IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第62話【異種多人数ISバトル 前編】

 雁首揃えてゾロゾロと。

 

 そんな言葉が似合うのは果たしてどちらの陣営か。

 打鉄とラファールが綺麗に半々で別れている女性の為の会の12機のISか。

 はたまた打鉄二機に加え色鮮やかな空色と染み一つない白色のISを保有する生徒会チームか。

 

 表向き清廉潔白をうたう陣営と表向きヒーロー気質な陣営。

 史上希に見ることもない異種多人数チーム戦の幕が、今か今かと幕を開けようとしていた。

 

「あら、逃げずに来たのですね」

「いやドチャクソこっちの台詞過ぎるんですけどそれは」

 

 打鉄を駆る安城敬華はなんかポーズもどきを出しながら煽ってきた。なので冷静にツッコンだ。

 こっち勝負吹っ掛けた癖に居ないなんて笑い話にもなりはしない。

 

「そう言う割にはやる気あるのですか? そんな場違いな物を取り付けて」

「開幕から失礼だなオイ」

 

 場違いとあざける安城が言うのは俺のイーグルの姿だろう。

 まあ高速機動戦闘でないにも関わらず高機動パッケージ【ソニック・チェイサー】を、肩にはクローのようなもの、腕にはスッポリ覆うように長方形のコンテナつけている姿を見れば、誰しも疑問に思うだろうけど。

 

「まあいいでしょう。疾風・レーデルハイト。あなたに最後のチャンスをあげましょう」

「チャンス?」

「この試合はどう見ても我々の勝利は確実。無様にボロ雑巾になって恥をかきたくなければ、今ここで謝罪し学園を………」

「なあ。負けたくないからさっさと降参して下さいお願いしますみたいなこと言うのやめてくれね? 冷めるから」

 

 安城のジャブをアッパーカットでぶち抜いた。

 

「それともなに? こんな戦力差で自分たちの勝利は必然って言っときながらわざわざそんなこと言うってことはさぁーーーもしかして自信ないの? 超うけるんですけど」

「っ!!」

 

 はーいピキキ顔頂きましたー。

 

「あとお前にそんな台詞似合わねえ。そういうのはセシリアみたいに自分に自信満々な奴がルーキーに言うものだぜ」

「聞こえてますわよーー!!」

 

 観客席のお嬢様から怒声が聞こえた。

 後ろで一夏が何かを思い出したかのように小さく笑っていた。

 

「何が言いたいの?」

「チープ・小物・雑魚っぽい」

「貴様っ………!」

 

 あれ大丈夫ですか? はやくも化けの皮の先っぽめくれて中身見えてない? 

 血管切れて棄権しないでね? 

 

「疾風、あんま煽るなよ」

「なんてこと言うの一夏!? お前が今言ったことは目の前にISがあるのに乗るなって言うようなもんだぞ!?」

「なんで! って顔されても困る。つかそれ疾風限定だから」

 

 そんなこと言っていいのか、知ってるんだぞ一夏。

 お前が入学試験でうっかり目の前にあった打鉄に触ってファーストマンになったことを! 

 

「てかその相談は無理だぞ。今の俺はまさしくリミッターを外した新生疾風・レーデルハイトくんなんだからな」

「頼むからラフプレイはほどほどにな?」

「うんわかったー、ドン引きされない程度にやるー」

「よし、その言葉をもう一度俺の目を見て言ってくれ」

 

 すまん。今首が動かないんだ。

 

 自分たちの今後が関わる一大決戦であるにも関わらずのんきに話す俺と一夏を見て女尊男卑チームだけじゃなく観客も呆気に取られていた。

 

『戦闘開始まであと30秒』

 

「さーて行こうか!切った張ったの大立ち回りを」

「ああ!」

「は~い」

「行きましょう」

 

「踏み潰す。その生意気な顔。二度と出来ないぐらいに!」

 

『3・2・1』

『試合開始!!』

 

 ガチャン! 

 女尊男卑チームが揃って手に持つ銃火器を前方に向ける。

 数の理を活かして蜂の巣にしてやる。安城が口角を上げて引き金を引こうとした。

 

 その時。安城、いやチームの頬に疾風(しっぷう)が通った。

 

 ビーー!! 

