IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第143話【IS学園戦役】

 

 

 前線に出ているISは105機。

 人型BT兵器ワルキューレに至っては1000機は余裕で超えている。

 単純な戦力数なら10倍以上の戦力差。

 

 ブルー・ブラッド・ブルーのIS乗りは誰しも勝利を確信している。それも絶対的に。

 

 自分たちは選ばれた者、大いなる意志の名のもとにある。

 それを理解しない者たちに負けるはずが無い。彼らを排除し、世界に新たな秩序を作ることを疑わない。

 

 だがその伸び切った天狗の鼻のようなプライドは直ぐ様折られることになる。 

 

 開戦開始。口火を切ったのはIS学園の砲撃。

 空間全てを埋め尽くさんばかりのビーム、レールガンの閃光がブルー・ブラッド・ブルーのワルキューレをスクラップに変える。

 

 だがISは掠めはするが当たらない。ブルー・ブラッド・ナノマシンで強化され、更にそれを拡張するハイパーセンサーを有したISは遠方からの砲撃を避けることなど造作もない。

 

「噂のバトルフォートレスも大した事ないな! この程度の砲撃で仕留めようなど!」

「上空ミサイル多数接近!」

「迎撃!!」

 

 クリア・ティアーズ部隊が一斉にビットを射出。ライフルと合わせて迎撃。ワルキューレのレーザーガンを総動員し、夥しいレーザーの弾幕がミサイルの雨に殺到する。

 

「第一陣、起爆」

 

 リモート操作で爆発されたミサイルの一部が爆発。白く光るチャフのような物が広がる。

 コケ威しと見たブルー側のレーザーはそのまま直進し、着弾前に拡散、消失した。

 

「対レーザー撹乱膜!? まだ試作段階の兵器だぞ!?」

 

 消失したレーザーを突っ切り第ニ陣のフレシェット弾頭ミサイルが破裂。

 一瞬青空が灰色に染まるほどの鉄の矢が敵部隊に降り注ぐ。

 ISに対しては微々たるものだが。シールドが施されていないワルキューレやビット兵器は尽く貫かれ爆散。

 

「小癪な真似を! だがこれで止まるほど甘くは」

「前、砲撃!!」

「なっ?」

 

 戦場で止まるISなどただの的。正確無比なコースで放たれたレールガンがクリア・ティアーズに直撃した。

 

「全機高度を下げろ! 射線を切って進め!」

「こんな遠距離でこの精度だと!?」

「下から何かが、ミサイル!?」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 前方で爆炎が上がり、それを突き破るようにビームとレールガンが飛んでいく。

 時々400ミリレールガン【ガイア】のバシュッと撃ち出されたグレネード弾頭が爆炎の華を咲かせ。大型荷電粒子ビーム砲【アラヤ】の極太ビームがワルキューレごと敵ISを焼いていく。

 

「こちらミネルヴァ、第一陣攻撃成功。海中からの雷撃の命中も確認しました。ワルキューレの損耗率10%。IS2機の撃墜を確認、続いてもう1機撃墜」

「流石に砲撃戦では終わってくれないか」

「しかし疾風、この砲撃性能は予想以上だぞ。普通砲撃でISは落ちん」

 

 古来よりISはISでしか落とせないという風潮は白騎士の白騎士事件から始まりIS黎明期時代の第一世代型ISがそれを証明した。

 戦闘機を超える自由な戦闘機動、戦車より強固なシールドバリア。

 

 既存兵器では傷つかない圧倒的な戦略兵器群であるインフィニット・ストラトス。

 現にISを使わない砲撃でIS落とせるほどの攻撃型防衛を行える軍事施設はこの世に存在しなかった。今日までは。

 

 超兵器たるISを撃ち落とせるIS学園のバトルフォートレスは正にこのIS時代に置ける禁じ手に相応しかった。

 だとしても狙ってISを落とせるのは異常であり、この命中精度を保つ立役者は麻美さんとミネルヴァだ。

 篠ノ之博士に匹敵する情報処理能力で敵が嫌がる攻撃を確実にぶちかましてくれている。

 現に初撃を躱してみせた敵陣営ISは動揺からか被弾が多くなっている。

 

