IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 SEEDFREEDOM2回目見ました。
 ネタバレやらいろいろ補修すると見えるものがあるというものですね。

 まだ見てない人は見ようぜ。後悔はしないと思う


第132話【傷だらけの翼だとしても】

 

 

「レーデルハイトが居なくなっただと!?」

 

 楯無からの報告に思わず声を荒げる千冬にその場に居た者は騒然となった。

 

「申し訳御座いません! 定時確認の時に部屋を覗いたらもぬけの殻で!」

「待ってください、メディカルルームの監視カメラは疾風くんの姿を捕らえています!」

「ちょっと良いかしら」

 

 麻美が端末を繋いでホログラムディスプレイを開いた。

 

「………更識さんに落ち度はないわ。疾風を連れていったのは篠ノ之さんよ」

「束が!? 何故束がレーデルハイトを」

「それよりも今すぐ周辺の捜索をお願いできるかしら。もう間に合わないと思うけど………」

「わかりました。専用機持ちに通達──」

 

 

 

 

 

 あれからIS学園周辺を捜索したが疾風の姿は確認できなかった。

 疾風が持ってるであろうISの反応も検知出来ず。成果を得られぬままブリーフィングルームに集まった。

 

「これって………」

「連れ去られた訳じゃないみたいね」

「疾風の奴自分から?」

 

 麻美の解析で露になった改竄される前の映像。

 疾風が誰かと話し、そのあと壁がくり貫かれ。銀髪の少女と共に部屋を後にする疾風の姿があった。

 

「本当に姉さんが疾風を連れ去ったのですか?」

「間違いない。分かりやすく自分がやったってデータを入れながらハッキングしてきたんだわ」

「だけど、扉の前とはいえお姉ちゃんがいたのに。ISのセンサーもつけてたんでしょ?」

「ええ、だけどミステリアス・レイディにはなんの反応もなかった」

「その銀髪の女は束の使いに間違いはない。仕組みはわからないがISを含めた感知を紛らわせる能力があるのだろう」

「でもなんで疾風を。だって疾風はもうISを動かせないんだろ?」

 

 篠ノ之束は目的のないことはしない。

 疾風を連れていった、そして疾風がそれに抵抗せず同意したということは何かしらの取引をしたということだろう。

 

 何故、と思うのが普通だが。その場に居たものは大体の検討をつけていた。

 

「篠ノ之博士はISの母。であるならば、疾風様がISを使えるようにする。と持ちかけたのでしょう」

「それかセシリアを救う為と言ったか。或いはどっちもか」

 

 それしかないだろう。

 

 疾風が何故ISを動かせたか、そして今動かせなくなった理由はわからなくとも。

 疾風は必ずセシリアを助ける。大切な人を取り戻すことを優先するだろう。

 

「………? 御厨所長、どうしたのですか?」

 

 簪に問われた麻美の顔は驚愕に満ちていた。

 表情は青くなり。汗が垂れ、目は揺れに揺れていた。

 

「もしかしてっ」

「麻美ちゃん?」

「織斑先生! 今すぐ政府に疾風くんの捜索を命じて下さい! 今すぐ! 徳川さんの言う通り。篠ノ之さんは疾風くんにISを使わせようとしている! だけど使わせたら駄目! 使わせたら………疾風くんは死んでしまう!!」

 

 空気が凍り付いた。

 理由などわからないが、麻美の鬼気迫る表情が全てを物語っていた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「お久し振りです篠ノ之博士。まさか貴方からコンタクトを取ってくるとは思いませんでしたよ」

「それは私も同じことだよ」

 

 フランチェスカ・ルクナバルトの元に通信が入っていた。相手は篠ノ之束。

 この世界にISをもたらし、そして女尊男卑社会の原因を作り出した希代の天才がだ。

 

