IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
「IS動かしていいかな?」
「なに馬鹿なこと言ってるんですか、やめなさい。あとその似合わないサングラスを外しなさい」
「似合ってない?」
「似合ってません」
「はい」
パーティーの時にチェルシーさんから貰った度付きサングラスをしまってマイ(スペア)眼鏡をかけ直した。
似合ってないってさ、どうせ格好いいのは似合わないさ。落ち込んでないもん。
「帰ってきたなー日本。IS動かしたい」
「さっきからそればっかりですわね」
「だって10日間も動かしてないんだよ? はやく帰ろ。そしてIS動かそう。今すぐに! 帰ろう!」
「わかりました。わかりましたから少し黙っていなさい」
「待っていろIS学園。今俺が帰ってくるぞ」
先の事件で全身包帯だらけになってしまった俺。長い入院生活の間、病室というのはどーも暇で暇で。バススロットにしまってあった夏休みのアキレス腱、SYUKUDAIも片付いてしまった。
夏休みの前半を病室で過ごし、最先端のナノマシン医療の激痛に耐えきり、完全復活を遂げた俺を待っていたのは。
楓とのデートであった。
いや、俺より早く日本に帰った楓なんだけど。俺が退院する日時に合わせて。病院の前で仁王立ちしてからの「デートしよう! 疾風兄!!」とまたイギリスに来たのは驚いた。
あんな事件があったのに全然そんなことを匂わせないぐらいの通常運転スマイル。
俺が謝った時なんて「疾風兄に比べたら全然大丈夫だし。むしろ疾風兄が王子様みたいに助けに来てくれたから全然OK!」なんて言ってくれた。やだこの子天使過ぎる。付き合ってはやれないけど。
お詫びとして一日中イギリスを歩き回り、夜景が綺麗な超高級ディナー(自腹)の後にホテルで夜を明かした。
楓が必死こいてダブルルームにしようとしたのを押しきってツインルームにしたのだが。執拗に狭いベッドに入ってこようとした楓を説得したのは疲れた。
いや分かりきってたことだったけど。最初はホテルに一緒に入るのも躊躇ったのよ。だけど出来るだけ妹のお願いを叶えてあげたかった兄の心を分かってくれたら嬉しい。
一応言っとくが。如何わしいことはしていません。必死に阻止しました。
しかし困ったことに、ISが(当たり前だけど)動かせない!
メイブリ……クソ女のせいでボロボロになったイーグルが戻ってきたのがそれから五日後、それでも俺の体はまだボロボロだったので動かすことなど出来ず。退院した後でもISアリーナなんか使えるわけないのでお預け。軽く動作テストをするだけに収まった。
今の俺は完全なるIS欠乏症になっているのだ。あと少ししたらゾンビになる。
「こっからIS学園までどんだけかなぁー。空いてるアリーナあるといいけど」
「ありますって。だから落ち着きなさい」
「あーい。おっ」
スマホが震える、俺の心のように。んー、大分頭やられてるぞ?
LINEを開くと、差出人は一夏だった。
『まだイギリスにいるのか?』
『今帰ってきたぞい』
『そっか。実は今家の掃除しててな。もうすぐ終わるんだけど。よかったら遊びに来ないか?』
ふむ、一夏の家か。つまりは織斑先生の家でもあるわけか。
「誰ですの?」
「一夏。家に遊びに来ないか、だって」
「そうですか」
見せたスマホをじーっと見つめるセシリア。何処か物欲しげな眼差しを見て、俺の敏感な頭にピーンと豆電球が灯った。
「一緒に来るか?」
「えっ? で、でも誘われたのは疾風ですし……」
「あいつがそんなの気にするたまかよ。はいポチポチっと」
『セシリアも連れてこれたら連れてっていいか?』
『いいぜ』
即レスポンスを返してきた一夏の返信を見てセシリアはしばし悩んだ後。「行きます」と納得した。
こいつのことだ、おおかた男の子の部屋とか家に遊びに言ったことなどないから興味があるのだろう。
「ところでセシリア、明日空いてる?」
「ええ、予定はありませんが」
「よしオッケー」
直ぐ様LINEに文字を打ち込んでいく。おっと誤字っちまった。なおしなおし。
『今日は予定あるから明日でもいいか?』
『いいぞ』
『じゃあ明日セシリアと一緒に行くわ。詳しい時間帯は後程』
『わかった。楽しみにしてる』
一通り連絡を済ましてスマホの電源を切った。
「よーし! IS学園に戻るぞ!!」
「友人の用事よりISですか………」
呆れてため息を吐くセシリアをよそに俺は大股でノッシノッシとIS学園に進路を取った。
待っていろ! 学園アリーナぁっ!!
