IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
【621が大和魂を背負ってルビコンに乗り込んだ】シリーズの完結、おめでとうございます!!
「敵の連携が乱れた!」
「整備科の馬鹿兵器が開けた穴に撃ち込め!」
「今のうちに洗脳解除を!」
特に後半は効果が顕著であり。敵の主力であるBT兵器搭載ISの精神感応に依存したビットの動きが大きく乱れた。
そこに間髪入れず火線を集中。敵陣営がまばらに展開されたことにより各個撃破、敵洗脳兵の救助が行われた。
このまま乱れたところをこじあけ、敵に打撃を与えるべく更に前進しようとしたが。
「全軍、作戦を第3段階に移行。交戦を維持しつつ後退、敵を挟撃ポイントにまで誘い込め。補給が必要な機体はいまのうちに補給に行ってくれ」
敵戦線が崩れて数分後、疾風から進軍停止の命令が出た。
「攻め込まないのかよ疾風! 俺たちはまだやれるぞ!」
「今こそ戦線を押し上げる好機だ! ここで少しでも数を減らした方が後々有利に働くだろう!」
このまま進むことを提唱する一夏と箒は零落白夜による一撃必殺を連続で行い正に絶好調だった。
そしてそれは2人に限ったことではない。こちらの規格外兵器に面食らって隙だらけになった敵ISをこちらのIS部隊が次々と食い破っている。
おまけにバトルフォートレスの遠距離砲撃が面白いぐらい当たって順当に数を減らしている。
だがそれでもまだ数的優勢を取れていない。
士気低下によりBTビットの動きが鈍ってはいるものの、やたらめったら撃つだけで対空防衛を形成できる火線の多さがBTビットの売りである。
更に敵は一度崩された程度で戦いをやめるほど挫けてはいない。
純度100%ミサンドリー兵は元よりミサンドリー洗脳兵はフランチェスカから撤退を言われない限り「ひ……退かぬ!! 媚びぬ!! 顧みぬ!!」の精神でこちらをぶち殺しに来る、それはもう戦意マシマシで。
「相手が冷静さを失ったいまこそ挟撃のチャンスだ。戦闘はまだまだ終わらない。それにオーバード組が揃って補給に戻るから、紅椿にも戻って貰わないと」
「なんかムズムズするぜ」
「すまないが耐えてくれ。お前と箒にはまだまだ働いてもらわなきゃならん」
「言い分はわかるが、慎重過ぎやしないか」
「死者が出た時点で俺たちの負けなんだ、慎重にもなる」
戦争して死者が出ないなんて古今東西絶対にありえない。
だがISならばそれが可能だ、理論上ではあるが。
何せ俺たちが駆るISは兵器でありながらシールドバリアを筆頭に大衆を楽しませるスポーツ運用が可能なほどの生命保護機能が充実している。
今回疾風が味方に伝えたことは「可能な限り相手の命を奪わないこと、そして洗脳された者を全て解放すること」
飽くまで可能な限りだ。敵の命を気遣ってこちらが死んでは元も子もない。
もっとも、IS学園側の半数が未成年である以上殺生なんてさせる訳には行かない。
ISはスポーツだ。兵器の側面だけを出しては行けない
そんな綺麗事を守るために疾風を始めIS学園は立ち上がったのだ。
敵も味方も殺さない。インフィニット・ストラトスなら、それが出来る。出来てしまえるかもしれん。
「悪い疾風。ちょっと逸り過ぎた」
「いや、今回は初めて尽くしだ。臆病なぐらいが丁度いいよ。うちの勇敢ツートップにはキツいかもだが。あ、これ褒めてるからね?」
「そんな気がしないぞ」
「ハッハッハ。俺も後で補給に戻るから。オーバードウェポンはやっぱエネルギー食うねぇ」
「「お前も使ったのか!?」」
「当たり前じゃないか。最高だった、ウフフ」
当たり前ではないだろう、と考えるだけ無駄だ。
馬鹿と天才は紙一重。2人はその意味を改めて再認識したのだった。
「一夏と箒はエネルギー補給組が戻る間、敵を引っ掻き回しながら後退組の援護を頼む。合図したら全速力で戦場をぶっちぎってIS学園に戻ってきてくれ。白式と紅椿なら大丈夫だろ?」
「ああ任せろ。派手に掻き回してやる」
「頼むぞ。俺とセシリアを追い抜いたスピードをまた見せてくれ」
「ぐっ、釘を刺してくれる」
「そっちも気をつけろよ」
「あいあい」
オープンチャネルを切って戦場を見渡した。
今のやりとりで他の浮足立った人たちも戻ってくれるだろう。
もし何かあったら駆けつければ良いと疾風も撤退の準備に入る。
ーーー◇ーーー
