IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

156 / 157

 時々ミーティア聴きながら書きました。


第153話【蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)

 

 

「撤退だ! 今すぐこの場から離脱するんだ!」

「何処に逃げろって言うのよ!?」

「良いから逃げるんだ! 早っぐあぁっ!」

 

 IS学園近海。戦場は先程までとは別の意味で困惑していた。

 ナノマシンの消失により突然思う通りに動かせなくなったIS。

 ナノマシン長期使用の反動による頭痛。強制解除されたVTシステムのキックバック。

 様々な要因で動かなくなったBTビット。曲がることのないフレキシブル。

 ただの案山子となった人型BT兵器ワルキューレ。

 そして洗脳解除された味方であった筈の敵機。

 

「掃討しろ! 1機たりとも逃がすな!」

「よくも洗脳してくれたわね! 絶対に許さない!」

「女尊男卑なんて時代遅れなのよ!」

「待て! 話し合おう! 私は女性の為に」

「「黙れっ!!」」

 

 そこからは一方的な戦いだった。

 ブルー・ブラッド・ブルーの純粋な構成員だったIS乗りは逃げようとしたところを背後から撃たれ、体勢を崩したところを集中砲火。

 

 もはや雑兵となり、士気もISのコンディションも最悪。完全に戦意を壊されたISは数の暴力で1機、また1機と行動不能に陥っていく。

 

「があっ! ぐっ、ナノマシンの力が。何してんだよあの年増ババア!!」

 

 ナノマシンのオーバードーズに身体をやられながらアリアと斬り結んでいたメアリ・メイブリックも例外ではなかった。

 口と鼻、目から血を流し、クリア・ティアーズ改の白いボティに鮮血を落としていた。

 

「疾風がやってくれたのね」

「ぐぅっ! あいつが、何をやったってぇ!?」

 

 怨敵の名を聞き戦意を絞り出すもろくに動かない身体で振るわれた剣は容易くアリアの双剣に弾かれ海に落ち、ライフルも衝撃で取り落とす。

 

「終わりよ。メアリ・メイブリック!!」

「クソがぁ!!」

 

 まともな武器もなく、ありったけの力で握られた拳が向かうは連剣の極地、ダンスマカブル・ブレイドアーツ。

 12の剣による連撃に触れれば最後、シールドは削り殺されあとは敗北の二文字が結果として残る。

 

「でえい!!」

 

 それを止めたのは倍の数で立ち向かうアイビスのアイアン・メイデンの銀剣であった。

 

「引くぞメアリ! ここはもう持たん!」

「逃がすと思ってるの!」

「当たり前だ! またあの嵐が戻ってくる前にトンズラさせてもらう!」

 

 アイビスは24の銀剣をそのまま自立ユニットとして切り離しアリアに投げつけた。

 

「メアリ! スラスターぐらい起動しろ! 出来るだろ!」

「おえっ……うるせ……え」

 

 アイアン・メイデンのアーマーを含める残存液体金属を全てスラスターに変形。

 メアリを抱えたアイビスは遮二無二に戦場を離脱。高機動パッケージもかくやの速さで銀色のISは彼方に遠ざかっていく。

 

「この、逃げるなぁー!!」

 

 逃げるメアリを追おうとするがアイビスが残した置き土産が剣に絡まり機体にまで触手を這わせようとして身動きが取れなくなっている。

 液体金属のクリーチャーがアリアに刃を突き立てようとしたところに光が貫いた。

 

「アリアさん!」

「セシリアちゃん!」

 

 複数のレーザーが液体金属を撃ち抜き、ついに形状崩壊。拘束から抜けたアリアは恨めしげに2人が飛んだ方向を睨む。

 

「大丈夫ですか!」

「ありがとう。だけど……メアリ・メイブリックを逃がしてしまったわ」

 

 レーデルハイト工業にとって一番自由にしてはいけない女が手元に居ない。

 最後の最後で決めきれなかった自分の力不足に涙さえ浮かんでくる。

 

「ナノマシンの二重投与。強制的に停止した時の反動……もはやまともに身体は動かせる状態には見えませんでしたわ」

「それでも、人の執念というのは恐ろしい力を生む」

「叔母様のように、ですわね」

 