 

『カトライア機、リミットダウン』

 

「………………へ?」

 

 無機質なブザー音と電子音声に安城は思考を忘れ声を漏らした。

 後ろ、というより下にはエネルギーエンプティで落ちていく三年生のISの姿が。

 

「あ、行けるわ。プランAー2。蹴るよ」

「了解!」

 

 いつの間に女性チームの上に陣取っていた俺と一夏。

 ヨーイ・ドンで一夏が俺のウィングを掴み、白式雪羅の二段階瞬時加速(ダブルイグニッション・ブースト)と高機動パッケージ装備で無理やり練り上げたイーグルの疑似二段階瞬時加速(ダブルイグニッション・ブースト)を同時に発動した2×2の連結加速(ブースト・コネクト)で一瞬のうちに一番背後にいた三年生のISを零落白夜で切り裂いた。

 

 そんな二人が彼女らの頭上で足を合わせていた。

 知ってる人は知ってる、その技の名は。

 

「必殺、空恋嵐」

「そんなんだったか!?」

 

 またの名を、スカイラブ・ハリケーン。

 

 バネのように弾き出された一夏は急転直下で女性チームのど真ん中を零落白夜でぶち抜いた。

 一年のラファールがすんでで直撃を避けたものの、零落白夜で切り裂かれたシールドエネルギーは残り三割を切っていた。

 

「はい二人目」

「え?きゃあっ!!」

 

 怯んだ一年生に向かってイーグルの足にプラズマブレードを展開、食いかけの餌に食らいつき地に落とした。

 

『アウベス機、リミットダウン』

 

 足のブレードを当てたままアリーナに落下した俺と一年生機は地面にクレーターを作り上げた。

 そして二人目の脱落者が出た。

 

「おいどうした何呆けてんの。もうスタートから15秒もたったぞ?」

 

 一年生の打鉄を足に敷いたまま俺はイーグルの両手にある長方形コンテナの側がパージし、中身を取り出した。

 それは無数の突起物を生やした棒状の物だった。棍棒と言うには余りにも刺々しい凶器の物体は恐怖心を煽るには充分過ぎた。

 

「もっと楽しめよ、なぁっ!?」

 

 思いっきり笑顔で武装を起動。

 突起物の先が光り、プラズマが走った。

 

「飛べ! 燕の巣(スワローズ・ネスト)!」

「さ、散開!」

 

 戦闘指揮を任されている残った三年生の打鉄が叫ぶと同時に棒状の物体から突起物=小型ビットミサイルが一斉に飛び立った。

 一房に計10基×2に取り付けられたスワローズが一斉に飛び立ち、10機のISに群がっていく。

 ラプターの小型版として産み出された高価格使い捨て消耗品は半分は撃ち落とされ、残りは敵に取り付いて爆ぜた。

 同時にのほほんさんが背中につけていたプロトタイプ指向性誘導ミサイル、『(おろし)』をぶっぱなす。

 

 その爆撃であぶれたところを虚先輩が焔備で的確に撃ち抜いていく。

 

「くっ! 織斑一夏は、どこ!?」

 

 スワローズ・ネストと颪で見失った一夏を探すためにレーダーを展開する二年生の打鉄。

 アリーナ下で移動するのほほんさんとその横で並走する一夏を見つけた。

 

 二年生の打鉄は側にいた一年生二人と一緒に眼下の一夏たちを銃撃する。

 狙われると同時にのほほんさんが迷わず一夏の前に出る。両手にコールしたシールドと肩のシールドに銃弾が絶えず跳ね返る。

 

「おりむー!まだ前にでないでね~!」

「わかった!」

「はっ! 女に守られてさぁ!!」

 

 女性チームは更に二人追加してその場に一夏を張り付けにした。

 

「織斑一夏を抑えろ! 零落白夜を抑えさえすれば数で勝てる!」

「了解!!」

「理に叶ってます。疾風くんも数人がかりで抑えてて。ですが」

 

 一夏と本音に飽和射撃をしていたメンバーのうち二人の銃器が突如バラけた(・・・・)

 

 打鉄の高機動パッケージ【鉄風】を装備した虚先輩は続けざま両手に持つ細身の剣を二年生打鉄の焔備に突き刺した。

 

「私もお忘れなく」

 

 虚先輩が突き刺した腕をクイッと動かすと、その手に持っていた焔備がたちまちパーツとなって分解された。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 分解の虚。

 

 整備課のエースとして名を馳せる彼女の装甲取り替えのスピードはまるでF1レーサーのタイヤ交換の如き早さで取り替える、構造が複雑な装備も気付けばパーツになっているなど。その手際の良さからついたあだ名が分解の虚だ。

