IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第52話【不確定だからこそ未来なのだ】

「バリッバリ。バリッバリ」

「おいおい、お嬢様がそんな非エレガントな顔して食っていいのかよ」

 

 次の部活動のとこに行く途中でお祭り同好会なるところからりんご飴を買ったので道中で齧りついていく。

 だがセシリアは料理部から拒否られたせいでご機嫌斜めなのか雑に赤い飴を噛み砕くという事態になってしまった。

 

 結局セシリアはなんで断られたか分からずじまいに。

 自分の噂ほど本人は知らないというのはあるが。セシリアの場合不思議とそういう噂はたっていない。

 皆が言うには善意100、いや120%で作ってくれたのに不味いと言えない。

 オルコット家使用人一同は間違いなくセシリアの為ということだろう。ベクトルが違うけど。

 

 俺から見たら原因を指摘しないで危険物扱いで放置した結果引くに引けなく、後ろに下がることも出来ずという八方塞がり状態なのだろう。

 なんとかしなければ。結局同棲の話も決着がついてないし。

 

「疾風」

「なんだ」

「これはどうエレガントに食べればいいのです?」

「しっかりしろお嬢」

 

 幸先不安だ………

 頼むからりんご飴をそんな光のない目で見るな。悲しくなるから。

 

「あれ、奇遇ね」

「よっ」

「おいっす」

 

 一夏と鈴を発見。

 イケメン執事と活発チャイナ娘という組み合わせは一夏という存在も相まって存在感が半端じゃない。

 

「その様子だと無事に勝ち取れたみたいだな」

「お陰さまでね。ていっても四番目で最後だったけど」

「一緒に回れてよかったな」

「まあね」

 

 心のこそから嬉しそうに笑う鈴。

 教えた甲斐があったというものだ。

 

「一夏は一夏で若干顔に疲れ出てる?」

「いや全然そんなことないぞ。まだまだ元気だ」

 

 即座にそう言える辺り流石というしかない。

 一夏のいつもの気さくな笑顔を見て感心する。

 

「セシリアはどうしたんだ? なんかりんご飴をジーっと見てるけど」

「自分自身を見つめてんじゃね?」

「………あら? 一夏さんと鈴さん、いつからそこに?」

「あんた大丈夫なの?」

 

 思わず半眼になる鈴の前でセシリアはりんご飴をおもむろにガブリ。釣られて俺もガブリ。

 

「二人はこの後何処に行くんだ?」

「部活の出し物まわろうかなって。一夏は部活のやつどっか行った?」

「えっとシャルとは料理部、ラウラは茶道部で箒とは」

「剣道部か?」

「あたり。あとさっき鈴とホラー研究会のお化け屋敷に行った。結構怖かったぞ、鈴なんか終始震えっぱなしだった」

「余計なこと言うな!」

 

 脛を的確に打ち抜いた鈴の蹴りは一夏を悶絶させるには充分すぎた。

 

「それで、鈴はハプニングついでに一夏に抱きついたと」

「だ、抱きついてないわよ! ていうかそんな余裕なんかなかったし」

「勿体ねえ。鈴、その時の一夏との出来事をちゃんと思い出してみようか。幸せな気分になれるぞ」

「……駄目だわ! お化け屋敷のビジョンしか浮かばない! てか嵌めたわねあんた! また怖くなってきたじゃない!」

「ハッハッハ」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「はーいいらっしゃーい。おっ、また執事とメイドさんだわ」

「ども、一夏の紹介で来ました」

「あら嬉しい。ようこそ茶道部へ。ところで写真とっても?」

「「どうぞどうぞ」」

 

 行く先々で写真をねだられてもはや疑問も躊躇もなかった。

 即座にポーズを取るのも手慣れたもの。

 

「しかし見事な部室ですわね。学校の中じゃないみたいです」

「IS学園ってそこらへんの気合いの入れようは凄いのよ」

「納得です」

 

 畳張りなのはもちろんのこと、壁や棚などもしっかりしている。

 出された茶器も安物ではなくちゃんとしたものだろう。

 ふとカッコーンという音が聞こえた、何処かにししおどしでもあるのだろうか? 