ーーー◇ーーー
日を改めて翌日、晴れ。夏の日差しがサンサンと紫外線となって降り注ぐ日本はイギリスと違って暑い暑い。
セシリアも外出着なのか、胸もとが少し開いてる青のワンピースにフリルのついたシャツ。日焼け対策として白の日傘ときちんとオシャレしている。
対して俺はシャツに短パンジーンズ、水色のつば付き帽子というTHE男の子というオシャレの欠片もない格好。
なんでそんな気合いの入った格好なのかと聞いたが「淑女としてこれぐらい当然」というよくわからない返答が帰ってきた。
隣に立ってる時のミスマッチ感が半端じゃない。現にここに来るまで俺が隣にいるのにも関わらずナンパしてきたやつがいたよ。笑顔で退散して貰ったけど。
まあそんなこんなで。
「とーちゃく」
「……何故ここですの?」
IS学園からモノレール、電車と乗り換えてついたのは一夏の家、ではなくここらへんで一番大きいJR駅。
「まあまあ考えてもご覧よ。一夏が家にいる、それはつまり織斑先生も家にいる可能性が高い。そんな場所に手ぶらで行くなんて革装備で魔王に挑むようなものよ」
「成る程。で、何を買いに行きますの?」
「ふっふっふ。今巷で噂している、ケーキの国際大会で受賞経験のあるパティシエが作るケーキ屋と言えば、セシリアならわかるかな?」
「まさか、リップ・トリック?」
「exactly!」
リップ・トリック、説明は今したので詳しくは省くが。今若い人たちを中心に話題に上がっている人気菓子店。最近テレビで取り上げれて一気に認知され。今時のインスタ映えるケーキの数々が若者の心を掴んでいる。
「リップ・トリックですか。わたくしもあそこのケーキの味は保証します、が。今日日曜日ですわよ? 絶対に行列が出来ていますわ」
そう、あまりの人気+今は8月の初期、つまり月始めの新商品が出ている。そしてとどめのサンデー、このまま地下街に繰り出せば確実に長蛇の列にぶち当たるだろう。
「せめて昨日なら少しは列も少なく済んだでしょうに。疾風がISを優先するから」
「仕方ないだろ。あのままIS断食が進めば禁断症状で俺の精神が危うい」
「もはや病気ですわね。わたくし嫌ですわよ行列に飛び込むなんて、疾風一人で行ってくださいな」
「冷たいなー、人の心がなーい」
「うるさいですわよ。さっさと地下に行きましょう。売り切れますわよ」
「まあまあ待ちなさいな。誰も行列に並ぶなんてめんどくさいことをする気はないよ」
「はい?」
「んー、そろそろか?」
一歩も動く気配のない俺に怪訝な顔で見るセシリア。そんなセシリアを尻目にスマホの画面を見る俺。
するとスマホに電話がかかってきた。
「きた。はいはい疾風ですよ。うん、駅の東玄関にいる、目印は日傘さしてる金髪の子。え、もうついてる? …あ、いたいた。おーいこっちこっち」
手を振る方向につられるセシリアの視線の先には俺と同い年ぐらいの男子が袋片手に向かっていた。
「久しぶり柴田。悪いな仕事中に」
「いやこれから休憩時間だから大丈夫。おおっ、本物のセシリア・オルコットだ、幼馴染みってのはマジだったんだな」
「まあね。セシリア、こいつは前の高校の友達の柴田」
「どうも、
「え、ええ」
「ありがとうございます」
二人はキュッと軽く握手をする。
直ぐに離れた手を柴田は握っては離して、そのあと小さくガッツポーズをした。
