IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第15話【突発的天災】

 待ちに待った2日目、今日は午前中から夜まで丸一日ISの各種装備試験にあてがわれる。

 普通の練習機を使う生徒達は花月荘から少し離れたビーチで行うのだが。

 俺たち専用機持ちは水面下のトンネルを通って少し離れた無人島で行われるらしい。

 各国の最新鋭装備の試験なのだから機密性を重視するのは当然と言えば当然なのだが、こういう場所を探し当てるIS学園の情報力の高さよ。

 

「どうしました疾風」

「あぁ、いや。なんでも」

「そろそろ始まるのですからキッチリしませんと」

「わかってるよ」

 

 声をかけてきたセシリアに当たり障りのない返事を返す。

 昨日はあんな感じだったのに今はこんな平常心。女心は変わりやすいというが、これでは昨日のこと聞きづらいな。

 

「よし、専用機持ちは全員揃ったな」

 

 いつもの白服ジャージの織斑先生と、何故か専用機持ちではないISスーツ姿の箒が。

 しかしそのISスーツはいつもの紺色とは違い白いISスーツだった。

 

「あれ、箒イメチェン? てかこっち専用機の班じゃ」

「その件については私から説明しよう。本日から」

「やあああぁぁぁぁぁほぉぉぉぉぁおおおおお!! ちーーちゃーーー!」

 

 何処からか甲高い女性の声が、げそっとする箒と織斑先生。

 ドドドとその何かが崖から駆け降りて、飛び、そのまま両手を大きく広げ織斑先生に突っ込み。

 織斑先生はそれを受け止めーーーることなく横にどいた。

 

「はれ?」

 

 崖からロケッティングしてきた乱入者はそのまま地面に激突、土埃をあげて地面に突き刺さった。

 余りにもクイックリーな状況に一同が呆気に取られるなか一夏だけが状況をいち早く理解してしまった。

 

「た、束さーん!?」

「はいよー!」

 

 ズボッと埋まった頭を引っ張り出す乱入者、基篠ノ之束博士。昨日と同じ一人アリスの格好は派手に地面に激突したのにも関わらず土汚れが1つもなかった。

 

「ふー危なかった、束さんじゃなきゃ死んでたぜぇい。もーちーちゃん酷いぞ! ということで改めて愛のハグをっ! あがっ」

 

 求めてきた篠ノ之博士の顔面にミリミリと無言でアイアンクローを施す織斑先生。

 無表情のまま締め上げる様は一周回って恐怖を感じる

 

「んごー。相変わらず容赦のないアイアンクローだね! でもタッバ知ってるよ、これはちーちゃんなりの愛情表現だと!!」

「………」

「おごぉ! 後頭部からもアイアンクロー。これはサンドイッチ、アイアンクローサンドイッチだね! これは新し……あーヤバイよちーちゃん少し力緩めてー? 脳内でアラートが鳴ってる、鳴ってるから、年齢制限かかるから、ティーンエイジャーの前でRー18Gの画像が表示されちゃうから!」

「ふんっ」

 

 織斑先生が篠ノ之博士をぽいっと投げ捨てた、地面を滑る篠ノ之博士は女性が出してはいけない声を発しながら地面を滑った。

 呻き声を出す彼女はいつの間にか岩影に隠れていた箒に向かって匍匐前進で会いに行く

 

「じゃ、じゃじゃーん………やあ………」

「……………………………大丈夫ですか」

「うん大丈夫だよ! 愛しの箒ちゃんに慰められて元気万倍、タバネンマン!」

 

 先程までボロけていたのがなかったみたいにご機嫌になる篠ノ之姉。「え? タバパンチは暴力? ふふん、そんなんじゃ片付けれない威力が出るぜぃ?」と三年ぐらい前一時期話題になったニュースを引っ張り出してシャドーボクシングをし始めた。

 

「えへへ、それにしても久しぶり。おっきくなったね箒ちゃん、特に日本人離れしたそのおっぱいとか! あだっ!」

「殴りますよ」

「殴ってから言った! 箒ちゃん酷い! 心配しなくても束さんの方がまだおっきいから!」

「心底どうでもいい、はやく自己紹介ぐらいしろ束。見ろ、皆目が点になってる」

 

 織斑先生の言った通り、彼女に面識のある三人以外は魂が抜けたかのように微動だにしていない。

 無理もない、世界各国が血眼に探している特一級の人物が目の前でボコスカコントを繰り広げているのだから。

 

「えーめんどくさーい。束です」

「おい。愚弟の自己紹介のほうがまだマシだったぞ、ちゃんとやれ」

「はーいはいわかりましたよー」

 

 よっこらせと立ち上がった篠ノ之博士は俺達に背中を向け、空を仰ぎ、潮風に髪が靡くと同時に首だけをこちらに向け。

 

