IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 最近体調崩してという理由付けをして投稿。
 いよいよキャノファス編に突入すら出来ないのではと思い始めた自分。
 もっと早く書きたいものです。


第61話【バレなきゃイカサマじゃない】

「どういうことですの!!」

「ヒェッ」

 

 大胆な宣戦布告の日の放課後。

 今日出された課題を終わらせようと部屋に戻って机に向かったらセシリアが台パンしてきた。

 正直に怖いです。

 

「どういうことと言うと」

「決まってるでしょう! 今朝のあれはなんです! 説明してください!」

「そう言われてもありのままの内容だということしか。ね?」

 

 言いたいことはあそこで全部出しきったし。

 それ以上もそれ以下もないんだが。

 

「本気ですの。あの馬鹿げた内容は」

「馬鹿げたって失礼だな。ガチの本気で真剣に言ったんだぞ」

「4対12のISバトルなんて非常識なことを真剣に言うことに問題がありますのよ!」

 

 いやまあ。歴史的にみても異例の戦闘方式でしょうけども。

 実際その数で戦えば勝敗など目に見えてるだろうけども。

 

「だってさ。同数でやっても専用機があったから勝てたとか言われるだろうし、そんな勝負持ちかけても断られるし。校内のイメージを払拭させる意味もあって数に差があるということに意味があるんだよ」

「ならなぜ生徒会長を抜いたのですか」

「いやいや、あの人出したら『もう全部楯無一人でいいんじゃないかな?』って空気になるでしょうよ」

 

 実際一人で無双出来そうだ。なにせ代表だし。

 もしかしたら流体変化的な不思議なことが出来てもあの人なら不思議じゃない。

 

「心配しなくても学年ごとのエントリーは制限かけてるから。3年生が2人、2年生が3人、残り7人が一年、リーダーの安城敬華は必ずエントリーすることって。あっちもそれで了承してくれたよ?」

「あなた自分の言ってることを理解してますの?」

「それは勿論わかってる。全部俺が企画したんだからさ」

「馬鹿じゃないですか」

 

 酷い。なぜこうも罵倒されるの。

 

「本気ですの? 負けたらこの学園を去るって」

「何回も言ってるけど本気。てかあんな大袈裟でインパクトのある演説でガッツリ勝利宣言して負けたら恥ずかしすぎて引きこもり不可避案件じゃん?」

「茶化さないで下さい! この場所は疾風の夢でしょう!? それなのにあんな、あんな………」

 

 セシリアの言う通り。

 俺にとってここは大切な場所。男性IS操縦者という特異存在である俺が伸び伸びとISを動かせる場所。

 もはや中毒とか病気レベルでISを好んでいる俺にとっても、この場所を離れるなんて絶対に嫌だ。

 

 セシリアがこんな顔になるのも。それを知ってるからだろう。それでも。

 

「俺は本気だよセシリア。あの場所であの提案を受けさせるには、あれぐらいの覚悟が必要だった」

「あんなことする必要が、本当にありましたの?」

「言ったろ。今のやつを潰しても、燻ってる奴がまた火種を生む。学園内の価値観をガラッと変えないと根本的な解決にはならない。俺が、俺たち生徒会がどれだけ本気なのかってのを示さなきゃいけなかった」

 

 明確な証拠を提示していないのにも関わらず、あの演説から女性の為の会に対する目は厳しくなった。

 変わって俺の熱弁は大多数の人に届いたのか、応援してくれる声も少なくはなく。逆に非難する声はそれに萎縮されて睨みを聞かせる程度だった。

 

 傍目から見たら強引すぎる印象操作だし、もしこれが冤罪なら謝罪案件だが。今回は完全に裏を取れてるから謝らないし、フェイクニュースを先にしかけたのはあっちなんだから罪悪感はない。

 

「奴らは本気だ。だから脅迫状に書かれたことも本当だと思った。俺と仲良くしてくれている友達やクラスメイトがそんな理不尽で傷つくのは。我慢できない」

 

 だから行動を移したんだ。

 そう言ってもセシリアはまだ納得までいってないみたい。

 

「それでも。自分がどれだけ無茶なことをしたか分かっていますの? 4対12ですわよ、ISでこれだけの戦力差がどれほどの物か」

「まあ無謀と勇気を履き違えたように見えるよな」

「勝てると思ってますの?」

「勝つよ」

 