 

 だがその異名の成り立ちは整備課からの物ではなかった。

 その要因がこの近接武装。

 

 対武装破壊超振動刀【啄木鳥(きつつき)

 

 倉持技研が開発した相手の武器破壊を目的で作られた近接武装。

 武器のパーツの継ぎ目にピンポイントで突き刺し、超振動で武装を形状分解させ、相手の戦闘力を削ぐ。

 武装のなくなったISは戦闘の選択肢が狭まり、こちらアドバンテージを取れるというものたった。

 

 だがこの武装を十全に発揮させるには破壊する武器の特性とその弱点を知る知識、IS戦闘という高速戦闘中に的確に弱点に刺し込める技量、相手と渡り合えるだけのポテンシャルが必要だった。

 余りにも欲求される難易度の高さと超振動機構を発揮させるために通常武装よりサイズダウンされた故のリーチの短さと威力の低さ。

 誰にも扱いきれない武装に世間から玄人向け、ネタ武装として酷評を受けた。

 

 だが2年前の後期クラス対抗戦第一試合にて啄木鳥はその日の目を浴びた。

 使用していたのは当時一年生の布仏虚。彼女は啄木鳥を両手に一本ずつ持ち試合に参加。

 そして第一試合の試合結果に生徒先生とわず度肝を抜かれた。

 相手のリザイン、投了による試合終了。

 対戦相手が使える武器が全て損失したことが原因だった。

 対戦相手はこう語る「気づいたら手に持っていた武器がバラバラになっていた」と。

 

 啄木鳥のポテンシャルを余すことなく十二分に発揮した虚。

 第二試合でアメリカ代表候補生のダリル・ケイシーの武装を同様にバラしたが。最後は第3世代型IS、ヘル・ハウンドの炎熱機能を纏ったダリルのボクシング戦法に敗北。

 もし第二試合でダリルに当たらなければ。もし虚がダリルに勝利し、その後も試合が続いたのならば、更に無数の武器がスクラップになったことだろう。

 

 そのあと虚は整備課に入り、更識楯無の補佐に回ったため戦線から離れた。

 武装分解の虚の名は半ば都市伝説となり、整備課の分解の虚として整備課のエースとして君臨した。

 

 その日観戦していた三年生は思い出した。

 数瞬のうちに反応の遅れた残り三人の武装をバラし、合計5機のISを武装解除して離脱した布仏虚の姿を。

 それは正しくあの時クラス対抗戦で猛威を振るった、武装分解の虚の姿だった。

 

 閑話休題。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 一瞬でバラけた自身の武装に目を見開いた打鉄の二年生パイロット。

 

「はぁっ!?」

 

 目の前で起きた不可思議な現象に二年生打鉄の思考が焔備と一緒にバラバラになった。

 その隙を逃すことなく背後からイーグルが爪をたてた。

 

「背後失礼しまぁぁす!」

「がっ!」

 

 背後からブーストを効かせた膝をぶち当てた。防御機構がなければ確実に背骨を砕いていたそれを当てたまま一夏のほうに運んでいく。

 

「バッター!」

「こいっ!!」

「ピッチャーーー蹴ったぁっ!」

「おいぃ!?」

 

 のほほんさんの影から飛び出した一夏が準備に入る。

 連れてった二年生を蹴り飛ばし、そのまま一夏の斬撃線上ストレートに放り投げた。

 

 一閃。零落白夜が二年生のボディを滑り、8割残っていたシールドを掠め取った。

 当たった瞬間にワンオフ・アビリティー発動とまではいかなくても、一夏は当てる二秒前を見計らって発動させることは出来るようになった。楯無会長とひたすら練り上げた零落白夜の制度は格段に向上していた。

 

『片倉機、リミットダウン』

 

「ムーブムーブ!」

 

 三人目を切り捨てたことを喜ぶ間もなく敵はムキになって三人に攻撃する。

 

 二人と別れた俺はそのまま上昇し、アリーナ外周をぐるぐると回っていく。

 

 作戦の第一段階は終了。

 一夏が初撃で一人、呆けてる人をもう一人やれたのはぶっちゃけかなりラッキー。

 そのあと爆撃で相手の指揮系統を崩し、そこに虚先輩の武装分解が見事刺さり、そのまま三人目を屠る。

 これで相手は危機感と同時に焦りを持ち始める。

 

