IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
真っ黒。
墨汁で満たしたかのような漆黒の空間。
その光り一つない空間を、愛機であるイーグルと共に滑空している。進んでも進んでも代わりない景色。黒と一つの空色がこの空間の全てだった。
進み続けた、終わりの見えない空間。それでも進むということを止めるという考えは浮かんでこなかった。
あれ?
そこでふと気が付いた。
そもそも、俺はなんでこんなとこに居るんだっけ?
「っ!」
疑問を浮かべていると、背後に重い何かが落ちてきた。
振り替えるとそこには上半身が女性、下半身が蜘蛛の半人半蜘蛛の機械の怪物が居た。
アメリカ第二世代IS【アラクネ】。この漆黒の空間に追加されたワインレッドカラーは、アラクネの不気味さを際立たせ。搭乗者のオータムがメット越しに猟奇的な笑みを浮かべ、それがまた恐怖を誘う。
何故? どうして?
そんな事を考える前に槍を持って突っ込んだ。
アラクネは既に装甲脚を展開して斬りかかってくる。
手数は文字通りあちらの方が上、まともに鍔迫り合ったら絡めとられる。ヒット&アウェイを主軸に、隙が出たらすかさずバーストモードのインパルスで貫く。
ばら撒かれる射撃はプラズマフィールドで防ぎ、装甲脚の斬撃は槍のリーチを活かして躱していく。
暫く続くと思われた競り合いは思ったより早く終わった。アラクネの装甲脚を抜け、がら空きの背後に躍り出る。
その隙を逃さずインパルスのバーストモードを発動。
パーツが展開し雷光が溢れる。二回り程大きくなった雷槍の柄を握りしめ、その背中に突き刺した。
捕った! あと数瞬もすれば巨大なプラズマの塊がアラクネのSEを焼く、筈だった。
その雷槍はアラクネの体から数センチのところでビタッと止まった。
「なっ!?」
動かない。いくら前に腕を、スラスターを吹かしても、雷槍はピタリと動かないままだった。
ふと、自分の腕辺りに白いなにかが巻き付いているのに気付いた。
アラクネのエネルギーワイヤーだった。
それを、見て困惑を隠せなかった。目の前のアラクネは糸を放っていないからだ。アラクネの装甲脚を切り裂いてないため、遠隔操作による不意打ちでもない。
ではこの糸は何処から来たのだ。ハイパーセンサーに頼らず首を後ろに回して、糸の発射点を確認した。
「なっ! は!?」
背後を見た途端、思考が停止しかけた。
そこには、目の前のアラクネとは別の、もう一体のアラクネが居たのだ。
何故ハイパーセンサーに反応が無かったのか、亡国機業でアラクネが量産されたのか。
そんな茶地な考えは直ぐに吹き飛んだ。何故なら、搭乗者を保護するアラクネのフルメットバイザーの向こうにこれまた猟奇的な笑みをした、もう一人のオータムが居たからだ。
急いで、元々いたアラクネを向くと、そこにも間違いなくオータムが居た。
アラクネを着込んだオータムが二人いるのであった。俺は訳もわからず軽いパニック状態に陥った。糸を振りほどこうにも、絡み付いたワイヤーは更にイーグルの翼に纏わりつく。
最初に居たアラクネが白い四脚の装置を取り出した。ISを強制解除するリムーバーであった。
その装置がもがく俺の胸元に取り付けられた。
「や、やめ。ああああぁぁぁぁぁ!!!」
電流が流れ、体験したことのない痛みが襲いかかった。俺とイーグルのリンクが次々と寸断され、空色の装甲は光の粒子となって消えていき。オータムの掌に球体のコアとなって収まった。
目的の物を手にしたオータムはそのまま、PICで宙に浮いた。
「ま、待てっ! うぐぅ!?」
ISが解除されたことで糸との間に空きが出来て動けるようになった俺は直ぐに取り返さんと前に足を踏み出そうとした。だがイーグルを拘束していたワイヤーがまるで意思を持ったかのように俺の体に巻き付き、口許を覆い隠した。
アラクネを纏ったオータムは徐々に高度をあげ、既に生身の俺では到底届かない高さに居た。
「!!」
声が出せないながら喉が破れんばかりに呻き声をあげる。ワイヤーが右目を覆い、視界が半分になった。
「んーー!! んーー!!」
体がヒュッと冷えていく、伸ばそうとした手もワイヤーで固定され、もう身体の殆どがワイヤーの白で巻かれていた。
自分の一部分を奪われたような喪失感、覆しようのない絶望感が俺を襲った。
返せ!
返せ! 返せ! 返せ!