「補給が必要な人は下がってください! そこっ! ここは通行禁止です!」
菖蒲は一夏、箒と別れ一人最前線で殿を買って出ていた。
櫛名田の防御力は戦場にいるISの中でも群を抜いている。疾風の後退指示が出た瞬間いの一番に最前線に躍り出た。
白と黄緑色の雅なISは敵の目を引き、攻撃が集中する。だが櫛名田の4枚の盾が敵のレーザーをことごとく弾き、盾の隙間から放たれた高速の矢が瞬く間に敵を射抜く。
ワルキューレ数機を撃墜、敵を押しのけた菖蒲に1機のクリア・ティアーズが肉薄した。
敵のレーザーサーベルを盾で受け止め、反撃しようとした瞬間背後に回られたBTビットが撃たれるがそれもプラズマ・フィールドで防御する。
「ちっ! 硬いわね。身持ちが硬いってアピールなのかしら!」
「あなたは!」
肉薄してきた敵の顔に身に覚えがあった。
その女はレゾナンスで疾風に絡んだ挙句撃退され。菖蒲を事故に見せかけてフェンスを落とし、最後には疾風に無様に敗れた…………
「………」
「………」
「すいません、お名前なんでしたっけ」
「はぁ!? なんで忘れてるのよ! 加藤よ! 加藤百合子!」
そうそう、加藤百合子である。
作者が10秒ぐらいで適当に名前をつなぎ合わせた名前である。
「ああ確かそのようなお名前でしたね」
「この、このっ! あの男に似てムカつくわね!」
「そんな、疾風様に似てるなんて、そんな、ウフフフ」
「照れるなぁ! 褒めてないわよ!」
なんという締まらない展開。
実際菖蒲は彼女と直接対峙したわけではなく、事件直後に疾風から顔と名前を伝えられただけである。
単純に菖蒲も顔は覚えてるが名前は覚えてなかった。何ヶ月も前の話だし覚えてないのも無理もない。
とっくのとうに豚箱に入っていたはずの加藤何某の存在は菖蒲にとって特に何とも思わないに等しい存在であった。
が、それはそれとして。
「ここで会ったが百年目という奴ですね。疾風様にちょっかいをかけた分も合わせて不肖徳川菖蒲があなたに誅伐を下します!」
「こっちの台詞よ! あなたがあの時大人しく下敷きになってさえいればこんな惨めな思いしなくて済んだのだから!!」
…………パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー……
「自業自得とは正にこのことですね。本当に救いようがない」
「綺麗なおべべを着て良い気にならないことね! クイーンより賜ったこのISの敵ではないわ!」
……パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー……!
「それいろんな人言ってますけど今のところ倒されてばかりではないですか? いくら素晴らしい機体でも搭乗者が未熟では最新鋭のISもガラクタも同然です。疾風様と戦った時もろくに反撃できずに倒れましたものね?」
…パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー! …
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い! あいつに負けてからあの時のことが何時までも夢に出るのよ! 今度こそあいつを倒して、いえぶっ殺してこの悪夢を終わらせてやるわ!」
パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー!
「そうはさせません、あなたはここで私に倒されるのですから!」
「ほざきなさい! レーデルハイトならともかくお前のような箱入り娘に負ける私じゃ……」
パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー! パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー!!
「やっっかましいわね!! さっきからはなんなのよこの音は!!」
「これは軍隊式突撃ラッパ? どんどん近づいてきて……」
パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー! パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパー!! パッパパッパパッパパッパパッパパッパパッパパーーー!!!
