IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第134話【舞い上がる翼】

 

 

 篠ノ之束が保有する巨大潜水艦ワンダーランドの艦内管制室で束は忙しなくコンソールを操作する。

 

 その顔はいつもの張り付けた仮面の笑顔ではなく苦虫を噛み潰したような難しい顔をしていた。

 

「束様。疾風・レーデルハイトの生体反応が消失しました」

「見ればわかるよクーちゃん」

 

 黙ったままの主人を気遣ってか、或いは淡々と状況報告をしたのか。そんなクロエの報告に抑揚なく答える。

 

 セシリア・オルコットの洗脳を解くことが出来た。

 疾風・レーデルハイトが文字通り命を燃やしつくしたのだから当然だ。

 

 見事な戦いだった。自分の作ったインフィニット・ストラトスは間違いなく彼の想いに答え、その願いを掴み取った。

 

 あとは………

 

 ぱらりろぱらりぺろ~♪ 

 

 管制室にゴッド・ファーザーの愛のテーマが流れる。

 その着信音の相手は束が大事にしてる人にして自分と並び立つ世界最強の女だ。

 

 いつもなら全ての物事を置き去りに。彼女の為ならコンビニなんぞ目じゃないぐらい24時間フルオープンと豪語するぐらい嬉しい物だが。今はそんな気は放置している。

 

 篠ノ之束という人間を知る相手からしたらこんなことあり得ないが、事が事だ。

 どうせ電話の内容は火を見るより明らか。親友には悪いが。そんな予測済みの会話をする暇は今の束にはない。

 

 だがそれと同時に鋼のような頑固さと諦めの悪さも世界一だということも知っている。

 なのでクロエに電話を取らせて対応させる。

 

「もしもし。申し訳ございませんが束様は手が話せません。ピーという発信音の後にお名前とご用件をお話し下さい」

「召し使いと話す気はない、束に繋げ」

 

 地獄の底から鳴り響くような声に電話越しでもクロエの身体は震えた。

 これは自分では対応出来ないと主人にお伺いを立てる。

 

「スピーカーにしてクーちゃん」

「はい」

「もしもしちーちゃん、ご無沙汰だね。クーちゃんにも言ったけど今束さん凄く忙しいの。後にしてくれると助かるんだけど」

「ふざけるな! 貴様どういうつもりだ!!」

 

 今までと比べてトップレベルの怒気を飛ばす千冬。だが束は表情一つ変えず変わらずキーボードに指を走らせる。

 

「どうって何。主語がないと会話は成立しないよ」

「レーデルハイトだ! お前は自分が何をしたのか分かっているのか! レーデルハイトが、レーデルハイトが死んだんだぞ!!」

「知ってるってば。彼をモニターしてるのは私だよ?」

「何故彼を死なせた! レーデルハイトがISを動かせば死ぬことは分かっていただろう!」

「人聞きの悪い。彼は自らの意思で私のもとに来たんだよ」

「お前がそそのかしたんだろ! オルコットを救う手立てがあると言えば彼がそれを選ぶと知っていながら!!」

「否定はしないよ。でも間違いでもあるよちーちゃん。疾風くんは自らの意思で進んだ。愛する人を助ける為に自分の命の使い道を選んだ。私とはたまたま利害が一致しただけ………ていっても詭弁だね。そうだよ、私が疾風くんを殺した。これで満足かいちーちゃん」

 

 満足であるものか。千冬は叫ぼうとしたが言葉が喉につっかえる。

 何故なら。疾風自身が選択したということも理解しているからだ。それしかセシリアを救う手立てがないことを。

 そして親友がそれを少なからず悔いていることを。 

 

「ていうかなんでちーちゃんが電話してるのさ。先生に怒られるならまだしも。あー、疾風くんが先生の息子の忘れ形見だからって理由?」

「な、何を言っている?」

「あ、ヤバ。これオフレコだった。今のなしね」

「おいどういう意味だ。ちゃんと説明を………」

「ごめんそんな時間ないの。さっきも言ったけど今の束さんは超忙し………よし、聖剣はあと少し。問題は迎撃部隊がもう突破されるか。こんなことならもっと作れば良かった」

 

 束が疾風をサポートする際。彼のサポートと別の作業を数多くのタスクを並列で行っていた。

 

 姿を現したエクスカリバーの掌握。

 セシリアに打ち込んだクロッシング・アクセスを成功させる確率を上げる因子の定着。

 セシリアの洗脳を解除するプログラムの構築。そしてアクセス後に後遺症が残らないようしっかりと解除すること。

 疾風の随伴機と援軍を足止めする為に用意したゴーレムⅢの操作。

 

 その他多種多様の作業を疾風の生命維持とサポートを行いながらこなしていた。

 想像を絶するマルチタスクだが、篠ノ之束なら可能なのだ。

 

 最大のリソースであった疾風のサポートがなくなった今。残りのタスクを迅速にこなしている束にとっていつもは誰よりも待ち望む千冬との会話を楽しむ余裕はない。

 

「悪いけど本当に忙しいの。それよりいっくんたちにセシリアちゃんの回収を命じて。敵の増援が来る。今なら振りきれるから、首に縄をつけてでも連れて帰って」

「分かっている。オルコットは必ず保護する」

「上出来だよちーちゃん。疾風くんはこっちで回収するから安心して。あとで私もそっちに行くよ。暮桜を起こすのと。怒られに行くのにね」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 初めて疾風からデートに誘われた時、柄にもなく興奮してしまった。

 初めてのデートで疾風に意識して貰いたいとチェルシーに相談して望んだデートは想像以上だった。

 映画を見て服を買い、パスタの美味しい店でお昼を食べ。初めての雑貨屋さんに目を輝かせた。

 

 疾風がとても格好よく見えた。

 惚れた女の補正なのかわからないが、周囲の女性も疾風を見ていたから間違いはない。

 

 そして夕焼けの海というロマンチックな場所で告白を、と思ったら疾風がとても辛そうにしていた。

 胸のうちにある不安を吐き出した疾風は、IS学園で再会した時の疾風に似てるようで、それでいて違っていて。

 思わず抱き締めて、そのまま自分から告白した。

 

 受け入れてくれたことはとても嬉しくて。

 次の日には自分でも恥ずかしいぐらい浮かれてしまった。

 

 幸せだった。彼に貰った雑貨屋に売っていたペンダント。

 それの何十倍も値のする宝石やアクセサリーも、それの前には霞んで見えて。暇さえあれば首にかけていたそれを手に取り頬を緩ませた。

 

 ブルー・ティアーズの量産化で会えない日が続いたが。それでも幸せだった。

 プロジェクトが終われば彼にまた会える。寂しい分は思いきって甘えよう。

 

 この幸せがいつまでも続くことを疑わず、それが不変のものだと疑わなかった。

 

 あの日までは。

 

「疾風・レーデルハイトとはどのような関係なのかしら?」

 

 叔母が話があるとティアーズ・コーポレーションの応接室に通された。

 開口一番疾風のことを聞かれ、どう答えれば良いか迷った。

 

 叔母は疾風を嫌っている。自分に纏わりつく害虫とさえ思っていることだろう。

 もし自分との交際がバレれば、根も葉もない噂で疾風を社会的に抹殺しかねない。

 

 素直に恋人ですと言えばどうなるかは明白だった。

 

「疾風は………わたくしの大切な友人です」

 