「アラヤ、ガイア、共に射撃限界。冷却フェーズに移行。砲撃再開まで5分。敵IS、まもなく第二次防衛圏に侵入」

「アウトレンジ部隊、砲狙撃戦開始!」

 

 第二次砲撃戦開始。バトルフォートレスの砲撃に加え長距離攻撃手段を持つISによる砲狙撃が殺到。

 実弾、ビーム、レーザー、プラズマ、ミサイル、グレネードといった多種多様な遠距離武装が揃って火を吹く。

 だが敵は腐ってもIS、その速さで砲撃にぶつかりながらもこちらに向かってくる。

 

「こちらEOS部隊、砲撃を開始する」

「了解。EOS部隊、無理だけはしないで下さいよ」

「わかってますよ御曹子。俺たちも下らない戦いとやらで死ぬつもりはないですからね!」

「けどあいつらの弔い合戦はしてやります!」

「行くぞお前ら! レーデルハイト魂!!」

「「「レーデルハイト魂!!」」」

「シュヴァルツェ・ハーゼも続くぞ!」

「砲撃開始、撃てぇぇ!!」

「私たちもやりますか! 黒ウサギ魂!!」

「「「黒ウサギ魂!!」」」

 

 今作戦の砲撃支援を担うレーデルハイト工業の退役軍人とシュヴァルツェ・ハーゼが乗る砲撃支援特化型EOS。

 レーゲンと同様のドイツ製IS規格レールカノンと近接攻撃用のミサイル。そして防御用にフレキシブルアームに懸架されたプラズマシールドを装備している。

 EOSのバッテリーでは瞬時にパワーダウンする装備だがIS学園から直接電力ケーブルを繋ぐことでエネルギー不足を解消している。

 

 しかしEOSのFCSは発展途上故ISを狙うには忍びない。それでも発射されたグレネードや散弾弾頭はワルキューレの数を的確に減らしていた。

 

 それでもワラワラフヨフヨ飛んで来てるよ人形が。

 ISのスピードに付いてきてるってことは外付けロケットブースターでも付けてるのか? 

 

『ワルキューレ20%損失! IS4機撃墜! 敵要塞の防衛能力が桁違いです!』

『ええい! 乱戦に持ち込めば砲撃も収まる! 艦首主砲キャスパリーグ発射用意! 戦場に風穴を空ける!!』

「敵部隊、第三陣突入まで1分……敵戦艦から高エネルギー反応検知! 例の大型レーザーキャノンと推測。射線予測表示します、回避を!」

「来るか! 総員退避!!」

『主砲キャスパリーグ、撃てぇっ!!』

 

 遠くからでも認識できる光。

 一瞬キラッと光った砲身からアラヤより高出力な白色レーザーが発射された。

 海を割りながら進む巨大な白色の光。対抗できるアラヤはいま冷却中。

 これを喰らえばシールドバリアに相当な負荷がかかり、兵装に回される電力に支障が来る可能性がある。

 だが問題なし。バトルフォートレスを嘗めてもらっては困る。

 

「シールドバリア、前方に出力30%集中。モノリス、エネルギーチャージ完了。エナジーカーテン、照射」

 

 前方に向いていた三つのシールドジェネレーター【モノリス】からレーザーが発射され、3本の交差点からオーロラのような分厚いバリアが広がる。

 敵主砲キャスパリーグとエナジーカーテンが衝突すると、レーザーはカーテン内で細かく細分化され、拡散された粒子レーザーがシールドバリアにぶつかるも、さしたるダメージを与えるに至らなかった。

 

 エナジーカーテンは攻撃を防ぐバリアのような物だが。厳密に言えば巨大な粒子濾過障壁だ。

 衝突した光学兵器はカーテン内部で流動する激しい波に噛み砕かれ、濾過しきれないものは威力が減少、粒子となって背後のシールドバリアが防ぐ二段構えの防衛機構。

 分かりやすく言うならストレートからシャワーになった水道だろうか? 理論上はエクスカリバーの射撃も防ぐことが可能だとか。勿論それと同等の敵主砲も同様に。

 

