IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第124話【爆発しろと誰かが言った】

 

 

「………んーーー!」

 

 身体のコリと眠気をほぐすように腕を伸ばす。

 

 久しぶりにあの液体に入らない夢を見た。

 

 セシリアとデートする夢。

 

 映画見て、服を買って、ご飯食べて、雑貨屋行って。そして………夕焼けの海の側で告白して………

 

「………」

 

 覇気の欠片もなくポケーと夢の内容を反芻。

 全て幸せな夢だったのではと思うほどのフワフワしたもの。

 だけどあの時の彼女のぬくもりは今でも心を暖めてくれる。

 

「………あっ」

 

 眼鏡をかけてイーグルの待機形態のバッジを取ろうとして触れた物。

 箔押しされた水色のガラス飾りのついたヘアゴム。

 髪を伸ばし始めている俺にくれた、男が付けるには少し可愛げなセシリアからのプレゼント。

 

 ツルッとした感触と箔押しのサラサラした感触を指で弄っていく

 

「フフッ」

 

 このヘアゴムが昨日の出来事を現実だと感じさせてくれる。ギュッと胸に当てた後、バススロットにしまい込んだ。

 腕に付けようかと思ったが。流石にあからさま過ぎるかなと。

 

「早く伸びないかな、髪」

 

 

 

 

 

 

「「あっ」」

 

 特に待ち合わせしたわけではないが。

 寮のロビーでセシリアと鉢合わせ。

 

「おはようございます。疾風」

「ぐ、グッモニーン!」

「え?」

「失礼、噛みました………行こっか」

 

 寝起きで舌が回らない………っていう訳ではないのは自分が一番わかっている。

 

 嬉しさと恥ずかしさとむず痒さと青春な純情が原因だと。

 

 いつも見慣れた制服姿だというのにワン、いやツーランクいやスリーランク鮮やかに見えるのは脳が誤認した目の錯覚だろう。

 なんかキラキラしてるし。

 

 本当にこの美少女が俺の彼女なのだろうか。

 あのヘアゴムは俺の妄想の産物故の自主供給物なのでは? とネガティブ空間にダイブ仕掛けた時に気付いた。

 

 セシリアの首もとに細いチェーンが見えたことを。

 

「セシリア、そのチェーン」

「これですか?」

 

 スルリと制服の間から取り出されたのは、昨日のあの時上げた羽のペンダント。

 

「外に出しておくと、皆さん目ざといですから。でもせっかく疾風から貰ったペンダントですし、どうしても身に付けたくて」

「好きだ」

「ピッ!? は、疾風! 脈絡もなく言うのやめてくださいな! びっくりしますからっ」

 

 ごめん。脊髄反射が。

 これは俺も制服の下に忍ばせておくかなぁ。

 でも腕に巻くとゴムが地味に痛いからなぁ、いっそヘアゴムにチェーン通して………いや絶対変だわそれ。

 

 セシリアと付き合った訳だが。しばらくは2人だけの秘密。ということになった。

 

 学園で付き合ったなどとばれれば間違いなく騒ぎになるだけでなくメディアにもバレる。

 俺もセシリアも政治的観点から見て結構取扱い注意なとこもあり。もしそうなれば世界から何言われるかわかったもんじゃない。

 

 あと個人的にセシリアの叔母から何かされないかマジで怖い。

 その時はうちの母に援護射撃してもらおう。きっと味方になってくれるはずだ。

 

「あの」

「どした?」

「いま周りに誰も居ませんし。手を繋ぎませんか?」

「…いいよ」

 

 手汗出てないか確認してから差し出すとコンマ秒で恋人繋ぎしてきた。このお嬢様アグレッシブ。

 照れとかないんかなと思ってセシリアを見ると耳が赤い。

 

「んんっ」

「どうかしましたの?」

「尊みが漏れた」

 

 いやー大変です世界の皆様。

 セシリア・オルコットが尊すぎます。

 我が生涯に一片の悔い無しと言いたいところですがまだまだやり残しありまくりなので軽率に言えないところが苦しいところです。

 

