IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
世界で2番目にISを動かした男、疾風・レーデルハイトの声明が発表されて世界はどうなったか。
それはもうお祭り騒ぎである。
テレビもそれ一色で染まり、ニュースでは引っ張りだこ。数多くの専門家がテレビに出たり出なかったりである。
SNSではトレンド首位ぶっちぎり独占状態。人々は口々に疾風に対してのコメントが溢れかえる。
『疾風・レーデルハイトかっけぇ! 男として尊敬するわ』
『スカッとした』
『IS同士の戦争が始まるのか。歴史が動く予感!』
『篠ノ之博士とどういう関係!? 人嫌いとかじゃなかったかあの人。とにかく味方なら勝確だな』
『世界が変わるぞー!!』
と、好意的に湧き上がる隣で。
『子供の声明って。ごっこ遊びとは違うんだぞ』
『そもそもこれが本当のことかわからない』
『あの篠ノ之博士偽物だろ』
『手の込んだイタズラだ。直ぐに謝罪会見だろ』
このような投稿もある。
これに関しては至極当然である。
テロリストと正面で、それも一団率いて勝負をかけるというのは只事どころではない大事である。
それをISを動かしたとはいえ日本の代表候補生とはいえ、16歳成り立ての子供にそんな権現ありはしないのだ。普通なら。
こんな反応が来るのは当たり前だし予測範囲内ど真ん中だ。
であるならば、対応策を用意してない筈はなかったりする。
「皆様こんにちは。IS学園学園長、
(表向きの)IS学園最高責任者の追加声明。
またも世界はひっくり返った。
これ以上のないお墨付きである。なにせ最高責任者なのだから。
「我々はマインドコントロールを施されていたセシリア・オルコットからブルー・ブラッド・ブルーがIS学園を占領するという情報を頂きました。テロリストはこの学園が保有するISコアと施設を使い、世界征服の橋頭保にしようと目論んでおります。IS学園は未来のISパイロット、その関連技術者の育成機関であり、決して女尊男卑主義の苗床ではありません。故に、我々IS学園はこれをよしとせず。当テロ組織の打倒を決意しました」
本気だ。
本気でIS学園は世界の敵であるブルー・ブラッド・ブルーとことを構える気だ。
疾風・レーデルハイトが発した声明は偽りでも戯言でもごっこ遊びでもない。
紛れもなくIS学園の意思であるということを。
「この声明をお聞きになられた世界各国の皆々様。此度の戦いはISが誕生して以来の類を見ないものとなるでしょう。願わくば、皆様のご協力を受けたまりたいと思っております」
ブルー・ブラッド・ブルーとドンパチするから一口乗らないかい? と言ってる。
この女傑、巻き込む気満々である。
使えるものは国家も使え。形振りなんてかけてられない。
ここが落とされれば正しく世界は喉元に刃物を当てられるのだ。
「我々から言うべきことは、これ以上ありません。我々が言いたいことは全てレーデルハイトさんが言ってくださいました………最後に一つ。何故今回の演説をわたくしや織斑千冬先生ではなかったかという点についてですが。理由としては単純です。ブルー・ブラッド・ブルーに挑戦状を叩きつけるのに、彼以上の存在はないと考えたからです」
そう締めくくった轡木友里恵学園長はそれはもう楽しそうに言ってのけたのだった。
ーーー◇ーーー
国際IS委員会という組織がある。
元々はG20(フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダ、アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、韓国、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、アフリカ連合)を母体とした組織で、そこにISコアの原料として使われる
所属するのはISを執り行うということで全員女性で構成されている。
ISの基本条約であるアラスカ条約の主要国家群であり。ISが生まれて今に至るまで世界のISコアの保有や動きを監視する組織であり。
一夏、箒、疾風が日本代表候補生としての仮止めをしたのもIS委員会だ。
一夏たちがIS学園に来てからはもっぱらIS学園に関する議題で持ちきりで、千冬の疲労の元でもある。
