IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 いつもより時間がかかってしまいましたが。書くの楽しかったです。

 この放送は、はっちゃけとパロディの提供で、お送りいたします。




第57話【燃やせ!レーデルハイト魂!!】

 日本のとある小島。

 そこに建つのはレーデルハイト工業が所有する大型実験施設、そして工房施設。

 本社地下のラボでは扱いきれない装備。または新装備の実験として使われている。

 スカイブルー・イーグルの新装備、基礎設計もここで行われていた。

 

 青い海に囲まれた島。

 その海岸に似つかわしくない、しかし妖艶な存在感を放つ露出の多い赤いドレスを身に纏う亡国機業(ファントム・タスク)実働部隊モノクローム・アバターのリーダー、スコール・ミューゼルが居た。

 

「あれね?」

 

 コンパクト双眼鏡が見つめる先には施設に繋がるゲート。

 監視カメラが多数配備されており、警備は厳重だった。

 

「流石天下のレーデルハイト工業、セキュリティはバッチリね。まあイレイズドには及ばないでしょうけど」

「なあスコール」

 

 スコールは通信機越しに聞こえた自身の恋人であるオータムの声に耳を傾ける。

 

「こんな一企業にスコールが出向く必要あるのか? むしろスコールがイレイズドに行くべきだったんじゃね?」

「Mが狙う銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は凍結中。アメリカ代表のファング・クエイクも未完成だもの。Mの腕なら万が一でも逃げ切れるわ」

「こっちの方が難易度高いってか?」

「ええ。なんせ日本には一筋縄でいかない人間が三人も存在する。でも今はその内の一人であるアリア・レーデルハイトは彼処にはいない。あとなんか嫌な予感がするのよね」

 

 スコールの仕事はいつも鉄火場といっても過言ではない。こういう時の女の勘は馬鹿に出来ない。というのはスコールの談である。

 

 これから奪いに行くのはレーデルハイト工業の新型。

 それはアリア・レーデルハイトの専用機として建造される、イーグルに続くライトニングシリーズ2号機の強奪だった。

 

 情報によると既に完成率は70%。完成した状態でアリアの手中になる前に奪い取る。

 アリアが本社に出勤してきたというのは他の構成員を通じてオータムから報告済み。今なら彼女からの妨害はない。

 

「スコール、Mがおっ始めたぞ」

「なら私も行きましょうか。ぐずぐずしてると日本代表も出張ってくる可能性もあるし。じゃあオータム、情報索敵宜しくね」

「おう、気を付けろよ」

 

 通信を切り、スコールは眼前の実験施設を眼中に納める。

 

「行くわよ、ゴールデン・ドーン」

 

 スコールはISの待機形態である金色のイヤリングを指で弾いた。

 

 

 

 

 

 数刻前まで平穏を保っていたレーデルハイト工業実験施設は警報と警告ウィンドウに埋め尽くされていた。

 

 下ろされた隔壁が熱で溶解し、吹き飛ばされた。

 避難シェルターに避難する一般職員に目もくれずスコールは文字通り一直線に目標に向かっていく。

 

 スコールの専用機、ゴールデン・ドーン。

 黄金の夜明けという名前に違わず全身が金色のカラーリングで施されている。

 腕に装備された大型の鞭と巨大な尾という異形の姿は、金色のカラーと相まって正に美しき獣と呼ぶに相応しかった。

 

「エレガントとは言えないけど。たまには悪の組織らしく強引に行くのも悪くないわね」

 

 フルフェイスメットの中で上機嫌に笑みを浮かべるスコールは両腕の火炎機構の出力を上げる。

 抵抗という抵抗がないまま次々と隔壁を火の粉を超圧縮させた高熱火球【ソリッド・フレア】で吹き飛ばしていく。

 

「この先ね」

 

 最後の隔壁を打ち破り、メイン実験エリアと思われる広い空間を探知した。

 

 本来は自動ドアだが、開けてくれる訳もなく。スコールはソリッド・フレアを打ち込んだ。が、表面が焦げるだけで破るには至らなかった。

 

 実験エリアなだけに他の隔壁に比べて強度は折り紙つき。ソリッド・フレアの出力を最大にしてこの辺りごと吹き飛ばすことも可能だが、その場合施設ごと倒壊し死者も出るだろう。

 

 だがそれで大人しく帰る選択はスコールにはない。

 スコールはゴールデン・ドーンのテールユニットをガパッと広げて扉に密着させた。

 

