IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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 誤字報告機能って凄いですよね。
 自分が気付かなかったところを読者が指摘してくるって素敵な機能ですよね。

 作品は読者があってこそとはよく言った物です
 いやなに綺麗に言ってんだテメーはってね。

 誤字報告まじで感謝してます。これからもあれば宜しくお願いしますペコペコ




第69話【ガールズハート・オータムスカイ】

「のほほんさん」

「あれぇどうしたの~? レーちんが速攻でアリーナに行かないなんて珍しぃー」

 

 今日の生徒会業務はお休み。

 机の上でぽけーとしてるのほほんさんに声をかけたのは他でもなくあのこと。

 

「この前のほほんさんが使ってた颪を提供してくれた人にお礼を言いたいんだけど。誰か教えてくれない?」

「かんちゃーん」

「かんちゃん………四組の更識簪さん? 学生なのに装備提供なんか出来るのか」

 

 いや、更識姓ならその程度造作もない?

 

「んーんー。私が使ったミサイルは元々かんちゃんの専用機に取り付ける奴のプロトタイプモデルなの~」

「専用機? 更識さんが専用機持ってるなんて情報知らなかった」

「それは完成してないから~。かんちゃんは一人で専用機作ってる~」

「なんだって?」

 

 一人で専用機を? 

 そんな芸当一介の学生に可能なことなのだろうか。

 

「正直それに凄い興味あるけど、今は置いとくか。じゃあ四組に行けばいいか」

「多分いないと思う。暇な時間は専用機製作に没頭してるから~」

「場所は?」

「第6整備室~」

「ハシッコだな。わかったありがとう。褒美に飴ちゃんを献上します」

「わーいパインアメ~」

 

 いい情報だったので余分に渡しておく。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「………………」

 

 整備室について立ち尽くした。

 

 更識さんがいない………というわけでなく。いやいないんだけど、それ以上に目を奪われる。

 

「これは………」

 

 目の前にISが鎮座しております。

 しかも明らかにワンオフ仕様の専用機的なISがポンと置かれていた。

 

 色は薄青みがかった鼠色。

 全体的にスタイリッシュな作りから恐らく高機動型のIS。

 肩部ユニットは大型のスラスター、腰には砲塔のようなもの、各部には颪に酷似した八門ずつのマイクロミサイルコンテナが装備されていた。

 

 しかし外見がかなり違うがもしかしてこれ打鉄の………

 

「だ、誰」

 

 振り向くと入り口に女子が居た。

 髪は水色、眼鏡の奥の瞳は紅玉の赤。

 頭にはISのヘッドギアみたいな髪飾りにしては大きめのアクセサリー。

 

「君は、っうぉ」

「!!」

 

 俺を突き飛ばす勢いでISの前に躍り出た彼女はせわしない様子でISを待機形態に戻した。

 指輪に変化したISを抱き締めるように隠し、俺を見上げて睨んだ。

 

「………」

「更識さんだよな」

「名字で、呼ば………ないで」

「下の名前の方がいいと」

「名前でも………呼ばないで」

 

 ………どうしろと? 

 

「………」

「………」

 

 なんだこの沈黙。

 てかこの子目のクマが凄いな。

 徹夜が続いた証拠だな、父さんがしょっちゅうこうなるから分かる。

 

 外見もおとなしめで若干ネガティブより、喋りなれてもいないみたい。

 本当にあの快活で外面昼行灯の会長の妹なのか? 

 

「………ジロジロ見ないで」

「ああごめん」

「………」

「ああちょっと待って!」

 

 俺が謝ると同時に俺の脇を通りすぎようとする更識さんを引き止めると、彼女は明らかに不機嫌な様子で振り向いた。

 

「………なに?」

「いや、君にお礼が言いたくて」

「お礼? ………別に、私はあなたに………なにもしていない」

「この前の多人数戦でのほほんさん、布仏にミサイルを提供してくれただろ?」

「………ああ、颪のこと」

 

 そうです、颪のことです。

 

