IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 今年が終わるまで後7週間ほどと聞いて焦りまくりの私です。


第58話【剣撃女帝(ブレード・エンプレス)

 

 

 天井からぶち抜いてきた(降りてきた)アリア・レーデルハイトはブレードをスコールに向ける、ことなく夫のEOSに駆け寄った。

 

「大丈夫あなた?」

「ああ、少し熱い抱擁をされただけだ」

 

 装甲に覆われていない場所(EOSスペシャルは前面にも装甲がある)を覗き込むアリア。

 その背中を視界に捕らえるスコール。

 視線はこちらに向けられていない今、スコールは一瞬交戦を考えたが却下した。

 

 現に今スコールは絶好の攻撃チャンスであるにも関わらず動かなかった。

 

(今下手に動けば、斬られる)

 

 距離にして4メートル、距離にして長い方だが。アリアは生粋のインファイター、一瞬で詰められる距離だ。

 

(右手のプロミネンス・コートは修復した。リムーバーはあるけど、取り付けれる隙はあるの?)

 

 お宝は目の前。だがそれはパンドラの箱。

 数多の災厄の向こうに残るただ一つの希望を掴めるか。

 

「ハッチに不具合出てるけど、出られる?」

「ああ出られる。よいっしょぉっ!!」

 

 バゴーン! とひしゃげた前面装甲が中から吹っ飛び、剣司がのそっとEOSから出てきた。

 もうスコールはツッコまなかった。

 

「アメリアは大丈夫?」

「すいません。奴のボンッキュッボン! に圧倒されました」

「だらしないわね。スタイルの差なんて愛と勇気でカバーするのよ」

 

 ためになるかわからないアドバイスをしたアリアはスコールに向き直った。

 

「剣ちゃん、アメリア。下がりなさい。私がやる」

「おう」

「Rogerです」

 

 二人が離れたバリケードに避難したのを確認し、アリアはブレードの切っ先を向ける。

 

「ようこそ、レーデルハイト工業へ。逃げ場はあるけど逃がす気はないから宜しくね」

「普通は逃げ場はないじゃないの?」

「レーデルハイト工業心得の一つ『普通と常識に捕らわれるな』いつでも創造的かつ独創的に仕事に挑む。それがIS稼業で生きるコツなのよっ!」

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)

 縮地と見まがう程の素早さでスコールの眼前に姿を現したアリアは自身の得物である片刃の剣、【フラッシュ・モーメント】の12本のうちの2本を滑らせる。

 スコールはプロミネンス・コートを発動するよりも先にプロミネンスで防御する。

 

「会いたかった、会いたかったわ亡国機業(ファントム・タスク)!」

「私は会いたくなかったわ、剣撃女帝(ブレード・エンプレス)!」

 

 剣を弾くと同時に放たれる多数のソリッド・フレアをアリアは二本のフラッシュ・モーメントを巧みに操って残さず斬り伏せる。

 インパルスやボルテックと同じくプラズマを刃に走らせるフラッシュ・モーメントは収束された火花の結合をたちまちバラバラにしていく。

 

「貴女達を斬り刻むことを夢にまで見たわ!」

「一週間も立たないうちに夢に見るなんて相当ね」

「当たり前でしょ! 貴女達のせいでうちの息子はISを奪われかけ。妹は学園祭に行けると胸を高鳴らせていたのに寸前でドタキャン! ついでにうちが協力していたシンデレラ劇も台無しにされた! これが怒らないなんて無理があるでしょう!!」

「悪いけど。そんなお家事情を考慮するほど暇じゃないのよ」

 

 スコールは小型のソリッド・フレアを、合わせ、2メートル大の火球を打ち出した。

 アリアはそれに対して各部装甲のスリットを開き、プラズマフィールドで防御した。

 

「そして、今日。あんたは私を更に怒らせたーーーよくもうちの旦那を誘惑してくれたわね!」

「はっ? 誘惑した覚えなんかないんだけど」

「熱い抱擁をしたっていうじゃない。EOS越しに抱き締めるなんてなんという高等なプレイを………」

「違うわよ。全然違うわよ」

「残念だったわね! どんなダイナマイトボディでうちの剣司さんを誘惑したところで彼はもう私の身体に夢中よ! それはもう毎晩毎晩乳繰り合うぐらいのバーニングラブなんだから!」

 

 「そんなの誰も聞いてない」と言い返す前に、お返しとばかりにフラッシュ・モーメントに集められたプラズマが切っ先から撃たれ、プロミネンス・コートのバリアを打ち付ける。

 