だが今回の議題はいささか種が違うものになり、空気もより重苦しいものになりそうであった。
モニターに移されたIS学園を除く21人の大半からの冷ややかな目線に晒されながら轡木友里恵は背筋を伸ばす。
「やってくれましたね轡木
「おかげでこちらにも皺寄せが来ている。詳細を求める電話が今も鳴り響いている」
「納得の行く説明を求めたいものですね」
「ええ勿論。そのつもりで議会を開かせていただきましたので」
常人なら震え上がるほどの冷たさと圧を含んだ睨みもどこ吹く風の轡木友里恵。
こんな睨み合い腹の探りあいなど日常茶飯事だ。これぐらいで参るようなら表向きとはいえ学園長をやっていない。
「では説明してもらいましょうか。今回の独断専行について」
「独断専行とは人聞きの悪い物言いですね。我々は不当な輩の襲撃に備え、先手を打っただけで御座います」
「よくもまあ、あけすけもなくそんなことを」
「そもそも! あんな年端も行かない男児にここまで大層なことをさせるのはどういうつもりなのでしょうか!」
「何故あなたや織斑千冬ではなく彼に演説などさせたのです? 効果的な演説なら彼である必要はない。名声を得たいとせがまれたのですか? いくら男性IS操縦者と言えど特別扱いは程々にしてもらいたいものですね?」
「これがもっとも効果的であると考えたためです」
イギリス、ブラジルからの高圧的な詰問に眉を潜めることなく淡々と答えていく友里恵。
この2国の国際IS委員は事前にクロで確定と出ている。いつからと断定は出来ないが、この2国は織斑一夏が入学してきてからトゲが鋭くなっていた。
「レーデルハイトさんに任せた理由は二つ。一つ目は影響力です。仮に私や織斑千冬が台頭したとしても。それは強い女性による成果として色濃く残ってしまうからです」
「まさか疾風・レーデルハイトに行わせることで女尊男卑から男尊女卑に転向させることが目的だとでも!?」
「あなたは疾風・レーデルハイトの演説をよくお聞きにならなかったようですね? 彼は一言もそんなことを発してはいません。むしろ積極的に男女間の融和に努める発言をしていましたよ」
「だとしても彼をシンボルに男が勢いをつけて付け上がりでもしたら!」
「ブルー・ブラッド・ブルーが行動を起こした時点でその問題は既に通り過ぎています。むしろ我々は今回の反動を抑制する立場にある。彼がシンボルになるなら結構。台頭した彼が立ち上がらなければ疾風・レーデルハイトを大義名分には活用出来なくなるでしょう。それと、いまこの場でそのような差別発言と取られるようなことは慎んだ方がよろしいですよ。アースキン委員」
「うっ………」
言葉に詰まったイギリスIS委員に一瞥することなく指を二つ立てた。
「二つ目は挑発です。首魁であるフランチェスカ・ルクナバルトは疾風・レーデルハイトに異様な憎悪を抱いています。そんな彼に果たし状を叩きつけられたら黙っていられないというもの。これほど効果的な人選は他にいないでしょう。女性至上主義を是とする彼女にとって男性IS操縦者は正しく癌細胞。そしてこの挑戦から逃げるようなら世間はルクナバルトを嘲笑するでしょう。見下していた男から逃げた哀れな臆病者、としてね」
意地の悪い笑みを浮かべる友里恵に何人かの顔が僅かに歪む。
自身が信仰するフランチェスカを侮辱されたのだから。なんとも面白いように反応するものだ。
代わりに好意的に笑う者も居た。
アメリカのカチーナ・コーリングIS委員だった。
「ハッハッハ! 良いじゃないか。疾風・レーデルハイト! なかなか骨のある男に見えたぞ。うちの妹が喜びそうな奴だ。そしてあの頭が茹だった女が一番嫌いそうな男にも見える。自分より正当なお題目を立てられてフランチェスカ何某も苦虫を噛み潰してるだろうよ」
「ありがとうございます、コーリング委員」
「して。それを報告する為だけにこの場を設けたわけではないだろう? 何を考えている、ミス轡木」
まるで子どものように楽しそうな顔をするコーリング氏にしょうがない人だと呆れながら友里恵は本題を提示した。
「今回の襲撃は過去最高のものとなります。そこで。IS学園はオペレーション・バトルフォートレスの発動を提案します」
「バトルフォートレス!?」
「IS学園の最終防衛機構か」