「凡人にしてはなかなか手際が良いじゃないか。敵対勢力になりうる者を洗脳し、それを気取らせず各所で一気に襲撃。汚職履歴のある男を吊し上げることで世論操作して一部世論を味方につける。今までの亡国機業(ファントム・タスク)の強奪と比べると雲泥の差だよ」

「かのISの母である篠ノ之博士にお褒めいただき、光栄の至りです。それで、今回はどのような御用件でしょうか」

「うん。単刀直入に言うと君たちに協力しようかなぁって」

「え?」

 

 これにはフランチェスカも驚きを隠せなかった。

 当初の計画では篠ノ之博士は妨害してくると予想し、それを相手取る想定の元に動いていたからだ。

 

 篠ノ之束は亡国機業を敵視している。と噂されている。

 協力者と共にISのプロテクトを強化し、彼女でさえ一筋縄ではいかせないとしたシステムを構築したのもその為である。

 

「それはとても嬉しい限りですが、何故そのような考えになったかお聞かせ頂いても宜しいでしょうか」

「ぶっちゃけると、今の世界って面倒なんだよね。最初は宇宙開発の礎として作ったインフィニット・ストラトスが白騎士事件を契機に世界はISを国力としての武力でしか考えなくなった。その癖どいつもこいつも凡人ばっかでろくに進歩しない。未だに第三世代で躓く始末だ。

 でも君たちは違う、凡人レベルでは第三世代で難関なBT技術を解析しここまで来たんだ。面倒な世界基盤もぶっ壊してくれたことだしね」

「博士は女尊男卑には興味はないと思っていましたが」

「ないよ。あるのはISだけさ。君たちに協力しようと思ったのは、ISの宇宙進出を行う上で君たちに協力した方が一番近いかなって思っただけだからね」

「成る程………」

 

 理屈としては通っている。

 今の世界。宇宙進出としてのIS開発は世界広しといえども数えるほどしかなく。それでいて国は次世代ISの開発になり宇宙開発に資金を回していないのは事実。

 

 確かにいまの世界は篠ノ之束が望んでいた物ではないだろう。

 

「協力というのは具体的にどのような?」

「こちらから新造のISコアを提供する。結構なコアを手に入れたようだけど。多いに越したことはないでしょ? それに宇宙開発に回すなら増やして損はない」

「代価は」

「世界をならしたあとの宇宙開発に協力。地上は宇宙開発の妨げにならないなら好きにして良いよ。あと私は女尊男卑社会を支持してる訳じゃない。私を広告塔には使わないでね、めんどうだから」

「わかりました」

 

 正直篠ノ之束がバックにあることを世界に表明すれば駄目押しとばかりに世界に圧をかけられるが。彼女が望まないと口にしたなら断念せざるを得ない。

 敵対して余計な横やりを入れられるリスクは極力回避しなければ。

 

「もう一つ。いきなり君たち総出と会うのは、此方としては気が引ける。だからそちらから特使を派遣して頂きたい」

「特使、どなたでしょう」

「セシリア・オルコットを使命したい。彼女のセカンドシフトISに興味があってね。どのようなメカニズムか解析させて欲しいのさ」

「それは………」

「駄目ならこの話はなしね。私としては協力したらメリットはあるけど。必ずしも君たちに協力する筋合いもないし。断ったならちーちゃんのとこに行くよ」

「………わかりました」

 

 なんにせよ、彼女の協力=戦力増加はありがたい。

 ここで変に断って気分屋の極みである彼女と敵対するよりは表向き協力関係を構築した方が遥かにメリットがある。

 

 そう判断したフランチェスカは彼女に同意する。

 

「物わかりが良い人は好きだよ。世の中そうじゃない奴ばかりだから」

「それには同意します」

「じゃあ指定ポイントを送るからそこに宜しく。あ、勿論セシリア・オルコット一人だけにしてね。他の人来たらこの話無効だから、じゃーねー」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「はい。というわけで。これで舞台は作ったからね♪」

「ありがとうごさいます。今の、演技ですか?」

「半分!」

 