 迷いなく即答で答えた。

 

「あなたのことです。なにか考えがあるのでしょうし、無策で挑むような人ではないとは思っています」

「うん」

「それでも勝率は低いですわ。専用機が二機あり、一夏さんは第二次形態移行(セカンド・シフト)してるといえ」

「それでも勝つ。俺は此処から居なくなるつもりはないよ、だからそんな不安そうな顔しないで?」

 

 下からセシリアの顔を覗いてみると、目が不安を訴えかけ。いつも勝ち気な彼女も眉が下がりっぱなしだった。

 

「俺と一夏がいなくなるのは嫌?」

「当たり前です。2人ともわたくしにとって掛け替えのない親友なのですから」

「うん、俺もいなくなるのは嫌だよ。だから応援してくれる? お前がそんな顔してると、俺も不安になっちゃうよ」

「な、何を言ってるんですか」

 

 おいおい、そこで照れないでくれよ。

 

「どうせISを動かせないからでしょう」

「いやそれだけじゃないぞ!?」

 

 そして照れ隠しが結構ダメージ。

 し、失礼な奴だな! 俺だってみんなと離れたくなんかないんだぞ。

 女子が多いってのに抵抗感あったのは最初だけでIS学園の女子って軒並みノリが男子っぽくて凄い居心地良いんだから。

 

「それにまだ此処に居なきゃいけない理由もあるし」

「なんです?」

「それは秘密」

 

 とても話せる内容じゃないし。少なくともセシリアには。

 なんでかわかんないけどセシリアには菖蒲とのことを知られたくない。なんでかわからんけども。

 

「納得してくれた?」

「………納得はしません。ええしませんとも」

「だよなぁ」

「ただ」

「ん?」

「………………わたくしに手伝えることがあれば、何でもおっしゃって下さい」

「おう、頼りにする」

「………~~! しゃ、シャワー浴びてきます!!」

「行ってらっしゃい」

 

 衣装タンスから着替えを取り出してバスルームに消えていったセシリア。

 姿が見えなくなると、顔が少し熱くなった。

 

「何でも………いやいやそういう意味じゃねえよ馬鹿、バカバカ」

 

 なんであいつが言うとこうも破壊力あるんだろうな。不思議だね。

 

 とりあえず宿題をやることにした。

 想定より時間がかかったのは別の話。

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「では、来週の異種戦に向けて作戦を説明しまーす」

「「「「はーい」」」」

 

 みんな良いお返事ありがとう。

 虚さん、意外とノリがいいですね。

 

 というわけで生徒会に集まって作戦会議を開いてます。

 司会進行役は企画提案者&作戦立案者の疾風・レーデルハイトがお送り致します。

 

「作戦は単純! 一夏の零落白夜でみんなぶった斬る! 他三人はそれを補佐&一夏をガード」

「うん、ぶっちゃけ予想してた!」

「それしかないもんねー」

 

 そらぁね。

 この多人数でノーマル状態でやってもジリ貧で死ぬのは確定だし。

 

「まあ言うは易し行うは難しなのは目に見えてるわね」

「しかし理にはかなっています。現状の戦力を考えて最適解だと思います」

「ありがとうございます。では詳しい内容の前に俺たちの戦力とその見直しをします」

 

 机の上に置かれた小型ホログラム発生機を起動し、ミーティングがスタートした。

 

「まずISですが俺と一夏は決まってるとして、布仏姉妹のお二方には打鉄に乗って貰いたいと思います」

「堅いから~?」

「まあね、一夏を守るというのもあるけど。こっちのほうが落ちにくいから」

「異論はないわ」

「意義な~し」

 

 パッケージ云々は後で要相談ということで次の議題。

 それはメンバーの戦力分析と役割。

 

「まず虚先輩。一夏の護衛と、掩護射撃。このメンバーで一番射撃技能が高いのは虚先輩なので、アウトレンジからフィールド全体の調整を。余裕があれば、この前みんなに話していた例の『分解』で相手の戦意を削いでくれたらありがたいです」

「わかったわ。久しぶりだから感覚思い出しとかないと」

 

 眼鏡を上げた虚先輩の目は戦意充分でとても頼もしかった。

 

「次はのほほんさんだな。虚先輩と同じで一夏のガードなんだけど、問題は………」

「はーい、私は射撃技能ゼロでーす」

「そうなんだよな………」

 