「開かぬなら、ぶち抜きましょう、ホトトギス。なんてね?」

 

 テールユニットの先端に仕込まれたヒートパイルが扉に打ち込まれ、鋼鉄を穿つ音が辺りに響いた。

 二発、三発、四発と打ち込まれ続けるドアはヒビと熱でひしゃげていった。

 

「そーれっ」

 

 最後の一発にドアが熱膨張と衝撃で爆発した。

 

 爆炎の中から現れるゴールデン・ドーンは正に力の象徴足るISの別側面を明確に現していた。

 生身の人間がどうあっても敵うわけない究極にして不完全で不平等な絶対兵器。

 

 今の社会を形作ったインフィニット・ストラトス。

 ISを扱える女が絶対であり男はとるに足らないものとされ、男はその社会を前に萎縮していく世界。

 

 ISに立ち向かおうとする男など、この世に居るはずがない。

 

 一部例外を除いて。

 

「さて、お宝は何処………」

 

 ゴールデン・ドーンが煙から出てきた瞬間、スコールに向かって弾丸の土砂降り(スコール)が降り注いだ。

 

「え、なに!?」

 

 IS反応がないせいで反応が遅れたスコールは数発の銃弾をシールドバリアで受け止めたあと、自身の防御兵装である熱線バリア【プロミネンス・コート】を展開して防御した。

 

 それでも尚、途切れることのない銃弾の雨の方に目を向けたスコールは。

 

「へぇ?」

 

 自分でもわかるほど間抜けな声をあげてしまった。

 目を向けた先にはバリケードの向こうから撃ち続ける複数の男性。

 それなら特に驚くことはない。抵抗を予想していなかった訳ではないし、ましてやこっちはテロリストなのだから撃たれることも想定のうち。

 

 問題は撃ってる面々だった。

 

「レーデルハイト工業へようこそぉぉぉ!!!」

「歓迎するぜ! 盛大にな!」

「撃て! 撃ち続けろ! 銃身が焼けつくまで撃ち続けるんだ!」

 

 現在進行形でスコールにアサルトライフルをぶっぱなしてる男どもは派遣された軍隊やPMCでもなかった。

 ゴールデン・ドーンに搭載された顔認証システムに表示されたのはレーデルハイト工業に所属するエンジニア(・・・・・)の名前だった。

 

 ISが世に出回ってから各国の軍の在り方もガラリと変わった。

 戦闘機や戦車を主戦力としていた軍はISに変わり、軍用費や人的費もそちらに回されていった。

 出番を失い、入ってくる女性に対してあぶれていった男性が軍をやめることは珍しいことではなかった

 そんな路頭に迷うこととなった英国、日本の男性資源を拾い上げたのが当時から軍と密接な関係を築いていたレーデルハイト工業だった。

 

 男たちはISに限らず幅広い企業展開を行っているレーデルハイト工業の傘下企業に配属された。

 男性の就職率が過去最底辺という社会問題となったIS黎明期(れいめいき)時代に取り残された男性にとって正に地獄に仏だった。

 

 軍人出身故のフィジカル溢れる貴重な労働力によりレーデルハイト工業は更に波に乗った。

 レーデルハイト工業の男性従業員の半分はそんな退役軍人だった。

 

 近年発生するIS強奪に対抗する為、この研究施設に集められた元軍人は卑劣な強盗に天誅を下すため再び銃を手に取った。

 

「今こそ拾われた恩義を果たす時!」

「バリアがなんぼのもんじゃーい!!」

「撃て! 奴のエネルギーを消費し続けろ!」

「レーデルハイト魂!!」

「「「レーデルハイト魂!!!」」」

「なんなのこの人たち暑苦しい!」

 

 元軍人の熱気を前に熱を操るスコールも思わずドン引きした。

 それもそうだろう。戦闘用アーマーとバリケードというIS相手にはあまりにも貧弱な防御力で自社の名前を銃声に負けない声量で叫びながら嬉々として銃をぶっぱなしているのだから。

 

「悪いけど、貴方たちに当てる時間はないの」

 

 余りにも非常識な光景を前に流石のスコールも狼狽えたが、直ぐに気持ちを切り替える。

 

 銃弾を弾く熱線バリアの周囲に展開した九つの火球をバリケード付近に飛ばした。

 着弾と同時に発生した熱気と風圧に元軍人チームはひっくり返った。

 