 どの半分が該当するかを聞くのは絶妙に怖いのでやめておこう。

 

 篠ノ之博士の従者と名乗ったクロエ・クロニクルと共にIS学園を後にした俺は博士の住居に招待されたのだが。

 いや驚いたよね。手を引っ張られて海にドボンとした先には巨大な潜水艦が待ち受けていてさ。

 だけど合図とかくれんかねクロエさんや。ISのスキンバリアで濡れなかったとはいえ心構えがいるものよ。

 

 とまあ博士の潜水艦【ワンダーランド】に招待された俺は篠ノ之博士とフランチェスカの通信を横に調整を受けていた。

 

「フランチェスカはほんとに乗ってくれるでしょうか」

「来るよ。でも相手にとってセシリアちゃんはジョーカーだ。間違いなく護衛は来るだろうね」

「護衛、まあそうでしょうね」

「といっても遠方に配置するだろう。その間にどれだけ攻めれるかが勝負って訳だよ。ところでさっきから何やってるの?」

「遺書を書いてます。最後ですからね」

「うーん。君みたいなお年頃だともっと生に貪欲だと思うんだけどね」

「必死に考えないようにしてるんです。少しでも気を抜くと身体の震えが止まらないので………そろそろ話してくれませんか。俺を選んだ理由を」

「オッケー。では授業を始めます!」

 

 よくぞ聞いてくれましたとばかりにホワイトボードを量子変換し、ポケットから眼鏡を右手には指示棒を取り出し、更に一人不思議の国のアリスな服装からフォーマルスーツに量子変換(早着替え)した篠ノ之博士。

 得意気に眼鏡をあげて渾身のドヤ顔である。

 

「あの、篠ノ之博士?」

「ノン! 束先生とお呼び!」

「え、あー。束、先生」

「なんだい疾風くん」

「なんでそんな形式と格好を」

「何事も形って大事じゃない? ちなみにこのスーツはちーちゃんが着てる物とまったく同じものです。そのお陰で胸の辺りが苦しい」

「あーー、そう、ですね」

 

 篠ノ之博士の胸部装甲は箒以上山田先生以下、或いは同等という素晴らしい物をお持ちである。

 織斑先生もグンバツなスタイルであるがソレと比べると差はあるので、今にもスーツ胸元のボタンが弾けそうである。

 

「では問題。奴らはどうやって洗脳をしているでしょうか?」

「………いやわかりませんよ」

「正解はBT感応能力を利用したナノマシンを経由して洗脳してるからでした」

「答えるのが早い」

「だらける時間もないからねぇ。名称はBTナノマシンと仮定して。このナノマシンを投与されたものはIS適正値、そして反応速度や反射神経が強化される。第二回クラス対抗戦でえーーっと、誰だっけ。あの黒鉄を操ってた奴」

「安城敬華」

「そんな名前だったっけ? まあいいや。そいつがVTシステムなんていう不細工の極みみたいなシステムの負荷を耐えれたのもそれと同じものを使ったからさ」

 

 つまり、BTナノマシンを通してBT感応能力で対象を操っていたということか? 

 だけどそんな簡単に出来るものなのか? 

 

「普通は出来ないよ。セシリアちゃん程のBT能力でもね。だけどあの勘違いババアは一味違う。彼女のISのワンオフ・アビリティー【原初乃蒼(ジ・ブルー)】は今のBT技術の祖と言える能力。

 キャノンボール・ファストに出てきたオートマタ、ワルキューレがあるじゃない。あの大勢の自動人形を彼女は遠方から操っていたのさ」

 

 あのワルキューレと言われたロボット兵器。BTビットの類いだったのか。

 Mが操っていたと思っていたが、あの数を遠隔で同時に操っていたと? 