『キャスパリーグ放射終了。IS学園の損害は認められず!』

『そんな、エクスカリバー級の砲撃なのに!』

『狼狽えるな! 風穴は空いた! 敵の包囲が戻る前に突破を!』

『敵IS2機が突出しました! 識別は、ブルー・ティアーズとスカイブルー・イーグルです!』

『なんですって!?』

 

 砲撃が終わった瞬間俺とセシリアは中央から高速で先行する。

 目の前には依然と比較にならないISとワルキューレの群れ。

 

「作戦を第二段階に移行! 俺とセシリアが敵部隊を撹乱する! 混乱したところを崩せ!」

「疾風、お先に!」

「おう! そいつのポテンシャルを俺に見せてくれ!」

「ええ! 行きますわよティアーズ!!」

 

 大型カスタム・ウィングの大出力飛行のままセシリアは全身のビットを射出した。

 

 第二次形態移行(セカンド・シフト)に移行したドミネイト、並びにリベレイト・ブルー・ティアーズの最大の変化は元の3倍の量に増えたBTビットだろう。

 

 スカートに6基、ウィングバインダーに12基搭載された通常のBTビットのアップグレード版である【ハーモニクス】

 両肩に搭載され、2基に分離可能なアルペジオの発展型である【アルペジオⅡ】が合計4基。

 そして膝にはサイレント・ゼフィルスに搭載された物より強力なシールドビット【フェローチェ】が2基。

 そして動力にはイーグルのBT粒子版であるBTエクストラクターにより燃費の心配もない。

 

 だが24機というビットの同時操作。これほどのBTコントロールを常人が行えば自機の行動不能どころか脳に相当な負荷がかかるだろう。

 だが開発当初の基準値を参照したセシリアの現BT適正値は実に150%。ファクター・コードを使用した際は200%に跳ね上がる。

 24基のビットを操るなど造作もない事であった。

 

「来たぞ、撃て!」

「こっちの方が数は上だ、押しつぶせぇ!!」

 

 敵のクリア・ティアーズからレーザーが放たれる。

 視界が青白く染まるほどの弾幕を華麗に避け、時にはフェローチェやハーモニクス数基で展開するバリアで捌いていく。

 

 ビットを自機周辺に展開したままスターライト・ブレイザーを構える。

 ブレイザーの砲身が開き、蒼白いスパークを発しながらBT粒子をチャージ。

 

 数の差は歴然。敵の機体はかつてのブルー・ティアーズと同等かそれ以上のスペックを有している。

 

 だからどうしたというのか。セシリアは真っすぐ眼前の敵を視界に収め、掌握する。

 今のセシリア・オルコットにとって数的優勢は勝敗の絶対条件になりはしない。

 

 目標移動予測。思考演算マルチロックオン完了。

 蒼き指揮者にして奏者が指揮棒を振り下ろす。

 

「踊り手散りなさい! 私とリベレイト・ブルー・ティアーズが織りなす小夜曲(セレナーデ)に!!」

 

 高速機動からの一斉射撃。

 ブルー・ティアーズの時より更に青みがかった高出力レーザーが24機の弓兵から乱れ撃たれ。ブレイザーから極太の照射レーザーが発射。

 

 連射される24基のレーザーから弾幕、中央を切り裂く極太レーザー。

 本来これだけでも驚異的な面制圧、だがセシリアはそれに手を加え変化。放たれた半分が不規則に偏光制御射撃(フレキシブル)

 極太のレーザーは一定位置で拡散、更に不規則に軌道を捻じ曲げる枝分かれ(ブランチ)シュートに変貌した。

 

 一瞬で敵と同等の弾幕が殺到。ナノマシンで感覚や反射神経を強化しようとその反応速度を潰す弾幕で包めば問題ない。

 むしろその程度でセシリア・オルコットから逃れられる道理はない。

 

 偏光制御射撃(フレキシブル)混じりの面制圧の攻撃で一区画にいたワルキューレは消滅。

 そのままセシリアは敵中央に潜り込み内部からレーザーを撒き散らしていく。

 

(裏切り者め! 調子に乗るな!)