 だからまだ。今はまだ隠しておく。

 いつか疾風が今よりもっと立派に。それこそ叔母と同等の国家代表になれば。きっと叔母も認めざるを得ないはず。

 

 そう信じていた。

 

「そう………残念だわセシリア。貴女が私に嘘をつくなんて」

「そんな、嘘だなん、て………?」

 

 カシャンと手に持っていたティーカップが床に落ちて割れた。

 そして襲われる虚脱感と強力な眠気がセシリアから力を奪っていた。

 

「本当に、本当に残念だわ。そこまであの男に汚されてしまうなんて。私が知らないと思ってたのね。ずっと貴女を見守っていたのに」

「お、ば、さま?」

「IS学園になんか入学させるべきではなかった。そしたらこんなことにならなかった。本当はこんなことしたくないのよ? 仕方ないわよね。汚れたものは綺麗に落とさないと。でもこれから始まる素晴らしい世界に、あの男の居場所なんてない。消すための口実ができたと思えば幸せよね?」

 

 意識が、落ちる。

 ここで落ちては駄目だ。予感が当たってしまった。

 叔母は何かをしようとしている。そして自分がそれに関わることを。

 だが意識をブルー・ティアーズに向けようにも、それより先に意識が消える方が早かった。

 

 首もとから取られるチェーンネックレス。

 

「それ、は………」

「フン。こんな安物をセシリアにあてがうなんて………穢らわしい」

 

 バキッ。

 

 最後に見たのは、叔母に踏み砕かれ、粉々になったネックレスだった。

 

 

 

 そこから先は朧気で。

 

 暗い場所から、ほんの少し景色が見えたり消えたりと。

 

『素晴らしき女性至上世界の為に』

『穢らわしい男を排斥する透明な世界』

『疾風・レーデルハイトは憎き怨敵。排除すれば叔母様が喜んでくれる』

 

 自分ではない自分の声、頭が痛い。抵抗しなければ受け入れてしまう甘い毒が溶け出していく。

 

 こうしてはいけない。抜け出したい

 でも抜け出せない。暗く甘い夢の中、自分はなす術もなく流されて………

 

 

 

 そして………わたくしは疾風からISを奪った。

 

 レーデルハイト工業の実験施設を消滅し、叔母様から渡された黒いリムーバーを使って疾風からISを動かす力を無くす。

 

 疾風に触れたほんの一瞬、そして限りなく無限に近い瞬間。

 落ちていく疾風をただ見ることしか出来ず。分け目も振らずに泣きじゃくることしか出来ず。

 

 また闇に落ちる。

 

 

 

 一週間後、彼はまた自分の前に立ちふさがった。

 これ以上自分が道を違えぬように、ただただわたくしを救うために。

 

 彼は命を投げ捨てた。

 

 意識の深層。ISの固有空間にまで来てくれた彼はとても優しそうな笑みを浮かべていた。

 いつもと変わらない。愛しい彼が。

 

 

 

 

 

 

「………!!」

 

 頭を覆っていた甘い毒が消えた

 自分を縛り付けた呪いが晴れ。久方ぶりに自分の意識が表層に出た。

 

「は、疾風………」

「………あぁ」

 

 目の前に、血まみれの彼が居た。

 

 ISスーツは破れ、溶けて。肌の下は血に濡れるか焼け焦げた痛々しい姿。

 血で汚れてない場所なんかないぐらい酷く、もはや生きてるのすらおかしいレベルに彼は傷だらけだった。

 彼の愛機であるスカイブルー・イーグルも原型がなく。辛うじて機能してる程度というありさま。

 

 視線を少し落とすと、そこには疾風を貫いていた自分の手があった。

 

 わたくしではないわたくしが疾風を刺していた。

 目の前の疾風と、その事実を受け入れられずそのまま立ち尽くす。

 

 それでも彼は、優しく笑っていた。

 

「………………セシリア」

「っ!!」

「………愛してる」

 

 そう言って彼は満足げな顔をしたまま海原に落ちていった。

 最後まで自分を恨むことなく、水底へ………

 

 疾風がいなくなった………

 

 ようやく自分は理解した。してしまった。

 

「あ、あ………ああっ………ああぁぁ!!」

 

 わたくしが疾風を殺したと。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 セシリアの慟哭が空に響き渡る。

 

 絶望、損失、後悔。

 有り余る負の感情が絶叫と共に吐き出される。

 

 雨が降り始める。

 段々と激しさを増し、大粒の雨が海を叩き、音を掠れさせる。

 

 まるで彼女の心のうちを表してるかのようで、そして彼と同じ青空はもう見えないかのように空を埋め尽くす。

 

 だが彼女の叫びはそんな雨音でさえ遮ることは出来なかった。

 

「嘘でしょ? 本当に?」

「………」

「疾風様っ…」

「く、ぅぅ………」

 

 目の前で起きた紛れもない現実。

 IS学園で過ごした日々がリフレインする。

 

 2人目の男性IS操縦者。

 度が過ぎるほどのISオタク。

 いたずら好きで生意気なところもあるが。仲間を大事にし、時には背中を押してくれた優しい奴。

 

 その彼との思い出はもう作られることはない。

 

 非情なまでの現実を。否が応にも叩きつけられる。

 

『………専用機持ち全機に告げる。レーデルハイトはオルコットを取り戻した。レーデルハイトは束が回収するとのことだ。敵の増援が迫っている。なんとしてでもオルコットを連れ戻せ。あいつの最後の願いだ………』

「…了解!」

「ああ、行くぞ!」

「はい!」

 

 悲しむのは今は置いておく。

 今は疾風の望みを叶えなければ。

 

「疾風………疾風………!」

『セシリア。任務は完了よ。帰投なさい』

「叔母様………疾風が………」

『少し混乱してるのね。でも大丈夫。戻ったらあんな男の記憶を取り除いてあげる。だから戻ってらっしゃいセシリア』

 

 慈愛に満ちたフランチェスカの言葉。

 少し前は頼もしく、心地よく。安心する。親を無くした彼女を案じてくれる優しい叔母。

 

「どうして、こんなことを………」

『セシリア?』

「どうしてこんなことを。疾風が何をしたというのです? どうして………どうしてこんなことをしたのです!!」

 

 だが。いまのセシリアには一欠片も響かない。

 

 フランチェスカはこれ以上ないほど狼狽えた。

 セシリアにかけた物はファクター・コードと合わせた鉄壁の守りだった。

 それをただ一人の男によって破られたのだ。

 

『まさか。BTマインドが解かれた? そんな馬鹿な………!』

「答えて下さい叔母様! どうして、どうして疾風が死ななければならなかったのです!!」

「全てはあなたの為よセシリア。あの男はあなたのこれからの人生を壊す存在。あなた美しさに影を落とす穢らわしき汚点なのよ。だから消してあげたの。あなたがこれからも輝くため。そして私の次にこの世界を統べる存在に………」

「そんなこと望んでいない! 美しさも気高さもいらない!! わたくしは疾風が居てくれれば良かったのに! 疾風さえ居てくれれば何も要らなかったのに!!」

 

 流れる涙と感情が壊れたダムのように溢れ出す。

 いまセシリアにあるのは疾風を失った悲しみと、その原因と言えるフランチェスカと自分への怒りだった。

 

「許さない、わたくしは貴女を許さない! 叔母様! いえ、フランチェスカ・ルクナバルト!! 塵にも劣る女性至上世界なんて認めない! あなたの愚かな野望はわたくしが必ず壊す!!」

