IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 今回はやばかったです。
 文章密度と内容が濃すぎて心折れかけた。
 だれだよこんな内容書いたやつ俺だよ。


第147話【騙して悪いが】

 

 

 挟撃部隊が罠にはめられた。

 御厨所長が適宜指示を飛ばしてはいるが、こちらの士気が目に見えて低下しているのか通信は混乱しており。誰もが事態の対処に踊らされている。

 

 現れたのは日本代表、楠木麗の白鉄。

 そしてブルー・ブラッド・ブルーの中でも選りすぐりのBT適正値により選ばれたメンバーで構成された部隊向けに調整され、レーザービットを4機増設されたハイクリア・ティアーズ部隊が35機だ。

 全員がナノマシン込みとは言えフレキシブルを十全に使いこなせる正に決戦部隊。

 

「敵艦から更にワルキューレが出現、数は……約300!」

 

 この上更に人型BT兵器が倍プッシュ。

 奴らあの艦にどれたけの人形を積み込んでいたのか。だがそれを冷静に考える暇などなく。

 

「管制室! 反応はなかったの!?」

「こちらからは検知されませんでした。ですが敵ISが出現した瞬間高濃度のBT粒子反応を検知しました」

「奴ら透明マントみたいなの使ってたぞ! 普通の光学迷彩じゃないのか!?」

 

 そう、敵は某魔法学園もかくやの透明マントで潜んでいたのだ。

 しかもIS学園と接続されたミネルヴァの索敵をこの戦闘距離でまったく反応も見せずにだ。

 姿を隠しただけではミネルヴァの目は誤魔化せない。その絡繰に気づいたのはセシリアだった。

 

「恐らくマントにBT粒子を纏わせてBTステルスで欺瞞したのですわ、ですがBTステルスは高いBT適正値と精密な粒子操作が必要です。ナノマシンで強化したとはいえここまで完璧な偽装は個人では出来ないはず。それに、クリア・ティアーズ単体のスペックではBTステルスを行うのは不可能です」

「長い! 簡潔に言いなさいよセシリア!」

「フランチェスカ・ルクナバルトのワンオフ・アビリティーですわ。彼女の能力でBT粒子を固定形成し、BTステルスを他の機体に付与したのですわ」

『その通りよセシリア』

 

 耳障りのする声がオープンチャネルに木霊する。

 ビデオ通信で映されるフランチェスカはこれ以上ないぐらい上機嫌だった。

 

「叔母様……!」

『嬉しいわセシリア。まだ私のことを叔母様と呼んでくれるのね』

「……フルネームが長いだけですわ」

『その口調。あの愚図にそっくりだわ、腹立たしい。でもここまでよ。所詮低脳な男が考えたおままごとのような策。散々好き勝手してくれた報いを受けることね』

 

 眉間をピクつかせながらもフランチェスカの機嫌は損なわれることはない。

 自身の怨敵である疾風・レーデルハイトの鼻をついに明かせた。溜まった鬱憤も晴れるというものだ。

 興奮と嘲りがこもった視線は肩を震わせ、顔を俯かせる疾風に向けられていた。

 

『聞こえているかしら疾風・レーデルハイト。お前という愚かな男に従ったせいで、仲間が危機に瀕しているわよ。助けに行かないのかしら? 薄情ね』

「………」

「疾風……」

 

 敵味方問わず、視線を向けずとも意識は疾風に向かわれた。

 反論しない疾風に更に気を良くしたフランチェスカは声を弾ませながら煽り続ける。

 

『あらどうしたの疾風・レーデルハイト。さっきからだんまりね? ご自慢の策が破られて悔しいのかしら? でも恥じることはないわ、あなたたち男が出来ることなんてたかが知れてるのだから』

「…………そんな……」

『フフッ』

 

 ポツリと呟いた疾風の言葉にフランチェスカのテンションは鰻登りだ。

 早く顔を上げてその絶望に染まった顔を見てやりたい。ニヤける顔を抑えられず彼女は期待1色で今か今かと待ち続けた。

 

 そしてゆっくりと疾風の顔が上がっていく。

 

 その顔は……

 

「嘘だろ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────ここまで上手くいくなんて……!」

「……は?」

 

 先ほどのフランチェスカ以上の喜色に満ちていた。

 

 逆に唖然としたフランチェスカを置き去りに疾風は直ぐ様オープンチャネルに追加の周波数帯を入力した。

 

「こちらクライアント、疾風・レーデルハイトです。お待たせ致しました。ゲストの皆さん、これより、エクストラフェーズを開始致します……え? なんですか。景気の良いのを一発頼む? しょうがないですねぇ……コホン」

 

 軽く咳払いをし。疾風は勢いよく両手を広げ、高らかに幕をぶち上げた。

 それはもうとびっきりの笑顔で! 

 

「イッツ! ショータァァァァイム!!!」

 

 戦場に轟かんばかりの掛け声に応えるかのように。

 敵陣直上から6つの影がキラリと光った。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「アルタイル1から中隊各機へ。クライアントからゴーサイン確認。これより作戦行動に入る!」

「アルタイル2、ラジャー!! さあ行くぜ野郎ども!!」

「アルタイル3、コピー! 私とダーリンの恋路を邪魔する奴は拳に撃たれて三途の川だぁ!!」

「ベガ1、ウィルコ。コーリング少佐、リリー少尉。もう少し落ち着きを持ってください!」

「いつものことでしょう。ベガ2、ウィルコ」

「付き合ってたら逆にへばりますよ! ベガ3、ウィルコ!」

「フフッ……吶喊!!」

 

 6機のISが増速、重力加速も味方につけて戦場に

 その中でも一際速度を上げたのは天使のような白銀のIS。

 ハイパーセンサーユニットに直接接続された大型マルチスラスターで羽ばたくそれはいの一番にハイクリア・ティアーズ部隊の上空に躍り出た。

 

 舞い降りた銀天使は臨海学校で疾風たちを全滅寸前に追いやったかつての仇敵。

 本来の乗り手と共にもう一度羽ばたくISは再び戦場に鐘を鳴らす。

 

 その名を……

 

「行くわよ、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)!!」

《イエスマム。オールウェポンズフリー》

 