 再度瞬時加速でバリアに剣を打ち付けるアリアはバリア越しで得意気に笑った。

 

「どう! 完成率70%にしてはやるでしょう!」

「抜かしなさい! それもダミーでしょうに!」

「ご名答! フィッティングに時間がかかって重役出勤しちゃったけども!」

「随分とノロマだったじゃない。従業員が死ぬ可能性もあったでしょうに」

「ええゼロではないわね。でも少なくとも、貴方に殺す気はなかった。それは今までの襲撃事件で死者が一人も出てないことが証明してくれている。よく頑張ったわあんた達!!」

 

 確かにスコール率いるモノクローム・アバターは可能限り死者を出さないように行動している。

 不用意に死者増やせば襲撃国からの飛び火を僅差でありながら抑えれる。それに無作為に殺戮を広げることはスコールの美徳に反していた。

 

 現に今イレイズドを襲撃しているエムにもそう命じている。

 たとえ本人がそれを望まなくとも。

 

 だが先程アリアが言った通り、それを含めても殺される可能性はゼロではない。

 それでも今回の作戦に踏みきり、それに協力してくれた従業員。それは社長のカリスマとそれを元に構築された結束力の賜物だった。

 そしてそれ以上に許せないのは。

 

「一つ聞くわ。何故疾風だけを殺そうとしたの!?」

 

 学園祭襲撃の夜に疾風からアリアに連絡があった。

 亡国機業のISアラクネに襲われたこと、ISを強制回収するリムーバーの存在、そして、亡国機業が自分の命を狙ってるということ。

 

 これを聞いたアリアは亡国機業に対して徹底抗戦の構えを取った。

 その為に系列企業に秘密裏にダミーを交えた情報を出し、影武者を使い。亡国機業を絡めとる罠を張った。

 

 全ては会社の利益を守るため。

 そして何よりも愛する息子、そして従業員にとって息子であり、大事な弟分でもある疾風を怖がらせた報いを受けされるため。

 

「何故なの! 何故疾風が命を狙われなければならないの!疾風が何をしたというの!?」

「それについては黙秘しとくわ、私たちにも一応信頼関係というのがあるもの」

「私たち? 貴女とは別の指揮系統があるということ?」

「あら、鋭いわね」

 

 答えを弾き出したアリアにスコールは笑みを浮かべた。

 その笑みにアリアは気にくわないとばかりにより苛烈に双剣を振るう。

 

「疾風と一夏くんを襲ったアラクネは別のグループ?」

「いいえ、オータムは私の部下よ」

「安心した。心置きなく貴女を斬り刻める!」

 

 アリアは更に剣撃の速さが上がた。

 もはや両の手のプロミネンスで防ぐ手数ではないと、スコールはプロミネンス・コートとプロミネンスを回転させて防戦に移った。

 

(さて、ここからどうしようかしら)

 

 スコールはもはやディバイン・エンプレスの拿捕は諦めていた。

 スコールが勝負を諦めたわけではない。スコールの腕ならば例えアリア・レーデルハイトが相手でも拮抗出来、勝利する可能性もある………だが。

 

(ここまで用意周到な奴ら。待ち受けていたということは、日本代表にも話は通しているはず)

 

 なればこそ、時間はかけられない。

 リムーバーなどつけれる余裕などない。

 当初のプランから外れた今、必要以上に固執した場合のリスクを考えると撤退が最善手だ。

 

 先程オータムからメッセージで『エムが撤退した』という情報が届いた。

 

 あとはどうやって目の前のヴァルキリーを躱し、脱出するかだ。

 

(最悪腕を一本犠牲にする覚悟も必要か………)

 

 スコールはこれまで培った実力と情報を元に脱出プランを構築する。

 

(後はチャンスを見つけるだけ。ここが、勝負!)

 

 スコールはアリアのフラッシュ・モーメントがプロミネンス・コートに触れる瞬間にバリアを解除し、空を切らせた。

 僅かながらアリアの体勢がずれた。

 

 スコールはソリッド・フレアを展開、それを置き土産にアリアの射程圏外に待避しようとする。

 

 カンッ! 