『な、あっ!?』

 

 想像すらしてなかったセシリアの拒絶、そして自分の手を離れたことにこれ以上ない程狼狽えるフランチェスカ。

 これほどまでに怒りを持ったセシリアに、完全に気圧されていた。

 

「セシリア!」

「皆様………」

「話も後悔も後です! 早くこの場から逃げましょう!!」

「ですが」

「それが、疾風の願いだから!!」

「………わかりました。行きましょう」

 

 洗脳され、自分の意思ではないとはいえ疾風を手にかけたというのに彼らはセシリアに手を差し出した。

 

 一瞬その手を躊躇った。その手を掴む資格はないと。

 だがそれが疾風の、愛する人の願いなのだから。

 

 セシリアは差し出された菖蒲の手を取り。最大出力で宙域を離脱する。

 

『待ちなさいセシリア! あなたの居場所は私のところよ! 戻りなさい!』

「勝手に決めないで! わたくしの居場所はわたくしが決めます!! 首を洗って待ってなさい、フランチェスカ・ルクナバルト!!」

「っ! 止まりなさいセシリアっ!!」

 

《ブルー・ブラッド・ナノマシン。再投与開始》

 

「ぐぅっ!」

「セシリア様!?」

『さあセシリア。良い子だから戻って来なさい』

 

 ドミネイト・ブルー・ティアーズに仕込まれたBTナノマシンが流れ込み。フランチェスカのワンオフ・アビリティー、原初乃蒼(ジ・ブルー)の力が侵食する。

 

 BTの礎と言われる原初乃蒼(ジ・ブルー)のBT操作能力は現在最高のセシリアの操作とは雲泥の差。

 ナノマシンを通した洗脳には、何人たりとも抵抗することは──

 

『戻りなさいセシリア。共に素晴らしき女性至上世界を』

「………さい」

『え?』

「五月、蝿い、ですわっ!!」

 

 セシリアのファクター・コードが原初乃蒼(ジ・ブルー)の干渉を跳ね除ける。

 その目にはブルー・ブラッドとは違うファクター・コードの澄んだ蒼が灯っていた。

 

『セシリア、あなた!』

「もうあなたの思いどおりにはなりませんわ! わたくしの身体と心はわたくしの物であり。そして、疾風・レーデルハイトの物です!!」

『くっ!!』

「お、おお………」

「セシリア様。凄い惚気」

 

 ファクター・コードの強い光を宿したセシリア。

 愛する人が命懸けで取り戻した心。何人足りとも穢されることのないと、セシリアの想いに応えるようにファクター・コードが呼応する。

 

 だがフランチェスカは認めない。

 自分がこの世で一番に愛するセシリアが。誰よりもセシリアのことを考えていると豪語する彼女の歪んだ愛情が疾風の下賤な愛情如きに拒まれるなど。

 

 たとえ天地がひっくり返ってもありえないのだから。

 

『残念だわセシリア。これだけは使いたくなかったのだけど。仕方ないわ、あの男に取られるぐらいなら!』

 

《模倣対象。フランチェスカ・ルクナバルトを選択。強制プロトコル発令。ヴァルキリー・トレース・システム。起動》

 

 そして醜悪にして最悪の手が放たれる。

 

「!!?」

『あなたは私の物よ。セシリア』

「あああぁぁぁぁーーーっ!!!」

「セシリア!?」

 

 ドミネイト・ブルー・ティアーズに紫電が走る。

 量子変換されたヘッドギアがセシリアの眼と耳を塞ぎ、流されるデータに飲み込まれる。

 

「な、何が起こってるんだ?」

『嘘でしょ!? あの女何処まで愚かなのさ!?』

「姉さん!?」

「ああぁぁぁぁっ!!」

 

 驚愕を露にする束に反応するのも束の間。

 ティアーズのビットからレーザーが撃たれた。

 

 もはや狙いなどなく正に乱れ撃たれたレーザーが周りにいた一夏たちに襲いかかる! 

 

「ちょっと、セシリアどうしたのよ!?」

『最悪! ほんと最悪! あんな不細工の極みまで取り出すなんて!』

「姉さん! 勝手に割り込んで来たんだ! 分かるように話せ!!」

『ヴァルキリー・トレース・システムだよ! あの女、BTナノマシンじゃ飽き足らずVTシステムを使って強制的にセシリアちゃんを従属させるつもりだ!』

「「なんだって!?」」

 

 VTシステム。特定の動きを模倣し、あたかも本人が乗り移ったかのような動きを可能にするシステム。

 

 だがセシリアのそれはとてもじゃないが精錬されたものを感じず、苦しみながらやたらめったらに撃ちまくっている。

 

『だけどこれは本来の使い方じゃない! VTシステムで無理やり思考を奪って掌握にかかっている。このままじゃ相反するシステムの負荷にナノマシンが耐えられなくなって。良くて廃人、最悪死ぬことになる! ほんと頭おかしい! 自分で大事にしてるって言っときながら何考えて組み込んでるのさ!!』

「そんなことより早く助けないと!」

「VTシステムなら機能停止すれば止まるはず!」

「全員で総攻撃をかけてぶっとばせば!」

『お馬鹿! いまセシリアちゃんのISを止めたら。歪に絡み合ったシステムのキックバックで彼女の脳が焼ききれる! 力任せで何でも解決するな! まったくこれだから数だけ中国とジャガイモドイツは!』

「数だけ………」

「ジャガイモ………」

 

 変わらず懐に入ってない相手には糞味噌だし完全な風評被害だがよほどの緊急事態なのかその懐が広くなっている。

 

「ならどうすれば良いんだ姉さん! 天才なんてちやほやされてるならさっさと解決策を出せ!!」

『わかってるよ箒ちゃん! どうにかしてセシリアちゃんに物理的に接触して! 疾風くんがロックを抉じ開けてくれたから。接触したISを経由してもう一度ブルー・ティアーズをハッキング出来る!』

「触れるだけでいいんですか?」

『触れ続けなきゃ駄目。疾風くんだったら一瞬で行けるけど。ハッキングが完了するまで接触しないと駄目』

 

 つまりセシリアにダメージを与えず。

 なおかつ相手の砲火を潜り抜き。

 更に攻撃に晒されながら束のハッキングの時間まで触れ続けなければならない。

 

「だったら取れる方法は一つだ。一夏! 銀の福音と一緒だ!」

「ああ。俺の零落白夜と箒の絢爛舞踏で押し通る!」

「結局ゴリ押しじゃない」

「でもそれしかないよ!」

「ああ、時間も限られている」

「私たちでサポートする」

「やりましょう! 疾風様の願いを叶える為に!」

「そうは行かねえなぁ!!」

「「!?」」

 

 彼らの決意を一蹴するように、セシリアとは違う方向からレーザーが雪崩かかってきた。

 

「レーデルハイトは死んだのか、ざまあねえな! なら織斑一夏も殺しちまうか! アハハハハハ!!」

 

 狂喜に震えるメイブリックがビットを展開して乱れ撃つ。

 他の機体も次々とビットを切り離し弾幕をばらまいていく。

 

『迎撃部隊が突破された!』

「敵IS総数………20機!?」

「18機が例のブルー・ティアーズの量産型。もう2機はオランダとタイの代表候補生か!」

「上からも来る! 飛翔体10!」

 

 厚い雲を突き破って来たのはキャノンボール・ファストで見た長距離飛翔コンテナ。

 空中で開いたそれからは計60機のワルキューレが飛び出した。

 

「IS20機に、自立兵器60。おまけにビット兵器は数えたくない程いる」

「余程セシリアを渡したくないらしいな」

「上等。疾風の弔い合戦よ!」

「待っててくださいセシリア様」

「行くぞ、みんな!!」

 

 敵総数80機。こっちはたった7機。今までにない戦いとなる。

 

 だがそれでも止まるという考えは存在しなかった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 ヒュゥゥ………

 

 ………………ん、んん………? 