 しかし虚先輩が分解がここまでだったとは、今も射撃をしてチャンスと見るや相手のブレードやライフルをバラしていってる。心なしか活き活きしてる気がするが良いことなので良しとしよう。

 

 ボルトフレアを呼び出し、大きくサークルロンドしながら撃つべし! 撃つべし! と相手のヘイトを稼ぎながら撃っていく。

 からの。

 

「唐突にお邪魔しまーす!!」

「うわっ!?」

「邪魔くさい!」

 

 プラズマ・フィールドを纏ってIS一機に突っ込んだ。

 やつらは完全に連携を維持出来ず、何人か集まって各々攻撃を仕掛けていってる。

 この様子を見る限りろくに作戦考えてなかったんだろうか、あるいは一気に三人落とされて冷静じゃなくなっているのか。

 

 どっちにしろ好都合、もう少し彼女たちには怖い思いをしてもらおう。

 

「お、織斑一夏をマーク! 抑えておけ! 先ずはあいつ! レーデルハイトを潰せ! やつが指揮を出している!」

 

 なんか安城が指揮官を気取りだした。

 ああ、なるほど。もう一人の三年生も落ちたのか。

 

『フラジール機、リミットダウン』

 

 三人の連携で隙が出来たところを零落白夜で削られた三年生がのほほんさんの投げたグレネードで煙を上げながら落ちていた。これで四機目。

 のほほんさん射撃は駄目なのに投げ物は上手なんだよな。それが役に立った。

 

 そろそろソニック・チェイサーにためていたエネルギーがなくなる頃だ。

 あっちの戦力が一年6人、二年が2人。三年生の2人は終了。

 

 そろそろ俺もヤるか。

 

 急停止、アリーナのシールドに足をつけ、膝を縮め、スラスターが淡く光る。

 手に新型の槍をひっさげ。俺は相手を見据える。

 

 最大ブースト。比較的密集してるとこに突っ込む。

 飛び交う銃弾。多生の被弾を無視し突破。

 自分でも口角が釣り上がるのが感じ取られる。

 俺はそのまま特になにもせず(・・・・・・・)通り過ぎた、

 

「逃がすか! ーーーん?」

 

 振り返って銃を構えたが、その時ふと妙な色が混ざっていた。

 俺が通り過ぎた横に、パージされたパッケージ(水色の物体)が捨てられていた。

 

「重いからあげる。(他人)に押し付けるの好きでしょ、あんたらも」

『Bonn!』

 

 電子音声が鳴るとパッケージ内部に仕込んでた高性能爆弾による衝撃とそれに誘発されたプラズマ波が奴らの横っ面に殴りかかった。

 

「そうだろ? 一年八組の加藤百合子」

「っ!」

 

 爆発に紛れて至近距離で一年生の打鉄なや切迫。

 そのままプラズマブレードを胸あたりにサマーソルトで蹴りあげ、その機体を掴んで地面に急転直下した。

 

「きゃーー!」

「騒ぐ暇あったら動け」

 

 俺はそのまま叩きつけることをせずに済んで離した。がむしゃらに動こうとした加藤はバランスを崩して体勢を崩しながらなんとか地面に立った。

 

「ハロハロー改めて話すの久しぶり。ところであれから水着は買えたのか?」

「せ、セクハラよ!」

「訴えていいよ、勝てるならね」

 

 ヒス気味に叫んだこいつは懐かしくも俺が織斑先生の横槍で裁判に持ち込めないでいたレゾナンスで絡んできた女だった。

 あんなことがあったのにこうして目の前に居るというのはね。中々度胸というか、根性がおありのようだ。

 

「うるさい! あんたのせいで毎日気が気じゃなかったのよ! いつあのネタを使って強請(ゆす)られるのかって!」

「実際強請ってないし先生に止められてから強請る気もなかったし。そもそも全部まるっとそっちの自業自得だろ」

「五月蝿い! 男の癖に!!」

「草生える。理由がしょぼい上にボキャブラリーも少ない。流石、優秀な女性は言うことが違うね?」

「黙れーー!!」

 

 近接ブレード【葵】を引っ提げ突っ込んできた。

 拙いなぁ。その太刀筋を代表候補生勢と比べながら俺は馬上槍(ランス)形状の新兵装【ブライトネス】で受け止めた。

 唾競り合いになるが、通常の打鉄の馬力でイーグルを吹き飛ばせる訳もなかった。

 