「《着剣! 突撃ぃぃぃ!!》」
「いだぁぁ!?」
「疾風様!?」
響き渡るラッパと共に最高潮の笑顔を携えながら疾風とイーグルが加藤にロンゴミニアドを突き立てていた。
「なっ、はっ!? お前、レーデルハイト!?」
「我々は大日本帝国の軍人だ!!」
《アメ公が居ます!!》
「ちょ、なに!?」
《刀歩兵隊! 参上!》
「着剣! 着剣!!」
《大和魂を見せてやる!!》
「《うおおおおおおぉぉぉぉぉ!! バンザァァァイ!!!》」
「お前は寝てろっ!!!」
それは鮮やかな勝利であった。
愚かにも虚を突かれた汚いアメリカ人は着剣2連撃を受け続け様に放たれたプラズマバースト、もといアサルト万歳に吹き飛ばされ、トドメのヒールバンカーに貫かれ海に落着した。
日本の勝利である。
大勝利だ。大日本帝国万歳!!
「おう菖蒲。無事みたいでよかった」
「あ、はい。疾風様、つかぬことをお聞きしますが。何故万歳エディション全開なんです?」
万歳エディション。
それは古き良き大日本帝国の輝かしき大和魂である。
整備班に金田と吉田という名前があったら面白かったろうな。
「いやね、グラインドブレード使ってから脳内麻薬がドバドバ出ちゃってさ。この間例のシリーズ最終回迎えたから記念に」
「そのような理由であんなやられ方された加藤様は不憫でしょうね」
「加藤、誰だっけ?」
「私にフェンスを落とした人です。まあどうでもいいでしょう」
「ああ、そういやそんな奴居たな。まあどうでもいいな」
俺たちは加藤というワードをすっぱり頭から切り捨てた。
敗残兵にかける情けなどない。
「菖蒲、俺も補給に戻る。といっても絢爛舞踏の補給だけだから直ぐに戻るよ」
「あの回転チェーンソー凄かったですね」
「だろ? その間にちょっと頼みたいことがあって、アレを少し任せてもいいか?」
「アレ?」
「何処だぁ! レーデルハイトぉぉ!!」
彼方から鬼の形相でこっちに向かってくるアイビスとアイアン・メイデン。液体金属の触手がもう殺意MAXの形状でウネウネしている。
「かしこまりました、アレの相手はお任せを」
「ありがとう。奴は液体金属で多彩な攻撃をする。オートガードもしてきて硬いから無理に攻めなくていい」
「わかりました……やっとありがとうと言ってくれましたね」
「え、どういう意味?」
「いえ。さあ、お早く!」
「ああ!」
俺が離脱するやいなや即座に矢をつがえ放った。
疾風とイーグルしか見えていなかったアイリスに矢は命中するも件のオートガードとやらに阻まれた。
「なんだ貴様は!」
「残念ながらここは行き止まりです、先に進みたくば私を倒しなさい」
「どけ! 私は奴を倒せとクイーンに命じられいっ!!」
「通さないと言いました。私も疾風様にあなたを止めろと仰せつかっておりますので」
「疾風、様!? あんな愚物に様付けなんて頭おかしいんじゃない!?」
「あら急に自己紹介とはどうしたのです? 鏡ありますよ、見ます?」
「ギリッ! 貴様……」
「どなたもこなたも揃って短絡的。こんなことで新世界などとは……お笑い草ですね!」
つがえた矢は極大。成長した菖蒲と櫛名田は造作もなく桜花を構えた。
ーーー◇ーーー
「チッ!」
「っ! やはりやりますわね」
再び交わったBT1号機と2号機の逢瀬。
6基同士計12機のBTビットによる応酬はどちらも譲らぬ攻防を繰り広げているように見えたが。
(この私がこんな奴に押されている!?)
