IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第152話【原初乃蒼(ジ・ブルー)

 

 

 目に見えるレベルで存在するBT粒子の光。

 光に紛れてこちらに殺意を向ける白色のBTビット。

 溢れる光は収束し、胞子状の光弾、またはレーザーとなって全方位から迫りくる。

 

 フランチェスカ・ルクナバルトが持つBT兵装の祖と言えるワンオフ・アビリティー【原初乃蒼(ジ・ブルー)

 その能力は単純明快。BT粒子を操ること。

 それを利用したBTマインドコントロールで世界を掌握しかけたその能力を。今度はBTレーザーの攻勢能力として使っている。

 

 光に飛び込むとはこのことだ。まるで振り注ぐ流星群を突っ切るかのようなレーザー密度。

 通常のISならまたたく間にシールドはゼロ。

 フランチェスカは遊びなしで俺を殺しに来た。

 

 引くことも進むことも出来ない数えるのも馬鹿らしい弾幕の光。

 ならばこそあえて、そうあえて! 

 

「《突っ込めぇ!!》」

 

 バーストモードのクラレントから陽電子ビームで前方密集体を撃ちはらい。プラズマ・フィールドと最大高密度のウォールで強引に第一次包囲網を突破。

 バヂヂヂとプラズマとぶつかって焼け跳ねるレーザーの振動を肌に感じながら続く第二次、第三次包囲網を直視する。

 

《マスター、攻勢反応が全方位から……沢山!》

「AIとは思えねえ大雑把さ!」

《正確な数がご所望なら少しお時間を頂ければ》

「いらん! ダイレクトサポート!」

《とっくに演算最大だ! ちなみにBTビットは100基だ!》

 

 変化前のイーグル・アイだったら完全にパンクする情報をイーグル・スフィアが解析、精査し反映する。

 逃げ場はなし、少しでも止まれば終わりだ。これは難易度ルナティック間違いなしだなぁ! エクストラボス誰だよ!! 

 BTビット100基って、ワンオフ・アビリティーとナノマシン込みでセシリアの4倍ってなんだよ! おまけにフレキシブルまである! 

 

「アハハハハハハハ!! 踊れ! 踊りなさい! 無様に踊って私を楽しませなさいよ道化ぇ!!」

「ではお望み通りに!」

 

 クラレント、レールガンモード。

 5発装填、シュート! 

 

「甘い!!」

「マージか!」

 

 放たれた超高速の実弾は夥しい光に飲まれて溶け落ちた。

 物量差がエグいですな! なら物量で止めれない奴で! 

 

《クラレント、モードチェンジ。プリドゥエン展開、プラズマ・ウォールセット。チャージ完了!》

「ファイア!!」

 

 プリドゥエンから出たプラズマ・ウォールにクラレントのチャージ射撃、プリドゥエンからもプラズマビーム放射。

 ウォールに集束された2本のプラズマと陽電子ビームが統合。混ざり合った高出力な極太陽電子ビームが、襲いかかる胞子ビットを蹴散らしながらフランチェスカのISに向かう。

 

「フッ」

 

 フランチェスカの眼前に白色の幕が張られ、陽電子ビームが全て弾かれた。

 

「イノセント・ガーデン。あなたの攻撃では私に傷一つつけられないわ」

《膨大なBT粒子を利用した強力なバリアだ! 質量に物を言わせてるぞ!》

イノセント(罪なき者)だぁ? どの口で言いやがる! っとぉ!!」

 

 途切れることのない光の応酬が1機のISに殺到する。エグい数のレーザーの中にエグい軌道で曲がるフレキシブルが雨あられ。

 くそマジルナティック! ボム何処だよボム!! 

