IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 第1部最終回!!

 久々の高評価にまあも短期間で書き上げました。
 23000文字を……初めてですこんなに書いたの。高評価でモチベ上がるってマジだったんやな。
 みんなコメントや高評価宜しく!

 ではどうぞ!あとがきの最後に今後のこと少し書いてます!



第154話【比翼連理】第1部最終回

 

 

 

蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)、アビリティオフ。強制排熱、冷却開始》

 

 ワンオフ・アビリティーも時間切れ。

 仕舞い込まれるように収縮した4枚の蒼翼。マフラー型放熱索だけでは冷却が間に合わず、機体各所から蒸気が噴き出し。内蔵された冷却カプセルから装甲が氷結したのち水に溶けた

 

「ハーーあっつー。あ、冷た、いややっぱ暑いな」

蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)。まだまだ調整が必要だな》

「そうだな……あー、なんかボーッとする」

 

 ファクターコード発動してからずっと全開でぶん回していた。

 俺のワンオフ・アビリティーは捕らえられない速さを出せる、だがそれはフォクターコードの恩恵があればこそ。

 初めて使った時は情報と動体視力が追いつかず壁に激突してしまった。だからファクター・コードは最初から最後まで出しっぱなし。

 

 あとルナティック弾幕の演算に使ったからだな。あれも負荷やばかった。少しクラッとする。

 まだまだコードに頼りっきりだ。鍛錬が必要だな。

 バススロットから出した糖分補給用のカロリーバーを一口二口で飲み込みながら今後の方針を立てる。

 

 それより……

 

「あのクソババア何処行ったよ」

 

 周りにクイーン・アヴァロンのIS反応がない。

 探そうにもイーグル・スフィアはオーバーヒートで一時停止。既存のハイパーセンサーにも負荷がかかっている。

 

 あれほどの爆発だ。木っ端微塵になって殺したら流石に罪悪感ものだが……いや別にあいつはぶち殺したい気持ちはガチであるけどISで殺人は俺の道理に反するだけだから、ええ。

 コホン。動力炉が爆発した瞬間奴が吹き飛んだのを記録しているから間違いなく無事だ。流石にISは動かない、と思いたいが。

 

「おーい! 終わったかーレーデルハイト!」

「あーらら、艦が跡形もないわね」

 

 動力炉ごとぶち抜いたペネトレイター・インパルスの一撃が戦艦の上部を吹き飛ばし、船体を真っ二つにした。

 相当なエネルギーを溜め込んだところに極大の一撃を見舞った結果は想像以上の一言に尽きた。

 正直ここまで破壊できるとは思わなかった。我ながら引いている。

 

「お疲れ様です、こっちは大丈夫です。それよりもフランチェスカが何処かに落ちてるかもしれません。もしかしたら沈んでる可能性も」

「うわめんどくさ! 分かった、こっちで探す。そっちは動けるか」

「かろうじて。少し無茶し過ぎました」

「見てたぜさっきのワンオフ・アビリティー。あんなの反則だろうよ」

「へへ、凄いでしょう」

「あなたは休んでなさい。アメリカは海の中を探すわよ」

 

 イレイズドは海中に、スカーレット・ナイツが方方に散って首魁捜索に映った。

 

《マスター、排熱終了。基本動作は出来るが火器管制はもう少し待ってくれ》

「ハイパーセンサーは動くか」

《通常のならあと少し。待てマスター、少し休んだほうが》

「いや、あいつを逃がしたら駄目だ。艦の残骸を調べよう。どっかに挟まってるかも」

 

 奴の執念は想像を絶する。

 欠片でも可能性があるなら探さなきゃ。通信が回復したら学園から応援も。

 

「何処に行くと言うの……」

「!!?」

 

 声がした瞬間、身体がガッチリと何かに固められた! 

 なんだ! 何かに捕まった、何も見えない、いや、これは!! 

 

「BTステルス!!」

「フフフフフ」

 

 透明な身体に色が戻るようにフランチェスカとクイーン・アヴァロンが姿を現し、俺を後ろから羽交い締めにしていた。

 

「お前逃げたんじゃなかったのか!」

「逃げる? もう無理よ、こんな有様ではね」

 

 フランチェスカのISはもはや見るも無残な姿になっていた。カスタムウィング兼ビット兵器だったセイクリッド・コフィンは全損。騎士鎧と女王が合わさった美しい装甲はヒビ割れ砕かれ、かろうじて原型を残す程度だった。

 まともな動きも出来そうにない身体で、残ったBT粒子を使って姿を晦ましていたのだ。

 

「もう私はここで終わり。生きたとしても死刑を待つか一生檻の中。大願成就など出来はしない。だけど貴様だけは道連れよ」

 

 背後で急激にエネルギーが胎動する。

 もう武器もなく、レーザーとなるBT粒子もないのに。

 

《こいつ!? ヤバいぞマスター! 奴はコアを使って自爆するつもりだ!!》

「はーーー!!?」

 

 この馬鹿野郎!! 貴重なISコアで自爆とかふざけるんじゃねえぞ!! 

 

「貴様は私と一緒にあの世に行くのよ!」

「てめ、離しやがれ! 良い歳して高校生のガキを羽交い締めとか恥ずかしくないのかよ!」

「ええ、身も毛もよだつ最悪な気分よ。光栄に思いなさい! この私に抱かれながら逝くという栄誉をね!!」

「キモっ! キモいキモいキモい!! 気持ち悪い言い回しするんじゃねえ発情年増ババア!!」

 

 こっちが身も毛よだつわ! なーに考えてんだコイツ! 

 トラウマになるって! 夢に出るってこれは!! 

 

「お前を幸せになんかさせない。セシリアと幸せになんかさせない。もう何もかもどうでもいい。お前が死ねば私は幸せなのよ。私の幸福の為に死んでぇ!!」

「ふ! ざ! け! ん! なぁ!!」

 

 辛うじて動く頭で奴の顔面に叩きつけるもビクともしない! 

 なけなしのプラズマを放ったが拘束が少しもゆるむ気配がない。うがー! 抜け出せねえ!! 

 

「一つ良いことを教えてあげるわ。私がもし死んだ場合。カリバーンはIS学園に向かって落ちるのよ」

「なんだって!? くそ! セシリア! 麻美さん!」

《駄目だ通信が繋がらない!》

「無駄よ。私から半径1メートルほどの極所ジャミングをかけてるもの。現にアメリカやイギリスの奴らもこっちに気付いていない。つまり私と貴様の二人だけの空間なのよ」

「どうしたてめえマジでキモいぞ!!?」

《おかしい。機械なのに鳥肌が止まらない……いや最初から鳥肌だったな、鷲だもの》

「イーグルさんしっかりして!?」

 

 こっちも鳥肌が止まらねえ! 

 IS越しでよかった! 直だったらもうアレだぞ! 

 なんかイーグルも動揺してるし! あ、こいつにとっては直か! 

 

 いやそんなことよりもカリバーンがIS学園に落ちる!? 

 最後の最後までなんて爆弾を落としに来やがったんだ!! 

 

「お前! あそこにはお前が守るべき女性も沢山居るんだぞ!? 何考えてやがる!!」

「あなたを絶望のどん底に落とすならこれぐらいはしないと駄目よねぇ!!」

「こいつやたら恍惚とした顔しやがって!」

 

 想像を絶するとか言ったがマジで執念が想像を絶し過ぎる!! 

 人としての何かが致命的に壊れてるとしか思えねえ!! 

 

 そうこうしてる間にISコアが輝きが増していく。

 

「あと20秒……嘘よ! あと10秒! キャハハハハハハ!!」

「ざけんな! 離れやがれ!!」

「絶望にまみれて死ね! 私と一緒にねぇぇーー!!」

「くっそーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なーんてね」

 

 パシュ! 