 

 その瞬間、スコールの頬(に展開されたシールドバリア)に弾丸が掠った。

 反射的に撃たれた方向に視線を動かすと、バリケードを支えにボルトフレアを撃ったと思われるアメリアの打鉄・稲鉄の姿が。

 

 一瞬ともいえる意識の変更が彼女の体勢を整えさせた。

 

「総員ーー」

 

 肩のアンロックユニットに装填されていた十振りのフラッシュ・モーメントのロックが外れた。

 

「ーー抜剣」

『Ready』

 

 音声認識によりディバイン・エンプレスの演算出力値のリミッターが外された。

 

 姿勢を低くし、両の2本を水平に。

 ユニットから外された10本は新たなアンロックユニットとなって斬撃体勢に入った。

 

 アリアはスコールの顔を見上げ、これまた愉快に笑顔を浮かべた。

 

「Shall we dance?」

 

 一際大きなプラズマがディバイン・エンプレスの機体を走った。

 スコールはソリッド・フレアを放った。

 

「ダンスマカブル」

 

 刹那。スコールの周りに展開されていたソリッド・フレアが霧散した。

 

「ブレードアーツ!!」

 

 スコールの目に無数の斬撃の線が移った。

 瞬間ゴールデン・ドーンに無数の衝撃が走った。

 

 認識するより先にスコールはプロミネンス・コートを最大出力で展開。金色の繭と言われる程にスコールを守るバリアは衝撃で揺らぎが生じた。

 

 そこからは一方的に息つく暇のない程の剣撃音が研究スペースに響いた。

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガッ!!! 

 

 まるでミニガンの一斉掃射を食らったかのように絶え間ない剣の応酬。

 それを繰り出すのは目の前で12本のフラッシュ・モーメントを手繰り寄せる元イギリス代表だった。

 

 時に、ISで一番火力の高い近接攻撃とは何かと問われれば。一様に暮桜の零落白夜と答えるだろう。

 

 モンド・グロッソで多くの国家代表をその一振で切り捨てたその姿は正に最強に相応しく、量より質という言葉を極限まで切り詰めた代物と言っていいだろう。

 

 だがその能力は当時唯一無二のワンオフ・アビリティー。誰も真似できる筈もなく。一撃必殺と言えば織斑千冬の零落白夜というのが満場一致している。

 

 ならその逆は? 

 量より質ではなく質より量を極めたらどうなるか。

 その答えがアリア・レーデルハイトの【ダンスマカブル・ブレードアーツ】だった。

 

 右手のフラッシュ・モーメントの一撃を振り抜いた瞬間にそれを手放し、丁度いい位置に配置された別のフラッシュ・モーメントを握ってそれを振るう。

 左手も同様に斬りつけた後に別の剣を握ってスコールに斬りかかる。

 

 その双剣の間に空いた僅かな時間を、アリアの横に停滞している二つのフラッシュ・モーメントが自ら獲物に斬りかかる。

 

 右手で斬り、左手で斬り、右手で斬った後に浮いている剣が突き刺さり、左手で斬り、また右手で斬りつける。

 一秒で約5回前後。アリアはスコールにフラッシュ・モーメントで斬りつけていた。

 

「うっあぁっ………!」

 

 スコールは反撃など出来ず、ソリッド・フレアも出すことなど不可能。二種類のプロミネンスを全力で防御することしか出来なかった。

 

 もうひとつ余談だが、アリアはラピッド・スイッチが使える。

 

 ラピッド・スイッチと一口に言っても、種類は二つある。

 一つはバススロットの多彩な武器を瞬間的に展開するという、特異技能と言われる物。

 これはフランス代表のアニエス・ドルージュ。フランス代表候補生のシャルロット・デュノアが当たる。

 もう一つは、全く同形状同サイズの武器を多数展開、または断続的に展開するもの。

 アリアは後者に当たった。

 

 当時メイルシュトローム・カスタムに乗っていたアリアはそのラピッドスイッチを用いてブレードアーツを繰り出していた。

 だが扱える武装が手のひら二本という事実、武装コールにて発生するコンマ数秒の時間故、どうしても連撃に一瞬の隙が生じてしまう。モンド・グロッソでは千冬がその隙を強引に零落白夜をねじ込むことで勝利した。

 

 後に当時の千冬はこう語った。

 

「零落白夜が無ければ彼女には勝てなかったかもしれない。それほどあの連続攻撃は脅威だった」

 

 その結果、第二回モンド・グロッソで千冬はアリアに対して必要以上に接近しようとしなかった。

 

 ならば、その隙を可能な限り埋めた場合はどうなるか? 