 

 背後を取ったクリア・ティアーズのフルバースト。

 完璧な射撃コース、完璧な偏差射撃。必中を確信しニヤリと笑みが浮かぶ。

 

 だがセシリアは僅かに機体を逸らすことで全弾回避してみせた

 

「見えてますわ! そのおざなりな射撃は!」

「なにっ!? あぁぁぁっ!!」

 

 敵意を見せたものは見逃さない。

 一瞬にして全ビットに包囲された敵機は絶望を顔に滲ませながら蜂の巣されて海に落ちた。

 

「こいつ当たらない!」

「これだけ撃ってるのにビットにすら掠らないなんて!」

「うわっ、私のビットが!」

「全部見えてると言うのかこの女!!」

 

 四方八方から迫るレーザーをまるで妖精のようにヒラリと躱すセシリアは敵のビット兵器を察知し的確に戦力を削ぎ、本体に射撃を撃ち込む。蝶のように舞い、蜂のように刺すとは正にこのことだ。

 からくり、と表現するのは些か間違いはあれど。それはセシリアが持つ特異技能が関係していた。

 

 BTセンス。

 BT適正値が100%に到達した者が行き着く、ISによって拡張された超過感覚。

 偏光制御射撃(フレキシブル)の発動やビットの操作性の向上が主な能力だが。その先を開花したものは空間認識能力の拡張だ。

 

 フランチェスカに洗脳されたセシリアは強化された感覚能力のまま第二次形態移行(セカンド・シフト)に移行した。

 それに合わせるようにブルー・ティアーズはセシリアに合わせて進化され。BTセンスをより精密かつ広範囲に拡張する機能を会得。

 それこそがBT兵器の操作をサポートする思考並列型OS【コンダクター】

 リベレイト・ブルー・ティアーズが奏者であるセシリアの高いBT操作を更なる高みに昇華する為に生み出した贈り物。

 

 IS本来の全方位視界、ハイパーセンサー、そしてコンダクターを備え。破格のBTセンスを獲得したセシリアにもはや死角という概念は存在していなかった。

 XYZ軸360度全方位にレーザーを撒き散らすセシリアとリベレイト・ブルー・ティアーズのそれはティアーズ・コーポレーションが追い求めた最高傑作。

 その傑物が悪逆を撃たんと引き金を引く。

 

「おー……」

《惚けつつも敵を撃墜するマスターがここに》

「あ、すまん。あまりにも綺麗でな。だって圧倒的じゃないか俺のガールフレンド」

「疾風・レーデルハイトだ!」

「殺せ! 奴の首をクイーンに捧げるんだ!!」

「何処の戦国時代だよ。今は令和だそ令和」

 

 セシリアが織りなす光の軌跡に思わず目を奪われながらも殺意むき出しの敵にクラレントでバスバス撃ち落としていく。

 

「こっちも負けてられねえ。さあ花火に突っ込むぜ相棒!!」

《了解! イーグルスフィア演算出力上昇。ジェネレーター出力再上昇。システムPGC再展開!》

「行くぜオラぁぁぁぁ!!」

 

 二段階瞬時加速(ダブル・イグニッション・ブースト)、からの個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)

 

 通常のISなら骨折不可避な法外かつ埒外な機動をPGCで打ち消したままラウンズを射出しセシリアと敵のレーザーが入り混じる正に花火会場に乱入する。

 俺に気づくや否や取り憑かれたように俺に憎悪をぶつけるミサンドリー共。

 

 現在この戦場で一番ヘイトを向いてるのは俺だ。精々囮として有効活用させて頂こう。

 

「逃がすな! 囲い込め!!」

「はい鬼さんこちら! 手のなる方へ!」

「こいつ! やっぱ速い!」

「焦るな、前より少し動きが鈍い! 落ち着いて撃てば」

「後ろからこんにちは」

「!!?」

 

 声がするや後ろを振り返るがいない、と思ったら後頭部に衝撃。再度振り向いた先にはクラレント、アロンダイト、プリドゥエンの銃口が覗いていた。

 

「ババン!」

「うわぁ!!」

「よくも! あれ、あいつ何処!」

「こっちだウスノロ!!」

 

 真下からロンゴミニアドをぶち当て離脱。

 敵の目を引きながら全方位に生成したプラズマスピアをぶん投げ、通りすがりのワルキューレ数機をラウンズで微塵切り。

 ある者は斬り、ある者は撃ち抜かれ、ある者はプラズマに焼かれる。

 