 音を立ててイーグルから身体が弾き出され、遅れてイーグルが量子化。待機形態である眼鏡に戻って落ちる

 

「は?」

 

 何もない空間を抱きしめた。

 腕の中に居たはずの怨敵とそのISがそこにはいない。

 目線を落とすと、海に落ちていく疾風・レーデルハイトという男が眼鏡をキャッチし顔にかけ。舌を出した最大限馬鹿にしたゲス顔で中指を突き立てていた。

 

 

 

「1人で死ね。バーーーーカ」

「……このクソガ」

 

 

 

 悪態を言い切る間もなく、美貌を歪ませた醜い顔のまま内側から溢れる光に掻き消され、塵も残さず消え失せた。

 自爆による自滅、なんとも情けない結果を残し。フランチェスカ・ルクナバルトはこの世から居なくなった。

 

 奴を中心にした光球に吹き飛ばされながら再展開し海にダイブ。

 光は数秒で落ち着き、そのまま力なくプカッと浮かび上がった。

 

「最後まで爆発オチかよ……救えねえ」

 

 奴を獄中にぶち込んでせせら笑う筈がこの体たらくとは。

 まあ、屈辱全開だった顔面に免じてヨシとしよう。

 

 さて、早くIS学園に戻らねば。

 奴のせいで余計な仕事が増えてしまった……

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「疾風! 無事ですわね!?」

「おおセシリア。なんとか大じょぶふっ!」

 

 IS学園近海に戻るなり正面衝突な勢いでセシリアからハグを受けた。

 もう装甲同士がぶつかってガイン! と中々な音と衝撃があったがそんなこと気にしないとばかりに熱烈にギューッとしてくる。

 

「よかった! 本当によかった!」

「だ、大丈夫だって。勝つって言ったでしょ」

「ええ信じていました! 通信が繋がらなくなっても大丈夫だと信じていましたわ! でもやっぱり心配でしたのよ!」

「うおっ、セシリアさん。そろそろ離れよう。周りからの視線が痛い」

 

 周りの人たちニヤニヤしなーい!! 

 別に恋仲だからって訳じゃないから! セシリアって感極まるとハグする感じのあるから!! 

 

 名残惜しいが一先ず離れてもらった。

 本当に名残惜しいけども! さっきのババアバッグハグを受けたばっかだから癒しが欲しいのよ! 

 後で2倍ハグしてやるからな! 

 

「状況は伝えた通りですが。どうでしょうお二方」

「フランチェスカの言う通り、カリバーンは落下軌道に入ってるわ。もう少しで目視出来る」

「目標の大気圏突入まであと20分。IS学園への衝突確率はシックス9。もう100%だね」

「カリバーンは掌握済ですが、こちらから干渉することは」

「無理! 内部のシステムは操作出来るけど墜落機構と繋がってないからこっちから自壊させることは出来ないね」

「この姉さん使えないな」

「箒ちゃん酷い!! 言っとくけどさっきから回線繋がってないのに繋げようと必死だよ! 30分あれば強引に繋げれそうだけど」

「駄目じゃないですか!」

「もう! なんなのこのカリバーンのシステム! あんなちっさいのにIS学園最深部レベルのセキュリティだし! リンク繋ごうと思ったら先読みで潰されまくるし! これ作ったやつ相当意地が悪いよ!!」

 

 IS学園を手玉に取れる篠ノ之博士がそこまで言うとは。フランチェスカが作った……とは思えないな。奴のバックにそれほどの技術者がいるのか? 

 

「カリバーンの詳細は」

「内部に高純度の時結晶(タイム・クリスタル)を使ったクリスタルジェネレーター。それを利用したバリア発生器が2基。これがものっそい硬い」

「バトルフォートレスのアラヤとガイアは無理がたたって修復中。現在急ピッチで作業してるけど、とても間に合いそうにないわ。副砲のレールガンでは射程が足りない」

「マジで隕石兵器じゃないか」

 

 大変な置き土産を残してくれたもんだな。ほんとマジで。

 何か策を考えなければ、今ある手札で出来ることは……

 

「まあ破壊プランはあるけどね」

「「え?」」

「「はい?」」

「ん?」

 

 と思ったらなんかサラッと篠ノ之博士が言ったんだが。

 

「え、あるの? あるのですか?」

「あるよー。まず待機してるエクスカリバーの砲撃でバリアの耐久力を下げる。そのあと紅椿タクシーでちーちゃんといっくんがカリバーンに接近、零落白夜でバリア装置を斬り裂いて。そのあと疾風くんとセシリアちゃんが高火力撃って消し炭でオッケーだね!!」

「「…………」」

「「…………」」

「あれ? みんなどうしたの? もしかして束さんのパーフェクトプランニングに感動して……」

「「早く言えこの馬鹿!!」」

「うえーー!!?」

 

 時間もないのになーに出し惜しみしてんのかなぁ! この天才は!! 

 

「さっきまで打つ手なしな空気出してた癖に! 紛らわしいんだよ姉さん!!」

「だって聞かれたこと答えただけだもん! 束さん悪くないもん!!」

「お前本当にそういうとこだぞ……」

「そういえば。束さんって聞かれないことに対してとことん答えない人だったな……」

「そうね。私も意図を測りきれない時があって苦労したわ」

 

 ああ、知人が揃って眉をひそめている。

 グレイ兄も言ってたな。篠ノ之博士は天才なのに抜けてるところが多すぎるからプラマイがマイナスに行ってるって。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 なんとも閉まらない感じだがこれから来るカリバーンを止めなければIS学園崩壊待ったなし。

 

 作戦に移る前にみんなからエネルギーバイパスで直接エネルギーぶち込んでくれたからエネルギーは満タンだ。

 箒が度重なる使用で絢爛舞踏を発動できないのを悔いて「篠ノ之は役立たずの家系なのでは?」と一時ナーバスになってたが一夏の励ましでケロリと治った。チョロくて助かった。

 

 作戦の概要は変わらず。

 カリバーンが爆散した時の破片による二次被害を避けるために高高度で迎撃。

 エクスカリバーの砲撃でバリア装置に負荷をかけ、展開装甲を全開にした紅椿の加速で一気に肉薄。織斑姉弟の零落白夜でバリア発生装置を破壊。

 丸腰になったカリバーンを俺のワンオフ・アビリティーでブーストしたセシリアの砲撃で破壊。

 残ったISとバトルフォートレスが万が一の備えとして危険域の破片を排除する。

 

 一夏、箒、織斑先生が迎撃の為に一足先に上空で待機。俺とセシリアは狙撃地点、IS学園上空て待機していた

 作戦開始まで、あと3分。

 

「ワンオフ・アビリティーが使えたなんて知りませんでしたわよ」

「なかなか曲者で調整が難儀してたんだ。それに情報は出来るだけ秘匿したかったからさ。だからすねないでよセシリア」

「べ、別にすねてませんわ!」

 

 えー、本当でござるかー? 

 ぷくっとした顔が可愛いのは気の所為か? 

 

「疾風。叔母様は、本当に死んだのですか?」

「……ああ。自爆して消滅した。その瞬間も見たから、間違いない」

 

 海中に潜る前に完全に自爆の光に飲まれていた。

 あれで生きてたらモノホンの化け物だが。どうあがいても人間だったわ。

 

「ごめんな。連れてこれなくてさ」

「いいえ。これで良かったのですわ。もし叔母様が生きていたら、あの人を信奉していた人が何をしでかすか分かりませんもの」

 

 監獄に突撃万歳するのが目に見えてわかるな。

 

「わたくしより疾風ですわ。お辛くありませんか。目の前で死なれたことを」

「思ったより堪えてないよ。そりゃまあ生きて罪を償わせたかったけど。どのみち死刑宣告の可能性高いだろうし。自分の手で手を下した訳じゃないから。何勝手に死んでんだって気持ちのほうが大きいかな」

 

 奴を皮切りに亡国機業(ファントム・タスク)の実情を紐解こうとも思ったのもある。

 貴重な情報源だったのにこれで亡国機業は元の謎組織に逆戻りだ。

 

「セシリアは優しいね。あんな外道の為に悲しめるなんてさ。俺には無理だ。本気で殺してやりたいとも思ったし。絶対に許すことは出来ない」

「それは、わたくしも同じですわ。だから疾風。辛かったらわたくしが居ますから、無理しないで下さいね」

「こっちの台詞でもあるけど、ありがとう」

 

 内心辛いだろうに。

 いろんな感情ぐちゃぐちゃな癖にこっちの心配しなくて良いんだぞ。

 