 

 まあとにかくIS学園はIS関連ではない設備も充実しているのだ。そのおかげもあって部活の催し物はクラスのものとは一線違ったものを感じる。

 

「じゃあこちらに正座でどうぞ」

「せ、正座か」

 

 確かに茶室で胡座や崩しは違うよな。

 言われたとおり正座したはいいものの、茶室に執事とメイド服が正座って完全に浮いてるよな。

 

「ところで、あなたこういう経験は?」

「まったくない。ネットで見たぐらい」

「体験だからそこまで作法に厳しくないから安心して。ここの目的は抹茶の美味しさと和菓子を楽しむ為の物だから。ここだけの話、行きなり固くやりすぎると萎縮しちゃって票が貰えないからね」

 

 成る程、こういうところで戦略が動くわけか。

 それでも正座を指定してくるってことは、そこだけは譲れないという気持ちの現れだろうか。

 

「はい、和菓子でございます。食べてる間にお茶を点てとくからね」

「お茶を点てる?」

「抹茶をお湯でとかして、そのブラシみたいな………なんて名前ですかそれ」

茶筅(ちゃせん)

「ありがとうございます。その茶筅で抹茶とお湯を撹拌して泡立てる」

「そうするとどうなりますの?」

「美味しく、なる?」

 

 漠然とした答えにセシリアは俺から部長に視線を移した。

 部長はにっこり笑って頷いた。

 

「はい、あってますよ。理由といっても、このほうが美味しくなるというのが正解です」

「よかった………。あ、すいません知ったような感じで話して」

「いーえ、おかげで説明する手間が省けたわ。はい、お茶菓子です」

 

 出されたのはねりきり(白餡とつなぎを混ぜ合わせたもの)で作られた桜と白兎だった。

 

「これは、なんとも愛嬌のある」

「まさか可愛すぎて食べれないという?」

「むっ、出された以上責任をもって食べますわ」

 

 そういったセシリアは白兎をパクリと食べた。

 俺も桜のねりきりを取った。

 五つの花弁に真ん中には花芯を模した黄色に着色されポツンと。デフォルメされたデザインだが、一目で桜と分かるあたりポイントはちゃんと抑えられたフォルムだ。

 桜を頬張ると、白餡の甘味と舌触りが広がって溶けていく。

 

「美味しい。優しい味ですわね」

「セシリアちゃんはあまり抵抗がないのね?」

「というと?」

「さっき織斑君と来ていたボーデヴィッヒさんなんかどう食べたらいいのか分からなくて眉間に皺がよってたわ。兎ちゃんと目があっちゃったのね」

「なんですかそのほんわか話」

 

 前から思ってたけど、時々ラウラのことを軍人だって忘れる時がある。

 なんつーか。副官の間違った日本知識を鵜呑みにしたり、可愛いものに目がなかったり、純粋過ぎるというか。

 あれでISを乗せたら苛烈に敵を殲滅しにかかるドイツ最強部隊の部隊長だと言うのだから、人間とは見た目だけで認識してはいけないのだと分からされる。

 

「どうぞ」

 

 俺とセシリアの前に点てられた抹茶が出される。

 撹拌された抹茶はきめ細かい泡に覆われている。

 

「確かお点前いただきますといって飲んだ気がする」

「成る程」

「「お点前いただきます」」

 

 ズッと抹茶に口をつける。

 抹茶アイスより苦い抹茶が口に広がる。思ったよりもったりしていない。

 

「なんとも浸透するような苦味ですわね」

「お茶菓子と一緒に食べれば苦味が薄れますよ」

「ふむ」

 

 白餡で作られた白兎さんを食べ、再び抹茶を流し込んでみる。

 

「ほー。なんともホッとする味といいますか。心が洗われるといいますか」

「美味しいです」

 

 最後の一口を飲みほし、茶碗を置いた。

 

「結構なお点前で」

「…結構なお点前で」

 

 〆の台詞を言うと一拍遅れてセシリアも言ってくれた。

 