「あれのお陰で試合運びが格段に良くなったからさ」

「別にいい………私も実践データ取れたから」

「それでもだ。あの誘導性能は学園のミサイル装備では出せないから凄く助かった」

「颪じゃなくてもあなたが出した燕の巣(スワローズ・ネスト)の方が性能は良かったと思うけど」

「いや、あれじゃあ駄目だったんだ」

 

 主にコストとかスロット容量とか取り回しとか。

 

「だからお礼を言いにきた。ありがとう更識さん」

「………」

「あ、ごめん」

 

 反射で名前が出ちまった。

 

「用は、終わり?」

「え? あ、まあ」

「そう」

「あ、ちょっと!」

「まだあるの?」

 

 思わず呼び止めちまった。

 彼女はなんか凄い不機嫌そうに睨んでくる。俺なんかしたかな。

 いや、したわ。

 

「今度から離れる時はISを忘れないようにな。いまISを強奪するやからが増えてるから」

「余計な………お世話」

「いや、それでも専用機を持つならそこら辺ちゃんとしないと。あとちゃんと休んでないんじゃないか? だからIS忘れたりしちゃうんじゃ」

「ほっといて」

「あ、ちょっと」

 

 逃げられた。しかもダッシュで。

 

 しまった。思わず説教臭くなってしまった。

 注意するにももう少し言い方をやわくするべきだったか。

 見るからにナイーブな子だったし。

 

 でも責任問題的にやばいよなぁ。

 どんだけ疲れてたとしてもそれは言い訳にはならない。

 

 ………まあ帰ってから改めて反省してくれることを願おう。

 彼女から見たら俺がそのISを取ろうとしたやからと見られてもおかしくなかったし。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 1日1回ISのノルマを達成した俺は部屋に戻った。するとそこには。

 

「お邪魔してるわよー」

「………ふ、不法侵入者? ツウホウシナキャ」

「棒読み過ぎよ」

 

 会長、部屋にIN。

 

 不法侵入するなら一夏の部屋に………いやいまは一夏と同居中だったか。

 

「なんかようですか? 暇潰しなら一夏にやってくださいよ」

「ご安心を、ちゃんとからかった後にシャルロットちゃんにバトンタッチしてきたから」

 

 順当に修羅場作って退散したなこの人。

 

「で、なにようで」

「えっとね。………」

「………?」

 

 話題を切り出さない会長に首をかしげる。

 うーとかむーとか言ってなんか、会長らしくない。

 

「話題ないなら退散してくれますか。もうすぐセシリアが帰ってきますし。あいつ最近上手くいってなくてセンチな気分なんですよ」

「いやいや言うわよ。ちゃんと用あって来たから」

 

 会長は深呼吸をして真剣な表情で口を開いた。

 

「か、簪ちゃんと何を話したの?」

「へ?」

 

 変な声出ちゃった。

 なんで知ってるんだろ。のほほんさんから聞いたのか。

 

「なにって。颪の件でお礼をと」

「それだけ?」

「それだけです」

「まさか狙ったりしてない?」

「はい?」

「いくら疾風くんでも簡単に簪ちゃんは渡さないわよ。簪ちゃんに手を出すならばこの場でなんやかんやすることもやぶさかではないわ!!」

 

 え、なに!? 行きなり怖いぞこの生徒会長! 

 

 そうこうしてるうちになんか臨戦態勢な雰囲気の会長。

 これには流石の疾風くんも焦ります。

 

「落ち着きましょう会長。俺は妹さんに特別な感情なんかこれっぽっちもありませんし何よりも初対面ですからね?」

「そっちこそ何を言ってるのかしら。簪ちゃんは可愛いじゃない」

「はえ?」

「可愛いじゃ、ない?」

「え、ええまあ。可愛い部類に入るのでは?」

「そんな曖昧なものじゃないわ!」

 

 えぇ………? 

 

「簪ちゃんは私なんか歯牙にかけないレベルの可愛い美少女よ! 守って上げたくなる系女子なのよ! そんな簪ちゃんよ!」

「………はぁ………?」

 

 ヤバイ、久しぶりに状況が理解できん。

 いや一個だけわかったぞ。

 この人ドのつくレベルのシスコンだ! だって俺を褒め殺す時の楓にそっくりなんだもん!