「しばらく手は洗いません。なーんて出来ないよなー食品衛生系は」
「言わないでくれよ疾風。はい、ご注文の品です」
「あいどうも。これ代金ね、少しだけ色ついてるから」
「ほんとは駄目だけど。サンキュ」
懐から出した茶封筒と交換で袋に入った白い箱を貰う。その箱は、どーみてもケーキとかが入っているそれだった。
「それは、もしかしてリップ・トリックのケーキ?」
「そうだよー。柴田に買ってもらってこっちまで持ってきてもらったの」
「でも何故柴田さんが?」
「セシリア、大会で受賞したパティシエの名前覚えてる?」
「えーと。確か柴田……あっ!」
セシリアもやっと気がついたようだ。
「もしかして、息子さん?」
「ええ、まぁ」
「持つべき物は、有名ケーキ屋の親友! リップ・トリックのケーキは最高よ!」
因みに俺の他にもう一人、村上がこのことを知っている。
普段は厨房がメインだから客の前に出ないし、万一見れたとしてもアルバイトで誤魔化せるのだが。
うち、レーデルハイト工業はリップ・トリックのお得意様。パーティーとかで手伝いをしてる最中にバッタリと出くわしてしまったのが運の尽きだった。
「おい、あんま大きい声で言わないでくれ。クラスの奴らにバレたらタカられるから」
「ごめんごめん。じゃあまたな、ケーキご馳走さまです」
「あ、ちょっと待って。疾風に渡したい物が」
「ん?」
ーーー◇ーーー
織斑家、到着。
「でかいな……」
「そうなのです?」
「いやお前のとこと比べたら皆ミニマムサイズだから」
いや、俺もさ。いわゆる良いとこのお坊ちゃんだから、周りの家と比べたら少し敷地とか大きめだけど。
えー、凄いなー、ひろーい、家もご立派。庭とか普通に木生えてるし。
流石ブリュンヒルデの居城というべきか。
っと、眺めても始まらんし何より暑い。ケーキが駄目にならんうちに入ってしまおう。
インターホンを鳴らすと、聞き慣れた声が耳に入ってきた。
「おっ来たな二人とも。今鍵開けるからな」
「ういー、早く開けてくれー。暑い」
「わかったわかった」
ガチャリと門の鍵が空いた。リモートとは。
「俺が来てやったぞー」
「暑いなかよく来てくれたな」
「お久しぶりです一夏さん。お元気そうで」
「セシリアもいらっしゃい。確か家の仕事だったっけ」
「ええ」
一夏に導かれるまま家に入った。
他人の家という独特の匂いと共に玄関に入っていく、と。
「んん?」
「あらっ?」
目に飛び込んできたのは、明らかに一夏とはサイズが違う&レディース用の靴が四足。
それだけでこの先の光景が容易に想像できてしまった。
「………セシリア、俺用事思い出したから帰る、ケーキは任せた」
「い、行かせませんわよ。こんなところに女性一人を置いていくなんて男として恥ずかしくありませんのっ。むしろ貴方が残りなさい!」
離せー! 死にたくナーイ!
目の前の魔境にお互いどうぞどうぞと人気ケーキ店の箱を押し付けあう。
「ん? なにしてんた二人とも、早く入れよ」
「は、入って良いのか?」
「当たり前だろ。こっちから呼んだんだから」
「……セシリア」
「……ええ、行きましょう」
後退る足を前にだし、モンスターハウス・オリムラに踏み込んだのだった。
ーーー◇ーーー
案の定というか。居たよ。
クソッ!IS我慢して昨日来るべきだった!