「うわっちー!!」

「燃え尽きる程ヒート!」

「アーマーなかったら死んでたー!」

「テンションおかしいわよ貴方たち………」

 

 暑さにのたうち回る彼らにもはや呆れすら感じるスコールはバリアを解除し、目的のISを見つける為に周囲をサーチングする。

 すると後方から猛スピードで接近する機影が………

 

「Surprise Attack!!」

「っ!」

 

 真後ろから振り下ろされた長槍をテールユニットで弾き返した。

 そのまま振り下ろされるテールユニットをISパイロットはバックステップで躱した。

 

「Shit! 奇襲に対応するとはやるじゃない!」

「いやトンプソンさん。明らかにステルスモードじゃない状態で奇襲と言われても………」

「細かいことはいいの!」

 

 トンプソンと呼ばれる茶髪の女性が身に纏うのは現在IS学園に居る徳川菖蒲の専用機の打鉄・稲美都と瓜二つ。

 カラーリングは元の白地に黄緑という鮮やかさとは打って変わり、元の鈍色に黄色の装飾が加えられたシンプルな物だった。

 

「打鉄・稲美都パッケージの正式採用タイプ。稲鉄(いながね)パッケージ」

「ご存じでしたか。近日ロールアウトなのでそこんとこ宜しくっ!」

「テロリスト相手に販促なんて、商魂逞しいわね」

「レーデルハイト魂ですからっ!」

 

 振り下ろす槍はスカイブルー・イーグルが使っているのと同じ長槍、ボルテック。

 打鉄自体はプラズマ機構を持たないため、パッケージからエネルギーケーブルを繋いで運用している

 帯電する青い槍を両腕の鞭でガードした。

 

「ところでテロリストさんのお名前は!」

「答えると思ってるの?」

「そうでした! 自分から名乗らないで相手に名前を伺うのは失礼でしたね!」

「いや、そういうことではなくて」

 

 トンプソン女史はスコールと距離を離し、ボルテックを床にドンと置き、比較的控えめな胸を突き出して高らかに声を上げた。

 

「私の名前はアメリア・トンプソン! 21歳! 元イギリス代表候補生で現在レーデルハイト工業の戦闘警備員! 誕生日は8月29日! 血液型はO型! 身長は166cm! 体重はっ、大人しく捕まってくれたら教えてあげます! 趣味はアニメ視聴で、好きなものはフィッシュ&チップス! あとはえーと、彼氏いない歴は年齢と同じっ!! 現在絶賛募集中!!」

「…………」

 

 スコールはメット越しに「変なのが来た」という顔をした。

 それに気づかずにアメリアはボルテックをあたかもマイクのようにスコールに向けて問うた。

 

「さあ貴女のお名前なんですか!」

「だから答えないってば」

「あれぇ!?」

 

 めんどくさそうに撃たれたソリッド・フレアをボルテックで叩き落としたアメリアの口からすっとんきょうな声が出てしまった。

 

「ちょっと! 名前ぐらい良いじゃないですか!」

「いや、流石に今のは無理があったよトンプソンさん」

「てか彼氏いないってマジ?」

「俺立候補していいですか!?」

「藤原くんは前に私が進めたアニメで解釈違いな感想言ったから却下っ!」

「ぐあーー!」

 

 アメリアのお断り宣言に藤原と呼ばれた男が頭を抱えて叫び声をあげた。

 目の前の戦闘中とは思えない緩い空気。前にスコールは一瞬とはいえ思ってしまった。

 

 帰っていいかしら? っと。

 

「っ! だめよだめよ。完全にペース持ってかれちゃったわっ」

「うおっといきなり!?」

 

 頭に浮かんだ邪念を振り払うようにスコールはプロミネンスの火炎機構を起動し、そのまま打鉄に振り下ろす。

 縦横無尽に振るわれる炎の鞭をアメリアは通常の打鉄より一回り拡張されたシールド二枚とボルテックで防御する。

 

「くぅっ! かくなる上は、話はベッドで聞かせて………」

「もう黙りなさい貴女」

 

 プロミネンスでボルテックを絡めとり、ソリッド・フレアを至近距離で命中させ得物を奪い取った。

 テールユニットの先が食虫植物のように開き、打鉄の胴体に食らい付く。そこからヒートパイルを三発連続でぶちあて、空中に放り投げた後プロミネンスの火炎鞭で吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたアメリアと打鉄・稲鉄はバリケードにぶち当たった。

 