 

「アハハハハハハハ!! いい踊りっぷりよ疾風・レーデルハイト! ヴァリアンサーと言ったかしら。勇敢なんて勇ましい言葉で飾り付けた程度で、私のクイーン・アヴァロンに敵うわけがないのよ!!」

 

【クイーン・アヴァロン】

 フランチェスカ・ルクナバルトのISであるそれは見た目だけなら荘厳で清廉な見た目をしている。

 騎士鎧と女王様を合わせたような曇り一つない銀色に青と白のトリコロール。

 アンロックユニットはティアーズ・コーポレーションとブルー・ブラッド・ブルーのエンブレムが刻まれた棺のようなアンロックユニットが4つ。

 右手には機体色と同じ塗装と装飾が施された大剣型ブラスター【カレトヴルッフ】が握られている。

 

「最悪だ……マジで本当に」

「後悔しても遅い! 私に歯向かった報いを……」

「最悪! ああ最悪だよ! ISはバチクソ格好いいのに中身がゲロカスのドブカスとかなんの罰ゲームだよ!? ISが泣いてるぞ!」

「はあ?」

 

 これが単純なバトルであればそれはもう誇らしいほど美しくイケてるISであるクイーン・アヴァロン。

 だが本当に中身が最悪だ! あそこだけモザイクかけてえぐらいだ! 

 

「くっそ! 見てるこっちが恥ずかしい! 高級フレンチに吐瀉物をぶち撒ける所業だ! お前なに生き恥晒してるわけ? 全裸の方がまだ潔いぞ! 恥ずかしくないのか生きてて!! 謝れ! インフィニット・ストラトスという存在と概念に謝れ!!」

 

 改めて目にして感じてしまう。

 なんでこんな女がインフィニット・ストラトスなんていう最高な代物に乗れてるんだ!? 

 

「身の毛もよだつとはこのことだな! しかも国家代表だぞ! こんな奴が母さんの後釜!? カーーー! イギリス政府の目は節穴だな! いやそいつらも買収してたのか? きったねえ! きったねえなホントに!!」

「貴様、私がISに相応しくないと」

「そう言ったんだが? 他にどう聞こえるんだよ」

「男である貴様がそれを言うのイレギュラー!!」

「言うともさ!! インフィニット・ストラトスは空の彼方を目指す為に作られたんだ! それを世界征服の道具に使ったお前たちはISに乗る資格なんかねえんだよ!!」

 

 インフィニット・ストラトスは宇宙用パワードスーツにするには強すぎた。白騎士事件がそれを証明し、軍事力や国家のパワーバランスに使われたのは事実だ。

 だが決してそれが全てではない、だからアラスカ条約という抑止力が生まれた。ISを兵器というだけの存在にしてはならないと、モンド・グロッソのようなスポーツ面に働きかける動きが生まれ、そしてIS学園というISを正しく使う為の教育機関が出来たんだ! 

 

「お前たち、自分が選ばれた存在だと思ってるんだろうが逆だぜ。お前たちは世界から弾かれたんだ! 世界の枠組みに納得できなくて暴力で喚き散らしただけだ! お前たちの理想なんて誰も望んでねえんだよ!」

「私たちはこの世界をより良くするために行動した! 大局も理解できない木っ端が賢しら顔で言うんじゃない!!」

「大局ぅ!? はっ! 路肩の石で躓くような未熟者が大局なんてでけえ言葉で見栄張ってんじゃねえぞ笑わせる!! コメディアンで食っていけるぞ叔母様ぁ!!」

「叔母様なんて言うんじゃない劣等種!!」

 

 ビットと胞子ビットの動きが更に過激になる。

 ほんとメンタルとか感情で動き変わるのマンマシーン・インターフェースの傑作版だなBT技術! 

 

《マスター、温存していたファクター・コードを使うときじゃないか?》

「………いやなんかこんな奴に使ってはいけないなって意地張っちゃって」

《エリクサー病やっちゃってるじゃないか! それでやられたら元も子もないぞ!》

「いやまだ行ける、まだ行けるうおっと!」

《被弾率上がってるって! エクストラクターももたないって!》

 

 イーグルの言う通り、もはや機動力で捌き切ることは叶わずフィールドやプリドゥエンのシールドで防御していってる。

 

 分かってるけどさぁ! 

 分かってるけどなんか、分かるだろ!? 

 俺も開幕コード使ってブインブイン行こうと思ったんだけどさ!! 