 しかし改めて握るとなんと柔らかいのか。

 余計な贅肉がついていないはずなのに、しっとりスベスベな肌が俺の手のひらとジャストフィットする。まるで少し前に流行った低反発的な奴のよう。

 

「ひゃっ」

 

 不意にニギニギしてみる。

 絡まった恋人繋ぎの感触のなんと心地のよいものか。オキシトシンという幸福ホルモンが大量生産中である。

 

 手を繋ぐだけでこんな幸福感って。この先どうなるんだろ。

 浮かれポンチも大概にしてほしいと自分でも思う。だけどもーうしばらく手を繋いでいた………

 

「セシリアー! 疾風ー! おはよー!」

「「!?」」

 

 背後から見知った声が! 

 慌てて手を離そうとしたがガッチリ凹凸埋め合わせた恋人繋ぎ。

 そんな指が絡まったまま引っ張ったらどうなるか。

 

「ヌフン!」

 

 セシリアに引っ張られた俺の身体がそのままコンクリートと一つになった。

 

「ちょっとなにしてんのよ、あんた」

「………足をグインとしてしまってな」

「何もないところで? あんたも歳ねー」

「1歳差でしょうが」

 

 果たして隠しきれるだろうか。

 前途多難である。

 

『とりあえず。浮かれないようにしよう。普段通り、特に意識しないで過ごそう』

『わかりましたわ』

「………ん?」

 

 

 

 

 

「ISとは本来、宇宙空間においてのパワードスーツとしての運用を想定していました。ですが誕生から10年経った今でも………」

「………………」

 

 当たり障りない授業。

 知っている知識だとしても、ISの座学を目と耳で反復するのは楽しい。

 IS学園なんだから全科目IS関連ならいいのにと思うぐらいIS学は好きだ。

 

 いつもなら常にかぶりつくぐらい見ているのだが。

 

 チラッ………チラッ

 

 視野にあのブロンドがチラチラと写る。

 いや見ないようにしてるんだ。だがさっきからまったく授業が入ってこない。

 なんだろうねこれは。流石に見すぎだ疾風くん、いやしかしほんと美人さんというか日光に照らされた髪はまるで高級シルクのように煌めいていて………

 

「レーデルハイトくん」

「………………」

「レーデルハイトくん?」

「え、あ、はい! えーと、すいませんなんでしょう」

「はい。ISが生まれてから今になっても宇宙開発がなかなか進まないのは何故か、ということですが」

「あー、えーと。世界各国の経済勢力図がISに偏り。宇宙開発に向かうはずの資金が新型IS技術開発につぎ込まれている為………です」

「はい、よくできました。でも授業中に他の事を考えては駄目ですよ」

「はい………」

 

 山田先生の朗らかな笑顔にバツを悪くしながら座る。

 こんなこと前もあったなぁ………

 

 と思いつつもまたチラッもセシリアの方を向くとバチコリ目があってしまった。

 

「「っ!」」

 

 時間にして僅か1秒、短いようで長い時間見つめあった俺たちは即座に顔を背ける。

 頬に手を当てると、熱い。

 

 どれだけ惚れてるのか舞い上がってるのか浮かれてるのか。

 自重自重自重自重。ここまで来たら際限などなくなってしまう。

 

 授業だけに集中、集中! 

 ギンっ! と鋭い眼光(自分に向けられたと勘違いした山田先生がビクッと涙目になってしまった)でボードを見て板書を取りまくる。

 

「んー?」

 

 そんな2人を見てシャルロットはコテンと首をかしげる。

 1秒という凝縮された時間であれ、そういう雰囲気に敏感なシャルロットが気付くには充分すぎた。

 

 

 

 

 

「だらっしゃぁぁい!!」

「そこですわ!!」

「どぅわぁ!?」

「ちょっと、まっ。ぎゃああああ!!」

 

