IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第138話【少年の世界演説】

 

 秋の涼しげな空気を感じながら疾風の友人である柴田はケーキの箱を片手に小走りで歩いていた。

 時々辺りを注意深く見ながらも目的地につき直ぐ様インターホンを押した。

 

「おういらっしゃい。どうぞ」

「お邪魔しまーす。あ、これうちのケーキ」

「Fooooooo!! 持つべきはケーキ屋の友人だなぁ!」

 

 同じく親友である村上の屈託ない笑顔に向かわれながら家に入り、ようやく柴田は落ち着くことが出来た。

 

「悪いな行きなり来て。今日親どっちもいなくて。なんか一人が心細くてさ」

「仕方ねえよ今の世の中じゃ。母ちゃーん! 柴田来た!」

「はいはいはい。あら柴田くんいらっしゃい。もしかしてそれリップトリックのケーキ? あらやだ、お代は大丈夫?」

「大丈夫です。売れ残りを見繕ってきたので」

「そう? いつもありがとね。ほら綺羅斗、あんたお礼言ったの? 駄目よー貰えるのが当たり前と思うのは………」

「あーあーわかったからわかったから。というか友達の前で綺羅斗言うなって言ってるだろうが!」

「なによー、良い名前なのにー」

 

 ブー垂れながらキッチンに引っ込んだ村上のお母さん。

 少し小太りで美人というわけではないが、何処にでも居る安心感を持つ村上の母に対し柴田は好感を持っている。

 村上曰くただのうるさい母ちゃんだと言ってるが。このご時世でそれはとても恵まれたものである。

 

 今の場合は特に………

 

 何時もは部屋で速攻ISVSをやる二人だが。今日はそれとなしにテレビをつけた。

 

『ブルー・ブラッド・ブルーと名乗ったテロ組織の活動が停止してから早くも3日経ちました。各国は早急な建て直しとさらなる襲撃に対する対応を迫られており。今も緊張が続いている状態です』

「連日連夜ブルーなんちゃらのニュース。まいっちまうよな」

「しょうがないよ。世界規模の同時多発テロ。有史以来こんなの初めてなんだからさ」

 

 いつも通り学校で退屈な授業を受ける代わり映えしない毎日。

 帰ったら何をやろうかなどと頭に浮かべていた矢先に自国のテロである。

 

 直接的な被害はないとはいえ目先でそれが起こったという事実は社会に、そして何も知らない子供たちにも影響を与えた。

 

 現イギリス代表を筆頭とした組織の演説。

 彼女のとち狂っている思想を見せられた人たちは、はっきり言ってどう反応して良いかわからなかった。

 

 それから一週間、各地の代表や代表候補生がテロに参加してるというニュース。その中には現日本代表、楠木麗が暴れまわったという報道すらあった。

 

 更にブルー・ブラッドが声明を発表してからしばらくして日常生活も何処か異常を見せ始めた。

 ブルー・ブラッドに便乗して女性権利団体が幅を聞かせまくって日夜デモ活動をしてるとか。

 行き過ぎた恐喝まがいなことをして捕まった女の人とか。冤罪未遂事件が立て続けに起こったりとか。

 学校の一部生徒が横暴になったとか。

 

 まるでIS黎明期のような女尊男卑思想社会に巻き戻ってるような不気味さを感じられた。

 

「疾風の奴、大丈夫かな」

「………」

 

 何よりも心配なのは親友である疾風・レーデルハイトのこと。

 

 声明を発表する少し前。レーデルハイト工業の実験試験施設が蒸発した。

 死傷者も出した未曾有の大事件はブルー・ブラッドの恐ろしさを知らしめるのに充分だった。 

 

 何度も何度も連絡したが応答どころか既読すらつかず。

 なにか事情があって連絡できないのか。生きているのか死んでいるのかすら分からない状態だった。

 