「束です」

 

 とても良い声でそう言った。

 織斑先生に蹴られた。

 

「いったいなー! ちーちゃん酷くない!?」

「問題ない、正当だ」

「酷いよ! わかったよ、じゃあ本気で自己紹介してやろうじゃないか。ハロー! 私は!」

「というわけでこいつは篠ノ之束だ、知ってるやつも居るだろうが仲良くしなくていいぞ。そら、さっさとテストを始めろ」

「ちーちゃん!!」

 

 いいように弄ばれてる篠ノ之博士。

 関り合いのある一夏と箒は呆れたように眺め、その他はまだ状況が飲み込めない。

 

 でもなんかこのままだと話が進まなそうなので口火を切ってみた

 

「それであの、篠ノ之博士」

「はいはいなんだね、眼鏡・レーデル眼鏡君」

「疾風・レーデルハイトです。あの、今回はどういう用件でここに?」

「おおっよくぞ聞いてくれた!! それでは早速ご覧あれ。カムヒア、アカツバァキィ!」

 

 ズビシっと向けられた指につれられて全員が上を見る。

 ひゅーーーとなんか既視感バリバリの音が………ズズーンと落ちてきた。

 地面を揺らして現れたのはニンジン………ではなく銀色八面体の物体。

 

「これぞ『紅椿』! 全スペックが現行ISを上回る最新鋭にして強靭! 無敵! 最強! 完全束さんお手製の箒ちゃんの為だけに作り上げたインフィニット・ストラトスだよ!」

 

 指をならすと銀色の物体の殻が量子変換され中から現れたのは。

 

 赤、いや赤を越えた紅。なんの混じりっけもない純粋な深紅がそこにあった。

 日の光に反射する鋭角的な赤の装甲に白と黄色のワンポイント、たたずむそれは搭乗者を静かに待つ戦鎧にも見えた。

 

「うわ、うわぁ」

「大丈夫か疾風」

「大丈夫じゃなぁい。これは、これは………」

 

 目の前に現れた紅椿に俺は全身の産毛が逆立ったような衝撃を受けた。

 ISを噛った俺でも、目の前の代物がどれほどの物か嫌でも理解できた。

 

「ISコアを作り上げた篠ノ之博士だけどISのアーマーや武装は世界に提供したことは確認されてない。あの白騎士を作り上げたのは篠ノ之博士だと言われてるけどそれは結果的に有耶無耶になってるし、つまりつまりつまり! 目の前にある紅椿というISは篠ノ之束が一から百まで作り上げたフルハンドメイドだということ! うわぁ! これは感動とか感激とかそんなレベルじゃないぞ! 俺達は今! 歴史を目の当たりにしているーー!! イヤッホぉぉ! 生きててよかったぁ!!」

 

 思わず叫んでしまった俺に皆が引くなか、篠ノ之博士だけはご満悦だった。

 

「うんうん良いリアクションだね君ぃ。束さんが何かをしても皆がザワザワするか押し黙るしかなかったからその反応は新鮮だよ。よし箒ちゃん! 今からフィッティングとパーソナライズをするよ! ほいっと!」

 

 篠ノ之博士がリモコンを押すと紅椿が準待機モードに移行して箒を受け入れた。

 

「それでは、頼みます」

「堅い堅い、せっかく箒ちゃんのプレゼントなんだからもう少し喜んでよ」

「………」

「ふふ、まあいっか」

 

 空中投影ディスプレイとホログラムキーボードを展開、その数は6ずつ。それを同時にかつ高速で膨大なデータを打ち込んでいく。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行していれてあるから、あとは最新データに更新するだけだねー。ん、やっぱ胸がでかく。あ、お尻もまた」

「姉さん!」

「ごめんごめ、ん? 今姉さんって呼んだ? ウヒェーイ高ぶるぜぇーい!」

 

 高速だったタイピングが更に速度を増した、もはや残像が出来るレベルに。

 

「へーい! フィッティング終了! 箒ちゃんブースト入って半分の時間ですんだぜ! あとは自動処理に任せておけばパーソナライズも終わるから、箒ちゃんはそのままでね」

「はい」

「は、はえー」

 

 なにげなしにやってるが、目の前で起きてる事は異常なんてもんじゃない。

 俺がスカイブルー・イーグルを受領するときにフィッティング作業をしたときは父さん含めて六人で行った。

 今篠ノ之博士はそれを一人で行い、なおかつ比べるまでもないぐらい早く終わらせた。

 これが、ISを作り上げた篠ノ之束その人。

 

「ねえ、篠ノ之さんズルくない?」

「身内ってだけで専用機貰えてさ」

「別に篠ノ之さんが何かしたって訳じゃないのに、なんか不公平だよね」

 

