IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
『加藤機 リミットダウン』
これで5機目。
連続稼働したブライトネスの排莢を済ませ、排熱シークエンスに入る。
試作ゆえにまだ十全とはいえないが。満点の出来だ。
この性能、惚れたぜ。
再起不能になった加藤は失神していた。
白目で口を半開きにし、ピクピクと痙攣している。
そんな彼女を見て心が一気に軽くなった。
怖い思いをした菖蒲の万分の一の痛みを感じれただろうか。
それはわからないし。このやり方は間違ってるのかもしれない。
知ったことか。
『ALERT!』
自動防御プログラムでビークがバリアを出してくれた。
まだ試合は終わっていない。
「虚先輩、合流します。一番疲弊してる奴をやります。すぐに」
「了解、タイミングは任せて」
狙いは金髪の一年生ラファール。
最初の連続爆撃で一番ダメージが(生き残りの中で)高いやつ。
「レーデルハイトーっ!」
「すいません先輩キャンセルで。ビーク渡します」
横から安城が葵で切りかかるのをインパルスで弾く。
同時にビークを虚先輩の周りに追従させる。
弾いた安城がめげずに斬り込んで来たのでプラズマフィールドで受け止めてあげた。
「よーもう五人やられたぜ? You焦ってるー?」
「あなた、何をしたの!? こんな連携! 二、三回練習しただけで出来るものじゃないわよ!?」
「そんなもん。企画する前に何回もシミュレーションしたからに決まってるだろ!」
嘘だけど。
フィールドから突き出したプラズマ弾で安城を離しインパルスを左手に持ち代え、腰に差していたブライトネスを引き抜いた。
「生徒会は結成当初からお前ら何かするんじゃねーかな? ってマークしてたらしいぞ。それに限らず生徒会でチーム戦を想定しないわけないじゃん? ここ一週間でやったことなんて一夏の零落白夜の精度上げぐらいさ」
嘘である。
「しかしそっちは結束もなにもあったもんじゃないよな? 昨日の練習は身になりましたかー?」
「黙りなさいゴミの分際で!! まだこっちは7機もいる! 12対4という絶対的数字の勝負! こちらが負ける道理なんてないのよ!」
「そうだね」
マジで12対4だったならな。
ーーー◇ーーー
一週間前。
「「4対12のISバトルーー!?」」
「一夏、会長。ナイスリアクションありがとう」
IS学園史上最大のインパクトを残した演説の一日前。つまりフェンス落下事件と安城達が警告をしたあとに話し合ったおれのプランにその場にいる全員が絶句、もとい驚愕をあらわにした。
そこから要点だけを纏めて説明したが、やはり反対意見は多かった。
「疾風くんがIS学園を抜けるというのは。学園側としても政府側としても痛手よ。現状此処が一番あなたたち男性IS操縦者の身の安全を守れてるんだから」
「トラブル続きだけどね~」
「本音、思っても言わない」
「会長の言ってることはごもっとも。ですがこれだけの条件を提示しなければ学園全体に生徒会がどれだけ本気なのかというのを理解させれません」
「だけどね………」
「それに、
あの時オータムは確実に俺を殺す気でいた。
その場のジョークにしては。オータムの声色は本気過ぎた。
「疾風。俺もその賭けに乗らせてくれ」
「一夏くんまで!?」
「いいのか? 此処を抜ければ、俺とお前は国際研究機関でモルモットの恐れもあるぞ」
「えっ!? いや構うもんか! ISが大好きなお前が言うんだ。それに俺は何でも協力すると言った! 俺も一口、いや全部噛ませろ!」
「ありがとう」
当初、話の段階では俺が抜けるという算段で話していた。
が、ここで一夏が男気を発揮してくれてレートに乗ってくれた。結果会長、突発性頭痛発症。
「それに、お前がそこまで大見得切ったんだ。勝算はあるだろ?」
「ああ。それを踏まえて。会長に折り入って頼みがあります」
「はぁ………聞くだけ聞きましょう。それで頼みって?」
「一週間後の12人のメンバーに更識のスパイを入れてください」
「ええっ!? それってつまり」
「はい、チーム内の裏切り。八百長という歪みを作ります」