「隙あらば二人の世界に入んじゃないわよー」

「五月蝿いぞー鈴。今ぐらい浸らせなさい」

「わー、言ってくれるわね疾風」

「鈴様、邪魔しては行けませんよ。むしろ鈴様こそ素直になりませんと。さ、一夏さんに声かけましょ?」

「べ、べつにあたしが声かけなくたって……」

「じゃあ僕が声かけちゃお。一夏、頑張ってね!」

「後詰は我々がやる! 教官に誇れる姿を見せる時だ!」

「これまでの修行の成果を見せる時よー。頑張ってね一夏くん!」

「あ、あんたたちねえ!?」

「お前たち、私が側に居ることも忘れるなよ?」

「出遅れたね……」

「ぐぬぅ……一夏の馬鹿者」

「な、なんで!?」

 

 とばっちりされた一夏はどう処理していいか分からず目をパチクリ。隣の織斑先生は軽くため息を吐くだけだった。

 

「大丈夫か、一夏」

「え?」

「雪片を持つ手がブレているぞ」

「……正直緊張してる。福音の時より胸の鼓動が凄い聞こえてきて……」

「そうだな。我々が失敗すればIS学園もただでは済まん。福音の時とは危険度は桁外れだ」

「………」

 

 一夏の脳裏にあるのはシルバリオ・ゴスペルの第一次作戦の時。

 あの時、一番最初にきっちり零落白夜を叩き込んでいたらと。一夏は時々考えていた。

 相手の零落白夜に対する警戒度が強かった、と言えばそれまでだが。失敗したという経験と記憶は一夏に根付いている。

 

 今回のカリバーンはゴスペルほどの機動力はない。

 だが落ちてくるカリバーンに対し、タイミングよく刃を入れるということは難しく。一夏にとって初の経験だ。

 

 身体の震えを武者震いだと誤魔化すことしか出来ず、何度も深呼吸をしていた。

 

「だが昔のお前とは違うだろう、一夏」

「え?」

「この戦場でお前は生き延びた。日本国家代表にも一矢報いた。それが何よりも証明だ」

「千冬姉」

「やれるな、一夏?」

「ああ! 任せろ千冬姉!!」

 

 尊敬する姉からの激励。

 これに応えられなきゃ男が廃る。

 不思議と震えていた手が収まり、手の中に収まる雪片弐型を固く握り直した。

 

 ……ここまで見れば良いシーンではあるのだが。

 

「こんなことで妬くなよ、小娘共」

「「「や、妬いてません!!」」」」

「うお! どうしたみんな!?」

 

 箒、鈴、シャルロット、ラウラ、会長。

 一夏ラバーズが揃いも揃って顔を真っ赤にさせている。こんな時でさえ平常運転だなお前ら。すげーよほんとに。

 そしてやはり一夏は気づかない。これは一夏だから気づかないのかそれとも……

 

「アハハ」

「緊張、解れましたか?」

「さあ、どうだろうねえ」

 

 少なくとも一気に身体が解れた気がするわ。

 

「こちらミネルヴァ。目標、間もなく作戦区域に突入するわ」

「見えた……」

 

 大気圏を突破して赤熱したBTマインドコントロール拡大拡張衛星カリバーン。

 その姿はまさに剣のようで、フランチェスカの怨念を宿した選定の剣は魔剣となってIS学園に振り下ろされんとしている。

 

「疾風とセシリアちゃんの方は大丈夫?」

「大丈夫だよ母さん。エネルギーありがとね」

「ご心配ありがとうございます。わたくしはわたくしの責務を果たしますわ」

「私のエンプレスは役に立たなそうだからね。ここで2人の共同作業を録画しておくわ!!」

「相変わらず過ぎる!」

「ブレないことは良いことですけども!」

「IS学園の外部カメラでも記録しておくわ」

「御厨さんまで!?」

 

 前から思ってたけど麻美さんノリ良い方ですよね。

 とまあ、うちのお嬢様方も負けず劣らずノリが良いのは忘れてはならない。

 

「では僭越ながら私も撮影班に。伊達に遠距離向けではありませんので!」

「待ってて、今最高の画角を算出する」

「君たちは予備迎撃班でしょ! こっちじゃなくて空を見なさーい!」

「問題ありません。あんなもの、お二人の愛の力で塵も残さず消し去って下さいます!!」

「ケーキ入刀ならぬケーキで入刀……ププッ」

 

 こっちはこっちでいつも通りで嬉しいですねえ!! 

 おかげで緊張が完全に解れたよ。

 

「カリバーン、阻止限界点接近!作戦を開始します!」

「エクスカリバー、エネルギー充填100%! 主砲ノーブレス、発射!!」

 

 彼方より放たれる聖剣の一撃。

 地球の重力に捕われることのない直線の極太レーザーがドンピシャで命中。

 島一つを消し飛ばすエクスカリバーの最大火力を受けてなおカリバーンは健在。

 だが戦術的効果は果たされた。

 

「頼むぞ箒!」

「任せろ! 展開装甲! 全開!!」

 

 空に咲いた深紅の大輪。

 紅椿の全展開装甲が光を放ち、その花弁が可憐に揺らめく。

 

 白式と暮桜を乗せた紅椿があの時と同じ、いやそれ以上の速度を持って天に昇っていく。

 紅い軌跡が雲を突破し、ぐんぐんカリバーンとの彼我の距離を縮めていき。阻止限界点の前まで接近した。

 

「いっけぇぇぇぇーーっ!!」

 

 全てのスラスターを緊急停止。

 織斑姉弟のスラスターが点火。カタパルトの要領で打ち出された2機がカリバーンに肉薄。

 雪片と雪片弐型。頂きに立った者と受け継がれた者が巨剣に刃を向ける。

 

「破壊箇所をガイドするよ! 二人とも、やっちゃえ!!」

「行くぞ一夏! 零落!」

「白夜ぁ!!」

 

 白式・雪羅が金色の。暮桜が桜色のオーラを纏い。全開放出された零落白夜のバリア無効化能力が二振りの雪片に宿る。

 

 フランチェスカは言った。一夏のワンオフ・アビリティーは織斑千冬の猿真似だと。

 零落白夜も暮桜から受け継がれた技。

 確かに織斑先生と比べれば、練度は未だ天と地の差があるだろう。

 

 だてしても! 

 

「斬り裂く!!」

「せいやぁぁぁぁっ!!」

 

 彼の後ろに守る者が居る限り、織斑一夏は何処までも強くなる! 

 一夏の零落白夜は! 彼自身の信念の刃だ! 

 

 カリバーンのサイドに備え付けられた2基のバリアジェネレーターは、2人の零落白夜によって確かに断ち切られた。

 

「疾風! セシリア! 後は頼んだ!」

「見せてみろ、お前たちの力を!」 

「はい!」

「承りましたわ!」

 

 カリバーンのエネルギーバリア消失を確認! 

 エクスカリバーと同サイズである全長15メートルの剣先を正面に見据える。

 

 背後にはIS学園。俺たちの学び舎にして夢の場所。

 まだ1年も通ってないんだ。こんなことで壊されてたまるか! 

 

 ファクター・コード起動! 

 セシリアの眼に蒼色の、俺の眼に空色の光が宿り。ISと肉体のシンクロ率が上昇する。

 

蒼穹飛翔(ストラトス・オーバー)、起動!!」

《了解! エクストラクター! 出力マキシマム!!》

 

 スカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーを覆う空色のプラズマ・コーティング。背部にストラトス・フェザー出現、全システムオールグリーン! 