いやそれはそれで人格がバグるからなしだな、うん。
「…………」
「…………」
現在目の前にはむすっとした美少女4名。
色々スペックも高めで、端から見たら羨ましい爆発しろと言われるだろうが、現実はそうもいかんのだ。
「それで何故お前が一夏の家に?」
「誘われたんだよ」
「誰に」
「一夏に」
ガタタタッ!
突然ラバーズが手をテーブルに叩き付けてこちらにのめり込んできた。あのシャルロットでさえ鬼気迫る表情を醸し出している。
「何であんたが一夏に誘われるのよ!?」
「お前と一夏はどんな関係なんだ!?」
「僕達は呼ばれもしなかったよ!?」
「ことの次第によっては、自白剤も視野に入れると思え!」
「男友達だと普通じゃないかと思うのは俺だけなのか!?」
何かしらの命と貞操の危機を感じた俺は説得という名の訴えを並べると、四人はそれもそうかとゆっくり腰を戻す。
てか皆呼ばれてもいないのに全員集合? なにこのエンカウント率。ここには伝説の剣や財宝でもあるの?
「じゃあ次はあんたよセシリア」
「わたくしはたまたま疾風の隣に居ただけですわ」
「たまたま居ただけで何故お前も来ている」
「一般的な男性の家というのに興味があったからです。皆さんが思うような邪な思惑はありませんのでご安心を」
「…………」
流石に女子に対する当たりは厳しいか。セシリアは嘘を言っていないので堂々とした振る舞い。現にセシリアは一夏に好意を持っていないので考えた線は消えている。それでも(偶然とはいえ)一夏に誘われたというのがラバーズ4人の胸中を燻らせる。
「まあまあ、せっかく遊びに来たんだから楽しむとしようじゃないか? それに皆は幸運とも言えるぜ?」
「どういうこと疾風?」
「じゃーん。リップ・トリックのケーキー」
タッタラタッタタータッターという効果音な出す勢いで袋から箱を取り出すと。鈴がまっさきに食いついた。
「え、ちょっ! あの天下のリップ・トリック!?」
「え、なんだ? そんな凄い物なのか?」
「結構有名なケーキ屋さんだよ」
「ほう、スイーツというものか」
まさか対ブリュンヒルデのケーキがこんなところで役に立つとは。ありがとう柴田。
各々が目当てのケーキを選んで口に運ぶと一同にシイタケ目になった。ふふふ、旨かろう。
ラバーズは美味しいケーキにありつけたという幸運を噛み締めると同時に。男でありながらここまで粋な手土産を持ってきて、なおかつ自分たちは何も持ってこなかったということに危機感を抱いていた。
だがケーキに罪はないので有り難く頂いた。
そこからはケーキをついばみながら話に花を咲かせた。
俺達がイギリスに居たときの話(事件のことは伏せて)。ボディーガードのこと、セシリアの両親に墓参りしたこと。二社の技術連携の背景。一番盛り上がったのは、やっぱりパーティー会場での大立ち回りだった。
あとはラウラとシャルロットが急遽@クルーズという喫茶店の臨時バイトをした話。同時期に@クルーズにステレオタイプの強盗が襲撃したのを美少女メイドと美少年執事が見事撃退したという話をした時にシャルロットの汗が凄かったけど何でだろう。
箒が夏祭りで巫女の仕事を手伝った時に一夏にバッタリ会ってしまったこと。これには他のラバーズは目を鋭くし、情報を漏らした一夏は箒に怒られて慌てふためいた。
「せっかくだからなんかゲームしない?」
ひとしきり話続けて話題が尽きかけた時にシャルロットが持ち出してきた。
「テレビゲームでもやる?」
「あれ二人用だから効率悪いぞ」
「じゃあ人生ゲームとか」
『却下』
ラバーズから一斉に却下された。
な、なんでぇ?