 朗らかに言うのほほんさんを前に虚先輩がため息を吐いた。

 顔に妹がすいませんと書いてある。

 

 のほほんさん。本名布仏本音の射撃技能。

 衝撃の0点。

 

 とにかく彼女に遠距離武装を持たせると当たらない。

 的を掠りもしない。フォームはあってるのに当たらない。

 一年の段階で唯一射撃補修を受けたことでも有名だ。結局数時間の末一発当たって補修終了。

 その時のほほんさんは終始笑顔だったという、鬼のメンタルである。

 

「さっきも言ったけど、基本のほほんさんには一夏のガードを頼む。同時に場を引っ掻き回して相手チームのペースを崩してもらう。当たらなくても牽制にはなるし」

「りょーかい~」

 

 実際それが最適解だし、のほほんさんは射撃以外は優秀だ。

 しかしまあ。

 

「追加武装としてミサイル、それも誘導性の高いのを装備させる。なんか良いのあるかな」

「あ、ミサイルならあてがあるから任せて~」

「あて?」

「本音ちゃんそれって………」

「大丈夫ですよ~。なんとか説得してみますんで~。レーちんのお眼鏡にも必ずかなうと保証します」

「じゃあ、そこは任せるね?」

「あいさ~」

 

 若干不安だけど。のほほんさんはやる時はやる子だから大丈夫なはず。

 

「次は俺だ。俺の役割は遊撃と撹乱。とにかく場を無茶苦茶にかき回して、相手のヘイトを一夏から出来るだけ俺に向けさせる」

「大丈夫なのか?」

「口ばっかの奴らの弾なんか当たるかよ。それにイーグルはその気になれば打鉄よりガードは固いから大丈夫。少なくとも福音とのタイマンドッグファイトより優しいでしょ」

 

 それに、安城が本当に亡国機業と繋がっているなら。一夏より先に俺のメンツを潰したい筈だ。

 

「最後は一夏だ。役割はさっき伝えたとおり、零落白夜で斬りまくる。そこで、一夏の特化戦力強化プランを提示する」

「強化プラン?」

「うん。仮に一夏が初っぱなから落とされたら俺たちは9割り負ける。中盤で落ちても厳しい、終盤でも落ちなかったら俺たちは凄く嬉しい。その為の強化プラン」

「つまり零落白夜の特訓ということね?」

 

 静観していた会長の言葉に俺は深く頷いた。

 今回の数の差をひっくり返す重要な手。

 それは零落白夜でどれだけ相手を戦闘不能にさせれるかということに他ならない

 

「さて一夏。いきなりだけど、お前が思うに零落白夜の欠点はなに?」

「燃費が劣悪。シールドバリアを消費するから使えば使うほど撃墜されやすくなる」

「正解。ならどうすればいい?」

「えっと、ここぞという時に使う?」

「正解。俺は昨日一夏の戦闘記録を見れるだけ見たんたけど。改めてみて気付いたことがある」

 

 10を越えた後は数えるのやめたけど。

 学園のデータベースに残ってるものを見ていくうちに、俺は初歩的なことに気付いた。

 

「一夏、お前が試合中に零落白夜を使う回数は少なくて一回か二回、多くて四回なんだ。だけどお前は零落白夜を使って負けた試合のほとんどがエネルギー管理のミスによるミリ残しを潰されるパターンが多い」

「あー、確かに。雪羅になってから割合が増えた気がする」

「原因はなに?」

「えーーっと………使いすぎ?」

「惜しい、かな。正解は、零落白夜を継続して出す時間が長いことだ」

 

 零落白夜はシステムを発動した瞬間からシステムを終了する間だけSEを消費する。

 

「一夏。お前は零落白夜を発動するのが早すぎる、そしてしまうのも遅い」

「どういうことだ?」

「零落白夜は展開してるだけならただの光るブレード。当ててシールドを素通りし、絶対防御に触れることでISに大ダメージを与える、織斑千冬が暮桜で発動したワンオフ・アビリティーと同種の物だ」

「うん」

「単刀直入に言うとな、お前は零落白夜を無駄遣いしてる」

「なっ! ………理由を聞かせてくれ」

 

 姉と同じ能力を無駄遣いしたと言われ一夏は一瞬沸点が上がったが。直ぐに落ち着いて続きを待った。

 

「先ずはこれを見てほしい」

 