残された最後の左目が、エネルギーワイヤーに覆われた。
「返せえええーーーー!!!」
ーーー◇ーーー
「ああぁぁーー!!」
吹っ飛ぶ勢いでベットから跳ね起きた。
目の前が白黒して、気持ち悪い。
直後に襲いかかったのは喉の渇きだったが手元に飲み物は無かった。
「ゲホッ、げっ、オゥエ」
息が苦しい。整えようにも上手くいかず、鈍い苦しみが喉を焼いた。肺から空気が吐かれていくばかりで頭がクラっとした。
次に襲ってきたのは身体の痛み、何かに殴られたかのようなこれまた鈍い痛みがジンジンと刺激していた。
ようやく息が整えられ、状況確認に目を向けた。
白いベットに白い掛け布団、白いカーテンに白い天井。先程の真っ暗な空間とは見事に正反対の白一色だった。恐らくここは保健室だ。
さっきの悪夢のせいか、汗で身体に張り付いたシャツを掴みながら悪態をついた。
「………………………あれ」
ふと違和感に気付いた。
俺は今制服の右胸を掴んでいるが、そこにいつもつけている筈のイーグルの待機形態であるバッジの感触が無いのだ。
「え、何処?」
キョロキョロと首を回すも、バッジは見つからない、ポケットを全部調べたが、やはり見つからない。
「え、え、え!? 何処行った!? おいおいおい待て待て待て待て、何処いったおい!!?」
ベッドの横のテーブル、枕の下、ベッドの下。布団をどかして確認するも何処にもイーグルのバッジは見当たらなかった。
体温が急激に奪われる感覚、夢でみた時と同じ心理状態が俺を襲った。
汗は流れ落ち、瞳孔は開かれ、再び荒い呼吸が口から絶えず漏れだした。
形振り構わず隔てられた白いカーテンから飛び出す、保健室の先生は居なかった。俺は転びそうになりながらも保健室のドアに向かって走った。
「うおっ!」
「わっ!!」
タイミングがいいことにドアを開けてきた一夏と正面からぶつかり思いっきり尻餅をついた。
「いっててて、悪い疾風。大丈夫か、ってうわっ!?」
「おい! 俺のイーグルは何処だ!? 何処だよ!!」
行きなり一夏に掴みかかるなり、彼を揺さぶって問いただした。弱冠怯えの入った彼の瞳には、目を血走らせ、必死の形相を浮かべる時針の姿が写し出されていた。
「ど、どうしたんだよ疾風」
「何処なんだよ! お前なら知ってるだろ!?」
「ちょっまっ、少し落ち着けって」
「何処だよ! 早く言わないと……」
「だから落ち着けって!!」
いつもの一夏からは聞いたことの無い声量にビクリと体が硬直した。
俺が止まったのを見計らって、一夏はポケットからある物を出した。
「悪い、大声出して。ほら、お前のイーグル。さっきまでメンテナンスしてたんだよ。ダメージレベルはそうでもなかったけど、オータムになにかされてないとも限らな」
一夏が言い終わる前にイーグルを引ったくる。ホロウィンドウを呼びだし、右腕部装甲だけを展開、直ぐに格納し、バッジは定位置の右胸元に収まっていた。
「はぁぁ。良かったぁ」
胸につけられたバッジを握りしめ、胸に詰まった嫌な空気を吐き出した。
異様に冷えていた指先に体温が戻り、早鐘を打っていた心臓は一定のリズムに、過呼吸気味の肺は再び酸素と二酸化炭素を循環させた。
「あ、悪い一夏」
「あ、いや大丈夫だ。なんともないから」
「そっか。イタタタ」
「おい大丈夫か?」
「大丈夫、じゃないかも」
一夏に支えられてベッドに戻った。我ながらよくあんな動きが出来たなと思う。
「あー取り乱したわ。恥っずかしい」
「気にするな、って言いたいけどビックリしたぞあれは」
「お恥ずかしい限りです」
鈍い痛みを訴える腹辺りを擦る。動かなければそこまで痛みを感じないからそこまで問題ではないのだが。
大分落ち着いてきたのか。俺はベッドに五体を完全に預け、深く息を吐き出した。
しかし取り乱し過ぎだ俺。会長に見られなくて良かった。もし見られてたら今年中ネタにされるだろう。
「悪い疾風」
「何が?」
俺が勝手に悶えてると一夏が神妙な顔で謝ってきた。
「その、オータムのこと。あの時俺が無闇に突っ込まなかったら、ああはならなかっただろうなって」
「ああ、まあ、うん」
一夏が何故謝ったのかを理解した。
確かに、あの時は状況は拮抗していた。拮抗を破らされたのはオータムの挑発、それに乗ってしまった一夏。
仮にあのまま長引かせていたら、会長を加えた三人でオータムを囲えたかもしれない。
もしあの時会長が来なければ、俺達二人はISを奪われて処分されていただろう。
「言われる前は冷静だったのにオータムに挑発された途端見たことないぐらいブチ切れて真正面から猪突猛進。お前をあそこまでさせたのって何なんだ?」
