IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
我ながら細かい誤字が多いなと感じた秋の頃。
皆様、誤字報告本当にありがとうございます!感謝感激でございます。
止まらないスピードで、想いが溢れていく。
興奮が止まらない。撃った銃弾が、撃たれたレーザーが、全てスローに流れる。
銃弾とレーザーが交差する、撃たれた3発の銃弾のうちの一つがレーザーと擦れて溶けて弾けた。レーザーが来る、目の前に迫る青白い光、直撃コース。
スピードが戻った。
「っ!」
首を反らしてレーザーを回避、しきれずシールドが少し減る。
高機動パッケージのスラスター点火、向かうのはセシリアではなく空。シールドの天井まで一気に吹かす。
しかし到達する前に足を撃たれ、体勢を整えようと操縦桿とペダルを一次マニュアルに。
アラート、上から既に射出されたビットからレーザーが光った。
「チィッ!」
回避するが次の手が来る。反応は四方から、包囲から抜け出すために全力でブースト!
パッケージに物を言わせて地面めがけてパワーダイブ、からの地面スレスレで回避機動!
読まれてた。高低差による有利を取ろうとしたが逆に高低差不利を押し付けられた、ビットが来る!
射出されたレーザービットは4基。全部投入してきやがった!
文字通り四方から来るレーザーが地面を焦がす、だが当たらない。本命は。
「そこっ!」
「ぐっ!」
本体からのスナイピング! 肩の盾が間に合った! 正に追い込み漁、いや追い込み猟か。
本気だなセシリア。遊びなしでボコしに来てる。
両手の焔備でビット、そしてセシリアを狙うが当たるはずもない。お返しのレーザーを躱し、盾で守りながら地上を滑る
「さあ、踊りなさい! わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる
「なにそれ決め台詞!? カッコいいなオイ! 俺も今度真似していい?」
「軽口叩けるぐらい余裕なのですわ、ね!」
「うわー! 別に挑発の意味じゃないんだけど!?」
レーザーの密度が増えた、気がする!
純粋な褒め言葉だったのに! これが日頃の行いって奴か! 是非もないね!
「あいって!?」
ついに当たっちまった! うわシールド結構減るのね!
ダメダメダメ止まるな止まるな! 止まったら蜂の巣待ったなし!
「よく躱しますわね! とても初心者とは思えませんわ!」
「ありがとよ! みっちり勉強やらイメトレとかしたからな!」
ライフルでビットを狙うけどやっぱ当たらない!
右手をタワーシールドに変えて防御を固め、アリーナ外周を飛行しながら徐々に接近。
これならビットからの射撃ルートを限定できる。だが逆に回避がしづらくなった。
「高機動パッケージに変えたのは間違いなのでは! 動きが単調ですわよ!」
「んなことわかってらぁ!」
予測線にビット4基のレーザーが殺到。
タワーシールドと肩部シールドでレーザーを弾きながら猛進。上下運動で回避を試みるが、時折来るライフルからの高出力レーザーによるノックバックがキツい。
打鉄にしてマジでよかった。肩部シールドは特殊装甲板を重ね合わせた仕様で、耐久限界が来たシールドと新品を入れ替える継続能力に優れたシールドだ。しかし耐久枚数限界が来ない訳ではない。いずれ限界が来る。
更に防御型ではあるが故にやはり速度が出ない。だからこその高機動パッケージ。元々高機動レース仕様だから速度は出る、だが曲がりづらいのだ。
これでも本来の高機動パッケージより出力を抑えて機動性は上がっている。それでも中々のじゃじゃ馬。
あとは練習機故の反応速度の違いだ。これが専用機だったら小回りに振り切った仕様にしたのだが。やはりフィッティングをしていないから回避動作に少し遅れが出る。
それこそ1秒にも満たない極僅かなラグだ。しかし肉体の延長線上異常に動かせるIS。ましてや実力者相手の対戦だと致命的な隙を生む可能性がある。
セシリア相手には不十分と判断した俺は打鉄より早く小回りが利くラファールではなく。硬く、直線距離が速い打鉄鉄風をセレクトしたのだ。
《アラート! 熱源接近!》
「うおっ! ミサイル!?」
迫りくる2本のミサイル。
ライフルで撃ち落としにかかるがミサイルにしては有機的な動きでヒョイヒョイと避けられる
「当たらねえな! これがBT操作のミサイルか!」
「爆ぜなさい!」
三枚の物理シールドを固めて防御。シールド越しの爆炎と爆圧。レーザーとは比べものにならないレベルのノックバックでアリーナシールドに背中を打ち付ける。
再度ブルー・ティアーズの腰にマウントされたミサイルビットが火を吹く。今度は4発!