 ファクター・コードを使っていないからセシリアの時より動きは格段に鈍っているとはいえISのスペックと鍛えてきた動体視力と技量で戦場を掻き乱しに掻き乱す。

 

 恐ろしいのは俺の動きだけではない。

 それは今もなおセシリアの射撃が継続しているということ。それどころかセシリアのレーザーの雨に自ら突っ込んで行く俺とイーグル。

 正気の沙汰ではない。得意の高速機動もレーザーの射線で制限され、フレンドリーファイアに陥るのは明白。

 

 だがセシリアのレーザーが当たることはない。

 降りしきるレーザーの隙間を縫うように、そして置き去りにするように飛び周りワルキューレを、そして敵ISに斬りかかる。

 敵も弱くはない。ブルー・ティアーズの量産機にナノマシンブーストされた兵士。現に面食らったセシリアの射撃に対応するものも現れる。

 だというのに捕らえられない。そして躱しきれない。

 

 疾風を狙おうとすればセシリアのレーザーが。

 セシリアを狙えば疾風の超高速機動とプラズマが。

 

 縦横無尽に暴れまわる2機の第二次形態移行(セカンド・シフト)IS。ファクター・コードなしでも想定以上の脅威として立ちはだかった。

 

 俺が目立ちに目立ってるから刺さるわ刺さる鋭い視線。

 殺意剥き出しなその醜悪な鼻っ面に。

 

「ロケットキーック!」

「ぐぁっ!」

「更にキーック!!」

「ぐへあっ!」

「きゃあ!?」

「超☆エキサイティン!!」

 

 脚部から射出したカヴァスをぶち当て、更に膝蹴りをぶち当てたままスピートを緩めず近くのクリア・ティアーズにぶつけ。零距離で射撃武装一斉射。

 ヒールバンカーで蹴り落とした敵をラウンズで追撃させ、味方をぶつけられた敵に目を向ける。

 

 BTフィルターに反応。紫色の反応、洗脳されたパイロットを見るや連続クイックブーストで背後に周ってウィング部分を掴んだまま海面に叩きつけるようにブースト! 

 

「んぐっ!」

「大丈夫、直ぐ済ませますから!」

 

 海面を滑りながら頭を掴み取りワクチンプログラムを流し込む。

 

「博士!」

『はいはーい』

 

 ワクチンプログラムでナノマシンのシステムを侵食し、IS学園に居る篠ノ之博士がナノマシンを完全破壊する。

 俺たちがやるのは飽くまで洗脳解除の鍵を開けること。そこから先は篠ノ之博士の仕事だが、セシリアのそれと比べれば片手間で終わる作業だ。

 実際に片手間でやってる博士はホントぶっ壊れてると思う。

 

 と一瞬遠い目になってる間に処置が終わった。

 その間に後からバシバシ撃たれてるがしっかり防御、効かぬよその程度では。

 

「ん? あれ? ここ何処? 海? え、IS乗ってるなんで!?」

「目が覚めましたか! よし成功だ!」

「え? あなた疾風・レーデルハイト? え、ええほんとどうなってるの!? てかどういう状況!? ISがなんでこんないっぱい」

「詳しい話の前にIS学園の方に向かってください! 事情はそこで!」

「IS学園? ほんとだIS学園がある! とりあえずわかったわ!」

 

 洗脳解除した人が狙われないように再び囮になる。

 運良く隙間時間見つけて助け出したが、やっぱり今の段階ではいささかキツい。

 ならば! 

 

「セシリア上がれ!」

「はい!」

 

 敵のど真ん中を突っ切って2機が急上昇。

 敵陣全体を見渡せる位置で全兵装展開。

 

「チャージ完了。プラズマスピア生成、展開!」

「BTマイクロミサイル、セット。BTビット全基、ブレイザーのエネルギー充填完了」

「「ハイパーセンサーリンク。ターゲットマルチロック!」」

 

 円環状に展開された20本のプラズマスピア。

 下から撃たれるレーザーを防ぎつつ。ロックオン完了。

 

「「行けぇぇぇぇーーっ!!」」

 

 プラズマスピア、BTレーザー、BTマイクロミサイル、レールガン、プラズマバレット、陽電子ビームが一斉に降り注いだ。

 