「それが必要な規模だとでも言うのか? ブルー・ブラッド・ブルーは」
「はい。推定される数だけでも敵が保有するISは145機、それに加え人型BT兵器が確認できるたけでも500機以上はあると」
「そこまでなのか!?」
「確かなのか?」
「ルクナバルトの副官として洗脳されていたセシリア・オルコットからの情報です。ルクナバルトは彼女を次期後継者にする程の信頼と愛着を持っていたようなので。自分が持ちうる情報を可能な限り与えられたとのことです。IS学園が襲われることも確定的、先程発信した通り本格的な世界征服の足掛かりとして」
セシリアを救い出したことで得られたのは洗脳解除の手段だけではない。
彼女に異常なほどの愛情と彼女は絶対に自分から離れることはないという盲信故にフランチェスカは誰よりもセシリアに情報を与えていたのだ。
そのおかげでフランチェスカの真意と、IS学園を何よりも占領せよという命令があることを知れたのだ。
「疾風・レーデルハイト。並びにIS学園の声明はバトルフォートレスの大義名分を得る為でもあったわけだな?」
「その通りです。いま世論の動きはこの短時間でIS学園に傾きつつあります」
「相手はテロリストなんだ。IS学園の行動は正しく光明だろうよ。テロリストとの戦力差は如何ほどだ?」
「現在IS学園の戦力は学年専用機、そして敵から鹵獲、奪取したのを合わせて71機。他はEOSが試験用に配備されているのみとなります」
「戦力差は歴然という訳だな」
「はい。それに加えブルー・ブラッド・ナノマシンはIS適合率を高め、空間認識能力を高める作用もあります。これを打開するにはバトルフォートレスによる戦力増強が不可欠です」
ISの数は力だ。
ISコアの総数によって国力が決められると言っても過言ではないこの世の中において三分の一も所有するブルー・ブラッド・ブルーは間違いなく現在において最強の軍隊。
そしてその中には各国から攫ってきた有力なISドライバーがいる。少なくとも、フランチェスカ含めた三人の国家代表が存在している。
「状況は最悪です。でも希望がないわけではない。その為に、是非ともオペレーション・バトルフォートレスの起動を許可して頂きたいと考えております」
「「「…………」」」
「この場では決められないことは承知の上。ですが、今この場で皆様の意思を確認したいと考えています。国際IS委員という、IS管理を担う立場として」
オンライン会議がシンと静まった。
バトルフォートレスを発動したIS学園はそのサイズで一国の防衛機構と遜色ない力を誇示することとなる。
だがそれと同時にIS学園がそれほどの力を持つということを公表することとなる。
各国の懸念点はそこだ。
IS学園は一国が保有できるISコアの最上保有数を持つ。やる気になれば独立国家を設立できるレベルの軍事力をだ。
そして強大な力という光に群がる輩が増える。そして光によって生まれる影もまた色濃くなるのだ。
各々が出方を伺う中。迷うことなく一太刀入れたのはルクーゼンブルク公国第二皇女、カタリナ・トワイライト・ルクーゼンブルクだった。
「私はIS学園を支持し、学園機構の発動を推奨する」
「ルクーゼンブルク委員!?」
「ブルー・ブラッド・ブルーが使う英国第三世代のBTクリスタルにはルクーゼンブルク公国の
「ルクーゼンブルク公国が保有する
「気遣い感謝する。それで、他の国々はいかがする?」
張り詰めた空気に針が刺された。
他の国々はこぞって流れに乗り始める。
「アメリカは大賛成だ。連中が気に食わんというのもあるが。一度IS学園の戦闘力も見てみたい」
「中国も同じく。今回の件で内側がガタつき始めている。厄介事に構ってはいられない」
「勿論我々日本も賛成します。IS学園が占拠されれば矛先は先ず日本に向く。我が国の平穏を維持するにはこの方法しかないでしょう」
賛成の意見が立て続けに評される。
その数21ヵ国中………………7国。
「イギリスは反対する! そもそもIS学園の戦略要塞システムに関しても反対だったのだ。国力以上のISを所持しているのにこの防衛戦力は過剰だ!」
「国際IS委員会の非難も免れないだろう。巻き添えは御免被る」
「お前たち、事の重大さを理解していないのか? IS学園ほどの戦力が掌握されれば瞬く間に世界は蹂躙されるのだぞ?」