外周移動は悪手、中央のランダム機動に移行するが、今度は全方位からレーザーと高火力ミサイルが迫ってくる。
控えめに言って防戦一方、控えめに言って大ピンチ。
だが俺の表情に陰りはなく、むしろ歯をむき出しにして笑っていた。
ーーー◇ーーー
「反則すぎるだろう! なんだあのレーザーの雨あられは!」
「確かにヤバイけど、あれは反則じゃなくて正当」
「そんなことは分かってる! 言葉の綾だ! 一夏も次はあいつの相手をするんだぞ! まだ終わらないのかフィッティングとやらは!」
「もうすぐなんだけど、そのもうすぐが遅いんだよ」
フィッティング進行率は70%。そっから更に遅くなったのだ。
「疾風も疾風ですげえよ。あの猛攻を避けきってる。初見であそこまでやるなんて、俺には無理だ」
「やる前から弱気になるな」
「分かってる。だからこそ負けられないって思うんだ」
箒と話しながらも一夏は画面から目を離さない。
疾風の言う通りセシリアの動きを観察している。
正確無比な遠距離射撃。
多角的に迫るレーザービット。
自由自在に迫るミサイル。
これを突破して一夏は剣を叩き込まなければならない。疾風のように射撃武器や盾を使わずに。
何故なら白式には近接ブレード1本しかないのだ。
流石に驚いたし、無謀だとも思った。しかもバススロット、ISの容量がこの剣1本でいっぱいになっている。
手持ちなら大丈夫だから射撃武器を持とうかと考えたが、姉である千冬から待てが入った。
「お前が射撃しながら戦うなんて器用なことが出来ると思うのか?」
開幕全否定、つくづくこの姉は人の心がないと思う。そして反論しようと思ったらこれ見よがしに専門用語やら難しい言葉のオンパレードだ。
なんだよイチゼロ停止とかアブソリュート・ターンって。とりあえず難しいことは分かったけどこれなら疾風の教え方のほうが上手いぞ我が姉よ。
人って褒めて伸ばされたほうが頑張れるんだぜ、疾風はよく褒めてくれたよ、それなのにこの鬼姉は……なんてのが顔に出たのだろう、出席簿の一撃が脳天に直撃。
シールドバリアが発生しないギリギリの力加減というなんとも無駄にテクニカルな攻撃だった。
だが千冬の言葉は正しかった。
疾風との練習でも射撃練習は上手く行かなかった。止まってる状態でさえ、2回に1回は当たらなかった。動きながらなんてとてもじゃないが形にならなかった。
だから疾風からも銃はサブで本命は刀で戦う方が良いと言われていた。
そしてそれは半分間違いだと気づく。セシリアは疾風の言う通りスペシャリストだ。
射撃が上手いということは、逆に対射撃戦も上手いということ。現に疾風の射撃が全く当たっていないのが何よりの証明だ。
なら刀だけで戦えるのか。疾風をして強敵と言えるセシリアに。
負けるつもりなど毛頭ない、全力で勝ちに行く。それでも一抹の不安が引っかかった。
そんな一夏に千冬は去り際にこう残した。
「余計なことは考えるな。いま自分が出来ること、得意な物を武器にしろ。一つのことを極める方が、お前には向いているさ。なにせ、お前は私の弟だ」
「千冬姉……」
思い出す。織斑千冬はモンド・グロッソにおいて1本の刀のみで世界最強の名を手にしたことを。
自分と同じ高機動近接型IS。暮桜と得物である刀、雪片と共に。
「精一杯やれ。勝ち負けはその後に考えろ。余計なことを考える余裕などないだろう、お前は」
何処までもその通りだ。
難しく考えれるほど自分は頭も良ければ容量も良くはない。
だからこそ見極める。疾風とセシリアの戦いから、自分の戦いへ繋がる何かを。
目を凝らすなか、一夏はふと気付いた。
「なあ箒。いまのセシリアって本気だよな」
「私にはそう見えるが」
「なら手加減する必要なんかないよな」
「何を言っている?」
「……セシリアってビットを撃つ時、一度もライフルを撃ってなくないか?」
確証はない、だが活路が見えた気がした。
その瞬間、白式のフィッティングが終わる。
ーーー◇ーーー