 

「BTナノマシンを投与され、彼女のワンオフ・アビリティーの制御を受けた人は記憶の改竄を受けた。不都合な記憶を封じ込んで、新しい認識と記憶を塗りたくる。あの女にはそれが可能なのさ。まったく忌々しいったらないよ」

「セシリアたちはそれを投与されて認識を変えられた? どうすれば洗脳を解くことが出来るのでしょう。フランチェスカを潰せば良い、というわけではないでしょう?」

 

 もしそうなら俺である必要はない。

 俗なやり方で男に負けさせるって考えなら零落白夜を持つ一夏の方が有効だ。入学当初と比べて、あいつの剣の冴えは凄まじい伸びを得ている。

 

「残念ながらコントロール元を潰したら全部解決してハッピーエンド! ってよくある映画や娯楽劇場みたいにならないのが厄介なところでね。洗脳が完了したらババアが死んでも自立して動くのさ。命令の更新がなくとも、塗り替えられた女尊男卑思考はそのままってわけ」

「じゃあどうすれば」

「そこで君の出番という訳さ。洗脳された人間全てを元に戻す第一段階として、まずセシリアちゃんを正気に戻す必要がある」

「何故セシリアが最初なのですか?」

「彼女の洗脳が他と比べて特殊なの。お気に入りに施してるだけあってね。彼女にはBTナノマシンの他に君の体内にあるのと同じファクター・ナノマシンが組み込まれている」

 

 セシリアの中に俺と同じナノマシンが? 

 でもあれは第零世代の遺伝子データと同じでなくてはならないはず………

 

「セシリアも適合者なのですか?」

「当たり。彼女の両親はIS開発初期チームの一人。母親であるソフィア・オルコットは遺伝子サンプルの一人なのさ」

「え!? セシリアの親がIS初期チームの一員だったんですか!?」

 

 初めて知った! 

 セシリアから聞いてないということは彼女も知らなかったとか? 

 

「オルコット夫妻は私のパトロンの一つでね、彼女の資金には助けられたよ。で、セシリアちゃんのプロテクトはファクター・コードとの相乗効果で他とはダンチなの。だけどそれだけあのババアの洗脳と恩恵を一身に受けてる。もしそれを修復し、彼女を取り戻したとしよう。そしたらどうなる?」

「えっと………すいません、わからないです」

「ヒントを上げよう。今回の洗脳が病気だと仮定したら?」

「………あっ。重症のセシリアから抗体を作って、洗脳に対するワクチンを作れる」

「ピンポーン。流石先生の子、あったまいいー」

 

 万能の天才と言われた人に頭良いって言われるとなんか変な気持ちになるな。

 しかしこれで篠ノ之博士がセシリアを救うと言った理由がわかった。

 では次の疑問だ。

 

「何故俺を選んだのですか。素人目で恐縮ですが。IS学園や銀の福音をハッキング出来る貴方なら俺なんかの手を使わずとも出来るのではないですか?」

「およ? 私君にそのこと言ったっけ?」

「あ、いえ。あんなこと出来るのは篠ノ之博士かと思って。間違ってたら」

「ううん合ってるから問題ないよ」

「やっぱりそうで……いや問題ありまくりです博士、じゃない先生。俺たち何回死にかけたと思ってるんですか悔い改めて下さい」

「ごめーんね♪」

「清々しいほどウザい!!」

 

 なんか前にもこんなことやられたな。あ、会長か。もしかしたら気が合うのかこの2人。

 

「まあまあ、どれも死なないように気を付けてたから。死ななきゃ全部掠り傷ってどっかの誰かが言ってたし」

「えー」

「それに良い鍛練になったでしょ。私の最大目的は達成できなかったけど。まあ、それは今どうでもいいね」

 

 なんか流された感。

 でもなんだろう。思ったより人間っぽいやり取りが出来てる気がする。

 もっと宇宙人と話してるような感覚になると思ってたのに。案外人間なのかこの人。

 

 言ってることは大分めちゃくちゃだけど。

 