「あっ」
「どうしたの一夏?」
「ちょっと待っててくれ」
リビングから出ていく一夏。
しばらく待っていると、何かのボードゲームの箱を両手に抱えた一夏が戻ってきた。
「あ、懐かしい。バルザロッサだ」
「ほう、我がドイツのゲームだな?」
「千冬姉がドイツから帰ってきた時の土産でさ。中学の頃鈴と他の奴らで一緒にやってたの思い出してな。カラー粘土で何かを作って当てていくゲーム」
「面白そうですわね」
「詳しいことはあたしと一夏が説明しながらやるわ。ほら、早く広げなさいよ」
「わかったわかった」
鈴に急かされた一夏が箱からバルバロッサを取り出してフィールドを広げる。
先程言ったカラー粘土で何を作ったかを質問していってから当てるゲームなのだが。
直ぐに正解されるとポイントは貰えず、かといって答えられないとポイントも貰えない。造形を元に相手に質問、出題者は「YES」か「NO」で答え。「ノー」が出るまで質問責めしていくゲームらしい。
最初は練習用ということで、鈴を除いたラバーズとセシリアの4人でやることになった。
各々がサイコロをふるってゲームスタート。双六のようにマスの指示に従い。箒が質問マスに止まった
出題者がラウラ、出されたのはなんか円錐状の巨大な物体。それに箒が質問を積んでいく。
「では行くぞラウラ」
「うむ、来るがよい」
「それは地上にあるものか」
「YES」
「人間より大きいか」
「YES」
「都会にあるものか?」
「YESでもあり、NOでもある」
この質問には東京タワーだと思っていた皆の頭を悩ました。
成る程、逆に質問の方向性で難易度が変わるのか。面白いな。
「それは人間が作ったものか?」
「NOだ」
「NO」が出た。ここからは箒は回答するか、降りるという選択肢が出てきた。といってもここで答えても別にペナルティはないので、箒は駄目元で答えることにした。
ジーーっと見つめる様は真剣そのもの。意を決した箒は勢いよく指を指し。
「油田だ!」
「違う」
「グヌゥッ!」
あっけなく撃沈。
周りも「なぜ油田?」と彼女の回答に小首を傾げた。
結果、ラウラは誰にも正解されなかったので減点となった。
「少々難しかったか。答えは、山だ」
『はっ?』
「山だっ」
今度はラウラの威風堂々とした解答に呆気に取られつつも、何となくあぁーと声を上げる一同。
確かに円錐のそれは見えなくもないが、ねえ? それにしても………
「いやいや待て待て、こんなに山は尖ってないだろ!」
「む、失礼なことを言うやつだな。エベレスト等はこんな感じでだろう」
「それならエベレストに特定しねーとわかんねーって!」
「五月蝿い奴だ、それでも私の嫁か!」
「だから嫁じゃねーって!」
そんな論争を端に俺はスマホでエベレスト、ではなく世界で一番尖ってる山を検索中。
ほう。マッターホルンか………
そこからは皆が上手く質問を積み重ねてベストな段階で点数を稼いでいった。
だがまたも画伯という壁が立ち塞がった。
「セシリア。それ、なんなの?」
「あら。誰もわからないのでしょうか?」
わかっていたら正解してるっつーの。という言葉が出かける中、セシリアはもったいつけるように全員を一瞥して、それから右手を広げて大々的に言おうとした。
「仕方ありませんわね、答えは」
「ちょいまち!」
「なんですの鈴さん」