 ふと、訓練機班の方からそんな声が聞こえた。ひがみや嫉妬、色々な感情をコソコソと交わす。

 無理もない、あの篠ノ之束が作り上げた最高のIS。箒はその妹だが、代表候補生ではなく、俺と一夏みたいな特異ケースでもないため今まで専用機を持ってなく、他の皆と同じだったのだから。

 

 皆が黙っているなか、会話に素早く反応したのは意外にも篠ノ之博士だった。

 

「おやおや、歴史の勉強をしたことかないのかな? 有史以来、世界が平等であったことなど一度もないよ。むしろ君たちはISを動かせるという世界一恵まれた環境にいるのにそんなこと言うんだー? 君もそう思わない眼鏡君?」

「え!? あ、そうです……ね」

 

 指摘された生徒はバツの悪そうにグループのISに手を出し始めた。

 突然話題をふられた俺は声が上ずりながらも無難に答えた。

 しかし心のなかでは、そんな不平等な世界を作り上げたのは目の前の人なのではと考えてしまう。

 

「確かにISを女性専用にした要因は私だ。けど、今の世界を作ったのはその尻馬に乗った能無しだぜ?」

 

 俺の考えを見透かしたのか篠ノ之博士がまた喋る。

 確かにそれもあるけど、やはり納得までは………

 

「それに、仮に男女同時に動かせたとしよう。そうしたら今頃世界はどうなってるかな? 国十個ぐらいは戦争で消滅してるかもねー。ほんと目先にしか目が行かない凡愚どもはこれだから」

「………」

 

 篠ノ之博士の言葉は正論だ。

 最初は単独で宇宙進出出来るパワードスーツとして発表されたインフィニット・ストラトスだが、全てあの事件が変えてしまったのだ。

 

「はいしめっぽい話終わり! 紅椿が準備している間に。いっくんと眼鏡くんのISを見てみようか。興味あるんだよね~男が動かしてるIS」

「え、あ、はい」

「お、俺もですか?」

 

 どうしようかと織斑先生を見やると先生は頷いた。

 俺と一夏は篠ノ之博士の目の前に進み、待機形態のブレスレットとバッジに触れた。

 

「来い、白式」

「来い、イーグル」

 

 展開光が形成、白と水色の機体が現出する。

 

「データ見せてねー、うりゃ!」

 

 篠ノ之博士は白式とイーグルにケーブルをぶっさして先程と同じディスプレイを展開する。

 

「んー……いっくんは不思議なフラグメントマップを構築しているね。なんだろ、見たことのないパターン。こっちの眼鏡君は既存のパターンが色々と酷似しているね。ふーん」

 

 フラグメントマップとは人間で言う遺伝子のようなものだ。ISが自己進化するために構築されるもので。

 人が何かを覚えたら身につけるように、ISはフラグメントマップに経験を積めば、形態移行といったシフトアップの可能性が生まれるのだ。

 

「あの篠ノ之博士」

「なんだね眼鏡君」

「(もうそれで固定なんですね)あの、なんで俺達はISを動かせているのでしょう、男なのに」

「さあねー、そもそもISって自己進化するように作ったし、そういうこともあるよ」

「それってISのコアが独自に男性を受け入れるようにしたということですか?」

「うーん、そうなのかな? ごめんわかんないや、あっはっはー!」

 

 いやいやあっはっはーって。その原理を今世界中が探しているんですよ? 

 目の前の人はわかった上で黙ってそうでたちが悪い。

 

「あ、あのっ」

「ん?」

 

 俺達のISの話題が落ち着いたのを見計らってか、緊張しながらもセシリアが一歩前に出た。

 

「篠ノ之束博士のご高名はかねがね伺っております、もしよければわたくしのISも見ていただけないでしょうか!」

「………」

 

 篠ノ之博士は黙ったままセシリアの前に歩いていく。セシリアは期待と緊張に口許が上がらないように口許を引き締める。

 そんなセシリアに目を合わせるように首を下げた。

 

「なんで君のISを見なきゃいけない? それを見て私になんの得があるというの?」

「え?」

 

 つまんなそうな声にその場の体感気温が下がった気がした。

 当のセシリアは自分が何を言われたのか理解できていない。

 

「どうせ国の方から言われたんでしょ? 昨日会ったもんね。ていうかさー、アメリカに便乗して私のIS理論を子供のままごとだと笑い飛ばしたイギリスが良くもまあいけしゃあしゃあとそんなこと言えるもんだね?」

「え、その、あの………」

「ワンオフ・アビリティーの第三世代技術化(真似事)もまともに出来ないやつがでかい顔すんな、私が言えるのはそれだけ。はい態々ご苦労さんはい行った行った、私の楽しみの邪魔をしないでくれ」