 

 なんだろ。何か聞こえる………

 

 ヒュゥゥゥッ………

 

 風か? ていうか、眠い………

 

 ビュゥゥゥゥ………

 

 ………………………眠い……

 

 ビュゥゥゥゥッ………

 

 ………………ねむ………

 

 ビュゥゥゥゥ………

 

 ………ね………む………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビュゴォォォォォっ!!! 

 

「ヴぁぁぁ! 寝れるかぁぁ!!」

 

 ガバッと起き上がった。

 

 もう余りにも五月蝿くて飛び起きた。

 眠気なんてもう全部吹き飛んだみたいに完全覚醒した。

 

「あん?」

 

 見渡す限り、真っ白で、真っ平ら大地。

 晴れ渡る青い空と、凄い勢いで流れていく千切れ雲。

 そして強い風。

 

 この世の景色とは思えない。

 現実的でありながら非現実的な風景。

 

「ここって………」

 

 何度か来たことがある。

 

 最初はイーグルに初めて乗った時。

 二回目は会長に蹴り飛ばされて………

 

「おう、起きたかマスター」

「うおっ!」

 

 なんの気配も感じないところから声。

 

 振り向くとそこには。記憶にあるメカクレの少年が居た。

 少年の癖に妙に大人っぽい声で、それでいて少年のような声の奴。

 

 前はわからなくて朧気だったが。今はわかる。

 

「イーグル、だよな?」

「なんだ、わかってるのかよ」

 

 俺をマスター、主と呼ぶメカクレの少年=スカイブルー・イーグルはニッと笑った。

 

「どんだけ強風になってもいっこうに起きないからどうしてやろうかなと思ってな。俺の手でアルティメット・メイクアップしようと準備してたんだが。残念だ」

「ああ、その手に握りしめてる色取り取りなマッキーペンを見ればわかるよ………ていうかなんか雰囲気違くないお前?」

 

 もっとクールというか無愛想な奴だった気がしたんだが。

 こんないたずらっぽく笑う奴だったっけ? 

 

「ハハっ。それはマスターの影響だ」

「俺?」

「そうさ。俺たちISは操縦者と共に過ごし、空を駆け、そして競い戦い強くなる。そこには大なり小なり搭乗者の影響を受ける」

「なる、ほど」

「まあ普通はここまで人間らしくはならない。俺は稀有な例だ。なんでこうなったか、それはマスターが特別だからさ」

「ファクター・コードだな」

「正解だ。それのおかげでマスターは未成熟ながら3回目の入場を果たしたって訳さ」

 

 確かに。そうじゃなきゃこうホイホイ来れるわけもない。

 だって乗って1日で入ってしまうのだから。いや、正確には2日か? 

 

「………イーグル」

「なんだ」

「俺は死んだのか?」

「ああ、マスターは死んだ。今も水底に向かって潜航中」

「そうか………このままじゃ水圧でペシャンコだな」

「そこは問題ない。お前の為に母が遠隔でスキンバリアを展開してくれている」

「それは良かったな」

 

 母って篠ノ之博士だよな? 

 まあコアを作った本人だから親と言っても不思議ではないか。

 

 もう意識の外とは言え。ベコベコの肉塊なんてなりたくないし。

 イーグルがつぶれて壊れるなんて嫌だしな。

 

「こんな時にも俺の心配か? 嬉しいねえ」

「なんで分かって………ああ、そっか。筒抜けか………ところで、なんで俺はお前の中にいるの? もしかして死後の幻覚だったりするのか?」

「いや。死ぬ直前にシンクロして残留思念みたいな感じで入ってきたのさ。だがそれも長くない。肉体は完全に死んだからな、今のお前は残りカスみたいなものだ」

 

 それはまた。

 最後の最後まで往生際悪いなー。

 

「随分落ち着いてるじゃないか」

「え?」

「死んだんだぞお前。もっと騒ぐものだろ」

「篠ノ之博士にも言われたな」

 

 実を言うとさっきから軽口を言える元気があることに少し驚いていた。

 受け入れ過ぎだろうと思うのも無理はない。

 

 でも………

 

「半端な気持ちで挑んでないからな。俺は全てを出し尽くして、出し尽くしまくった。セシリアも助けれた。俺に出来ることはもうないよ。あとは一夏たちに任せるさ」

「そうかい」

「ありがとなイーグル。最後まで付き合ってくれて。あとごめん。すっごいボロボロにしちまって」

「ほんとだぜ! ああも見事にぶっ壊れてな。原型なんか2割も残ってなかったぞ」

「ごめんて」

「まあ気にするな。パイロットの想いに応えるのが俺たちインフィニット・ストラトスの誉れだからな」

「人工知能に誉れなんかあるのかよ」

「浜に捨ててないからな」

 

 どこのクロウドだ。いや捨ててないから違うか。

 

 ゴロンと寝転がって空を見上げる。

 

 気持ちいいぐらい青い空が広がっている。

 なにも考えずにただ眺めていたいと思えるほど素晴らしい空が広がっていた。

 

「なあ疾風」

「ん?」

「本当に良いのか?」

「…良いんだよ。これ以上出来ることないし。死者が生き返るなんてそれこそファンタジーだ、初めから期待してない………消えるのが怖くないって言ったら嘘だけど。俺は精一杯生ききったよ」

「そうかい………」

 

 そうだ。俺は出来ることをした。

 むしろあんなに激痛に耐えながらあそこまでやれるって凄くね? 

 もうほんとこの世の痛みなんてもんじゃなかったからな。

 皮膚が割けて骨が折れて全身の至るところから血を拭き出して。吐血とか血涙とか初めてだったよ。

 

 俺は頑張った。

 ああ頑張ったとも。

 

 決して褒められたものじゃないが。

 それでも満足している。

 

 セシリアをあのイカれババアから取り戻したんだから。

 ハハハ! ざまあみやがれ!! 

 

「さてと。いつ消えるかわかんないけど。折角ISの人格とご対面だからな。積もる話を作って話そうじゃないか。なあイーグル………あれ? イーグル?」

 

 ついさっきそこに居たはずのメカクレイーグルボーイが居ない。

 

「え、ちょっと待って何処行った? 俺今際の際なんだろ? 一人寂しく死ぬつもりで居たけど折角出てきたなら出てこいよ! オーイ! ワブゥ!?」

 

 また強風が、倒れる。ていうか転がる転がる!! 

 

 え、なんなの? ここイーグルの心証空間的な奴だよな? 

 風強い!! 

 

「ウブブブ………収まった。まったくなんなんだ、よ?」

 

 ボサボサの髪をならしながら目を開けるとそこにはこれまた不思議な感じで立っている真っ白なドアがあった。

 

「電脳世界に出てきたのに似てるな………入れってことだよな?」

 

 ………他にやることないし。

 イーグルが用意したのか? わからん。

 

 考えても仕方ないし、何もやることないから恐る恐る開けて見ることにした。

 

「おー?」

 

 開けた先は無機質で薄暗い廊下だった。

 ホラーゲームの舞台になりそうで、廊下の先にはまた扉がある。

 

 バタン! 