「話を戻すけど。今回はISではなく操縦者が対象なのがネックなのさ。福音の時は超高性能自立AIシステムがあったから楽だったけど。ISから操縦者にアクセスするのは私でも難しい。ダイレクトでハック出来るかIS学園で洗脳された子で試したけど駄目だったよ」

「いつの間に………ということはフランチェスカには貴女に匹敵する情報システムを構築できる技術があると?」

「うーーん、それはなんか違う気がするんだよね。飽くまであの女の専門はBTだし。BTナノマシンも100%彼女のみで作ったかと思うと納得が行かない。飽くまで仮説だから確証もなんもないけど、BTナノマシンはドイツの越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)と同じようなファクター・ナノマシンの劣化版な感じがするんだよね」

「フランチェスカ、というよりブルー・ブラッド・ブルー単独の技術ではないと?」

「そういうこと。亡国機業(ファントム・タスク)のバックにはとてつもない物があるのかもね。もしかしたら私に匹敵するような頭脳陣が居るのかも」

 

 勘弁してほしい。

 彼女のような天才の天災なんて一人でも手に余るぐらいだというのに。

 

「引き伸ばして引き伸ばしてようやっと本命だ。君だけがセシリアちゃんを救える理由。それは君と彼女が対の存在になったからさ」

「それって………えーっと、俺とセシリアが恋仲になったからですか?」

「それもあるよ」

「あるんですか!?」

 

 わからなくてやっつけで言ったのに当たってしまった。今さら羞恥心なんか考える暇もないが。

 当たったら当たったで恥ずかしい。

 

「君たちが共に過ごした時間、互いの思い入れがどのような物かは知らないしそこまで興味はないけど。君と彼女は波長が合って、クロッシング・アクセスを可能となるまでに至った。覚えはないかい?」

「あります。セシリアにリムーバーを取り付けられた時、彼女の叫びを聞きました」

「それは深層心理に封じ込められた彼女の意思だ、可愛そうにね。私なら寝込んじゃうよ、あんな体験したらさ」

 

 篠ノ之博士が? 

 彼女も誰かに恋した時期があったのだろうか? 

 それとも気遣ってくれただけ? 

 

「救出に必要な要素は2つ。洗脳状態でもクロッシング・アクセス出来ること、そしてどちらもファクター・コードが一定値覚醒してることだ。君が彼女に取りつき、セシリアちゃんとクロッシング・アクセス。そのあと君のISを経由してダイレクトに私が彼女の洗脳を解く。これが唯一にして最大の方法だ」

「そう簡単にクロッシング・アクセスなんて出来るんですか?」

「出来るよ。でもそれは君の頑張り次第でもある。ファクター・ナノマシンを再起動してISを動かせるとはいえ、従来どおりに動かせない。そして、無理やり動かす負荷も合わさって。彼女にたどり着くのは困難だよ」

 

 たどり着くってことはゼロ距離接触がトリガーか。

 あの進化したフレキシブルと、正面からガチンコか。

 辛いなんてもんじゃない。セカンドシフトする前の彼女でさえ近づくのは苦労した。

 だけど、諦める理由にはならないな。

 

「それでもやってやりますよ。その為に此処に来たんです」

「それでこそ、だ。でも何も一人で戦わせないよ。随伴機にはゴーレムⅢ、タッグマッチトーナメントで戦った機体を幾つかつける。あ、シールド無効化はつけてないから安心して。そしてなんと、私が直々にオペレーターしてあげる。世界最高クラスに贅沢な待遇だぜ? 喜べ少年」

「それぐらいしないと行けない程、今の俺は体たらくって訳ですね」

「暗いねぇ、今時の若い子は。ま、今の状況で明るくなんて無理か」

 

 いえ、篠ノ之博士のお陰で。だいぶ震えも収まってきましたよ。

 本人が意図してやってるかは、やっぱりわからないけど。こういう霞を掴むような感じ。ますます会長に似てるな

 