 白式の零落白夜を掻い潜りインパルスとブライトネスで一夏を吹き飛ばし。ブルー・ティアーズの偏光制御射撃(フレキシブル)一斉射撃が甲龍に殺到する。

 空中から叩きつけられ一夏、レーザーに蜂の巣にされた鈴が地面にクレーターを形成し。勝負がついた。

 

「そこまで! オルコットとレーデルハイトの勝利!」

「よしよし! ナイスだセシリア!」

「やりましたわ!」

「くあー、負けたぁ」

「折角一夏とのタッグだったのに………タッグだったのにぃ………!」

 

 俺とセシリアは空中で喜びを分かち合い。

 一夏は負けたとはいえ良い勝負が出来たと笑い。

 そして鈴はせっかくの見せ場を潰してしまったことに1人滝のような涙を見せていた。

 

「流石ですわね疾風。零落白夜に臆せず懐に潜り込むとは」

「イーグルのプラズマは零落白夜に対抗できるからな。それよりもまた偏光制御射撃(フレキシブル)の精度上がったんじゃないか?」

「ええ、本格的な戦闘機動は久し振りでしたが。前よりティアーズが、というより。乗れば乗るほどBT操作能力が馴染んでいくんです。まるで初めからあったかのように」

 

 確かに偏光制御射撃(フレキシブル)のホーミング性能は日に日に精度を増し、そして頻度も多くなってきている。

 キャノンボール・ファストの事件からしばらく立つが。これこそがセシリア本来のポテンシャルだったのだろうな。

 

「それもこれも疾風のおかげですわ」

「俺特になにもしてないと思うけど」

「何をおっしゃいますか。わたくしの知らないお父様の言葉。アレがきっかけで思い出せたのです。父との思い出、そして偏光制御射撃(フレキシブル)の糸口を」

 

 もしなにも知らないままだったらどうなっていたかとセシリアは語る。

 セシリアはおじさんのことを毛嫌いしていると言っていた。だけどそれは違っていて、母親と同じぐらい父親が好きだった。

 今でもたまにもっと話したかったと吐露することがある。それだけ彼女の中で存在感が大きいのだ。

 

「それにしても。本当に綺麗だよな、セシリアの偏光制御射撃(フレキシブル)の軌道。星の動きを早送りする動画とか見たことあるけど。あれよりも鮮明で美しくて。戦闘中なのに見惚れそうになった」

「なった、だけですの?」

「………すいません、見惚れました。見惚れて一撃食らいました」

「見惚れたのは偏光制御射撃(フレキシブル)だけ?」

「畳み掛けますねセシリアさん………全部です。セシリアもブルー・ティアーズも含めて見惚れました」

「はい、良くできました」

 

 フフッと頬を桃色に染めながらはにかむ。

 そんな彼女に何度目の一目惚れをしてしまい、反らそうとしても反らせない魅力に足を取られてしまった。

 

 いまもそうだ。互いを見る目には確かな熱があり。

 そのまま静止したまま時が止まったかのような錯覚を………

 

「おい二人とも」

「「はい!」」

「ストロべりってないでさっさと降りてこい」

「「スススストロべりってません!!」」

 

 織斑先生の言葉は正に冷や水の如く。熱に浮かされかけた俺たちを即座に冷やした。

 慌てて急降下する俺たち(勿論クレーターを作ることなく地表差数センチで静止)は急いで織斑先生の元へ。

 そして流れるように直角90度。

 

「授業を遅延させてしまい」

「申し訳ございませんでした!」

「いや、そこまでしなくていい。まあ仲良しもほどほどにな」

「先生! 俺たちそういうんじゃないです!」

「そうですわたくし達は………疾風、そんな声大きくして言わなくても」

「おい、合わせろ馬鹿っ」

 

 気持ちはわかるけど抑えて欲しいです。

 気持ちはわかるけど! 油断したら出てしまうけれども。

 初日からバレるなんてあってはならんからな………

 

 ただ………

 

「むっ?」

「ふむ?」

「あらあら?」

「むー………」

 