「………」
「いや、いい。言いたくないなら良いよ。簡単に踏み込んでいい話題でもなさそうだし」
「いや話すよ。疾風には迷惑をかけたから………だけど」
「ん、オフレコにしとく」
重々しく一夏は話し出した。
第二回モンドグロッソ。日本代表の織斑千冬はバトルトーナメントを順調に勝ち抜け、最後の試合であるイタリアのアリーシャ・ジョゼスターフとの決勝戦が迫っていた。
当然一夏もその決戦を見ていたのだが、一夏は関係者席を出てトイレに行き、出てきた瞬間誘拐されてしまう。
そこからはなすがままだったらしい。手足を縛られ、猿轡をされ、側には知らない言葉を話す大柄な男達。
怖かった、姉とは違い何もない幼い一夏はただただ震えることしか出来ないことに、一夏は涙を流すしか無かったのだ。
直後に姉がISを駆り自身を助けに来てくれた。
監禁場所の扉を無理矢理抉じ開け、抵抗する時間を与えぬまま男達を壁に吹き飛ばして再起不能にした。
一夏の無事を確認すると、千冬は涙を流した。一夏は涙ぐむ姉に「ごめんなさい」と言った、姉は「何故謝る?」と涙を拭かないまま聞き返した。
姉は自分を助けるその為に大事な試合を蹴り飛ばした。
あの試合は個人の意思が尊重される物ではない。国の意地とプライド、今後の未来さえも左右する壮大な物だ。
当時の一夏には難しいことは分からなくても千冬が放棄した試合がどれだけ大事な物なのかを理解していたから、それ故の謝罪だった。
泣きながら謝る一夏とは対照的に、千冬は今まで見たことないくらいの優しい笑顔でこう言ったのだ。
『たった一人の家族より大切なものなど、この世にはないさ』
その言葉で一夏は理解してしまった。
姉は自分を助けるために何もかも躊躇いなく、持つべき物をかなぐり捨てて助けに来たのだと。
それからしばらくして千冬の現役引退が発表され、調査協力をしてくれた黒兎隊の教官を勤めることになった。ラウラが時々織斑先生を教官と呼ぶのはそのためだとか。
「俺さ、もしあの誘拐事件がなかったら、千冬姉は今でも国家代表としてISに乗ってたんじゃねえかな。千冬姉がどういう理由で国家代表になったのかは知らないけど。もしかしたら俺が、千冬姉の道を閉ざしてしまったんじゃねえかって」
一夏は唇を噛み締め、拳を跡が残るぐらい握りしめた。その悲痛な表情から、一夏にとっての第二回モンドグロッソの事件は骨身に刻み込まれているのだ。
「一夏は悪くない。悪いのは全部亡国機業だろ」
「違う、あの時俺が」
「何が出来たって言うんだ? なんの力のないガキんちょが、大人に勝てるわけないだろ」
「疾風?」
「第二回モンドグロッソの日本代表途中棄権の責任はお前や織斑先生にはないと俺は思う。お前は何も出来ない子供で、織斑先生は日本代表である前にお前の家族だった。それだけだろ」
一番安全牌の解答を差し出しても、一夏は完全には納得してはいなかった。
もし織斑先生が此処に居たら、きっと同じことを言っていたと思う。
なんだかんだ一夏に甘いようだし、あのブリュンヒルデは。
「お前がそう思う気持ちは分からないでもないよ。むしろよくわかる」
「そんなこと」
「分かるさ。俺も何回か誘拐されたことがある」
「えっ?」
「そんな意外か? これでも俺は世界でも有名なレーデルハイト工業の御曹司だぞ? 強い光の前には影もある、その影は度々俺に襲いかかってきた時もあったんだよ」
時には商談相手のライバル企業。母親のイギリス代表就任を良しとしない者達。端やレーデルハイト工業に恨みを持つもの、これは最近あったな、完全な逆恨みだったけど。
だから誘拐された時の一夏の心境は理解できた。
俺の言葉に感化されたのか、一夏はポツリと漏らした。
「……俺さ」
「うん」
「あの時千冬姉に助けられたその時から、誰かを守れる力が欲しいと思ってた」
初めは薄ぼんやりとした、理想のようなもの。願いのようなものだった。
直ぐに家計の為に剣道をやめてバイトを始めて、そんなことを考える暇などなかった。
だが高校受験の日。打鉄に触れた時に一夏の人生は一変した。
「色々あって、白式を手に入れて。また色んなことがあって。その時俺は思ったんだ。白式の力さえあれば、あの時の千冬姉みたいに誰かを守れるんじゃないかって。その時福音の事件が起こった。密漁船が危ないと思った時は考えるより動いてしまったし、最後は箒を庇う為に身を投げ出した」
「あれは背筋凍ったわ」