「今日はありがとうございます。とても美味しかったですわ」

「それはそれは。オルコットのお嬢様に言って貰えて嬉しいです」

「生の抹茶って凄い苦いイメージあったんですけど、そこまでじゃないんですね」

「結構誤解されてるのよ。よかったら広めてくれたら嬉しいな」

「わかりました。クラスの人に言ってみます」

 

 本当は色々細かい作法とかあったんだろうな。最初と〆の台詞も多分タイミングとかあったんだろう。

 

 部長さんに見送られ、俺達は茶室を後にした

 

「そういや聞いた話なんだけどさ。茶道部の顧問って織斑先生らしいぞ」

「え? そうなんですの?」

「そうそう」

「それなら大層人気の部活なのでしょうね」

「と思うじゃん? 来たやつ全員正座されてふるいにかけられたらしいぞ。しかも、二時間も」

「に、二時間………!」

 

 ヒッと悲鳴が漏れた。

 それもそうだろう。臨海学校のデブリーフィングでわずか四分の一である30分で阿鼻叫喚の声をあげた箒を除く一夏ラバーズの姿を思い出せばこうもなろう。

 現に短時間なのにも関わらず俺達の足に若干の痺れがある。

 

「てっきり剣道部かと思ってましたわ」

「それな? じゃなくても運動部かと思ったのに」

「織斑先生はお忙しい方ですから、文科系なのではないですか?」

「そうだな。しかし和服でお茶を飲む織斑先生か………」

 

 髪を纏め、和服に着替えた織斑先生。

 流れるような動作、そして抹茶をすする。

 

「………こりゃあファンも殺到するわ」

「想像だけで美しいとはいったい………」

 

 その場にいなくてもやはり織斑先生は織斑先生だった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 セシリアが少しよりたいところがあると、寄ってみたのは吹奏楽部の楽器体験コーナーだった。

 

「おっ! 本日54人目のお客様! と思ったら奉仕喫茶No.1コンビじゃん! 写真」

「いいですよ」

「やりー!」

 

 ピロリンとスマホの音声が鳴った。と思ったら回りから一気に電子音の嵐。

 流石吹奏楽部、スマホでさえ楽器になり得るのか。

 

「ここではどのような楽器を体験出来ますの?」

「ここにあるのならどれでも出来るよ」

「マジすか、太っ腹ですね。その割にはお客さんあんまり来てないみたいですけど」

「ほんとね、なんでだろうね?」

 

 流石にわからない。

 楽器の体験なんてそうそう出来ないものだと言うのに。

 吹奏楽部は悪い噂なんてないから益々謎だ。

 

「疾風、なにかやってみたいのは?」

「やってみたいっていうか。音楽室来たならアレはやりてえな」

 

 おもむろに向かった先には木琴と鉄琴が。

 バチを持って、木筋の真ん中を叩く。

 

 コン♪ 

 

「んーっ」

 

 そのまま横に滑らせると、連続してこ気味の良い音が鳴った。

 

「やっぱいいな、木琴。小学校の音楽ステージだと絶対木琴だった。掃除したあとに隠れてやってて怒られたことあるけど」

「あなた好きに対するリミッター外れてますわよね」

 

 否定できないな! 

 する気もないけど! 

 

「セシリアもなんか触れば?」

「わたくし弦楽器以外触ったことがなくて」

「ふーん、じゃああれ触ってみれば?」

 

 指差した方向にはハープが。

 吹奏楽部ってハープも置いてあるんだな。

 

「ハープですか。流石にバイオリンとは毛色が違うような気もしますが」

「やる前から何言ってんのさ。すいません、こいつにハープやらせてみてください」

「はいはいただいま!」

「え、ちょっ、そんな強引に」

 

 セシリアは吹奏楽部員にハープのとこまで拉致られていった。

 俺は引き続き木琴を叩いてみた。

 キラキラ星でもやってみようか、それとも某核実験怪獣のテーマとか。

 

 10分後。

 

 ポロン♪ ポポポロン♪ 

 

「いや出来るんかーい」

「まだ触りだけですわよ?」

 

 謙遜しながらも得意気なセシリアは優雅にハープを弾いてみせた。

 流れるように動く白い手で弦を弾く。なんかあやとりみたいな動きだなと思ったが、見続けるとなかなか。

 というか似合うなぁ。

 

「ねえ、オルコットさん綺麗だね」

「ですね」

「凄いねレーデルハイト君」

 

 あ、これは。

 

「こんな綺麗な子と同棲出来るなんてさ」

「その話題は審議中なんでやめて下さい」

「あらごめんね。でももう確定なんでしょ?」

「ほら、演奏聞きましょうよ」

 

 露骨に話題を反らしてセシリアの演奏を見た。

 

 綺麗な子? 