 

「これが、疾風とイーグルのワンオフ・アビリティー……綺麗……」

「だろ? あのフランチェスカでさえ見惚れるぐらいだからな……行くよセシリア!」

「はい!」

 

 コールしたスターライト・ブレイザーを2人で構える。触れた面からエネルギーと共にプラズマ・コーティングがリベレイト・ブルー・ティアーズに伝わっていく。

 

《2機のコアバイパス接続を確認! プラズマ、BTエクストラクター、エネルギー回路直結! 両機を同一体として同調開始!》

「んっ、なんてエネルギー総量ですの!」

「これは、想定以上だな!」

 

 プラズマとBTエネルギー。

 2機のエクストラクターを一つにし、混ざり合わせ、調和させる。

 本来決して交わるはずのない性質。通常ならこれを同調して撃ち放つには一筋縄では行かないだろうが……

 

「そんなの関係ねえんだよ!」

「ええ、わたくしたちに出来ないことなんて」

「「ありはしない!!」」

 

 難関と言える2つ異なるエネルギー同調をクリア。2倍どころか2乗レベルで混ざり合ったエネルギーが迸る。

 2機が纏うプラズマ・コーティングにBTコーティングが合わさって更に輝きが増す。

 2機を中心にカスタムウィングのポジションを調整。セシリアのウィングを上下に挟むようにフェザーを配置。セシリアのウィングからもBT粒子で出来たフェザーが出現し。3対6枚のストラトス・フェザーとなった。

 

「凄い……まるで比翼の鳥みたい……」

「比翼の鳥? なんだそれは」

「2つの頭を持った想像上の鳥。雌雄同体であるそれは片側ずつ生えた翼で互いを支え合うように飛び立つんです」

 

 愛する男女の仲を象徴する比翼連理の語源。

 お互いの翼を合わせ、支え合うその姿は正に比翼の鳥。

 男女の不和を全とする女尊男卑思考に対し、これ以上ない皮肉だ。

 

《ラウンズ、BTビット。パワーゲートフォーメーション。ライフリング回転開始!》

「イーグル、ティアーズの全エネルギー直結! 出力を全てブレイザーに!」

「PICアンカー、セット! ターゲットロック!!」

 

 蒼雷が迸るブレイザーの前に総数36機のビットで出来た3連続パワーゲート。

 プラズマとBT粒子の融合により生まれる、莫大なエネルギーを撃ち出す巨大な砲身だ。

 

《プラズマBTパワーゲート、コンプリート。出力80……90……100……110……エネルギー充填率、120%オーバー! 発射準備完了!!》

「終わりにしましょう、疾風!」

「ああ、これで最後だ!」

 

 展開された砲身は溢れ出す光で目視することが出来ないほど輝く。

 迫るカリバーンを見据え、引き金を引く! 

 

「「ユニゾライズ・カノン!! シューーートっ!!!」」

 

 目もくらむ光がブレイザーの砲身から溢れ出し、一つ、二つ、三つのパワーゲートを通過。

 何十倍もの出力に増大したプラズマBTレーザーが天を突き上げ、比翼連理の一撃がカリバーンを飲み込んだ。

 

 飲まれたカリバーンの装甲が焼け、崩れ去る。

 小さな爆発を何度も起こし、ついに完全崩壊。

 

 魔剣と化したカリバーンは破片すら残さず光の中へ消え、辺りに舞い落ちる光の流星群だけが空に残った。

 

「わ、わあ……凄い威力。なにこれ波動砲?」

「おったまげ、ですわ」

 

 その破壊力を前に本人含めた皆が揃いも揃って唖然。

 篠ノ之博士に至っては想定以上すぎる出力の前に宇宙猫になっていた。

 

 ただ一人、いち早く正気を取り戻した麻美さんがオープンチャネルを開いた。

 

「……カリバーンの消滅を確認……残存敵戦力なし。作戦終了を宣言します!!」

 

 一拍……全てから解放された歓声が戦場に響き渡る! 

 戦争に勝利したという吉報は瞬くまに世界中に広がり、人々が喜びに打ち震えた。

 

 世界が生み出した女尊男卑の闇。

 これで全てが解決したわけではないだろう。

 問題は山積み、これから忙しくなる。

 

 それでも今この瞬間。世界は喜びの叫びに包まれたのだった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 世界を巻き込んだ亡国機業(ファントム・タスク)の一派閥、女尊男卑組織ブルー・ブラッド・ブルーが起こした世界同時多発テロは無事に終息。

 歴史上初めてISを使用した戦争、IS学園戦役はわずか1日という早さで決着がついた。

 

 負傷者は居るが、死者が首魁のフランチェスカ・ルクナバルト1名のみ。この結果に世論はインフィニット・ストラトスという兵器の安全性と絶対性を確固たるものとした。

 

 洗脳された人たちは全員病院で審査を受け、取り調べを受けた後に無事社会復帰していった。

 みんなセシリアと違い、洗脳時の記憶が曖昧だったのも大きい。

 

 ほとぼりが冷めぬまま、関係者を募って記者会見を行った。

 メンバーは織斑先生とIS学園学園長。戦争の立役者である俺こと疾風・レーデルハイトとセシリア。レーデルハイト工業社長の母さん、国際IS研究所所長の麻美さん。そしてリモートで篠ノ之博士。

 

 麻美さんが出た時はちょっとした騒ぎになったが。ある意味篠ノ之博士よりレアキャラだからな麻美さん。

 

 長くなるから端折るが内容的には戦争のあれやこれや。IS学園のバトルフォートレスの存在。BTナノマシンが完全消失したこと。フランチェスカの死によりマインドコントロールの可能性が根絶されたこと。テロリストの処遇などなど。

 

 あとはブルー・ブラッド・ブルーに奪われたISコアについて。

 コアナンバーを篠ノ之博士が参照し逐次各国家に返却することを新生IS委員会に丸投げする結果となった。

 

「まんまと奪われた国の尻ぬぐいなんてごめんだね。今後は管理をもう少し徹底することだよ。責任追及でコアの奪い合いなんて馬鹿な真似はしないこと。賢くないアホどもに束さんからの優しい忠告だよ」

 

 これでも言葉を選んでくれた。と後の織斑先生は語る。

 この篠ノ之博士の発言でコア騒動はある程度沈静化し、厳正な管理の元無事に各国にISコアは戻ったらしい。

 

 あとは戦時テロ被害について。

 セシリアが筆頭株主としてティアーズ・コーポレーションの所業を謝罪し、私財を投げ売って各国の賠償責任を行うと宣言。

 勿論セシリアも被害者だ。オルコット家のみで賄うということにはならないが、相応の額を納めるとか。

 

 更に残ったティアーズ・コーポレーション。

 ブルー・ブラッド・ブルーの隠れ蓑という側面もあり。BT技術を含めた管理には細心の注意を払わなければならない。

 本来なら即時解体し技術も封印すべきという声が少なからずあった。しかしBT技術は並み居るIS技術において最重要であり。今後の宇宙開発などの様々な可能性があることも事実。篠ノ之博士の発言からも過度な反対は起きなかった。

 

 しかし放置するわけにもいかない。

 ならばどう管理するかというと。

 

「IS委員会の厳正な審査を行ったうえで。ティアーズ・コーポレーションの全権を損害賠償という形でレーデルハイト工業に提供。弊社との合併吸収を宣言致します」

 

 レーデルハイト工業がティアーズ・コーポレーションを丸ごと管理するということだ。

 これによりレーデルハイト工業は名実ともにイギリストップ企業の座についた。

 エクスカリバーによって消失した試験施設の再建も視野に入れてくれるらしい。

 

 両社合併については一部記者が「ここまでスムーズに行くなんてレーデルハイト工業の一連の悲劇は計画された出来レースなのでは」と余りにもな記者も居たが丁寧に否定した。

 余談ではあるがその後ガッツリ名誉毀損としてガッポリ頂きました。こっちは死人出てるんだ、絶対に許さん。

 人の心がないマスゴミは色んな意味でしまっちゃおうねー。

 

 そこからは大小様々あれど色んなことを聞かれ、適切に処理していった。

 ほんと大人組が頼りになり過ぎて。俺はほとんどガチガチの案山子状態でしたよ。

 

「レーデルハイトさんにお聞きします。今後の世界はどのような方向に向かうのでしょうか。今回の事件で女性への風当たりは強くなり女性優遇は撤廃して男性優遇になってしまう恐れがあるという声もありますが」

 

 とまあ、ただの案山子で収まる筈もなく。

 革新的なことを待ってましたとばかりにぶっ込んできた。

 

「男性優遇に舵を切ったとしたら関係ない女性が不遇な目、または攻撃対象にされてしまうことになるでしょう。私はそれを認められません。そんなことをしたらフランチェスカ・ルクナバルトの言い分を正当化してしまうことになります」

 

 今の女性に優しい制度は間違いなくプラスの方向にある。一部の行き過ぎたミサンドリーが女性の全てと語られるのは流石に看過は出来ない。

 

「私は宣戦布告の時、互いに手を取り合うことが人間の本質と発言しました。その言葉に偽りはありません。この戦争は優れた者だけによる勝利ではなかったからです。まったく平等になれとは言いません。ですが我々はこの過ちを恥、二度とこのような戦争が起きぬよう生きていかなければならない。我々人間にはそれが出来る。そこに男も女も関係ありません」