「レーデルハイトくん、劣勢ですね」
「動きと判断は悪くないが、それでもオルコットの制圧力が上回ってるな」
アリーナの管制室で千冬と真耶が2人のバトルをモニターしている。
2人はIS学園の警備担当で、千冬はその警備主任。何かがあった時のための予防線、その対処として管制室で異常がないかを見張っている。
「オルコットさんも遊びがないですね」
「本気なのだろう。レーデルハイトは頭の回転がいい。無策で突っ込むことはないと理解している。だから絡め手や反撃が来ないよう封殺に入っている」
「レーデルハイトくんって成績はどれほどでしたっけ」
「順当に試験をすれば筆記は学年2位。IS技能試験も上位に食い込んでいる」
「首席はオルコットさんですけど、凄いですよね。男性でIS筆記満点って今の御時世で普通ないですよ。私このまえ少し間違えましたし」
「しっかりしろ新人教師」
山田先生20歳。色んな理由込みでIS学園教師に就任。
「練習機、しかも癖の強いパッケージ装備であれだけ動けるのも凄まじいです。今だ大きい被弾は一度だけです。しかし動きがなんか変則的な時がありますが……」
「あれは時々マニュアルで動かしてるな」
「そんな目茶苦茶ですよ。あの勢いでセミオートとマニュアルをガチャガチャ変えながらって私でもやりませんよ」
観客の生徒から見たら疾風は無我夢中で逃げ回ってるように見える。だがそれだけで本気のブルー・ティアーズのビットから逃げ続けれる訳もない。
イメージ・インターフェースは確かに操縦者の動きをトレースする、だが完璧にトレースするには専用機、又は搭乗者の経験をデータ化したメモリーチップを使わなければならない。
今の打鉄は疾風にとってレベル1、それをイメージだけで動かすだけでは攻撃を捌けない。だからこそのマニュアル。セミオートのイメージで足りないところはマニュアル。マニュアルが追いつかないところをセミオートのイメージで補い合う。
普通は出来ない、というか必要がない。そもそもこのやり方はマニュアルもイメージも未熟の中途半端であることの証明。技術力によるゴリのゴリ押しである。
だがそれ故に。
「本格的にマニュアルを会得したら化けますね」
「イメージ・インターフェースの反応も冴えている。双方ともに優秀だな」
「先輩がそこまで言うなんて珍しいですね」
「忘れろ。少し口が滑った」
我ながららしくない。
疾風は確かに優秀だが卵も卵。発展途上にもなっていない、まだ殻を破りかけの雛鳥だ。
(似ている……)
見れば見るほど、かつての恩師に似ている。
だがあり得ない、そんなことは絶対にあり得てはならない。
「織斑先生?」
「なんだ? こっちよりあっちを見ていろ。そろそろ仕掛けそうだぞ」
ーーー◇ーーー
「10分。よくぞ此処まで躱し切りましたわね」
「今も躱してるよ!」
気付けば10分経っていた。嘘だろ10分しか経ってないのか、体感30分だったぞ。
あれからセシリアの蹂躙撃は留まることを知らず、タワーシールドも破損。打鉄の肩部シールドは70%まで破損し。被弾も3回増えた。
このままでは遠くない未来削り殺されてアボンだろう。
「レーデルハイトくんさっきから逃げてばっかだね。全然攻撃出来てない」
「仕方ないよ、だって相手は専用機だし」
「勝敗なんて決まってたようなもんだよね」
「なんかつまんないなー」
試しに集音性上げてみたらギャラリーからこんな反応。
分かる、分かるよ。俺もモンド・グロッソ決勝戦でフランス代表相手に防戦一方だった暮桜を見てつまんないなどと言ったもんだ。
「ニヒッ」
奇しくも同じシチュエーション、ではないかもしれないが似たような展開に心が躍る。
《白式のファーストシフト完了》
来る前に簡易接続していた白式から報告。
そうか、もう終わったか。随分遅かったなオイ。
んじゃあ、そろそろ良いところ見せないとな。
頼むぞ打鉄。日本が生んた第二世代の傑作機よ。俺とともに勝ちに行こうぜ!