 その思考の末にたどり着いたのが第三世代型IS、ディバイン・エンプレスだった。

 

 フラッシュ・モーメント。

 アンロックユニットから外れアリアの周りを浮かぶ12本のブレードは、イーグルのビークとは違い、ビット兵器ではない。

 それを浮かしているのはプラズマによる磁場。フラッシュ・モーメントはディバイン・エンプレスの周囲でのみ、ビット兵器として働く、云わば衛星のような物。

 

 彼女の絶技に特化した処理AIは時に彼女が次に握りやすい位置に剣を置き、連剣が途切れた時には自動的に斬りつける。

 

 バリアがあろうと、シールドがあろうと、受け止める剣があろうと。

 全てを噛み潰し、その一欠片まで食らい尽くす。

 

 モンド・グロッソの時より更に磨き上げられた、レーデルハイト工業の技術とアリア・レーデルハイトの剣技が織り成すダンスマカブル・ブレードアーツ。

 

 命尽きるまで踊り続ける死の剣舞の名を関し、彼女を剣撃女帝(ブレード・エンプレス)と言わしめた絶技の完成形だった。

 

 ピシッ、とプロミネンス・コートに亀裂がはしる。

 一度つけられればそれはたちまち至るところにヒビが発生し、後十数秒すれば崩されるのは火を見るより明らかだった。

 

(ゴールデン・ドーンの防御が割られる。その後は、私が切り刻まれる!)

 

 そうなれば例え80%残ってるシールドエネルギーも溶けるように削り殺される。

 

 バリアのヒビが全体に張り巡らされる。

 

(無傷は無理。仕方ない!)

 

 スコールは苦渋の決断を切った。

 何百となる剣撃の末。ついに最大出力のプロミネンス・コートが割れた。

 アリアは宝箱を空けた冒険者のように口を綻ばせた。

 

(やっと斬れる!)

 

 嬉々として双剣を振るうアリアにスコールは背中を向けた。

 

 ゴールデンドーンの特徴的なテールユニットにフラッシュ・モーメントが当たった瞬間。爆発した。

 

 スコールはバリアが破られる前にテールユニットに搭載されてる火炎機構を意図的に暴走させ、即席のリアクティブ・アーマーとしたのだ。

 

 爆発により強制的に中断されたダンスマカブル・ブレードアーツ。

 その横を瞬時加速ですり抜け、先程アリアがぶち抜いてきた天井から外に飛び出した。

 

「えっちょっと!? 待ちなさいよあんた!!」

 

 スコールの全力エスケープにアリアは浮かせているフラッシュモーメントをアンロックユニットに戻して後を追った。

 

「ちょっと! あそこは大人しく微塵切りになって正義ポジションが勝つ流れじゃない!」

「そんなの知らないし付き合う義理もないわ!」

 

 撤退を決め込むスコールはソリッド・フレアをばら蒔くが、躱すのも手間だとばかりにその全てを斬って散らすアリアには効果がなく。

 

 ディバイン・エンプレスはクロスレンジ向けのIS。そして乗り手は高速機動部門のヴァルキリー。

 勿論スピードも一級品であった。

 

 着々と距離を詰められるスコールは全方位視界で後方から迫る剣鬼を映しながら舌を打った。

 

(このままじゃ振りきれないわね。最大火力のソリッド・フレアを当てれば行けるだろうけど。撃つには溜めがいるし溜めてる間に追い付かれる)

 

 そう考えている間にも刻一刻と距離が縮まっていく。

 

(アレを使うか。でも、アレはリスクがでかすぎるし。まだ調整も終わってない、また賭けね)

 

 悩んでる暇など無い。

 スコールは覚悟を決めてアリアに振り返り、ゴールデン・ドーンの奥底にしまい込んでいる機能を呼び起こそうとした。

 

「スコール今どこだ!! いや言わなくて良い! 追われてるんだな!?」

「ごめんなさいオータム、今話してる時間は」

「そっちにアイツを呼んだ! それで逃げろ!」

「アイツ?」

 

 ゴールデン・ドーンから聞こえるオータムの声に疑問符を浮かべていると、背後から藍色のレーザーがディバイン・エンプレスに縦横無尽に襲い掛かった。

 

「れ、レーザーが曲がる!?」

 

 鋭角的に歪曲したレーザーにアリアは慌てながらもプラズマフィールドでガードした。

 

「情けないな、スコール」

 

 呆れと哀れみを含みながらスコールの隣に降り立ったのは、同じモノクローム・アバターのメンバーで、先程イレイズドを強襲していたエムのサイレント・ゼフィルスだった

 

「エム!? どうして貴女が」

「オータムが五月蝿いから来てやったんだ。それにしても散々な有り様だな」

「予想外に予想外が重なりすぎてね」

「フンッ、こんなことなら私がこっちに来るべきだった」

「それはやめた方がいいわ本当に。貴女死ぬわよ、色んな意味で」

 