「賛成したとして責任を取られるわけには行かない。自分で戦端を開いたのだ。自分たちだけでやってほしい」
「偽情報の可能性もある。セシリア・オルコットを全面的に信用していいものかわからない」
「IS学園には初代ブリュンヒルデがいる! 彼女だけで10人以上の戦力になるのだから要塞戦略など必要あるのかね?」
「疾風・レーデルハイトが実はブルー・ブラッド・ブルーとグルだという噂もある。子供の演説だなんて出来すぎた話だと思ったのだが」
コーリング委員の苛立ちを含んだ声に反対派はベラベラと口舌を動かす。
まるで事前に打ち合わせでもしたかのように非難という言葉の波が荒れ始めた。
いつも気丈に振る舞う友里恵の顔に思わず陰りが映った。事前に聞いていたとはいえ、実際直面してみると応える物がある。
誠実を飲み込む濁流と化した人の闇が画面越しにありありと見せつけられる。
(本当に彼女らはBTマインドコントロールを受けていないのか? だというのに、こんな………)
そう。セシリア・オルコットの言ではIS委員会のシンパはBTマインドを掛けられていない。
そもそもBTマインドという技術が確立する前にシンパが紛れ込んでいるのだから不思議ではない。
元からそういう思想であるところを付け込まれたのか。元からブルー・ブラッド・ブルーのメンバーだったのか。穏健派を蹴落として女尊男卑派にすげ替えられたのか。
彼女らは本気でフランチェスカ・ルクナバルトが掲げる女性至上主義世界を容認するのか。それを国民の生活基盤にすることが幸福と考えているのか問いただしたくなる。
IS学園を表向きに束ねる女傑である轡木友里恵もこの醜悪な空気を認識して吐き気が込み上げる。
一度リセットして息を整えようと目を閉じようとした。でなければこの空気に当てられてしまう、感情を吐露してしまう。
それだけはあってはならない。今この場で隙を見せればたちまち飲み込まれる。
友里恵は息を整えるべく一瞬瞼を閉じ息を………
「会議中失礼いたします。ああ、皆様お揃いのようでなによりです」
「あっ」
「「なっ!?」」
温和。その一言に尽きる落ち着いたそよ風のような声が会議の空気に差し込まれた。
「く、轡木学園長!? 何故此処に!?」
「いやはや突然の来訪申し訳ない。ちょっとこちらに用がありましてな。お邪魔させて頂きます」
彼が出てきたのはIS学園学園長室ではなく。日本IS議員のモニター室からだった。
あまりにも急な展開に日本のIS議員は狼狽えに狼狽えた。
対して轡木十蔵はまるで自分のホームかのように微笑んでいる。図太すぎないかこのジャパニーズと各国が思ったのは無理もなし。
「十蔵さん」
「ありがとうございます友里恵さん。後はお任せを」
「……はい」
モニター越しでの旦那との会合に友里恵の心は穏やかな暖かさを取り戻した。
二人が夫婦だと知ってる人たちは妻が学園長で夫が用務員という立場を見て。この二人そんなに仲良くないのだろうかという感想が出ているがそれは間違いである。
現に微笑み合うその姿は交わす言葉は少なくとも信頼で結ばれた夫婦の姿そのものだった。結婚から今の今まで二人三脚で歩いてきた二人の間には綻びることのない信頼があった。
無論、一瞬にして仲睦まじい雰囲気に虫唾を走らせてミサンドリーが早速噛み付いた。
表面上笑顔を保てているものの青筋を立てているのが丸わかりだ。
「これはこれは轡木学園長。重役出勤とは殿様商売が過ぎるのではありませんか?」
「いやはや耳が痛い。ですが今回の学園代表としての出席は妻に任せておりますので。私は戦前の前にやらなければならないことがありまして」
「だとしてもこれほどの有事に最高責任者が出席しないのはどうかと思うのですが? 事の重大さを認識してないと思われる」
「この会議を後回しにされるとは。さぞ重要なことなのでしょうね?」
反対意見を即座に出した貴様らが言えたことかと血管を浮かび上がらせるコーリング議員。だが轡木十蔵の顔は学園の良心という通り名に違わない穏やかそのものだった。
「事の重大さとは異なことをおっしゃる。私にはこの会議が茶番にしか映りませんが?」
「なっ?」
そんな温和な十蔵の返す刀はこれまた血がつかないほどの切れ味であった。
「茶番とは失礼にも程が」
「質問を質問で返すようで恐縮ですが。皆さんに問いましょう。戦いをする中でもっとも厄介な存在とは何でしょうか?」