焔備をリコールでバススロットに戻し、グレネードランチャーをコール。
上空に向けて装弾数6発全部を撃ち放った。
「小さかったら撃ち抜けないとでも!」
「いや、どっちでもいいさ」
ビットが直ぐ様迎撃。しかし撃ち抜かれたグレネードから出たのは爆炎ではなく煙だった。
「煙幕!?」
撃ち抜かれなかったグレネードも起爆。ジャミング物質を含んだチャフスモークがアリーナ中央に煙の塊を作り出す。
「ジャミング付きの目眩まし。賢い手ですわ、視線とセンサーさえ遮れば狙いもつけられない。ですがIS同士なら予測位置は立てれますわ!」
センサーの演算出力を上げてIS自体の熱源をサーチし、ビットを再配置する。
だがその必要はなくなった。
「一瞬さえ止まればなぁっ!!」
「速い! ですが!」
煙幕を突き抜けて上に直進! 接近された、だがセシリアのビットの方が速い。
4方向からレーザー、そしてミサイルが発射されて。狙いは完璧、3個の盾もこれで終わる。
「ビックリドッキリウェポン! コォォォォル!!」
なんちゃって音声認識で出たのはISサイズの掌ほどのボールが2つ。それを左右斜め上に投げると、ボールが破裂してプラズマネットが発生。
レーザーは絡め取られ、触れたミサイルが爆発した。
「なんですのそれは!?」
「とっておきのレーデルハイト製隠し玉だ!!」
タワーシールドリコール、再びコールした2丁の焔備で威嚇射撃をしつつ、セシリアに接近。
セシリアもすかさずライフルで応戦。ビットからの射撃は……ない。
射程距離に入った! ライフルで絶えず攻撃しつつ接近。セシリアは回避しつつ距離を離そうとするが、スピードは打鉄鉄風が上だ。
「どうしたどうした! 制圧力減ってきたなお嬢様!」
「くっ」
2丁の焔備での射撃を回避しつつスターライトMkⅢで応戦するセシリア。だが先ほどまで詰将棋のような苛烈な攻撃はない。
ビットからの射撃も回数が減り、空間の余裕が出来てきた。
そして確信する。ブルー・ティアーズの第三世代兵装の穴を。
「やっぱりな。お前、ビットのコントロールに脳の大部分を使ってるな。ライフルとビットの同時攻撃が出来ないんだろ!」
「くっ!」
目は口ほどに物を言う。
いつも政界の重鎮や金の亡者と戦う時に身につけたポーカーフェイスで隠すこともなくセシリアは苦虫を潰した。
「ビットを使ってるときは、本体の操作も制限される。ビットを使いながら高機動戦闘は出来ない! それほどBT操作技術は脳領域を圧迫する! そして!」
セシリアがスターライトMkⅢを撃つと同時に急ブレーキ。からの背面ブースト。
向かう先、いや背後にはBTビット。
焔備をリコールし、IS用十文字槍、錦をコール。
力いっぱい振り抜き、BTビットを砕いた!
「なっ!」
「BTビットは必ず1基、俺の背後に置いている。人の視界の外である背面、そこは人にとって一番の死角だ。ISにはそれは当てはまらないが、それでも伝達速度は下がるよな。普通なら!」
「あなた、ISの全方位視界を使いこなしているとでも!?」
ISは事実上死角がない。後ろを見ようと思えば見れるし、右に目を動かなさくても右を見れる。
やろうと思えば前を見ながら後ろを見る、全方位を一気に見るなんてことも出来る。
だが人は固定観念から出来ると分かっても難しいし、実際やってみても頭で理解できずになることが多い。熟練の乗り手でも苦手という人が居る。
全方位視界は、それこそイメージ力に比例する。
後ろが見えて当然、全方位が見れて当然と思えば出来る。言うは易し、行うは難し。
実際俺だって後ろを見ることは出来ても振り返らずに見る程度だ。
だから意味深に笑うだけ、ハッタリ上等だ。
そしてハッタリは機能した。動揺がビットに伝わり、動きが簡単になる!