「うぐっふぅ!」

「トンプソンさん!」

 

 今までの鬱憤とばかりに叩き込まれた連続攻撃にアメリアも苦悶の声を漏らした。

 

「うあーやばっ。今ので残り二割って。一応こっちもアンリミテッドなのに」

「総員援護だ!」

 

 元軍人チームが再びアサルトライフルの斉射を行うも、全てプロミネンス・コートの熱線に弾かれる。

 小煩い蝿を払うようにもう一度バリケードにソリッド・フレアが発射された。

 

「だから熱いー!!」

「トンプソン大丈夫か!?」

「今のでシールド一割! ギーリギリまーで、頑張ーるー!」

「まだ元気そうね」

 

 もう一度ソリッド・フレアを形成するために火花が収束する。

 ここまで彼らが戦闘不能になっていないのは単にスコールが手心を加えているからだ。

 ペースを乱されっぱなしなスコールは少し痛い目にあってもらおうかとソリッド・フレアの密度を高める。

 

 すると突然アメリアが笑った。

 

「フッハッハ。もう勝ったと思ってんのかな、亡国機業(ファントム・タスク)

「あら、それは知ってるの。そういう貴女はまだ諦めてないように見えるわね。まだ逆転の目があると?」

「レーデルハイト工業心得の一つ『不利な時こそ不敵に笑え』。生憎こっちのバトルフェイズはまだ終了してないぜ!」

「投擲ー!!」

 

 掛け声と一緒にバリケードから投げられたスモークグレネードが爆発。辺りはたちまち灰色に覆われ、ゴールデン・ドーンのハイパーセンサーにノイズが走った。

 

「ジャミングスモーク? 嘗められたものね」

 

 形成していたソリッドフレアを周囲に撃ち込み、爆風でスモークを吹き飛ばした。

 

「さあ、そろそろ遊びは終わりよ」

「遊び? 失礼しちゃうねマダム」

 

 煙が吹き飛ぶのと同時にISでは聞かないキュイィィィィィという甲高いローラー音と共に煙を突き抜けて来たのは。

 ISとほぼ同サイズ、そしてスリムなISとは対照的なずんぐりとした黒い物体だった。

 

「こっちはいつでも本気だぜぇぇぇぇぇ!!」

EOS(イオス)!?」

 

 出てきたのはレーデルハイト工業の親方的存在。レーデルハイト工業整備班のチーフでありCEOの夫にして疾風の父親、剣司・レーデルハイトが駆るEOSだった。

 

 飛び出してきたEOSの右腕にはその全長と同じぐらいの杭打ち機が装着されていた。

 

「どっせぇぇぇぇいっ!!」

 

 その杭をスコールが展開したままの熱線バリアに衝突させ、その引き金を引いた。

 

 ズガンッッッッ!! 

 

 部屋全体を振るわせる轟音と衝撃がスコールのバリアに襲い掛かり、これまで破れなかったバリアをガラス細工のように砕き伏せた。

 

【EOS】

 Extended Operation Seeker《エクステンデッド・オペレーション・シーカー》、略してEOS。

 ISの絶対数が少ないことから急遽第一世代ISのノウハウを応用して作られた外骨格構成機動装甲。

 目的は重機作業、災害救助から軍事活動まで幅広く活躍、する予定の代物だ。

 

 予定というのも、このEOS。ISと違って半重力システムPICを搭載していないため酷く鈍重。

 稼働時間も一つ30㎏もするバッテリーで僅か十数分しか動けない。

 例えEOSが千機いたとしてもIS一機に勝つことは出来ない。というのが世間の見解だった。

 

 だが剣司が操るEOSは亡国機業のISをノックバックで吹き飛ばした。

 

『右プロミネンス・コート発生装置破損、修復予想時間まで一分』

「あぐっ! EOSでゴールデン・ドーンのプロミネンス・コートを破るなんて」

 

 衝撃による本体へのダメージはないものの、右腕部のプロミネンス・コート発生機構にエラーが発生した。

 

 ISを損傷させたという大戦果といえるEOS。しかしその代償は高くついた。

 

「あー、やっぱ吹っ飛んじまったか」

 

 見ると先程杭打ち機保持していた右手前腕部のパーツが杭打ち機ごと吹っ飛んでいた。

 今使用したのはデュノア社が開発した単発式パイルバンカー【ロワイヤル】。ISでも反動が強いものをPICを持たないEOSならば当然の結果、むしろ右腕だけで済んだだけ御の字だろう。