 そんなのとっくに分かってる。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「はぁ………」

「疾風?」

「あ、ごめん」

 

 無意識にため息が出てしまった。

 自分から誘っておいてなんだが。セシリアと二人で学園祭を回るのは得策ではなかったかもしれない。

 

 あれから色々な部活を覗いてみたが、何処に言っても俺とセシリアの同棲話をコソコソ話しているのを耳にしていた。

 俺だけじゃなくセシリアに聞いてくる人たちも居たし、その時のセシリアは明らかに困っていた。

 

 ………だけどいつ話すんだ? 

 俺からその話題を振ったら屋上みたいになるし、だけどこのままなんの話もなくズルズル同棲。

 本当にそれでいいのだろうか。

 

「どうかしましたの?」

「え、いや。なんでもない」

「そう。もうすぐ剣道部の部室ですわよ」

「ああ」

 

 通路の先にはいつかの武道館。

 そこで俺と一夏は会長にコテンパンにのされたんだよな。

 

「お邪魔します」

「お邪魔しまーす………?」

 

 入ってみると、圧倒的に暗い。

 なかの光は行灯だけで凄く薄暗い。

 

「なあセシリア。ここって剣道部の部室であってるよな?」

「武道館、ですから。そのはずですが」

「いらっしゃいませ?」

「うわぁっ!?」

「うひゃあ!?」

 

 突如後ろに現れたのは剣道具に身を包んだ女子だった。

 暗がりの中で行灯に照らされたフル装備は正直ビビる。

 

「おや、誰かと思えばレーデルハイト君とオルコットさんだね?」

「え、ええ。あの、ここは剣道部で」

「あってるよ?」

「ここではどのような出し物を?」

「占いコーナーだよ?」

「剣道部なのに!?」

 

 どういう方向転換チョイスなんだこれは。

 

「あの、聞いた話だと昨日は剣道の体験コーナーだと聞いたのですが」

「最初はそうだったんだけどね? 昨日は圧倒的に客が来なくてね? なんと御客様一桁だったのよ、どう思う?」

「なんでそんな人気ないのかと疑問に思います」

「そうだよね? 剣道って、いいものだよね?」

「いや俺達に聞かれても」

 

 今気づいたけど、この人受け答え全部疑問系だ。

 植物のように生きたい殺人鬼と遭遇したら怒れそうだ。

 

「まあそんなわけでね? 急遽部長である私の判断で占いコーナーに変更したわけだったのだよ、面白いでしょ?」

「思いきりましたね」

「それで客足は」

「10倍ぐらいかな?」

 

 一桁の十倍………これ票数は望めないな。

 てかこの人部長だったんだ。

 疑問系剣道部部長。IS学園の部長ってどれもキャラが濃いと思うのは気のせいか? 

 

「せっかくだから占ってく? お金はいらないよ」

「え、そうなんですか?」

「うん、当たるか分からないから?」

「占いだからそうなんでしょうけど。それ自分で言ってて良いんすか」

「いいんじゃない? じゃあ座って?」

 

 勧められるまま座布団に座る。

 行灯の薄暗さから雰囲気は抜群だが、目の前のフル剣道着が相手だとどうにも。

 迫力はあるのだけれど。

 そんな部長の懐から出されたのは。

 

「花札?」

「うん、私がやるのは花札占いなんだよね?」

「初めて聞きましたわ」

「今日作ったからね?」

「はいっ?」

 

 もう一回言おう。はいっ? 