「はい柴田くんが持ってきたケーキ。なーに二人とも。学生らしくなくニュースなんて見て」

「ニュースなんかどうでもいいんだよ。疾風が心配でさ」

「レーデルハイトくん?」

「はい。連絡がつかなくて」

「そうねぇ。でも便りがないのは良い便りって言うし。案外元気にしてるかもよ?」

 

 そういう考えもあるか。

 あるか分からないが。それはそれで微かな希望が出た気がした二人は持ってきたケーキにフォークを刺し入れた。

 

「あの、おばさんはどう思ってるんですか? ブルー・ブラッド・ブルーのこと」

「ああ、あれ? いやほんと迷惑だわ、勘弁してほしいって感じ。これほんと美味しいわね」

 

 村上のお母さんはリップトリックのケーキに舌鼓を打ちながらニュースを眺める。

 ニュースにはテロ活動の詳細なビデオが流されていた

 

「世の中の女性のために女性至上世界を作りますーなんておべっかかいてるけどね。ああいうテロ組織って連中は自分の思い通りにならないから自棄起こして暴れてるだけなのよ。そんな大人になりきれない大人たちが作る世界なんてろくでもないに決まってるわ」

「ばっさり言うな母ちゃん」

「そりゃそうよ。私は今の生活で満足してるの。あんたがいて、お父さんが居て。当たり前の生活が出来るだけでね。それより怖いのはこの先よ」

「先、ですか」

「そっ。もしテロ組織が世界征服なんてしたら大変だし。仮にテロ組織が負けたとしても大変よー。だってあんなわかりやすい女尊男卑の体現したのが負けたら。今度は無関係の女性に対する当たりが強くなるわ。女性は等しく悪者だーって。どっちに転んでも最悪なのよ、これは」

「あ、頭悪いはずの母ちゃんが頭良いこと言ってる!? なんか悪いものでも食べイッデッ!」

「その頭悪い女の息子だよあんたは。あーやだやだ、我が儘なガキンチョなんてうちの息子だけで充分。ごちそうさま柴田くん、美味しかったわ」

 

 いつの間にか食べ終わっていたケーキを片した村上母は台所に消えていった。

 拳骨を食らった村上は母親を睨みながら怨み節を吐いた。

 

「いってー。普通友達の前で拳骨するか? ブルーなんちゃらより母ちゃんの方がよっぽど凶暴だぜ」

「自業自得だと思う」

「味方がいねぇ………」

 

 ぶーたれる親友をおかしく思いながらも柴田は先程のことを反芻していた。

 

 ブルー・ブラッド・ブルーに対する認識は人それぞれであれど、大多数は村上の母親と同じ考えだ。

 御大層な大義名分をこさえようとテロはテロ。暴力という手段を取った以上、それは支持される物ではなく忌避されるものなのだ。

 

 むしろ一部賛同して騒いでる奴らがおかしいのだが。賛同してる人が居るというのが、ISが生まれてからの女性優遇社会の闇なのだろう。

 

『ブルー・ブラッド・ブルーが起こしたテロの爪痕は深く。いまも各国から損失したISコアの行方を捜索中で………………速報です。たった今、国立IS高等専門学園から声明が発表されるという情報が入りました。代表は日本代表候補生にして世界で2番目の男性IS操縦者、疾風・レーデルハイトさんとのことです』

「「ぶふっ!?」」

 

 突然名前と顔写真が出た音信不通の親友が出て揃ってお茶を吹き出してしまった。

 

「え、疾風!? 疾風ナンデ!? 母ちゃーん! 疾風がテレビに! テレビに出たー!!」

 

 ドタドタと台所に向かった村上に見向きもせず柴田はテレビに釘付けになった。

 画面に写された、会わない間に髪が伸びた幼馴染み。

 

 何かが起こる。

 漠然とした嵐の予感を感じてしまったのだ。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 あの時、モンド・グロッソに夢を見出だしていた俺が今の俺を見たらどう思うだろう。

 