「……………」

 

 突然の態度の変わりように何も出来なくなったセシリアはすごすごともといた場所に戻っていた。

 瞳が潤んでた気がしたが、多分ISセンサーのバグだろう。

 

「ん。オッケー紅椿の設定完了! んじゃ試運転もかねて飛んでみてよ、箒ちゃんのイメージ通り以上に動くはずだよ」

「は、はいっ」

 

 空気が抜ける音をたてて連結されたケーブル類が外れていく。準待機形態の紅椿はその装甲を広げ、真の姿を表す。

 その姿をまるで浴衣だと思った次の瞬間、紅椿は遥か上空に飛翔した。

 

「おわっ!?」

「うおっ!?」

 

 その急加速の余波で発生した砂埃が視界をおおう。そこからイーグルのハイパーセンサーが紅椿を捉えた。

 

「どうどう? 思った以上に動くでしょ?」

「え、ええまぁ……」

 

 空に光る赤い光が水色の空を縦横無尽に飛び回っていた。

 

「じゃあ刀使ってみてよ、右のが【雨月】で左のが【空裂】ね。武器特性のデータはこちら! まずは雨月で空を貫いちゃえ!」

 

 篠ノ之博士からデータを受け取った箒は急停止から両肩の刀をしゅらんと同時に抜き取る。

 ハッ! と雨月で突きを放つとその軸線上に五本の赤色レーザーがいくつも放たれ、巨大な雲に穴を開けた。

 

「おおっ……」

「いいねいいね! 次はこれを撃ち落としてみてね! ふぁいやー!!」

 

 言うなり篠ノ之博士は十六連装ミサイルポッドを量子変換して撃ちだした。

 

「箒!」

「大丈夫だ一夏! はぁっ!!」

 

 その言葉通り箒は空裂を横に振るい、その動きに合わせて帯状のレーザーが斬撃となって飛んだ。

 二、三回振るわれた斬撃ビームは群がるミサイル群をひとつ残らず駆逐。

 

「やれる!! この紅椿なら私は!」

 

 圧倒的な紅椿の性能に、皆が呆然と立ち尽くし、篠ノ之博士は大満足に頷く。

 凄いの一言。スピード、火力ともに申し分ない。現行ISを凌ぐという言葉も嘘ではないだろう。ちょっとばかり強すぎる気もするが。割とニューカマーなのに速攻で喰われた私とイーグルよ………

 

 ふと、俺の意識に応じたのかイーグルのハイパーセンサーが箒の顔をアップで写させた。

 

 手に入れた紅椿の力に。

 狂喜的な笑みを浮かべる箒の顔が。

 

「っ……!」

「疾風どうした?」

「いやなんでもない」

 

 ゾッと体に冷えたものが通った。今箒は何を考えていた? 

 一夏は気づいてなかったか、とりあえず良かった、のだろうか。再び箒を見ると元の仏教面、ではなく普通の笑顔が。

 一夏は気づかず俺を疑問に思うなか、箒が上から降りてくる。

 

「どうだった箒ちゃん? 満足」

「は、はい。……その」

「んー?」

「…………ありがとう、姉さん」

 

 箒からの感謝の言葉に篠ノ之博士は今日一番の笑顔で舞い上がった。

 

「いいよいいよ! 可愛い妹のために頑張るのは当然だもん!! その言葉だけで充分充分!! あー束さん幸せ! も一体作ってあげようか!」

「いやいいです」

「だよねー!」

 

 ぐるぐると回転しながら喜ぶ束さんを目の前に箒は苦笑いをする。

 

「ほんじゃま! 後は頼んだよちーちゃん! 束さんはおいとまするよん!! じゃーね箒ちゃん! ちーちゃん! いっくん! あと眼鏡くん! バッハハーイ!!」

 

 若干古めの挨拶と共に束さんは崖をひょいひょいっと飛び上がって森の中に消えていった。

 ………どんな、身体能力だ。

 

「ごほん! それでは予定通り各自装備の試験運用を開始せよ、追加装備のない織斑は篠ノ之のISの運用もかねて二人で自主練習をするように」

 

 パン! と手を叩く音と共に今日の授業が始まった。

 止まっていた練習機班は打鉄とラフォールに群がり、専用機持ちは織斑先生に連れられて海底トンネルの入り口に向かう。

 一夏に近づいた箒の笑顔はいつもより晴れやかだった。

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「こちらがレーデルハイトさんの装備一式です。確認をお願い致します」

「新装備二種とオートクチュール一種。はい、確かに受領致しました」

 

 並んだ新装備をイーグルに量子変換、オートクチュールのシステムダウンロードを設定してIS学園の揚陸艇を後にする

 

「さてと」

 