 

「どうだい亡国機業! EOSも馬鹿に出来たもんじゃないだろう!」

「そうね、さっきの速力といい普通のEOSより大幅にチューンしてるのね」

「そうさっ! 稼働時間を更に犠牲にし、出力は通常のEOSの三倍! 装甲にはドイツのISの装甲を参考に作られた対光学兵器装甲を施した! 対IS屋内戦闘特化型のEOS剣司・レーデルハイトスペシャルだ!」

 

 これが特撮なら背後に爆発が起きてたレベルでキビキビ動く剣司のEOSスペシャル仕様。

 普通ならその重さ故にこんなに動けない代物なのだが。

 そこは筋肉が全てを解決した。

 

「大した物ね。でも攻撃の度に腕が飛ぶのはリターンに見合わないんじゃない?」

「なんの! 右腕が無くなったなら!」

 

 破損した右腕部を排出。背中から別の武器を保持した新しい右腕がガションと装着された。

 

「もっかい付ければ良いだけの話よ!」

「そんなのあり?」

 

 スコールは此処に来て何度目かわからない初体験にとうとう頭痛が起き始めた。

 そしてもはや恒例となる沸き上がるレーデルハイト工業職員。

 

「流石チーフ! 俺達が考え付かないことをやってのける!」

「そこにしびあこ!!」

「マッスルジーニアス!!」

「おうとも! ついでにこれも食らっとけ!」

 

 右腕に装備された射撃兵装からばら蒔かれた大量の小型プラズマ弾がスコールに降り注ぐ。

 視界に広がる白い弾丸をプロミネンスを回転させて払いのけた。

 そのあとも剣司は白い弾幕をバカスカと射ちまくった。

 

「そらそらまだ行くぞ!」

「ちょっと。EOSが扱って良い武器じゃないわよそれ」

「ご名答! この試作型プラズマショットガンは一発射つごとに稼働時間が2分も短縮されちまう程燃費が劣悪だ!」

「チーフ! なのにまだ動いてる理由は!」

「バッテリーを二つ装備してるからさ!!」

「もういや………」

 

 30㎏のバッテリーを二つ持ち、ローラーダッシュで縦横無尽にEOSらしからぬ動きで疾走する剣司にスコールは本気で現実逃避をしたかった。

 だが突然弾幕が収まった。

 

「あ、やべっ、オーバーヒートだ」

「もう倒れときなさい!」

「ぐおー! なんのっ! 背面炸裂装甲の反動で起きーる!」

「そらっ!」

「二回目は聞いてねぇ!!」

 

 一撃目は背部起立アームの代わりに装着された炸裂装甲で体勢を立て直すも無慈悲に振るわれた二撃目で背面から床に倒れた。

 スコールは仰向けに倒れた剣司のEOSをテールユニットで持ち上げた。

 

「くっそー! あれ、なんか腹あたりが熱く………」

「ええ、熱を送ってるもの」

「うおおー!? EOSの中がサウナ状態に!!」

 

 剣司の眼前に開かれたテールユニットのヒートパイルが覗いた。

 

「普通のEOSより固そうだけど。流石にこれは防げないわよね?」

「チーフ!」

「動かないで。大事なチーフを貫かれたくなければ大人しくしてなさい」

「人質とは卑怯な!」

「この人でなしぃ!」

「卑怯よ。だって悪の組織だもの」

 

 ようやく本来の調子を取り戻すことに成功したスコールは笑みを浮かべる。

 

「要求は一つよ。今すぐここで開発している新型ISをこちらに渡しなさい」

「えーーーーー」

「あれ徹夜で仕上げてるんですよ。それを無償と言うのはちょっと………」

「おいくらで取引なさいますか?」

「此処を出て右に応接室があるのでそこでよう相談を」

「………」

「うわっ!? 無言で撃ってきた!」

「やべーおふざけが過ぎた!」

「撤退撤退!!」

 

 流石に堪忍袋の一つが切れたスコールは火球を連続で叩き込んだ。

 アメリアと元軍人部隊は一時撤退を決め込んだ。

 そして残ったのはスコールとそれに捕まれて宙吊りにされている剣司だった。

 

「ここは教育がなってないと思うのだけれど? そこんとこどうなのかしら?」

「レーデルハイト工業心得の一つ『いつでも楽しく仕事をしましょう』。みんな優秀な社員ばかりだぜ?」

「そうね、私を待ち伏せして捕まえようなんて考える企業だもの」

 