 ISを動かせないという現実に直面して折れていた俺が今の俺を見たらどう思うだろう。

 あのとき打鉄の前で項垂れていた俺に今こうなってこうしてますよと伝えたらどうなるだろう。

 間違いなく嘘つきも大概にしろって言われる。それか別人ですと答えたな。当たり前だろ、こんなドでかいことをするなんて考えられるわけがない。

 

 目の前には無数のカメラ。視線の先には一夏たちや先生、母さんと父さん。

 色々仕出かしてるけど。この人が居なければここまで行けなかった、ある意味恩人である篠ノ之博士。俺の本当の母親とも言うべき人である御厨所長。

 

 そして、あの時の演説と同じように心配そうな顔をするセシリア 

 

 これから行うことがどれ程大きいか分かっていて今さら不安になった。こんなガキんちょが出来るのかと。人々に伝えることが出来るのかと。

 

 でも………

 セシリアが見ている。

 俺を見てくれている。

 ならやるしかない。あいつの前で格好悪い姿を見せるわけには行かないからな! 

 

 カメラマンのゴーサインと共に俺は声を吐き出した。

 

「全国の皆様、こんにちは。疾風・レーデルハイトと申します。いま私はIS学園の代表として皆様の前に立っています。これから話す事はIS学園の上層部とIS学園に在中する専用機所有の代表候補生12名の総意であると認識して頂きたい。

 なお、一般生徒に関してはこれから話すことは何も知りません。飽くまで我々だけの意思であることを留意して頂きたいと思います。若輩者の青二才の身でここまで大規模なことをするのはなにぶん初めてでありますが。しばしご清聴頂きたく存じあげます」

 

 しれっと一般生徒を部外者扱いとはなんという強かさだろうかと思う。

 だが言葉として残すことは彼女らを守る武器であり盾にもなる。

 

 一息に発せられた発言にテレビの前の人たちは困惑したことだろう。

 この少年はいきなり何を言っているのだろうかと。

 それと同時にこれから話すことの大きさを否応無しに理解する。そしてそれを語るのがまだ年端もいかない子供であることに驚いていた。

 

「インフィニット・ストラトスが生まれて以来、世界全体で女性の地位向上の流れが広がり、様々な女性支援の動きがありました。これにより様々な社会問題が解決。ISによる超兵器の存在もあり、世界全体の紛争率が大幅に減少したことをご存じの方はいらっしゃると思います。更にホログラム技術、再生医療ナノマシンの発展など、様々なテクノロジーが前進し、人々の暮らしは豊かになりました。

 ですが、世界は少しばかり良くなった影で女尊男卑の風潮が加速。新たなる社会問題や男性に対しての冤罪事件、理不尽な被害が多数発生しました。私も被害を受けた一人でした………画面の前の人々の中にも、そのような被害を受けた人が大勢居ると思います」

 

 思い出すだけでも吐き気のする出来事の数々。

 ISを動かしていない癖に自分が世界の中心に立っているように男を扱き下ろし。

 遊び感覚で男を貶めて悦に浸る。性根の腐った女が多く。瞬く間に男は肩身を狭くする世の中となった。

 

「ですがそれは一つの社会の側面。それだけが世界の全てではありません。ISが生まれて10年。年月が立つに連れその風潮も薄らいで行き、全ての女性が女尊男卑な考えを持っている訳ではなく。男性差別者はIS黎明期と比べて少数派となり治安も良くなりました。

 私はIS学園に入学する時は不安もあり、これから向かう場所が差別意識の巣窟なのではないかと心配していました。ですがそれは間違いでした。IS学園の学友たちは自分や織斑一夏という異分子を受け入れ、共に過ごすことを受け入れ。対等な友人として接してくれました。

 女性優遇社会自体が必ずしも悪ではないということです。ISが生まれて色んな事柄が変わった今の世の中でも、性別が違うもの同士を信頼し尊重し合うことでコミュニティを築く事が出来る。それが絵空事の綺麗事と言う人も居るでしょう。ですがそれを無くすことはあってはならない。男性と女性、どちらが欠けても社会は成り立たない。人の本質は共存であると! 私は、私たちは信じたいと思っております」

 

 世界全ての女性が悪ではない。

 もしそうなら10年前の時点で社会は崩壊し、無秩序が横行していたことだろう。

 うちの親を見ろ。結婚から20年以上たっても新婚真っ青なイチャラブっぷりと来たもんだ! 