 

《あっちも反則使ってるんだから使ってもセーフだってセーフ! 目には目を、歯には歯をがマスターの座右の銘だろ!》

「……そうだな、そうだよな? 使えるものは使えだよな」

《そうだよ公式試合じゃないんだからさ……あ、ヤバいぞマスター》

「死ねぇぇ!!」

 

 粒子が収束し、膨大なBT粒子の塊を固定。数は10、その全てがゲロビとなって粒子レーザーの大群と共に放たれ海面の一部が爆発、蒸発した。

 

「あの時とは違うわ。遊びはなしよ。1秒でも早く確実に消し去ってやる!」

「遊び過ぎちゃって復活決められちゃったもんね。さもありなん」

「っ!!」

 

 着弾位置からかなり離れたところから砲撃。イノセント・ガーデンのバリアで防ぎ、即座にレーザーとビットで射撃するが先程とは比べ物にならない動きで回避され、ついに接近を許した。

 

 アロンダイトのバスターソードの斬り上げ、からの振り下ろす。だがBT粒子の塊であるガーデンを砕くには至らなかった。

 

 そしてフランチェスカは見る。

 すれ違う寸前に見た、仇敵の目に宿る空色の光を。

 

「ファクター・コード!」

「ああ、満を持して使ってやる。お前相手に使うのは些か癪だがな。お前なんかに!!」

「このっ! だがこの空間は私の領域! BT粒子が貴様の動きを教えてくれる。いくら反応速度を上げたって私とアヴァロンから逃げられやしないのよ!!」

「チッ。やたら勘がいいと思ったらそういう!」

 

 いまこの空間にBT粒子がないところはない。

 というよりBT粒子というものは微細ではあるが空間にあるものらしい。それがいま濃密にこのフィールドを満たしている。

 俺が移動する度にその場にあるBT粒子と衝突する。そしてフランチェスカはBT粒子を感じ取り、操ることに特化したワンオフ・アビリティーを持っている。

 つまりこの場は正にフランチェスカの掌の上。何処に移動しようと死角なし、奴は俺を感知し押し潰せば良いということだ。

 

 先程の不意打ちに完璧に対処し、PGCを使った非理論的高速機動で何度も死角に回り込んでも察知された挙句被弾を受ける一方だったのはその為だろう。

 だが……

 

「流石にファクター・コード込みなら避けれるなぁ!! おら! ご自慢のBTナノマシンはどうした! どうせこっちの劣化版だろ!」

「ガキが意気がるなぁ!!」

 

 意気がるとも。だってこっちが元気であればあるほどイライラするだろお前は。

 俺はお前の嫌がることをする為に戦争ふっかけたんだ。何処までも思い通りにはさせねえさ!! 

 

 今だ勢いが衰えない光の雨を時には武器で弾き、紙一重で避け、避けきれないフレキシブルをプラズマで防ぎ再び肉薄する。

 

《13発セット!》

「くらえやぁ!!」

 

 ガーデンの壁にロンゴミニアドを突き刺して発破。13発分のプラズマカートリッジから螺旋をかけた短時間多連続でぶち放たれるが、ガーデンの壁にヒビを入れただけだった。

 

「無駄よ無駄無駄! 何人足りともこのイノセント・ガーデンを破れはしな」

「あっ、小ジワ発見」

「〜〜ッッッ!! アアッ!!!」

 

 フランチェスカが初めて得物であるカレトヴルッフを振るい。大剣中央の砲身から高出力かつ高速レーザーがイーグル目掛けて放つ。

 まあ当たってはやらねえがな! 

 

「ストレスマッハでお肌のツヤがないねえ! アンチエイジング怠ってるのか!?」

「女性に対する配慮がないわね!!」

「うちの母さん凄いぞ! 普通に四十路なのにピッチピチだよ!」

「あんな万年新婚浮かれポンチと一緒にしないで!!」

 

 それを言われると流石に反論が出来ないしするきもない。

 毎日欠かさずハッスルしてるらしいからな。セシリアが夫婦が長続きするコツは夫婦の営みってドストレートに言ったらしい、うーん生々しい。

 今日もレーデルハイト家の防音対策は完璧ですハイ。ついでにIS学園も。

 

「よっ、ほっ、ほいっと!」

「避けるなぁ劣等種!!」

「当ててみな優勢種!!」

 

 避けれている。

 イーグル・スフィアがファクター・コードを通して俺に情報を渡してくれている。

 一体化レベルに操作出来るISとの親和性で紙一重での回避、これまでのデータを統合してフレキシブルの発動、歪曲タイミングの算出、通常出力でも普通のISの瞬時加速(イグニッション・ブースト)並の速さで移動できてるのもでかい。