 

「とりあえず二人の恋愛運でも占うね?」

「あの、部長さん? 選択肢は」

「セシリアもういいよ。部長さん、それでお願いします」

「疾風まで」

 

 既に突っ込む気もない俺はそのまま流れに身を任せることにした。

 半眼で見つめるなか、部長はせっせと花札を並べていく。

 

「まずレーデルハイト君。青短が出てる、山あり谷あり苦難の連続かな?」

「そこは疑問符にしないでくださいよ」

「あら? むしろ疑問符のほうが救いがない?」

「だから聞かないで下さいよ。疑問符取りましょう部長」

「ごめんなさいね? この様式は私の生き様なの。ラッキースポットは第一アリーナ?」

 

 全てに疑問をつける人生ってそれはそれでハードそうだぞ? 

 てかラッキースポットが限定的すぎる。

 

「オルコットさんは猪鹿蝶。恋敵に注意、かな?」

「こ、恋敵っ!」

 

 おおっ。こっちはえらく反応するね。

 

「あの、具体的にはどういう?」

「そこまでは見れないかな? ラッキースポットは空だね?」

「いきなり難易度上がった」

「それでいて漠然的ですわ」

 

 この占いほど半信半疑という感情が浮かんだことはないな。

 信憑性がまるでないぞ。

 とりあえず花札占いは終了みたい。

 

「最後は二人の相性占いでもしようか?」

「相性占い?」

「二人はなにかと物入りでしょ? 占ってあげるよ?」

 

 物入り、確かに物入りであります。

 

「それでは二人とも向かい合って手を合わせて? 目線を合わして? そう、そのまま十秒間ね?」

 

 言われた通りセシリアの目を見たまま手を握りあった。

 

 ………

 

 ………

 

 ………

 

「………あの部長さん? もうとっくに10秒こしてるんですが?」

「うん、もう一分たってるよ?」

「何故止めませんの?」

 

 気恥ずかしさがジワジワ来た俺達は自然と腕を離して部長さんに向き合った。

 部長さんは面越しに笑っていた。

 

「それで今ので何がわかったんですか?」

「ん? 二人はお互いを嫌ってないよね? ってこと」

「へ? それだけ?」

「うん、だってお互い嫌っていたら一分も手を合わせて見つめ合わせても嫌でしょ? ということで二人は仲良しですね?」

「「はぁ………」」

「はい、終わり」

「「………………」」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ということで宜しくお願いします」

「アハハ、それは大変だったね」

「大変というか………呆れといいますか」

 

 どうにも釈然としない俺とセシリアは本家本元の占い研究会に足を運んだ。

 あの疑問系部長の話をしたら占い研究会会長のナタリー先輩が困ったように笑った。

 

「私と彼女は同じクラスなんだけどね。まあ、あのスタンスだから少し不思議ちゃん扱いされてて」

「でしょうね」

「でも剣道の実力は本物よ。これまで数多くの大会を制してきたみたいだし。あの篠ノ之さんも負け越してるぐらいなんだから」

「あれでですか」

「あれでよ」

 

 人ってほんと見かけによらないなー。

 

 ナタリー先輩が出したのは七色の石だった。

 

「さて私がやるのは石占いだ。といってもうちの流派は他とは違う我流なんだ。うちの母さんに比べたらまだ未熟者だけど。結構当たると評判の私だ」

 

 おお、さっきとは違って期待感ありありだ。

 

「さて何を占おうか」

「そうですね。今後の成功とか」

「わたくしもそれで」

「オッケー、じゃあ先ずはレーデルハイト君からね」

 

 サークルの中に石が撒かれる。

 紫に白の魔方陣っぽい紋様の上に散りばめられた七色の石はとても幻想的だった。

 

「ふーむ」

「どうですか」

「レーデルハイト君は何か壁にぶつかると出てる」

「壁ですか?」

「うん、君はもうすぐ困難の壁にぶつかる。その壁を突破しなければ、君の運気は悪化の一途を辿るだろう」

「え、どうすればいいんですか?」

「勿論悪いことばかりではない。その壁を突破すれば、逆に運気が爆発的に上昇するだろう」

 

 なんともハイリスクハイリターンな壁だな。

 壁か、また亡国機業(ファントム・タスク)が襲撃してくるのだろうか。

 

「壁に当たった時の対処法はそれぞれだ、ぶち破るもよし、迂回するもよし、よじ登るのもよし。だがその為には君自身が変わらなければならない」

「俺が変わる?」

「そうだ。今のままでは壁は突破できない。君にとって劇的な変化というものが必要になる。と、この石達は言っているのさ」

 

 変わるって、戦い方とか、それとも精神的な? 