 

「ウヒィ!!」

 

 おいやめろ! 独りでにドア閉まるな! てかドアなくなってるし! 俺怖いの駄目なんですけどイーグルさん!? 

 

 ………進むしかないよなぁ。

 死ぬ最後がホラゲVR体験なんて嫌すぎるぞ。

 

 とりあえず開けてみよう。ホラゲの可能性を捨てきれずゆーっくりと開けてみる。

 

「あっ」

 

 そこには、俺が居た。

 

 まだ2桁の歳も行ってない幼い俺が緑色の液体が入ったカプセル入っていた。

 

 なんか凄い、不思議な感じだが。これは俺自身だと理解できた。

 

「死んでるみたいだな………」

 

 自分のことを棚にあげてるとドアが開いた。入ってきたのは今より少し若い御厨さんだった。

 

 御厨さんは俺に気づくことなく幼い俺のカプセルに備え付けられたコンソールを操作する。

 

『これで覚醒するはず。ファクター・コードも正常に作動、心機能も安定している………もうすぐ、もうすぐよ。もうすぐ帰ってくる』

 

 苦悶と葛藤、そして願いを滲ませながら御厨さんがカプセルにすがり付いた

 

『お願い………帰ってきて、帰ってきて………お願い………疾風………』

 

 涙を流しながらカプセルにすがり付く御厨さん。

 

 景色が流転し、頭と視界に映像が流れ込む。

 

 これは、俺の記憶? 

 

 ファクター・コードによって書き換えられ、封じられた俺の記憶。

 俺が御厨疾風として過ごしていた記憶。

 

 息子として過ごし、息子として愛された。

 

 最初は息子が戻ってきたと喜んだ。

 たとえ記憶がなくても戻ってきてくれたと、仮初めの家族として過ごしていた。

 

 何度も俺の名前を呼ぶ御厨さん、だが記憶が欠如していた不完全な俺は彼女の期待に応えることができなかった。

 

 満ち足りない生活は次第にズレが生じてきて、そして………

 

 場面が変わり、目の前に現れたそれにギョッとした。

 御厨さんが幼い俺にまたがり首を閉めていた。

 

『疾風じゃない。疾風じゃない。あなたは疾風じゃない。やめて、そんな目で見ないで! あなたは疾風じゃない!!』

 

 泣きながら呪詛のように繰り返す御厨さんと息が出来ず苦しむ幼い俺。

 

「御厨さん! うおっ!?」

 

 止めなければ! と反射的に動いたが俺の身体は御厨さんの身体をすり抜けた。

 

 飽くまで映像、俺は俯瞰してるだけの外野だから触れられない。

 このままでは駄目だと焦っていると、母さんが飛び出して御厨さんの手を掴んだ。

 

『何してるの麻美ちゃん! やめなさい!』

『離して! この子は疾風じゃないの!』

『やめなさいってば!!』

 

 力付くで御厨さんを剥がす母さんは幼い俺を見て言葉を失う。

 

 無理もない、事故で失くした筈の友人の息子と瓜二つの子供がそこにいたのだから。

 

『麻美ちゃん。これどういうことなの』

『う、うぅぅぅ………』

 

 問い掛ける母さんと、泣き出す御厨さん。

 

 時間が流れる。御厨さんの元を去り。記憶を調整され、レーデルハイトの子供となった俺は楓やグレイ兄。母さんと父さんと過ごしている。

 

『疾風兄ー遊ぼー!』

『何して遊ぶ?』

『おままごと! 私がお母さんで疾風兄がお父さんね』

『楓、たまにはグレイ兄がお父さんでも』

『やー!』

『早い! 早いよ妹!』

『また速攻で振られたのかグレイ』

『学校でモテてるのに楓のハートはキャッチ出来ないのね』

『ハハハハハ』

 

 なんら変わらない。何処にでもあるような日常風景。

 だけど本来俺はここにいなくて。なんの悪戯か家族として迎えられた。

 グレイ兄はこの時から優しくて頼りになるお兄ちゃんだったけど。俺のこと知ってたんだよな………

 

 また場面は変わる。

 

 日本離れした大豪邸だ。

 忘れるはずもない。此処は俺が初めてオルコット邸に来たとき。

 

 見たことない豪邸に圧倒されているのか。俺は父さんの影に隠れている。

 

『ソフィアー久しぶりー』

『ごきげんよう。相変わらずフワフワした国家代表だこと』

『あら堅苦しいのがお好みかしら?』

『いいえ。今はプライベートですもの』

 

 ソフィアさんはなんというか。クールなセシリアって感じだったなぁ。ほんと成長したセシリアって感じで。

 あと少し怖いんだよな。クール過ぎるというか。

 

『よおソーレン。なんかまた痩せたかお前? 鍛えないとやってられねえぞ。夜の方も』

『あはは。ほんと君は豪快だね』

 

 ソーレンさんはほんとなんか、ナヨッとした感じの優男って感じだった。

 超クールなソフィアさんと夫婦仲上手く行ってるのかわからんかった。

 

 そして。

 

『セシリア』

『はいお母様。初めまして。アリア・レーデルハイト様。剣司・レーデルハイト様。オルコット家長女、セシリア・オルコットでございます。以後、宜しくお願いいたしますわ』

 

 これがセシリアとの初対面だった。

 幼い頃から完成していて。おとぎ話のお姫様が飛び出したようで。

 とてもキラキラしてて。思わず。

 

『わぁ………』

 

 と声が漏れてしまっていた。

 

 仕方ないじゃん。本当に綺麗だったんだから。

 もしかしたら俺はこの時既にセシリアに惚れてたのかな。

 

『ほら疾風。あんたも早く挨拶なさい』

『え、でも………その、僕は………』

『………なんですの貴方は』

『え?』

『男の子なのに一丁前に挨拶も出来ないなんて。情けないですわね! わたくし弱い男は嫌いですの! 鍛えてあげますわ!』

『え、ええ。嫌だ!』

『あ、待ちなさい!』

 

 ああ、こんなこともあった。

 あの時のセシリア怖くてな。庭園の中で鬼ごっこが始まって。速攻捕まったんだよな。そして泣かされて。

 

 小さい頃のセシリアは気品はあったが同時にワンパクというか。礼儀正しい暴君って感じで毎日追いかけ回されたっけ。

 

 それから追いかけられたり無理やり付き合わされたり。ことあるごとに勝負に負けて罰ゲームやらされたりしてたか。

 

『わたくし決めましたわ、いつかISに乗って必ずこの舞台に出てみせますわ!』

『約束して、いつか私と一緒に出場しましょう!』

 

 第一回モンド・グロッソで約束して。

 

 そしてしばらくたって。ソフィアさんとソーレンさんが電車の事故でなくなって二人で大泣きして。

 

『俺は強くなる。セシリアちゃんに負けないぐらいに、ううん。セシリアを守れるぐらい、強くなってみせる!!』

 

 凄い大きな啖呵を切って。

 

『あ、貴方! そんなところでなにをしていますの!?』

『答えなさい! 返答次第では容赦致しませんことよ!』

 