「何を言って」
「敵のエースだろう。究極の1は時に万の軍勢を跳ね除ける」
「補給線が断たれることだろう。飯と弾薬がなければ人は戦えない。だがISの戦いというものはそこまで長引かせられるものではあるまい」
戸惑う反対派を遮りアメリカとドイツが意見を出し合う。
どちらも的を得ているが、十蔵が出す正解ではなかった。
「………無能な味方、または裏切り者ではないかな?」
「「っ!?」」
アンサーを出したルクーゼンブルク委員に反対派の何名かが息を飲んだ。
そしてその回答は轡木十蔵の満足気な笑みによって正解となった。
「正解です。戦場においてもっとも危惧するものは内部からの崩壊です。味方と思った者に後ろから刺されるなどあってはならないことです」
「まさか轡木学園長! 反対意見を出した我々を裏切り者呼ばわりするのですか!?」
「失礼極まりない! 我々にも言論の自由がある!」
「イエスマンばかりでは議会は成り立たない。だからこそ国際IS委員会というものがあるのではないか?」
「その通りです。皆さんの言った通りオペレーション・バトルフォートレスはIS学園の在り方そのものを変える危険なシステムです。だからこそ、反対したとしてもそれは立派な意思であり、非難されるものではありません───そこに邪な思惑があれば話は別ですが」
「「!?」」
「始めて下さい」
轡木の号令と共にバン! といくつかの開閉音が立て続けに鳴った。
「なんだお前たちは! いま会議ちぐぁっ!」
「な、何をするのです!?」
「離しなさい! 私を誰だと!!」
アメリカ、中国、ドイツ、サウジアラビア、オーストラリア、ルクーゼンブルクを除いた国際IS委員が突入してきた警察官や黒服の男に取り押さえられた。
その中には賛成意見を表明していた日本も含まれていた。
「く、轡木学園長。これはいったい何事だ!?」
「先程言った通りです。不安要素を片付ける。戦支度において基本中の基本です」
「ここまで根回しをしたというのか? 14ヶ国同時に!? 一介の学園長かそんなことが出来るわけない!」
「一つ、言い忘れていた事がありました。今回ここに来たのはIS学園の長としてではありません。いまの私は日本特殊警護組織【更識機関】の長である更識楯無の御意見番。轡木十蔵として参上した次第でございます」
「え、S機関!?」
更識機関。
古来から存在する対暗部用暗部の通称であり。頭文字を取ってS機関と呼ばれることがある。
基本理念は日本の守護、及びそれを害する者の対応、調査である。
轡木十蔵はIS学園の学園長であるまえに。更識と深い縁のある轡木家の当主にして御意見番として歴代の更識楯無を支えていた古強者でもあった。
しかしIS学園が更識と協力関係である噂はあれど、御意見番という重要なポストに就いていたことは知られておらず。
各国の重鎮は驚きをあらわにすると同時に、ここでこの情報を開示した意味を理解した。
警告であるということを。
「こ、これは国際IS委員会における明確な反逆行為よ!!」
「反逆行為? 残念ながらそれに該当するのは今机に伏せられてる貴方がたに他ならない。フランチェスカ・ルクナバルトと密接な関係にあり、彼女らに有利な土壌になるよう国家を耕していた貴方たちに」
「な、なんの証拠があって!!」
「ここに」
各国のディスプレイに表示されたのはこれまでフランチェスカと行っていた通信記録。画像記録。
情報工作からISコアの譲渡まで事細かく表示されていた。
極めつけは通信ログ。そこには紛れもないフランチェスカ・ルクナバルトの肉声と画面が映っていた。
「な、あ………」
「我々IS学園、そして更識もただやられっぱなしで居た訳ではありません。むしろ事が起こる前から。貴方がたの行動について調べていました。度し難いことです。国の安全を運用する者が、国を危機に陥れる物の怪にすげ変わっていたことに。本当に、本当に残念でなりません、ね?」
「ヒィ!」
いつも通り穏やかな口調。だがその目に宿るのは冷たく暗い炎の猛り。
彼女たちは画面越しだというのに首を両断されたかのような錯覚を感じた。十蔵の静かな怒気に自分の死を予感したのだ。
それを間近で感じ取ってしまった日本IS委員の彼女からしたら溜まったものではない。