 目が冴える人たちから見たら、匂わせ以外の何物でもなかったりする。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 疾風は生徒会の仕事ということで1人になったセシリアはどことなく校舎を歩いていた。

 アリーナに行こうとも思ったが、疾風がいないのでは行く気もなくただ歩いていた。

 

「しばらく疾風とは会えなくなりますのね」

 

 セシリアのイギリス出向。その目的はブルー・ティアーズの量産化計画だ。

 偏光制御射撃(フレキシブル)を完全に会得し、絶えずデータを転送していた彼女はその開発の為にイギリスに長期滞在する。

 

 なんでもレーデルハイト工業のAI技術も活用し、BT適正が低いものでもビットを操れるようにする仕組みを作り、偏光制御射撃(フレキシブル)の難易度も下げれるような機体を作るとか。

 

 連絡は出来る、ビデオ通話なら顔も見れる。それでも疾風と恋人関係となったセシリアにとっては物理的な距離は寂しいものがあった。

 

 いっそのこと疾風も一緒にと考えたが。それは叔母であるフランチェスカに諌められている。

 

(いつか、疾風が叔母様に認められるような。それこそ国家代表になれる日が来れば、きっと………)

 

 男性にはとてつもなく厳しい叔母をどう説得するか。二人の関係においてそれは最優先事項で片付けなければならない案件だった。

 

「あっ、セシリア発見」

「あら鈴さんとラウラさん。何かご用で」

「ちょっとこっち来てねー」

「腹を割って話そう」

「え、なんです行きなり。何故二人とも脇を固めますの?」

「いいからいいから」

「悪いようにはせん」

「え、えー?」

 

 あれよあれよと低身長二人に連れてこられたのはIS学園屋上。

 いつもなら他の生徒もいるのだが、今日は珍しくがらんどうだった。

 

 連れてこられた先には。一夏と疾風を抜いた一年生専用機組の面々が待っていた。

 

「皆さんお揃いで。どうしましたの?」

「どうしたというか」

「どうなったというか」

「まあ座ってくださいな」

「え、ええ」

 

 促されるまま座るセシリア、を半ば囲うように陣取る女子専用機組。

 何か緊迫感がある。それにしては暗いものではなく、なんというかフワフワした感じ。

 一夏ラバーズは頬をほんの少し染めて忙しく視線を動かし。菖蒲と簪は何処かうつむきながらもセシリアに視線を向けていた。

 

 そこから何も話すことなく微妙な時間が経過してしまい。セシリアは煮え切れず切り出した。

 

「あの、何かありまして?」

「………ねえ、誰か聞かないの?」

「こういうのは私の役目では」

「菖蒲、簪。あんたらいつもグイグイ行ってるでしょ。なんで今回大人しいの」

「それはまあ………」

「察して………」

「仕方ない、私が行こう。セシリア」

「はい」

「………お前は疾風と付き合っているのか?」

「違います!」

「「「ダウト!!!」」」

 

 淀みなく即答したセシリアに容赦のない即ダウト。

 

 この期におよんで用意してきたであろう回答を引き出して誤魔化しを決めてきたセシリアにもう恋に恋する乙女は止められない。

 

「お、お前は隠してるつもりだろうがな! 明らかに少し前と空気が段違いなんだぞ!?」

「あんたねぇ! 朝スルーしてたけど手繋いでたでしょ! そうなんでしょ吐きなさいよ!」

「二人して熱視線送りあってさ! テレパシーでも飛ばしてたの!? ラブテレパシーなの!?」

「二人を見ていたら口の中が甘かった。これがクラリッサの言っていた砂糖を吐くということか」

 

 一夏ラバーズは他人の幸運は毒蜜の味と1日中糖度に犯されて糖尿病になりそうだった。

 自分たちが至れない領域に達したセシリアに尊敬よりも嫉妬の念が深かったのだ。

 

 未だ一夏にろくなアプローチも出来ないヘタレたちの闇は深い。

 