異種多人数ISバトルの最大にして最悪の秘策。それが『スパイによる戦場の前提崩壊』だ。
「疾風、お前」
「手段なんか選ばねえよ。前もって言っとくけど12対4でも俺の想定なら充分勝ち筋はある」
「じゃあなんでそんなこと」
「IS学園離れたくないもん」
「え、ええ?」
さっき交渉カードと言っときながらこの言いようである。
まったく悪びれずに言う俺に流石ののほほんさんも目を開けている。
「それで会長。人員を出せるとしたら何人出せますか。出来れば学年ごとに一人は欲しいです」
「あっけらかんと言ってくれちゃって。まあ出せるとしたらそれが限界ね。今の女性の為の会を潰して、仮に似た勢力が出たときに潜り込ませたいから」
「裏切りの可能性は」
「ゼロよ。もし命令に背けばそれは更識への裏切り。その場合、死より恐ろしい罰を与えるわ。更識を甘く見ないでね疾風くん。これでも日本暗部の元締めなんだから」
「気分を害したのならば謝ります。ですが間者を中核に潜り込ませる以上、そこだけは徹底しなければなりません」
もし漏れだしたならば。前提として作戦を立てたこちらの大敗、卑怯な手段を生徒会がしたとして。リカバリーは不可能となる。
「一夏。お前は許さないだろう。これは紛れもなく卑怯な作戦だ」
「………なんでこんなことを考えた?」
「理由か? 生徒会の勝利を確実にするため………なんてのは実質的建前だよ」
そう、本当の目的は他にある。
単純に数を出すなら8対4の二倍数でもいいんだ。それでもISバトルに置ける戦力差は歴然だ。
「俺たちはあいつらの掌の上で足掻いていた。そして一度敗北した。あいつらは人の命なんてなんとも思ってもない。そんなのに慈悲をかけるなんて馬鹿馬鹿しいだろ! だから今度は俺が、俺たちがあいつらを掌の上で転がすのさ」
「疾風、お前」
理由を聞いていた一夏絶句を通り越して困惑していた。
目の前の男が本当に自分の知る疾風・レーデルハイトなのかと。
そして同時に理解した。
「自分たちが盤上の駒だと気付かぬまま内側から食い破られて惨めに散っていく、しかも蔑んでいた男の計略によってだ。これ程あいつらにとって、これ以上に惨めで滑稽で屈辱的なことなんてあると思うか?」
彼女ら女性の為の会は。もっとも怒らせてはいけない男の逆鱗に触れた。
一夏は初めて疾風を怖いと思った。
ーーー◇ーーー
最終的に一夏は納得してくれた。
無駄に説得させるようなことなどせず。最後に一夏と会長の部屋に言って確認を取った。
一夏は気持ちいいぐらい真っ直ぐな男だ。だから罪悪感はあった、正直で誠実なこの男に、卑怯で最低な片棒を担がせたことに。
結果。この試合は
残念ながら作戦は聞けなかった。なぜなら作戦らしい作戦を奴らは考えもしなかったからだ。
当初の予定通り学年から一人ずつ間者を出した。
三年生からはロシアのポリーナ・カトライア先輩。最初に零落白夜で落とした人だ。
最初に実力者の一角を落として精神的衝撃を与えるのが作戦の序章だからだ。
二年生は………
「ミサイルどーん!」
「崩した! 一夏くん!」
「二つでぇぇぇっ!!」
のほほんさんが炙り出し、虚先輩が武器をバラしたノーガードの胴体に雪片弐型と雪羅の零落白夜二刀流をくらったほぼ満単だった二年生の打鉄が墜ちた。
『藤原機 リミットダウン』
ように見せかけてたった今落ちてくれた藤原祥子先輩。
的確に相手の逃げ道にたまたま居るようにボジショニングしてくれたため更にやり易くなった。
残る一年はボロボロ(のふりして)生存中。
残り一年生5人、二年生1人。
「6機目落ちたよ。(スパイ抜いたとしても)同数ならとっくに負けてるけどなんか言いたいことある?」
「黙れ卑怯者! なにをした!」
「そっちが弱いのさ。悔しかったら証拠出しなよ」
「くぅっ!!」
証拠を出してみろ。
数ある煽り文句で一番言いたかった言葉だ。
これまで数多くの男が証拠不十分のまま有罪判決を受けてきた。
俺の知ってる人、友人の知り合い、ニュースでも数多く取り出されていた。
どうだ、男は搾取されるべき存在と蔑んできたお前たちの首に牙が食い込み始めてるぞ?