Мはマスクに覆われた奥で目を見開いて狼狽えていた。
セシリアとМは同一の条件で対決している。
射撃ビットが6、防御ビットが2。
フェアな勝負というお題目に偽りはなく。サイレント・ゼフィルスのエネルギー・アンブレラに射撃機能がないことを知っているからか、本来射撃もこなせるフェローチェをセシリアは防御のみに使っている。
シフトアップした機体の性能差を抜けば対等の勝負。
Мはセカンドシフトしていなくても勝つことになんの疑いも持っていなかった。
Мは宣言通り本気で挑んでいる。ビットの動きも以前のものとは比べ物にならないぐらい鋭く。射撃も苛烈で
だというのに決めきれない。
勝利してしかるべき、勝つことが全て。絶対的な自信を持つ彼女にとって一進一退の攻防という状況は耐え難い屈辱だった。
ましてや自分より明らかに格下と思っていたお嬢様が相手ならなおさらだ。
これだけなら互角の戦いという見方は間違っていないだろう。セシリアが他のビット16機を自身とは違う場に展開していなければ。
機体の補助が多少含まれているとはいえ他の戦場に気を配りながらМと全力戦闘出来ているという事実が更にМのメンタルを抉っていた。
だが実際そんなことはない。
外に放たれたビットにはレーデルハイト工業製自律型AIにイーグルが一手間加えた物、そしてコンダクターシステムの管理下の元セミオートで稼働している。
フルオートじゃないのが充分おかしいと言えるが実際セシリアはおかしいレベルの使い手になっている。
某天パと某赤いのみたいにビット同士のドッグファイトすら出来るだろう。
現にセシリアのBTビットの冴えは恐ろしく。的確に嫌らしいところに射撃を差し込み、Мのフレキシブルを正確に自身のフレキシブルで相殺している。
だがハッタリを効かされてることを知らないМにとっては目の前のリアルが全てだった。
図らずともキャノンボール・ファストでのワルキューレの意趣返しが出来ているのは皮肉なことであろう。
とにもかくにもМのコンディションはお世辞にも良いものとは言えない状態にある。
確かにМは代表候補生を超え、国家代表に挑めるほどの実力を持っている。
しかし彼女は今まで本気同士の勝負をしたことがない。
何時だって余裕を持って戦っていたМ。疾風との対決も途中まで本気ではなかった。
結果的に敗北した訳だが、それでも彼女は最初から本気なら勝っていたと信じて疑わない。
それを証明すべくМは初めて最初から本気で挑んでいる。だというのに以前圧倒していたはずのセシリアに未だ大きなダメージを与えれていない事実は到底受け入れるべきものではなかった。
これがもし、セシリアが24基全てのビットを使っていたら………
「あらどうしましたの? 動きがブレてますわよ」
「ぬっ!?」
いつの間にか接近していたセシリアが左手に蒼く塗装されたレイピア【スタッカート】を突き出した。
更に刀身を覆うように形成されたBTコーティングの刃が鋭く、そして速くゼフィルスのシールドと衝突する。
「フフッ」
「何がおかしい!」
「いえ、いつもの決め台詞は何時来るのかと思いまして」
「なに?」
「あら、いつも茶番茶番とおっしゃってるからお気に入りかと思ったのですが。違いましたか?」
「貴様っ!!」
Мもナイフをコール。
だがそれはスタッカートにより僅かに切っ先をずらされたことで空振った。
「シィィィ!」
「せいっ! はぁっ!」
キン! と鋭い音と共に火花が散る。
コーティングされた金属が擦れ合い、弾かれ、またも火花を散らす。
Мは激昂しながらも確実に相手の命を刈り取る動きでセシリアに迫る。
対してセシリアはそれをいなし、いなし、隙を見ては突き入れて相手の体勢を崩そうとする。
セシリア・オルコットは接近戦において脆弱。それは既に過去の話だ。
箒や鈴のような剛剣相手には流石にパワー負けはする。
だがセシリアは幼い頃に習っていた直剣剣術を上手くISにトレースし、それを磨き上げて今の土台を築き上げた。
「くぅぅ!」
徐々に押されている状況にМはまたも歯噛みする。
以前では圧倒していた筈なのに、以前は遊んででも圧倒していた筈なのに。だというのに押されている。
全てにおいてセシリアはМに有利に立ち回っている。つまり現段階においてセシリアはМよりも……
「認められるかぁ!!」
自分は強い! いつか織斑千冬を超え、誰にも負けない強者となる。