 アメリカの広域殲滅特化型第3世代IS。シルバリオ・ゴスペル。

 そして操縦者、ナターシャ・ファイルスであった。

 

 大出力マルチスラスターに備えられた計36門のシルバー・ベルが高らかに凱歌を鳴らし。ハイクリア・ティアーズに向けて無数の爆発エネルギー弾を降り注がせた。

 

「直上!? 迎撃、なぁ!?」

 

 迎え撃つべく上を向いた女は目をひん剥いた。

 目の前に広がるのは空を覆い尽くさんばかりに降り注ぐ羽弾の雨。

 初っ端から最大チャージで放たれたシルバー・ベル。増設されたビットを全起動、周囲のワルキューレを総動員するが致命的にアクションの遅れが生まれ、残り半数の羽弾がハイクリア・ティアーズに降り注ぎ、爆ぜた。

 

「なんて密度の攻撃!」

「う、狼狽えるな! たかが6機、さっさと押しつぶして」

「「うおぉぉぉぉらぁぁぁぁ!!」」

 

 爆炎が晴れた先には個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)による不規則なジグザグ軌道と雄叫びを上げながら向かってくる2機のIS。

 

 気づけば通常のISのそれよりも大きな拳が目の前に……

 

 ゴシャメリィ……!! 

 

「かぁっ」

 

 鈍く、重い音共に拳ををめり込ませたのは大柄なIS、アメリカ第3世代ISファング・クエイク。

 虎柄のISを駆るのはアメリカ国家代表のイーリス・コーリング少佐。

 もう1機は赤青白に塗装されたアメリカンカラー、見た目から愛国心が溢れるISにはかつて疾風と激闘を繰り広げたアンネイムドの副隊長ことリリー・ロジャース少尉。ちなみにアンネイムド入隊前の本名である。アタックしていた元アンネイムドの男性との交際を力技でもぎ取ったらしい。

 

「「イン、パァァクトッッ!!」」

 

 めり込んだ2つの単式ナックルバンカーが轟音を建てて炸裂。吹き飛ばされた敵ISは海面を水切りしたのちに撃沈された。

 

「ヒュー! 派手に飛んだぁ!」

「ちょっとイーリスさん! リボルバーのタイミング少しずれてました! 一歩間違ったら失敗してましたよ!」

「成功したから良いんだよリリー!」

「まったくガサツですねえ。だから私より成功率低いんですよ。彼氏も出来ませんよそんなんじゃ」

「うるっせぇリア充! 私には私なりのやり方が、おっとぉ!」

 

 軽い口喧嘩を待つ敵ではなくレーザーがファング・クエイクのアームシールドを叩く。

 しかしそれは直ぐに頭上からの実弾射撃によって阻まれた。

 

「ありがとよカレン!」

「よっ! 流石元隊長!」

「二人とも戦場のど真ん中で漫才などするな! ベガ2、3! 人形どもの数を減らすぞ!」

「「ウィルコ!」」

 

 2人を叱責するのは以前千冬と火花をまじ合わせたアンネイムドの隊長改めてカレン・カレリア。

 彼女の乗機もファング・クエイクだが派手な才色を持つ2人とは違い味気のない灰色迷彩なのが真面目さを出している。

 カレンは自分と同じ灰色のストライカー2機をつれてワルキューレの掃討に入った。

 

「うし、私たちも行くぜ!」

「アイサー!」

「おい疾風・レーデルハイト! 後でお前のデータ寄越せよ! こっちより先に個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)成功させやがってこの野郎!!」

 

 イーリスとリリーも各々の銃器を取り出し群がるワルキューレを次々と鉄くずに変えていく。

 イーリスに至っては疾風への意趣返しなのか個別連続瞬時加速(リボルバー・イグニッション・ブースト)を多用している、が時々失敗してあらぬ方向にぶっ飛んでいる。

 

「こちらアメリカ特務IS部隊イレイズド隊長、ナターシャ・ファイルス少佐です。これよりIS学園に参戦致します」

「やっぱり、あの時の福音のパイロット!」

「ごきげんよう白いナイトさん。元気そうで何よりだわ」

「ご助力感謝しますファイルス少佐。シルバリオ・ゴスペル、凍結解除されたんですね」

「ナターシャで良いわよ青い鳥さん。ある人が太鼓判押してくれたお陰でこの子はまた空を飛ぶことが出来たわ」

 

 そのある人というのは、篠ノ之束だった。

 

 疾風・レーデルハイトが秘密裏に援軍要請を乞うた時、束がシルバリオ・ゴスペルになんの問題ないこと、そしてゴスペルにウィルスを流した亡国企業のスパイを炙り出してみせた。

 

 正直ナターシャは亡国企業のスパイではなく、臨海学校に現れた篠ノ之束が暴走の犯人ではないかと疑っていた。

 現に篠ノ之束は元々IS学園を襲うよう誘導されたゴスペルのウィルスを消去し、新たなプログラムを組み込んで暴走に導いた。

 

 だがそれをナターシャが知る由もない。事実スパイがいた事は事実で、束が犯人である立証も出来ない。だから敢えて篠ノ之束には目をつむり、シルバリオ・ゴスペルが復活するチャンスに手を伸ばした。

 

 結果、彼女の愛機は半年の眠りから蘇った。

 かつての不調は影も形もなく。パイロットとAIユニットのコンビネーションは疾風とイーグルに勝るとも劣らない繋がりで悪虐に裁きを与えていく。

 

「さっき疾風が言っていたゲストってのはナターシャさんたちだったのか! お前いつの間にこんなこと」

「驚くのはまだ早いぜ一夏」

「え?」

「そうよ。ゲストは私たちだけじゃないの」

 

 ナターシャの小悪魔的な声を合図にブルー・ブラッド・ブルーを囲むIS群が次々と出現した。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「あーもう! あんたばっかに構ってられないのよ! さっさと倒れなさいよ乱!」

「そっちこそやられなさいよ鈴! 無駄にテクい動きばっかして!」

 

 鈴と乱のドラゴン対決は膠着状態にあった。

 似たような武装、性格、バトルスタイル。実力に関してはまだまだルーキーの乱が劣るもののナノマシンの適性上昇と強化された反射神経で喰らいついていく。

 

「そらぁ!」

「きゃあ!」

 

 しかし敵増援が現れたことで鈴に焦りが生まれ隙が出来た。拮抗していた中でそれは致命的で乱の角弐の大振りに吹き飛ばされる。

 鎌首を上げる甲龍・紫煙の単式龍砲。空間の歪みが目視出来る。

 放たれた不可視の砲撃。回避は不能、ガードするしかないと覚悟を決め……

 

「凰候補生、そんなのに当たったら特別メニューですよ」

「どぉぅええっ!?」

 

 覚悟は粉微塵となった! 