 IS学園で再開して。間違えて撃たれそうになったり。

 

 ナヨった俺の背中を蹴り飛ばしてくれたり。

 

 ISを動かして、IS学園に転校して………

 

 福音事件のあとまた背中を叩かれたり。

 夏休みはほんとドタバタして。

 学園祭でのご奉仕喫茶。

 キャノンボール・ファストでセシリアへの好意を自覚したり

 タッグマッチ・トーナメントで破局寸前になったり。

 ハッキング事件で偽物の俺からセシリアを取り戻したり。

 

 そして………初めてのデートでセシリアと想いを伝えあった。

 

 本当に色んなことがあった。

 

 セシリアとの思い出が目まぐるしく頭に浮かんだ。

 

 走馬灯とはこういうことを言うんだろうな。

 

 ………もうこんなことが出来ないと思うと。いまさらながら胸が痛んだ。

 

「ん?」

 

 ふと。目の前に扉が二つあった。

 

「俺の記憶体験ツアーはこれで終わりじゃないのか?」

 

 言っても誰も答えてくれない。

 居なくなったイーグルの仕業と見て間違いないだろうが。

 こんなことさせて何がしたいのだろう? 

 

 他に取れる道はないと。俺は扉を開ける。

 

 

 

『やったぞセシリア! 国家代表になれた!』

『おめでとう疾風!』

「は?」

 

 扉を開けた先にはアリーナで抱き合う俺とセシリアが居た。

 

 国家代表になれたと嬉しさを隠しきれない俺に惜しみ無い拍手を贈る観客。そして遅れて一夏たちが俺を祝福するために集まってきた。

 

「なに、これ」

 

 こんな光景知らない。俺の記憶じゃない。

 

 俺は思わず後退りすると、また景色が変わった。

 

 何処かの教会、結婚式場だった。

 純白の教会で、髪を整えタキシード姿の俺と、ウェディングドレス姿のセシリアが居た。

 

 二人はとても幸せそうで。これからの人生が幸福であると疑わずに誓いを立てようとしていた。

 

「やめろ………」

 

 胸が張り裂けるように痛い。

 

 逃げるように後ろを向くとまた景色が変わっていた。

 

 豪邸の一室で小さな子供たちに本を読み聞かせる少し大人びたセシリアと。髪を伸ばし、セシリアから貰った髪飾りで結んでいる俺が子供と戯れていた。

 

『はい、今日はここまで。続きは明日ね』

『えーお母様! これからが面白いのに!!』

『でも遅くなるとチェルシーが怒るぞー。ここからは大人の時間だ』

『ずるいずるい! お父様とお母様だけで楽しいことして!』

 

「やめろ、やめろっ………」

 

 輝かしい光景だ。幸せな光景だ。喜ぶべき光景だ。

 

 なのに。俺は目の前の景色を拒絶した。

 

 だって。こんな光景。もう俺には巡り合えないから。

 どうあがいたって見れない。

 

 俺が捨てた未来なのだから。

 

 

 

 さっき選んだ扉とは違う扉が現れる。

 

 こんな光景から一秒でも抜け出したくて俺は無我夢中でドアを開けて絶句した。

 

「うっ………」

 

 そこには、棺の中で横たわる俺の姿があった。

 

 振り替えると。喪に服しているセシリアやみんなの姿があった。

 

 直ぐに理解した。

 

 これは俺が選んだ未来だと。

 

「やめろ!!」

 

 見たくないと目を塞いでも見えてしまう。

 耳を塞いでもみんなの啜り泣く声が聞こえてしまう。

 

 わかってた。わかっていた。

 だけど。いざこうもむざむざ見せられると。

 胸が破裂しそうになる。

 

 たまらなくなって走る。

 真っ暗な中を走って、走って、走り続けて。

 

 また目の前にドアがあったから転がり込むように潜り抜け、そのまま倒れ込む。

 

「ハァハァハァハァハァハァ………」

 

 息が上がる。肺が苦しい。胸が痛い。

 

 訪れるはずのない幸せな未来。

 訪れる幸せじゃない未来。

 

 それを立て続けに見せつけられて、メンタルが崩れかかってしまった。

 

「ハァ………はぁ………」

 

 なんだ。なんか騒がしいな………

 

 ぼやけた目を開くと………

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ぐぅっ! 近づけねえ!」

「絢爛舞踏を発動してもこの状況では!」

「一夏、箒! 前に出過ぎないで!」

「いくら零落白夜があっても、これでは削り殺される!」

「もう! 落としても落としてもキリがない!」

「このままではセシリア様が敵の手に!」

「その前に、セシリアが持つかどうか………!」

 

 圧倒的弾幕を前に一夏たちは防戦一方を強いられていた。

 前に出ようとするもレーザーで押し返される。

 

 もう既に絢爛舞踏を発動し各々のシールドは回復した。

 最初に提案された零落白夜と絢爛舞踏によるゴリ押しも突出した2機にクリア・ティアーズとワルキューレからの集中弾幕射撃により弾かれた。

 

 いまはアウトレンジでの撃ち合いとなるが、そこは相手の独壇場。

 

 ブルー・ブラッド・ブルーにより向上したBT操作能力によるビット射撃。偏光制御射撃(フレキシブル)とまでは行かないが。一部レーザーに誘導性を持たせた物がチラホラある。

 

 セシリアを取り戻すために適正の高いものを寄越したのだろう。

 

 それに加えて。

 

「申し訳ありませんが、死んでもらいます!」

「君はこの世界の害虫だ。摘み取らせてもらう!」

「くそっ!」

 

 タイの代表候補生、ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーのドゥルガー・シン。

 オランダの代表候補生、ロランツィーネ・ローランディフィルネィのオーランディ・ブルーム。

 

 敵に洗脳された二機の代表候補生ISの突破力がジリジリと専用機組を追い詰めていく。

 

「みんな! 大丈夫!?」

「お姉ちゃん!」

 

 高機動パッケージを装備した楯無が前線に参加するが。

 光明が見えたと思いたいが………

 

「状況は!?」

「ワルキューレを30機ほど落としましたが。敵IS20機はいまだ健在」

「セシリアちゃんは!」

「未だ敵のコントロール下に。だけど」

「うっ、うぅぅ!!」

 

 セシリアは未だVTシステムの支配下にあり、敵の猛攻も相まって未だ手が出せずにいる。

 

 だがセシリアとドミネイト・ブルー・ティアーズはブルー・ブラッド・ブルーに対しても攻撃を行っていた。

 

『なにしてるのあなたたち! さっさとセシリアを回収なさい!』

「駄目です! こっちにも攻撃をしてきて手が出せません!」

「ビットを落とそうにも当たらなくて!」

『泣き言はあと! なんとしてでも回収なさい!!』

 

 幸か不幸か、ブルー・ティアーズが発動しているVTシステムはフランチェスカの物と同等の物で敵も手出し出来ない。

 

 本来ならVTシステムでセシリアの意識を落とす筈だったのだが。セシリアの強人的な精神力とファクター・コードのシンクロ、そして束からの干渉も合わさって抵抗していた。

 結果的に廃人になるのを免れているが、それも長くなく、時間の問題であることは明らかだった。

 