 無言で頷くアリアを前にセシリアは彼方で叔母と戦っている疾風の方を向く。

 

 その時、敵戦艦キャメロットが居るであろう戦域に巨大な光の爆発が発生。

 目視でも確認できるその光はまるで地上に生まれた太陽。セシリアはそれがフランチェスカの技、BT粒子を圧縮して生成する粒子爆弾だと理解する。

 

 そしてそこに疾風が居たということも。

 

「あれは……麻美ちゃん! 疾風は!?」

「強力なエネルギー放射でハイパーセンサーが拾えない。周辺エリアの反応もロスト」

「そんな……」

「大丈夫ですわ、アリアさん」

「セシリアちゃん?」

 

 見えた訳でも、感じた訳でも、ISのセンサーで拾えたわけでもない。

 だがセシリアの瞳は揺るがず、彼方の想い人の存在を見る。

 

「疾風は負けません。絶対に私たちの元に帰ってきますわ。だって、疾風がそう言ったのですから」

「……そうね。恋人が信じてるんだから、親もちゃんと信じてあげないとね?」

「ええ。私たちの子は、強いもの」

 

 誰一人として疑わない。

 

 この場に居る誰よりも、インフィニット・ストラトスを愛する疾風・レーデルハイトの勝利を。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「はあ……はあ……はあ…………」

 

 荒い息で戦場に1人、未だ傷一つない愛機クイーン・アヴァロンの中でフランチェスカは息を荒げる。

 

 エリア一帯のBT粒子を励起状態にして発動する、広域殲滅粒子爆弾。

 使えばBT粒子を大量に消費するこの場限定の荒業にして最終手段。だがリスクに見合った結果は出た。

 未だ空域に残るBT粒子のセンサーに、疾風・レーデルハイトの存在は知覚できない。

 

 影も形もない。残骸すらない。

 彼女は疾風の消滅を確信した。

 

「フフフ、フフフ、アハハハ、アーハッハッハッハッハ!! アーハッハッハッハッハッ!!! ついに殺した! あの男をこの世から消した! 塵一つ残らず! 私は! 私は勝ったのよーー!!! アハハハハハハハハハ!!!」

 

 フランチェスカは有頂天。

 世界から疾風・レーデルハイトの存在が消えたことに望外の喜びを露わにし、狂ったように笑い声を上げる。

 

 笑い声がやみ、見たくもない現実を再確認する。

 戦争には敗北した。それは紛れもない結果だ。

 

 だからこそこの場から離れなければならない。逃げ惑う部下とはセンサー異常で通信もままならない。幸いこちらの指示はなくとも逃げている。断腸の想いでフランチェスカは逃走を決める。

 近くにアメリカとイギリスのIS部隊は居るがBTステルスを使えば逃げ切れる。

 

 全ては素晴らしき女性至上世界の為。

 自分は生きている。生きているならやり直せる。

 時間はかかるだろう、だがそれでも自分とアヴァロンが居るならやり直せる。

 

「待っていなさいセシリア。必ず貴女に相応しい世界を……ん?」

 

 視界に何かが映った。

 BT粒子の光ではない。何かが空から降りていた。

 自然と手に取ると、それは羽根だった。

 

 クリアブルーの羽根、パチパチと電流が流れるそれはまるで宝石のように透き通っていた。

 気がつけば1枚だけではなかった。

 数は決して多くはないが、プラズマで作られたクリアブルーの羽が戦場に降っていた。

 

「……っ! ……まさかっ」

 

 悪寒が走った。

 手に乗っていた羽根を捨て去り、急いで周りを見回す。

 

「まさか!!」

 

 空を見上げた。

 快晴の空、爆発の煙が晴れたその先に……

 

 こちらを見下ろす天使が居た。

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 爆煙の切れ間から差し込む陽の光が天使の梯子となって振り注ぐ中心に、スカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーと疾風・レーデルハイトの姿があった。

 

 否、そこに居たのは先程までのイーグルでない。

 

《ワンオフ・アビリティー、蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)。システム・オールグリーン。気分はどうだいマスター》