「疾風、あんた答えてみなさいよ。どうせ皆わかんないんだしさ」
「え? 別に良いじゃん。当の本人は言いたそうにしてるし」
「セシリアの横行で気取り屋な態度が気にくわないのよ」
「何てこと言いますの」
失礼な、と頬をすこし膨らますセシリアをよそに。今まで出た質問を整理して答えを模索する。
これまでの質問で有力なのは。人より大きく、人が作ったものではない、皆が知っている物、etc、etc………
「多分分かったかも。俺」
「え、マジかよ。この謎の物体Xがなんだかわかるのか?」
「それはどういう意味ですの一夏さん?」
やぶ蛇を踏んでしまった一夏、案の定慌てる。得意だなーこいつ。
「1つ質問させてくれれば。多分合ってる」
「あら、大きく出ましたわね、1つと言わずに3つでもいいんですのよ?」
いや、多分。この細長いワカメのようななんとも形容しがたい物体は多分………
「じゃあ行くぞ? ……それは最近俺が行ったことある場所ですか?」
ピシッとセシリアの体が固まった。
皆は「ん?」と小首に傾げる。
「い……えす」
これ以上ないってぐらい歯切れの悪いYESに今度は「え?」とセシリアに皆の視線が注がれる。
「それはイギリスですね?」
「………正解ですわ」
ポスンと椅子に座り込むセシリアは、先程と打って変わって雰囲気的に小さくなった縮んでしまった。
「す、凄いな。何で分かったんだ?」
「こいつ、なんか自由に作れ、描けって言われたら高確率でイギリスか、それに因んだ物を選ぶんだよ、ほらこいつ、生粋の愛国者だから」
「そうなの?」
これにはセシリア、顔を赤くしてコクンと頷いた。
「いや、だけど。俺だから答えれたんであって、他の人なら難しいかったと思うし。造形が少し複雑にし過ぎたんじゃないか? もう少し難易度下げたら正解出来た人も居たと思うぞ? ちょっと挑戦し過ぎたな?」
「結構自信作でしたのに」
「え!? い、いや大丈夫だ。セシリアの感性が常人離れし過ぎただけだって。気にするなって」
「わたくしの創作センスは異常ということですのね………」
「ちょっ待ってくれ。別にそういう意味で言ったわけじゃ」
やぶ蛇を踏んでしまった。俺も一夏と同レベルだ。クッ。
「うう………こうなったら疾風も何か作りなさい! ビシッとバシッと当てて見せますわ!!」
「なんでそうなる」
「なんでもですわっ」
「次のゲームじゃ駄目なのか?」
「今すぐですわ!」
ムーっと頬を膨らませるセシリア。
こうなっては作るまで解放されないと見た。
セシリアのイギリス擬きカラー粘土を手にとって潰し、コロコロと丸め、丸め、丸めた。
トン、と中央に置かれた物体は。
「丸だな」
「ボールね」
「球」
キョトンとする一同、挑戦者のセシリアも流石に目を丸くする。
「抽象的というより………流石にシンプル過ぎません?」
「逆に分かりづらいでしょ?」
「むむむ」
ルール的にはもう少し分かりやすく作らないと行けないのだが、俺が作った造形元は完全に球体なのだ。
「じゃあ行きますわよ。それはこの世界にあるものですか?」
「YES」
「皆が知ってるものですか?」
「YES」
「それは疾風の好きな物ですか?」
「YES」
「………それはISに関する物ですか?」
「YES」
皆も予想通りというか、やはりISに関わる物。
だが自分たちが知るなかでこんな球体のものなんてあっただろうか?