「そのあとよく分からないまま体が治って、白式もセカンド・シフトして、福音を倒した。そのあとさ、お前に言ったよな『俺って皆を守れたよな』って。そしたらお前はそうだって言ってくれて。その時俺、凄い嬉しかったんだ。俺はやっと誰かを守れる力を手に入れたんだって」
腕に巻いている白式の待機形態である白いブレスレットを撫でた。
白式と同じ白は夕焼けのオレンジに染まっていた。
「でも違っていたんだ。今日オータムと戦って、それは間違いだって気づいた」
「なんで?」
「俺は側で戦ってくれた友達一人助けれなかった」
それは違う。とは言えなかった。
現に会長が来なかったら俺はこの世にいなかったかもしれん。
「あの時の俺は何処かでおごっていたのかもしれない。俺と白式ならやれるって。千冬姉から受け継いだ雪片と零落白夜があればあんな奴に負けるわけがねえって。だけど結果はあの様だ。まんまとあいつの挑発に乗って負けちまった」
「………」
「考えてみたら、今まで俺だけで今まで乗り越えられた訳じゃない。必ず側に誰かがいた。皆のお陰で俺は困難を切り開いていけた。俺は、俺一人はこんなにもちっぽけなんだって。俺はとんだ勘違いヒーロー野郎だった………俺は、千冬姉のようにはなれない………」
ズボンの上で握りしめた拳に雫がポタリと落ちた。
一夏はこっちに顔を見せずに震えていた。歯を食いしばり、目尻に浮かんだ涙を。
つられて俺の胸が痛んだ。
さっきとは違う痛み。
俺は知っている、この痛みを。そして、一夏がなんで泣いてるのかも。
「一夏、お前に言いたいことがある」
「なんだ?」
「俺。実はお前に嫉妬してたんだ」
「えっ?」
一夏は驚いたように顔を上げた。
それは先程の誘拐云々の時より驚愕に染まっていた。
「なんで? だって疾風は俺より頭良いし、ISの操縦だって」
「そうだな。確かにISの成績は俺の方が高いけど、そういう目に見える物じゃなくて。こう、えーと………俺ってさ、自他共に根っからのISオタクじゃん?」
「ああ、でもそれと何の関係が」
脈絡のない話題に一夏の涙が思わず引っ込んだ。
うん、俺が逆の立場なら行きなりなんの話なんだって思うよ。
「お前が世界で一人目のIS操縦者になった時、正直嬉しかった。もしかしたら俺もISに乗れるかもって。年甲斐もなく沸き上がって。まあ結果はお察しだったけどな」
「確かに、一斉捜査のときに名前は上がらなかったよな」
「ああ。そっからIS学園に来るまで、俺はなにやってたと思う?」
「なにやってたんだ?」
「ISを弄ってた。ただのISじゃないぞ。お前が初めてISを動かした時に乗った、あの打鉄だ」
「えっ!?」
まさかこの話をセシリア以外に話すことになるとは思わなかったな。
だけど特につまることなく俺は一夏に話した。
親に我が儘を言って他の皆から隠れて打鉄を整備し、何度も試乗テストをしたこと。
結果的に乗れなくて、ヤケになりかけたこと。理不尽な嫉妬や恨みを一夏に向けてぶつけていたこと。
流石にセシリアのとこは省かせてもらった。
「とまあこんなところだな。俺はお前が羨ましかった。織斑千冬の弟ってだけでISに乗れたんじゃないのかとか。篠ノ之束に何かしてもらったんじゃないのかとか。根も葉もないこと考えたりして」
「そうだったんだ」
「驚いた?」
「ああ。あんまイメージない」
「俺、結構底意地悪い方だぜ。レゾナンスで絡んできたあの女覚えてるか? あのあと逆に言葉でボコボコにしたんだよ俺」
「マジか」
「あと一歩で裁判に持ち込めたのに」
「裁判!?」
まあ織斑先生に止められちゃったけどな。
「因みにイーグルに使われてるコアはその時調べてた打鉄のコアだったりする」
「えー!?」
我ながら数奇な運命だなと思う。
一夏をこの世界に引っ張りこみ、巡りめぐって今は俺の翼になっている。
「話戻すけど。秘密裏にレーデルハイト工業でやってたことを皆に言ったら怒られた。『なんで俺達を頼ってくれなかったんだ』ってさ」
「え、それだけ?」
「うん。その時俺は気づいた。俺って奴はなーに一人で意地張ってたんだろって」
一人でやらずに皆と一緒にやっていたら、あそこまで憔悴しきってなかったんじゃないかと。
まあ結果セシリアに再開したり色々結果オーライにはなってしまったけども。
それでも見渡せば志を同じくする仲間はすぐ側に居たんだ。
「何が言いたいのかって言うとな。別に一人でやれなくても良いんじゃないか?」
「え?」
「だって一人でやれることなんてたかが知れてるだろ。ブリュンヒルデやヴァルキリーだって例外じゃない。織斑先生にだって出来ないことの一つや二つはあるだろ?」