「極上だ!」

 

蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)

 疾風とイーグルがセカンド・シフトし、発現したワンオフ・アビリティー。

 

 イーグルの体躯を染める空色(スカイブルー)の光は、純度の高いプラズマコーティングによるもの。

 

 一際変化が大きいのは背中から生えた4枚の翼。

 

 8枚のカスタムウィングが2基1組に合わさり、そこからISを覆える程の大きさを誇る純度の高いプラズマの翼、ストラトス・フェザーが出現。

 機械でありながら大鷲のように広がる美しい二対4枚のクリアブルーの翼を広げるその姿は正に神話の天使のようだった。

 

 力が溢れかえって止まらない。

 初めてISを動かした日。セカンド・シフトに移行した時とは比べ物にならないパワー。

 

 限界まで活性化されたプラズマ・エクストラクターによる大幅なスペックアップ。暴れ回るプラズマとエネルギーがイーグルの中を走り、一つ間違えれば破裂するのではないかというエネルギー総量。

 首の後ろから棚引く放熱マフラーは絶えず余剰熱量を放出し淡く光っている

 

「奥の手が利かなくて残念だったなあ、フランチェスカ・ルクナバルト。勝ちを確信して高笑いする姿は滑稽だったぞ」

「そ、そんな。一体どんな手品を!!」

 

 俺の声にフランチェスカはようやく我を取り戻した。

 あの爆発から逃れられる訳がない。たとえスカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーが幾ら速くても、二段階瞬時加速を使ったとしても逃れられる範囲ではなかった。

 

 いや、そんなことよりも……

 

(そんな馬鹿な、ありえない………私が、この私が! 奴のISに見惚れてしまったなんて!!)

 

 この世で一番嫌悪していた男が駆るISも例外なく嫌悪していたフランチェスカ。

 だがそんな彼女があろうことか仇敵のISを見上げ、美しいと感じてしまった。

 それほどまでに、4枚の蒼翼を広げるスカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーのビジュアルが破格だったことに他ならない。

 

《おいマスター。奴さん、どうやら俺たちに見惚れたらしいぞ》

「そいつは傑作だ。あの女尊男卑の権化であるフランチェスカ・ルクナバルト女王陛下にお褒め頂けるとか光栄の極みだ」

「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるな!! 貴様らが美しくなどあるものか!! 降りてこい疾風・レーデルハイト!! 私を……私を見下ろすなぁぁぁぁ!!」

 

 目の前の美しさを取り払う膨大な憎しみ、そして自分より上に居るという生理的嫌悪を全開にフランチェスカとクイーン・アヴァロンは再び戦闘態勢に。

 漂っていた100のビット、空間に未だ滞留しているBT粒子を掻き集め。更に遠隔操作で既にもぬけの殻となった戦艦キャメロットの残存兵装を起動。

 愚かな男を空から引きずり降ろさんと、そのドロドロに煮詰まった憎悪と怒りを向けた。

 

「まだこれだけの力を残してたのか」

《問題ない。今のマスターなら楽勝だろ?》

「ああ。行くぞイーグル! 弐の槍を抜く!!」

《了解! イグナイトシーケンス! セカンドディスチャージ!》

 

 蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)を起動したスカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーの最奥に秘められた力を解放する。

 

 ロンゴミニアドとアロンダイトをコール。

 アロンダイトの穂先が大きく開き、中心にロンゴミニアドを装填。一つの巨大な槍が出来上がる。

 

《ロンゴミニアドとアロンダイトのコネクト確認。マルミアドワーズ、起動!》

 

 マルミアドワーズ。

 鍛冶神ヘパイストスが鍛え、大英雄ヘラクレスが使ったとされる剣。

 一節によればアーサー王も使用し、力だけならば聖剣エクスカリバーをも凌いだとされる。

 

 その名を襲名した二つの槍を合わせた大槍。

 強大なる力を制御するために作り出された奥の手であるマルミアドワーズをしかと握りしめる。

 

《ラウンズ、サークルフォーメーション。回転開始》

 