「フフッ」
「あん?」
セシリアから含みの入った笑い声が聞こえた。顔を見ると、鈴がムカついたような勝ち誇ったような余裕のある顔。
「疾風、これは希少な物ですか?」
「YES」
「それは固いものですか?」
「YES」
「今貴方が持ってるものですか?」
「Y、YES」
え、持ってるの? と考えた。
疾風が持っている、それはつまり俺の専用機のスカイブルー・イーグルに関連している。
だがイーグルにこんな球体の物などあったのかとやはり首を傾げた。
「それは人が作れる物ですか?」
「YES」
「世界でも限られた数の物ですね?」
「YES」
「それはISになくてはならない物」
「YESっ」
「ISには全て搭載されてる物ですわね?」
「YESだよ」
「それを作れる人はこの場に居る親族の方」
「YES、ってもうわかってるよなお前!?」
「さあどうでしょう?」
フフフと口元に手を当てて優雅に笑うセシリア。余程さっきのイギリスもどきには自信があったらしい。
俺が踏んだのは蛇の中でもアナコンダ、いやキマイラの尻尾だったらしい。
そこから更に質問が続いた。
本来なら割り込みチップというアイテムがあって、それで割り込まれる為、解りやすすぎる質問を言い、ましてや長々と質問するのはリスキーだが。この場の回答者はセシリアだけなので問題などなかった。
現にシャルロットとラウラは正解が解ってしまった。
「もう許してくださいセシリア様。この通りです」
「あらもうギブアップですの?」
「堪忍してー。ということで答えてください」
「しょうがないですわねー」
外れろ! 正解率99%のうちの1%当てて外れろ!
「正解はISのコアですわね?」
「はいそーですよ畜生!」
疾風・レーデルハイト。完全敗北。
というより後半完璧リンチだったよな。
例えるなら、ロード時間がクッソ長い時のイライラ。
「え、ISのコアってこんな形なのか?」
「分解修理するぐらいしか見ないからな。俺は工業で何度か見たことあるけど」
「てことは俺の白式にもこんなのが入ってるのか」
「一夏さんのISは
「確か菱形立方体だったよな。直接見たことないけど」
ISが世界に出てから10年あまり、世界に467個(+目の前に異例のアナザー1)の中でセカンドシフトしているISは正に数える程しかない。
それを踏まえると、わずか三ヶ月でセカンドシフトしてしまった白式は本当に異例、いやもはや異形の領域だ。
「まあ大体ルールはわかったっしょ。今度は全員でやりましょ」
「でもこれ最大六人じゃないか?」
「一人ぐらい増えても大丈夫じゃない? 駒は………消しゴムとかでいいでしょ」
「よし、この白き消しゴムはお前に贈呈しよう一夏」
「ほいほい」
さっき作ったものを潰して再開する。
やってみてわかったが。これがどうにもハマる。
簡単なようで難しいルール。どこでアイテムを使うか。質問の内容をわかりやすくするか、難しくするか等の駆け引きも熱い。
「今度こそわかった! 赤ベコ!!」
「外れだ、シャルロット、赤ベコというのはなんだ?」
「牛みたいな……置物?」
「鈴、それ本当にこの世にあるものか?」
「あるわよ! 目曇ってるんじゃないのっ?」
「疾風、それはインパルスですわね?」
「いいえ、ボルテックです。ってなんだよおい! 詐欺ってなんだよ!」
時間が立つのも忘れてワイワイガヤガヤと熱中していくうちに時間は午後四時ぐらいになっていた。
やめるということを知らずにハッスルする俺達。さあもうひとゲーム洒落混もうとする時に。
「なんだ、騒がしいと思ったらお前らか」
「えっ?」
聞き覚えがあり、ラバーズにとってある意味天敵と言える声がしたドアの方に向くと。
そこには普段のキッチリしたスーツとは正反対のラフな格好をしたこの織斑家の大黒柱。
織斑千冬その人が立っていた。
ギリ二週間間に合いました。
本当は一話で終わろうと思ったけど、安定の増筆です。グヌヌゥゥ
コロナが世界を騒がしてるなか、皆さんどうお過ごしでしょうか。
小中高が休みになっちゃうなか。私は通常通り出勤です。ツラミ。
眼鏡人にとってマスクって辛いのよ、特に冬は。そもそもマスクが嫌い。
皆さん手洗いうがいアルコールをしっかりしましょうね。では(・ω・)ノシ