IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
待たせたなぁ!!
いやほんとお待たせしました!!
くらえ18000文字だぁ!!
疾風の宣戦布告から今日まで。IS学園の雰囲気はいつもと違っている。
決戦に向けてIS学園の敷地内を大人が駆け回り、決戦に参加する生徒も過去に例を見ないレベルで頭と身体を動かす毎日。
当然授業なんかする暇もないから関係者以外の生徒は部屋にこもっているか、邪魔にならないところで時間を潰していた。
学園は一部を除いて外部から封鎖されているから学園内で暇を潰すしかない。
みんな必死こいてる人たちの側で何事もないかのように過ごしている。
そう振る舞ってるだけの人もいるかも知れないが、みんな対岸の火事のように何処か他人事だ。
数多の襲撃やトラブルはあっても。戦争なんて知らないし見たことないし体験したこともないのがほとんど。
今度も戦える人がなんとかするだろうというのが皆の総意。
屋上も例外ではなく多数の女子生徒がグループを作って駄弁っている。
そんな中1人ベンチに座っている男、織斑一夏はボーッと外の景色を見続けていた。
先程シャルロットと共にチョコ妖怪を止めに行った時にチョコレートを大量にぶち込まれ。自販機からコーヒーを買って飲み干した空き缶を弄りながら思案にふけっていた。
「隙あり」
「あいてっ。箒?」
「ん」
頭に軽くチョップを落としたのは箒。
目には明らかにそして見慣れた呆れ顔がそこにあった。
「隙だらけもいいところだぞ一夏。この瞬間後ろからスパイに刺される可能性だってあるんだぞ」
「悪い。箒はなんでここに?」
「鍛錬を終えて気分転換に来たら寂しそうな背中をしていたお前が居てな」
「別に寂しくなんかねえよ」
「そうか? なら良いがな」
流れるように隣に座る箒に特に言うこともなく空き缶を弄り続ける一夏
周りもそんな2人に注目することなくガヤガヤと雑談に明け暮れている。
「なんとも落ち着かないな。武者震いとも言えない妙な感じだ。事があまりにも大き過ぎて理解が追いつかない」
「ああ、とんでもないことになった。1年前の俺に今のこと伝えても信じないだろうな」
「同感だ。私の場合は保護対象プログラムであっちこっちにたらい回しにされてたから。先のことなんか考える暇もなかったが」
「白騎士事件が起きて直ぐだったもんな。箒が家を離れたのは」
IS開発者である姉の家族であるという理由で日本各地を転々とされ、父親母親ともに離れ離れとなった箒。
無条件でIS学園に入学されたのもプログラムの延長としてだった。
「もう何年も親と話していない。あの剣聖や剣豪とも呼ばれていた親は世間から忽然と消えた。生きてるのか死んでるのかさえ分からない。雪子伯母さんと会えた事すら奇跡だった」
「俺たちって、なんだかんだ家庭環境に難があるよな」
「マシなのは疾風と菖蒲ぐらいか」
その疾風もとんでもない爆弾を抱えていたが。家庭環境は良好だから当てはまりはしないだろう。
「そんな風来坊さながらだった私が一夏と再会して学園生活を謳歌し、第四世代ISを貰って挙句の果て世界の行く末を決める戦いに赴くことになろうとは。人生とは本当に分からないものだ」
「それを言うなら俺だって男でIS動かしてるぞ」
「まったくだな。はぁ。一夏が動かしてから一連のことが全部姉さんの手のひらの上な気がしてしまう」
「冗談に聞こえないな。その束さんとは話せたのか?」
「……まだだ」
「次いつ会えるかわからないんだから。腹を割って話したほうが良いぞ」
「はぐらかされる未来しか見えない」
「そうかな。少なくとも今回の束さんは何処となくマジな感じするぞ」
「善処する」
駄目そうだなと悟る一夏。
だけどこれ以上押したら逆効果だということも理解していた。
「福音の時とは何もかも違う。成功する保証も何も無い。本当の戦争だ……一夏、疾風が福音の作戦前に言ったことを覚えているか。あいつはあの時でもISが好きだと言った」
「言ってたな。そしてISを兵器だけの存在にしたくないって」
「あの時は鼻で笑ったものだが。今は身にしみて理解できる。疾風は誰よりもISを理解している分、いつかこうなることを恐れていたではないかと」
1機でも決戦兵器級として旧兵器体制を覆すインフィニット・ストラトス。
一つのコアで国家戦力の差が決まるそんな世界で。ブルー・ブラッド・ブルーは全体三分の一のISを持つテロリストとして君臨した。
「そんな疾風が適任とは言え宣戦布告をした。ままならないな。誰よりも兵器であることを嫌がっていたあいつが口火を切ることになるとは」
「だけど先に仕掛けたのはあっちだろ。それにあれはISをそうしない為に戦うって選択だろ。あいつも納得した上だろうし」
「お前は納得してるのか?」
「してねえよ。戦争なんて悪いことだ。誰も特しない、最低の行為だ。だけど言っても現状は変わらねえ。だから俺は戦うよ。みんなを守る為に」
どんな時であろうと。一夏の芯は変わらずぶれない。
誰かを守る。その為の力が白式であり、日々の鍛錬。理想論だろうが綺麗事だろうが。それを実現させる為に動けるのが織斑一夏という男だから。
「疾風がなんとも出来ねえ相手は俺が斬る。あいつのお陰で俺は変われたからな。役に立ちてえんだ」
「私も疾風に救われた。まだあの時の借りを返せていない」
「ならやることは一つだな」
疾風に降りかかる障害は全て斬り捨てる。
それが今まで世話になった親友への恩返しだ。
「勝つぞ、箒」
「無論だ」
ーーー◇ーーー
「最終調整完了だ。疾風、そっちはどうだ」
「問題なし。システムオールグリーン。上々だよ父さん」
「よし、万全だな。これなら何時奴等が来ても怖くないってもんだ!」
「マジで怖くないの?」
「おうよ。お前とアリアが居る。他にも頼れる仲間も居るんだ。負けるはずがないだろ?」
「心強いねぇ」
「それにこういうのはな。正義が勝つ、悪が栄えた試しはないっていうのが定石なんだ」
「特撮じゃないんだから」
「リアル特撮みたいなことしてる奴が言えた義理じゃねえぞ」
違いない。
1年前は何のことない何処にでも居る一般ピープルだったのになぁ。座右の銘、波乱万丈にしようかな。
はいそこ。大企業の御曹子な時点で普通じゃないなんて言わないの!