「そういえばあの子。クロエ・クロニクルという子は出さないんですか? ISを欺瞞するほどの幻覚能力があるのならば近づくのに有効なのでは」

「クーちゃんを出すのはあまり効果的とは言えないかな。BT能力は脳波パターンでレーザーやビットを操るものだけど。強力なBT能力の使い手だと空間把握能力がダンチなんだ。幻影を使っても効果がない可能性が高い。それに、ファクター・コード持ちとクーちゃんの黒鍵は相性悪いの。以前君もクーちゃんの幻影空間を吹き飛ばしたでしょ?」

「え? 何時ですか?」

「あ、ごめん。そっちの説明忘れてたね。君がクーちゃんに頭を覗かれたあと気絶してたでしょ。その時、君の身体を使って、スカイブルー・イーグルのコア人格がクーちゃんと戦ったのさ」

「………???」

 

 イーグルが俺の身体を使って戦った? 

 え、そもそもコア人格って表層に現れることがあるの? 

 

 ふと頭に浮かんだ、真っ白な大地、真っ青な空。

 そしてそこに立つメカクレの少年。

 

 あいつが俺を守ったというのか? 

 

「それもファクター・コードの影響ですか?」

「も、あるけど。君たちのISだと出る可能性は著しく低い。ちーちゃんとクーちゃんの話を聞く限り。君は相当自分のISに気に入られてるようだね。なんか特別なことでもした?」

「どうでしょう。人よりISは乗りまくってますし、メンテもそれなりにしてますけど」

 

 あとは………動かす前に色々やったぐらいだけど。

 

 あれは関係ないよね。起動すらしてないし。

 

「大事なことがもう一つ。君と君の施設を撃ち抜いた衛星兵器型IS、エクスカリバーのことだ」

「え、衛星兵器型IS!? あれISの砲撃だったのですか!?」

 

 もう今回だけでどんだけ驚いてるんだ俺は。

 

 衛星兵器型IS? それもうISって言えるのか? 

 

「本体はBT光学ステルス。英国が開発中のBT粒子を応用したステルス技術なんだけど。それの完成版のお陰で発射するまで位置は不明。しかもコアネットワークがガッチガチに寸断されて反応も追えず。唯一、あのババアのコントロールだけ確立してるって訳。でも撃ったら私がそのコントロールを掌握出来る。セシリアちゃんと比べたら難易度は軽いものだからね」

「その一発は気合いで避けろってことですね」

「そうなるね。はぁ………ごめんね疾風くん。天才と言われた私がテロリスト相手に情けないこと極まりないよ」

「篠ノ之博士も人間なんです。何でも出来そうですけど、そうじゃなくても失望なんかしませんよ」

「そう? あ、コラ。束先生と呼びなさい」

 

 あ、その設定続いてたんですね。

 

 と思ったら篠ノ之博士の姿が元の一人不思議の国のアリスに戻った。

 

「おっ、丁度調整終わったね」

「これで起動出来るんですか?」

「うん。ナノマシンを再起動すれば疾風くんはもう一度スカイブルー・イーグルを起動できる。言っとくけど超痛いよ。無理やり発動できないものを発動させるんだからね」

「痛いのは嫌だなぁ………でもあいつの方がもっと痛いだろうから」

「ん。セシリアちゃんが来るまでに時間がかかる。その間にゴーレムの調整をしておくから、君は休んで心構えをしていたまえ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 日本に近い太平洋、某所。

 

 そこはかつて暴走した銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)とIS学園専用機持ち1年生が凌ぎを削った場所であった。

 

 黒く濃い曇天の空の下。蒼の天使が一人。

 セシリア・オルコットとドミネイト・ブルー・ティアーズだ。

 

「叔母様。篠ノ之博士とのランデブーポイントに到着しました」

『何か見えるかしら?』

「いえ、今のところ何も………待ってください、下から反応………これは、潜水艦?」

 

 青黒い海に白い何かが海を突き破り高々と船頭を天にかかげ、そして海に叩きつけるように浮上した。

 