 

 ……だがこれだけでこの攻撃を凌ぎきれてるのは実際妙である。

 全方位から来るレーザーとビットからの射撃の濃さは正に某弾幕ゲーのルナティック。しかもBT粒子の感知能力で幾ら速くても見失うことはない。

 

 この場は完全に奴が支配し、こっちは完全にアウェイだ。普通ならこんな不利対面はないってもの。

 

 なら何故俺はここまで渡り合えているのか。

 考えられることが一つある。フランチェスカが慢心していることだ。

 奴は本気も本気で俺を殺そうとし、一切の手加減がないと思っている。だが奴の根底にある女尊男卑がそれを邪魔している。

 女が男に敵うはずがない、男が女に太刀打ち出来るわけがない。そんな深層心理が無意識にフランチェスカにこびりついたその思考がBT粒子兵器の操作に影響している。

 

 勿論これはただの仮説。

 単純に奴のBT操作技術をファクター・コードとイーグルの性能プラスαで俺の操縦技術が上回っている可能性はあるが、結果として避けれるから問題なし! 

 いやー! ほんと我ながら捌けてますなぁ! イーグルとファクター・コード凄いなーほんと! 

 

「ちょこまかと! ちょこまかとぉ! そこを動くな!!」

 

 アヴァロンの棺状のアンロックユニット【セイクリッド・コフィン】が開き、先端からプリドゥエンの最大出力とは比較にならない強大なレーザーブレードが出現。

 更にカレトヴルッフからも同様の巨大レーザーブレードを展開、それを振り下ろし……待て、なんか剣にしては凄いしなってないか? 

 

「剣じゃなくて鞭かそれ!?」

「死ぃぃねぇぇぇええ!!」

 

 5本の巨大かつ極太のレーザーブレード改めレーザーウィップが空間を薙ぎ払う! 

 ここに来て女王様要素! SMプレイにも精通してるとは大したものですねえ! 当たれば消し炭待ったなしだけど! そして漏れなくBTレーザーの弾幕も倍プッシュだ!! 

 

 薙ぎ払われる光の鞭。巨大だからといって遅いわけでもない薙ぎ祓いをウォールで受け流しながら空を跳ね回る。

 厄介なことに光の鞭を隠れ蓑にレーザーが素通りしてこっちを狙ってくる! しかもフレキシブルは変わらず絶好調! ヤバい演算が嵩む! 

 

「クソ! 目移りしちまう!」

《任せろ! ISコアの演算舐めるなよ! 全部捌き切ってマスターに送ってやる!》

「あー! 頼れる愛機が居てよかったなぁ!!」

 

 イーグル・スフィアがギュンギュンと情報を回してファクター・コードを介して俺の脳に情報が統合されていく。

 帰ったら頭痛しないか心配だ。甘い物いっぱい用意しなきゃならんな。

 

 だが先ずはこのフラストレーションをぶつける! 

 

《ルート確立!》

「イグニッション!!」

 

 5本の鞭、数多のレーザーを突っ切り二段階瞬時加速。振りかかる小雨をプラズマ・フィールドで強引に突破。

 

 アロンダイトとロンゴミニアド、そしてプリドゥエンのソードを最大出力でガーデンに突き立て、周囲にプラズマスピアを形成しそれを突き立てる。

 

「バーストアップ!」

《プラズマ最大放射!》

 

 倍プッシュでイーグルの全身から全開でプラズマを放射。少しでもガーデンを形成するBT粒子を低減。全身の火器を総動員して突破を試みる。

 

「フフ、アハハハハハ! 無駄だって言ったわよねぇ!!」

「うおおっ!?」

 

 だがつばせっても無限とも言えるBT粒子の壁を突破することは叶わず。ガーデンの前にBT粒子が球状に収束、臨界に達した光球が爆発し強引にフランチェスカから剥がされた。

 

「諦めて死になさい! このBT粒子が満ちる空間で貴方の勝率はゼロ! これ以上生き恥を晒す必要はないでしょう! 少し考えれば分かることなのにこれだから低能な男は!!」