俺は紛れもなく卑怯者だ。
そう卑怯者だ、それがどうした!
お前たちがどうかなんてこの際関係ない。どう言い訳しても俺は卑怯者だ。
そんな卑劣な卑怯者の手にかかって。
墜ちてきな、
「残念だけど。まだお前の相手するつもりはないんだ」
「な、に?」
「お前はメインディッシュだ。誰も助けのこない孤独な状況で、親のすねに噛るだけの能無しを叩き落としてやるよ」
「っ!!」
「じゃそういうことで」
「いやっ!」
眼前にブライトネスを突きだすと安城は咄嗟に腕でガードしてきた。
「びびってやんの。だっさ」
俺は敢えて打ち込まず。距離を離して別の奴らを相手しに行った。
安城は腕を下ろして戦いの最中であるのにも関わらず呆然とした。
「私が………恐れた? ………私が?」
見ると手が震えていた。
上級生の実力者は残り二年生の1人。後はISを十数回乗った一年生だけ。
対する相手はワンオフ・アビリティー持ちの男と縦横無尽に戦場をかける男。そして、完全にノーマークだった布仏姉妹。
勝てるのか?
そんな言葉が安城の頭の中を走っていった。
「安城! 何を止まってる! 斬られるぞ!」
「はっ!」
生き残った二年生が虚の相手をし、シールドの一部が剥がれて飛んだ。
我に返ると同時に安城は一週間前の演説を思い出した。
『ISを動かしてもいないにも関わらず暴君のように振る舞うミサンドリーの、何処に正しさがある!!』
「違う! 私たちは選ばれた人種! 劣等種に負けるなんて! あってはならないのよ!」
安城はライフルを取り出して二年生に絡み付いてる虚先輩を狙って撃った。弾丸はシールドに当たっただけでダメージは与えれなかったが。引き離すことに成功した。
憎悪と拒否を瞳に宿して安城は吠えた。
「全員後退! 密集してフォーメーションを整えるのよ!」
命令通り強引にアリーナの西方向に終結した六人。
「あれ、吹き返した?」
「どうする疾風」
「こっちも集まろう。場所は真ん中より少し後ろ」
距離を離しすぎず、そして近すぎない距離を維持する。
「一夏シールドどんぐらい?」
「丁度四割だ」
40%。
繰り出す零落白夜が一発必中とは必ずしも言えず。たまに掠り弾に当たることもあって減ったものだが。
これは重畳。単純計算で12%につき1機×5機落としてくれた。
一機落とすのに息も絶え絶えになっていた時に比べれば、他三人のサポートを加味しても大躍進だ。
密集した六人は即興で作戦を考えているのだろう。
あちらが動き出す前にこちらもプランを選ばなければ。
「のほほんさんは」
「68~」
「わかった。じゃあ次はボンバーで。一夏は白式に飯食わせろ」
「了解だ」
「ほいさ~、派手に行くぜ~い!」
「じゃあ早速」
「おけー。照準セット~。ふぁいやー!」
のほほんさんの背中に装備している颪が再び火を吹いた。
放射状に広がる16発のミサイル。