「………みんな。撤退も視野にいれるわよ」

「何を言ってるのお姉ちゃん!?」

「疾風様を無駄死にさせるつもりですか!? そんなこと出来ません! 疾風様の最後の願いなんです!!」

「あなたたちを死なせる訳には行かないわ。増援も私以外来られない。箒ちゃん、いえ篠ノ之博士。紅椿がもう一度絢爛舞踏を使える可能性はありますか」

『なにナチュラルにお伺いたててんのさ………そうだね。今の箒ちゃんのポテンシャルならあと一回発動できれば上々かな』

「ありがとうございます」

『別に君の為じゃない』

 

 ひねくれにフッと笑みを浮かべ直ぐに引き締める。

 持久戦は悪手。ならば短期決戦でセシリアを奪還。

 接触人員を確保し、それを全力で防御する。

 

「私がミストルテインの槍で風穴を開ける。その隙に全火力を放出後、全員でセシリアちゃんを囲むわよ………それで出来なかったら撤退する、いいわね」

「………はい」

「了解」

 

 これ以上戦闘継続が出来ないことは自分たちもわかっている。

 唇を切る勢いで噛み締めながら決意を新たにする。

 

「箒ちゃんは後方で絢爛舞踏発動に集中。頼むわよ」

「はい!」

「ミストルテインの槍! マテリアライズ!」

「須佐之男起動! 雷式・天羽々矢!」

「山嵐、演算開始!!」

 

 だから、これが最後のチャンス。

 

 持てる全てを出し切る!! 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 なんでセシリアが苦しんでる? 

 なんでみんなが戦っている? 

 

 助けた筈だろ、俺が。

 

「これは何? また映像か?」

「いいや。これはリアルタイムだ」

 

 傍らに立つイーグルが冷徹に真実を放つ。

 

「フランチェスカ・ルクナバルトの最後の手だ。ドミネイト・ブルー・ティアーズに組み込まれたVTシステムを発動したんだ。セシリア嬢は抵抗しているが、いずれ限界が来る」

「限界って………死ぬのか?」

「最悪の場合な」

 

 身体から力が抜けて倒れそうになるところをなんとか踏みとどまる。

 

「なんでこんなの見せるんだよ………なんでこんなの見せるんだよ! 俺はこんなの見たくない!! なんでセシリアがこんな目に遭う! セシリアがなにしたんだよ! 俺が、俺が助け出したのに、なんでこんな!!」

「俺ではない。これは全てマスターが望んだこと。だから俺が見せたんだ」

「はぁ?」

 

 俺が望んだだと? 

 この惨状を見ることが? 

 

「ふざけるなよ。誰がこんなもの好きで見たいと思うんだよ!」

「そんなこと言ってもな。俺はマスターの深層心理を具現化させただけだ」

「嘘をつくな!!」

 

 イーグルの肩を強く掴んで睨み付ける。

 前髪に隠された空色の目は揺らぐことなく俺を写している。

 

「幸せな筈の未来も! そのあとの現実も! 今起こってることも。見たって意味なんてないだろうが! 何も出来ない! 何一つ出来やしない!! だって!!」

 

 俺はもう死んでいるから………

 

「だがこれがマスターが選んだ選択だ」

「わかってるよ!! だけどこれしか出来なかった! 助ける手段がないから! 怖くて、辛くて、だけどセシリアの方がもっと怖くて辛いから! あいつが泣いてたから! あいつのために、俺自身の為に、助けたかったから………だから必死に押し込んだんだ。怖いなんて、言ってる余裕なんてなかったから」

 

 一度でも受け入れたら飲まれそうだったから。

 

 恐怖をバネにして、ただひたすらに痛みを押し殺して………

 

 でも全部無駄に終わったのか? 

 全部かなぐり捨てた結果がこれなのか。

 

 身体から力が抜けてへたり込む。

 

 映像が消えて、元の白い大地と青い空。

 そして風の音だけが残った。

 

 黙り込む俺に何を言うわけでもなくイーグルは立っていた。

 まるで何かを待つように、じっと静かに見ていた。

 

「………………一緒にいたい」

「誰と」

「セシリアと、一緒にいたい。笑って、時には喧嘩をして、そしてまた笑って。それだけで良かったのに………それが出来ないと受け入れるのが嫌だった」

 

 だから精一杯強がったんだ。

 

「生きていたい………死にたくなかった。死にたくなかったよぉ………うあぁぁぁ」

 

 大粒の涙が視界を滲ませる。

 声を出して泣いたのなんて小さい頃以来だった。

 

「あぁぁぁぁーー」

 

 情けない。死に際、死んだあとに泣き崩れるなんてカッコ悪い。

 カッコ悪過ぎる。

 

 だけど泣きたかった。辛かった。

 

 何よりも、セシリアを助けられなかった事実が一番辛くて辛くて。

 

 いつまで泣いただろう。

 涙は依然として枯れることなく白色の地面を濡らしていた。

 

「このままでいいのか」

「………」

「このままでいいのか。セシリア・オルコットは今も苦しんでいる。死んだぐらいでお前は諦めがつくのか。何も出来ないと現実だけを見て、それで諦められるのか」

「………」

「お前は疾風・レーデルハイトと共にいれないセシリア・オルコットを受け入れるのか」

「………………………嫌だ」

 

 嫌だ、ああ嫌だ。

 

 だって、だって。

 

「セシリアが、幸せになれない」

 

 俺が死んだ。

 たとえ助けられたとしても。セシリアは俺を殺したことをずっと引きずる。

 

 たとえセシリアがこれから生きられたとしても。その後悔がセシリアを苦しめるだろう。

 

 俺がセシリアに重荷を作ってしまった。

 

「お前は何を望む」

「セシリアと生きていきたい! セシリアと、みんなと生きたい。一緒にISを動かして、なんでもない日々を過ごしたい!」

 

 イーグルの問いかけに考えるまもなく答えを出せた。

 

 いや違う。ずっと心の奥底に封じていた。

 

 もう出来ないから。

 

 どうしようもないと自分を無理やり納得させて。

 本当の望みを隠していた。

 

「セシリアと一緒にいたい! だって俺はまだ、あいつと世界を見ていない!!」

「ならどうする」

「セシリアを助けたい! あいつをあのクソババアから奪い取る! あいつに笑顔でいて欲しい! だから、助けたい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺はセシリアの隣に居たい!!!」

 

 涙が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時。白色の地面が変わった。

 

「えっ?」

 

 涙が落ちたところから一気に草原が広がった。

 

 乾きに乾ききった白色の大地が、一瞬で青々とした緑に染まった。

 

 風になびく草原が心地よく五感を刺激した。

 

「やっと言ってくれたな。まったく遅いんだよマスターは!」

「うおっ!」

 

 イーグルが風に包まれた。

 やがて風が吹き飛び。

 

 そこには少年ではなく。見上げるほど大きい空色の翼を持った巨大な鷲の姿があった。

 

「お前は」

 

 まだ名無しの頃。スカイブルー・イーグルに乗った時に見た。

 

 快晴の空を雄々しく羽ばたく。空色の鷲だった。

 

「イーグル、だよな?」

「ああそうだ。これが俺の本来の姿って奴だ。お前がまだISに乗れない頃から育ててくれた、俺の勇姿って奴だ」

「乗れない頃って」

「ずっと世話してくれてただろ? 俺がまだ打鉄に居たころから」

「え、え? それって」

 

 レーデルハイト工業の地下施設で。ずっと動くことのない打鉄を弄って、何度も試した頃から? 