「セシリア様。疾風様は隠していたつもりなのでしょう。普段より熱がこもってはいましたが目立つ行動はなかったですし。ですがね………我々の目の前であーんをやったのは駄目ですよセシリア様」

「うっ………」

 

 そう、このお嬢様。あろうことか人前で疾風にはい、あーんをしたのだ。

 完全に無意識で、予備動作などなく至極当たり前のように疾風の前に満面の笑顔で余程自信があったのだろう卵焼きを差し出したのだ。

 

 場が凍り付いた。やはりそうなのか!? とヒロインズはスタンダップしそうになるのを抑えた。

 疾風も戸惑い「せ、セシリアさん」と促して彼女はようやく自分がしでかした事を理解しボッと顔を沸騰させる。

 

「じじじ自信作ですのよ! だから食べさせたかっただけで他意はありません!! ほら食べなさい疾風! 美味しいですから!! ほら、ほらっ!!」

 

 と誤魔化しにかけたが時既に遅し。というより始めた瞬間THE ENDである。

 なにせ疾風に卵焼きを差し出すその顔は蕩けに蕩けきったダダ甘スマイルだったのだから。

 

「ああ、ついにくっついたのですねと思いましたよ。誰だってそう思いますとも。あんな有り様で隠すなんてチャンチャラ可笑しいってものよな、ハッ」

「菖蒲、キャラ崩壊してる。でも同感。ある種の拷問だった。いっそのこと開幕ぶちまけてくれたらよかったのに………それはそれで精神死ぬかな」

「お茶! 飲まずにいられない!!」

 

 手に持ったペットボトルの緑茶1本を一気飲みしてしまう菖蒲。

 

 二人がさっさとくっついて欲しいとは考えていた。

 だがそれはそれとして目の前で無自覚にイチャつかれたらそれなりにダメージがあるのも必然。

 失恋からそれほど時をたってないからなおのことである。

 

「あの………そんなバレバレでした?」

「一夏にすらバレてるんじゃないか?」

「そんなに!?」

「………いやすまない誇大表現だった。あいつの頭に恋愛の2文字なんかないからな」

 

 朴念神の名は伊達ではない。

 

「でもそれぐらいってことですわよね………ハゥ、恥ずかしいですわ」

「いやー、滲み出ててわよ、カップルムードが」

「私が副官からもらった漫画はこの程度ではなかったがな。もっとドロ甘だった」

「これより上があるのか!? 我々爆発四散するのでは?」

「僕も一夏と付き合ったらこうなるのかなぁ………エヘヘ」

「こらシャルロット、1人でトリップするな」

「うぅ………」

 

 セシリアにとって全て無自覚だった。

 全て無自覚なのである。これで。

 付き合って1日でこれなのである!! 

 

 いつ如何なる時でも優雅たれ。そんなセシリア・オルコットともあろうものが恋人が出来た途端デレッデレのトロットロなのである。

 世の特権階級の御曹司が今日のセシリアを見たら。原因不明の重症者が大量発生し社会問題に発展していたはずだ。

 

「とりあえずまあ。おめでとうございますセシリア様」

「うん、おめでとう」

「あ、ありがとうございます。これからは表に出さないように尽力致しますわ」

「出来るかなぁ」

「出来ないだろう」

「ちょっと皆さん!?」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 セシリアがヒロインズに詰められている間。生徒会室はというと。

 

「疾風くん、お付き合いおめでとう」

「ブーー!!」

「うわったぁ!」

 

 俺こと疾風・レーデルハイトが盛大にお茶を吹き出していましたとさ。

 そして対面の一夏に直撃しましたとさ。

 

「か、会長? 行きなり何を言ってるのですか? 意味がわかりませんよわからなすぎてお茶吹いちゃったじゃないですか一夏ハンカチごめんね大丈夫か」

「分かりやすく動揺してるじゃない」

「してませんよ違いますからね俺とセシリアは付き合ってなんかいません」

「そう………誰もセシリアちゃんって言ってないけどね」

「ハッ! ……………………いや俺がセシリアに好意を向けてることは一夏含めみんな知ってるんですから付き合ってる=セシリアになるのは当然の帰結であって」

「強引に誤魔化すんじゃないわよ! 往生際悪いわねこの子ったら!」

「私は冤罪を許さない!」

「確定なのよ吐きなさいコラ! 必殺! 楯無千手観音!!」

「え、ちょまっ! アハハハハハハハハ!!!」

 

 説明しよう! 