 生徒会に備え付けられた液晶テレビをつけ、DVDを再生した。

 画面には、IS学園のアリーナより遥かに巨大なアリーナの試合だった。

 映し出されたのはカナダの第二世代のメテオダウン、もう一機は。

 

「千冬姉」

「そう。これは第二回モンド・グロッソの試合の一つだ。一夏、瞬きするなよ」

「わかった」

 

 再生。カナダのメテオダウンがハンドガン二つを展開し撃った。

 次の瞬間、織斑千冬の暮桜がメテオダウンを斬り。試合が終わった。

 

「え?」

「速いだろ。織斑先生は一つの試合を除いて。全部一太刀、もしくは二太刀の速攻で試合を終わらせてる」

「………もう一回見せてくれ」

 

 巻き戻して再生する。

 先程と同じく織斑先生の勝利で終わる。

 

「もう一回」

 

 巻き戻して再生。

 

「もう一回」

 

 巻き戻して再生。

 

「もう一回」

 

 巻き戻して再生。

 

 五回見たところで一夏は画面から目を離せないでいた。

 その目は驚愕に満ちていた。

 

「なんか気付いた?」

「えと、気付いたっていうか。………千冬姉、いつ(・・)零落白夜を発動したんだ? いや、そもそも発動してるんだよな?」

 

 一夏が出した理想の解答に顔がほころびた。

 

「織斑先生は間違いなく零落白夜を発動してる。さていつ発動してるでしょう」

「………雪片が当たる瞬間?」

「大正解、対して一夏は」

「相手に突っ込む時に零落白夜を発動してる。そしてその間もシールドは消費してる」

「パーフェクトだ一夏」

 

 とても回りくどい言い回しだったが、こういう欠点の改善は自分から気付く方が効果がある。

 特に一夏のようなタイプならなおさらだ。

 

「もう一つ補足。一夏は零落白夜を外したあとも零落白夜を展開したまま追撃してるだろ? 相手を追っかけてる間も、刻一刻とシールドを消費し続けている」

 

 そして最後にはガス欠になって落とされる。

 それが一夏の負けパターンになっているのだ。

 

「まあ、ワンオフ・アビリティーはボタンを押して発動じゃなくて操縦者がISとディープ・シンクロ、つまり集中して発動が普通だからな。だけど熟練のIS乗りは好きなタイミングで瞬時に発動できる」

「そうなのか? 俺は発動しようと思ったら直ぐに零落白夜出せるけど」

「そこだ一夏。お前はワンオフ・アビリティーの発動に関しては既にその域に達してるんだ」

「じゃあ後はタイミングということか」

「そう。だから一夏には連携訓練の他に、零落白夜の特訓もしてもらう。そこに関しては会長に任せても?」

「ええ、任せて頂戴。期限までにバッチリ仕込んどくから」

 

 持ち前の扇子には『委細承知』。

 ほんと何個扇子持ってるんだろうこの人は。

 

「一夏にはこの織斑先生だけの試合をピック編集したDVDをあげる。ワンオフ・アビリティーはイメージだから暇があったら見てくれ」

「わかった。ありがとな疾風」

「ん。じゃあ各員の役割がわかったところで本格的な戦術プランを説明します」

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけです。基本はこの感じで攻めて行こうと思います」

「………」

「どうした一夏?」

「いや、概要は少し聞いてたけど。改めて聞くとエグいなって」

「え? これでもかなり抑えた方なんだけど」

「これで?」

 

 対多人数用に戦術プランを練ったので大まかに説明したところ早速一夏がゲソっとしていた。

 

「今回は俺たちはどっちかというとヒーロー的だからな。過度なラフプレイは控えようかなって」

「ヒーローかあ………ヒーローかぁ?」

 

 なんか一夏が苦い顔してる。

 あれ、他三人のも心なしかテンション下がりぎみ。

 

「本当なら相手の心を粉微塵にするために紅葉おろしとIS使ってサーフィンとかして精神磨耗させたいのを凄く我慢したんだからな」

「普通やろうとすら考えねえよ」

「レーちん容赦なーい」

 

 当然。目指すべきは完膚なきまでの勝利だ。

 加減なんかしてたら数であっという間に喰われる。

 

「一夏としては、この作戦に嫌悪感あると思うけど」

「ないと言ったら嘘だけど………いや、大丈夫だ。四の五の言ってられない。俺もまだこの学園にいたい。それに、それ以上にあいつらは許せねえ」

 