「まあ、色々とある」
一夏は姉の部屋を思い浮かべた。
が、これ以上考えたら悪寒が来そうなのでやめた。
「なんでもかんでも一人でやる必要はない。誰かを守ることだってそうだ。時には助けて、助けられて。何でも一人でしょいこむ必要なんか何処にもないと思う。飽くまで俺の意見だけどな」
「一人で、やらなくてもいい」
「うん、皆だって。一夏のことを助けになりたいし、守りたいと思うときもあると思うぞ。俺はそうだ」
「皆が、俺を………」
俺の言葉に一夏は見えない物が見えた気がした。
今まで見えなかった場所、今まで考えてもいなかった考えが見えた、気がした。
「一夏、俺達はまだまだひよっこで。はっきり言って弱い」
「ああ」
「だけどやられっぱなしってのも悔しいだろ?」
「勿論だ!」
「なら強くなるぞ。皆で」
眼鏡を上げ直して一夏に向き直った。
「今回は俺達の敗北だ。だけど次はこうはいかない。その為に強くなるぞ」
「そうだな」
「だからお前は何でも一人でやろうとするなよ? いざというときは俺達を頼れ。俺や皆もお前を頼るから」
なにも俺達は一人一人のワンチームじゃないんだ。
まだまだ強くなれる、そう何処までも。
「勝つぞ一夏。次こそはあの蜘蛛女を完膚なきまでにぶちのめす!」
「ああ!」
俺と一夏は拳をかち合わせた。
一夏の瞳に先程の迷いはない。だがそれは無鉄砲なだけではなかった。
今度こそ守り抜く為に。
そして二度と奪われないように。
決意を再確定し、次に活かすために
「うんうん、良いわね男同士の友情って、お姉さん涙出てきたわ、グスッ」
「「ん?」」
何処からか会長の声が聞こえた、気がした。
しかしキョロキョロと見回し、カーテンの裏を覗いても姿はなかった。
「気のせいだな、一夏」
「そうだな、きっと気のせいだ」
「とりあえずスルーの方向で」
「オッケー、更識楯無という人はここには居ない」
「しかし改めて思うけど。裸エプロンとか、羞恥の欠片もないのかな。あの人」
「ああ、お前もやられたっけ。ないだろうな、女としてどうかと思うが」
「なんか残念な美人って言葉が似合う気がする」
「いやむしろあれはむしろ痴じ」
「ちょっとー。命の恩人に対してその扱いはあんまりじゃない?」
「「うわぁ!!?」」
噂をすれば横に会長が召喚された。
手には【憤怒】の文字が浮かぶ扇子が。
「ど、何処にいたんですか!?」
「ベッドの下よ! ていうか誰が残念美人よ!」
「ベッドの下にいる時点で残念ですよ」
「忍び的な性なのよ、受け入れなさい」
「無理です、てか待ってください、いつからそこに?」
「一夏くんが入ってくる前から」
会長の言葉にサーっと血の気が引いてくるのを感じた。
「え、えーと。つまりえーと?」
「よっぽど専用機に思い入れがあるのねー。面白いものが見れたわ、疾風君のあーんな取り乱した姿」
「うごぉぉぉ!!」
「えっ。つまり俺のも」
「若きヒーロー君の今後に期待ね」
「ヴぁーー!!」
完全に俺と一夏の世界で話していた。
仮にこの対話が校内放送で流れてみろ。
端的に言って死ぬ
「お願いします忘れてください、後生ですから。残念美人ってのは嘘です、貴方は世界で一番美しい女性です」
「失言は謝ります。貴方は何処までも清らかな清流のような女性です。なので忘れてください」
「えー嫌よー。だって二人の大事なルーツじゃない? 二人の身柄を預かる身としては知っておかないと」
聞けて良かったわと会長はいつもと変わらない笑みを向けた。
弱味ってほどでもないけど弱味を握られた俺達だった。
とりあえず話題を転換しなければと俺は学園祭がどうなったのかと会長に聞いてみた。
ーーー◇ーーー
「そっか、明日は来場者無しで。生徒のみの二日目という訳ですか」
「ニ度目の侵入者が来ないとも限らないし。だけど中止にするとなると、今日まで準備をしてきた生徒からの批判の声も出る。疾風君は明日親御さんとかが来るらしかったけど、ご免なさいね?」
「いえ、状況が状況ですし、仕方ないですよ。一夏。村上嘆いてなかった?」
「弾とシンクロで吠えてたよ」
やっぱり、しかしこれには我慢してもらうしかない。今回は犠牲者が一人も出なかったのは本当に奇跡だ。二日目もそうなるとは限らない。
「村上が疾風に宜しくだってさ。保健室に担ぎ込まれたって言って心配してたぞ」
「一夏、そういうのは喋らないお約束だろうよ」
「すまん、でも知られて困ることでもないだろ? 火事の対応で怪我したって言っといたから」
ただのドジ野郎じゃないか!