イーグルから降りて待機形態の眼鏡に戻した。
眼鏡あるなしでも視力が変わらないからかける意味あるのかって感じだが。かけなかったらかけなかったで違和感あるんだよな。戦闘中は気にならんけど、今も眼鏡なしバージョンの顔面には慣れない。
「まあ最愛の妻と息子を死地に送るんだ。怖くはないが不安はある、それも目と鼻の先だ。お前とアリアがあんな奴らに負けるなんて欠片も思わねえが、出来るなら俺もEOS担いで奴らの鼻っ面にぶちかましてやりてえ」
「ほんとにやりそうだけど今回は勘弁してくれ」
「わーってる。今回は大人しくメカニックチーフとして頑張るとするさ」
父さんなら愛と勇気と気合いでEOSどころかISを動かして全てに決着をつけそうだ。
そうならない為にも頑張らないと。
ふと視線をずらすとセシリアがブルー・ティアーズの最終調整にかかっていた。
「まだ感度を伸ばせますね。感応操作レベルをあと3つ上げてください」
「3つですか!? これ以上は扱いに難があるのでは」
「問題ありません。わたくしなら扱えますわ」
「了解しました。負荷が出たら直ぐ知らせてください」
彼女も過度に背負うのは後にしたのか。いつも以上に凛々しい表情でレーデルハイトの整備士と意見交換している。
「セシリアちゃんのおかげか。漢の顔になったな疾風」
「そうかな。まだ自信がないな」
「惚れた女とはいえ命を賭けれる男は少ない。お前は文字通り命を賭けた。が、おっちんじまったら元も子もねえがな」
「肝に銘じる。もうあいつを1人にはさせない」
「その意気だ。ハハ、なんだかんだ言ってお前は俺の息子だな」
「愛情たっぷり注ぎ込まれましたから」
生まれ育ては違っても俺は愛されて育てられた。むしろ普通の家庭よりも愛情深い家族に囲まれた俺は間違いなく果報者だ。
一度投げ出してしまった命、そして拾われた命。この奇跡に恥じない生き方をしなければ。
「レーデルハイトくん。少し良いですか?」
「おやおや昨日黒ウサギ隊の副官さんとバチバチにやり過ぎて織斑先生に説教くらった山田先生じゃないですか!」
「ちょっ! やめて下さいレーデルハイトさん! あれはもう黒歴史が掘り返されまくって黒い私が出ただけなんです!」
「すいませんそこらへん詳しく」
「レーデルハイトくんも食いつかないで下さい!」
いったい二人にどんな関係があるのか。私気になりますねぇ。
それはそれとして黒い山田先生ってなんかウネウネした物操りそうですね。
「失礼しました先生。それで用件とは?」
「はい。先程自衛隊のIS部隊が到着されました。代表の方がレーデルハイトくんに挨拶したいと」
「来てくれたのですか! ありがたい、今直ぐ向かいます。何処に向かえば?」
「その必要はない。もう来ているからな」
大きくなく、それでいてよく通る声。
整備室の真ん中を歩いて来た女性が数人。全員がフライトジャケットを羽織り、こちらにつくなり敬礼をする。
「お初にお目にかかります。日本航空自衛隊IS部隊隊長、
「疾風・レーデルハイトです。お会い出来て光栄です!」
「遅れて申し訳ない。上層部が頑なに本土防衛に配属させようと必死でな。なんとかIS5機だけを持ち込むことが出来た」
「いえ、かの【月光】と呼ばれた秋山さんが来てくれて心強いです」
秋山さんは元日本代表候補生で織斑先生や楠木麗と剣を交じ合わせた強豪の1人で。黒いパーソナルカラーに刀の煌めきを合わせて【月光】の二つ名を持つ女傑だ。
本来なら彼女の言う通り本土防衛のみで応援は彼女除く4機と聞いていたから本当に嬉しい誤算だ。
「よしてくれ。所詮織斑さんと楠木教官に届かない二流の剣だ」
「ご謙遜を。ところで楠木教官というのは」
「楠木日本代表は代表の仕事の傍ら日本各地の基地に戦闘訓練として参加してくれてな。まあ指導は擬音のオンパレードだし、隙さえあれば夫自慢で戦闘指導以外は役に立たなかったが」
成る程。箒と母さんを足して2で割ってしまってる訳か。
想像がつくぜ。俺も一回会ったことあるけどあの時は母さんと一緒になって凄かった。
「その楠木教官が敵の洗脳にかかり、我々に牙を向いた。恩師に救う為に、是非協力させて欲しい」
「こちらこそ。必ず楠木代表を助け出しましょう」
「心強いな。若いながら出来ると聞いている。期待させてもらうとしよう。それでは行こうか、山田先生」
「はい。ではこちらに」
「しかし君変わったな。昔はもっと」
「やめて下さい本当に」
予想以上に心強い助っ人が来てくれた。
彼女は自分を3番目と言っているが、現時点での日本における最大戦力が来てくれたことはIS学園としては間違いなく追い風だ。
楠木代表の剣をよく知る彼女らを対楠木代表としてのポジションに置いてみても良いかもしれないな。
「かの有名な月光がわざわざ話しかけるとは。人気者だなセカンドマン」
「私たちも人のこと言えないのでは? こんにちはレーデルハイトくん」
話しかけてきたのはオランダ代表候補生にしてかの有名な恋人99人持ちの色女さんことロランツィーネ・ローランディフィルネイさんと。タイの代表候補生であるヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーさん。
2人とも大変長いお名前をお持ちでございます。
「こんにちはローランディフィルネイさんにヴィシュヌさん。何か用ですか?」
「おいおい。私を差し置いて彼女は名前呼びか。私のことはロランで良いと言っただろ?」
「いやね。周りの目がありまして」
ファーストコンタクトでロランと言った時の周りの目が怖かった。直前でフルネーム呼びにした俺の判断は絶対に間違っていないはず。