 自身も粉微塵になるまえに気合でスラスターを操作し紙一重で回避。

 

 いやそんなことより今の声は。

 

「な! は! え!?」

「てこずってるようですね凰候補生。手を貸しましょうか?」

「ややや楊管理官!? なんでここに居るんです!?」

「特別ゲストという奴です。それで? お手伝いはいりますか? 可愛い悲鳴を出す余裕ぐらいはありそうですが」

「いえいりません! こんな洗脳されたボンクラなんかあたし1人で充分ですとも!!」

「いいでしょう。ならやってみせなさい凰鈴音」

「はいぃっ!!」

「フッ。こちら中華人民共和国臨時編制IS部隊【封神(ほうしん)】。これよりIS学園に参戦する!」

 

 弟子の無駄に気合が入った声に満足した楊麗々中国代表候補生管理官。

 彼女は自身の得物である青龍偃月刀を装備した甲龍零号機を駆り、一団を率いて戦線に参加。

 部隊には中国第二世代IS【甲虎(シェンフー)】が4機。そしてもう1機。

 

「甲虎は好きに動け。小美(しゃおめい)、我々はISを屠るぞ! いったい誰に弓を引いたのか、奴らの骨身に刻みつけてやれ!」

「了解です麗々姉様!」

「姉様と呼ぶな。ここでは教官か隊長と呼べ」

「了解隊長! さあ、私の哪吒の相手は誰かしら!!」

 

 一番槍を決めたのは赤、金、桃色に彩られた派手な機体。脚についた車輪状のブースターユニットから炎をぶちまけながら戦場に斬り込んで行った。

 

 搭乗者は黒髪の右側に桃色のメッシュ入れた快活な女性。その女性は中国IS国家代表【李小美(リー・シャオメイ)】。

 そして乗機は甲龍のカスタム機【甲龍・哪吒(なた)】であった

 

 見た目は甲龍に似ているがアレンジが強く効いており、特徴的な肩の衝撃砲には龍の意匠が付随している。

 

「小美、お前の機体はロールアウト仕立てだ。あまり無茶をするなよ」

「心配ありませんよ隊長! 私は中国国家代表、こんな奴らに手こずるほど弱くありません! 来い、火尖鎗!!」

 

 手に出現するわ中国のハルバードである方天画戟、名を【火尖鎗(かせんそう)

 ISに付けられたモデルである哪吒大使が持つ火を纏う槍と同じ武器はその名に違わずコールと同時に穂先が紅の焔に染まる。

 

「イヤァァァァ!!」

「なんだこいっ、うわぁ!?」

 

 猿叫と共に上段から振り下ろされる火尖鎗がハイクリア・ティアーズのシールドに振り下ろされる。

 そこから瞬きの間に斧部位にシールドを引っ掛けて引き剥がし、炎の連撃でシールドを削り。更に足の車輪型ブースター【風火輪(ふうかりん)】の円刃でアクロバティックに敵を切り刻む。

 

 そしていつのまにか肩の衝撃砲ユニットがガパリと顎を開け、煌々と光を放っていた。

 

金磚(きんせん)!」

 

 目の前の空間が爆発したかのように燃え上がる衝撃砲がハイクリアを吹き飛ばした。

 甲龍のオートクチュール、崩山の炎熱衝撃砲から発展した【龍砲・金磚】が龍のブレスと見紛う炎を繰り出した。

 

【甲龍・哪吒】

 鈴が持つ甲龍を国家代表である李小美専用向けに改造を超えた魔改造を施した中国第3世代IS。

 身に纏う紅い炎は空間圧縮時に発生する空気抵抗摩擦による発火現象を更に先鋭化したものであり。国家代表である彼女に相応しい中国のフラグシップ機として開発された超高級品。

 

 特筆すべきは西遊記、封神演義に登場した哪吒大使にあやかった武具を再現した特殊兵装を8つも装備している事。

 その中にはレーデルハイト工業、並びにティアーズ・コーポレーションの技術も使われているハイコストハイポテンシャルなISとなっている。

 そのコストは1機で甲龍を5機作れるほどのブルジョワIS。その機体とコストを背負って小美は軽やかかつ派手に踊り舞う。

 

「まだまだ行きますよ! 乾坤圏(けんこんけん)! 綉毬(しゅうきゅう)! 同時起動!」

 

 手には圏と呼ばれる大型の円月刃、【乾坤圏】

 腰に備え付けられた球状の衝撃砲ビット【綉毬】

 

 乾坤圏は伝承通りのチャクラムサイズではないものの。BT技術とAI技術によりある程度軌道操作が可能で。

 龍砲を小型化したような綉毬はフヨフヨ浮きながら衝撃砲を撃ち、時には炎を纏って相手に突撃する。

 

 そして甲龍の崩拳を改造したボウガン型衝撃砲発射機構、【乾坤弓(けんこんきゅう)】。崩拳より威力を抑えた代わりに連射力を上げたそれは右手を不可視、左手を炎熱の矢で撃ち放ち、群がってきたワルキューレのレーザーガンを腰に備え付けられた空間圧縮障壁ユニット【混天綾(こんてんりょう)】で防ぎながら乱れ撃つ。

 

「さあさあ! まだまだ私はやれますよぉ!! おら来いよヘナチョコども! 私をもっと目立たせろ! そして跪け! 更にひれ伏せぇ!!」

「なんかこの短時間でキャラが違う!?」

 

 ハイテンション状態の小美を止められるものはなく。近くに居たハイクリアを腕部の炎熱チェーン【縛妖索】で振り回しながら大立ち回りを披露する彼女の姿は正に哪吒大使の再誕に相応しかった。