 了承してくれたとはいえ、やはり懸念が残ってるようだ。

 そうならないために作戦を幾重にも組み込むのだ。

 

「あ、そういえば朝掲示板見たけど。菖蒲さんのを参考にした打鉄の新型パッケージが延期になったのは痛いよな。のほほんさんと虚先輩は打鉄でいくから、戦力になると思ったのに」

「ああ、それなら俺が菖蒲を通して意図的に延期してもらったんだ」

「えっ、そうなのか?」

 

 朝の掲示板に張ってあった新型パッケージ延期の知らせ。

 これを見た安城を横目に見たけど、見事グヌヌって顔してたな。

 

 雷装強化型パッケージ・稲鉄。

 通常よりも大型化されたシールドとプラズマドライブを搭載したこれは燃費を少々食らう変わりに打鉄の基本性能を底上げするものだ。

 

「稲鉄つけられると普通に強くなるからな。やつらの戦力アップを阻止する意味を考えてメリットよりデメリットの方が大きいと判断した」

 

 こちらの作戦的にも敵には打鉄よりラファールをつけてもらいたいしな。

 

「よぉし! 作戦会議は終了よね」

「ええ。早速連携訓練をしたいところです」

「でも一般アリーナで連携訓練していいのか? あそこ一般開放だから、相手に手の内を明かしちゃうんじゃないか?」

「フフーン。フフフフフー」

 

 一夏の言うとおり、敵に練習を見られたらどういう戦法か予想される恐れがある。

 そんな最もな意見に会長は不敵、というより不気味に笑った。

 

「な、なんですか楯無さん。そんなよくわからない笑い方して」

「一夏くんの考え、ましてや奴さんの考えなど私にはまるっとするっとお見通しよ!」

「驚くぞ一夏。正直言うと、これはズルい」

「ズルい?」

 

 一夏は頭にクエスチョンマークを出しまくって首を傾げた。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「どうして駄目なんですか!」

「どうしてと言われましても。規則ですので」

「これじゃ私たちの連携訓練が出来ないじゃないですか!!」

 

 放課後の練習機受付所で安城敬華が受付嬢に噛み付いていた。

 

「無理を通しているのは重々承知しています! でも私たちはこの戦いに勝たなければ行けないのです! 一回だけでもいいです! 来週まで12機のIS合同の訓練をさせてください!!」

「ですから、それは一週間後の異種ISバトル戦限定のみの特例措置なのですから」

「クッ!」

 

 正論を前にしては流石の安城も引かざるを得ない。

 

 無理筋なのは流石の安城もわかっていた。

 自分たち以外の女子(・・)も訓練機を利用する。自分たちだけが独占、ましてや他のアリーナから持ってくるなど出来る訳がない。

 だが一度も連携訓練をせずに望めば連携の無さを突かれてもしかしたら………

 

(もしかして奴はこれを狙ってた!? いやだけど数は圧倒的に有利、最悪連係出来なくても実力差で押せる。経験の平均はこっちのほうが上なんだから!)

 

 仕方ないと諦め、安城は空いている練習機を聞こうとする。

 そう思った矢先、受付嬢の人が固定電話を取った。

 

「あ、ちょっとごめんなさい。はいもしもし。はい来てます、今対応中で………わかりました。そう伝えときます。安城さん」

「はい?」

「たった今連絡が来て、来週の異種ISバトルの前日のみ。12機の練習機で合同練習をしても良いという知らせが」

「本当ですか!?」

 

 その知らせはほぼ不可能と考えていた安城と女性の為の会にとって正に寝耳へ水の果報だった。

 

(勝った! こっちが負ける可能性はゼロだけど、更に勝率は上がった!)