 

 あらかじめ予測は立てていたとはいえ、どもらずに話せた。まったく俺みたいな青二才に喋らせるんじゃないよ。

 それを皮切りに俺への質問は殺到したが甘い甘い。

 粗探ししようと思ったんだろうけど対策などは用意したとも。粗が見つからずグヌヌしてた記者どもの顔は見物でしたよホッホッホ。

 

 記者会見が終わりに近づく中、最後に一つと記者から質問があった。

 インフィニット・ストラトスの今後についてだ。

 

 これには篠ノ之博士は……

 

「ノーコメントでーす」

「篠ノ之博士。もう少し何かありませんか」

「んー? 世界が宇宙開発に乗り出したらコメントしまーす。疾風くん、なんか良い感じのこと言ってー」

 

 と無茶振りされた。

 投げやりにも程があるだろうがい! いや言わんとしてることは分かりまくるから反論が出来ない

 質問は想定通りではあるから答えられますけどねえ! まったくこの箒と似ても似つかない奇人はこれだから。

 

「……ISを解体、排斥すべきという声は私の耳にも届いております。ですが現在この世界がISに依存している以上、解体は難しいと考えています。この戦争において死者が自爆を敢行したフランチェスカ・ルクナバルトのみであること、1日もたたずに収束したとして。歴史上もっともクリーンな戦争と言う人も居ます。ISは兵器として優秀すぎる。これは紛れもない事実であり、有用性は証明されてしまいました。IS本来の目的である宇宙開発は遥か遠くにある。私が生きている間にそれが達成出来るかも分かりません」

 

 俺のイーグル、そしてブルー・ティアーズを初め。果ては人工衛星型ISエクスカリバーに至るまで。

 ISは既存の兵器を凌駕し、今回の戦争でその有用性を大いに発揮してしまった。

 

「今回の戦争は兵器としてのISを否定する為の戦いでした。ISという暴力で世界を征服しようとする者との戦いで、我々は勝利しました。この結果を無駄にしない為にも。我々は今一度ISと向き合わなければならない。

 残念ながら、若輩者の私では世界が納得する答えを今すぐに出すことは出来ません。なので私は諦めずに進み続けます。兵器であり、スポーツであり、宇宙への駆け足でもある。様々な意味を持つこの機械を。男でありながらインフィニット・ストラトスを動かせる資格を持つ者として。いつか答えを見つけ、世界に示せるように。私は進み続けることを誓います」

 

 何処までも青二才で、綺麗事で、理想論に塗れた。聞く人が聞けば吹けば飛ぶ戯言かもしれない。

 

 それでも、誰かの心に根づき、刻まれることを願った。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 と、まあ……無茶振りによって慣れないクサ過ぎることを世界に発信しちまった訳で。

 例に漏れずクラスメイトや黛パイセンからからかわれおちょくられましたよっと。

 

 だが笑ってばかりもいられない。

 特にISパイロットに休みなどない。

 

 海に沈んだワルキューレ、及び内部の時結晶(タイム・クリスタル)の回収。

 IS学園の修復作業。戦後に向けての書類仕事。

 世界の英雄として祭り上げられた俺に対するヒーローインタビューの数々。

 

 ここでは書ききれない様々な労働が襲いかかり、正直戦ってた時より疲れたでございます。

 

 良いこともあった。

 IS委員会を通し、政府から戦争に参加した人たち、エンジニアも含めて報酬が与えられた。

 

 特に戦闘に参加した人たちは結構な額を貰えた。代表候補生なりたてでお金を貰い慣れてない一夏と箒は貰った数字を見て戦々恐々していて。戦争の立役者でフランチェスカを打倒した俺に関しては金額を控えさせて頂くほどの、もう目が文字通りひん剥いて飛び出たんじゃないかってぐらいの報酬金を貰った。ホントに貰ってええんですかいってなるぐらい。凄い額でしたハイ。

 むしろ逞しかったのは貰った金で「宴じゃー!」「高い焼肉じゃー!」と盛り上がっていた義勇軍として参加した一般の生徒だろう。

 女は強かじゃ……

 

 援軍に来てくださった各国の精鋭たちも役目を終えてそれぞれの国に戻った。

 スカーレット・ナイツのジュリア団長から「騎士団に入らないか! 歓迎するぞ、盛大にな!」とお誘いは受けたが、丁重にお断りをしてショボくれてしまった。

 

 各国国家代表とも挨拶を交わした。

 内部機構は見れなかったが近くでISをマジマジと見させてもらったのは最高だった。

 勿論サイン色紙は忘れずに。

 

 あ、そうそう。嵐を巻き起こす風雲児こと2代目ブリュンヒルデ、アリーシャ・ジョゼスターフだが。

 戦争が終わったあとISドライバーに復帰した織斑先生とモンド・グロッソ決勝戦のやり直しをする約束をしていたらしい。

 これには周りも大盛り上がり。世紀の大決戦を間近で見ようと意気込んだ……のだが。

 

「見つけましたよ、ジョゼスターフ国家代表」

「げぇ!? 管理官!!」

 

 遥々イタリアから厳格を絵に描いたような役人様がアリーシャさんを連れ戻しに登場。

 様々な援軍の中で彼女だけ依頼なし、つまり国に無断で来たことにイタリアはお冠らしく。日本に居ると感づき見事的中。

 

「放浪癖もいい加減にしてもらいます。今日こそ年貢の納め時です。帰りますよ」

「待て! 待つのサ! せめてブリュンヒルデと戦ってから! ブリュンヒルデと戦わせろぉぉぉぉ!!」

「駄目です。これ以上文句を言うなら国家代表資格とテンペスタを剥奪します、これは国家命令です」

「ヒィィ! ブリュンヒルデ! なんとか取り成すのサ!」

「では後を頼みます」

「ブリュンヒルデッ!!?」

「さ、行きますよ。たまった書類や仕事、全部片付けるまで逃げられると思わないように」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ!! 書類仕事なんて嫌だぁぁぁぁぁぁ!! 私はテンペスタのアーリィだぞ!! 一つの場所でジッとなんて嫌なのサぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 泣き叫びながらズルズル引きづられていくアリーシャさんに合掌。

 人々がモンド・グロッソの再戦がないことに落胆する中、織斑千冬のみが安堵したように息を吐くのであった。

 

 いつか再戦が来ることを願わずにいられない。

 これは学園にいる者の総意であった……

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「なんとも……なんとも興冷めする結末だったな。勝てるとは思ってなかったが、あそこまで惨敗するとは」

「キヒヒヒ! 我は楽しめたがな。単一のことしか考えられない視野の狭い連中だったが。人の愚かさの極地を見れた。退屈しのぎの褒美を上げたいが、その首魁は死んだからあげられんな? キヒャヒャヒャ!!」

 

 円卓中央のホロウィンドウの明かりだけに照らされた部屋の中。白衣を着た科学者然とした男のぼやきに華美な服を来た一見童女に見える金髪赤眼の女が変わった笑い方で答える。

 

 彼女の奇妙な笑みに眉をひそめたのは、機能美を追求したボディスーツを来た金髪金眼の美女。

 

「不快。その下品な笑い方は感情を揺さぶるから停止を提唱した筈だ。容量が狭いのは貴様も同じでは?」

「これは失敬した。だがこれは我の癖だ、期待はするな。キヒヒヒ!」

「この年増の下劣な笑いは今に始まったことではないだろう」

「年増言うな。殺すぞ」

「やれるならやってみるがいい。しかしブルー・ブラッド・ブルーが弱いことは同意する。あれほど強き女性を歌っておきながらあの体たらく。大言壮語もここまで来ると反吐が出る」

「相変わらず力の信望者だな」

「フン、それの何が悪い? 力がなければ理想も信念も生きることも出来はしない。あの女どもは力がなかった、それだけのことよ」

 

 腕を組んで鼻を鳴らした男は見た目だけならこの場で一番歳を取っている。

 見た目に老いを刻みながらも武人、益荒男の雰囲気を漂わせる彼は只者ではない事を感じさせる。

 