 俺のまわりの人そこらへん拗らせた人たちばっかだなオイ! 

 

「だからね疾風くん。一夏くんみたいなホモと間違われるレベルの朴念仁じゃない限り一目惚れする確率は9割り越えてるのよ」

「そこは10割じゃないんすね」

「で! そこんとこどうなの!!?」

「い、いやだからなんとも思ってないですって」

「疾風くんもホモなの!?」

「ぶち殺しますよ?」

 

 よーし話通じないな! 

 

「お姉ちゃんは心配なのよ!」

「杞憂です会長。今日は本当にお礼を言いに行っただけですから」

「本当ね?」

「そんなに気になるなら本人に聞けば良いじゃないですか、妹なんだし」

「それが出来たら苦労しないわよぅ………」

 

 おっと一気にクールダウンしたぞ? 

 この学園最強、情緒が不安定過ぎる。

 

「もしかして会長。妹さんと仲があまり宜しくない?」

「はぅ」

 

 あ、崩れ落ちた。

 

「疾風くんは良いわよね。妹から愛されてるらしいじゃない………」

「行き過ぎな気がして気が気じゃないくらいには」

「こっちは何年もろくに会話してない」

「えぇ………」

 

 それってほぼ絶縁状態じゃないですか。

 

「一体何やらかしたんですか」

「そこはまあ………色々あったのよ………」

「わかりました。お家的な問題なんですね」

 

 ならばこれ以上踏み込むべきではない。

 

「あー」

「なによ?」

「会長から、というか。誰かを通じて妹さんに言ってもらえますかね? 詰め込みすぎるのもほどほどにって。彼女ISを置いて持ち場離れてたんで」

「そう。わかった、本音ちゃんに言っておくわ」

 

 そうしてくれると助かる。

 見つけたのが俺だからまだ良かったものの。もし亡国機業(ファントム・タスク)のスパイだったら大惨事だ。

 

 いや俺も危うく触れそうになったな。

 しかしカッコよかったなあのIS………。

 

「むーーー」

「どうしました」

「やっぱ羨ましいわ」

「はえ?」

「てりゃあっ!」

「うおっとぉ!」

 

 ベットに投げ飛ばされた。

 そして会長が飛びかかってきた! 

 

「ちょっ! 会長!?」

「そういえば疾風くんにはなんやかんや躱されてきたのよね。ここでキッチリ上下関係を示すのもありね。それに一夏くんだけいじるってのも不平等だし」

「ちょっ! ほんとセシリア帰ってきますから!」

「あら、わたくしを呼びまして?」

 

 oh、Jesus。

 

「あらセシリアちゃん。お邪魔してるわねー」

「セシリアちょうどよかった! 会長どかしてくれない?」

「………」

「あれ? 何処に行くのセシリアさん? なんで無視するの? ちょっとそのままバスルームに消えないでもしもーーし!!」

「ごゆっくり」

 

 あるぇ!? なんか怒ってる雰囲気!? 

 なんで!? 

 

「さてセシリアちゃんの許しも得られたし」

「得られなくてもやる気でしょあんたは!」

「レッツ! パーリナイ!!」

「ヒヤァァァァーーーー!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 疾風の悲鳴が聞こえると、セシリアはフンッと鼻を鳴らした。

 

「満更でもなかった癖に………」

 

 不貞腐れるように言うセシリアは制服に手をかけた。

 

 綺麗な動作で服を脱ぎ、温水を身体に浴びる。シルクのような色白の肌に雫が滴り落ち、その姿は沐浴する女神と同じぐらい麗しかった。

 そんなセシリアの顔は何処か物憂つげだった。

 

「はぁ………」

 

 ため息の理由はフレキシブルが発現出来なかっただけではなかった。

 

 訓練を終えたセシリアは菖蒲と鉢合わせたのだ。

 出来るなら菖蒲と一対一で鉢合わせたくはないセシリアだったが。ふと気になって聞いてみてしまった。

 

「菖蒲さんは今でも疾風を想っていますの?」

「勿論です」

 

 歪みも躊躇いの欠片なくことなく答える菖蒲に。セシリアは更に踏み込んだ。

 

「もう告白とかは………」

「しましたよ」

「!!」

 