 

「なんなんだこいつ! 全身武器だらけか!?」

「中国国家代表だ! 囲んで一気に攻めろ!」

「その前に後ろにも目をつけることだな」

 

 目立ちに目立つ甲龍・哪吒の影で楊麗々の青龍偃月刀の軌跡が光る。

 背後から無駄のない洗練された所作で長物を振り下ろし背中を折る勢いで叩き付けた。

 

「い、いつの間に!」

「こいつ! 元国家代表の楊麗々だ!」

「ほう、私の知名度もまだ捨てたものではないのですね。まったく、感覚が鋭いと聞いたから身構えてみればここまでお粗末とは。拍子抜けだな」

「言わせておけば! うっ! な、なんだ!?」

 

 背後から撃とうとした敵が突如何かに吹き飛ばされた。

 切り結んでる間に展開していた龍砲の背面射撃。だがその精度はまだ荒削りの鈴とは違い完成されたものだった。

 

「こいつ、隙がない!」

「人に言ったのです。自分が出来ないのでは教官としては落第もいいとこでしょう」

 

 淡々とした口調を交えながら偃月刀の冴えはまったく鈍らず。時々自身とはまったく違う方向に衝撃をぶちかます。

 楊麗々の動きは計算され尽くしている。自身のISがどこまで動くか、どう動かせば敵を斬れるかを徹底的に追求しており。それは無駄を限りなく省いたスマートな戦法。

 小美が動なら麗々は静の動き。的確に相手の動きを殺し、そして削り落とす。

 そこに宿した静かな怒りを感じさせない流水のような槍捌きで悪辣を断つ。

 

 結果、ミサンドリーたちはいつ飛んでくるかもわからない衝撃砲と中国国家代表の猛攻に怯えながら熟練の青龍偃月刀と相対することを強いられる。

 

「私の教え子を洗脳した報い、その身で受けて頂く」

 

 積み上げた技術を手のひらに込め、元国家代表は青龍偃月刀の冴えを見せる

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「フォォイエル!!」

 

 断続的に放たれる砲弾が次々とブルー・ブラッドのISを黒炎に染める。

 砲弾は途切れることを知らず、次々と放物線を描いて戦場に弾着する。

 

「フォイエル! フォイエル! フォイエル! フォイエル! フォイエル! フォォイェェェェル!!」

 

 発射元は1機のIS。長い銀髪に赤い船長帽を被った女性は正しくヒャッハーを絵に描いたような顔で砲弾をぶち込みまくる。

 

 そのISはISでありながら戦艦であった。

 赤と灰色のツートンのISにはISクラスに縮小された2連装砲【べシュス・クンスト】が両腕に2基、両肩4基、そしてカスタムウィングに2基の計16門と馬鹿みたいな砲門数を誇る。

 その全砲塔がバススロットリロードにより絶えず火薬の炎と砲弾を吐き出し続けるそれは大艦巨砲主義をISに押し込めた代物と言えるだろう。

 

 両手にはヒトラーの電動鋸の異名を持つグロスフスMG42機関銃をISサイズに拡張したものを2丁。

 背部ウィングベイには多連装SAMユニットを装備。その様は先程披露したオーバードウェポン大和に匹敵する弾幕製造機だ。

 

 名を【スーパービスマルク】

 かのドイツの大戦艦ビスマルク級一番艦ビスマルクの名を受け継ぐ第三世代ISに乗る銀髪の女は誰であろう国家代表に名を連ねる女傑にして大艦巨砲主義の申し子であった。

 

「ハーハッハッハァ! 待たせたな諸君! 海軍特殊IS部隊、紅鯨隊(ロート・ヴァール)が総隊長にしてドイツ国家代表! アレクサンドラ・リンデマン中佐が直々に馳せ参じてやったぞ! 女尊男卑主義!? くだらん! 全て一切ことごとくこの大艦巨砲主義の前では塵芥同然だぁ!! フォイェェェル!!」

「今度はドイツ国家代表だと!? なんて弾幕!」

「怯むな! 数の利はまだこっちにある!」

「そうだ! こっちに来い! 全て灰燼に変えてくれるわぁ!!」

 

 射程内に入ったかと思えば両手の機関銃とミサイルをバラまくトリガーハッピーならぬキャノンハッピーは戦場に爆炎の無秩序状態を作り出した。

 

 無論、無秩序なので味方が居てもお構い無し。

 その砲弾はアメリカと中国代表の鼻先をかすった。

 

「うおぉぉ!? あっぶねぇな! てめぇリンデマン! こっちに撃つんじゃねえ! アメリカに喧嘩売るとは良い度胸だな! あぁん!?」

「くぉらぁ! 私の見せ場取るんじゃねえぞドイツこらぁ! 中国三千年の歴史教えてやろうかてめぇこらぁ!!」

「ハッハァァ! 戦場のど真ん中で右往左往してるから悪いのだ! 時代は今も大艦巨砲! そんなチマチマ接近戦してるお前らはまとめて塵となブヘェェッ!!?」

 

 ゴン! と後頭部にヒットした銃弾にアレクサンドラは海面にダイブした。顔面から。

 

「当たり前のように誤射するなアホウが。ドイツ軍人としての誇りを持て馬鹿が。この馬鹿が」

 

 ドイツ国家代表の後頭部を撃ち抜いたのは1機の戦闘機……否、戦闘機にしては何回りもサイズの小さいそれだった。

 

「なんだあの小さい戦闘機は!」

「ドローン兵器か? 撃ち落とせ!」

 

 ISにおける世界で戦闘機というカテゴリーは既に廃れたものと世論は認識している。

 だがそれでもその心を忘れぬ者たちも居る。

 

 機首、主翼、尾翼は確認できるが戦闘機にしてはゴツく、そしてサイズもISほどの物しかない。その答えは単純とはほど遠いながらも明確。それは戦闘機ではなくISであったからだ。

 

変形(バリアンテ)

 

 なんと数瞬とかからず戦闘機形態からISに変身を遂げたのだ。

 

「へ、変形したぁ!?」

「な、え、はぁ!?」

 

 そのインパクトは正しく度肝を抜くに相応しい。

 灰色をメインに各所を金色に近い黄色で塗装された可変型ISは携行式レールガンと肩部ガトリングを叩き込む。

 