「しかし……キヒヒ、キヒャヒャ! あの女、フランチェスカ・ルクナバルトと言ったか。奴はほとほと救いようのない道化だったなぁ! もっとも信頼していた兄が生粋の女嫌いで、なんだったか……そう男性権利団体の幹部ぅ!! キヒヒ! 自分が騙されてるとも知らずに世界を掌握する女王を気取るとは! これ以上痛快で愉悦な道化はなかなかないぞ!! キヒャヒャヒャ!!」

「外道め……」

「フフフ。彼女の愉悦趣味はともかく、あの夫妻が我々に近づき過ぎたのは事実。本格的に動く前に我々の存在が露見する訳にはいきませんでしたからね」

「その通り! それに貴様が言えた義理か武士気取り。言えぬよ、この場に居るものは等しく外道だ。人の視点で見れば、な? キヒャヒャ!!」

 

 フランチェスカを嘲笑う童女は絶えず狂笑を部屋に轟かせる。

 もはや止めることすら億劫と武士と美女は押し黙り、一人博士は薄く笑みを浮かべている。

 

「──だがフランチェスカ・ルクナバルトは最低限の仕事はした。暮桜の封印解除という大役をな」

 

 円卓に座する4人の前にもう一人。いや1機のISが現れた。

 

 汚れ一つない純白の装甲。

 荘厳にして美しき、零の躯体。

 

「おおっ、目覚めたのか!」

「ええ、暮桜の起動。それだけは評価するべきでしょう」

「肯定。これで計画を進めることが出来る」

「胸が高ぶるのう。我々の世界が、これから始まるのだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──なあ白騎士よ」

 

 

 

 

 その名は白騎士。

 

 原初のインフィニット・ストラトスにして全ての始まり。

 世界で初めて確認された、世界を救ったインフィニット・ストラトス。

 

「亡き国を、世界を機織り、君臨する。亡国機業の名の下に……我々を、始めよう……」

 

 長きプロローグが終わり。

 

 ストーリーが紐解かれる。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「はーーーーーーーーーーーーー……ああ……」

「長い溜め息ですわねー」

「平和を噛み締めてるの」

 

 IS学園の屋上、夕焼けに染まった海を眺めながら体内に溜まったあれやこれやを二酸化炭素に乗せて吐き出した。 

 

 戦後から1週間。ようやく情勢が落ち着いて腰を下ろすことが出来た。

 世界は未だにテロの恐怖から解放された反動で連日連夜お祭り騒ぎ。ニュースではコメンテーターが断片的な情報でコメントしたり。動画サイトでは配信者が訳知り顔で考察などを披露していた。

 

 IS学園もようやく本格的に授業再開。

 開戦前に増やした練習用ISで急速に遅れを取り戻すのだそうだ。

 

「すっかり時の人ですわね、英雄さん」

「あーー、そうね。一夏もそうだけど。やっぱり俺は目立ったからなー」

 

 セカンド・シフトを果たし。ブルー・ブラッド・ブルーにむけて宣戦布告。

 数々の功績、そして首魁のフランチェスカ・ルクナバルトを討ち取り。カリバーンを破壊し戦争を終わらせた大英雄として日夜テレビやトレンドを独占していた。

 

 一夏も織斑千冬と肩を並べ、カリバーンのバリアを斬り裂いた活躍がクローズアップされたのがメディアに響き。校内人気も更に爆上がりして一夏ラバーズの胃が絶賛ギリギリ状態です。

 

 俺? 俺もまあ、あれから視線が増えましたよ、はははは……

 

「俺のことよりお前だよお前。結構動いたりした筈なのにまったく響かないんだよ。おのれ大衆め」

「大衆の感情など一長一短で変わるわけがないでしょう」

「そうだけどさー!」

 

 色々なことが片付いて良い方向に向かったが、勿論全てではない。

 最たる問題は大きく分けて三つ。

 

 ブルー・ブラッド・ブルーでまだ身柄を確保されてない者。

 元フランス代表、アニエス・ドルージュ。

 元ロシア代表、ログナー・カリーニチェ。

 フランチェスカの側近、アイビス・バートリー。

 そしてメアリ・メイブリック。

 その他数人がISを持って戦闘区域から逃げおおせた。とくにメアリが野放しにされている現状がレーデルハイト工業にとって最大の悩みの種。

 薬品とナノマシンのオーバードーズによる心体負荷で動けなければそれでいいが、高望みは出来ない。

 

 ブルー・ブラッド・ブルーの残党は近いうち必ず何かを起こす。その前に掃討出来れば良いが。

 

 二つ目は、世の女性の立場。

 やはり女性に対する攻撃的な声が多く響いている。とくにフランチェスカに同調してしまった女性権利団体は酷いもので。即時解体されたよ。

 穏健派の女性保護団体も同じムジナって認識されてとばっちりにあってたし。

 ああ、あと政界の三分の一ぐらいが辞めてたなあ。会長が言うにはフランチェスカと密接になってた人たちやその予備軍が捕まったり辞めたりらしい。

 

 …………あと噂なんだけどこのゴタゴタに漬け込んで菖蒲と簪が一夫多妻制法案を画策していたという……飽くまで噂があったんだよね。

 なんか会長含めた一夏ラバーズとかが止めに入ったらしい……噂であってほしいものよ。

 

 そして最後、個人的にはこれが極めつけ厄介なこと。

 

「みんな揃いも揃ってセシリア叩きやがってクソが」

「覚悟はしていましたわ」

 

 フランチェスカ・ルクナバルトがこの世を去ったことで、攻撃の対象を失った大衆が次に狙いを定めたのは彼女に一番近いセシリア・オルコットだった。

 セシリアがオルコット家の資産を使って支援金を投げ売ったことも印象操作の為だの。彼女を弾劾すべきだの。牢屋にぶち込むべきだの。

 もう罵詈雑言誹謗中傷の雨あられが顔のないSNSで蔓延した。

 俺を含めた大人たちの働きにより世間で大っぴらにセシリアを非難することはなかったものの……結構堪えるものがある。

 

 一番厄介なのは、学園内でもそういう声があることだ。

 一年一組や知った顔の面々にその兆候がないし、庇ってくれているのが救いだな。

 

「なんかあったら言えよ。脅されて俺が不利な状況とかそんなの気にしないし気にしたら許さないからな」

「善処しますわ」

「徹底してくれよ……」

「貴方に話したら最後。相手がどんな目に会うかわかりませんもの」

「当たり前だろうがよ。セシリアを傷つけるものは老若男女許さん。俺の評判とかとどうでもいいからちゃんと言えよ」

「さあどうしましょう。今でさえ危険なSNSの特定準備をしていますのに」

「当然の対応だ。殺害予告とかほんと凄いぞ。更識やイギリス政府にも協力取り付けたんだから徹底的にやらなきゃ」

「ほどほどにして下さいね、疾風」

「………………」

「お返事が聞こえませんわね」

「……善処します」

「まあっ」

 

 分かっていたことだけど辛いんだよ。

 セシリアの苦しみ悲しみを直に感じた身としてはさ。

 

「元気なのは良いけど、もう少し弱音見せても良いんだぞ。ほんと無理するなよ」

「こんな心ない誹謗中傷など、オルコット家を継いだ時に比べたら屁の河童ですわ。オホホホ」

「それはそうだろうけどさ」

「皆さんも居ますし、疾風も居ます。背負うと決めましたから。それに……」

 

 腕を組んでこっちに寄りかかりながらセシリアはリラックスした声を出した。

 

「一緒に背負って下さるのでしょう?」

「おう、頼りにしろ」

「ええ」

 

 お互いの体温を感じながら見つめる先は戦場だったIS学園の海。

 もはや戦場の残滓はなく、穏やかな波が形を変えて漂っている。

 この景色を俺たちが守ったと思うと、なんともジーンと来る。

 

「……疾風」

「はいよ」

「フランチェスカ・ルクナバルトは……叔母様はわたくしのことを、愛してくれていましたわよね」

「………………形はどうあれ、な」

 

 あの女は最後までセシリアの愛を否定しなかった。

 どれだけ事実を突き付けても、頑なに自分がセシリアを愛していることだけは貫いた。

 

「ええ、どのような形であれ。小さい頃のわたくしを叔母様は支えてくださりましたわ。今のわたくしがあるのは叔母様と過ごした日々があったからこそ。わたくしは叔母様を許せません。ですが愛してくれたことだけは、どうしても否定しきれないのです」