 機体周囲に待機する12本の騎士剣。

 切っ先を奴に向けたまま徐々に回転し、加速。

 同時に機体のプラズマ・コーティングが一際輝き、ストラトス・フェザーが膨れ上がる力に合わせて大きくなる。

 回転したラウンズの周囲に眩いプラズマが迸り、やがて鋭い音が連続で放出される。

 

「そんなコケ威しがぁ!!」

 

 下方から俺たちを叩き落とさんと無数のBTレーザー。胞子型BTビット。そしてキャメロットからの砲撃とミサイルが大挙する。

 先程と比べれば拙いがそれでも濃密な弾幕。しかしそれを前にしても俺たちは微動だにしない。

 

《プラズマ出力臨界点。敵味方識別完了。マルミアドワーズ、最終安全装置解除!》

 

 マルミアドワーズの各部スリット展開。

 マルミアドワーズに向けてイーグルのエクストラクターから流れ出るプラズマを固定、放出。

 イーグル周囲、ラウンズが回転に合わせて放出されたプラズマが空間を焼いていく。

 

 イグナイトシーケンス。

 この絶技を放つのに一番大切なことはイメージ。

 ISのマンマシーン・インターフェースによるイメージによる第三世代能力のプラズマ制御構成。

 

 俺とイーグルが考案した到達点、その二番目。

 

 それは迫りくる害意を全て撃ち落とす。万雷の槍!! 

 

《堕ちよ天雷! 矮小十把を焼き尽くさん!!》

「ディザスター・ボルテック!!」

 

 マルミアドワーズを突き出し、臨界に到達したプラズマの本流が無数の稲妻となって眼下に振り注いだ。

 襲いかかるレーザーと衝突し霧散。ミサイルは触れた瞬間爆発し、内部中枢機器を焼き切られたBTビットは海に落下。フランチェスカの悪あがきを一蹴した稲妻の雨が奴と戦艦キャメロットに振り注ぐ。

 

「な、なによこれぇ!!?」

 

 一瞬で全ての攻撃を消されたことに動揺しつつ目の前に迫る雷撃をイノセント・ガーデンで受け止める。しかし膨大なエネルギーの余波を防ぎきれずバリア越しにアヴァロンのシールドを削っていく。

 

 ディザスター・ボルテック。

 放出し集めたプラズマを大量の稲妻として対象に放出する、広範囲プラズマ爆撃。

 放たれたプラズマはある程度の指向性を持ち。一つの目標に集中的に降らすことや、多数の目標を同時に攻撃、又は逐次切り替えも可能。

 蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)発動時でなければ発動できない。1人と1機の到達点。

 

「ううぅぅぅぅーーー!! ああっ!!」

 

 余りにも膨大なエネルギー量の前にフランチェスカは弾き飛ばされ。集中落雷をもろに食らったキャメロットは火器管制に異常を来たし、沈黙。

 空間に残った余剰BT粒子のほとんどがディザスター・ボルテックに焼かれて焼失した。

 これほどの広範囲雷撃にも関わらず、アメリカとイギリスのIS部隊には掠りもしなかった。

 

《イグナイトシーケンス終了。エネルギー再チャージまで、ストラトス・フェザー消失》

 

 大火力放出後のエネルギー解放により大きく広げた4枚の蒼翼が弾けるように消失する。

 

「残ったBT粒子が、そんな! 貴様、いま何をした!!」

「え、必殺技」

「ふざけているのかあぁー!!」

 

 いちいち五月蝿い奴。

 反則級を反則級でひっくり返されて躍起になったフランチェスカがカレトヴルッフを構えて瞬時加速で上昇。セイクリッド・コフィンからもホーミングレーザーやレーザーカノンを放ちながら接近。

 

 マルミアドワーズ合体解除。

 細かいレーザーを機体のプラズマコーティングで弾きながら接敵。クラレントとプリドゥエンで高機動戦を展開する。

 

「はっ! 確かに出力は通常時より上がってるようだけど追えないほどじゃないわ! それに私のBTセンスが貴様の動きを捉える!!」

 

 ここまで来ても戦意が折れないフランチェスカが剣とコフィンで捌いていく。

 唯一生き残ったBTナノマシンも限界以上にぶん回して戦闘を継続。背後からの攻撃もコフィンを盾にして受け流すその動きは未だ衰えていない。

 