 

「届いてたぜ。お前の言葉は。でもお前のファクター・コードが発動しないとリンクできないからな。IS学園で諦められた時はどうしようかと思った。ほんと、セシリア嬢には感謝だな」

「は、ハハハ………」

 

 無駄じゃなかったんだ。

 

 あの時、諦めきれずに向き合い続けたことは。

 

 決して無駄ではなかったんだ! 

 

「嬉しそうな顔して」

「お前こそ」

 

 巨大な大鷲となったイーグルは誇らし気に俺を見下ろしていた。

 

 イーグルの言っていたことは間違いではなかった。

 

 セシリアとの思い出が走ったのも。

 幸福な未来を見たのも。

 後悔の先の未来を見たのも。

 

 そして、今の現状を目にしたのも。

 

 認めたくなかったから。

 諦めたくなかったから。

 

 死んだとしても、それでも生きていたいと思ったから! 

 

「難しく考えるのも素直じゃないのもマスターの悪い癖だな。もっと欲望に正直になれよ」

「お前だって素直じゃないだろ。なんでストレートに言ってくれなかった」

「マスター自身が強く願わなきゃ意味がなかったんだ。そうでもしないとこの状況は覆らねえ。さあグズグズしてる暇はねえ。最後の通過儀礼と行こうか」

 

 風が強くなる。

 暴風とも言える強さだが。その強さがいまは頼もしかった。

 

 暴風が吹き荒れるなか。スカイブルー・イーグルはその荘厳な見た目に違わぬ威厳に満ちた声で問いかけた。

 

「汝、力を欲するか」

「欲する! 誰よりも強い力を! 誰にも負けない強い翼を!!」

「なんのために欲する」

「セシリアを助けるために! セシリアと世界を見るために!! あいつの隣に立つために!!!」

 

 更に風が強くなる。

 何にも負けない。何にも止めることは出来ない。

 

 そんな風が吹き荒れる。

 

「ならこんなとこで立ち止まってられないな! 行くぞ、我がマスター!!」

「ああ、行こう!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「これでも駄目なの!?」

「くそっ!!」

 

 作戦は失敗した。

 

 ミストルテインの槍、雷式・天羽々矢、山嵐は敵の攻撃と、自らを盾にした肉壁による防がれ。敵のクリア・ティアーズ5機の戦闘不能という結果に落ち着いた。

 

 そして零落白夜と絢爛舞踏の重ね技も。 ワルキューレの自爆特攻の前に吹き飛ばされた。

 

「敵増援! 上空からコンテナ! ワルキューレ、数40機!」

「どんだけ作ってるのよ!!」

 

 毒ずく力はあるが、圧倒的物量差にこの短時間でISと操縦者ともに疲弊している。

 

 更に悪夢は続く。

 

『もう少し、もう少しで綺麗なあなたに戻るわぁ』

「う、あぁ………」

『セシリアちゃんのVTシステム侵食率増加! でかいのが来る!』

 

 暴れまわっていたレーザービットが統率の取れた物に変わり。スターライト・ブレイザーとビットのレーザーが収束する。

 

「アクセラレーター、最大出力」

「さあ! この一撃で眠ると良い!」

「ハハハハ! これで死ねぇ!」

 

 ドゥルガー・シンの収束砲撃。

 オーランディ・ブルームの花弁ユニット【フラワーレイ】。

 そして残ったクリア・ティアーズとワルキューレが一斉射撃の構えを取る。

 

 これを防ぐ手だてはない。

 一夏が霞衣のシールド、菖浦が須佐之男で防御体勢を取るもとても受けきれるものではない。

 

 フランチェスカの歪んだ笑みが深くなる。

 

『これで終わりよ! 焼き払え!!』

 

 膨大な光が放たれる。

 光の濁流と化したそれは回避も防御も意味をなさなかった。

 

 誰もが終わりを確信した。

 

 その時。

 

「え、海中からIS反応? 物凄い速さで」

「この反応は!?」

 

 海中の抵抗を物ともせず海から舞い上がったのは。

 

 原型を残さず、今にも崩壊しそうな空色のISと。

 

「疾風!?」

「疾風様!!」 

 

 死んだ筈の疾風・レーデルハイトの姿だった。

 

 疾風が右手をかざすと、巨大な円球と化したプラズマ・フィールドが展開された。

 

 プラズマ・フィールドに次々とレーザーが突き刺さるが、それを物ともせず。それどころか。

 

「受けたレーザーから霧散した粒子が、スカイブルー・イーグルを中心に集まっている?」

「なんだこの表示? 白式とスカイブルー・イーグルのダイレクトコンタクトだって?」

 

 何が起きてるのか、理解が決まらず。敵も味方もただ目の前の光景に圧倒された。

 

「………疾風」

 

 たった1人を除いて。

 

《外部エネルギー供給完了。白式とのリンク確立。生体再生機能をダウンロード。プログラムスタート》

 

 血だらけの肉体が修復されていく。

 血管は繋ぎ直され、折れた骨が繋ぎ合わさる。

 

《取得経験値解放。機体再構築マッピング確立》

 

 砕けた装甲が粒子化し、光が強くなり。プラズマ・フィールドは巨大な光球に変化。

 まるで産声を待つ卵のように──

 

 

 

第二次形態移行(セカンド・シフト)・ブートアップ》

「来い!!」

 

 

 

 

 

「スカイブルー・イーグル・ヴァリアンサー!!」

 

 

 

 

 

 叫びと共に光が爆発し、空に放たれた余剰エネルギーが雨雲を吹き飛ばした。

 

 敵は衝撃波によって後退り。

 一夏たちはその姿を目の当たりにする。

 

 晴らされた空からの光に照らされた青い稲妻を迸らせるインフィニット・ストラトスを。

 

 更に鮮やかになった空色と白のコントラストは、所々金色のエングレービングが。

 華奢だった装甲はシャープさを残しながら重厚感を見せ。

 

 両肩には新たにシールドユニット。

 首もとにはマフラーのような放熱策が揺らめき。

 8枚の独立した板状のスラスターユニットが翼のように連なっていた。

 

 そしてISだけではなく。本人にも変化があった。

 

 瞳には完全覚醒したファクター・コードの空色の虹彩が光り。

 再生治療の影響か、はたまたイーグルの粋な計らいか。彼の後ろ髪が肩まで伸びていた。

 

 おもむろに髪を束ね、右腕につけていたヘアゴムで縛り上げる。

 たなびく一つ結びに、飾り石が輝いていた。

 

 確かな意思と、願いを込めて。

 

 彼は再び舞い戻った。

 

第二次形態移行(セカンド・シフト)完了。システム・オールグリーン。さあ、ぶちかませ!》

「ああ! 反撃開始だっ!!」

 

 

 

 






 いやったああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 どうも皆さん。長い鬱展開からようやく解放された無敵の男。ブレイブです。
 やっと!やっと書けました!スカイブルー・イーグルの第二次形態移行(セカンド・シフト)!!
 こっから文字通り反撃開始です!!よっしゃぁぁぁ!!

 ええ、本気を出しました。
 一度死んでますからね、復活がチャチな物にならないように拘りに拘りました。
 ………その結果文字数驚異の2万文字オーバーになりました。半分に分けて2話作れるレベルですよ!ほんとやっちまいましたね。
 ただこれ以上話数引き伸ばしたくなかったのです。

 ですがまだ止まりませんよ。ここからが本番ですからね!!

 次回!新たなるIS。スカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーの大暴れっぷりをご覧あれ!!

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