「おお。現在進行系で生き恥晒してる自称女王陛下様の言うことはやっぱり違うなぁ。ああ、録音してるかイーグル」

《勿論。奴の恥を後世に語り継がせてお笑い草にする準備は出来ているとも》

「うーん。やはり出来る相棒はいいね」

「ISまで飼い主に似て! これだからISに男が乗るなどと!!」

「前から思ってたけど男男男って馬鹿の一つ覚えみたいに。それしか返しの言葉ないんか? ボキャブラリー磨こうよ、同性としか喋らないから男性との喋り方分からなくなったんか?」

《成る程。男嫌いというのも大概だな。16歳のガキンチョ1人すら論破出来ないとは》

「《可哀想に》」

「ぐっ! この! この!!」

 

 おーおーピキッてますねえフランチェスカさん。

 最高に良い顔ですよ。テンション上がるなあ。

 

「大体女性至上主義って言ってるけど具体的なのなんも知らないんだよな。どうせ男を奴隷階級にするとかそんなもんなんだろうけど。てか出生率どうなるんだよ、精子バンクでも始めるのか? それとも女同士でも子供産ませるとかなんかサイエンスフィクションに頼るのか」

「だからなによ!」

「うわ、当たりかよ。どうせろくな検証もせずにヒャア! 我慢できねえ! 世界征服だ!! って感じで乗り出したんだろ。うわー、こんなんで男より優れた女性名乗ってるのかよ」

「これから死ぬ奴に教える筋合いなんかないのよ!! とっとと死になさい!!」

 

 なんだろうな。もう少しやりごたえのある煽りあいを期待してたのに拍子抜けなんですけど。

 戦闘力に反比例してるからバランスは取れてるのか? 大層な力とカリスマ持ってるけど、所詮はそこらへんの女尊男卑主義ミサンドリーと根っこは変わらないみたいだ。

 

 と、世界征服頂点者を気取るプライド故なのだろう。フランチェスカがようやく反撃に出た。

 

「フン! そういう貴方はセンスの欠片もないわよね! セシリアにあんなしみったれたアクセサリーを渡すなんて!!」

「あ、そうだよ! お前よくもセシリアのペンダントぶち壊しやがったな! 交際記念の大切なペンダントを! しかも目の前で踏み砕くなんて! この人でなし!!」

 

 初雑貨店っていうセシリアにとって珍しいジャンルのプレゼントだったのに! 

 無駄に尖ったヒールでグリグリ跡形もなく!! 

 

「黙りなさい! あんな安物を送るなんてセシリアに対する冒涜だわ! 物の価値も分からないなんてこれだから男は!」

「どうせ一億かけてもぶっ壊しただろうが! セシリアは喜んでたのにさ! お前ほんと姪っ子のことなんも考えてないんだな!」

「私以上にセシリアのことを大切に思ってる人なんてこの世に居ないわ! あの子に相応しい世界を作るのはこの私! セシリア・オルコットを私の後継者にする! それがあの子にとっての幸せなのよ!」

「毒親極まれりとはこのことだな! どうせ自分を際立たせるアクセサリーとしか思ってないんだろ!」

「勝手なことを言うなぁ!!」

 

 アヴァロンが初めて接近戦を敢行。

 BT光波スラスターの瞬時加速を発動。レーザーブレードを纏わせカレトヴルッフをアロンダイトで受け止め、ゼロ距離からクラレント、プリドゥエンを見舞うがガーデンで弾かれ。いつの間にか本体から分離していたコフィンが四方から巨大レーザー鞭が振り下ろす。

 

「セシリアを毒した貴様が言うのか! お前さえ、お前さえ居なければセシリアは変わることはなかったのに!!」

「変わる? 何言ってやがる。あいつは確かに弱い男が嫌いだ。ソーレンさんのように顔色を伺う男は嫌いだったさ。だがそれは期待の裏返しだ! 女尊男卑社会でも挫けぬ強い男を求め、それを尊重する。最初から女尊男卑だったお前とは全く正反対なんだよ!!」

「戯言を!」

「セシリアのことを一番に考えてるなら何故セシリアの意思を尊重しない! 大事なら洗脳なんて考えることすらない筈だろ!!」

 

 フランチェスカは本気でセシリアを愛しているだろう。それは本人が本気で思っている

 セシリア自身も、自分が愛されているということを疑わず。信頼を置いていた

 

「私はセシリアの為を思って!」

「それを押し付けって言うんだ! お前はセシリアを大事にしてるんじゃない。自分の理想であるセシリア・オルコットという存在を求めているんだ! 断言してやる! お前のそれは絶対に愛なんかじゃない! 醜悪で独善的な、愛玩的所有欲にすぎないんだよ!!」

 

 自由を洗脳で奪ってお人形にした奴が偉そうに能書き垂れてんじゃねえぞコラ! 