「そんな密着して、熱烈ぅ」

「黙れ!黙れ黙れ黙れっ!!!」

「でもごめん、おまえ好みじゃないの」

 

『ブライトネス。カートリッジ、レディ』

 

「だから纏わりつくんじゃねえよ。気持ち悪いからさっ!」

 

 ブライトネスの柄にあるトリガーを引くと内蔵されたプラズマカートリッジに火がついた。

 槍が一瞬光り、圧縮されたプラズマがそのまま衝撃となって打鉄のブレードを揺らした。

 

「いいね」

「かっ!」

 

 離れたブレードを弾き、ブライトネスを加藤の腹に突き立て、トリガー。

 圧縮されたプラズマの衝撃が腹をうち、加藤は軽くくの字に曲がる。そのまま滑るように距離が空けた。

 

「上々の出来だ、父さん(チーフ)

 

 俺は空になったカートリッジ二つを排出。

 腰に巻いているカートリッジベルトから量子切換で装填する。

 

【ブライトネス】

 馬上槍の形をしたこれは言うなればプラズマ版パイルバンカー。

 炸薬による衝撃の代わりにプラズマを内包したカートリッジを使用し。槍を起点に圧縮されたプラズマの衝撃を与える。

 グレー・スケールに比べれば威力は劣るものの、相手の体勢を崩したり、唾競ってくる武器を弾く程度の威力はある。

 最大6発装填&連続使用が可能。

 

「惚れそうだなこの性能。どうした? おれが怖いのか?」

「そ、そんなこと」

 

 明らかに怯えてる加藤。

 そんな姿を見て俺はふと会長との特訓を思い出した。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「疾風くんはまだ遠慮してるわね」

「そうですか?」

「うん。疾風くんはISに深入りしてる分、ISを兵器として感じてるってことに負い目を感じてるのね。通常の試合だとそれが自然とストッパーになってる」

 

 学園祭が終わってから一通り稽古を付けてもらい、会長と反省会の最中言われたのが無意識に手が抜けているということだった。

 

「技量よし知識よし、ISの動かし方も状況把握も悪くない。本当ならもっと戦果を上げてるはずなのよねー」

「買い被りすぎでは」

「疾風くん。あなたも一夏くんに負けず鈍いわね」

「なぁっ!?」

 

 その言葉は俺の胸に突き刺さって爆ぜた。

 もしも今立っていたら崩れる一歩手前だったろう。

 それほど一夏と同じ相手と言われることはショッキングな出来事だった。

 

「確かにあなたは私や他の国家代表。上級レベルの代表候補生に比べたらまだ格下。それでもあなたの実力は高く評価されるべきものなのよ」

「はい」

「謙遜するのはいい。自分が他者より優れていると無駄におごったり慢心するよりは遥かにマシ。だけど、あなたのそれは自分の実力を正当に理解出来てない愚か者になってる」

「っ!! はい、すいません」

 

 自分が他者より優れてると思ったことはない。

 自分以上の実力者など余るほどいるし。近接の立ち回りは一夏やラウラ。遠距離狙撃の技術はセシリアにも劣るし、ラピッドスイッチのような特異技能も持っていない。

 だけど会長の言葉はどこか的を得ていた。

 

「疾風くん。あなたは自分を低く見すぎなの。それも自分をセーブしてる要因の一つ」

「はい」

「第二次天使討伐作戦(エンジェル・ハント)の作戦指揮を見た。あの作戦は繊細さと豪胆さのバランスを見極めた良い作戦だった。予定外のシフトアップで崩されたとはいえね」

「それは」

「みんなのお陰。だけど一部を抜けばみんなルーキーよ。そんな個性がバラバラで統率されてない学生が正規軍隊でも困難なミッションをあなた達は成し遂げた。戦闘というのはね、優秀な指揮官がいるかいないかで雲泥の差になるのよ」

 

 説教からの唐突の誉め殺しに俺は喜んでいいのかどうかわからなかった。

 そんな出来た人間じゃないのになと、言われたばかりなのに無意識に自虐してる自分に気づき恥ずかしくなった。

 

「私にミストルテインの槍を小さいながらでも出させた。私、この学園に来てあんな無茶したの初めてだったのよ」

「あの水爆弾の槍ですか?」

「あとあんなスタイリッシュじゃない自爆をさせられて。実質私のなかで負け判定なのよあれ。結果は白星だけど」

「は、はあ」

「あなたは充分凄い子なの! 私がそう言ったのだからそうなのよ! わかった!?」

「はい! わかりました!」

 