 直ぐ様巡航形態に移行し戦場を突っ切り、変形時の空力制御で敵の背後に。シールド先端に発動された試作攻撃型AICが敵の装甲ごとシールドをえぐり抜く。

 

 ドイツ第3世代可変型IS【アイゼン・フェーダー】

 ドイツ語で鉄の羽を意味するそれは巡航形態とIS形態を使い分ける希少奇天烈なISだ。

 世界でも類を見ることはなく、運用しているのは世界広しと言えどドイツ空軍IS部隊のみであろう。

 

 アイゼン・フェーダーの変形機構は所謂寝そべり変形に類する物であるが、変形のプロセスは些か複雑だ。それを戦闘に対応できるレベルのシームレス変形を可能にしたのは第3世代技術に該当する特殊なPIC機構の賜物であり。副次効果として空気抵抗軽減にも一役買っている。

 

「こちらドイツ空軍IS部隊、金鷲隊(ゴルト・アードラ)隊長、ルイーゼ・カプチェンコ中佐だ。ついでに海軍のたわけ1名。これよりIS学園に参戦させて頂く」

「ロート・ヴァールとゴルト・アードラだと!? 何故お前たちがここに!」

「お久しぶりです、ボーデヴィッヒ少佐。種明かしはそちらの指揮官に聞いてみて下さい。おっと」

「うおばぁ!?」

 

 ルイーゼと名乗った金髪の女性が海中から撃たれた十数発の砲弾を近くのISでガードベントしたのちポイっと捨てる。

 撃ったのは勿論、アレクサンドラだ。

 

「ルイーゼェェ!! なーに人のドタマぶち抜いてんだあぁん!? しかも的確に後頭部ど真ん中ってよぉ!」

「他国のIS諸共誤射は普通に事案だろう。また始末書書かされるぞアレク。その小さい脳みそに無駄に積み込んだ大艦巨砲主義はろくに狙えませんっていう意思表示なのか?」

「言ってくれるじゃねえかよ。流石ISに無駄な戦闘機要素突っ込んだ色物ちゃんは口だけは達者だなぁ!」

「無駄ではない誇りとロマンだ。ISによって代替わりした航空戦力から10年。ついにISによるファイターパイロットの魂が蘇った。これがロマンではなく何と呼ぶ。お前のそれだって人のこと言えた義理ではないだろ。なんだスーパービスマルクって。ビスマルク要素お前の名字だけだろ。このドイツの恥」

「おい、俺の名字笑ったな? 先祖代々受け継がれた船乗りの名をよぉ。てめぇから撃ち落としても良いんだぞルイーゼ」

「当てられない癖に何を言う。そもそも何処が大艦巨砲主義なんだ。その口径何ミリだよ」

「フォォイエエエエエル!!」

 

 16門の一斉射が金の鷲目掛けて放たれた。なんなくヒラリと躱す先には敵のISが。

 もはやブルー・ブラッド・ブルーではなく同僚に向けられた砲火にただただ巻き添えを食らうしかない。

 

 ドイツIS空軍とドイツIS海軍は犬猿の仲。否、鷲鯨の仲というのはドイツの一般常識であった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「な、あ…………」

 

 なんだこれは。

 これはいったいなんの冗談か。

 なんの幻覚か。

 ありえない。こんなことがあり得てはならない。

 

 数分前に幸福の絶頂に居たフランチェスカ・ルクナバルトの姿はそこにはなく。

 ただただ目の前の非現実的な光景に目を見開くことしか出来ないでいる。

 

 敵の策略を逆手に取り、逆に奇襲をかける。

 意気揚々にこしらえた疾風・レーデルハイトの思惑を潰し、味方が散りゆく様を観ることしかできない絶望に歪んだ顔を特等席で拝む。

 フランチェスカのシナリオではこの戦争は勝ち以外ないはずだった。

 

 なのに今はなんだ? 

 奇襲を仕返した筈の部隊がさらなる奇襲で包囲殲滅させられようとしている。

 しかも各国の国家代表を含めたエース部隊が自身の国をほっぽりだしてIS学園に参加した。

 世界のいずれもが自分たちブルー・ブラッド・ブルーの襲撃を恐れて国に引きこもっている筈。増援なんて動きは一つも入ってきていない筈なのに。

 

 そもそもこちらの作戦が敵にバレる筈がない。いったいどうしてこうなったのか。

 

 あり得ない、こんなことがあり得てはならない! 

 

 思考が堂々巡りするフランチェスカ。

 それを引き戻したのは皮肉にも部下の悲鳴だった。

 

「アメリカ、中国、ドイツのIS部隊がハイクリア・ティアーズの部隊を襲撃!」

「楠木麗が日本自衛隊と交戦に入りました!」

「全部隊が指示を求めています!」

「クイーン! 我々はどうしたら!」

「っは! う、狼狽えるな! まだ数はこちらが勝っているのだ! 押し戻せ!」

 

 そうだ、自分たちはまだ負けていない。

 イレギュラーはあれど対処出来ない程ではない。

 各国の国家代表がなんだというのだ。むしろそっちから来るのは好都合とも言える。

 逆に包囲殲滅し、洗脳してやれば来たる世界征服の有力な兵と成りうる。

 

 取らぬ狸の皮算用とも言えるが。少しでも前向きに考えないと頭がおかしくなりそうだった。

 だが前向きに考えられる余裕を持つのはフランチェスカぐらいで。部下の士気は未だ乱れたままだ。

 

「で、ですが。敵は国家代表どころか新技術も導入してきています!」

「だからなんだと言うのです! 所詮付け焼き刃の試作品! 我らイギリスの集大成であるBT技術が劣る通りはない!!」

『ほう? 驚いたな元英国代表。未だ我らが祖国の名を口にするとは。貴様にも愛国心の欠片があったとでも言うのか? 流石我が国から金だけをふんだくった奴らだ。厚顔無恥も甚だしい物だなぁ!!』

「なに!?」

 

 割り込んできた聞き覚えのある罵声と同時に艦橋のCICルームが揺れ、次々と警告表示がモニターに浮かぶ。

 