力の信望者であるМにとって勝つことこそが存在意義。
それをこんな強制的に
憤怒を宿した刺突が繰り出される。だが未だ冷静に対処出来ているセシリアにとってそれは隙でしかなかった。
「フッ!」
「なっ!?」
下からすくい上げられた斬撃によりナイフがМの手から離れた。
追撃が来ると予感したМはスター・ブレイカーを急いでコールする。
意識を右手に持っている敵の剣に集中する、だがそれが行けなかった。
何故ならセシリアは何も持っていない左手を突き出していたからだ。
「何、うぐっ!」
彼女の左手がМの顔面を鷲掴む。
まったく予想外の行動にМの反応が遅れる、だがそれだけでは終わらない。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「むぐぅぅぅ!?」
セシリアは渾身の力でМの顔面を掴んだまま機体ごと振り回したのだ。
それはもう野蛮の一言で間違っても高貴なる令嬢のそれではなかった。
「せぇぇぇい!」
「うわぁぁぁーー!?」
振り回した遠心力のままМを海面めがけてぶん投げた。
急制動も効かないままМは海面にダイブ。派手な水飛沫を上げ、もがきながらも水面に出るためにISを動かした。
「プハッ! き、貴様何を!?」
「さあ何故でしょう。本当に何故かわかりませんが貴方にこれをしたくてたまりませんでしたの」
本当に何故かわからない。
わからないがセシリアはМの顔面を掴んで投げ飛ばしたかったのだ。
別世界線の未来を夢で見てしまったのかもしれない。とにかくセシリアはスッキリした。
「ほらどうしたのです。まだ決闘は終わっていないですわよ。早く上がってきなさいな!」
「雑魚が何時までもぉ!!」
双方同時にライフルをフルチャージで発射。
衝突した光の暴風は第二ラウンドのゴングであった。
ーーー◇ーーー
「アハハハハハ! アハハハハハ!!」
戦場の片隅で狂った笑い声が木霊する。
もはや正気を保った人の声ではなく。もはや狂うことが普通かのように笑っていた。
「楽しい楽しい楽しいねぇ! アリア・レーデルハイトぉ!!」
「ちょこまかと! 止まりなさいよ!」
「バーカ! 誰が相手の土俵で戦うかよぉ! アハハハハハ!!」
ビットを封じ、ストライクガンナーをより最適化させたクリア・ティアーズ改に乗り込んだメイブリック。
疾風とアリアの機体はどちらも高機動だからだろうが、それでも元から高機動ではないそれではスペック差はまだ埋まらない。
だがアリアの剣は当たらない。
メイブリックはとにかくアリアの射程圏外から実弾射撃で遠くからチクチク攻撃し、アリアが距離をつめると全力で退避行動に出てとにかく適切な距離を保っている。
彼女に随伴しているワルキューレには手が届くがネズミ算のような物量を誇る人型BT兵器を斬ったところで割に合うものでもない。
アリアの乗機、ディバイン・エンプレスはレーデルハイト工業第3世代らしく攻防速バランス良く調整されたクロスレンジのIS
更に高速機動部門ヴァルキリーである彼女に合わせて速度周りをカリカリにチューンしている。
武装は12本の片刃剣型の擬似ビット兵器、フラッシュ・モーメントのみ。現在それを自機周囲に配置し弾幕を形成している。
「剣撃女帝様は射撃がド下手かぁ? 全然当たらないんだが!」
「ええ、射撃は得意じゃないのよ。そっちこそこんなチマチマした攻撃で私を倒せると思ってるのかしら?」
「当たりゃあ勝ち、当たらなきゃ負けねえ! 猿でも分かることだよなぁ!」
挑発に乗ることなく、絶えず笑いながら銃器をぶっ放すメイブリック。
アサルトライフルを担いでいるのは継戦能力を考えてのことだろう。
正直相手が真面な戦いをしないのであればアリアは彼女を無視して他の戦線に向かうのが最善だ。
それこそ現在秋山率いる自衛隊部隊と交戦している日本代表の援護に向かえば状況はより好転する。
メイブリックの目的がレーデルハイトへの復讐なのであれば逃げても追ってくる。ここでアリアが時間を浪費するのは得策ではない。
知ったことではない。
メイブリックは息子と娘を傷つけた。
彼女の凶弾により家族に等しい社員の命が奪われた。こいつを放置すれば、万一逃げられれば何れ家族や社員に害を成すだろう。
だからこそアリアが斬らねばならない。彼女は再起不能にする。例え殺すことになったとしても。