 

「それでも。残念なことにそれを認められない者が居ることも事実です。男性を家畜以下と、女性を真の人類と認識し。それが当たり前だと、女性至上世界などという妄言が至高であると声高に放つ者たちがいる。それが今まさに皆さんに恐怖を植え付け、世界に混乱をもたらしたテロリスト。ブルー・ブラッド・ブルー。これから話すことは、彼女たちが行った悪行の数々です」

 

 本題に入ると視聴者は身構える。

 既に動画サイトに上げられたライブ映像の視聴数がとんでもないことになっている。

 いま見てるのは一般人だけでなく。各国の政府官僚。そして国際IS委員会の人達も見ている。

 勿論、ブルー・ブラッド・ブルーも。

 

「まずブルー・ブラッド・ブルーの正体です。フランチェスカ・ルクナバルトが率いるテロ組織はイギリスの一大ISメーカーであるティアーズ・コーポレーションを母体とした組織ですが。その実態は国際テロ組織、亡国機業(ファントム・タスク)の実働部隊の一つだったのです。亡国機業(ファントム・タスク)という名前は一般の方には馴染みのないものですが。その実態は各国のISやISコアを強奪するという、現社会に置いてもっとも危惧されるテロ組織です。我々IS学園も襲撃を受け、今年度のキャノン・ボール・ファストの襲撃も亡国機業(ファントム・タスク)の犯行なのであります」

 

 亡国機業(ファントム・タスク)

 よくわからないがそんなテロ組織が会ったんだと目を白黒する傍ら、各国首脳陣はもう目をひん剥き、一部はこう叫んだという

 このクソガキうちが必死に隠していたことをあけすけもなく言いやがった!! と。

 

 どこの国が強奪されたかなんて言ってないからギリセーフだろ? アウト? まあそこは今どうでもいいわ。というのは我らが最強と最高の幼馴染コンビのコメントである。

 

 テレビの映像が切り替わる。

 そこにはレーデルハイト工業を襲撃するIS部隊が映される。

 

「その亡国機業(ファントム・タスク)の実働組織の一つである彼女らは宣戦布告と同時に各地のISコア保有施設を同時に襲いました。その中にはレーデルハイト工業もありました。彼女らの目的は亡国機業(ファントム・タスク)の主目的であるISコアの強奪だけではく、パイロットごとISを鹵獲することでした。しかしレーデルハイト工業を襲ってきたテロリストの目的は他の施設のようなISコアの強奪ではありませんでした。

 それは一方的な虐殺行為。テロリストはレーデルハイト工業施設に警告無しで無差別攻撃を敢行。この時点で多くの死傷者を出しました。それだけでは飽きたらず。彼女らは衛星兵器を使い、レーデルハイト工業実験施設を跡形もなく消滅させました」

 

 テレビに流された映像には実験施設が天から落ちてきた光によって消滅される瞬間が映される。

 直接死んだ人を見たわけではない。だがあの光の中に人が居たという事実に世界中の人が息を飲んだ。

 

「幸い。施設からの脱出が進んだことで生き残った人たちも居ます。それでも男性6名、女性10名。計16名の死者が出ました………その中には、近々挙式を迎えようとした人もいました。

 何故こうも殺されなければならなかったのか! 彼らが何をしたと言うのか! 彼らはただレーデルハイト工業の利益のため、真面目に働いていただけだったのに!!」

 