複雑にウネウネ動く颪に女性チームの発汗量が増えた。
「来たぁ!」
「どどどどうすんの!?」
「撃ちながら右に移動だ! それしかねえ!」
まだ作戦は纏まってないのか。決まったのか。
まあどっちにしろ食い潰すだけだけども。
スパイの一年生はまだ中心に居る。
当てにしすぎず。上手く利用していこう。
相手6人は各個撃破を避けるためにつかず離れずで行く方針のようで。
固まったまま、颪に向けて銃を撃ちまくる。密集して弾幕の密度が増したのか銃弾は颪のマイクロミサイルに穴を開けた。
穿たれたミサイルから爆炎………ではなく灰色の煙幕が疎らに広がった。
「ボンバーのほほんマン作戦。開始」
「改めて聞くと気が抜けますね」
「言っちゃ駄目だよ~」
俺と虚先輩がグレネードランチャーをコール。煙幕弾をばらまき、相手チームを煙幕攻めにする
のほほんさんが両手にグレネードランチャーを一丁ずつたずさえ、ノーコントロールで辺り一面に向けて乱射。
更に再装填された煙幕ミサイルが四方八方に散り。フィールドの大半が濃い灰色に覆われ、アリーナのシールドにぶつかって上昇することなくその場に滞留した。
「は、ハイパーセンサーが」
「赤外線!」
「駄目です!」
「サーモは!?」
「目の前オレンジだらけ!」
「なによそれ!?」
混乱してる混乱してる。
通信は聞こえないし、こっちもレーダー潰されてるけど手に取るように分かる。それだけの代物だ。
このジャミングスモークは某国が開発してる対IS用特化型をレーデルハイト工業が独自アレンジしたもの。
爆発時に高熱水蒸気を発生し、なおかつセンサー弱体化の粒子スモーク。
なおこれもお値段は通常より高めでございます。
そしてダメ押し。
「きゃーー!」
「撃ってきた!」
高機動組の俺と虚先輩が煙の中に弾丸をばら蒔く。
「落ち着いて! あっちもレーダーは見えてない! 当てずっぽうよ!」
「でもこっからどうするんですか!?」
「いやー!」
女性チームの一年生は阿鼻叫喚。指揮者気取りの安城も右往左往するばかりで役に立たない。
こっちは大体の位置をイーグル・アイで把握してるものの相手の姿は明確に分かりはしない。
だが今は相手の心を崩す。
当てずっぽうに撃たれる弾丸は時にはISに、そして大半はアリーナのシールドにぶつかって音をたてる。
視界不良のなか絶えず鳴り響く激発音と衝突音、火花は確実に相手の精神を磨耗させていってる。
アリーナの端に集まったことが仇となっている。
なら弾丸を突っ切って煙幕を抜け出せばいい。
だがそれは出来ない。
煙を抜け出せばそこに一夏の白式が待っているかもしれない。
撃破数の大半を零落白夜で落とされてるという事実は確実に彼女らの脳裏にありありと写し出されている。
動かないことが最善なのか、動くことが最善なのか。女性チームはそれが分からず。打鉄の防御力を盾にしてアリーナの端で縮こまっている。
さて、そろそろか?