 試験装備の試運転のため場所選び、と称して俺はあいつを探していた。

 ていうかIS展開して良いならハイセンで調べればいいやん。

 イーグルを再び展開、浮き上がって眼下を見下ろす。

 目当ての人物は少し離れた砂浜でISを展開して情報を閲覧していた。

 

「よっ。隣よろしい?」

「………どうぞご自由に」

 

 ふわりと降り立つイーグルを一瞥してセシリアは試験装備のデータに目を通す。

 声色が明らかに暗めだ。

 

「沈んでるなあオイ。まるで無人島に遭難したお姫様みたいだぞ」

「何しに来たんですの、わたくしを笑いにきましたの? 笑うなら笑えばいいですわ」

「はっはっはー、これでいい?」

「撃ちますわよ」

「展開すんな展開すんな」

 

 手にスターライトMKⅢをコールして睨み付けられた。

 いつもより眼光五割増しでございます、マの人なら感謝感涙ものだが生憎俺はどちらかというとサの人よりなので興奮も涙もしない。

 

「落ち込んでるだろうから心配になって来たんだよ」

「慰めはいりませんわ。疾風は気に入られて良かったですわね」

「俺は男でIS動かしちゃってるから。それに、あの反応はお前のせいじゃないだろ」

「わたくしはイギリスの代表候補生。国の看板を背負っている以上、不始末の矢面に立たされるのは仕方のないことです。ましてや、相手はあの篠ノ之博士ですし………」

「あの人生粋の人嫌いって聞いてるぜ? 鈴やシャルロットだって同じ反応だろうさ」

 

 心ばかりに慰めるもセシリアの顔つきは晴れない、表示されるデータを事務的に見つめる彼女にどうしたものかと考えていると、セシリアはポツリと漏らした。

 

「私が男だったら、相手にされていたのでしょうか」

「かつISを動かせたらだろ?」

「………無理ですわね、そんな希少ケースが立て続けに出てくるわけありませんわ」

 

 憂鬱げに息を吐いて更に沈むセシリアを前に俺はもしセシリアが男だったらと想像してみる。

 ………はい、普通にイケメンです。一夏とツートップ張れるぐらいの、ありがとうございます。

 

「俺はお前が女で良かったと思ってるよ」

「何故?」

「何故ってお前。一緒にモンドグロッソ行けないじゃん、俺もようやくその足掛かりを手に入れたからさ。それにあの時IS学園で再会することすらなかった訳だろ?」

「別にわたくしが居なくとも貴方はISを動かせていたでしょう」

「さてどうかなー」

 

 少なくとも、俺はあれが人生の転機だと思っている。

 

「お前が学園に居なかったら張り合いがないよ。お前は俺のライバルだからな」

「ライバル……」

「そう、ライバル。男だったらとか女だったらとか所詮タラレバ、非現実的な話だよ。考えても仕方ない仕方ない。今自分に出来ることを精一杯やればいいじゃないか」

「やれることを」

「篠ノ之博士が言ってたのを鵜呑みにするなら、セシリアが偏光射撃(フレキシブル)を成功させたら目に止めてくれんじゃね?」

 

偏光射撃(フレキシブル)

 ブルー・ティアーズを動かすためのBT適合率が100%を越えると発動するとされる超特殊技能。

 現イギリス代表のワンオフ・アビリティーを参考にしたそれは撃った後のレーザーを自在に操作、つまり曲がるレーザーが可能になる。

 難易度は高いが、実現すれば他国の第三世代兵器を上回る戦闘力を発揮すると言われている。

 

「BT適合率、前上がったて言ってただろ。兆しが見えたら後少しなんじゃないか? それとも、言われっぱなしで押し黙るセシリアお嬢様なのか?」

 

 煽ってやるとセシリアの瞳に鋭い光が見えた。

 

「そんなことありませんわ! いつか、いえ年内にはそれはもう曲げに曲げて曲げまくるぐらいのフレキシブルを見せつけてあげましょうとも!」

「おーその意気だ。イギリスのIS社会はお前の双肩にかかっている!」

「望むところですわー!」

 

 ふんすっと胸を張って声を張り上げるセシリアの顔は晴れやかだ。

 今まで逆境の真っ只中を血が滲む思いをして潜り抜けた云わば女傑………は言い過ぎかもしれないけどそんな感じの肝っ玉を持ったお嬢がこのセシリア・オルコット。

 

 俺も負けてられない。うかうかしてるとおいてかれそうだ。

 

『専用機持ちに通達。今日のテスト稼働を直ちに中止! 花月荘に戻れ! 急げよ!』

「おおぅっ」

 

 突然通信越しに織斑先生の怒号に体がビクンと跳ね上がってイーグルのアーマーがカシャカシャと音をたてた。

 耳元で行きなりとか。いやいや心臓に悪いよ。

 

「てかまだ始まったばかりじゃん! てか俺始めてもいないよ!?」

 

 IS絶ち(1日)をしたというのにこんなのあんまりだよっ! 