 

 生徒会チームも練習機を二機確保できなければ連携訓練など出来ない。

 あの宣言が出てからこっちも空いている練習機はほとんど抑えた。後手とはいえ、二機揃って空いてる席などない。

 これは完全にこちらのアドバンテージ。

 

 この勝負で女性の為の会の勝利は揺るがない。

 安城は磐石の態勢を取った。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 安城が顔芸スレスレの笑顔をしてることなど露知らず。

 会長に案内されている俺たちは非常灯のみが照らす薄暗い廊下を歩いていた。

 

「疾風、ここどこ?」

「ちょっと言えないとこ」

「え?」

「悪い一度言ってみたかったんだ」

 

 シチュ全然違うけど。

 

「実は俺も初めて来たんだ。どういうところかは話だけ聞いてるけど」

「ここはIS学園の地下特別区画よ」

「え。そんなとこに俺たち入ってきて良いんですか?」

「一人では駄目よ。私が居るなら話は別(本当にヤバいとこは更に地下にあるだろうし)」

 

 此処より更に地下になんかあるんだろうなぁ。

 俺はISでこっそりスキャニングしたい欲を必死に(バッジを)抑えながら進んだ。

 

「ゴマ開け!」

 

 会長の声門認証で何ともない壁が自動ドアとなって開いた。

 

「微妙なアレンジっすね」

「いやまずこのドアに驚くべきじゃないか?」

「フフン。固定観念に囚われた頭の固い人ほど結構効くもんなのよん♪ 山田先生! 明かりをお願いしまーす」

「はーい」

 

 山田先生居るの? 

 なんかこういうとこに居るの場違い、ていうか関われるポジションに居るのかあの人。

 大分失礼なこと考えていると暗い部屋に明かりが灯った。

 

 眩しさに目をつむって開いた目の前に広がったのは。だだっ広い真っ白な空間だった。

 広さは学園で一番狭い第三アリーナよりも小さいが、ISが充分飛ばせるだけの空間は確保されていた。

 

 あ、ガラス窓に山田先生が手を振ってる。振り返したろ。

 

「なっ、なんなんですかここ!」

「これが会長の言っていた、幻のアリーナですか?」

「そうよ。ここで私たちは連携訓練。ならびに各強化トレーニングを致します!」

「イエーイ!」

「いえ~い!」

 

 会長の号令にいの一番に音頭をあげる俺とのほほんさんに置いてかれて一夏は波に乗れず流されてしまった。

 

「ここは特殊な場所でね。ここでISを起動してもISコアの反応が外部に漏れないのよ」

「つまり、アリーナで動かしてるあいつらにもここでやってることはバレないというわけだ」

「それって」

「アリーナ時間外になったとしても練習出来るってこと」

「え、そんなことして怒られませんか? 特に織斑先生とか」

「一夏、あれ」

「ん?」

 

 一夏が俺が指差したほうを見てみると、山田先生の後ろで腕組みをしてる織斑先生がこっちを見下ろしている。

 

「織斑先生も裏向きはこっち側ってことだ。ここの責任者は織斑先生らしいし」

「そうなんだ」

 

 しかしこうして見ると。織斑先生は(あと山田先生も)学園にとって結構重要な立場に居るってことになるよな。

 だってIS反応を遮断するような施設なんて。ぶっちゃけ聞いたことすらないし。

 

「で、虚ちゃんと本音ちゃんが使う打鉄はあそこにあるやつ。本来なら教員用として使われる奴なんだけど。今回は特別に使わせて貰うわ」

「練習機とは別ってことですね」

「それだけじゃないぞ。この教員用は練習機と違ってずっとここに置かれるから初期化する必要がない」

 

 本来練習機は生徒が乗り終わった後に自動的に初期化される。

 対して俺たちにあてがわれるこの打鉄は初期化する必要はなし。

 

 つまり奴らが乗る練習機がレベル1なのに対し、こっちの打鉄はある程度レベリングが付けられたISで勝負出来る。

 

「正直言うとズルいですね」

「ふふん。彼女たちは生徒会、つまり学園に勝負を挑んだんだもの。私たちは使えるものを使ってるだけに過ぎないからこれは不正ではないわ!!」

「そのとおりだぞ一夏くん! それに言うだろ? バレなければイカサマではない」

「うわっ、凄い悪い顔してるぞ疾風!」

 

 そりゃあね。あいつらが練習機獲得するのに四苦八苦してる間にこっちは伸び伸びと練習出来るんだ。

 笑うなと言うほうが無理だろう? 