「……それはお前が決めていい。俺は絶対に認めないけど、お前の心まで否定するつもりはない」

 

 人それぞれで認識は違ってくる。

 俺の知らないフランチェスカをセシリアは知っている。葬式の日、フランチェスカが金目的で近づいてきた人たちに怒りを発していたことは俺も知っている。

 行き過ぎた愛であっても、セシリアがどう受け止めるかは彼女の自由だ。

 

「叔母様が言っていた、お父様がお母様を裏切ったという言葉に嘘はないでしょう」

「そうだな、少なくとも嘘には見えなかった」

「それを加味して考え続けましたわ……やはり叔母様の真実を、わたくしは信じることは出来ません」

 

 宝石のような蒼い瞳はブレることはなく俺の目と合った。

 美しくも強い意志を宿した瞳。そこに一切の迷いは映らなかった。

 

「お父様とお母様は確かに人様から見ればお似合いではなかったかもしれない。でも、それでも互いを愛していた。そこに嘘はなかった。わたくしそう思うのです」

 

 根拠はありませんけどね。と笑みを浮かべながら言ったセシリアの姿は美しかった。

 

 誰よりも強いセシリアの母、ソフィアさん。そして気弱だけど、それでも妻を支えようとしたソーレンさん。

 確かに俺から見てもお似合いと太鼓判を打てる自身はない。だけど……

 

「他ならぬお前が言うんだ。それが真実だろう」

「ええ。だからこそ、そんな両親に恥じないわたくしであり続けますわ。たとえ険しい道であろうとも。貴方と、疾風・レーデルハイトと一緒なら乗り越えられる。わたくしはそう信じます」

 

 傷つけられながらも。誰よりも気高く美しい。

 

 ノブレス・オブリージュ。

 言葉以上の誇りを胸に、セシリア・オルコットは歩み続けるのだ。

 

「いやはや。やっと並び立てると思ったのに。セシリアのデカさは際限がないや」

「世界の英雄様は気が弱いですわね」

「卑屈な性格なものでね。なら俺も負けないぐらいビッグにならないとね。サプライズニュースもあるし」

「ニュース?」

 

 そう、とびっきりテンションがぶち上がるニュースだ。

 

「さて問題です。ニュースとはなんでしょう」

「世界中からラブレターが来たとか?」

「ハズ……れでもないがそうじゃない」

 

 実際ほんとに来たのだという。

 世界の英雄効果は絶大で一般人から政治家、富豪の娘から冗談か本気かわからないラブレターが来たのだという。

 IS学園が水際で止めてくれたから俺の元には来てないが、ラブレター騒ぎがあったことを会長から聞いた。

 

「正解はね……イギリスから国家代表にならないかというお申し出が来たのでした!」

「それは本当ですの!? おめでとう疾風!」

「ありがとう! しかも来たのはついさっきなんだ」

 

 俺は書類上イギリスと日本のハーフで日本国籍だが。戦争を終わらせた功績として会長と同じ自由国籍権を取得したので、国籍問題はクリア。

 現在の日本代表候補生の件はIS委員会を通じて、俺の意志を尊重した上で協議するとのことだ。

 

「政府は国のイメージアップの為に空席になったイギリス国家代表に俺を当てたいんだってさ。いきなり来たから迷ったけど。いま俺が話題になって人々の希望になれるなら、インフィニット・ストラトスのイメージ回復になるなら受ける価値はあると踏んだ。あと、お前の評価も回復すれば御の字だしね」

「疾風、貴方という人は」

「ハハッ。元国家代表であるフランチェスカ・ルクナバルトを打倒したことも後押しされてね。資格は充分あるってのが政府の見解。俺がオッケー出したら直ぐに手続きしてくれるって」

「そうですか……疾風がついに国家代表に……」

 

 嬉しさを滲ませるセシリア。だがその表情には隠れた陰りがあった。

 

 第二回モンド・グロッソ決勝戦でした約束。

 いつか2人で国家代表になり、モンド・グロッソに出ること。

 

 セシリアはイギリス国籍にしてイギリス代表候補生。

 もし俺がイギリス国家代表になれば、2人でモンド・グロッソに出ることは叶わない。

 

 だけどそれは仕方ないと納得する。

 レッテルを貼られた自分ではどうあがいても国家代表になれない。代表候補生の名と、ブルー・ティアーズを剥奪されないだけマシと思おう。

 

 今は恋人の門出を祝わなければ……

 

 なーんて考えてるんだろうけど、そうは問屋が下ろさない! 

 

「まあその申し出は蹴ったんだけどね!!」

「え、ええ!? どうしてですの!? だって国家代表は貴方の夢では」

「あんなチート頼りのド腐れ国家代表の恥に勝って貰う国家代表の座なんて嬉しくない! だからこそ言ってやった。いま残ってるイギリスの猛者を集めて誰が強いかを決めようと! ついでにそれを放送してイギリスのイメージアップを図ろうってね!」

 

 通信越しだったから協議するとは言ってたけど。イギリス国家代表決定線開催は前向きには賛成を頂いた。

 

「スカーレット・ナイツの団長やウェルキン先輩。あと母さんも出場するんだってさ。みんなに勝って、胸を張ってイギリス国家代表になる。でもそれだとお前との約束も果たせない……だから打開策を打ってきた」

「打開策?」

「そうっ! モンド・グロッソに副国家代表、2人目の国家代表制度を導入させる!!」

 

 これまでのモンド・グロッソは1ヶ国に付き1名の国家代表が国の威信をかけて戦う大会だった。

 2人目が出るという発想は構想当初からあったのだが。ISコアの総数や技術練度の問題から構想は見送られていたらしい。

 

「前々から思ってたんだよね。国の威信をかけて競い合うのに1名しか居ないから技術の得手不得手で差が出ちゃうのはさ。オリンピックなんて何十人が一丸となって戦うんだから、ISだって1名ぐらい増やすべきだって」

「割と無茶ですわね」

「そうなのよねー。流石にこれは要協議案件だし、来年の第三回モンド・グロッソにはどうやっても間に合わないって言われたよ………でもこれが実現したらセシリア、お前と一緒に肩を並べて世界の頂点を掴むことだって夢じゃない!! トーナメントバトルも個人戦の他にタッグマッチなんかも出てくるかもしれない! 夢が広がるってものだ! ワクワクするだろう!!?」

 

 キラキラどころかギラギラ光るレベルで目を輝かせる幼馴染を前にセシリアは意表を突かれるも、直ぐに笑みを浮かべた。

 

 何処までもインフィニット・ストラトスのことを考え、そして何処までも自分のことを考えてくれている。

 だからこそ、そんな彼だからこそ。セシリア・オルコットは疾風・レーデルハイトに恋をしたのだ。

 

「あ、えっと。なんか勢いで喋っちゃったけど、余計なお世話だったりしない? コンビで出るってことは互いに優勝を争うとかそういうのではないし。でも俺は2人で優勝したらそれはそれで素敵だなって思ったり………」

「アハハハハハ!」

「えー!? なんで此処で笑うんだ!?」

 

 それでいて何処か自身がなくなる時がある。

 そんなところも好きだと言える、ベタ惚れな自分に思わずセシリアは笑った。

 

「ありがとう疾風。わたくし、とても嬉しいですわ。いつか2人で頂きに登ることを。セシリア・オルコットの名において誓いますわ」

「ああ、いつか2人でブリュンヒルデになろう!」

「貴方の場合は男ですからシグルドではなくて?」

「え、あー。いやでもブリュンヒルデが良いな俺は! そこは伝統というか! 響きが良いというか!!」

 

 なんか名称についても議題にあるらしい。

 開口一番ブリュンヒルデでお願いします! と言ったから通ると良いが。

 

「何はともあれ。先ずは国家代表決定戦ですわね! 頑張って下さい疾風! わたくしもしっかり応援しますわ!」

「あえ?」

「え? なんですの?」

「いや、お前も出るんだぞ国家代表決定戦」

「………えーー!!?」

 

 いやえーーはこっちの台詞なんだけどな? 