恐るべし。99人の女。
ちなみにロランツィーネさんは俺の会見の後に動画サイトに自身の状況と、ブルー・ブラッド・ブルーに対する怒りをネットに公表してくれた。ロランツィーネの人気は確実に世論を動かし、IS学園の風評を良くしてくれるだろう。本当にありがたい。
「いやなに、あれから互いにドタバタしていて会う暇もなかったからね。改めてお礼をと思ったんだ」
「私たちをテロリストの魔の手から救っていただき、本当に感謝しています」
「ありがとう疾風・レーデルハイト。この恩は一生忘れないよ」
「当たり前のことをしただけですよ」
2人には悪いけど。セシリアのついでに助けただけだ。
助けたい気持ちがないわけではないが。あの時は助けようと思って戦うほど余裕はなかったし。
「しかし聞けば聞くほど鬼神のような戦いっぷりだったらしいじゃないか。私たち2人とも瞬殺だった訳だろ? あまり覚えてないが」
「私もボンヤリとしか覚えてなくて。はっきり覚えてるのは連れ去られる前で」
BTマインドコントロールを受けた彼女らは洗脳時の記憶はほとんどないという。
逆に鮮明に覚えているセシリアについてはファクター・コードが追加された作用だという。恐らくこれはフランチェスカにとっても予想外の効果ではあるだろうが。この情報は全てが終わったあと彼女らを守る有力な情報と言えるだろう。
「洗脳されたとは言え、あの悪逆に加担したのは事実。その罪に報いるべく、全力で戦います」
「まだまだ囚われた華たちも居る。全て救って完全勝利と行こう」
「はい。共に勝利を掴みましょう」
強大に膨れ上がった悪意を絶ち、歪んでしまった世界を少しでも良い方向に修正する。
国籍や性別は違えど。俺たちの目的は一致している。それはいま2人と交わした握手が証明している。
「ところでレーデルハイトくん。彼女、なかなか素晴らしい女性じゃないか」
「へ?」
ロランツィーネさんの視線の先にはブルー・ティアーズの整備で汗を拭っているセシリアが。
玉の汗が光る姿も綺麗なのだから本当にレベチだ。
いやそれは置いといてちょっと待て。
「彼女は私たちとは比べものにならない重荷を背負っている筈だ。フランチェスカCEOと彼女の仲は知っている。だが親族が敵になったとしても彼女はそれを止める為に前を向き続けている。とても美しく、気高き強い心を持っている。そして触れれば割れてしまうほどの儚さも備えた女性だ。是非ともお近づきになりたいもの……」
「駄目ですよ」
「ん?」
「彼女は駄目ですよ。本当に駄目ですよ。マジで駄目ですからねロックオンしないで下さいねそもそも彼女はノーマルですからレズビアンではないですから無理ですよ。てかほんとやめろコラ」
あーくそ! 嫌な予感バチコリ的中したぞこのアマぁ!!
ロランツィーネさん、いやロランこの野郎なーに人の彼女に粉かけようとしてんだアァン!!?
やるか? ここで血みどろの戦いおっぱじめようかぁ!!?
え? 結束はどうしたって? 知るかそんなもん!!
「問題ない。私が好きになった華々は同性愛者だけではなかった。必ず落としてみせよう」
「だから駄目だって言ってるだろがこのスットコドッコイ! いてまうぞロランコラ!」
「おやいきなり距離が縮まったな、嬉しいことだ。ひょっとして君も彼女を狙っているのかな? ならライバルだなレーデルハイト。いや疾風!」
「馴れ馴れしく呼ぶな!」
ああ言えばこう言うなコイツ! ほんとマジ転がすぞ!
薄々わかってたけどコイツ苦手だ! 俺が手玉に取れねえタイプだコイツ!!
もう俺の危険信号がビンビン鳴りっぱなしだよ!!
実際問題ビジュアルと器のでかさでは圧倒的に俺は敗北している!!
当たり前だよなぁ! 一夏でさえ対応できるか怪しいのに中の中ぐらいのフェイスの俺が髪伸びた程度で勝てるわけねえんだよ、この顔面格差は!!
だからって引き下がる気毛頭ないけどなぁ!
セシリア守るためなら99人の恋人如き、いや世界中の女性が敵になったとしても蹴散らしてやらァ!!
「ふむ、良き闘志だ。やはり君は他の男とは少し違うな。実に面白い」
「ロランさん、そこまでにしましょう。私の足が出る前に」
「怖い怖い。君の健脚を受けたら私はポッキリ逝ってしまうよ。心配しなくても今日は声をかけるつもりはないよ。それぐらいの分別はつけれるさ」
「ほう、神に誓うか?」
「神様には誓わない。私が誓うのは私に微笑む美しい華々だけさ」
キザだぁ……そしてそのキザさに見合うオーラを出していやがる。
俺もこんなことがサラッと言えたらなぁ。
ピンポンパンポーン……
『校内の戦闘班、及び整備班に告ぐ。ブルー・ブラッド・ブルーの旗艦に動きあり。疾風・レーデルハイト、セシリア・オルコット、更識楯無は至急ブリーフィングルームに集合して下さい。繰り返します……』
「ついに奴らが動いたようだね」
「そうみたいですね。では俺はこれで。行くよセシリア!」
「はい! ってなんか妙に疲れた顔してません?」
「後で話すよ。後で……」
ーーー◇ーーー
「それでは。僭越ながら戦闘区域リーダーである私、疾風・レーデルハイトが作戦の概要を説明させていただきます。分不相応な役職ではありますが、力の限り尽くす所存でございます」
「おー頑張れよ1ねーん!」
「ヒューカッコいいぞ男の子ー!」
「よっ! IS学園男子のフツメンの方!」
「はいそこ3年生の方々静粛に! あとフツメン言うな! 素直に傷つくぞ!」
まったくうちの学生は揃いも揃ってひょうきん族だなぁ! シリアスな空気が壊れるぜ!