 

「なんていうか。改めて見返すと結構汚ない手使ってるなぁ」

「一夏の性格を考えて、正直苦行じゃないかなって。それだけは悪いと思ってるよ」

「いや、乗り掛かった船だ。最後まで付き合うぜ、疾風」

「心強いよ一夏」

 

 汚ないも綺麗もない。

 これは殲滅戦だ。数の優劣など関係ない。

 会長の言うとおり、使える手はどんなものも使ってやる。

 

「フフッ。男の友情ね。さっ! 始めるわよ! 時間は限られてるんだから!!」

「はいっ!」

 

 会長がミステリアス・レイディを纏い、俺たちも専用機を呼び出し、布仏姉妹が打鉄を装着する。

 こっから俺たちの秘密の特訓が始まった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 時が経ち一週間後。

 

 あれから時間を見つけては地下で特訓し。練習機がアリーナで取れた場合はそこで動かし。

 練習機が取れない時は専用機組VS男二人というぶっちゃけこっちのほうが難易度高いんじゃね? と思えるような激戦を繰り広げたりした。

 途中で面白がって来たのか、学園が誇る上級生専用機コンビ『イージス』の二人も応援に来てくれたりした。(因みにその時は惨敗してしまった)

 

 相手メンバーの戦力を調べたり。そこから戦略パターンを更に練り上げ。準備を徹底した。

 

 4対12という圧倒的な物量差に不安を感じることなく。俺たち生徒会チーム四人は会長に見送られてピットに向かっていた。

 

「ん?」

「あっ」

 

 ピットに続く廊下の途中で菖蒲が居た。

 顔を見るに、待っていたというより偶然出くわしたように見えた。

 

「ごめん、先行っててくれる?」

「逢い引き~?」

「こら本音」

「わかった、遅れるなよ?」

 

 一夏たちが離れ、廊下で俺と菖蒲の二人っきりになった。

 

「あれから大丈夫か?なんかされてない?」

「大丈夫ですよ。皆さんと一緒に行動してましたから」

 

 当たり障りない話をかわす。

 菖蒲はいつもと変わらず制服と呼ばれてる着物を来て笑顔を見せてくれている。

 

「菖蒲」

「謝らないでくださいね?」

「流石というか。そんな顔に出てる?」

「ええ。疾風様って自分でも気づかないくらいわかりやすい時がありますよ」

 

 え、それはそれで結構ショックだぞ。

 ポーカーフェイスには結構自信があるのを自負してるのに。

 

「まあそういう時は親しい人とお話してる時ですからご安心下さい」

「いやマジで読んでるな。菖蒲何者?」

「疾風様を好きでいるだけのただの女ですよ」

 

 菖蒲が臆面もなく言った言葉に一瞬息を飲んだが、驚きはしなかった。

 

「俺はお前を巻き込んだあいつらが許せない」

「はい」

「だけどそれはお前を特別に好きというわけじゃなくて。お前が俺の大切な友人だから」

「わかっています」

「だけどお前はこんな答えじゃ納得しないだろう?」

「勿論です」

 

 淀みなく、間を置かずに答えてくれる菖蒲の目は俺を真っ直ぐ見ていた。

 

 あんな目に遭ったのにも関わらず菖蒲の俺に対する気持ちは変わらないで居てくれている。

 それがどれだけ強い想いなのか、俺は痛いぐらいしっている。

 

「まだ俺はお前が納得できるような答えは出せていない。だから俺はここを離れる訳には行かない………だから勝ってくる。考え続ける為にも、俺自身どうしたいのかを考えるために」

 

 菖蒲の目を真っ直ぐ捉えて今出せる答えを出した。

 菖蒲はそんな俺を見て笑った。

 

「それでこそ疾風様です」

「ハハッ。ここまで肯定されると少し恥ずかしいな」

「本心ですから。それに疾風様は一つ勘違いをしていますよ」

「なに?」

「疾風様が仮に此処を離れるなら、私もそのままこの学園を出ますから」

「え?」

「不思議ではないですよ。私は疾風様が居るからIS学園に来たのですから。あなたのいない場所に私は価値を見出だせません」

「なんとも」

 

 俺が考えていた以上に。徳川菖蒲という女は強かだったようだ。

 一夏ラバーズのみんなも同じこと言うのだろうかね。

 

「負けられない理由が増えたな」

「それは何よりです。私けっっっこう重たい女ですからね」

 

 それは違いない。

 ここまで惚れられるというのも不思議だ。俺はそこまで自分が魅力的な男というのはどうにも思えないし。

 

「そろそろ時間だから行くわ」

「はい、ご武運を」

 

 お互い背中を向けて歩き出す。

 それぞれの決戦の地に行くために。

 俺たちは前に進むしかないのだから。

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