 (せき)を切ったように漏れだした怒り。目頭が途端に熱くなる

 

 みんな好い人たちだった。

 お昼ごはんの時におかずをくれたり。新装備の相談で盛り上がったり。職員とテストパイロットという枠組みを超えて家族のような関係を築いていた。

 いつも俺が来ると笑って迎えてくれる人たちだった。

 だというのに。彼らはレーデルハイト工業に勤めていただけで殺されたのだ。

 

「失礼しました………何故ブルー・ブラッド・ブルーがこのような凶行に出たのか。それは見せしめです。彼女らの首魁であるフランチェスカ・ルクナバルトはレーデルハイト工業の体勢が気に入らなかったのです。IS業界に男性が参入することを許さず、そして共にいた女性たちを異教徒のように見ていたのです」

 

 そんな理由でこんなことをしたのか。

 それは真実なのかという声がSNS状で拡散される。

 

 本当はこれに加えてセシリアと親密な俺に対する盛大な嫌がらせという側面もあるのだが。

 俺とセシリアに対する風評被害のリスクがでかいから残念ながらお蔵入りだ。

 

 だがこれで驚くのはまだ早いというもの。

 まだまだ起爆剤は山程ある。

 

「見せしめ、異分子の排斥、数々の破壊行為。これだけでも到底度しがたいものです。ですがブルー・ブラッド・ブルーはそれだけでは飽きたらず。遂には守るべきと豪語していた女性の、人間の尊厳すら踏みにじる行為に走ったのです。不都合な記憶を封じ込め、新たな認識、歪な認知を塗りたくり、自らの欲望の為の尖兵として操っていた。そう、フランチェスカ・ルクナバルトはマインドコントロールを行っていたのです」

 

 更なる爆弾発言に世界中がまたもざわついた。

 

 マインドコントロール。

 フィクションやドキュメントで馴染みはあれど現実味のない発言に戸惑いを隠せなかった。

 

 だが発言しているのが子供ということもあり半ば信じることができない人もいた。

 大きい言葉を並べるだけの子供なのではないかと。

 

「いきなりマインドコントロールなどと言われて困惑してるところでしょう。逆の立場なら私だって困惑してしまうところです。たちの悪いジョーク、子どもの戯言かと思うことでしょう。ですが残念なことにこれは事実なのです………篠ノ之博士、説明をお願い致します」

「ハイハーイ。どーもどーもー。インフィニット・ストラトスの生みの親の篠ノ之束でーす」

 

 ………いったい何人の口から飲み物が吹き出されたことだろう。

 いったい何人の人が椅子から転げ落ちたことだろう。

 いま各国で至急IS学園に向かえなんて命令が下ってることだろう。

 

 ここに来てとんでもない人物最上級レベルのお人。篠ノ之束博士が朗らかな笑顔でご登場だ。

 画面の向こうの喧騒などなんのその。いつもの服に眼鏡をかけた簡易教師モードの博士が説明をする。

 

「さーて篠ノ之先生の授業を始めるよ〜。まず洗脳のメカニズム。まず、洗脳したい人に特殊なナノマシンを投与する。これはイギリスで開発していた第三世代ISのBT能力に反応するブルー・ブラッド・ナノマシンというものだ。そして投与した対象にフランチェスカ・ルクナバルトのISに発現したBT能力の祖と言えるワンオフ・アビリティー【原初乃蒼《ジ・ブルー】の感応を当てる。

 この時脳内の記憶領域に干渉。自分に都合の悪い物を封印し、その上に都合の良い認識を埋め込んで自分の尖兵にするのさ。この洗脳力はまさに意のままに操るマインドコントロールの言葉そのものと言っても良い。例に上げるなら旦那さん大好きだった日本代表が突如旦那を捨てて女尊男卑思考に転ずるぐらい強力なものだ」

 

 小難しい説明をする傍らテレビには篠ノ之博士謹製のポップなレイアウトが映されている。

 ファンシーな絵面に反してスプラッターレベルな話題に視聴者の動揺は止まることを知らず。

 