IS学園地下作戦会議室に集められた80人余りのISパイロットたち。
これだけの人員が一挙に集まることなど早々ないことだろう。そのなかの半数が代表候補生を含めた学生なのだから末恐ろしいことだ。
そしてその中のリーダーが織斑千冬や隊長職のラウラを差し置いて俺が出張っている。
幸い反対するものはなくむしろ押してくる勢いだ。期待は重いがその重さに見合う働きで返すとしよう。
「ブリーフィングを始める前に、今回IS学園の戦線に参加される方を紹介します。レーデルハイト工業から3名。日本航空自衛隊IS部隊から5名。ドイツからドイツ特殊陸軍IS部隊シュヴァルツェ・ハーゼから20名。フランス、デュノア社からテストパイロットであるショコラデ・ショコラータさんが応援に駆けつけてくれました」
「どうもー。元英国代表のアリア・レーデルハイトでーす。名前の通り疾風の母親でーす」
「部隊長の秋山です。微力だが宜しく頼む」
「副隊長のクラリッサ・ハルフォーフだ。黒ウサギ隊の名に恥じない活躍を約束しよう。存分に頼ってくれ」
「こんにちは! ショコラデ・ショコラータです! みなさん決戦前にチョコレートはいかが? むしろ食え! そしてカカオ神に御心を捧げるのだ!!」
「はいありがとうございます。ショコラータさんチョコ配らずに速やかに後ろの席へ。あ、チョコレートありがとうございます。すいませんお早くお願いします」
貰ったチョコを速攻バススロットにぶち込んで即後方へ。
シャルロットが何とも言えない顔してる。どういう感情の顔だいそれは。
「そして今回の作戦指揮官を紹介致します。国際IS研究所所長の御厨麻美さんです」
「御厨麻美です。宜しくお願いします」
「御厨麻美って、メディアに一切出ないというあの!?」
「うそ本物?」
当然の反応というべきか、みんな麻美さんという隠れたビッグネームの登場に沸いている。
初対面の後に調べたんだけど。麻美さんって本当にメディアに顔バレしてないんだよな。その証拠に大多数の人たちは目の前に出てきた麻美さんを本物かどうか分からないでいる。
「御厨所長のISは広域戦術警戒管制、及び情報戦特化型のISです。彼女のISと学園のシステムをリンクして戦闘区域の情報を整理し、各パイロットに伝達します。パイロット各位は耳を傾けるように」
「AWACSのようなものか」
「混戦が予想されるなか。情報にリソースを割かずにいれるのはありがたい」
銀の福音の時もそうだが、戦場を俯瞰して見れる人材は重宝する。
作戦管制を出来る人が居ればパイロットたちは思いっきり戦闘に集中でき、予想外の対応も早くなる。
「ではブリーフィングを始めます。今から4時間前、各国監視衛星がブルー・ブラッド・ブルーの居城である強襲機動戦艦【キャメロット】がIS学園に進路を取ったことを確認しました。
到着予想時刻は5日後の10時から12時頃。先遣隊としてISが出張る可能性はあるが、この状況で少数戦力の逐次投入は考えにくいと思われるのでそこは置いておく」
画面をIS学園近海のマップに。
敵の機動戦艦、そして味方と敵IS部隊をマーカーで表示される。
「敵ISは145機。そして人形BT兵器ワルキューレはもう数えるのも馬鹿らしいほどある。おまけに敵戦艦は強力なレーザーキャノンを装備している」
「それを遠方から撃たれたらIS学園はひとたまりもないんじゃ」
「無論。これを防ぐ手だてはIS学園にある。それに敵は出来るだけ現状のままIS学園を占拠したいだろう。無闇に撃つことはないだろうが……正直相手の首魁は頭がイッてるから予測は出来ないな」
「敵の衛星兵器は?」
「それは篠ノ之博士が掌握済み。だがこちらの戦力にならないことは留意して欲しい」
「世論のイメージか?」
「そんな感じ。そもそも篠ノ之博士がコントロール握ってるからあの人が駄目って言ったら駄目なのよ」
「その篠ノ之博士は今何処に?」
「なんか人がゴミのように居るとこに居たくないって外の空気吸ってる」
「どこの大佐だ?」
「すいませんホントうちの愚姉がすいません」
インドラの矢と称してエクスカリバーぶっぱなすことはしないだろうそう信じよう。
ともかく戦略兵器なんか使ったら世論からツッコミ入れられるのは自明の理。
ただでさえとんでもないものを使うのだから尚更だ。
「敵の出方は正直分からない。が、あれだけ煽ったんだ。敵は怒髪天を突く勢いで正面から来ると予想する。正直戦力はこちらが圧倒的に不利だ。ブルー・ティアーズの量産型、そして少なくとも国家代表クラスがボス含めて3人確認されている」
ボスのフランチェスカ・ルクナバルト。
シャルロットの叔母であるフランスのアニエス・ドルージュ。
洗脳された日本代表、楠木麗。
どれも一筋縄ではいかないプロフェッショナルだ。
楠木さんは織斑先生や母さんと打ち合えるほどの実力者。並の相手では白鉄の第3世代能力でバッサリやられてしまう。
更に厄介なのはアニエス・ドルージュ。シャルロット以上の
かといってこの2人だけに戦力を集中するわけにはいかない。いざとなれば俺が介入して引っかき回す必要すらある。
「日本代表には自衛隊部隊が、フランス代表にはシャルロット、ショコラータさん、山田先生の混成小隊が対応します」
「ルクナバルトはどうする」
「ラスボスは俺が相手をします。というより奴は俺にご執心だ。俺が引き寄せれば他の負担が減る。こちらに注意を引いてる間に袋叩きが理想ですね」
といっても最初から出張るとは思えないな。
偉ぶってるやつは最初は高みの見物をするものだが。奴の俺に対する憎悪は天元突破だ。いつどんな突拍子もないイレギュラーブートをするかわからん。