 

「私の愛を! 男である貴様が否定するな!!」

「するともさ!! 俺はセシリア・オルコットをこの世で一番愛してる! 愛する女を害されて黙ってられるほど俺は軟弱じゃない!!」

「黙れ黙れ黙れぇ! 認めない! 貴様がセシリアを愛するなど! 貴様とセシリアが添い遂げるなど認めない! セシリアは私の物よ!! 誰にも渡さない!! 貴様という存在を絶対に許さない!! 私の眼前から消えろ! 消えろぉぉぉぉ!!!」

 

 狂っている。何度も言うが狂っている。

 自身の狂気が本物の愛だと欠片も疑わない、自分こそが絶対的正義であり真理だと豪語する。

 こんな人間が現実に存在するとは。多様性にも程がある。

 女尊男卑社会のラスボスとして、これ程強烈なキャラ付けはないな! 

 

「セシリアをIS学園にさえ入学させなければずっと私の側に居てくれたのに! どうしてお前たち男が動かせた! 何故なの! インフィニット・ストラトスは女にしか動かせないのに! どうして! どうしてセシリアと同い年のお前らが!! お前がISを動かしていなければ!!」

「愛、じゃねえかな」

「青臭いガキが愛を語るなどと!!」

「これ以上たられば話しても仕方ねえぜ! 仮に俺がこの世に居なくても、一夏が居る時点でお前の目論見は外れるだろうな!!」

「お前を殺した後は織斑一夏だ! 残らず殺してやる! 殺してやる!!」

「お前なんかに俺たちの青春ライフを邪魔させるかよ! おととい来やがれクソババア!!」

 

 殺意と怒りを乗せたカレトヴルッフをアロンダイト、クラレントで弾き返す。

 やっぱりな。こいつ接近戦に関しては強くねえ! いつもはBTレーザーによる遠距離飽和攻撃主体故にクロスレンジは慣れてない。

 

《マスター!》

「っ! よっしゃ!」

 

 そろそろ終わらせるぞ女王様! 

 度肝抜いてやるぜ!! 

 

「行くぞフランチェスカ!!」

「こいつ私の名前をっ。けど何度来ても無駄よ! 私の鉄壁の守りは崩せやしない!」

「うおらああぁぁぁ!!」

 

 四方の鞭、数多の光。その全てを振り切ってフランチェスカのアヴァロンに肉薄。

 カレトヴルッフ、そして遠方から戻したコフィンからの極太レーザー。5本の光条の隙間に滑り込むように身体を潜らせる。

 

「ラウンズ射出! 連結!」

《ソード・オブ・ラウンズ、ユナイト!!》

 

 あまりの弾幕に出せなかったラウンズを初めて射出。

 ブレードが付いたタイプBの後ろにタイプAが直列で3機連結。4機の大型ビットとなったラウンズユナイトがイーグルに負けない速度で追従。

 迎撃に出たレーザーもラウンズ4機連結で活性化されたジェネレーターによるプラズマ・コーティングで弾く。

 

「突き破れぇ!!」

 

 ロンゴミニアドに螺旋状のプラズマエネルギーを循環。ラウンズ合わせた5機刺突による突撃。更に再び瞬時加速で荷重を上げ、ラウンズも回転して掘削力を強化。

 だがそれでもイノセント・ガーデンは壊れない。

 

「学習能力がないわね! 何度やったって無駄だって分かったでしょうに!」

「いーや、俺たちの勝ちだ」

「なに?」

「フン!!」

 

 空いた左手をガーデンのバリアに押し付ける。

 攻撃能力のないただの押し当て、こんなものを突き出す程度で割れるものじゃない。普通ならば! 