焔備ではなくショットガンを選択。
一番近いビットを狙い、撃ちまくる。中距離故に拡散するが、数を撃てば密度が上がる。
BTビットを穴あきチーズにして爆散だ!
「やってくれますわ! ですがせっかく距離を離しましたわね!!」
アウトレンジはセシリアの独壇場。
機体を立て直したセシリアは再びビットに指示を飛ばす。ミサイル発射。左右からレーザービットの射撃。
もう二度と接近される愚を犯さないと、方位陣を再び構築する。
だが問題はない、ああないとも。
「近づけば良いだけだからな! イグニッション!!」
放出したエネルギーを外部ではなく内部に回し、圧縮、再放出。ISが使えるチャージブースト。会得にはそれなりの技術とイメージを必要とするその技法の名は
「
今までとは桁違いの超加速が打鉄鉄風を前に押し出す。
直線に特化したパッケージも相まって瞬く間にセシリアとの彼我の距離を縮める。
レーザーを置き去りに、迫るミサイルをタワーシールドでぶっ叩いてそのまま破棄。両手に錦を握り、力の限り突き出した。
「オラァッ!!」
「ああっ!」
セシリアに初めてのダメージ。だがまだ終わらない! ショットガンも追加だ!
「もう離さねえぜ!」
「こんのっ!」
背後からのビットの射撃は打鉄のシールドを背後に当てて防御。錦とショットガンの二刀流でセシリアのブルー・ティアーズに確実なダメージを刻んでいく。
「このままでは、くうっ!」
腰に戻していたミサイルビットがアクティブ。
至近距離からの発射は自爆のリスクがあるが今はどんな手段を使っても距離を離すという覚悟だった。だが!
「それを待ってたぁぁ!!」
「なあっ!?」
ミサイルビットが動くと同時にハイブースト。
錦とショットガンをしまい、焔備2丁をミサイルの砲身に突っ込み、引き金を引いた!
砲身内部で暴れ狂う弾丸が発射状態のミサイルに着弾、ミサイルビットを起点に爆発。両者もろとも吹き飛ばした。
「あぁぁ!! な、なんて無茶苦茶なことを!!」
「何もかも劣ってるんだ! 奇策をふんだんに使わないと勝てねえだろ!!」
「これは狂気と言うんですわ!」
「だが効果はあったろ!」
だがセシリアは機体に密着していた分、シールドバリアを超えた先の超防御機構、絶対防御を2箇所も発動した。
絶対防御は普通のシールドバリアと比べて多くのエネルギーを消費する。
こっちも死に体だ、だがそれは向こうも同じ。体勢が崩れて精神も立て直せてない。今だ、今攻めろ!!
「これで終わりだ!!」
「負けるものですかぁぁーー!!」
スターライトMkⅢの砲口が光る。
打鉄のシールドを前面に、錦を力の限り突きだしてトドメを。
《後方、熱源!》
「は? ぐうっ!!?」
前方からのレーザーは防いだ。だが盾に着弾したと同時に背後からの2本のレーザーが突き刺さる。
後ろを見るとビットの砲口から薄く煙が上がっている。
待て、待て待て待て。今同時だったよな。3方向同時から来なかったか!?
セシリアも目を見開いている。驚いて目を見開いている。
フェイクだった? いや違う、まさかこの土壇場で同時射撃をやったのか!!?
だがまだシールドは残ってる、これを突き出せば!
「これで決まれっ!!」
「っ! インターセプタァァァーー!!」
セシリアの渾身の音声認識コール。右手にISサイズのナイフが出現。突き出した錦をそらし、俺とセシリアの身体がぶつかった。
「チェックメイト、ですわ!」
「……本当にお前は」
凄いやつだ、まったく!