 可能性はゼロではなかった。だが周りの女子は告白を躊躇している人しか居なかったから菖蒲が特になんともなくサラッと答えたことに驚きを隠せなかった。

 

 何故誤魔化さずに答えたのか。

 それは恐らくセシリアに対する宣戦布告。

 

 なにぶんこの徳川菖蒲。外見と性格からか弱いお嬢様という風に見られがちだが、その内は肝の据わった武士そのもの。

 

 疾風から聞いた話だとあの安城敬華に拳を叩き込んだという。

 自分には到底真似できないと思うと同時に強い女性だと改めて再認識した。 

 

 いつ疾風に告白したのか聞いたところ、告白したのは学園祭二日目のキャンプファイアーの時だという。

 

(だとしたら別れ際の疾風がおかしな様子だったのも説明がつく)

 

 そしてしばらく何かに悩んでいたことにも。

 

 セシリアは菖蒲の告白に対して疾風がどう返したのか聞くのが怖かった。

 今思えば聞いておけばよかったと後悔している。だけど聞く勇気が持てずにその場を立ち去った。

 ある時を境に悩んでるような表情をやめ、イキイキとしだした疾風を側で見続けていたからこそだった。

 

 安城ら女性の為の会打倒の対策を考えただけなのかもしれない。

 だけどもし疾風が菖蒲の気持ちに応えたのだとしたら、恋人が出来て喜んだのでは………そう考えてしまった。

 

 そんなことを考えながら部屋に戻ると、楯無が疾風を押し倒していた。

 そんな疾風に心のなかで節操なしと言ってそっぽを向いたら少しだけ気分が軽くなり、そんな自分を恥じてまた重くなった。

 

「疾風………」

 

 唯一無二の親友でありライバル。

 お互いの間に秘密はなく、何もかもさらけ出せる気心しれた仲だと思っていた。

 

 そんな疾風の知らないことを徳川菖蒲が知っている。

 そう思うだけで胸に薄い傷みが滲み出した。

 

 勿論疾風がセシリアに話す必要などこれっぽっちもない。

 誰にだって秘密はあるし、何もかも開示しろだなんてプライバシーの侵害だ。

 

 仮に自分が他人に告白されたとして。疾風に話すことはないだろう。

 

 恋仲ではないのだから。

 

「ッ」

 

 傷みがじんわりと肺を覆い被さるように広がり。息苦しくなった。

 

「こんな調子では、フレキシブルなんて夢のまた夢ですわね。明日は新調されたストライク・ガンナーが届きますからブルー・ティアーズのコンディションチェックを」

 

 シャワーを止めるとまた疾風の悲鳴が聞こえてきた。

 

「………………」

 

 セシリアはまたシャワーの栓を捻った。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ズーーーーー、タハーーーー」

 

 今日は休み、ISを動かした後に学園のカフェテラスに寄ってタピオカ黒糖ミルクを買った俺はタピオカを吸引したあとガッツリと脱力した。

 

 昨日はマジで大変な目にあった。

 シスコンを拗らせた会長にくすぐり地獄をぶちかまされるわ。セシリアも終始そっけないわで。

 

 普段の行いが悪いのかと振り返ってみるけど。思い当たる節はあるにはある………

 生活態度改めて見るべきかなぁ。

 

 しかし、まあなにも悪いことばかりが人生ではないからなぁ。

 まさかあの人に会えるとは。

 

 

 

 

 

 

「んっふふーん♪」

「やけに上機嫌だな鈴」

「そりゃあねぇ。一夏とデートなんだし!」

 

 寮でバッタリ鈴と出くわした。

 いつものラフな服とは対照的な明らかにオシャレしてます! な外見に俺は即座に一夏関連だと悟った。

 

「シャルロットも居るんだろ」

「些事よ些事。大人数じゃないだけマシだっての」

「そりゃあねぇ」

「あんたはアリーナ?」

「ああ。休みはいい。一日中ISに乗れるんだからな」

「たまには外出したらどうなの」

「別に休み全部をISにつぎ込む訳じゃないぞ」

「嘘ね」

「嘘じゃねえよ」

 