「終わったよ~レーちん」
「ご苦労様」
煙に紛れて、のほほんさんから一夏にコア・パイパスでエネルギーを譲渡していた。
一夏と俺が落ちる。男が負けるという構図は試合に勝ったとしても当初の目標のイメージに関わる。
量産機故に調整に時間がかかったが、そこは更識の整備担当。過去にシャルロットから一夏にバイパスを行ったデータを参考に1日でこなしてくれた。
「いつでもいけるぜ~い」
「りょーかい。レーザー照射!」
先ほどのほほんさんのバススロットから借り受けた探知用レーザーユニットを照射する。
煙の中に突き刺さる無数の赤色レーザー。
その数本が固まってるIS群にヒット。データを元にイーグル・アイが計算。完了。
「ひっ! なに!?」
「レーザー? でもダメージはない」
「じゃあなんのため」
「こういうことで~す」
ボフッと煙から出てきたのは満面の笑みを浮かべるのほほんさんこと布仏本音。
至近距離で接近する際ハイパーセンサーが関知したが。それは震源近く地震速報並みに役に立たなかった
普段開かないのほほんさんの糸目が開いた。
三日月のような瞳は煙の中でもキラキラと光って見えた。
「でぃす いず だいなまいと」
のほほんさんの打鉄のアンロックシールドと腰回りの装甲が裏返しになった。
そこには可愛らしい爆弾のマークのついた代物がミッチリと敷き詰めらていた。
「か、回避!」
もうそれは限界に膨らませた緊張に針を刺したようなものだった。
二年生が叫ぶ前にフォーメーションなんか知らないとばかりに四方八方に動いた。
二年生も少しでも離れようと動こうとした。
「いぃっ!?」
だが移動しようとした二年生は背後で涙目になっている一年生に背中からぶつけられ体制が崩れた。
「ご、ごめんなさ!」
「お、お前ぇぇーー!!?」
まあスパイの一人なんですけどね。
流石裏家業の人。ナイス演技。
「ぼかーーーん!!」
のほほんさんの身体を張った人間爆弾ならぬIS爆弾、点火。
煙を吹き飛ばし、アリーナに紅蓮の華が咲いた。
「布仏本音機 リミットダウン」
『フィッシャー機 リミットダウン』
『トリウォノフ機 リミットダウン』
のほほんさんが自爆で落ちた。一夏にエネルギーを与えて出がらしになったのほほんさんは落ちる可能性大。
ならば自分から自爆して相手に負けるのではなく自ら勝負を降りるというイメージとアドバンテージを取れば良い。
そして先ほど落ちたジーナ・トリウォノフさん。ロシア人の一年生。
実は更識組織内で彼氏がいるらしい。
それなのに女尊男卑と足手まといという役を買って出てくれた。感謝しますトリウォノフさん。
てか更識家ってロシアにまで手を伸ばしてるんだな。
会長がロシア国家代表になってからパイプが出来たのか、それとも元からなのか。
因みに会長はロシアのワンエイス。つまり8分の1はロシア人らしい。
「そんな、最後の二年生が………」
「うぉぉぉー!!」
煙から逃れた一年生に一夏が猛追する。
一年生もブレードを展開して振り下ろすも、一夏は避けることすらせず雪羅の大型マニピュレーターで直接受け止め、掴みかかった。
ただでさえ零落白夜を行使していると分かっている相手からしたら目を見開くことだが。白式は完全回復してるためこの程度傷のうちに入らない。
そのまま零落白夜を発動した雪片弐型で切り裂く。
『ペトレッラ機 リミットダウン』
「なんで、なんでそんなシールド残ってるのよ!!」
恨み言を叫びながら落ちるのを見下ろすことなく一夏が俺たちのとこに戻ってきた。
「なあ安城。数、同じになっちまったな?」
「う、嘘よ………」
試合開始して10分足らず。
そんな僅かな時間で9機も失い、残り三機もほぼ死に体という状況。
嘘と思いたいのは分かる。俺が逆の立場なら………それはそれで燃えるか?