 その火線の総量は敵のレーザー弾幕とは比べるまでもなく少ない。

 だが計算されつくしたその弾道は密集された陣地を混乱に落とすには十二分の効力を発揮した。

 

「露払いはした! 全機進軍!」

「ねえここで言うことじゃないけどさ。もうあの2人だけでいいんじゃない?」

「安心しろ鈴。私たちの出番はあるらしい」

「まあISって硬いからね。強敵もちゃんと残ってるよ」

 

 一発食らえば爆散する大抵のSFロボットアニメと違い、ISはシールドバリアと絶対防御があるおかげで多少叩いただけでは行動不能になりはしない。

 

 イーグルとティアーズが介入してから3分の間に撃墜したISが10機に対してシールドバリアのないワルキューレが347機も撃墜されている事を踏まえるとその差は歴然だろう。

 

 ……いや。いくらISと比べて動きが鈍く紙装甲なワルキューレが相手とはいえ1分100体ペースで破壊した挙句IS10機落とすのは我ながらヤバいな。

 

 適合率とか相性とか第二次形態移行(セカンド・シフト)とかフォートレスの援護とか奇襲で意表を突いたとか色々要因はあれどイーグルとティアーズのポテンシャルの高さがわかる。

 

「セシリア、エネルギーは」

「BTエクストラクター込みでまだ行けますわ!」

「よし。このまま作戦通りに行こう」

 

 ともかく最初の役目は果たした。

 敵は度重なる予想外に当てられて士気が下がっている。ここから当初の予定通り全体を撹乱していけば。

 

 だが敵も馬鹿ではないらしい。

 戦域に戻ろうとする俺とセシリアに2種類のレーザーが襲いかかる。

 一つはセシリアと遜色ないレベルの偏光制御射撃(フレキシブル)レーザー。

 もう一つは乱反射しながら降り注ぐレーザーの乱舞。

 

 それはこちらの進路を絶妙に阻害し、俺たちを分断する射撃だった。

 

《高速で接近中のISを確認。数は2!》

 

 イーグルの警告とほぼ同じく衝撃が走る。

 

 セシリアのスターライト・ブレイザーに突き立てたのはライフルのバヨネット。

 俺のアロンダイトに斬りかかったのは無数の鉄の剣だった。

 

「セシリア! 引き離されたか!」

 

 俺に襲いかかったのは見たことないIS。だがセシリアから貰った情報を見るに見当はついた。

 

 全身が光沢のある流体金属を固めたようなアーマー。

 背部の大型スラスターからはBTシリーズ特有の光波スラスターの光。

 本来の装甲の薄さを見ると一番近いのは会長のミステリアス・レイディか。あっちは水を操るが、こいつが操るのは。

 

「よそ見してる暇があるのですか!」

 

 肩装甲の一部が触腕に変化。その鋭い切っ先が迷うことなく首筋を斬り落とす為に振り下ろされるのをプリドゥエンのソードで受け止め、逆に跳ね返した。

 

「液体金属を操るIS。名前はアイアン・メイデン、だったか。鉄の処女って物騒な名前だなぁ。あれって拷問器具という名の処刑器具だよな。主食は処女の生き血か? うわ処女厨かよドン引きぃ!」

「聞いた通りよく回る口ですね。お望み通り針串刺しにしてあげましょうか?」

「ちなみに私はバキバキの童貞ですが血をあげるつもりはありませんのでご了承ください。えーと、えーーと…………名前なんでしたっけ? 確か……なんとかダグラス!」

「それは流星の方だマスター。彼女はアイビス・バートリー。フランチェスカの秘書だ」

 

 あーそうだった確かそんな名前だったわ。

 しかし液体金属を操るISって敵ながらカッコいいな。

 てかバートリーってマジ子孫の可能性ある? 流石に偶然の一致だと思いたいな。セシリアの貞操的な意味で。

 