「思った以上に戦力差が開いていますね。勝てるのでしょうか」
「ISの数が単純に戦力に影響が出る以上、奇跡が起きない限り勝てないでしょう。そこで我々はこの圧倒的戦力差を打開するための武器を使う。それが学園防衛機構、バトルフォートレスです」
スクリーンに表示されるのは3Dモデルで構成されたIS学園。そしてバトルフォートレス発動されるまでのイメージ映像が映し出される。
元のIS学園の面影がない、とまでは行かないが地面から迫り出した防衛機構のそれは一介の教育機関が持って良い戦力ではないのは素人の目から見てもわかった。
それでも過剰ともいえる戦力が自分の学び舎にあったことは一部教師陣も動揺を隠せない。
恐らくこのバトルフォートレスもIS学園の数ある秘密の一つなんだろうけども今はどうでもいいな。
「今回の戦闘に置いて重要な部分は2つ。1つは洗脳されたISドライバーたちの救出。洗脳解除のメカニズムについては既に周知してる通り、相手のISに接触してワクチンを流し体内のBTナノマシンを無効化する。洗脳されてるされてないの有無は各機に搭載されたBTフィルターを通せばわかる。フィルター越しに紫色になっていれば洗脳、そうでないものは単純にナノマシンで強化してる奴らだ」
「フィルターに反応しないやつはボコっていいのよね」
「その通り。トラウマ叩き込むぐらいボコしてやれ。二度と馬鹿なこと考えられないぐらいギッタギタにな」
「恨みこもってんなぁ」
テロリストに慈悲はなし。漏れなく豚箱に叩きつけてやろう。
いまこそ正義という大義名分振りかざして誅罰だ誅罰。うーん我ながら危険思考。
「2つ目は首魁であるフランチェスカ・ルクナバルトの捕縛、もしくは排除。そして敵旗艦の撃沈です。これらがある限り、人類に安住の地はないも同然です」
使い勝手のよすぎるBTマインドコントロール。そして自由に動けるレーザー砲台搭載の高速戦艦。
なにより奴の思考は狂ってるという言葉すら生ぬるい。
「先ず、射程内に入った敵機体を学園機構で砲撃。敵が砲撃をかいくぐった後にEOS部隊を含めた砲撃部隊を展開。そのあとに主力IS部隊による戦闘を開始します」
「正面突破か? 我々が背水の陣を引く以上致し方ないと思うが」
「バトルフォートレスとやらの火力があれば充分可能なのでは?」
「そう単純に行けるのが理想だけど。敵IS1機1機の戦力も馬鹿にならない。だから少しばかり搦め手を使う。戦力の四分の一、20機を挟撃部隊として配置。我々は徐々に後退して敵部隊を引き入れ、挟撃部隊は海中で待機したのち浮上。敵の統率を崩し、一網打尽にします。大まかな作戦はこうです。ここまでで質問はありますか?」
古典的かつ単調にして単純。それでいて呆れるほど効果的な戦術。
いかに自由に飛べるISと言えど。この戦法は通用する。
正直博打だ。だが凝り固まった策を使えるほど自分たちは連携が取れていない。
それを分かっているからか、大半は異論を出さずに見極めている。
そんな中最前列に居た一夏が小さく手を挙げた。
「あまりこういうこと言うのって良くないのはわかってるけど言っていいか……勝てるか、俺たちは」
不安を隠しつつ、真っ直ぐな目を向ける。
作戦成功率、戦力の差。それで起こる結果を答えるのは簡単だ。
実際、これ以上の増援は見込めない。
ギリギリまで打診し続けてるけど、どの国も国土防衛に勤めるから援軍は出せないと。
正直言って勝てるかどうかなんて分からん。奇跡の一つくらいは起こしたいぐらいだ……
普段の俺なら確証はないなんて言うだろう。
だからこそこう言う。
「勝つよ。俺たちは勝つ。あんなふざけた思想掲げてはしゃいでる奴らに俺たちが負ける道理なんかない。俺たちは誰一人欠けることなく勝って大団円を迎えるんだ……だからみんな、力を貸してほしい。いつも通り、何処にでも転がってるような日常を迎えるために……だから勝つぞ、絶対に!」
力強い言葉に一夏の中にあった先ほどまでの不安は払拭された。
皆何処かで不安だった。勝てるか分からない戦いほど怖いものはないことを。
「お前にも働いてもらうぞ一夏。お前もキーマンの一人だからな」
「ああ任せろ。友達がここまで言って答えないのは男が廃るってもんだ!」
「待て、女も居るのを忘れるなよ?」
「でもこういう時の男の子って頼もしいと思うよ」
「指揮官が勝てと言うんだ。兵士は全力で応えねばなるまい」
「ていうか男なんてあんたら二人しか居ないんだから。一夏と疾風にばっかいい格好させないからね」
「フフ、みんなやる気満々ね」
「お姉ちゃんも人のこと言えないでしょ」
「私は疾風様を信じて戦います」
「わたくしも、とっくに覚悟は決めていますわ」
ほんと、こういう時の頼もしさと言ったらないね。
みんな色んなことにぶつかって、その度に壁を越えてきた。今回だってきっと乗り越えられる。
他の人達も、それを疑うことなく戦いに臨んでくれている。
「みんなありがとう。では次に戦闘での細かい配置を出していく。先ず、専用機持ち以外の生徒要員は…………」
ーーー◇ーーー
「んあーー終わったぁー眠いー」
作戦会議が終わってもやることは山積み。
敵が攻めてくるから改めてスケジュールの確認。各パイロットの合同訓練の見直し。戦術の見直しエトセトラエトセトラで時刻は23時に近づいていた。
学生がほぼ深夜まで労働って世も末だなぁ。本当に世も末だから笑えないけども。
明日から更にパターンを洗い出して、それからあれやこれや……やることが多い。
「ただいまですよー……と?」
部屋に入ると奥に明かりが。
もしかして起きてる?