まあもっともらしいけども。
しかし心配をかけてしまったのは事実だし、後でラインの一つでも打ち込んでやるか。
学園祭のことで泣きつかれそうだが。
ああ糞、あの蜘蛛女め。何もかもまたあいつのせいだ、ムカつく。
今度あったらマジで覚えとけ
………ん?
「あれ?」
「どうした疾風?」
俺はふと疑問が浮かんだ。
確かに拘束されて身動きが取れなくはなった。だが別に意識が飛ばされるようなことをされた覚えはない。
何故なら俺はずっと張り付けられたままだったし、それからは俺は孤独に一人でしたし。
「俺を此処まで運んだのって誰?」
「箒と鈴だと思うぞ、二人が助けに向かったから」
「箒と……鈴……」
俺は一夏達に置いてかれた後のことを思い出そうと試みた。
ーーー◇ーーー
一夏と会長においてかれた俺は体に纏わりつく粘着ゴムと戦っていた。
この粘着ゴムはどういうわけか的確にイーグルの固定武装辺りに着弾しており。プラズマブレードを展開するどころかビットも全て破壊されている始末。
体外放電をしてもやはり悪臭を放って少し焼けるだけ。そして一部は機体の関節にまで入り込んでいる始末、あれ、これエネルギーワイヤーより強くない?
いっそのことISを解除して脱出しようかとも考えたが、ゴムの表面が心なしかヌタヌタしているように見える。
もし解除してスーツや肌に引っ付いたなんて事になったら目も当てられない。
なので今俺が出来ることと言えば機体を揺らしたり、小ブーストをかけてゴネゴネと抗うだけだ。結果はまあ、この通り。
「あぁぁぁぁー! くそうざったいっ! 誰か来てくれませんかちくしょー! ヘルプミー!」
「変な声を上げるな馬鹿者」
試しにやけくそに叫んでみると捨てる神あらば拾う神の声が。
目を向けるとISスーツ姿の箒と鈴が呆れた顔でこちらを見ていた。
「い、祈りが届いた?」
「そんな格好してるのに随分余裕じゃない」
「そんなことない、上でさっきまでドンパチやってたんだろ? 加勢に行けなくて胃がキリキリしてた」
「ISでバトりに行けなくてモヤモヤしてたじゃなくて?」
「それはないと言ったら、嘘になるけども」
友人のISオタの極まれっぷりにまたも呆れの視線を向ける二人。居たたまれなくなった俺は口を動かし続けた。
「で? あの蜘蛛女はどうなった? 一発拳を入れたい気分なんだけど。後なんで二人はここに?」
「蜘蛛女? ああ、学園に侵入してきた女は加勢に来た敵の増援で逃げられた。一人はラファール、もう一人はブルー・ティアーズの姉妹機らしい」
「は? え、なにそれ? ブルー・ティアーズの姉妹機? どゆこと?」
「知らん、後はセシリアに聞いてくれ。私達はお前を救助するために来たんだ」
「そっ、だからちゃちゃっと終わらせるわよ」
黒と桃のリングが光り、同色の機体である甲龍となって鈴の身を包んだ。
腕には身の丈ほどある得物、双天牙月が握られていた。
「動くんじゃないわよ」
「いや、動きたくても動けないから」
「それもそっか」
やれやれ、やっと解放される。
おのれあの蜘蛛BBA、こんな雁字搦めにしたあげく俺のイーグルを奪おうとするとは。許さん。極刑に値する。
次あった時にはその体を亀甲縛りにした後に上から高笑いして「ねえ今どんな気持ち?」って煽りに煽ってやる。
胸のうちで固く誓い、リベンジハートを宿した俺は鈴に救助される時まで目を閉じて待った。
粘着性ゴムと言えどもゴムはゴム、双天牙月ほどの大刃の切れ味ならこのゴムも細切れに出来よう。ISを纏っているから俺自身には刃が当たらないので全力で斬って貰う事が出来る。
ああ、だけどイーグルの装甲に傷はつくかなぁ、いやこればかりは仕様が「ザクッ」………なんだ今の音は?
目を開けると双天牙月が床に深々と突き刺さっていた。
目線を上げると、そこにはニッコリと笑う鈴の姿と、龍の顎が開かれ、その口からほのかに光を放つ甲龍の特徴的なアンロックユニットがあった。
「あの、鈴? 龍咆より双天牙月でザクザクっと斬ったほうが早いと思うんだけど」
「いいのいいの、ちゃんと出してあげるから」
「いや、出してあげるって言うか。チャージ長くない? そこまで長かったか? 言うて数秒ぐらいじゃなかったかな? あの、空間の歪みが目視で確認できるぐらい歪んでるんだけど?」
「そりゃそうよ、最大出力でやってるんだから。あ、ごめん間違えた、もう最大出力でそっから出来るだけ加圧力上げてたわ」
「ちょ、ちょっと待とう? あの鈴さん。もしかして、なんか怒ってる?」
「んーー? 怒ってるわよ? それがどうかした?」
「あー、そうか怒ってるか、そりゃ怒って。いや、え?」
今怒ってると言った? 怒ってないじゃなく? あれー?