 

「次はオルコットさんだ」

「お願いします」

「はいよ、ホイッ………おおっ? これは面白いね」

「面白い?」

 

 覗き込んでみると………あれ? なんか。

 

「俺の時と配置が似てる?」

「え?」

「よく気づいたね。そう、さっきのと配置が同じ石がある。でもオルコットさんの場合は既に困難の壁にぶつかっていると見ていいだろう。それも複数だ。どうかな?」

「………当たっていますわ」

 

 セシリアは渋い顔で石を見つめている。

 

「オルコットさんはそれについて結構悩んでるし、行き詰まっていたりするかい?」

「はい」

「そういう時は自分自身を見つめ直し、受け入れ、理解すること」

「わたくし自身を」

「オルコットさんは見るに少し意地を張りがちな性格に見えるかな」

「そんなこと」

「いや、大体当たってます。それに加えて負けず嫌いです」

「ちょっと疾風?」

 

 いや俺はありのままというのを言っただけでね? 決して悪口を言ったわけではないぞ。

 だからそんなきつい目で睨むな、睨むな。

 

「じゃあ次は何を占おうかな?」

「恋愛運でお願いします」

「え、セシリア?」

「べ、別に他意はありませんよ? 疾風も先程の占いで納得がいってるわけではないでしょう?」

 

 確かにそうですけども。

 そういう割にはには結構早口ですね。

 やはり女子は恋愛事が気になるお年頃なのだろうか。

 

「じゃあオルコットさんね…………オルコットさんの場合、『待ち人は既にあり』だって」

「「え?」」

 

 思わず俺もえっと言ってしまった。

 

「それが誰を指すのか、明確な特徴や人物はわからない。でも貴女は既に会っている。それに気付けば、その人はオルコットさんに多大な影響力を与えるでしょう。唐突だけどレーデルハイト君、耳をふさいでくれるかい?」

「え? あ、はい」

 

 言われた通り耳を塞いだ。

 ナタリー先輩がセシリアの方に乗り出して耳打ちをした。

 

「案外近くにいたりしてね?」

「っ!」

 

 ポソリと呟かれたことにセシリアの身体が跳ねた。

 

「なっなっななな」

「レーデルハイト君、もう離していいよ」

「はい。ってなんかセシリアバグってるんですけど、なに言ったんです?」

「ごめん、これは言ったら効力がなくなるから」

 

 それなら、仕方ないですね。

 そんな気になるとかそういうのでもないし………いや少し気になるな………。

 

 未だバグっているセシリアを一先ず置いといて今度は俺の恋愛運の番。

 石がまた紋様の上にばら蒔かれた。

 今回はセシリアとは全く別の位置。

 

「レーデルハイト君って今好きな子いる?」

「いませんけど」

「成る程、じゃあ気になる人は」

「気になる人は………いないです」

 

 一度口のなかで噛み砕いた言葉にナタリー先輩はふむと顎に手を置いた。

 

「レーデルハイト君の場合はねー。確かにまだ恋愛はしてないと出てる」

「でしょうね」

 

 てか当ててるなぁこの人。

 

「石が言うには、これから君は間違いなく苦労するということ」

「まあこのご時世ですからね。一夏みたいによほどのことがない限りそう巡り会うものはないでしょう」

「まあねー。君の場合、結構道は険しそうだ。占いだとレーデルハイト君は苦労する。女難の相すら出てる」

 

 ヴェ、女難の相って一夏だけの専売特許じゃなかったのか………

 今失礼なこと言ったって? 揺るぎない事実だから仕方がないじゃないか。

 

「先輩、この場合俺はどうすればいいですかね?」

「そうだねぇ。じゃあそれについての活路も占ってみようか」

「いいんすか? 結構占ってくれてますけど」

「いいよいいよ。半ば私の趣味的なものでもあるし。私も知りたいからさ。料金は一律にさせて貰うから安心してくれたまえ」

 