 

「イーグル!」

《BT障壁力場、解析完了! 中和開始!》

「これは!」

 

 5機の螺旋回転する槍と剣を起点にバリアに波紋が広がる。

 その波紋は押し当てた左手に集約。更にISのエネルギーを直接伝播させ、バリアを形成する無限のBT粒子の繋がりをわずかにブレさせる! 

 

「くぅぅぅぅぅーー! らぁ!!」

「なに!?」

 

 わずかに出来た綻びを起点についに左手がイノセント・ガーデンのバリアを突き抜け、フランチェスカの右手を掴んだ。

 

「っ! 離しなさい!!」

「うあっ!!」

 

 しかし掴んだ腕は直ぐに振りほどかれ、先程と同じ光爆弾でノックバック。

 再びフランチェスカとの距離が開かれた。

 

「くぅっ。よくも汚らしい手で私のクイーン・アヴァロンを! ……フフ。だけど今度こそ分かったでしょう! どれだけあがいても貴様は私の腕を掴むだけで精一杯だった。それが貴様とそのISの限界よ!」

「ああ。無限に等しい減衰しないBT粒子の障壁。チートバリアにも程がある。だがな、お前の世界征服を壊すには腕1本、いや……指先一つで充分だ」

「……さっきから何を…………え?」

 

 途端にフランチェスカの顔が困惑に染まる。

 戦場に変化はない。依然として膨大な量のBT粒子はフランチェスカの支配下にあり、クイーン・アヴァロンにも不調はない。

 

 だが、彼女は彼方にある存在とのリンクが断ち切られたことを感じた。

 

「そんな……システム・カリバーンとの接続が!」

「どうやら上手くいったみたいですね、博士!」

「あいよー! お疲れ疾風くーん!」

 

 戦場に似つかわしくないひょうきんな声色の正体はご存知、篠ノ之束だ。

 

「まさか、最初からカリバーンとの接続が狙いで!?」

「正解だ! もう選定の剣はお前の物じゃねえぞ、女王様」

「そんな、これはセシリアにも伝えてなかった筈なのに! どうしてカリバーンの存在を!!」

 

 疑問に思っていた。

 

 フランチェスカ・ルクナバルトが何故ここまで全世界に洗脳を施せたのかを。

 クイーン・アヴァロンの原初乃蒼(ジ・ブルー)のBT操作有効範囲はよくて都市一つ分程度。

 ロランの時は直接赴いたらしいが、他はその限りではなかったという。

 近場で待機していた? それも全国で? それにここまで効率的に全世界同時多発テロをスムーズに起こせたのかという疑問が出ていた。

 

 フランチェスカの言う通り、セシリアもそれは知らないと言っていた。

 だが篠ノ之博士は結論を出した。全世界に洗脳電波を発信する中継衛星があると。

 そこからは早かった。サブ中継として使われていたエクスカリバーに痕跡があり。システム・カリバーンという大規模通信衛星が宇宙にあったことを確かめた。

 

 カリバーン、選定の剣とはなんとも憎いネーミングをつけてくれた物だ。

 無論これもエクスカリバーと同じかそれ以上のBTステルスを搭載し、既にエクスカリバーとのリンクが切れている為。フランチェスカのクイーン・アヴァロンに直接取り付いてリンクを繋げるしかなかった。

 

「本当なら対峙した瞬間組み伏せてお前のIS越しにハッキングする手筈だったんだがな」

「もー遅いよ疾風くん。束さんを待たせるなんてギルティだよ」

「すいませーん。あまりに弾幕ゲー過ぎてバリア解析に回せる容量が少なくてー」

「暇すぎて死にそうだったよー。だけどこれで、終わりぃ!!」

 

 篠ノ之博士の指先一つで掌握されたカリバーンから全BTナノマシンの機能停止命令が発せられた。

 第二中継地点のエクスカリバーを通し、世界中に点在、潜伏しているBTナノマシンが次々と自己破壊されて行く。

 

「こちらミネルヴァ。戦域のBTマインドが次々に停止。VTシステムも停止していくわ」

「キャメロットからイレイズド、艦内の制圧は完了した。これより脱出するわ」

「こちらスカーレット・ナイツ! 重装型クリア・ティアーズ撃破! こいつらいきなり雑魚になったぞ!」

「世界中からも洗脳解除の報告が上がってるよ。マークしていた更識何某が保護なり逮捕なりしてるってさ」 

 

 よし! 上手く行った! 