 ガチトーンで止めるスコールによく分からんという顔をするエム。

 その二人を前にしてもアリアの戦意は揺るがなかった。

 

「サイレント・ゼフィルス。フランのとこから奪った奴ね。相手にとって不足なし」

「やる気のところ申し訳ないけど。今回は帰らせてもらうわ。エム」

「まったく」

 

 エムは仕様がないと思いながらもスターブレイカーとBTビット六基の偏光制御射撃(フレキシブル)を交えながら一斉射した。

 

「うおっとっちょ! 猪口才な!」

 

 歪曲するレーザーを残らず斬り飛ばすアリア。

 スコールは右手を頭上にかざし、今まで撃っていた物とは比べ物にならない大きさのソリッド・フレアを形成した。

 

「っ! あんた、せこいわよ!」

「なんとでも。じゃあねアリア・レーデルハイト。私を追い詰めたお礼にとっておきのプレゼントをあげるわ」

 

 特大の火球がアリアめがけて放たれた。

 躱すという選択肢はない、何故なら彼女の背後にはレーデルハイト工業の研究施設がある。

 

「チィッ! モード・コールブランド!!」

『ready』

 

 ディバイン・エンプレス両肩のアンロックユニットを10本の剣ごと腕に合体させる。

 両の手に持つフラッシュ・モーメントの背を合わせ、一本の大剣とする。

 

『プラズマエネルギー。腕部、及びフラッシュ・モーメントに集中』

 

 アンロック・ユニットに蓄積されていたプラズマを一点解放し、四メートルにも相当する巨大なプラズマブレード【コールブランド】を生成した。

 

 縦に振るわれたコールブランドは巨大火球にぶち当たり、受け止めた。

 

「せえぇぇぇいやあっ!!」

 

 そしてそのまま巨大火球を真っ二つに切り裂き、行き場を失ったエネルギーはその場で霧散、もしくは爆発した。

 

「ふーー」

 

 爆煙が晴れた中で深く息を吐くアリアの視線の先には、遥か遠くに飛んでいく亡国機業の二機の姿だった。

 

「取り逃したか………まあ、ぶっつけ本番で性能はオールクリア。良い機体テストだったと割りきれ………はしないかぁ。はぁ………」

 

 あからさまにガックシと肩を落とすアリア。

 入念に準備を効かせ、本気で捕らえようと思ったのに失敗したとなればこうもなる。

 

「アリアさーーーん」

 

 そんな落ち込むアリアの後ろから声が聞こえた。

 振り返ってみると、打鉄二機と、それに酷似した白いISが見えた

 白いISは打鉄の次期第三世代モデルにして、白式の兄弟機ともいえる、日本代表の楠木麗(くすのき うるは)が駆る白鉄だった。

 

「あら麗ちゃん」

「あー、もう終わっちゃいました? うわー大遅刻じゃないですか」

 

 麗は随伴した二機の打鉄に周辺警戒を命じた。

 

「すいませんアリアさん。丁度仕事してたところを急いで纏め上げて来て。あー、あのハゲ爺ぶん殴ってでも来るんでした」

「仕方ないわ、貴女は現国家代表でなにかと縛りがあるし。それに作戦の決行は三日後の予定だったんだから。あっちの動きが早すぎたのよ」

「それを予測して影武者置いとくあたり流石ですね」

「あらバレてたの?」

「此処に居る時点で分かりますよ」

 

 それもそっかと納得すると。アリアはPICを器用に使って寝転がった。

 

「ところで襲撃してきたテロリストは追っ払った感じなんです?」

「ええ。私のパワーアップした秘奥義であと一歩のところまで追い詰めたわ」

「流石ですねー。どうです? このあと一本だけ」

「そうしたいのは山々だけど、これからまた忙しくなりそうなのよねー」

 

 起き上がったアリアは眼下の研究施設を見やる。

 所々から煙が上り、天井の一つには穴が空いている始末。

 

 これから始末書と請求書。諸々各所への報告。やることは一杯で、息子の為にも新装備を作らなければならない。

 

「手伝いますよ、アリアさん」

「ありがとう、そうしてくれると助かるわ」

「いえいえ。それで時間があったら」

「はいはい。休憩がてらやりましょう」

 

 近接戦闘ワールドトップクラスの二人はレーデルハイト工業研究施設に戻っていった。

 

 しばらくして、今回の襲撃事件にてレーデルハイト工業がテロリストを撃退したという情報が一躍大ニュースとして注目されるのは。

 また別の話である。





 やっと出せました、疾風ママの実力。
 スコールさんが弱いんじゃない、相性とママが強すぎたんや………
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