再び2本のレーザーが突き刺さった。
ーーー◇ーーー
「疾風、見間違いじゃなかったらなんだが。オルコットの奴、最後らへんビットと同時に射撃してなかったか?」
「いやーごめんごめん! 強くしちゃったわ!」
「おーーい!」
タハーとなんの悪びれもなく笑う俺に一夏は白式の手を使って全力ツッコミ。うむ、イメージがISに伝わって大変宜しい。
勝負はセシリアの勝利に終わった。
俺もまさかあの土壇場で同時射撃出来るとは思わなかったのよ。BT適正値というのだろうか、俺との戦いで火がついて適正値上がったんだろうな。まったくこれだからマインド系は。
「フィッティング終わったみたいだが……おーー」
名前にしては灰がかった銀色だった白式は一夏とのフィッティングを終え、その名に相応しい純白の姿となっていた。
白い装甲を基準に青、そしてワンポイントに黄色というトリコロール。
角ばっていた体躯は本人に馴染むかのように流線型に変化。そして最大の特徴は高機動型に違わぬ大型のスラスターウィング。
スラスター口には黄色のフィン状の突起が突き出ていてこれでもかとスタイリッシュと速さを感じさせてくれた。
要するに超カッコいい。
これが専用機か! すげー羨ましいぞ一夏!!
「疾風。なんか今までにないぐらいに目を輝けてるけど。ちょっと怖い」
「いやーとても良いISじゃないか。見惚れるねえ、痺れるねえ。ちょっと触ってもいい? てか中も見ていい? フラグメントマップとかその他諸々色々とかフヘヘへへへ」
「なんか気持ち悪いぞ疾風!?」
「邪気を感じた! 一夏に近づくなモノノケめ!!」
あれ何か警戒されている?
何故だ! 俺は目の前の素晴らしいISに触れたいという純粋無垢な気持ちしかないというのに!!
とりあえず脳内でサイコロを振ってみよう。
1D100で。ファンブル!!
狂気と狂気がぶつかりゼロとなった!!
「ふーー。すまぬすまぬ。余りにもヒロイックなISを前にちょっと精神が迷子になってた」
「迷子どころか深淵に行ってなかったか」
「まあまあ、俺はどうでもいいさ。セシリアのエネルギーチャージが終わるまで少し時間あるし、煮詰めれるだけ煮詰めてみようぜ」
「少しでも不穏な素振りをしたら斬るからな」
おい待て何処から出したのその竹刀。
暴力は行けない! 鼻☆塩☆塩!!
ーーー◇ーーー
メンテナンスモードに入ったブルー・ティアーズのホロウィンドウを開き。セシリアは目の前の数値と過去の数値を見比べていた。
その数値はBT適正値。
ビットを動かすための脳波係数、それを伝播する為に必要な数値。
疾風の言う通り。セシリアはビットを動かしている間、本体の行動を著しく制限されていた。今日までは。
「間違いありませんわ。上がっている」
IS学園に来るまでのセシリアのBT適正値は35%だった。これはブルー・ティアーズの第三世代兵装を操れる許容ラインになんとか到達出来る数値だ。
だがセシリアが適性がないわけではなく、現在イギリスにおいて彼女以上の適正値を出したものは居ない。
それほど発展途上の技術。難易度だけならば第三世代兵装の中でも最高難度だ。
だが現在セシリアのBT適正値は73%。
疾風とのバトルの最後、セシリアは頭のモヤが晴れたような気持ちになり。ビット制御が軽やかになったことを肌で感じたのだ。
「何故いきなりこのような……」
あの時自分は何を想い、何を感じたか。
疾風に負けたくない。それだけが胸を支配した。
そしてブルー・ティアーズはセシリアの戦意に応えてくれた。
誰かに負けたくないなど、今まで何度もあった。
ISで代表候補生になるために、ブルー・ティアーズを手にする為に他者と競い合ったこともあったのに。
(疾風がトリガーになった? だけどどうして?)