「な、何事だ!? 状況報告!」

「後方からの攻撃です! 主砲1番2番! VLSの半数が大破!」

「艦後方から新たなIS反応! 数は5! こ、これは!?」

「なんだ! 次は何が来たんだ!」

「し、識別反応あり! イギリス近衛師団直轄IS部隊、スカーレット・ナイツです!!」

「なんですって!? ぐうっ!?」

 

 再び揺れる戦艦キャメロットの頭上を飛ぶは赤いIS。

 ステルスを解除がてら得物であるレールガンとミサイルをキャメロットの対空火器に降り注ぎ、爆炎をあげていく

 

 

 

「各機、艦ばかり夢中になるなよ! 目標は我々を差し置いて親衛隊などを名乗る腐った肉袋どもだ! 喰らい尽くせてめぇらぁ!!」

「「イエス・ナイトリーダー!!」」

 

 名乗っていたかは定かではないがとりあえず殴ることに変わりはない。

 騎士にしては苛烈に飛ばされた指示にスカーレット・ナイツの5機は散開。

 祭り会場に向かって殴り込みをかけた。

 

 メイルシュトロームのカスタム機であるイギリス第二世代型IS【ドラグナイト】が4機。そして自慢の赤髪をひるがえす騎士団長ジュリア・ウェルキンが駆る第三世代カスタム機【ドラグナイト・フレア】が先陣を斬る。

 

「こちら英国近衛騎士団スカーレット・ナイツ! 恥知らずの元国家代表をぶん殴りに馳せ参じたぜ!」

「ご助力感謝しますウェルキン団長。待たせすぎましたかね?」

「おうとも! うちの妹が世話になってるな疾風・レーデルハイト! 派手な舞台に呼んでくれて感謝するぜ!! おいサラ! さっきから黙ってないでさっさとこっちに来いよ! 聞いてるのかサラぁ!!」

「五月蝿いわよ姉さん! こっちに来るなんて聞いてないわよ!」

「そりゃあたしに似合わずの内密だっただからな! 苦労したぞ、お前がぶっ放した派手派手な奴を見て飛び出さないよう必死でさぁ! 後であたしにも使わせろよサラ!!」

「ああ、やっぱり反応したわね姉さん」

 

 ぼやきつつもスカーレット・ナイツに合流に向かうサラ・ウェルキンの表情は晴れやかだった。

 望外の増援、それも自身がもっとも知っている赤髪騎士団の団長が来て共に戦えるのだから。

 

 赤椿に負けない深紅の体躯であるドラグナイトは西洋のドラゴンがそのままISに落とし込まれた刺々しいデザインだ。カスタムウィングはドラゴンの飛翼。先端にブレードが装着された尻尾はまるで生きているかのように揺れている。

 全員が右肩、ジュリアは両肩に対光学兵装コーティングを施したマントをなびかせる。マントにはスカーレット・ナイツの赤髪を生やした赤いドラゴンのエンブレムが刺繍され、騎士団の誇りであり御印であった。

 

 ドラグナイト各機はレーデルハイト工業製レールガンを手にハイクリアを牽制。

 そして騎士団長は真正面ド直球に最前線に斬り込んでいく。

 騎士団長が飛び込むと同時に各々がブレードをコール。一糸乱れぬ統率された動きでハイクリア・ティアーズを包囲各個撃破で崩し、人知れず団長の援護をこなす。

 

「オラオラぁ! 英国の赤髪がてめぇらに不幸をデリバリーだぁ! 地に落ちやがれミサンドリー共ぉ!」

 

 ドラグナイト・フレアの武装は左腕の大型ガトリングシールド【ドライグスケイル】

 右手の【ドライグヘッド】は巨大な片刃のヒートバスターソードであり、大剣の峰に並ぶはドラゴンの背骨に見立てたスラスターユニット。振り下ろす瞬間に点火されたそれは並の盾で受け入れるものではない業物。

 

 右手の大剣で敵を薙ぎ倒し、合間にシールドガトリングを乱射し戦場に破壊をもたらしていくジュリア。

 かと思えばドライグヘッドのスリットが開き、砲身が露出しチロリと炎が覗く。

 

「ファイヤー!!」

「なぁっ!? 剣から火炎放射!?」

 

 ドライグヘッド、ドラゴンの頭の名は伊達ではない。丁度刀身の先端がドラゴンの顎を模しているそこから放つ火炎はISにも充分ダメージを与え、決してネタ兵装ではなくガチ兵装である。

 テンション高めに搭載を申請する騎士団長にマジかこの人という顔になった整備長の顔はある筋では有名である。

 

 戦場を飛びながら火炎とガトリング。ついでにウィングに懸架されたミサイルを撒き散らす赤龍の具現化は騎士気取りの無法者を淘汰する。

 

 これ以上混乱を助長させる訳にはいかないとハイクリア・ティアーズ部隊は増加された光圧スラスターを吹かしレーザーサーベルとバスターソードを噛み合わせる。

 鍔迫り合いに持ち込んだパイロットは好機とばかりにレーザービットを射出。10機のビットがドラグナイト・フレアを取り囲み発射態勢に入った。

 

 取った! 確信するレーザー攻撃に数刻振りの笑みを浮かべるがそれは直ぐに驚愕に変わった。

 

「あめぇんだよ、ダボが!」

「な、にっ!?」

 

 一斉に放たれた10の光条は原型機より更に大型化された翼と尻尾に防がれた。

 翼は装甲のスリットを伸ばしてシールド。尻尾は蛇腹剣のようなワイヤーブレードに変わりレーザーを全てはたき落としたのだ。

 

「これで親衛隊か? ブルー・ブラッド・ブルーもたかが知れるもんだ、なぁ!!」

 

 カスタムウィングが槍状に変化。ワイヤーブレードと合わせて三基の刺突がハイクリアのシールドエネルギーを貫く。

 初見殺しに動揺したハイクリアのパイロットが見たのは上段に構えられたヒートバスターソード。最大出力で吹かされたスラスターにより繰り出されるそれは正しくに龍爪の一撃に等しかった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 久しき再会であるナターシャ・ファイルス率いるアメリカ特務IS部隊イレイズド。

 鈴の師匠である元中国国家代表と現国家代表の中華人民共和国臨時編制IS部隊封神(ほうしん)

 ドイツの紅鯨隊(ロート・ヴァール)金鷲隊(ゴルト・アードラ)の海軍空軍ツートップ。

 そして英国近衛騎士団スカーレット・ナイツ。

 

 世界の名だたるスペシャルゲストの登場は敵味方問わず衝撃をもたらし、これ以上ないサプライズとなった。

 

 そしてその元凶たる立役者こと俺はこれ以上ないぐらいご満悦である。

 最高に気分が良くて上がった口角が元に戻らない。ISオタクとしても幸せすぎる。あとでまとめてサインを頂戴しなければ! 