 

「むしろなんでお前が出ない感じなのよ?」

「だ、だって。わたくしが世間でどうなってるかご存知でしょう?」

「セシリアは国家代表になりたくないの?」

「それはなりたいですけども」

「なら問題ないな! 悪評? 誹謗中傷? 知るかそんなもん! 文句ある奴は全部俺がぶっ飛ばしてやる! 女王陛下だろうが物申してやるぞ!! IS委員会とイギリス政府には条件を飲まない場合日本国家代表になってやるって物申してきた!!」

「ガッツリ脅迫してきましたわね!?」 

 

 あたぼうよ! 

 惚れた女の為なら世界も敵に回す男! それが疾風・レーデルハイトだ!! 

 一国家やIS委員会に怯む俺ではなーい!! 

 

「俺は第二次形態移行(セカンド・シフト)したブルー・ティアーズと戦いたい! 正々堂々、互いの力を出し切ってセシリア・オルコットに挑みたい! じゃないとイギリス国家代表なんて物に欠片と価値なんかない! なんたって、お前は俺の生涯のライバルなんだからな!!」

「っ〜〜!」

「お前のことだから前もって先手打たないと尻込みするかと思ってさ。もし本当に嫌ならぁ!? 突然のハグ! あれなんで顔ちかんー!」

 

 続く言葉はセシリアの口づけで遮られた。

 

 しかも長い! この状態で誰かに見られたら言い逃れが出来ない! 別に扉も施錠してないし! 

 首をガッチリホールドされて逃げ場がない。いや逃げる気は毛頭ないけども……

 

「プハッ、セシリアさ」

「大好きです! 愛してますわ疾風!! もう本当に大好きですわっ!!」

「こ、声がデカい! むーー!!」

 

 2度目が来た!! 

 セシリアなんか情熱的過ぎないかな!? 

 嬉しいけども! 嬉しいけども!! 

 

 そっから30秒ほど続いた2回目のハグとキスが終わった。

 流石に興奮しすぎたのかセシリアの顔が真っ赤でほっぺに手を当てて照れている可愛すぎる!! 

 

「フフフ、ウフフフフ」

「セシリアさん、不意打ちが過ぎます」

「前のお返しと思いなさいな。言っておきますけど、このセシリア・オルコット! 愛の大きさでも負けるつもりはなくってよ!!」

「……言うじゃないの」

 

 正直気圧されかけたが。俺だってセシリアへの愛は誰よりも負けないと自負している。

 例えセシリアから俺に向けられる愛だったとしても、いやだからこそ負けるわけには行かないってもんだ。

 

 え? バカップルの道を進んでる? 

 五月蝿いね! 誰と誰の子供だと思ってるんだ! とっくに覚悟完了だよ!! 

 

「では疾風。イギリスにて決着をつけましょう! わたくし、セシリア・オルコットとリベレイト・ブルー・ティアーズとの円舞曲(ワルツ)で!!」

「望むところだ! 俺のスカイブルー・イーグル・ヴァリアンサーで迎え撃つ! なあイーグル!」

《おっと、狸寝入りしてたが起きて良い感じかな? 勿論勝つのは俺たちだセシリア嬢!》

 

 気を利かせてくれてありがとね相棒!! 

 闘志充分! 今からワクワクしてきた! 早くバトりたい!! 

 

「ですがその前にわたくしと疾風の愛の勝負を続けましょう。先手は譲らせて頂きましたので、次は疾風の番ですわよ!」

「ええ!? まだ終わってなかったの!? 結構お腹いっぱいなんだけど」

《よし、本格的にスリープモードに入る。グッドラック》

「イーグルさん!?」

「疾風、情けないことおっしゃらないで下さいな。殿方たるものお相手を満足させませんと。とあるドラマで言っていましたわ。やられたらやり返す、倍返しだと」

 

 倍返し……ということは最低1分間はやるのか。

 大丈夫かな、理性持つかな……それより誰か来ないか心配だな。でもフランチェスカ居なくなったからもうバレても良いのでは? いや駄目だな、まだ駄目、まだその時ではない。

 

「疾風」

「ハイ」

「レディを待たせるものではなくてよ」

「………愛してるセシリア。これからもずっと」

「次第点、ですわね」

 

 そういう彼女は嬉しさを隠さなかった。

 満点と言わないのは彼女の性格故だろう。

 

 夕焼けの屋上、三たび影が重なった。

 先程よりも情熱的に、それでいて想いを込めて。

 

 これから先。IS学園戦役を超える脅威が待ち受けるかもしれない。

 だけど怖くない。IS学園のみんなが居る。大好きな家族が居る。

 そして愛する恋人が居る。

 

 どんな脅威だって立ち向かって、乗り越えてやる。

 俺たちの夢を叶える為に飛び続けてやる。

 

 あの無限に続く、成層圏のその先まで……

 

 

 

 

第1部【スカイブルー・ティアーズ】

 

 

──Fin──

 

 

──Next Stage──

 

 

──To Be Continued──

 

 





 どうも。書き切りました。作者のブレイブです。

 良い最終回だった。そんな気持ちになってます。まだ終わりませんよ!まだまだまーだIS二次は続きます!
 少し長いあとがきの最後に今後のこと書いてますので。最後だけでも宜しく。

 第1部、スカイブルー・ティアーズのテーマ【女尊男卑】

 IS原作や他の二次創作でもそこまで注目はされないIS世界の根底にある闇、女尊男卑。
 3巻の水着を買いに来た一夏に絡んできたミサンドリーの女。あれを更に醜悪にしたらどうなるか、結果的にISによるとんでもない戦争に行き着きました。我ながらスケールがデカい。
 その極地が第1部ラスボス、フランチェスカ・ルクナバルト。強大でありながら大きすぎず、視野が狭い小物であり悪党。無自覚な悪意と愛憎を表した彼女の最後は自滅。
 最後最後まで思い通りにならない、そんなキャラクターでした
 
 それに立ち向かう【本作主人公の疾風・レーデルハイト】

 一夏とはコンセプトが真逆で、それでいて似たような反骨心や優しさ。そして生粋のISオタクというキャラ付け。
 一夏とのW主人公。このスタンスだけは崩さずにやっていきました。疾風がかっこよく書くのは当然として、一夏もかっこよく書きたい、それこそ疾風を食う勢いでかっこよく書きたい!!
 今後の展開では更に織斑一夏という魅力を出していきたい、そしてそれに負けないぐらいカッコいい疾風・レーデルハイトを展開していきたいですね!!

 【ヒロインに抜擢されたセシリア】

 コンセプトとして、初期セシリアをベースに気高く、綺麗で、かっこよく、それでいて可愛い! 原作とはちょっと違う、疾風と一緒に過ごすセシリアという造形を心がけました。
 何故自分がオルコッ党になったのか、それはもう思い出せませんが。セシリアメイン回である11巻、エクスカリバー編が控えております。
 絶対に、絶対に面白く書いてみせます!こうご期待下さい!!

 【今後の展開について】

 これからは第2部、原作を最後まで書き切ります。
 残念ながら最終巻は打ち切りになりましたが、そこは二次創作作家の腕の見せ所です。

 ですがその前に!!書きたい物があります!

 【IF もし疾風が一夏と一緒にIS学園に入学していたら】

 これです!3巻から始まって抜けてしまった第1巻と第2巻を書きます!!
 そもそも何故1巻からではなく3巻から書いたのか。当時ハーメルンを知らずIS二次を見ていた頃、3巻場面で終わってしまう作品が多かったんですよね。
 私もいざ書こうと思ったのですが。原作をどう変えれるのか、テンプレどうりにしか書ける気がしない、もっと違う斬新なのを書きたい。そう考えて3巻スタート、ISを動かせず苦悩する疾風という展開になったのです。

 ですが今なら書ける気がする! いや書きたい!! そう思えるようになったのはいつも読んでくれた読者さんのおかげと言えるでしょう!!
 本編に影響する感じではありません。こっから読んでもいい、そんな気楽な感じで書いていこうと思ってます。
 お楽しみに!!

 【最後に!!】

 ここまで読んでくださった読者様!
 応援、コメント、高評価ありがとうございます!!

 これからもエースコンバットとの二足の草鞋で更新が遅くなることもあるかもしれませんが!
 最後までま応援してくださるとありがたいです!

 これからもブレイブの作品をよろしくお願い致します!
 高評価やコメントもバンバン宜しく!(最後に乞食するなー!)

 ではでは!!
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