」

「ぐあぁぁぁっ!」

 

 その下を空色のISが白い稲妻と共に滑り、敵対者を一人残らず感電、無力化した。

 

「疾風!」

「まったく。はっちゃきこいて来てみれば。詰めが甘いんだよ。守るならちゃんと守れ」

「す、すまん」

「まあいいさ。それよりも」

 

 疾風は楯無のISスーツの首もとのバイタルモニタータグにイーグルの手を当てて楯無のバイタルを計測する。

 

「どうだ?」

「腹部に2発、撃たれてるが止血はされている。だけど何か薬品を打たれてるのかな。バイタルの値が基準より低い」

「そんな! なんとかならないのかよ! このままじゃ楯無さんは」

「だいじょーぶよぉ」

 

 ハッと腕の中の楯無を見ると、うっすらと瞳をあけてニヘっと笑う楯無の姿が。

 

「楯無さん!」

「あー、あんま大きい声出さないで。ちょっとクラクラしてるから」

「す、すいません」

「大丈夫なんですか会長? なんか打たれたんでしょう?」

「こんな時の為に血の中にアクア・ナノマシン仕込んでるから。でも結構強いの打ってくれたわねぇ。身体が思うように動かないわ」

「とりあえず医務室に。一夏、俺は会長を運ぶ。お前はここに行け」

 

 イーグルから白式にデータが転送される。

 それはサイバールームへのルートだった。

 

「ここは?」

「セシリアたちがいま電脳ダイブでシステムを取り戻そうとしてる。さっき話したが、未だに取り返せてないってことは何かあったのかもしれない。もしかしたらさっきお前を呼んだ声は………」

「わかった、箒たちは任せろ!」

「頼むぞ! 会長、しっかり捕まってて」

「りょーかーい」

「じゃ、また後で」

「おう!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 

「ううん………」

「あ、起きた~」

「動かないでください。貴方が何をしようと、弾丸が貴方の頭を貫くのが先です」

「いや動きたくても動けない………何故に亀甲縛りなんです?」

「試したくなりまして」

「えーー………」

 

 第6アリーナにて副隊長は疾風の連絡で駆けつけた本音と虚の手によって亀甲縛りにされていた。

 ほころび一つない完璧な亀甲縛りであった。

 

「あれ、ところで私のISは?」

「こちらです」

「ん? ………ヴぁぁぁぁ!?」

 

 首を動かした副隊長は絶叫した。

 それもそのはず。先程自分が乗っていたファング・クエイク・ステルスはものの見事にバラされていたのだ。

 

「私のISが見るも無惨な姿にぃぃ!? コアも剥き出しなぐらいバラバラになってるんですけど!?」

「貴方が万が一我々の拘束を逃れてISを起動しないための必要処置で御座います。ご心配なく。組み立てられるよう丁寧にバラしましたので」

「そんなプラモデルみたいな! 殺せ! 私を殺せ! ガチめに殺せ! 戻っても私の立場ないよこんなのウワーーーン!!」

「お菓子食べる~?」

「え、あ。いただきます」

 

 本音からチョコレートを差し出された副隊長はモソモソと口に含んだ。

 口の中で溶けるチョコレートを味わいながら副隊長は現状を整理する。

 

(これは脱出出来ないな。この眼鏡の子は確か更識楯無の直属である布仏の子。そもそもISがあんなんじゃ無理よ無理………あー、失敗しないことだけが取り柄の私がこれでは………私はどうでもいいけど、他のみんな無事かなぁ。隊長は強いから心配いらないけど)

 

 その隊長が生身のほぼ人外なサムライウーマンにボッコボコにされた上トリガーハッピーに蜂の巣にされてることなど露知らず。

 副隊長は作戦成功がまだ潰えていないと信じていた。

 

(それにしても。あのセカンドマンの最後のアレなんだったんだろ。気付いたらゴッソリとシールドゼロになったし。ワンオフ・アビリティー? そんなの聞いていんですけど!)

「キャラメルいる~?」

「ありがとうございます。甘っ」

 

 副隊長は戦闘終了間際で爆発的にスペックを上げたスカイブルー・イーグルと疾風・レーデルハイトに首を傾げながらキャラメルを舌で転がした。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 一夏と別れ、俺は会長を抱えたまま渡り廊下を疾走する。

 皆の奮戦により校内の敵はほとんど撃退したことはわかっていた。

 もし遭遇したとしても強引に突破して逃げればなんとかなる。

 

「ごめんねぇ疾風くん」

「俺はいいです。しかし前回からほとんど間を置かずに重傷とは。ついてないですね」

「前線に出る以上は、覚悟してるわ」

 

 傷ついたのが妹ではなく自分で良かった。

 そんな考えを見透かした俺は思わずタメ息を吐いた。

 