わからない。だけど疾風とぶつかった時の感情が何かしらのキッカケになったのは事実だ。
思考の海に沈みかけた時、ブルー・ティアーズのエネルギー補給が終わった。
ISに搭乗し、機体チェック。破損したレーザービットに変わる予備のビットをプラットフォームに取り付け、カタパルトに向かう。
今は考えないでおく。
次は織斑一夏との戦いだ。
ーーー◇ーーー
「こんなもんだが。セシリアのビットに制約がなくなった以上、前提はほぼ崩れたと言っていい。とにかく近づけ、さもなきゃ負けるだけだ」
「分かりやすくて助かるぜ。じゃあ行ってくる!」
「おう! ……ほら箒、お前もなんか言ってやれよ」
「なっ!? え、えっと……一夏!!」
「ん?」
「か、勝ってこい!!」
「ああ! ありがとな箒! 行くぞ!!」
白式、カタパルトで射出された。
待ち受けるのは先ほどより強敵となったセシリアとブルー・ティアーズ。
はてさてどうやることやら。
「一つ聞いていいか?」
「一夏にはストレートな告白が効くと思うぞ」
「お前はいちいち茶化さないと気がすまないのか!?」
これは私の悪い癖、治す予定はございませぬ。
でも箒がからかいやすいのも悪いと思いますの。
「お前、負けた割にはやけにスッキリした顔してないか? 負けて悔しくないのか?」
「そら悔しいよ。もう少しで勝った! と思ったらあれだもん。でもそれ以上にセシリアと全力で戦えたのが嬉しくて嬉しくて仕方なかったんだ」
セシリア相手に防戦一方だった時でさえ俺のなかには喜びと楽しさがあった。
どうすれば切り抜けられる。手札は何がある。これを使って何が出来る。それを汲み取り、組み立て、動かした時の全能感は脳内麻薬の過剰投与だ。
そして今日はその始まりだ。これからもワクワクすることが沢山ある。俺は幸せ者だ。
「つくづく変な奴だなお前は」
「別に負けたからって死ぬわけじゃないしね」
「究極だろそれは」
「ハハハ。でも重要だよ。これが終わっても次がある。次は負けない、その気持ちは大事だろ?」
今度は俺の専用機が来た時だ。
今からワクワクが止まらない! 早く来ないかなー俺の専用機!!
「もう一つ聞きたい。一夏は勝てると思うか?」
「おいおい、さっき勝ってこいって言ったやつがそれ聞いちゃ駄目でしょうに」
「わかっている。聞いただけだ。答えたくないなら良い」
「冗談だよ、箒の懸念は正しいよ。実際は厳しい戦いになると思う。箒との特訓でイメージをつけれた一夏の近接戦闘能力は一定値を超えられた。飲み込みもいいから基本的な動きは大丈夫。だけどそれでもセシリアの射撃はその上を行く。勝ち筋があるとすればセシリアが慢心するかだな」
「一夏が最初に戦えばそうだったかもしれないな」
「いやほんとね」
俺とのバトルで火をつけたかもしれん。
慢心に機体って戦術としては下の下だよな。
「でもどっちにしろフィッティング前でろくに戦えなかったのは違いない。一夏が生き残れるかは専用機である白式がどれほど応えてくれるかだ」
「今度一夏の変わりに文句を言ってやらねば」
「箒って時々保護者ムーブするよね」
とにもかくにも納期遅れした企業が悪い。
そして極めつけに遅れられてきた白式の仕様を見て俺は目をひん剥いた。
白式。あれははっきり言って馬鹿の発想だ。
なんだよ近接ブレード1本って。しかもISにあるべき射撃用のFCSがゴッソリ抜けてた、バリバリ近接仕様だ。その癖防御兵装もなし。
なんだよ、当たらなければどうということではないと言いたいのか?
製作者にはどういう意図であんなのを一夏に渡したのかと小一時間話を聞きたいものだ。玄人向けなんて物じゃない。
武装の名前も名前だ。一夏に理想を持ちすぎだろってなる。一夏自身は何処か嬉しそうだったけど。
まあ、正直言ってあの思いきりの良さは嫌いじゃないと感じる馬鹿な俺も居るわけだけど。
「一夏は意外性の塊だ。もしかしたら、もしかするかもよ?」
「だといいがな」
「信じて待とうぜ。そしてもし負けたら思いっきり笑ってやろう」
現実なんてありえないことの連続なのだ。勝負の行方など、最後まで分からないに決まってる。
武器に刻まれた願いが光ることを祈ろう。
どうも。喉風邪により微熱を爆誕しました。皆様も季節の変わり目に注意を。湿度を保ちましょう。作者のブレイブです。
専用機はなく、打鉄に間に合わせのパッケージ乗せてのブルー・ティアーズ戦!うん、セシリアとのバトルで専用機使わないのも中々珍しいですな。
結果はご覧の通りでした。負けたけど本編よりバトル密度が高いのは、私の画力と表現があの頃よりレベルアップしたからだと信じたいですね。誤字多いけど(泣)
今回のお話が良かったら高評価! コメントを宜しくです!
次回はファーストシフトが完了した白式VSブルー・ティアーズ! お楽しみに!