 

「な、何かあったのでしょうか?」

「紅椿が花月荘に誤射したとか?」

「笑えませんわね……」

「笑えないね………」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「では、状況を説明する」

 

 本当に笑えない雰囲気なんですが………これは。

 

 旅館の一番奥に儲けられた宴会用の大座敷・風花の間では、俺たち専用機持ち全員と教師陣が集められた。

 証明を落とした薄暗い空間に、空中投影ディスプレイの光が辺りを薄暗く照らしていた。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)通称『福音』が制御下を離れ暴走、監視空域より離脱したとの連絡があった」

「何故俺たちに連絡が?」

 

 一夏の言う通りだ。なんで? ほんとなんで? 

 

「黙って聞いていろ、衛生による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過することがわかった。時間にして五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった」

 

 ………………………………は? 

 淡々と当たり前のように話す織斑先生に頭の中が白くなった。

 

「教員は訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちで担当してもらう」

 

 は、はい? つまり、暴走した軍用ISを俺たちで止めろって? 

 

「それでは作戦会議を」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「なんだレーデルハイト」

「いや、なんかトントン拍子で話が進んでいるんですけど。俺達一介の学生ですよ? 日本の駐屯地は何をしてるんです? アメリカとイスラエルは何をしてるんですか?」

 

 我慢できなくなって遂に織斑先生の話をぶったぎって口を挟んだ。

 内心苛立っているけど声を荒げなかった自分を誉めてやりたい。なんで他国のゴタゴタを無関係な俺達に頼んでんだ? 

 

「日本軍からの援軍はない。現在ここにある教員が運用する訓練機6機、専用機7機で対応しろとのことだ」

「え、箒も含めるんですか?」

「なんだ疾風、私じゃ力不足だとでも言うのか?」

「いや、別にそういう訳じゃないけど」

 

 まだ紅椿を動かして日もたたないのに、大丈夫だろうか。

 いつも以上に鋭い視線をさらに研ぎ澄ました箒の睨みに思わず目線をそらしてしまう。

 

「アメリカとイスラエルからは出そうと思っても出せない状況だ。福音の暴走を鎮圧するために派遣されたISは全てダメージレベルCを越え出撃不能の状態にある。本土からの援軍を呼ぼうにも時間が足りず、故に一番近い我々が対処にあたることになった」

 

 なったって………理屈は分かるし、そうせざるえないということは分かるけど。

 俺は内心戸惑いを隠せない、ふとセシリアの方を見ると真剣な表情をしている彼女と目があった。

 

「わたくし達専用機を持つ代表候補生は有事の際の軍事行動に対する介入が義務付けられていますわ」

「それは知ってるけど。一夏と箒はどうなんだよ」

「私だって専用機を持ったんだ。除け者扱いはごめんこうむる」

 

 自信に満ち溢れた箒から一夏に目を向ける。一夏もこの状況についていけないのか戸惑い気味だ。

 

「先生。この福音って奴は日本に入ってくるのか?」

「可能性はある。そして、その状況に対する人的被害は予想もつかないだろう、この銀の福音はそれだけの危険なISだ」

 

 人的被害、データには広域殲滅が可能と書いてある福音がもし街中でその兵器を向けでもしたら。そう考えた面々は表情を固くする。

 それは一夏も同じだった。

 

「俺もやります。誰かがやらないと、なにも知らない人達が傷付くというなら。そんなことはさせない。俺も白式()をもってる。だから、俺もやります!」

 

 力強い目だった。その言葉に曇りなどなく、一夏の心からの声だと俺は理解した。

 

「レーデルハイト、これは強制ではない。辞退しても誰もお前を咎めることはない。命の危険は大いにある。面子などは関係ない、参加するかはお前が決めるんだ」

 

 参加しなくてもいい。当然だ、俺は代表候補生という役職もない。男というだけで専用機を与えられた点だけの他と同じIS学園の学生だ。

 だけど。

 

「俺もやります」

「疾風、別に無理をしなくても」

「いや、やるよセシリア。俺はISが好きだからな」

「なんの関係がある」

 

 苦言をもらす箒の目を見て続ける。

 

「モンドグロッソで競いあったISを見て、俺はISというスポーツに惹かれた。だけど幾らISをスポーツと認識してもそれはISの一面に過ぎない。福音のように軍の兵器という側面も確かに存在するほど、ISは人を傷付ける力も持っている」

 

 俺は一息吸って頭を整理して言葉を紡ぎだす。これは自己の再認識、それを確立するための言の葉だ。

 