 そう、レーデルハイト工業が日本政府と交渉し、実行されたのがこの【亡国機業構成員捕縛プロジェクト】

 

 襲撃犯の多くはISを使って襲撃してくる。ISを任されるというのは組織にとって重要なポスト。

 もはや見てみぬ振りが出来ない程表面化した組織。その全貌を掴む手がかりは、今この場に居るゴールデン・ドーンとスコールを捕縛することで達成される。

 

「だけどそれはご破算。さあISは何処なの? 早く答えないと装甲ごと貫くか、蒸し焼きにするわよ?」

「あれは愛するマイワイフの専用機だぜ? 簡単に渡せるわけないだろう」

「自分の命より妻の専用機を優先? 微笑ましい夫婦愛ね?」

「ああ、俺の嫁さんは世界一さ。あんたも綺麗だが、嫁さんには到底叶わない」

 

 徐々にEOS内の温度を上げられ、眼前に熱せられた杭を突きつけられてなお剣司・レーデルハイトは口角を上げていた。

 

 スコールは脅し目的で一度ヒートパイルを打ち込んだ。

 貫通はしなかったが、装甲にはヒビが入った。

 

「チーフ!!」

「大丈夫だ、生きてる!」

「ええ、生かしているのだから当然ね? これが最後通告よ。新型IS【ディバイン・エンプレス】を渡しなさい。頼みのアリア・レーデルハイトは日本の本社に居るのは確認済み、貴方たちに勝ち目はないわ」

 

 ギリギリとテールユニットの爪の握力を強める。EOS内部には警告音が鳴りっぱなしだ。

 だが中に居る剣司・レーデルハイトは慌てることなく首を後ろに向けた。

 

「ところでアメリア、今何時だ?」

「今ですか? 9時52分です!」

「そうか。よし、合格点だ。よく持った方だぜお前ら」

「は? ところでですって? 貴方一体何を」

 

 死が目の前に近づきすぎて頭がイッてしまったのだろうか。スコールが訝しんでいると、剣司は不敵に笑った。

 

「あんたさっきアリアは本社に居ると言ったよな?」

「それがなに?」

「おかしいんだよなー。そんな筈ないんだよ。何故なら俺は今日アリアに会っている。この研究施設でな」

「何を言うかと思えば訳のわからないことを………」

「スコールっ!!」

 

 突如、ゴールデン・ドーンにオータムからの通信が繋がった。

 その声は酷く慌てていて、落ち着きの欠片もなかった。

 

「どうしたのオータム?」

「やられた! レーデルハイト工業本社を監視してる奴から連絡が来た! 本社に出勤してるアリア・レーデルハイトはダミー、影武者だ!!」

「なんですって、それってどういう」

 

 詳細を聞き出そうとするスコールだったが、それは叶わなかった。

 

「私の旦那になにしてるの? この泥棒猫」

「っ!!」

 

 オープンチャネルで聞こえたのは聞き覚えのある女性の声。かつて織斑千冬と剣をまじ合わせることが出来た歴戦の実力者でありヴァルキリーの称号を持つIS乗り。

 

 スコールの豊満な身体に走ったのは強烈な虫の知らせ。本能的にEOSを掴んでいたテールユニットを離し、その場から飛び退いた。

 

 その瞬間、天井が割れた。

 

「二刀両断っ!!」

 

 豪快な音と共に天井を突き破ったそれは両手に持つ双剣をEOSの目の前、スコールが今さっき居た場所に叩きつけた。

 叩きつけられた地面は陥没し、床板が跳ね上がった。

 

 スコールは目の前の光景を見るのと同時に理解し、自分の判断が正しかったと判断した。

 此処に来たのがMじゃなくて私で良かった、と。

 

「待たせたわね、みんな!」

 

 現れたのは白地に黒と黄色のスリートーン。鎧騎士の異称を持ち、手に二つ、そして肩のアンロックユニットに同じものが五つ保持された、剣撃女帝(ブレード・エンプレス)の為だけに作られたIS。

 

「私が、来たわ!!」

 

 ライトニングシリーズ2号機、【ディバイン・エンプレス】を纏ったアリア・レーデルハイトその人だった。

 

 

 




 ISに関連してる偉い人って大半は頭おかしい気がするのは気のせいではないはず。
 ここまでパロディを詰め込んだのは初めてで大変だった。
 笑っていただければ幸いです
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