「私は疾風みたいに優しくないわよ!」
瞬時加速チャージ、そして二段階瞬時加速。
高機動に迫るスペックからのイグニッションで強引に距離を詰めて間合いに持ち込む。
だがメイブリックも全力で旋回、瞬時加速の動線から逃れようと動く。
しかしアリアもそれは百も承知。故に奇策を持ち込む。
「行け! フラッシュ・モーメント!」
周囲に対空していた10本のフラッシュモーメントの柄部分が開き、スラスターが露出。
高速で飛翔したモーメントがメイブリックに殺到する。
「はぁ!? ちょ、まっ!」
「待たないわよ!」
プラズマガンのオールレンジ攻撃が旋回途中のメイブリックに刺さる。
「なんで飛んでんだよ! ビット擬きだろそれ!」
「あら技術は進化するものよ。優秀なテストパイロットも居るしね!」
いまのモーメントにはイーグルのソード・オブ・ラウンズのデータがアップロードされている。
イーグルのコア人格がない為イーグルほどの複雑な動きは出来ないが、通常のビット機動なら問題ない程度に改修されていた。
突然の隠し札に思わず足を止めてしまったメイブリックにアリアが刃を振るう。
「くぅ!」
「やっと当たったわ! もう逃さないわよメアリ・メイブリック!」
距離が零になった以上、アリアはメイブリックを捕まえたも同然だ。
ここから逃げようとしても機動力が上のディバイン・エンプレスを振りほどくことは出来ない。そもそもの自力も場数も違うのだ。
あとは戻って来るモーメントと合わせて絶技を叩き込むだけ。
「舐めんじゃねえ!! 私がこんなとこで終われるかよぉ!!」
メイブリックはバススロットから無針注射器を取り出して首元に打ち込んだ。青い液体、ブルー・ブラッド・ナノマシンが入った液体を注射したのだ。
既にナノマシンを宿した身体に、規定量をオーバーしたものを。
「んぐぅぅぅ、あぁぁぁぁ!!」
ストライク・ガンナーのビットを接合していたパーツを強制パージ。不規則な動きをしたビットがやたらめったらにレーザーを放った。
しかしどれもアリアやモーメントに当たるコースではない。ヤケになったかと訝しんだが、四方八方に散ったレーザーがエグい角度でアリアに殺到した。
「フレキシブル!?」
完全に想定外を食らったアリアはいくつかを剣で弾くが何発か食らってしまう。
「アハハハ! これでお前に喰らいつ、ゴホッ、ゴホッ!」
口元を抑えた手に血が付着する。
肌には血管が浮かび上がり、どう見ても正常な状態ではなかった。
「ナノマシンのオーバードーズ……あなたそこまでして私とレーデルハイト工業に復讐を」
「あはー? 復讐だ? そんなのもうどーーでもいいんだよ」
「なんですって?」
メアリ・メイブリックの生い立ちは悲惨極まりないものだ。
メイブリックの親が経営した会社が裏でヤバいことに手を出していたのに気付いたレーデルハイト工業が警察と協力してその会社を取り潰し。身寄りを失った彼女を親族が保護した。
だが保護した先で彼女は酷い扱いを受け、挙句の果て義父から会社の取引材料に扱われ、酷い陵辱を受け続けた。
メイブリックはその原因をレーデルハイト工業と決めつけ、その復讐心のまま疾風と楓を毒牙にかけようとした。
疾風からそれを聞いていたアリアは彼女が復讐心のまま凶行を行ったと考えていた。
だがその彼女がそれをどうでもいいと言ったのだ。
「じゃあ貴方は何のために」
「決まってる! お前たちを壊すためだ! 傷つけたい殺したい奪いたい焼きたい踏みにじりたい凌辱したい不幸にしたい殺したい殺したい殺したい! レーデルハイトをとにかくぶっ壊したいんだ私は!!」
「そんなことで私の社員を殺したと言うの? あなたの独りよがりの為に!」
「それ以外何がある! お前の息子に負けてから私は新しい生き方を見いだしたのさっ! 復讐なんてチンケなことどうでもいい! ただただ壊したい! あんたたちの全てをぉ!!」
狂気。ただひたすら狂気を宿した顔は思わず寒気をもよおすほどだ。
明らかに正気じゃない。ナノマシンだけではなく何かのアッパー系の薬物も摂取している可能性すらある。
「このままじゃ死ぬわよ、あなた」
「アハハハハハ! どうでもいいわねぇそんなこと! 先ずはお前らレーデルハイトを殺す! その後は社員どもだ! レーデルハイト工業に関わる全てをぶっ壊す! それで死んじまうならそれでいい!!」