「だけどそれは表に出しては駄目だ。もし福音というのが日本を火の海に変えたら、世間はISをスポーツとして認識しなくなる。俺はISをただの『兵器』という枠組みに収まるのは嫌だ。だから俺は、俺とこいつは作戦に参加します」

 

 ギュッと胸元のバッジを握りしめた。

 織斑先生もそれを汲み取ってくれたのか黙って聞いてくれた。

 

「すいません、話を遮ってしまって」

「いや、いい。それでは作戦会議を始める、意見のあるものは挙手するように」

「「はい」」

 

 早速、手を挙げたのは俺とセシリアだった。セシリアが先に言うように促すとセシリアは素直に応えた。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外するな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低二年の監視がつけられる」

「了解しました」

「レーデルハイトは?」

「セシリアと同じです」

 

 ホログラムが切り替わると、ISの情報がアップ。皆の目の前にホロスクリーンが出て、各々はそれをチェックし議論する。

 

 手短に纏めると、この銀の福音は高機動広範囲殲滅を目的としたIS。

 頭から直結でウィングスラスターを生やしたその姿はまるで天使のよう。しかしこの天使の羽のようなスラスターは多方向推進翼(マルチプル・スラスター)。イーグルと同様の代物だが、出力規格が違う分別物ととらえた方が良いだろう。

 装備はウィングスラスターに複数備え付けられたエネルギーカノン【銀の鐘(シルバー・ベル)】。これは一度に36発発射が可能で対象に着弾したのち爆発するという厄介極まりない代物。

 他には後付け装備として近接兵装のビームショーテル。羽型の小型ミサイル【ハミングバード】を装備している。

 

「(疾風)」

「(なんだよ)」

「(抑えてくださいね)」

「(わかってるよ)」

 

 国の重要機密、一般公開されていないISの情報に俺の中のギークソウルに火がつき始めたが状況が状況なので自重自重。

 隣のセシリアには見事見透かされました、合唱。

 

「近接武装はあるけど、まだ試験動画はないんですね。こちらから探りを入れることは」

「無理だな、この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは、一回が限界だろう」

「パイロットの安否は? こちらからコンタクトをとることは出来ますか?」

「駄目だ、福音の高性能AIが外部との繋がりを完全にシャットアウトしている。パイロットの安否も未だ不明だ」

「つまりチャンスはランデブーでの一回切り……ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った」

「俺の白式と零落白夜、ですね」

 

 一夏の発言に織斑先生は頷いた。

 零落白夜、馬鹿にならない燃費を引き換えにクリーンヒットすれば一撃で落とせるだけの規格外の攻撃力を持ったワンオフ・アビリティー。

 すれ違い様に福音に押し当てればその時点でこの作戦は終了する。

 

「一夏、あんた当てれるの?」

「やるしかないだろ。実際このなかで一番攻撃力を持ったのは」

「そうじゃなくて、生身の相手に本気で振るえるのって事」

 

 鈴はいつかのクラス代表戦の無人機のことを思い出した。

 あのとき一夏は「無人機なら思いっきり零落白夜を振るえる」と言っていた。

 零落白夜はシールドバリアを突破して直接絶対防御に当てていくものだ。だがその絶対防御許容量を越えればそのまま生身に到達する。

 

「鈴、それは一夏が及び腰になってると言いたいのか?」

「箒、これは今までの試合とかとは違うのよ。人の生死が直結する戦場、作戦に参加するあたし達の命の保証なんて何処にもない、それは福音のパイロットも同じなんだから。あんたそれ分かってる?」

「も、勿論分かってるとも」

「ならいいけど。で、どうなのよ一夏」

「……………」

 

 鈴の問いに膝に置いた手を更に握りしめる一夏。

 言われて再認識した、もしかしたら自分がその人を殺す結果になるのではと。この力は守るためであって殺すものではない、だけどそうしなければならないのが今の状況なのだ。

 

「織斑。パイロットは意識を失うまでの最後に『手段を選ばずに福音を止めてくれ』と言ったそうだ」

「それって」

「福音の乗り手には覚悟がある。だが私はお前に命を奪えとは命じない、だが覚悟はしておけ」

「傷付ける、覚悟………」

 

 一夏は白式の待機形態であるブレスレットに触って、強く掴んだ。手が震えている、情けないと思いながらも、突然の現実に震えている自分がいたのだ。

 そんな彼を見かねて、俺は助け船を出した。

 

「一夏、銀の福音はアンリミテッド使用。つまり制約が外された膨大なエネルギーを有している。そのぶん絶対防御も厚い。それに何も胴体じゃなくて翼部分でいい、このISはスラスターと機体が繋がってるから、高速軌道中に片翼を失ったら一気にバランスが崩れる。それを抜きにしても、一回全力で当たったぐらいで生身に到達するなんて限りなく低いよ」