おっと、変な思考に行ってしまったな。
三機編隊となって安城の僚機を消しに行く。
一夏の月穿、虚さんの射撃で両脇の退路をたったところでブライトネスを突き刺す。
アンカークローで捕縛したのち4連射で落ちた。
残り一機も虚さんが安城を抑えてる間に一夏が接敵。
マシンスペックがほぼ雲泥の差であり、メンタルにおいても同様なら結果は一目瞭然。
今試合で最高のタイミングとキレを見せた零落白夜で屠られた。
『輪島機 リミットダウン』
『スチュワート機 リミットダウン』
10機目、11機目撃破。
残るは安城の打鉄のみ。
「残り一機。言ったろ、メインディッシュは残すって」
「………」
こっちはほぼ五体満足のスカイブルー・イーグル。白式・雪羅。そして70%の虚さんの打鉄・鉄風。
戦力差は歴然。安城から見たらこれほど無理ゲーでクソゲーなことはないだろう。
連携練度の差。味方にはスパイが潜り込み。そして数の有利に慢心した結果がこのザマだ。
ホームかと思ったらアウェーだった戦場。そんなことも知らずに安城は意気揚々にこの戦場に赴いたのだ。
正直面白いくらい上手く行きすぎてこれは夢かと疑問を抱いている。
まるで攻略データを知ってるゲームみたいにスルスルと試合が進む。
戦場を完全に掌握した感覚に腹の奥からゾクゾクっと心地よい波が押し寄せた。
「まだ続けるか安城」
「くっ………」
もはやほとんど戦意などないだろう。
それでもなお震えながら睨めるのは、ちっぽけな自尊心と女尊男卑思考による選民思想か。
「最後のチャンスをあげようか」
「っ!!」
「この後お前が落ちることはほとんど決定事項。これ以上惨めな姿を大衆に晒したくなければ。今ここで全ての真実を明らかにし謝罪しろ。そうすれば許してあげることを考えてやらなくもない。どうする?」
戦闘前の意趣返し。完了。
気分は晴れやか。これ以上内くらい清々しい気分だ。
顔にでないように必死に抑えながら奴に手を差し伸べる。
慈悲ではなく哀れみを。
蔑んでいた男にされることは安城にとって何事もにも変えられる屈辱に他ならなかった。
「ふざるなあああぁぁぁぁぁ!!!」
「迎撃」
吠える安城とは対照的に淡々と指示を出した。
近接ブレードの葵で突撃するところを虚先輩がシールドで受け止める。動きが単調一辺倒ならたちまち虚先輩のカモ。2、3回打ち合ったのち強引にねじ込んで葵をバラして見せた。
雪片弐型を振りかぶる一夏に対して武装をバラされた安城がオーバー気味に避けたところを瞬時加速とプラズマを乗せた蹴りを腹にぶちこんで地面に落とした。
「勝ったわ」
余裕でも慢心でもなく必然的にそう思った。
こっから福音みたいにビックリ
かわいそうなぐらいない。かわいそうなんて絶対思ってやらないけど。
インパルスで上空から斬りつけ、突き飛ばす。
『インパルス バーストモード』
インパルスの限定解除発動。膨大なプラズマ刃を呼び出す。
ヒーローは必殺技で決めるものだろう。
ん? 容赦なさ過ぎてそう見えないか?
どっちでもいいや。
出来るだけ恐怖に顔を滲ませながら負けてくれよ。
あー、こんなこと思う時点でヒーローじゃないわ。
瞬時加速に入りながらその顔に特大を叩きこんだ。
訂正、叩き込もうとした。
バギャァァァァン!!
ズドオオオオオンッッ!!!!