「ごめん、もっかい聞いて良い? 怒っていますか?」
「ええ怒ってるわ。何回も言わせんな、コロがすぞ」
「ヒェ!?」
い、怒り心頭でいらっしゃる!? 笑顔なのに目に虚無を抱えてるんですが? ヤンデレピンクヒロインが鉈を持つ張りに暗い眼なのですが!?
「ちょちょちょ待て待て!! 申し訳ないけど見に覚えがないんだが? あ、あれか? 思いっきり蹴りいれたこと? すまん! あんときは色々高ぶっていたといいますか!」
「そんなの鍛えてるからどうでも良いわよ、代表候補生なめんな」
え、違うの? じゃあなんだ? 最近鈴を怒らせること。
ご奉仕喫茶で中華喫茶の客を奪う、のは違うな。鈴の接客中に横槍を、いや違うだろ。じゃあ他は………………あ。
「もしかして」
「誰が幼児体型だって?」
「ヴァっ」
「ド貧乳がなんだって?」
「ヴォォ!」
そうだ言った! 挑発として言った! 言ってしまったよ俺!
なんで言ったのかなあんなこと! 完全に失言! 無駄にテンションテンアゲだったからなー、あんとき。
手は使えないながらも頭を抱えてしまった。なんとか便宜を計らなければ、今も龍咆の歪曲は続いている。
「ああああれは、なんというか。そう、咄嗟に出たと言いますか、深い意味はないと言いますか、た、他意はないんですよ!」
「そう、咄嗟に出るくらい私は凹凸が少ないと言いたいのね?」
うぼぁぁ! 火に油を注いだぁぁ! 逆鱗ツータッチしてしまったぁぁ!!
「すいません! ごめんなさい! 軽率な発言でした! 反省しています心の底から!」
「で?」
「だから龍咆はやめてください! 俺は元よりイーグルの装甲がぶっ壊れる! 知っていますか? ISの絶対防御は完璧ではないのですよ? SEを突破する攻撃力があれば本体にダメージを通せるのですよ!?」
「知ってるわよ? 殺さない程度にいたぶる事は出来るってことでしょ?」
「殺意120%なのは気のせいかな!」
「あ、チャージ終わったわ」
「嫌ぁぁぁあああああ!!」
Kクラッシャー並みの叫びを上げながら必死に身をよじる、しかしゴムははがれることはない。
「り、鈴。そのへんにしてやったらどうだ? 疾風だって反省を」
「黙れ乳、モグゾ」
「ひっ!」
持つべき者は止めに入ったが持たざる者の殺死線の前に萎縮してしまった。持たざる者は持つべき者の胸部装甲を一瞥し、舌を打ってこちらに向き直る。
床に突き立てた双天牙月をハーケンとして今にも咆哮が放たれんとしていた。
「辞世の句でも残す?」
「難しいこと聞くね!? いやすいませんごめんなさい許してください!」
「オッケー、確かに聞いたわ」
「ま、まって! 最後に一つだけ!!」
懇願が届いて猶予をくれた。ありがたい。
しかしどうしようもないこの状況。俺は一か八かの大勝負に出た。
「鈴!」
「なに?」
「……一夏は体型とか気にしないと思うぞ」
「死ねっ!!!」
ーーー◇ーーー
「………」
「大丈夫か疾風? 汗が凄いぞ。まさかオータムに何かされたんじゃ」
「…なあ一夏よ」
「おう?」
「鈴ってなんか禁句ワードとかある?」
「えっ? 胸のこととか。って、まさかお前!」
「………」
「良くぞ、生きててくれた」
感の鈍さワールドクラスが理解するほどのお察し力。
よく五体満足無事で居てくれたものだ、ISの防御性能を改めて思い知らされた瞬間だった 。
後で、いや明日あたりにちゃんと謝っておこう。今日は流石に二度目のドラゴンブレスは無いだろうがドラゴンクローが来そうだ。
もう鈴をからかうのは止めよう。いや、からかうにしても胸の事は絶対に言わないようにしよう、うん。
俺は自身の胸に固く誓った。
「ところで、会長はなんで此処に来たんです? 学園祭の報告なら帰ってくださいよ」
「いやんっ。そんな邪険にしないでよぉ、お姉さん泣いちゃう」
「本題をお願いします」
「ツレナイワー」
会長が話してくれたのはオータムが逃げた後のことだった。
亡国機業の増援が学園を強襲、オータムを連れ去って学園から退去。イギリスのBT搭載機、ラピッドスイッチ持ちのラファールについては、まだ調べているとのこと。
「菖蒲ちゃんのISが結構ボロボロで、倉持技研に預けられるって。菖蒲ちゃんは無事よ」
マジか。大丈夫かな菖蒲。