「き、聞いた通り無礼が服を来てるような男ですね。少しは女性に対して敬意を払うものですが」

「すいません。あなた達に尊重や尊敬の要素見つからなくてぇ。顔洗って出直してきてください。丁度そこにありますよ、塩水」

「本当に! 本当に無礼な男だなぁ! お望み通り斬り刻んでやる!!」

「あ、敬語取れた。そっちが素か、案外早く取れたな化けの皮」

「死ねやオラぁぁ!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「疾風と離されましたわ。相手はバートリーさん、厄介ですわね……そしてわたくしには貴方ですか。サイレント・ゼフィルス」

 

 睨みを利かせた先にはBT2号機サイレント・ゼフィルス、その乗り手であるМ。

 変わらず人を小馬鹿にするような笑みを浮かべている。

 

「今にして思えば。サイレント・ゼフィルス強奪というのは茶番。本当は強奪に見せかけた譲渡という訳ですか」

「その通りだ。それを知らずに貴族の務めなどと抜かして躍起になったお前は見ものだったぞ」

「お気に召したようで何よりですわ。それで? 今回は街を人質に取りながらわたくしに一矢報われた仕返しということでよろしいのかしら?」

「フン。口の回りようも疾風・レーデルハイトに似たようだな。第二次形態移行(セカンド・シフト)した程度で良い気になるなよっ」

 

 ゼフィルスのBTビット6基。シールドビット、エネルギーアンブレラ2基展開する。

 総数で言えばリベレイトの3分の1のビット保有数。だがМは自分が負けることなど欠片も思ってないようだ。

 

「今日は遊び無しだ。クイーンには協力しろとは言われたが貴様に危害を加えるなとも言われていない。今度は刺し貫くだけでは済まさん。四肢の1、2本は斬り落としてやる」

「お生憎様。疾風の為にもこれ以上玉の肌をつけるわけには参りませんので!」

 

 ティアーズの全ビットをパージ。先ほどの奇襲でセシリアの射撃能力はМも目撃している。身構えるМ、だがセシリアは予想だにしない行動に出た。

 手元に残したのはハーモニクス6基とフェローチェ2基のみ。

 アルペジオⅡを含めた残り16基は何を思ったのか後方の味方機の援護に向かわれたのだ。

 

 奇しくもサイレント・ゼフィルスと同数同種類の武器構成となった。

 

「なんのつもりだ」

「あの時、わたくしは貴方にアンフェアを突きつけられましたわ。そんな貴方にフェアプレイで跪かせればこれ以上痛快なことはないと思いまして。それにビットの数が多かったから負けた、なんて幼稚な屁理屈を立てられたら溜まった物ではありませんもの、ね?」

 

 ニコリと挑発的な笑みを浮かべるセシリアにМは背筋に冷えたものを感じた。

 あの時も突如痛みに歪んだ顔から変化した笑顔。セシリアに不意を突かれてから、Мはこの笑顔を忘れた日はなかった。

 

「来なさい無法者。今度はわたくしが手心を加えてさしあげます。それとも、盾となる無辜の民草がいないと満足に戦えませんか?」

「良いだろう。その笑みを歪まされればさぞ気分がよくなるだろうなぁ!!」

 

 双方のライフルとビットが火を吹く。キャノンボール・ファストの再演がIS学園洋上で繰り広げられた。

 

 力不足に悩まされていたあの時とは違う。

 愛する人が飛ぶこの空の下で、セシリアは二度と無様を晒す訳にはいかない。

 

「さあ、いま一度お見せしましょう! わたくしとBT1号機、ブルー・ティアーズの力を!!」

 

 





 どうも読者の皆様。春が短く夏が来ることを嘆く者。作者のブレイブです。

 満を持してバトルフォートレスのお披露目です。
 正直前話で詳細書いた時、厳重な承認の割にはなんか物足りないのではと思っていたんですよ。
 そのうまを友人に話したら「バカやろwwwやり過ぎだバカwww」と笑われてしまいました。
 実際書いてみてその通りでした。攻防ともに隙がない!これがザル警備と言われたIS学園の本気か!!

 セカンドシフトしたブルー・ティアーズの詳細もお披露目。
 後ろにも目をつけるんだ!を実現しちゃったセシリア。元設定にも全方位視界とかあるんですけどね。目の前にプラズマ走ったらゼクノヴァりそう。

 ついに広げた大風呂敷。果たして作者は纏められるのか。応援宜しくお願い致します。
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