 どうやら俺は会長から見ても凄いルーキーらしい。

 セシリアあたりに言ったらボロクソ言われる予感するけどな、アハハ。

 

「俺がその、まあまあ凄いとして。自覚だけで戦い方変わりますかね」

「変わるわ。自分の力量を理解し、自信を持って行う行動はそうでないものでは全然結果が違ってくる。自信がつくってのは、それだけでアドなのよ」

「成る程」

 

 自信がつけば行動に迷いがなくなる。

 迷いがなくなるということは、迷った分のラグがなくなるってことになる。

 

「まあ、疾風くんの場合は既に実践済みよね」

「え? どういうことです?」

「私と初めてやりあった時とか、シンデレラVSシンダーラッドに」

「あれですか?」

「まあズバリ言うとね」

 

 もったいつけて大袈裟に扇子を広げた会長がそのまま俺の眼前に扇子を突き出してこういった。

 

「獣になりなさい疾風くん!!」

「………………………はあ?」

「あ、別に性欲を解放しろって訳ではないのよ?」

「すいません。返せるコメントがないです」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 なんか余計なことも思い出したな。

 まあいいや。

 

 獣になる。

 そのことを俺なりに真剣に考えてみた。

 

 余計な考え(理性)をとっ払い臨機応変(本能)でその場の判断を感じとって動く

 

 獣は躊躇などしない。

 生きるか死ぬかの瀬戸際にそんなことを考えればたちまちこちらが屠られるから。

 

 俺は会長に見せられた初対決とシンデレラで暴走した姿を見て納得した。

 この時の俺、凄いバトルジャンキーっぽいと。

 だって顔つきが明らかに違うもの。俺って結構大人しい面構えだった気がしたんだけど。

 

 正直自分でも引いたけど。これが最適解というなら試してみよう。

 丁度遠慮のいらない獲物(相手)が目の前にいるのだから。

 

「行くぞイーグル。最後まで着いてきてくれるよな」

 

 俺の呼び掛けに答えるようにイーグルのプラズマコアがキュイィィィ! とうねりをあげた。

 ブライトネスを握りしめる。

 イーグルの肩に追加装備された【シザーアンカー】の口がバカッと開いた。

 

 ニヤッと笑った。

 相手の喉が鳴った音が感じられた。

 逃げたいと思ってる相手の思惑が手に取れた。

 

 加藤は思わず息をすることを忘れ、まるで人ではなく化け物を見るような目で手に待つ焔備の引き金に力を込めた。

 

「覚悟はオーケー?」

「来ない──」

「待たないがな!」

「──で」

 

 加藤の言葉は置き去りにされた。

 

 瞬時加速(イグニッション・ブースト)で弾丸を突っ切り敵の懐に入りまずはブライトネスを一発。

 

 体勢が崩れた打鉄を左手のプラズマブレードで切りつける。その間にブライトネスを腰のハードポイントに保持、インパルスをコール。

 シールドユニットに防がれる。ガードが空いたところにインパルスのプラズマ弾を打ち込む

 

『シールド残量 82%』

 

 よろけたところをインパルスをリコールしブライトネスで一撃。

 必死こいて逃げようとする加藤の打鉄。

 両肩のシザーアンカーを射出。加藤の腕に噛み付き、こちらに引っ張ったところを右足のブレードで蹴りあげる。

 

『シールド残量 70%』

 

「い、いやっ」

 

 涙目になった加藤の涙がシールドと胴体に当たった三発のブライトネスでちぎれ飛ぶ。

 離れたところをプラズマバルカンで追撃。コールしたボルトフレアを三発発射。うち一発がシールドに阻まれ、二発命中。

 

『シールド残量 52%』

 

 シザーアンカーで釣り上げたのちに回収。

 ビークを射出。ブライトネスを前に突き出し、ビークと合わせて突撃する。

 

「つあっ!!」

「っ!!」

 

 打鉄のシールド一つにつき三個のビークが突き刺さり。腹のシールドエネルギーにめり込んだブライトネスが五発目と六発目を叩き込む。

 

 そのままアリーナの壁に突っ込んだ。

 

『シールド残量 43%』

 

「ハハッ」

 

 身体と思考が繋がったような手応えに。思わず笑いが溢れてしまった。

 いや、それだけじゃないな。

 