「おかえりなさい疾風」
「ああただいま」
ベッドで本を読んでいたのはパジャマ代わりのネグリジェを着たセシリアだった。
同棲してた時から思っていたが、露出とかそういうのがない落ち着いた服なのに何故こうも色気があるのかこの15歳。
セシリアは操られていたからとは言えフランチェスカに一番近いポジションに居た。
そんな重要人物を監視なしはまずいから軟禁という名目上の理由をつけて再び俺たちは同室になった。
「起きてたのか、いつもならもう寝てる時間だろ」
「目が冴えてしまって。寝る前に少しお話をしたいと思ってましたし」
「そうかい。ちょい待ってて」
手洗いうがい歯磨きパジャマに着替えて直ぐにでも寝れるスタイルに。
セシリアにうながされるままベッドに腰をかけ……何故むくれてるのお嬢様
「疾風もっと近くに来なさい」
「いやセシリアさん。いくら恋仲になったとしてもまだ学生であるのだから節度ある距離感をだね。ましてや寝巻き同士で」
「帰ってから毎日一緒のベッドで寝てるではありませんか」
「いや確かにそうですけどもね」
誤解のないように言っておくと決してそういう意味ではなく文字通り寝るだけである。
セシリアの洗脳が解けたとはいえ彼女が俺を殺したというトラウマが払拭された訳ではなく、悪夢を見ることが多かった。
そして間の悪いことにIS学園の寮のベッドの間には仕切りがあるため隣のベッドの様子が見えづらく。悪夢から起きて直ぐ俺の体温を確認できないのが怖いのだと。
だから同じベットで寝ることが多くなった。勿論寝る時は背中合わせなんだけど高確率で抱き枕にされる。
幸福と苦痛が同時に来るのほんと助けて欲しい。マジで良い香りと柔らかいのがもう、ね。
なんて考えたらセシリアから距離を詰めてきました。このお嬢様積極的、やだドキドキしちゃう。
だがここ数日である程度態勢がついたからくっつかれたぐらいでは狼狽えぬ。たとえ谷間が少し見えていても狼狽えないぞー。
「ふふっ」
「人の気も知らないでリラックスしてまぁ」
「疾風は癒されませんの?」
「癒されますけども。ハロルドさんあたりにどやされそうで」
「挨拶に行かないとですね」
「胃が痛い」
セシリアを助け出して直ぐにチェルシーさんたちに電話した。
チェルシーさんはもう大騒ぎで、ハロルドさんは短く「ありがとう」と言ってくれた。
悪い印象にはなってないと思うけど。
「それで? 呼ばれる前に妙に疲れていたのはローランディフィルネイさんですか?」
「わかるか? あいつお前のことロックオンしてたぞ。『とても美しく、そして気高く強い心を持っている。そして触れれば割れてしまうほどの儚さを備えた女性だ』。だってさ」
「それはなんともまあ。過剰評価ではなくて?」
「そうか? 俺としてはバッチリ的を射ているよ。だからこそムカついた。流石99人の女心を鷲掴んだ女はちげーや。そして勝てる要素がなくて凹んでいるフツメン男がここに1人」
「あら。それはわたくしの見る目がないと言いたいのかしら?」
「…………奇跡起きたなぁって」
「こら。こっちを見なさい。その誰よりも格好いい顔をわたくしにお見せなさい。ほら、褒めちぎってあげますから!」
「ちょ、ま。あーー!」
や、やめろー! 俺はフツメンで充分だ!
自尊心が、自尊心が回復オーバーしちゃうから!
そっからまあワチャワチャと褒めちぎられて無事に赤面した俺は逆にセシリアを褒めちぎって喧嘩両成敗に落ち着いて事なきを得た。
おのれロランなにがし、許さんぞこの野郎。
「ふぅ。今日はお疲れ様。慣れないスタンスでしょうけど良くやってますよ貴方は」
「まーほんと慣れないけどね。でも案を煮詰めていけばみんなが危険な目にあう確率も低くなる。気が重いけどやる気はあるんだ」
みんな俺を信じて一緒に戦ってくれる。
その信頼に応えたいし、誰よりも戦ってみんなを楽させる。
新しいイーグルと俺ならそれが出来る。バトルフォートレスという頼もしい火力もある。
策も練り上げた。充分勝てる戦いだ。
それでも…………
「やっぱり怖いね。今まで以上に死が近くにある。俺に味方してくれるみんなは敵からしたら異教徒だ。加減なしに殺しに来る可能性だってある……あー嫌だね。命のやり取りなんて。俺は健全にバトルを楽しみたいのにさ」
「辛かったのですか。宣戦布告を行ったことを」
「いやそんなことはない。言いたいことも言えたしね。場を設けて貰ったのは逆に感謝すらある。それに、あれは誰よりもISを好きでいる俺がやらなきゃ駄目だ」
これはISのあり方を取り戻す戦いでもある。
勝っても負けても世界はISの兵器面に注視する。
ISは確かに兵器なのは事実。だがそれと同時に人々にとって身近なものでなければならない。
その為にもフランチェスカ・ルクナバルトはここで終わらせる。
世界の為、ISの為、そしてなによりセシリアの為に。
「ブリーフィングが終わった後に一夏と話したけどさ。あいつはやっぱ凄い。俺がみんなを守ってみせる、勿論疾風もだからなって。真剣な目で、本気で言ってみせるんだ」
誰かを守るなんて簡単に言えるし。16のガキンチョがなにを生意気に分不相応なこと言ってるんだと思うのが普通だろう。
だけど一夏はその意味と難しさを理解してるし。それでも諦めずに誰かを守るために戦うことが出来る。
無鉄砲と言えばそれまでだが。それを有言実行出来る力と心を持ってるのも確かな事実だ。
「俺は精々、好きな女一人を守るだけで手一杯だ。だから一夏のスタンスには、そうだな……憧れるってのが正解かな」
零落白夜の改善を行ってからあいつはメキメキと実力を伸ばし。
誰かを守るという戦い方を確固たるものにしつつある。
「疾風も誰かを守れる力はあると思いますよ」