 先程のディザスターでエネルギーを削られたもののクイーン・アヴァロンはまだ戦える。そしてエネルギーも外部供給源のみで戦っていた為機体自体は万全。

 インチキ地味た無限シールドや飽和攻撃がなくとも本体のポテンシャルは健在。フランチェスカは未だ自分の勝利を欠片も疑っていない。

 

「優秀な姉の猿真似ワンオフ・アビリティー! 片や一発大道芸な技だけが取り柄のワンオフ・アビリティーなど! この私の原初乃蒼(ジ・ブルー)には遠く及ばない!! ワンオフ・アビリティーすらガラクタだなんて、所詮男などその程度よぉ!!」

 

 しれっと一夏を馬鹿にしたフランチェスカ。

 刃が当たる瞬間にレーザーブレードを展開して斬撃のタイミングをずらしノックバック。体勢が崩れた瞬間コフィンをぶつけ更に体勢を崩す。

 

「終わりよ!!」

 

 上段唐竹割り。

 その無防備な腹目掛けて渾身の一撃を振り下ろす。

 

《リチャージ完了。ストラトス・フェザー再展開!》

 

 振り下ろされた剣が空を切る。

 その場に残されたのはクリアブルーの羽根の残滓のみ。

 一瞬また翼が生えた瞬間、奴らは消えた。

 

「なに? 何処よ!? ……!!」

 

 背後に通った反応。振り向きざま撃つも残像にすらかすらない。

 

「当たらない! なんなのこの動き!? ぐっ!」

「ガラクタがなんだって!?」

「私の背後を!?」

 

 ハイパーセンサーに目をやると、反応が地続きではなく点々と移動している。しかも時々IS反応そのものが増えている。

 だが瞬間移動ではない。純粋にハイパーセンサーやBTセンスでは追えないほどの超高速機動で動いているだけに過ぎない。

 

 蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)の能力。

 その能力は単純明快。過剰とも言える機体出力強化。

 プラズマ・エクストラクターを拡張し、空間の電子を含めたあらゆる運動エネルギー、化学エネルギーを吸収、プラズマに変換しスカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーの力に変換する。

 

 これによりイーグルは一定時間武器エネルギーを気にせず、膨大なエネルギーとプラズマを行使出来る。

 

 勿論強い力には欠点は存在する。

 ワンオフ・アビリティーの持続時間にも限界があり、時間を過ぎればエクストラクターは一次的に効力を失い。オーバーヒートを起こしたイーグルはファースト・シフトと同等レベルにまで出力低下を引き起こす。

 

 だがそのデメリットを持ってしても余りある力がワンオフ・アビリティー、蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)

 上述の通り全出力強化。第三世代能力強化。

 IS全体に常時纏うプラズマ・コーティング

 イグナイトシーケンスによる絶技の発動。

 

 そして極めつけがストラトス・フェザー発動時の超越加速。

 フェザー自体がスラスターとして機能するそれはかつてのシルバリオ・ゴスペル暴走形態の光翼に酷似しているがまったくの別物。

 物理法則を無視した瞬発力とスピードを発揮し、余りの速さにプラズマ・コーティングの表面が剥離して残像を生み出す。

 

 結果、肉眼は愚かハイパーセンサーでさえ瞬間移動と誤認してしまうオーバースピードを発揮。剥離したプラズマ残像もIS由来のエネルギーである為反応が増えたようにも見える天然のジャミングとなる。

 システムPGCのG加速無効化機能はこのワンオフ・アビリティーを十全に動かす為にイーグルが生み出したもの。もしPGCがなければISの保護機能を持ったとしても開始1秒で肉体は負荷に耐えられず潰れてしまう。 

 

 フランチェスカの奥の手であるビッグバンを回避し遥か上空に一瞬で移動出来たのもこのワンオフ・アビリティーにおかげである。

 

 何度も、何度も何度も斬りつけられ、打ち貫かれ。イノセント・ガーデンだけでは防ぎきれず着実にシールドが減らされる。

 何処から来るか、何処から攻撃が来るのか。それすら分からずクイーン・アヴァロンは防戦を強いられた。

 