「立場上難しいですが、自分の身体は大切に。また簪泣きますよ」

「それは駄目ねぇ。しかし我ながら迂闊過ぎる。楯無返上も考えないと」

「一夏が来てくれて助かりましたね。俺も一夏が壁ぶっ壊したの見たから慌てて飛び込みましたし」

「どうして一夏くんはここに? 彼は確か」

「声を聞いたそうですよ」

「声?」

「はい、誰かが助けを求めた声だとか。通信は封鎖されてるのに加えて、本人も良くわかってないみたいですけど。一夏はそれに従って倉持技研からすっ飛んで来たんですって。それで会長のピンチに颯爽と登場するとは。ハハハ、マジでヒーローですね一夏は」

 

 呆れと感服の意を込めながら笑う俺とは対照的に会長は頬を赤く染めて黙り込んだ。

 

(確かに眠らされる前に思わず一夏くんの名前呼んだ気がしたけど一夏くんに通信送った訳じゃないし。そもそも私の声が届いたとは限りませんし? そんなご都合主義なスピリチュアルなことなんて現実に起きるわけないじゃない? でももしそうだったら凄い嬉し………まてまてまって!? なに考えてるの私! これじゃまるで)

「会長」

「はい?」

「すいませんね抱えるのが俺で。一夏が良かったでしょ?」

「へぇ!?」

 

 わー大きい声。意外に元気そうでよかった。

 

「そ、そそんなことないわよ? 疾風くんみたいな男前にお姫様抱っこされて楯無嬉しいわよぉ」

「成る程。惚れましたか」

「だ、誰に!」

「一夏に」

「ほぁぁ!? イタタ………」

 

 思わず叫んでしまって傷が傷んだ。

 すいません会長。

 

「この話題は後でじっくりした方がいいですね。傷が開きます」

「誰のせいよ! ていうかちょっと待って? 誤解よ? 私はそんなんじゃないわよ? 違うからね疾風くん?」

「一夏が日本の裏のドンかぁ………」

「違うからね!?」

 

 

 

 会長を医務室の医療ポッドに放り込んだあと。俺は来た道を引き返してサイバールームに向かって全力疾走した。

 途中母さんと父さんに出くわした。苦労した俺たちと違って特に損傷もなくISと特殊歩兵部隊を纏めて無力化したとか。

 この夫婦凄い………

 

 そんなこんなでサイバールームに到着。ISを解除して中に飛び込んだ

 

「ただいま到着!」

「疾風!?」

「簪、状況は!? セシリアたちは!?」

「い、一夏にも説明したんだけど。電脳ダイブしたみんなが攻撃を受けた」

「なんだって!? それで!」

「こちらからのアクセスも強制ログアウトも不可。いま一夏が鈴を救出したところ。だから疾風も」

「中に飛び込んで助けろって事だな! 了解した!」

 

 直ぐに下のダイブルームに向かい体当たりばりに扉を開けた。

 そこには既に目覚めていた鈴。そして未だダイブしたままのセシリアたちと救出に行った一夏が寝ていた。

 

「あ、疾風」

「鈴! なにがあった!」

「わからない。行きなり変な夢見せられて………その」

「その、なんだ!」

「とにかく大変だったの! わかれ!」

「えー、わからんけどわかった事にする! とにかく行くわ!」

「気を付けてよ!」

「あんがと!」

 

 ダイブ専用のベッドに飛び込んでISを接続。リクライニングで倒れながら機械の中に格納された。

 

「簪、頼む!」

「うん、ISとシステム同期終了。アクセス!」

「フラァァッシュ!!」

 

 反射的に答えてしまった。サービス精神忘れない簪は嫌いじゃないぜ。

 てかそこプラグインじゃないんだ、簪的にはそっちの方が好きか………とどうでもいい考察のまま俺の意識は遠退いていった。

 

 

 

 

 

「………ん。おっ。おおー、おーー」

 

 目を開けた先にはこれまたサイバーでスペースな空間が広がっていた。

 幾何学模様と無数の流れ星が浮かぶ幻想的な世界。

 ここが電脳世界。出来ればゆっくり眺めたいところだが。今は………

 

「良かった。上手く入れたみたい」

 

 空中に簪の画面が展開され、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 

「んで、この扉の向こうにあいつらが」

「うん。先ずは………あっ」

「どうした?」

「戻ってくる」

「ん? おっ」

 

 何もない空間に光が集い。制服姿の一夏と………

 

「ウヒャア! 一夏のエッチぃ!!」

「ぐひゃぁぁぁ!!」

 

 一夏に開幕目潰しを決める。ランジェリーパンツ+手ブラというこれまた刺激の強いコスチュームのシャルロットが現れたのであった。

 