「な、ななな。何故私まで拘束される!? わ、私はバトルフォートレスの件には賛成しているというのに!!」
「話を聞いてなかったようですな。貴方がたが拘束されている理由はフランチェスカ・ルクナバルトのスパイだからというだけであって。バトルフォートレスの賛否はまったく関係がないのだと」
「ち、違う!! 私は日本の為を思って」
「レーデルハイト工業近くの警戒ラインに細工をしたのは貴方の指示ですね?」
「そ、それは………」
レーデルハイト工業襲撃の裏で彼女は領海侵犯時に発動するはずの警報を切っていたのだ。
結果、レーデルハイト工業実験施設のレーダーが捉えられるまでの時間を稼ぐ結果となり。対応が遅れ、死傷者を出した。
「あれがなければレーデルハイト工業の人たちの犠牲も今より少なかったかもしれない。だというのに君たちは目先の欲に釣られ、侵略者をこの地に招き入れた。我々更識機関はそのような輩を決して許しはしない」
「お、お願い殺さないで!! なんでも、私にできることならなんでもするから!!」
「それはいいことを聞きました。貴方がたには聞きたいことが山程ある。殺しはしない、死んで楽になるなど。努々思わないことだ。覚悟しろ、売国奴め」
「かっ………うぅ」
先程より強い殺気に当てられた日本IS委員は意識を手放した。
雑に運ばれる日本IS委員を皮切りに拘束されたIS委員たちが画面からフェードアウトする
「フゥ。この程度の気でやられるとは、鍛え方がなっておりませんな」
「いやいや轡木学園長。普通は画面越しに怒気など伝わるものではありませんよ」
「しかし鮮やかな手腕でしたね。まさか学園長が更識に連なる者だったとは。今のはすべて更識の手のもので?」
「いえ、地元警察や情報機関の方々にご協力頂きました。彼らも腐った高官や内部疾患に業を煮やしていたようで。この機会に組織内部の膿を出させて頂きました」
「それは良い。我々アメリカの方にもメスを入れて頂きたいものだ」
「ご心配なく。既に済ませております」
「ウップス。怖い怖い」
おどけるように見せるコーリング議員だがその眼差しは鋭い。
これで噂程度であったIS学園と更識の繋がりは確固たる物となった。それを頼もしいと見るべきか。はたまた厄介と思うべきか。
だが今分かることは、この轡木十蔵を敵に回しては行けないということ。
「これにて会議はお開きとしましょう。後日、各国の意思決定をお伝えしていただきます」
「空席は直ぐに補填されるのかね?」
「この際だ。出来るやつなら男性も立候補出来るようにすればいい。そもそも起用しては行けないというルールはないのだからな」
「それを聞いたらうちの第三皇子がしゃしゃり出てくるな。奴は政治で結果を出したいそうだ」
「その話は追々に。それでは皆様、良いお返事を期待しております」
メンバーの7割が消えた会議の幕が閉まる。
後に、国際IS委員会のメンバーのうち15ヶ国がブルー・ブラッド・ブルーと繋がっていたことが公表され再び世界に激震が走ることとなる。
ブルー・ブラッド・ブルーが蜂起したことで世界は変わっていく。良くも、悪くも。
事が終わったあとも世界は続く。ISが生まれて10年、男性IS操縦者というイレギュラーから始まった数々の動乱。
古い世界は剥がれ、新しい世界が敷かれていく。
国際IS委員会。世界のIS規定の番人。
その21ヶ国の席に、愚者の居場所はない………
今年は残暑がなく一気に寒くなりました。どうも読者の皆様、北海道人のブレイブです。
さてさて今回は原作でも触れてるか触れてないかの国際IS委員会のお話と、その大掃除回です。
おかしい。この話は5000文字に収めて後半は決戦前夜を書いてたはずなのに気づけば10000文字だと!?
これはスタンド能力!!(いつもの)
茶番はさておくとして。この国際IS委員会のメンバー悩みましたね。どうしよっかなぁと思ったらアラスカ条約加盟国が21ヵ国だ。あ、G20にルクーゼンブルク公国加えたら21じゃん!これにしよ!って感じになりました。我ながら適当である。
そしてなんと言ってもタイトルの通り目玉は轡木十蔵学園長。
なんと更識の御意見番というとんでもポストに就任することに。
これぞ二次創作というという感じになりましたね。楯無会長とも交流あるし組み込みました。
次回は決戦前夜です。戦争まで秒読みじゃー