 それは巨大な潜水艦。だが潜水艦というには先鋭的な外見、まるでSF映画に出る宇宙船のようだった。

 それが篠ノ之束の城。潜水艦ワンダーランドの姿だった。

 

「まさか本当に来るなんて」

「そりゃあね。私から誘ったんだから行くさ」

「!? 叔母様、篠ノ之博士が甲板に!」

 

 いつの間に居たのか、束がワンダーランドの上からセシリアを見上げていた。

 

「さ、こっちに来たまえ。中で話そうじゃないか」

「いえ、中に入るのは遠慮させていただきます。叔母様はまだあなたを完全に信頼していない」

「そうかい。じゃあせめて甲板まで来てくれないかな。このままだと首が疲れるから」

「叔母様………」

『いいわ。でも気を付けてね』

「はい、叔母様」

 

 ゆっくりと舞い降りるように降り立つセシリア。

 

「初めまして。フランチェスカ・ルクナバルトの補佐官、セシリア・オルコットでございます」

「初めまして………ああ、君の中ではそうなんだ」

「何か?」

「いいや何でもないよ。んじゃあこれから共に頑張ろうね──そんな勘違いクソババアと一緒にいないでさ」

「っ、ぐぅ!!」

 

 突然セシリアが膝をついた。

 セシリアの周りだけ光が下方向に歪み、セシリアを捕らえていた。

 

「これは、重力!?」

「そっ。いま開発中の試作兵装さ」

『なんのつもりですか篠ノ之博士!』

「なんのつもり? 説明しないとわからないのかな。あ、そんなオツムもないか。ISを勝手に勘違いして世界征服なんて陳腐なこと考える連中には。悪いけどこのままお暇させて頂くよ」

「そうは行きませんわ!」

 

 ギッ! とセシリアの蒼の目に輝き、ファクター・コードが宿る。

 重力空間の中に複数の光の球が出現し。重力空間に満ちるように増える無数の光の球が一気に爆発した。

 

 爆発による衝撃で重力拘束を抜け出したが、至近距離の爆発と高重力空間を強引に抜け出した反動で絶対防御でも消しきれない衝撃と痛みにセシリアは表情を歪ませる。

 

「くっ、はぁっ………」

「やれやれ、粗っぽいことをする。エレガントじゃないね。疾風くんの影響が奥底に染み付いてるのかね。どう思う、疾風くん」

『なに!?』

 

 彼女の口から出るはずのない人物の名にフランチェスカは動揺を隠すことなく狼狽える。

 甲板の一部が開き、ISスーツ姿の疾風が競り上がってきた。

 

『貴様! どうして篠ノ之博士と一緒にいる!』

「教えねえよバーカ! と思ったが教えてやる。お前のような化石女からセシリアを奪い返す為さ!」

『奪う? 笑えるわね。ISも動かせない男に何が出来るというのかしら? それとも、そんな派手なだけのISスーツだけで戦うつもりかしら?』

 

 そのISスーツはいつものシンプルな紺色ではなく、黒と白を合わせた特徴的な配色。

 形状も男性ISスーツの半袖インナーとスパッツではなく、全身を覆うダイバースーツタイプになっている。

 

「にゃろう。束さんのデザインにケチつけやがったな。疾風くん、束さんお手製のISスーツの調子は如何かな?」

「ピッタリすぎて怖いです。デザインは良いですけど」

「アッハッハ。それには従来のスーツに加えて対G機能が強化されている。本来ISで賄えるけど、今の君にはこれぐらいやらないとね」

「それよりも最初でキッチリ捕獲できれば苦労しないのに」

「そうだねー。まだ改良の余地いるかも」

「オイ」

「フフッ。でも最低限の仕事はキッチリするさ」

 

 セシリアのドミネイト・ブルー・ティアーズの装甲が仕切りにスパークしていた。

 眼のファクター・コードの輝きも明滅している。

 