 楯無千手観音とは! 

 なんか凄いコチョコチョである!! 

 

「アハハハハ!! やめて! やめ! アハハハハハハハハ!!」

「貴方が! 吐くまで! 擽るのを! やめない!!」

「やめて! やめてぇぇ!! アハハハハハハ!!!」

「ほら吐きなさい! ほらぁ」

「わかりました! わかりましたから! 言いますからぁ!」

「よろしい」

「ゼーヒューゼーヒューゼーヒュー!」

 

 し、死ぬかと思った。

 肺の中の酸素全部出てったかと思った。

 今なら波紋法使えるかも知れない。エレクトリック・オーバードライブ使えるかも知れない………もう使えてたわオーバードライブ。

 

「ハーハーハーハーハー………ハァァァァ」

 

 酸素、美味しい! 

 

「どう。更識楯無必殺の楯無千手観音の威力。実際これで情報吐かせたことあるのよ」

「嫌だなぁ。そんなので吐かれた情報」

「勝てばよかろうなのよ」

「そうですか。あっ、すいません俺急用思い出したのでお先に失礼!」

「次は楯無二千手観音よ」

「申し訳ございません正直に話させていただきます」

 

 ごめんセシリア。

 だが命には変えられなかったよ。

 まだ俺はお前と青春を楽しみたいんだ………………あともうガッツリバレてるから無理して隠さなくて良いかなって(オイ)

 

「ちなみに聞くが一夏よ。お前気付いてた?」

「いや。楯無さんが言うまでは気付かなかった」

「ありがとう一夏。俺の命は繋がったよ」

「どういう意味だ。まあいつもと少し様子が違う雰囲気はあったような気がしたけど………」

「ありがとう一夏! 俺の命は確かに繋がったよ!!」

 

 よかった! 一夏に気付かれなきゃ勝ちだ! 最終防衛ラインは守られた! 

 まあそれは一先ず置いといて。

 

「えー、はい。改めて言うのもなんだし恥ずかしいのでもう言います。紆余曲折ありつつも、先日セシリアとお付き合いさせて頂きました………はい」

「おめでとーレーちん」

「おめでとうございますレーデルハイトくん」

「おめでとう。よかったな疾風」

「うんうん。やっと結ばれたのね。お姉さん嬉しいわぁ」

「そうですねー。会長は俺とセシリアの邪魔ばかりしましたからねこの野郎」

「その節はまっことに申し訳ございませんでした!!」

 

 おお、流れるような美しい土下座。

 しかと地面に頭をこすって頂きたいものです。

 

「しかし。どうして会長気付いたんです。今日初めて会いましたよね」

「ああ、気付いたのは昨日よ」

「まさか尾行してたんですか!?」

「違う違う。朝ジョギングしてたらオシャレしてる二人見つけて。あ、デートするんだなぁって思って。あと学園の監視カメラチェックしてたら仲睦まじく手を繋いで帰ってくる二人を見て、ついにくっついたんだなぁって」

「あーー」

 

 監視カメラなんか全然頭になかったなぁ。

 あの時はもう、ほんと嬉しくて嬉しくて。人だけ注意しながら隙を見ては手を繋いでいたから。

 

「とにもかくにもおめでとう。これからじっくり根掘り葉掘り聞こうかと思ったけど。流石に今日はやめましょう、今日は」

「頼みますからこのことは」

「秘密、でしょ。いまスキャンダルはシャレにならないからね、薫子ちゃんにもそれとなしに注意しとくわ………女尊男卑主義者の動きも活発化してきてるし………」

「会長?」

「あ、ううんなんでもない。とにかく簪ちゃんを振ってまでセシリアちゃんと付き合ったんだから。幸せにならないと許さないからね!」

「はい。肝に銘じます」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「申し訳ございません。バレてしまいました」

「こちらもバレてしまいました」

 

 それとなく連絡してセシリアを俺の部屋に招いた。

 やましい気はないからな? 