急激なアッパーに脳波が乱れているのかビットは不規則な軌道でメイブリックに纏わりつく。
気づけばワルキューレが彼女の元に集っていた。
「ならなおさら貴女を逃がすわけには行かないわ、メアリ・メイブリック! あなただけじゃない、女性至上主義なんて馬鹿げた考えをするブルー・ブラッド・ブルーも!」
「ハハハハ! カッコいいなぁアリア・レーデルハイト! だが全部無意味だ! お前らが考えた策も全て無駄に終わるんだよ!」
「え、今何を……」
「死ねアリア・レーデルハイト! 私の生きる意味為にぃ!!」
ーーー◇ーーー
「こちらミネルヴァ。敵部隊挟撃ポイントの誘引率87%」
「了解。御厨さん、戦況を教えてください」
「現在味方IS部隊の損耗は10機。現在パイロットの入れ替えとエネルギー補給作業を進行中。敵IS部隊の損耗率35%、ワルキューレ損耗率40%。洗脳された人の救助率は30%。双方、戦死者は0です」
「了解しました。挟撃部隊、準備していてくれ!」
「「了解!」」
死者0を聞いて疾風は一先ず安堵した。そしてISにおける操縦者防護、保護機能の偉大さに感謝する。
この戦いには技量はあるとはいえ学生が参加している。そして洗脳され、望まぬ戦いに駆り出された者も大勢いる。戦争だとしても死人を出したくはない。
甘い考えだとしても、ISによる殺しに忌避感を持つ疾風は第一に味方と洗脳者の人命。次点で敵の人命を厳としていた。
(だがもし。もしフランチェスカを殺さなければならないなら……)
「敵部隊、挟撃ポイントの誘引完了!」
深みにはまった思考を引き上げ、疾風は今成すべきことを成すべく号令をかけた。
「作戦を第三段階に移行! 挟撃部隊浮上!」
号令と共に海中から20機のISが急速浮上。
メンバーは戦闘教員を中心に、専用機持ちのロランとヴィシュヌが含まれていた。
我先にと飛び出したのはウォーハンマーを構えた榊原先生だった。
「おらぁ! 未来の結婚生活を邪魔する悪党め! まとめて叩き潰してやるわぁ!」
「待ちくたびれたよ疾風! さあ、行こうか! 華々を迎えに!」
「また呼び捨てで呼ぶなって言われますよロランさん」
待機中のフラストレーションを晴らすかのように戦意高揚した挟撃部隊が背後からブルー・ブラッド・ブルーに強襲をかける。
自分たちが有利だということを勘違いした奴らの虚を突く。何度も行われた初見殺しに敵の士気をズタボロにするための策略が効果を発揮する……筈だった。
「挟撃部隊に通達! 後方から新たなIS反応あり! 数36!」
「なに!? どっから出てきた!?」
「こちら挟撃部隊! 何もないとこから突然ISが出てきた!」
比喩表現でもなく本当に何もない空間から多数のISが出てきた。
全員が身体をスッポリ覆うマントを取り払い、挟撃部隊を駆逐せんとビットを機体から切り離した。
「敵ISの識別確認。1機は日本国家代表の白鉄。残りはクリア・ティアーズですが、出力が通常のものより高いです!」
「なんだなんだ! 親衛隊仕様だとでも言うのか!?」
「こちら自衛隊部隊! 日本代表の対処とカバーに入る! 白鉄には近づくな! 一瞬で斬り伏せられるぞ!」
「バトルフォートレスで風穴を開けます! 敵戦艦の砲撃にも注意を!」
本体を追っていた敵部隊の半数が反転し挟撃部隊に向かっていく。
挟撃部隊が一瞬で挟撃される側になった。
「不味いんじゃないのこれ!」
「今は生き残ることだけ考えて!」
乾坤一擲を投じた作戦は返す刀で跳ね返され。
戦場は混迷の渦に飲まれようとしていた。
改めて大和魂完結おめでとうございます。作者のブレイブです。
感謝を込めて疾風くんにラッパを吹いてもらいました。
大日本帝国万歳!!
さて唐突ですが皆さん。インフィニット・ストラトスのアニメ2期最終話を覚えていますでしょうか。
その場面で黒騎士に乗ったМとセシリアが対峙する場面があるんですよ。アニメ2期は第6巻部分がカットされていて、おっ!これは6巻の再現か!と思ったのですよ。フレキシブル見れるかと。
結果は適当にあしらわれた挙句Мがセシリアの顔を鷲掴んで地面に叩き落したという惨状だったという訳ですが、はい。
という訳でやり返しましたぜ!やったぜ!
セシリアが雪辱を晴らすシーン。ずーーっと書きたかったです。満足しました。
これでアニメ2期関連でやり残しはなくなりました!
え?パンツ回?うーん、検討はしてみます。