「好きな奴を助ける為に自分の命を蔑ろにする大馬鹿野郎だぞ?」
「ええ、確かにそれは褒められたことではないでしょう、でも疾風は誰かを守ることが出来る強い男なのは間違いありませんわ。今回の作戦だって疾風は仲間の危機に駆けつける為に動くのでしょう?」
「まあ」
今回俺の役割は遊撃と撹乱だ。
イーグル・スフィアの高い空間把握能力を持って戦場を観測し、爆発的な機動力で突っ込む切り込み隊長ポジションだ。
その中での最優先事項は危機的状況に陥った味方の救援。細かく言うならば代表候補生以外の学生の護衛だ。
「比べる必要などありません、疾風は立派です。貴方に救われた私が言うのです。それでも信じられませんか?」
「そうだね。ありがとう」
「いいえ。でもその卑屈になる性分は一夏さんを見習って直して貰わないとですわ」
「はい。精進いたします」
こればっかりは自分に根付いちゃってるから直すのはまだまだ大変そうだなぁ。
未だセシリアの隣に相応しいと自信満々に言えないうちはまだまだってところだな。
「疾風。今回の戦いにおいて、私は叔母様と戦うことは出来ませんわ」
「奴のワンオフ・アビリティーでBT由来のエネルギーは封じられるもんな」
「ええ。相対的にあの人と戦うのは疾風になるでしょう。そこでお願いがあるのです……叔母様と話をさせてもらえないでしょうか」
「説得でもするつもりか? 流石にそれは」
「説得はしません。あの人は必ず打倒しなければならない人類にとっての天敵です。ですがわたくしは知りたいのです。何故叔母様がここまでの凶行に身を費やしたのかを。何故男性に対してそこまでの憎悪を身に宿したのかを。わたくしは何も知らないまま、この戦いを終わらせたくないのです」
セシリアの眼は本気だ。
話など通用する相手ではない。だけどそれでも真実を知りたい。
理屈ではない。形容できない感情がそれを知りたがっている。
「わかった。その時は仲介するよ。満足いくまで話すと良い」
「ありがとうございます疾風。必ず勝って、そして生きて帰りましょう。あなたの背中はわたくしが守りますわ」
「ああ、ありがとうセシリア」
やっぱりセシリアは凄い。
少し話しただけで心のつっかえがなくなっていく。
触れている身体からセシリアの体温が流れていくように暖かい。この暖かさを守らなければ。
まだまだ俺は生き足りない。セシリアとこれからを歩くためにも。必ず生きて勝つんだ。
「ふぁ……なんか安心したら一気に眠気が」
「でしたら直ぐに寝ましょう。さあさあ一緒に寝ましょう疾風」
「わかったわかった引っ張らないでセシリアさん。押し倒しちゃったらどうするのさ」
「わたくしは一向に構いませんわ!」
「俺が構います勘弁して下さい」
「ヘタレですわねぇ。男は獣と言ったのは何処の誰だったかしら」
「ヘタレじゃない紳士だ。今はこれで許してね」
せめてもの気持ちと彼女の頬にキスをする。
いま唇に落としたらどうなるかわからんからね。
少々不満げな彼女の隣に寝転がる。今日抱き枕にされるか否かは明日の朝が教えてくれることだろう。
ーーー◇ーーー
「壮観だな。この数のISが揃うのは」
IS学園海洋方面。学園近海で反応を捉えたブルー・ブラッド・ブルーを迎え撃つべくIS学園軍全勢力が一斉に並び立つ。
後方にはレールカノンを装備したEOSを控え、準備は万全だ。
「いよいよですわね」
「ああ………」
「どうかしまして?」
「いや。セシリアのブルー・ティアーズに見惚れたんだ」
本来順当にシフトアップするはずだったそれはフランチェスカがファクター・コードを利用して半ば強制的にシフトアップさせたものだ。
俺的には支配を意味するドミネイトというネームがセシリアの機体にあるのは中々我慢できるものではないとして。名を変えさせてもらった。
リベレイト・ブルー・ティアーズ。
解放、自由を意味するそれはセシリアにも好評だった。
機体性能はそのままだが、カラーリングにも手を加えられており。蒼、黒、白に加えてイーグルのパーソナルカラーである空色が加えられた。
その姿は大型ウィングバインダーも相まって天使のように映り。ある種の神々しい雰囲気を放っていた。
余談ではあるが、味方機として接収されたクリア・ティアーズも白色から空色に塗装されている。
これはフランチェスカに対する意趣返し、といった意味もあるが果たして伝わるだろうか。
「ありがとう疾風。貴方が付けてくださったこの名に違わぬ活躍をしてみせますわ」
「期待してる。今回は俺とお前が要だ、頼むぞセシリア」
「ええ、お任せを」
「もしもーし。良い雰囲気のとこ悪いけど、フランなんとかからビデオ通信が来てるよー」
チッ。見計らったかのように入れてきやがって。
篠ノ之博士に了解の意を伝えチャンネルを開くと、あーもう耳が腐る声が流れてきた。
『我々ブルー・ブラッド・ブルーの崇高な使命に反逆する愚か者、そして世界の癌細胞たる疾風・レーテルハイトに告ぐ。今すぐ武装解除し、IS学園とISを明け渡しなさい。これは最後通告です。万に一つも勝ち目などないこの状況で無駄な血を流すのは双方にとって不本意なはず。賢明な判断を期待致します』
「おーよかったな一夏。おまえ許されたぞ」
「今ので出る第一声がそれなのかお前」
んー? 別にあいつの言葉に価値つけることなくない?
崇高な使命っていう大言壮語に酔ってる奴等の脅しに屈するような奴等がここに居るとは思えないしね。
俺はバススロットから取り出したメガホン型通信機を口に当てておもむろに喋り始めた。
それはもうほがらかに。
「えーー、世界中の男性と女性、そしてそうでない人類に変わって警告する。今すぐ小学生が3秒で考えたような世界征服という陳腐な野望を捨て、武装解除して観念せよ!