「これは! わたくしのファクターに細工を!」

「君が疾風くんに打ち込んだ物を参考にさせてもらった。ついでに機体のBT感応機能も一部ダウンしている。楔は打った、あとは頼むよ疾風くん」

「はい」

 

 束が踵を返すと同時に姿が消えた。

 

 残された疾風は胸元のイーグルのバッジを握りしめ、深く深呼吸をする。

 

「フーー………ファクター・ナノマシン。再起動!」

《Ready。ISとの同調開始》

「っ!! ぐ、ぅぅぅ、うああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 疾風の周りに粒子光が漂い、身体から青白い電流迸る。

 強制的に起動されたファクター・ナノマシンは、容赦なく疾風の身体を傷つけていく。

 

(痛い痛い痛い痛い!!! 血管全部が燃えてトゲが生えてるみたいだ。くそっ、心折れそうだ畜生)

 

 思わず倒れ込む疾風を見てフランチェスカは下卑た笑みを浮かべる。

 

『もしかしてファクター・ナノマシンを再起動しようとしてるのかしら? あなた死ぬつもり? 死んだらセシリアの心が動くと思ってるのかしら?』

 

 フランチェスカの言葉なんか届かないぐらいの痛みに耐える疾風。

 倒れたままセシリアを見上げた。

 

 セシリアの顔には困惑が浮かんでいた。

 きっとフランチェスカと同じく呆れてるのか、それとも。

 

 ゆっくり、ゆっくりと立ち上がる。

 身体の痛みは依然として身体を突き破らんばかりに訴えてくる。

 

 だがこんなのどうってことないと。

 セシリアに比べればどうってことないと根性だけで立ち上がる。

 

「はぁ………はぁ」

「所詮あなたには何も出来ないわ。そこで無意味不様に死んでしまいなさい!』

「言われなくて死んでやるさ。セシリアを助けたあとで、な!!」

 

 見開いた目にはファクター・コード特有の光が。

 空色の虹彩は曇天の空にもたらされた一つの輝きだった。

 

「くっ、うぅぅぉぉおおおおおおっ!! 来いっ!! スカイブルー・イーグルっ!!!」

 

 天を貫くほどの雄叫びと共に量子変換の光が疾風を包み、空に打ち上げた。

 光は段々と形作られ、そして弾けた。

 

 カラーリングは晴れた空の色と見紛う程の空色と白。

 広がっている一対の翼、頭には鷲を模した帽子型ハイパーセンサー

 装甲に青白い電流がパチリと走る。

 

『馬鹿な! ISを動かした!? 待機中のIS部隊に連絡! 急行なさい!』

『おっとそうは行かないよ』

 

 遠い空域から向かうISを塞ぐように複数のゴーレムⅢ。そして疾風とスカイブルー・イーグルにお供するゴーレムⅢが4機、ワンダーランドから射出される。

 

「さあ見せてくれ疾風・レーデルハイト。君とスカイブルー・イーグルの最後の輝きを!」

「ええ、やってやりますとも………セシリア!」

「!!」

「待ってろ! いま約束を果たす!!」

 

 儚くも雄々しき翼が飛翔する。

 

 ただただ愛する人を取り戻すため。スカイブルー・イーグルのプラズマが一際輝いた。

 

 







 どうも、ポッと上げたダインスレイヴのツイートで初バズりを噛まし。嬉しい悲鳴をあげてしまったブレイブです。
 いやー凄かったですね。通知が止まらないの。有名Twitterの人はこんな気持ちなのかね。

 今回ですが。説明回ってことで台詞が凄く長く多いことに。
 読みづらくなってませんかね?あまりにも長い奴はスペース開きましたが。

 長い長い鬱展開ですが。なんとかついていって下さるとありがたいです。
 あっ、ここわかりづらかった!という人は遠慮なく言ってください。お答えしますので。

 次回、ついにセシリアと決戦。
 死のカウントダウンを背負い満身創痍の疾風はいったいどうなるのか。次回衝撃の展開。

 お楽しみに
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