何かが割れた音と何かが墜落した音と衝撃がアリーナを揺らしに揺らした。
しかも文字通り間の悪いことに俺と安城の間に綺麗に落ちてくれた。
「な、なに!? なになに!?」
隕石でも落ちたのか? んなアホな。
遮断シールドをガラスに投げた石のように突き抜けてきた代物は不透明な土煙に紛れて詳細が見えない。
『ALERT! ALERT!』
「え、なに?」
『警告。前方に未確認のISが出現、IFF応答なし』
イーグルが警告を出してくれた。
ていうか………
「ISだって?」
「疾風大丈夫か!?」
「一夏! あんなかにISがいる!!」
「なんだって!?」
「こっちも反応が出たわ。これってもしかして………」
側に降りてきた一夏と虚先輩。
丁度土煙が晴れると。
その中にいたのは黒色一色の物体。いや、この場合はISだった。
黒色のISは畳んでいた手足を折り紙を解くように開いていく。
「第一世代?」
開き終わったISを見て俺は即座に呟いた。
第一世代の大半、暮桜以外のISは総じて全身装甲で肌を一切露出しないフルスキン。目の前のISもフルスキンだった。
両腕は明らかに異形と思えるぐらい太ましく。両腕一個ずつ装着されている巨大ブレード。手のひらには銃口と思われるものが一門。
胴体はアンバランスとも言えるぐらい細身で女性的な体つき、だがそう呼ぶには武骨すぎるシルエットと、人が入ってるのかと疑いたくなるぐらい細すぎる腰部分。
背部に本体と直接接続している巨大なブースターユニット。肩には何かの武装なのか三本のブレードパーツが伸びており。
そして球状の頭部には一本のブレードアンテナ。中央のモノアイが忙しなく不気味に動き、こっちを見て光った。
「こいつは!」
「一夏知ってんの?」
「確証は取れないけど。もしかしたらあの時の無人機の」
「無人機ぃ? 一夏、もっと説明を頼む」
ISにおいてあるはずのないワードに信じられないとばかりに説明を催促し、一夏が話を続けようとした時。
向こうにいる安城が突然笑い声をあげた。
「アハハハハ! 来てくれた! 助けが来てくれた!」
「なんだ? ついにとち狂ったか?」
安城の奇声に反応するようにアンノウンが安城に振り向いた。
「見たか! 世界はいつでも女性の味方なの!! 搾取される側は大人しく搾取されればいい! 自分の行いに後悔しながら死んでいーーー」
『命令受諾。排除行動に移行』
アンノウンの砲口が安城をロックした。
「ーーーけ?」
砲口からビームが連射された。
「ごぽっばはっ!?」
撃たれることを微塵にも思ってなかった安城は断末魔を上げながらビームの雨に埋もれ、アリーナの端に弾き飛ばれていった。
『安城機 リミットダウン』
「どうやらあちらさんの味方というわけではないらしい」
『試合終了。勝者 生徒会チーム!』
プログラム通りに組まれた電子音声が空気を読まずに試合終了のアナウンスを知らせる
普通なら勝利を喜ぶか笑うところなんだろうけど。目の前の存在故にシリアスは崩せないようだ。
「そしてこっちの味方でもないらしい」
安城を始末したアンノウンはこちらに大型ブレードの一振を向け、戦意十分とモノアイを輝かせた。
そして異様なことに。こんな非常事態にも関わらず観客席の緊急シャッターが降りていない。
『未確認ISの識別信号受諾。名称『ゴーレムⅡ』』
ゴーレムⅡ。それがアンノウンの名前らしい。
「Iはどこ行ったんだ?」
「「えっ、そこっ!?」」
『ウォォォォォォォン!!』
俺の軽口に対してツッコミを入れる両人と雄叫びで答える未確認ISことゴーレムⅡ。
銀の福音に続いて、想定外のラウンド2が始まろうとしていた。
IS特有乱入イベントですね。いやーラノベラノベ。
さて、思ったとおりエグい作戦でしたね。もはや作戦じゃなくて計略だな。
因みにこのスパイ戦法。原作の一夏だったら猛反対間違いなしでした。その場合は試合にも大なり小なり影響するか。一夏に黙ってそのままスパイ強硬するかでしたかね。
間違いなく今作のオータム戦の影響を受けています。
一夏の頭が柔くなったと前向きに捕らえるかは、今後の私の筆次第ですかね。
次回、いるはずのなかった2号機ちゃんの活躍にご期待ください。