 速さ。それを突き詰めればここまで強大な戦闘力になるとは、我ながらとんでもない力だ。

 

「私が手玉に取られている!?」

「やろうと思えば一瞬でカタをつけることだって出来たんだ。カリバーンの位置特定さえなければな」

「そんな訳あるかぁ!!」

 

 先程まで有頂天で手玉に取っていた筈が情けを掛けられていた。

 我ながら大見得を切っている自覚はある。だがあまりにもサラッと言うものだからフランチェスカの頭にあり得たかもしれないという疑念が生まれてしまった。

 ショックもデカかったのか動きが更に鈍くなっているが。この疾風・レーデルハイト、容赦せん! 

 

「そらぁ! こんなことも出来るんだぜ!!」

《ラウンズ! プラズマシャドウ、マテリアライズ!!》

 

 12基のラウンズを核としてプラズマによる分身。元からパワーアップした第三世代能力を更に強化されたから出来る芸当だ。

 クラレントに象られたプラズマが本家顔負けの電磁ビームを食らわせる! 

 

「こ、こんな出鱈目を! うあーー!!」

 

 多方向から撃たれる砲撃に負けじとフレキシブルレーザーを撃つが分身自体高速で動き回るラウンズ。そしてそれを操っているのがコア人格のイーグルなのだからこれまた癖のある動きで回避。

 本体も変わらぬ埒外加速のまま普通では考えられない連射力で電磁ビームを撃つもんだから洒落にならない。

 またも防戦一方。フランチェスカに残されたのはイノセント・ガーデンの強度を上げるだけだった。

 

「いや、この私が、こんなぁ!!」

 

 もはや声の覇気が薄れ、怯えが見え隠れしてきたフランチェスカ。

 だがそんなのに同情する俺ではない。

 

 分身による射撃が続く中、フランチェスカの正面から突進。

 過剰なまでに注ぎ込んだプラズマを右手で掴み取るように握りしめ、分身が消えるタイミングでガーデンに拳を叩き付けた。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!」

「なっ!?」

 

 バギャン! ついにイノセント・ガーデンのバリアが跡形もなく割れる。

 その勢いを殺さぬまま。そのまま瞬時加速!! 

 

「オラァ!!」

「ぐはっ!」

 

 渾身の右ストレートがフランチェスカのムカつく顔面をぶち抜いた。

 シールド越しだから対したダメージではないが、衝撃が奴の頬を揺らし派手に吹き飛ばした。

 

 何があろうと女性の顔を殴るのは男としては大罪だが。敢えて言わせてもらおう。

 やっと殴れたぜヨッシャァーー!! 

 

「ぐっ、あっ。お前、私の顔を。よくも女の命を!!」

「知るかよドアホ! てめえの顔に価値なんかあるかよ! セシリアの顔見て出直しやがれ!!」

「この、この野蛮人がーー!!」

 

 フランチェスカ怒髪天。上限突破の怒りに呼応して瞳の青が光輝く。それはもう発光してるぐらい。

 

「あんだけ光量あると海外のホラーみたいだな」

《言ってやるなマスター。彼女も必死なんだ》

「うわあああぁぁぁぁぁーーーー!!」

 

 両手を突き出すフランチェスカの前に光が渦を巻いて集まっていく。

 クイーン・アヴァロンのエネルギー、そして空間に対流しているBT粒子の全てを注ぎ込む。

 

《正真正銘最後の一撃だな。キャメロットのレーザーキャノンと同等。つまりエクスカリバー級の砲撃が来るぞ!》

 

 よくもまあそこまで練りだしたもんだ! 