 

 セシリアも話があるということだった。電話越しでもああ、もしかしてバレたのかなと思ったら案の定でしたよ。

 ハハッ。笑えるぜチクショウメー。

 

「ごめんなさい。もうわたくしったら浮かれ過ぎて」

「うん、まあ。人のこと言えないけど。セシリアってこんな表に出しちゃうんだなぁって思ったわ」

「幻滅しましたか?」

「惚れ直しました」

「あぅ………」

 

 バレるとヒヤヒヤしたものだけど。それ以上に浮かれてデレッデレしてるセシリアがそれはもう可愛いのなんのって。

 こっちも顔面崩壊するの必死に我慢したんだ。力入れすぎて表情筋やられるかと思った。

 

「ま、みんな他人にバラして広めるような真似はしないから大丈夫だよ………問題は一夏でさえ違和感に気付きかけたっことだ」

「恐ろしいですわ! わたくしったらどれだけっ」

「まあ。明日からはもっと自然体で行こうか。少し距離感離した方がいいかな」

「それは嫌ですわ! 疾風から離れるなんてわたくし………あっ、ごめんなさい。そういう意味ではないですものね。あーわたくしったらヒャアっ!? ちょっと疾風!?」

 

 もう感極まってハグだよ。

 

 周りの目ないから抑える必要ないよね。ファイナルセーフラインを越えなきゃいいんだから。

 越えたら明日確実に学園に行けない。

 セシリアから香るとてつもない良い匂いととてつもなく柔らかい感触を受けながら自らの獣性を抑えつつ抱き締める力に移して耐える。

 

 自分から行っといてなんだけどどんな拷問だこれ。

 

「い、痛いですわ疾風」

「あ、ごめん。もう………溢れちゃって」

「わたくし今度こそ襲われますの?」

「大丈夫! 理性はあるから! 絞り出してるから!」

「あっ………」

 

 急いでセシリアから離れた。

 セシリアの口から名残惜しげな声が漏れた気がした。

 ごめんね。ファイナルセーフラインはもう目の前なの。危ない、この子の魅力危ない! サキュバスなんか目じゃねえぜ(会ったことないけど)。

 

「わたくしたち、俗に言うバカップルというものなのでしょうか………」

「大丈夫、まだその領域ではない。付き合いはじめで舞い上がってるだけだから」

「でも一夏さんでさえ違和感覚えてますのよ?」

「どうしたらいいんだろう。いっそのこと全部さらけ出して糖度全面に出すか………」

「それはそれでわたくしの身が持ちませんわ」

「右に同じく」

 

 とりあえず今後のことを考えなければ。

 学園中にバレたらそれはもうシャレになれない。

 

「頑張ろう。俺たち明日のために」

「ええ、ええ………」

 

 恋愛初心者の俺たちは明日こそ頑張ろうと決意を新たにしたのだった。

 

 そんな俺たちは知らない。

 

「二人の距離感に変化が!」「まさかの熱愛確定!?」「一夏✕疾風はなくなったってこと!?」「いや疾風✕一夏でしょ!? 殺すぞてめぇ!!」「新聞部が動くな」「遠目から見守りましょう」「いやむしろ進ませるべきでは?」「まて、まだ早い」

 

 等と女子ネットワークにより噂が活性化していること。

 

 そして俺たちは知らない。

 

 いつの間にか。

 本当に無意識にお互いの手を握りあっていたことにも………






 あまーーい!
 恋愛童貞の俺にはこの描写は過酷すぎた!!

 自分なりに糖度積めてみました。
 砂糖を吐いてくれると幸いです
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