第一って言うと、篝火さんのとことは違うとこか。今あの人なにやってるんだろ。
「あの、ところで。楯無さんって何者なんですか? さっき忍びとか言ってましたし」
「才色兼備眉目秀麗完璧超人の生徒会長とは私のことよ」
「そういうのはいいです」
「ああっ、ついに一夏くんまで塩対応に、オヨヨヨ。コホン、更識家というのは昔から日本を守護するお家柄でね。暗部ってわかる?」
「ええと、裏の実行部隊的な?」
「そうよ。そのなかでも更識は対暗部用暗部、日本を蝕まんとする者を秘密裏に対処したりする、日本の裏の番人ね。私はその更識の若き当主なの。今の私の仕事はあなた達男性IS操縦者を守ること」
「もしかして、俺と一夏の部屋換えも?」
「ええ。まあ当面の危機は去ったでしょう。流石に立て続けに学園を襲撃するとは考えにくいし、私も少しは休まるわぁ。あ、でも絶対ではないから気を引き締めといてね二人とも」
揃って頷いた。まだ危機事態は去っていないのだから。
しかし暗部用暗部、それも当主とは。想像以上に曲者だったというわけだな。
あのハイスペックぶりも頷けるわ。
てかロシア国家代表と生徒会長も加えて属性盛りすぎじゃないかこの人。
「てことは、楯無さんは俺の部屋から居なくなるんですか?」
「寂しい?」
「あーいや…そうですね、少し寂しくはあります」
ホッとしたの間違いじゃないのか? と思ったが口には出さない、出したら俺のとこに押し入って来そうだ。
今度はマジで裸エプロンされそうだし。
「そうねー、私も寂しいわぁ。一夏くんで遊べなくなるし」
「あはは」
「なーーんてっ。そうは問屋が下ろさないのよねぇ! これなーんだ!」
じゃーーんとテンション高めに出されたのは、俺達がシンデレラの劇で被っていた王冠だった。
「王冠ですね?」
「うん、これを手にした物は栄光。つまり、シンダーラッドと同じ部屋に暮らせるという素敵アイテムなの、だっ!」
「「はぁ!?」」
これで納得した、一夏ラバーズが血眼になってまで一夏の王冠を欲し。逆に俺を全く狙わない訳を。
「なに考えてるんですか。俺と暮らして楽しいわけないでしょう」
「いやいやいや。相変わらず鈍いなお前、もう惚れ惚れするよ」
「え? おう、ありがとう?」
誉めてない、一個も誉めてない。
一夏との一緒の部屋に暮らすということは相対的に他の女の子より長く接する事が出来るという強大なアドバンテージを誇る。
女子にとっては喉から。否、全細胞約60兆から手が出る程の眉唾物なのだから。
「あら、随分他人事みたいに言うのね疾風君は。鈍いなら疾風君にも言えるわね」
「え?」
「貴方の王冠何処に行ったっけ?」
俺の王冠? 王冠………王冠………
「………………」
「疾風? 大丈夫か? さっきとは比較にならない量の汗が出てるぞ! すごい震えてるし!!」
一夏の声など既に届かなかった。てかそんなの聞いてる余裕など今の俺には砂粒一つも残されてなかった。
「か、かかかか会長」
「んーー?」
ニマニマと満面の笑みを浮かべる会長、しかし俺はそれすら目に入らない。
「お、俺の王冠は」
「うん、セシリアちゃんに取られたわね♪」
「え、えと」
「うん、セシリアちゃんは貴方と住むことになるわね♪」
「そ、それって」
「うん、おめでとう♪」
何がおめでとうなのか。会長は正に上機嫌、対して俺の顔はふるふるとバイブレーションの如く。
そして俺の物覚えのいいヤングブレインを辿ると、セシリアは王冠を手に青ざめて悲鳴をあげたことを思い出した。
「会長、拒否権は」
「ないわよ、皆にもちゃんと言ったし」
「あ、あれは事故」
「でも持ち去ったわよねぇ彼女」
「じょ、女子と同じ屋根の下などそんな」
「避妊はしっかりしなさいよ。ほら、これ上げるから」
「それの必要性はない! てかなんで持ってる!?」
「避妊は大事よ!?」
「そうじゃなぁぁあああいっっ!!!」
退路を完全に塞がれた男の嘆きが校内に響き渡った。その手にはゴム性の物が。
世界で二番目の男性IS操縦者疾風・レーデルハイトは、イギリスの代表候補生権幼馴染のセシリア・オルコットと同棲する義務が与えられたのだった。
「はい一夏君にもあげる」
「いりませんよ!」
「え、一夏君。私との子ど」
「言わせませんよ!!」