「ぬおおおおおーー!」

「あああごめん! でも一夏が悪いんだよ! これ着けてって言ったのも、脱がしたのも、甘い言葉かけてくれたのも一夏だし」

「だから、それは俺じゃねえって………」

「そう言って言い逃れするの!?」

「あの、もしもーし。喋って良いでしょうか」

「え、疾風。うわぁぁぁ!」

「うお危ねえ!」

 

 ポロリ的な意味でも危ないシャルロットの目潰しをすんでのところで回避。

 

「み、見たね疾風! というかいつからそこに!」

「最初からだ! というかなんでも良いからこれ羽織れ馬鹿!」

 

 To LOVEるで目潰しなんてたまったもんじゃない。IS学園の制服をシャルロットに投げ付けて俺は後ろを向いた。

 シャルロットが羽織ったのを確認し、俺は再度振り返る。

 

「で、助けに行くはずがなんでこんな状況になってるのかな。説明しろ一夏」

「俺もわかんねえよ」

「と言ってるけど」

「恥ずかしかった。うぅぅ」

 

 駄目だこりゃ。

 

「とりあえずシャルロットは一度こっちに戻ってきて。また取り込まれたら大変だから。その格好のままで居たいならいいけど」

「変なこと言わないでよ簪! 一夏、後でお詫びしてよね!」

「だから俺じゃな、あっ」

 

 言い終わる前にシャルロットが俺の制服を残して消えた。現実世界に戻ったのだろう。

 

「はぁ………なんでこんなことに」

「マジで中で何があった?」

「言えねえよあんなの」

「?」

 

 なんだか心なしか顔が赤いような。

 気になるところだが、今は優先すべき事がある。

 

「二人とも。次は菖蒲とラウラの方をお願い」

「セシリアと箒はいいのか?」

「二人とも比較的信号が安定してるから大丈夫」

「よっし、じゃあ俺は菖蒲のとこに行く。ラウラは任せた」

「わかった」

 

 二人揃って菖蒲とラウラのドアの前にたち。ドアノブをひねった。

 

 ………開かない。

 

「あれ、開かないよ?」

 

 引いても押しても上に上げても下に下げても横に押してもビクともしない。

 

「簪さーん? 開かないんだけどどうなってるー?」

「ちょっと待って………これは。同一存在の侵入不可がかかってる」

「どゆこと?」

「この先にある菖蒲の仮想現実には疾風が、ラウラの仮想現実には一夏が存在する」

「鈴とシャルロットのとこに出てきた偽物の俺みたいな奴か」

「うん」

 

 偽物かぁ。そこがまだなんともわからんのだが。

 つまりこの中には俺の偽物が居るということで。そこに全く同じ奴が居たら辻褄が合わないよってことで入れないってことか。

 

「恐らく、敵が防壁を強めたのかもしれない」

「じゃあ俺がラウラのとこに行けば良いのか?」

「それもアリだけど。今までのパターンを見るに、今のままの方が救出後の安定率が高い」

「でも入れないんじゃなぁ」

「大丈夫。こういう時のための秘策はある。それは」

「それは」

「変装する」

「………なんて?」

「変装すれば入れる」

 

 ………………ええ? 

 

 二人揃って呆気に取られていると、簪はムスッと頬を膨らませてそっぽを向いた。

 

「私だって、真面目に言ってるのに、こんな時に冗談なんか言わないのに………」

「すまん悪かった! 信じる!」

「むくれた顔も可愛いぞー!!」

「………そんなんで機嫌が直るなんて思わないで」

 

 と言いつつなんか嬉しそうなのは気のせいということにしておこう! 

 

「んじゃあ、どうすりゃ良い?」

「いま服装データ書き換える。そのまま待機してて」

 

 しばらくして俺と一夏は光に包まれた。

 と思ったらなんか視界、というより顔に違和感が。

 

「うわっ、疾風すげえな!」

「どんな感じになってる?」

「お面つけてる」

「お面!」

 

 外すと。どっかで見たような赤いラインの狐のお面が。

 若干和テイストになってるが。間違いなくアレである。

 

「簪」

「なに?」

「緑のタヌキない? 俺あっちの方が好き」

「ごめん、もう変えられない」

 

 ういーす。どっかにハンドル落ちてねえかな。

 

「ていうかお前の方が凄いんだが?」

 

 俺は白い和服に赤い狐の仮面というオシャレ感あるコスチュームだが。

 一夏はなんとフルプレートの銀甲冑姿である。

 

「まあ動けないこともないし。見た目ほど重くないぞ」

「飽くまで見せ掛けか」

「思ってもいうな」

 

 とりあえずこれで入れる訳だ。

 得物は背中にしょった薙刀1本。なんとかやってみせよう。

 

「んじゃあ行きますかぁ!」

「気をつけてね、二人とも」

「おう!!」

 

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