 

「もしもーし。ご機嫌いかがですかなフランチェスカ・ルクナバルト女王陛下。なんだかお顔のシワが凄いことになっておりますけども大丈夫そ?」

 

 10人中10人はカチンと来るニヤケ顔を前にビデオ通信越しのフランチェスカは憎悪をあらわにする。

 あれ、なんか老けたね。

 

「何故、こんな……ありえない。こんな筈はっ……!」

「んー? 低脳な男が考えたおままごとのような策よりも下だっただけだろう?」

「なんで……これ以上増援は見込めないはず。それよりも何故私たちの作戦が!」

「わからない? わからないのか、そっかそっか! では愚かで矮小なわたくしめが世界の支配者様にご説明致しましょう! ……その前にネズミを片さなきゃね」

「なにを……」

「やれ一夏、箒」

「「了解!!」」

 

 俺の合図に一夏の零落白夜と箒の全開斬撃が1機のISを即座にシールド0にする。そう、味方であるはずの打鉄を。

 打鉄のパイロットは突然の奇襲に何が起きたか分からず海中に没した。

 

「これで良いんだよな疾風」

「ナイスよ2人とも! 躊躇わずにやってくれて助かるわ」

「お前の判断だ、信用するさ。しかし戦線のメンバーにスパイが居たとは。いや、わざとか?」

「正解だよ箒」

 

 そう。今回の作戦参加メンバーの生徒にブルー・ブラッド・ブルーのスパイが居たのだ。

 それも洗脳されてるのではなく、本心からフランチェスカに付き従う生徒だ。

 勿論作戦のブリーフィングにも参加しているし、内容は敵に筒抜けということになる。

 

 つまり、だ。

 

「謀ったわね、疾風・レーデルハイト!」

「そのとおりぃ! 自分がもっとも蔑んで大嫌いだった男の策略に引っかかった気分はどうだ女王様。ププッ、さっきのドヤ顔はキッチリ録画させてもらったぜ。ごーちそうさまでーす!!」

 

 溢れ出るサディスティックスマイルに血管ブチギレ寸前フランチェスカ。この男、絶好調である。

 

 認めたくない、認めたくないが。ブルー・ブラッド・ブルー全てが憎き疾風・レーデルハイトの手のひらで転がされていたということは揺るぎない事実だ。

 

 どうにかして俺のことを屈辱と絶望に染め上げたいフランチェスカはスパイの情報を元に親衛隊のハイクリア・ティアーズを挟撃部隊に当てようとした。

 挟撃部隊の背後を突く目論見は成功し、あとはビット兵器を含めた数の暴力で圧勝するはずだった。

 

 だがそれはブラフ。

 本命は敵挟撃部隊を潜んでいた各国援軍部隊で罠に嵌めることにあった。

 

 結果、敵挟撃部隊は目論見が外れた事により混乱。その混乱はビット操作にも現れ、度重なる状況の変化に対応できず次々と撃破される。

 本元の味方挟撃部隊は戦闘教員は敵奇襲部隊。生徒部隊は予定通り挟撃に回された。

 

「こちらミネルヴァ。校内にいたスパイは全て捕縛したとの報告が上がったわ」

「了解しました。というわけだ、お前のシンパはもう学園にはいないぜフランチェスカ」

 

 校内にいたスパイは12人。

 その全ては更識派閥の生徒や構成員がキッチリ確保してくれた。

 こいつらはこいつらで万が一の内部工作員として待機していたらしい。恐ろしいことである。

 

「どうしてバレたの!? 洗脳していないからBTフィルターに反応しない、バレるはずがないのに!」

「それはもう」

「この大天才束様が居るからさ! 通信なんて全部筒抜けだよーん!」

 

 情報戦に置いては神様レベルの世界一の天才篠ノ之束の御業だ。

 ISを含めたあらゆる通信網は全て篠ノ之束の物だ。プライバシーもへったくれもないが、篠ノ之博士に関しては今さらだろう。ちゃんと監視として織斑先生も居たし。

 

「女尊男卑の会なんてあからさまな連中が居たんだ。スパイが居ることは予想してるに決まってるだろ。BTマインドコントロールで洗脳された生徒を解放し、あえて本物のスパイを放置する。そして重要な戦力であるISパイロットにスパイが潜入したとなればそっちの警戒も解けると思った。マージでなんの疑いもせずに乗ってくれるとは正直思わなかったけどね。あとは簡単だ。本物に潜ませたブラフの作戦を掴ませ、敵の戦力を全て引きずり下ろしてすり潰せば作戦成功って訳だ」

 

 秘密裏に外部援軍が来ることを知ってるのは俺とセシリア、会長や織斑先生、篠ノ之博士と麻美さんぐらいだ。

 同じ軍人であるラウラにすら知らせていない。

 勿論先程スパイを叩き斬った一夏と箒にさえもだ。2人にしては迷いなくやってくれたが。最近一夏と箒から来る信頼度が振り切れてる気がする。

 

 敵を騙すならまず味方から。

 まさか生きてる中でこの言葉を使う日が来るとは思わなかったが。

 

「騙して悪いが作戦なんでな。いやーみんな悪いねぇ! サプライズしちゃって!」

「「「それ言いたかっただけだろお前!!」」」

 

 手を頭の後ろにやってタハハーと笑う俺に味方から総ツッコミがかかった。

 特に何も知らされていない挟撃部隊からしたらそれはもう冷や汗ダバダバ物だったのだから致し方なしってところだろう。

 

「ま、まだよ! まだ戦力はこちらが有利! 態勢を立て直せばまだ!」

「ふむ、確かにまだ戦力差があるのは事実ではある────じゃあもうちょっと増やそうか」

「は?」

 

 パンパンと軽く手を叩くと、それを合図に作戦領域の両端から次々とIS反応が出てきたではないか! 