「うあっあぁぁ………」

 

 嗚咽をあげ、目尻に涙をためた加藤の姿に俺は腹の底から沸き上がる感覚に体が震えた。

 

 俺は女尊男卑主義者が大嫌いだ。

 ISというオーバーテクノロジーから生まれ、派生されたテクノロジーは人類に発展をもたらした事実。

 だがその風潮に乗っかり、ISに乗ったことすらない奴らが暴君面してるのが我慢ならなかった。

 

 あぁそうだ。

 分かってたけど再確認する。

 

 俺は相手の煽りを煽り返して口を引っ込めた時は胸がすいて爽快感が出てくる。

 雑に固めただけのプライドを木っ端微塵にした時は快感すら覚える。

 自分より劣ると思っていた存在思ってる奴の自尊心が砕ける瞬間、思わず笑みが溢れる。

 

 俺は虐げる存在と勘違いしている女尊男卑主義者(ミサンドリー)のお高く伸び上がった鼻をへし折ることが、大好きだ! ISと同じくらい大好きだ!

 

 俺は趣味が悪い。こんな俺を見たら誰しも悪趣味と批判されることだろう

 だからどうした? 

 俺はこいつらが許せない。

 目的の為なら人の命を軽んじ、薄っぺらな思想を掲げて真実を揉み消すこいつらに反吐が出る

 それだけのことをしたのだろうお前らは?

 だからその苦しみを自分で味わってみろ。

 

 なんの問題もない。これはISのバトルなんだから。

 ──だからスカッとさせろ。

 

 ブライトネスのカートリッジを排出。

 自分の中の建前と同時に予備のカートリッジを装填。接続、点火完了。

 

 エネルギー固定放出を拡散(・・)するように設定した。

 

「や、やめて」

「いや全員倒さないと試合終わらないでしょ?」

 

 ズガン! 

 

『シールド残量 37%』

 

 背後で相手が俺の後ろに迫る。

 布仏先輩がインターセプト。

 

「怖い? 怖いよな。みんな手一杯でだーれもお前を助けてくれない」

「ゆ、許して。お願いだから………」

「お前にそういった男は何人居たんだろうね?」

「っ!!」

 

 ズガン! 

 

『シールド残量 31%』

 

「お前も親が女権団体の一員だって? それを盾にあらゆるところで男に横暴働いて。冤罪被せたのも少なくないよね?」

「そ、それは」

 

 ズガン! 

 

『シールド残量 26%』

 

「俺に逆に脅されて頭に来たのか? 挙げ句の果てに。俺と菖蒲の上にフェンスを落とすなんて馬鹿げたことしたと?」

「っ! な、なんでそれを!?」

「あそこ、見えづらいとこに監視カメラ増設したんだよ」

「っ!!」

「全部録画されてるの、お前の顔もね?おめでとう。お前の人生、終わりだね?」

「あ、あ、あぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 自分が隠していたものを丸裸にされ、その後の未来を想像した加藤は絶叫した。

 だがその叫び声が聞こえたのはオープンチャンネルで聞いていたアリーナ内のISだけ。

 アリーナシールドの外の観客には届くことはなかった。

 

『ブライトネス。変更した設定をリセット。通常出力に変更』

 

 高揚していた感情が反転して一気に冷えた。

 ふと。もはや涙を通り越して笑うことしか出来ない加藤の見開かれた瞳に俺が写っていた。

 その瞳に写された俺は。

 

「さようなら加藤百合子」

「はは、ひひっ」

 

 自分でも怖いと思えるくらい、嘲笑(わら)っていたのだった。

 

「手錠かけられる君が見られるのを楽しみに待っているよ」

 

 

 

 

 

 

 ズガン! ズガン! ズガン!! 

 

 ビーーー! 

 

『加藤機 リミットダウン』 

 

 

 




 最後書きながらこんな主人公いていいのかって思えるwww

 いやいやこんなのまだイージーよね!!殺してないし!!(ソコジャナイソコジャナイ)

 一応補足説明。
 今回のスカイブルーイーグルはパッケにシザーアンカーと槍二本とボルトフレアとビーク六基というてんこ盛り。
 のほほんさんが出したプロトタイプミサイルは。まあ名前からしてあれ経由です。

 よしお茶を濁したな!(オイコラ)

 話変わるけど、虚先輩が戦ってるとこ二次創作含めて見たことない。なんでやろね?
 
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