 何せあの稀代の天才がISを絡めた説明をしているのだ。ニュースの専門家とのレベル差など天地でも比べ物にならない。

 もし隣に居るのが洗脳されている人だったら。自分は気づかないだけで洗脳されているのか等という得体のしれない不安が湧き上がってきている。

 

「各国の代表や代表候補生を始めとした離反はこのBTマインドコントロールが原因だ。BT技術が第三世代の中でもイメージ・インターフェース。脳波由来に特化したものとは言え悪辣以外の何者でもないね。あっ、だからといってBT技術は悪だ! 即刻排除すべきだ! なんて短絡的で頭空っぽな馬鹿発言はしないことだよ。飽くまでこれはフランチェスカ・ルクナバルトのワンオフ・アビリティーありきの技術なんだからね。以上! 束先生の解説終わり。あとは頑張ってねー」

「ありがとうございます篠ノ之博士。ですがあまり煽る発言はしないで頂けると」

「あははー、ごめんねー」

 

 締まらない顔のままヒラヒラと手を振って画面からフェードアウトする篠ノ之博士に一礼し。再びカメラの前に立つ。

 

「いま篠ノ之博士が説明したことは全て事実です。ブルー・ブラッド・ブルーはこの技術を使い、各国のISコア保有施設に奇襲をかけたのです。

 ブルー・ブラッド・ブルーが掲げる世界征服。それは世界中のISコアを掌握し、女性の力の象徴としてインフィニット・ストラトスという武力を行使し、従わぬ者にはBTマインドコントロールで隷属を強いる。自由や愛情を剥奪し、自らが語る理想だけの世界。それこそがフランチェスカ・ルクナバルトが描く、女性至上世界の正体です!!」

 

 ここからだ。

 異種多人数戦の時と同じでは駄目だ。

 

 埒外な情報の数々と長い前置きで整った下地に。

 

 言葉の熱を叩き込む!! 

 

「フランチェスカ・ルクナバルトは何故BTマインドコントロールというものを持ち出したのか。それは自分に賛同しない者が多くいること。自分たちの理想が到底受け入れられるものではないと分かっていたからです! 

 守るべきと豪語した女性の尊厳や精神を縛り上げ、愛する者の記憶を踏みにじった挙げ句テロリストに仕立て上げるその所業の何処に正義がありましょうか! 何処に理想がありましょうか! そんなことは彼女がもっとも忌み嫌う理不尽な男性による暴力で従わせることと何の違いもありはしない!! 女性の為の世界? 素晴らしき女性至上世界の為に? 見当違いも甚だしい! 親父ギャグの方がまだ笑えるもの! 滑稽極まりないとはまさにこの事だ!!」

 

 感情激情を露わにし、怒りを持って声を張り上げた。

 

 あの醜女が掲げるお題目で何の罪のない人たちが傷ついた。何人もこの世を去った。

 

 一番愛していたはずのセシリアを自分の都合の良い操り人形に仕立て上げ、一番大事な存在である俺を自分勝手自分都合の為に殺しを強要させた。

 

 誰よりもあんたを信じていたセシリアにだ!! 

 

「フランチェスカ・ルクナバルト! 確かにお前の言うような女性も居るだろう! 女性が理不尽な力による被害を受け、涙を流している人が居ることは紛れもない事実だ。だがあんたがやってることは只々余計なお世話だ! 世界はそれだけで完結するような単純な物じゃない。あんたの企みが成功しても失敗したとしても格差と女性差別は酷くなるだけだ! 人々は世界の癌として互いを憎み合い、終わりのない争いを生む! 