というか改めて宣戦布告するなんて騎士でも気取ってるのか? アホらしい、テロリストが騎士気取るのはアニメだけで充分だ。……あー失礼したさっきの返答がまだだったな。クソ喰らえだ!! 以上、諸君らに備わってるかわからない欠片ほどの理性に期待する」
ある者は引き、ある者は笑いをこらえている。
降伏勧告させる気あるのかって?
あるわけ無いじゃん。むしろされたら反応に困りますし信じるわけ無いですし。
まあ効果はあったんじゃないかな。少なくとも通信越しの奴には。
「ふ、フフフ。良いでしょう、ならお望み通り叩き潰してあげます。精々自分たちの愚かさに後悔すると良いわ」
「御託は良いからさっさと攻めてこいよ日和ってんのかチキン。いや失礼俺たちと同じ人間でしたね、残念ながら」
「っ!! IS、ワルキューレ出撃! 疾風・レーデルハイトに従う愚か者共を叩き潰せ!!」
ヒステリーがキレて攻めてくるわ、おー怖。
しかし効果は覿面だろう。ミサンドリーは揃いも揃って短気だし、女尊男卑思考を植え付けられた洗脳人員ならなおのことだ。
「こちらCIC。敵旗艦からIS反応あり、機数105。フランチェスカ・ルクナバルトのISは確認できていない」
105機、敵総数が145機だから後詰めに40機温存か。
戦力の逐次投入か、あるいは……
「敵IS射程内到達、並びに敵旗艦の主砲射程内まであと10分」
「了解。全機戦闘準備! 大まかな作戦はブリーフィングどおりだ! 頼むぞ、こんな下らない戦いで死ぬな!!」
「「了解!!」」
「御厨所長、起動お願いします!」
「了解」
IS学園地下CICルーム中央に立つ麻美は胸元に付けられた待機形態である梟のブローチに手を当て、意識を流し込む。
「行くわよ、ミネルヴァ」
展開光から一瞬で現出したそれは他のISとは明らかに掛け離れた外見をしていた。
先ず目を引くのは背中に付けられた航空管制機に酷似した2基のレドームアンテナ。
両肩にフィン状のアンテナユニット、機体各所に演算補助用スーパーコンピュータとそれを補助するための電力供給ユニット、冷却ユニットを装備。
ハイパーセンサーユニットは天使の輪を模した広域管制仕様。
戦闘能力を犠牲にこれでもかと情報処理特化に改造したそのISこそ御厨麻美の専用機、ミネルヴァの姿である。
その情報戦能力は、かの篠ノ之束のそれに匹敵するスペックを有している。
黒に白のツートーンという落ち着いた配色のISに優先ケーブルが接続。
複数のパスワードを入力し、ミネルヴァはIS学園のメインシステムとリンクした。
これで彼女とミネルヴァはIS学園とその周辺全てを把握することが出来る。勿論、IS学園の切り札さえも。
IS学園へのアクセス権。それはミネルヴァの設計思想に備わっていた機能であった。
「オペレーション・バトルフォートレス、起動」
無数のホロウィンドウに包まれ、麻美はIS学園の最奥を紐解いた。
変化は直ぐに現れた。
IS学園各所の地面が開き、至る所から数々の兵装が迫り出した。
そこかしこにSAMとVLSが生え、近接戦闘用にパルスレーザー機銃とAAGUN、副砲として電磁レール砲台とビーム砲台が。
海面からは巨大なモノリス状のシールドジェネレーターが学園を囲うように浮上。IS学園全体をすっぽり覆うエネルギーシールドを展開した。
半数の兵装の外を覆うこのシールドは兵装使用時に射線状のシールドを部分解除し、攻防共に隙のない使用となっている。
更に度肝を抜いたのはビル数階分に及ぶ長さを持った超大型荷電粒子ビームブラスターが一基。
そして第二主砲として400ミリレールキャノンがIS学園周辺を囲うように等間隔で3基置かれた。
一瞬で世界中の軍事基地を凌駕する正にハリネズミのような兵装の数々。
これこそが世界のパワーバランスを崩すと言われ厳重に管理封印していたIS学園の真の姿。
オペレーション・バトルフォートレスの勇姿であった。
「敵部隊、まもなく有効射程内。ビームブラスター【アラヤ】。レールキャノン【ガイア】の充填完了。VLS、副砲発射体制完了」
「敵有効射程内に入り次第、砲撃開始」
「了解、カウントダウンスタート。30、29、28」
カウントが進むことに心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
もう後戻りは出来ない。する気はないと分かっていても武者震いが起こる。
ふいにセシリアの方を向くと。視線に気付いた彼女が微笑みながら頷いた。
勝つ、俺たちの未来の為にも。
今までやられた全て、まとめて返してやる!!
「5、4、3、2、1……」
「全砲門! 撃ち方始めぇっ!!」
バトルフォートレスの火線が一斉に開く。
開戦の鐘がなった。
後にIS学園戦役と名付けれた、歴史上初めてISが使われた本格的な戦争。
その火蓋が、いま切って落とされた。
どうも読者の皆様。仕事が忙しい季節になってきたブレイブです。
スランプを振り切り、そして二万近く書いてしまいました。
情報量多いけど混乱してないかしら。わからないから我武者羅に書くのは今も昔も変わりませんね。
久しぶりに疾風とセシリアの絡みが書けました。
もっと糖度含ませた話を書きたいですが、今はこれが限界かな。もっとイチャコラさせたい親心です。
新キャラである秋山杏樹さんですが。元ネタは分かる人には分かるでしょう。月光、二刀流、そして名前と台詞を加味すれば自然とCVがイメージ出来ちゃうかも?
そしてやっと出せた新IS2機。セシリアのリベレイト・ブルー・ティアーズと御厨所長のミネルヴァ。
この名前はずっと前から決めていて。出したくてウズウズしていました。
次回、ついにIS学園戦役開始。
バトルフォートレスも大暴れします。ぶっちゃけ過剰火力です。お楽しみに