 敵ISがパワーダウンしたのBTナノマシンのバフがなくなったからだ。ナノマシンのブーストがなければ、ほとんどはろくにBT兵器を操ることは出来ない。

 

 これで完全に世界はフランチェスカ・ルクナバルトの手から奪還された。

 宣言通り、全部取り返させて貰った! 

 

「あれ。フランなんとかのBTナノマシンは停止してないね。ワンオフ・アビリティーで自分のだけは守ったのかな。大丈夫疾風くん、援軍呼ぶ?」

「問題ありません。こんな奴俺一人で十分です」

「それもそっか。じゃ頑張ってね〜」

「はーい」

 

 最終決戦にしては緩すぎる通信を切りフランチェスカに目を向けると、茫然自失を絵に描いたような顔をしている。

 

「そんな、嘘よ……悪夢よこんな」

「現実だよ。お前の理想は受け入れられない。洗脳なんかでしか変えられない世界なんて机上の空論なんだよ。終わりだよフランチェスカ・ルクナバルト。お前の世界は、もう実現しない」

「よくも……よくもぉ!!」

 

 未だフランチェスカの戦意は挫けない。

 既にボロボロで崩れかける精神的支柱をプライドど女尊男卑思考だけで支えている。

 回りの光の粒子も奴の心情を映しているのか心なしか揺れている。

 

「最後に一つ教えてやる。洗脳されたセシリアだけどよ。あいつ、洗脳中のこと全部覚えてるぞ。それどころか、意識はそのままだったんだよ」

「………………は?」

 

 やはりそれに関しては感知していなかったらしく。魂の抜けたような顔で声を漏らす。

 

「ずっと自分の中で、自分じゃない自分を見ていたんだ。俺に解離剤(リムーバー)をぶち込んだ時も。俺を刺し殺した時も。あいつは自分の中で泣いていた。お前に許しを請いていた」

「嘘よ……」

「嘘じゃねえ! あいつはずっと苦しんでいた! 今でもトラウマになって夜も眠れない時があるんだよ! これが真実だ! お前がセシリアの為にやろうとしたことは、全部が全部苦しみしか産んでないんだよ!!」

 

 あの時のセシリアの叫びは今も耳に残っている。

 自分はどうなってもいいから疾風を助けてくれと。あんな恐怖に塗れたセシリアを俺は見たことがなかった。

 

 だからこそ虫唾が走った。

 こんな奴がセシリアを愛しているなんて妄言を吐いていることを。

 

「…………」

「降伏しろフランチェスカ・ルクナバルト。お前の野望は終わりだ。これ以上生き恥を晒すな」

「…………認めない」

「……」

「認めない、信じない、嘘よ、偽りよ、戯言よ!! 貴様の言う事など誰が信じるか!! 私の愛は絶対よ!! デタラメを言うな疾風・レーデルハイトぉ!!」

「まったく! ほんとコイツは」

 

 絶対降伏しないと分かってたけど。

 どこまで救いようのない奴! 

 

「殺す! 殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すぅ!! もう世界征服なんてどうでもいい!! お前だけは殺す! 細胞の一片まで残してなるものかぁ!!!」

《マスター! BT粒子が!》

「これは!!」

 

 空間内が光を放ち始めた。

 空間に散布された膨大なBT粒子が一気に臨界点まで励起。

 

 視界が光に包まれる。

 

《マスター!!》

「っ!」

「死ぃぃぃいねえええええーーっ!!!!」

 

 瞬間。空間すべてが爆発した。

 

 




 まだ北海道は涼しい。どうも作者のブレイブです。

 爆発オチなんてサイテー!!
 いやー我ながら見事な爆発オチですね。

 ラスボス戦スタート!と思ったらルナティック弾幕ゲー+ラスボス無敵バリアのチート仕様の巻。
 だが舌戦は疾風が優勢のよう。なんか書いてみたらレスバ力全然でしたねこの女王様。

 次回決着でございます!お楽しみに。
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