 先輩はそういって再度石を転がした。

 今度は何処か纏まってるような感じに。

 

「出ました」

「どうです?」

「まあシンプルに言うとね」

「はい」

「止まるな、挫けるな、揺れるな。かな?」

「なんとも直線的ですね。まるで少年漫画みたい」

「ハハッ、君の場合強ち間違いではないのではないかい? 特別という点を見ればね?」

 

 まあそうですね。

 一夏が一号ヒーローなら俺は二号ヒーローだな。

 昨今の二号ヒーローは主人公よりヒーローしてるってのがもっぱらだけど。

 

 てかこれ恋愛運の話だよね? 

 

「男の子はそれぐらいが丁度いいと思うよ? まあこれは君より織斑君のほうが当てはまると思うけど」

「まああいつは典型ですからね」

「フフッ。じゃあ次で最後にしようか。何がいい? 私としては君たちの相性を見たいところだけど?」

「あ、相性ですの?」

 

 あ、復活した。

 

「さっきので不完全燃焼でしょ? 私としても是非占わせて欲しいなぁ。駄目かな?」

「そ、そうですね。それではお願いしますわ。別に気になるというわけではありませんからね? 単に不完全燃焼なだけですから」

「お前さっきから言い訳がましいな」

「お黙りなさい」

 

 はーい。

 

 石投げスタート。

 

「ほーう」

「「どうですか?」」

「………」

「「………?」」

「相性はいいよ。良きパートナーとなりえるでしょう」

「それはどういう意味で?」

「それ以上はわからないかな? 決めるのは君たち自身だ。それで未来は如何様にも変わるだろう。少なくとも同棲しても問題はないと出てるよ」

「ちょっ、どさくさに紛れて何調べてるんですか!?」

「ん? なんか悩んでる風に見えたのはそれ関連だと思ったけど? 違ったかな?」

 

 違いませんけども! 

 違いませんけどもっ! 

 

「まあまあ君たちの関係性は概ね良好だ。大いに青春を謳歌したまえよ」

「はぁ、そうですか。どうもありがとうございます」

 

 視線をはずすついでに壁にかけられてる時計を見ると、生徒会の出し物の時間が迫っていた。

 

「すいません。そろそろ時間なので失礼します」

「そうか、また更識が何かやらかすのかな?」

「さぁ、例のごとく何も知らされてないので」

「そうかそうか。まあ精々頑張りたまえ」

 

 料金を払って俺達は占い研究会を後にした。

 

「つーかさ」

「?」

「俺の場合剣道部部長さんの言ってたことがほぼ当たってた件について………」

 

 なんか、よくわからないけど悔しみを感じてきたんだが、これは正当な感情だよな? 

 

「てかセシリアは恋敵的なのいるわけ?」

「いるわけないでしょう。第一恋なんて生まれてこの方したことありませんわ」

「だよなー」

 

 てか俺恋愛運結構ヤバイ感じだなー。

 さっきフラグぶちおれたから余り信憑性ないけども。

 

 どーなるかなー。俺の青春。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 疾風とセシリアが占い研究会を出たあと。ナタリー研究会会長は一人石を投げていた。

 石の配置を見て、ナタリーはニンマリと笑みを浮かべた。

 

「本当はまだ言いたいことあったんだけど。私の口から言うのは野暮だよねー」

 

 再度石を集めて投げる。

 

「未来なんて確定なんかしない。石ころみたいな要素でさえ未来は簡単に分岐してしまう」

 

 再度石を集めて投げる。

 

「だからこそ人生というものは面白い。精々頑張りたまえ少年少女達。なーんて」

 

 再度石を集め、紋様に向けて投げつけた。

 

 果たしてナタリー研究会会長に何が見えたのか。

 それは本人しか知りえないのだった。

 

 




 

 剣道部部長さんのキャラわりと好きな自分。
 見た瞬間ガンダムSEED外伝の火星人を思い出しましたが。

 未来は石ころ一つで変わる。二次創作もそんな感じだよなと書いてて思いましたね。

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