 

「日本IS軍10機。アメリカから更に10機の計20機の倍プッシュでございまーす☆」

「な、ぁ、あぁ!?」

 

 これでIS学園側のISの総数は81機に援軍の総数が39機の合計120機。戦線離脱したISも順次補給の後復帰してくる

 さらにここに敵の洗脳解除のISを含めればまだ増えることだろう。

 

 これで敵のISを含めて。全世界467のうち半分がこのIS学園に集まっていることになる。

 歴史上ここまでISが一箇所に集まることはない。正に伝説の体現であった。

 

 これにて増援は打ち止め……だったらよかったよねぇ。

 

「クイーン! 上空からISが1機、高速で接近中!」

「今度はなに!? 識別は!」

「識別……イタリア? イタリア共和国です!」

「イタリアのIS、しかも1機………まさか!」

 

 1機のISが瞬時加速(イグニッション・ブースト)もかくやのスピードでIS学園後方から一気に戦場に突入。

 菖蒲の櫛名田と交戦中のアイビス目掛けて風、いや嵐を纏わせた蹴りを……

 

「チョイサァ!!」

「がぁっ!?」

 

 オートガードでかざされた液体金属ごと蹴り抜き、叩き落した。

 

「あ、え?」

「横槍、失礼するのサ。着地点の良い感じなとこに敵が居たからついやっちまったのサ」

「あ、貴女は!?」

 

 特徴的な円形のファンが組み込まれた4基のアンロックユニットとくさび形のカウルを携えたISの周りには常に風が対流している。

 スカーレット・ナイツの面々に負けない赤髪のツインテールと独眼竜政宗と同じ鍔型の眼帯。欠損している右腕はISの腕が直接接続された。妖艶で何処が退廃的な女性。

 

 その姿は誰もが知っている。この世に2人しかいない世界最強の片割れにして自らブリュンヒルデの称号を投げ捨てた女傑。

 

 開戦前に持っていたメガホン型マイクを片手に俺は絶頂もかくやのテンションで声を張り上げた。

 

「さあよってらっしゃい見てらっしゃい! 正真正銘のラストゲスト! イタリアIS国家代表にして2代目ブリュンヒルデ!! アリーシャ・ジョゼスターフとテンペスタが降臨だぁぁーーー!!!」

 

 戦場のど真ん中に降臨した最高最強の助っ人の参戦に敵味方はさらなる驚愕が殴りつけられた。

 

 これも勿論俺が仕組んだ……という訳ではなかったりする。

 

「ちょっと疾風くん!? アリーシャ・ジョゼスターフは流石に聞いてないわよ!? いつ連絡したの!?」

「そうですわよ! あなたいつの間に!?」

「いやー、ね。かくいう俺も聞いたのはサプライズ作戦が発動してからなんだよね」

「「はぁ!?」」

 

 これは本当。俺が仕掛けたのは各国有力戦力の増援と最後のIS20機までだ。

 なんでもイタリアには内密でIS学園近辺のビル屋上から高みの見物していたのだとか。そして見ているだけでは飽き足らず我慢出来なくて参加を表明したらしい。

 

 と織斑先生を通して俺に伝わったのだ。

 いや俺も聞いたときはマージでびっくりしたよ。マジでテンペスタの名に恥じない大物だよアリーシャ・ジョゼスターフ。

 ということで急遽アドリブをねじ込んで2代目ブリュンヒルデにはおおトリで出演させて貰ったのだ。

 これには精神ダメージも倍の倍プッシュだろう。流石に同情してしまうわ、敵に。

 

「ここまで待たされたんだ。好きに暴れちゃっていいんだよナ、アリアの息子」

「ええ、ご存分に!」

「よーし! じゃあ手始めにさっき蹴った奴をやらせて貰うのサ!!」

 

 疾きこと風の如く。焦らして待たされたエネルギーは丁度浮上したアイビスに向けられた。

 俺が相手しようと思ったんだけど。まあいいかな。

 派手に吹き上がった水柱を眺めながらとりあえず十字を切ってあげた。

 

「さて。これで戦力は五分五分、いやそれ以上になっちまったな? まさかワルキューレなんて粗悪な人形を頭数に入れるなんてことはないでしょ?」

「くぅっ!」

 

 勝てると思っていた戦争。

 これ以上ない戦力差も覆された。

 もはや安定した地盤はなく、気づけば崖っぷちに立たされていた事実にフランチェスカは本能的に身体を震わせた。

 

 その姿にニィっと笑みを深くし、溢れ上がる愉悦を糧に高らかに吠え上げた。

 

「オラ! 呆けるなよフランチェスカ・ルクナバルト! まだ戦いは始まったばかりだぜぇ!! 上げてけよお前らぁ!!」

 

 





 どうも、まだまだ根雪にはなってない北海道。作者のブレイブです。
 だまして悪いがフェスティバール!なお祭り回第二弾です。オーバードウェポン回は頭からっぽに書けましたが。やばかったですね今回は。

 怒涛の新キャラ新ISのオンパレード!設定のガワは出来ていましたが中身の煮詰め具合がやばい。
 特に中国国家代表の甲龍・哪吒!中国って8が縁起いい数字だから哪吒太子の武具8つ積めよう!ってなって出来た中国版ヴァリアンサー。武具の情報が少ないのとかどうやってISに落とし込めようとか。こいつだけで1週間使ったかもしれん。
 外見はオーバーラップ版の甲龍をイメージ。

 そしてドイツのIS版艦これと可変型IS。可変型ISはロマンの塊です。実用性はあるっちゃありますがうるせえロマンだ!の代物。
 前々から情報が出ていた赤髪騎士団。団長のドラグナイト・フレアはFGO水着メリュジーヌとバルファルクのRemixと思って頂けたら。
 更に超絶フライングのテンペスタ。出すか迷ってましたがブレーキ壊れましたね。お祭り回だものいいよね!!

 第一部最終章も佳境に入ってきました。頑張るぞー!
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