 全て俺を殺すという執念の賜物だろう。生まれてこの方ここまで人に恨まれたことはないが。顔面ぶん殴ったのがそうとう効いているようだ。

 

《発射方向はIS学園だ》

「避けてもIS学園に向かうから避けられないだろうって算段か? 最後までみみっちいな」

《IS学園周辺の戦闘は終了している。どうするマスター。避けても構わないぞ?》

「無論、真正面だ!!」

《だな! それでこそマスターだ! イグナイトシーケンス! ファーストディスチャージ!!》

 

 再びロンゴミニアドとアロンダイトをマルミアドワーズに合体。

 ディザスター・ボルテック(弐の槍)とは異なる壱の槍を抜き放つ。

 

《ラウンズ。前方に3連展開。電磁バレルレール、回転開始》

 

 機体周囲ではなく前方に4基一組のリングが3つ連なって回転する。

 ディザスターのような広範囲とは違い、これは一点突破に特化した絶技。

 ラウンズのリングはパワーゲート。イーグルを撃ち放つ、巨大なレールガン。

 スラスターから何度も放出されるエネルギーをストラトス・フェザー内に溜め込む。

 

 クイーン・アヴァロンのBT粒子が臨界に到達。

 スカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーのプラズマが臨界に到達。

 

 泣いても笑ってもこれが最後の攻防! 

 今、互いの引き金に指がかかる。

 

「全てを壊してやる! お前という全てをぉぉぉぉーーー!!」

 

 白色の極光が放たれた。

 憎しみと怒り、女尊男卑という差別意識の塊が光となって襲いかかる。

 IS1機をなんなく飲み込む暴力の光。それを眼前に捕らえ、勇気を持って突貫する。

 

《駆けよ戦槍! 全てを貫く翼となれ!!》

「ペネトレイタァァァァ! インパルスッ!!!」

 

 フェザーに取り込んだエネルギーを解放した多重瞬時加速(マルチプル・イグニッション・ブースト)! 

 蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)の最大戦速が3連パワーゲートを通過、射出!! 

 解き放たれたイーグルが纏った純度の高いプラズマが変質。イーグルを核として、巨大なクリアブルーの大鷲となった。

 

「「ッ!!」」

 

 大鷲と極光が正面衝突。

 互いの力が拮抗し、溢れたレーザーとプラズマが空間に迸り、海を蒸発させる。

 

「死ぬ! 死ね! 死になさいよぉぉぉ!!」

「くっ、ぐぅぅぅ……」

《マスター!!》

「ぐっ、ハアァァァァァァーー!!」

 

 拮抗した力がバランスを崩し始める。

 徐々に、徐々に推し進めるペネトレイター・インパルス。

 初めて手にした武器の名を冠した一点突破の一撃が、フランチェスカの悪意に屈する道理はない! 

 

「馬鹿な!!」

「《行っっっけぇぇぇぇ!!》」

 

 更にブーストアップ。最大規模のストラトス・フェザーが空を駆け、悪意の源に向かって飛ぶ! 

 クイーン・アヴァロンの極光を吹き飛ばし、最短最速一直線にフランチェスカに槍を突き立てた! 

 

 勢いは止まらず、キャメロットに衝突し更に前進! 

 終着点は戦艦の動力炉。突き刺さった槍は絶対防御に届いた。

 

「お、おのれぇぇぇぇ!!」

「これで終わりだ! フランチェスカ・ルクナバルト!!」

《フル!》

「ブラストぉッ!!」

 

 大鷲を象るプラズマ全てを使ったパイルバンカーがクイーン・アヴァロンごと動力炉をぶち抜く。

 

 目の前が白く染まり、キャメロットの上部が木っ端微塵に爆散した

 

 

 





 勝った!第一部完!!
 ではなくあと1話続きます。どうも、作者のブレイブです。

 決着ゥゥーーーッ!!と肩の星の痣を指差しながら叫びたい気分です。そんなのありませんが。
 次回で第一部最終回!なのでいつもは2話ずつ投稿してますが次もISを書きます。ここでお預けもあれですし。

 ついに登場した主人公疾風とイーグルのワンオフ・アビリティー【蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)
 突き詰めれば単純な出力強化に色々な要素を詰め込んだりして。前書きにも書きましたが凄いミーティアしてる。
 一応言っちゃいますと種自由より前に技や機能の構想はしていました、が。なんか放つ光しちゃったり分身したりと。パクリと言われないかドキドキしながら書きましたわ。アハハ。

 次回第一部最終回。比翼連理でお会いしましょう!ではでは!
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。