 それを分かっていながら、いや分からなくてもやるんだろう! 何故なら否定も肯定も必要ない、世界全ての人間を洗脳すれば済む話だからな! はっきり言うぞ、お前がやろうとしてることは決して女性の為の世界を作るなんてことじゃない! ただの刹那的快楽思考が生んだ自己満足の産物だ!!」

 

 カメラの向こうにいる奴に向けて怒りを込めて咆哮する。

 お前が起こした事件のせいで。IS黎明期から収まり続けていた女尊男卑問題が振り出しに戻る可能性がある。

 それだけでどれだけの人々が犠牲になるかをまったく考えていない。

 

 ただただ自分に都合の良い世界を作れればいい。汚い思想を綺麗な言葉で飾り付けて誤魔化してるだけだ! 

 

「そんな世界を俺は! 俺たちは認めない!! 我々IS学園は此処にブルー・ブラッド・ブルーとの徹底抗戦を宣言する!! 浅ましくも卑劣な野望を尽く粉砕し、破壊してやる! そして洗脳された人々も全て取り戻す。篠ノ之博士の協力により。既にセシリア・オルコットを含めた9名の洗脳を解除し、救出することに成功した!!」

 

 俺の宣言と同時に壇上に上がってくるセシリア、そしてタイのヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーとオランダのロランツィーネ・ローランディフィルネイを含めた9名が上がってくる。

 

 特に全世界の女性の星であるローランディフィルネイはファンにとってもインパクト大だろう。

 

 セシリアと目が合い、小さく頷きあう。

 たったそれだけのやり取りで、立ち向かう勇気が湧いてくる。

 

「私が言ってることが本当に正しいのかはわかりません。だとしても、フランチェスカ・ルクナバルトが掲げる女性至上主義は間違っていると自信を持って言える!! 

 覚悟しろフランチェスカ・ルクナバルト! 気に食わないならかかってこい! IS学園は逃げも隠れもしない! どれだけ強大な力をぶつけて来たとしても俺たちは絶対に負けはしない!!」

 

 大きく息を吸い、カメラの向こう。

 群衆のその奥に居る奴に向かって高らかに叫んだ。

 

「男も女も関係ない! みんながただ笑い。普通に暮らせる世界を取り戻す為に!!」

 

 ただ人が人である為の戦い。

 まだ16歳の。大人にすら成れていない俺の、理想と希望的観測でしかない疾風・レーデルハイトが放った言葉は。

 

「こっから全部! 取り返してやる!!」

 

 確かな意思と共に、世界中の人間に刻まれたのだった。

 

 

 

 





 どうも皆さん、怠惰の化身ブレイブです。

 今回は一般市民からのテロ視点と、疾風・レーデルハイトの大演説の二本となりました。

 ぶっちゃけ戦争やテロなんてゲームやアニメ、映画だけで充分ですよね。
 いまも海の向こうでは戦争してるところがありニュースになってますが。つくづくそう思うのであります。

 今回の演説シーンは大変でした。使ってない脳細胞を使いまくりました。
 飽くまで自分たちが正義であるという主張。子供故に大人過ぎず子供にならずに世界に発信するというとんでもない大役を担った主人公。
 目的の主題はフランチェスカの挑発であり。そこに篠ノ之束や女性の心を掴みまくっているロランが表向きに協力しているということを世間に知らしめたことで支持率は凄いことになるという目論見です。

 それなら知名度カンストの織斑千冬でもいいじゃないという感じですが。千冬が台頭すると正しく強い女性の時代という側面が強調されて女尊男卑が湧き上がる恐れがありそうだなと。
 飽くまで男性と女性が協力し合うというのがキーになる訳です。疾風を神輿に男尊女卑が加速する恐れもありますが。いまのIS世界だとそこまで蔓延らんでしょう。贔屓目抜きでもあの世界は女性の立場強いので。

 さてもう後戻りは出来ません。
 大々的にIS学園とブルー・ブラッド・ブルーの激突は必須。
 原作でも起きなかったIS同士によるとんでもない戦争って奴が始まります。

 そして私の執筆も頑張ります!
 根気よく待ってくれた読者様にただただ感謝を!!

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