「そうなのか?」

「ああ、だから変に気負うなよ。もし仮に大事になったとしても、学園や俺達が守るからさ」

「………わかった。ありがとう疾風。よしっ!!」

 

 作戦は福音に零落白夜を当てるということに可決した。

 

「ただ問題はどうやって一夏をそこまで運ぶかよね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうし」

「しかも、目標に追い付けるだけの速度のISでなければならないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」

「俺のイーグルのパッケージはそれに該当するけど。他に高機動パッケージを持ってる奴は?」

「それならわたくしが。今回ブルー・ティアーズには専用高機動オートクチュール【ストライク・ガンナー】を装備しています。超高感度ハイパーセンサーもついています」

 

 オートクチュールというのは、量産機のパッケージの専用機版。

 専用機に合わせたチューンにより同じタイプのオーソドックスなパッケージよりも性能やレスポンスは向上している。

 

「オルコット、超音速下での戦闘訓練時間は」

「20時間です」

「ふむ、それならば適任だな」

「疾風、貴方の訓練時間は?」

「俺か? IS学園に入る前に3時間ほど。良い成績は出せてた。今回の高機動パッケージも、その時のデータを元に作られたらしい」

「でしたら、わたくしが一夏さんを運びますので、疾風はそのサポートを。頭数は多い方が作戦の成功率も上がりますわ」

「確かにそうだな。一夏、俺とセシリアが必ず福音のとこまで届けるからな」

「おう、頼りにしてる」

 

 パシッと、拳をぶつけ合う男二人を尻目に、織斑先生が纏めに入った。

 

「よし、ではその作戦で進めるとしよう。異論のある者は」

「待ってください!!」

 

 織斑先生が促すのを待たずに箒が立ち上がって手を胸に置いた。

 その右手には赤紐に金と銀の鈴をつけた、紅椿の待機形態があった。

 

「私の紅椿も速さには自信があります! だから私も作戦の参加を!」

「残念だが、それは難しい」

「何故ですか!?」

「箒さん落ち着いてください、これにはちゃんと理由があります」

「理由だと? 私が役立たずだと!」

 

 自分では役不足なのではないかと焦燥を隠せない箒はセシリアに詰めよりかけるも、それを遮るようにセシリアはホロウィンドウを箒の前に持ってくる。

 

「疾風、貴方のデータもこちらに」

「おっけ」

 

 自身のデータをセシリアのもとに滑らした。

 受け取ったホロウィンドウと自身のデータ、更に銀の福音と紅椿のデータを並べて箒の前に表示する。

 

「先程紅椿の試運転時のスピードを計測しました。確かに他とは一線を越える機動性です。ですが、高機動特化のオートクチュール装備と比べると明らかに差が出てきます。現在亜音速で移動中の銀の福音に食いつくには、それと同等かそれ以上の加速が必要なのです」

「……………」

 

 セシリアの説明に押し黙ってしまった箒、唇を噛み締め、拳も音が鳴るぐらい握りしめていた。

 

「ありがとう箒」

「ッ!」

「箒の気持ちは嬉しい。だけど、今回はこういう作戦だから。大丈夫、箒のやる気も持って行って必ず作戦を成功させるから!」

 

 ニカッと笑う一夏。しかし、箒の表情は晴れなかった。

 

(違う、違うんだ一夏。私は見守るのではなく、今度こそお前と一緒に並びたかっただけなのに。こんなことでは、なんのために専用機を手に入れたのか分からないではないか………)

 

 口に出すこと無く押し黙る箒に一夏は彼女を心配する。

 どう声をかけようか迷っていると。

 

「ヤッホーい! 呼ばれないけどジャジャジャジャーン!」

 

 天井裏を空けて篠ノ之束がホログラフの上に落ちてきた。

 

「た、束さん?」

「イエスいっくん! 束さんだぜぇーい!」

 

 ブイッ! とサインをする篠ノ之博士に一同またも唖然とする。

 

「およっ? なんで固まってるのみんなー。まあいいや。聞いて驚け聞いて喜べ! この束さんがグッドアイディアを持ってきてやったぜ! 嬉しいだろ嬉しいよね! 大丈夫! 箒ちゃんも活躍、ううん箒ちゃんにしか出来ないプランニングを用意したぜ」

「わ、私も?」

「そう! 箒ちゃんを除け者にするなんて私が許さん。お姉ちゃんに任せなさい!」

 

 キラーンと光る歯を見せる一人不思議の国のアリスの篠ノ之博士。

 

 一同に不安を胸に残すなか、沈みかけた場所から希望を

見出だした箒の顔は、何処か晴れやかだった。

 

 

 

 


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