 あながち嘘でもあるような気もしなくもないけども………

 鈴は特に追求せずに廊下の鏡をチラッと見るたびに笑顔になる。

 文字通りの有頂天。一夏と出かけるのだから当然か。

 

「まあ浮かれすぎないように程々の期待度にしとけ。また叩き落とされるぞ、ウォーター・ワールドみたいに」

「やめてよ! あれガチでトラウマだし! 今度はちゃんと一夏に五回も確認取ったから!」

 

 五回はやりすぎだろ。

 

「まあ楽しんでこいや」

「ええ、でも程々なんて無理よ。一夏とのデートなんだし。そう何回もあんな不運が来るわけないzy」

「おはようございます、凰 鈴音代表候補生」

「ひゅっ!!?」

 

 旗が吹き飛ぶ音がしたなぁ。

 

 ロビーに入ったとたん磔の呪文にかかったみたいに顔をひきつらせる鈴。

 階段の下にはビジネススーツをバシッと着こなした眼鏡をかけたアジア系の女性が居た。

 

 あれ? あの人どっかで見たことあるな。

 

 ガッチガチに固まりながら階段を下りる鈴。その姿。ブリキの如し。

 

「お、おはようございます、(ヤン)候補生管理官」

「おはようございます」

 

 楊? 楊………中国………あぁっ!! 

 

「し、失礼します! もしかしてあなたは元中国代表の楊麗々(ヤン・レイレイ)さんでは!?」

「ええ。あなたはレーデルハイトの」

「疾風・レーデルハイト、アリア・レーデルハイトの息子です! 直ぐに気づけずにすいません!」

「いえ、今と違って昔はまだ可愛げがあった頃でしたので」

(可愛げなんかあったのこの人………)

 

 確かに五年以上たってて容姿も少し変わってる、というか大人びていたな。

 当時はロングヘアーだったし、眼鏡もかけてなかった。

 

「第一回モンド・グロッソの偃月刀捌きは何度も拝見致しました! お会いできて光栄です!! よろしければサインをお願いします!!」

「………あんたその色紙どっから出したの?」

 

 こんなこともあろうかとバススロットに常備してあるのさ!! 

 

「私はもう代表ではなくただの候補生管理官ですが」

「なにとぞ宜しくお願いします!」

「まあいいでしょう。サインを書くのも久しぶりか」

 

 と言いつつもサラリと書いてくれました。

 うわぁ綺麗な字や………

 

「ありがとうございます!」

「お構い無く───何処に行くのですか凰候補生」

「ヒョオィア!」

 

 どんな悲鳴なんだ。

 

「わ、わたくしに何か用で御座いましょうか?」

「キャノンボール・ファスト用に調整した高機動オートクチュール【(フェン)】をお持ちしました。即刻セットアップとインストールののちに試運転を開始します」

「え、ちょ! なんですかそれ!? 今日だなんて聞いてませんよ!?」

「何を言ってるのです。一週間前に告知しましたが」

「………………忘れてた」

「一昨日もメールをしましたが」

「………………ほんとだぁ………」

 

 もはやおっさんの声量レベルまでテンションダウンした鈴。

 おまえ一夏関連で完全に頭がパーになっちまってるじゃねえか。大丈夫か今後の中国。

 

「まさか凰候補生。大事なオートクチュールのテストを蔑ろにして外出しようだなんて考えてませんよね」

「そそそそそそそんなことあるわけないじゃないですかアハハハハハ!」

「その割には服装に気合いが入っているのでは。そんな女の子らしい服着てるとこファッション誌でしか見たことありませんけど」

「あ、IS学園に着てファ、ファッションの偉大さに目覚めたんです!!」

 

 嘘をつけぇ。と言いたいところだが鈴が結構限界だ。

 上半身はなんとか踏ん張っているが下半身がバイブレーションしてる。

 

 助け船でも出すか、楊麗々のサイン貰えたし。

 

「鈴、楊麗々さん。一つ提案があるのですが。今回のテストに俺も付き合わせてくれませんか?」

「何故あなたが?」

「キャノンボール・ファストが近いのか高速レース用の第6アリーナが定員オーバーなんですよ」

「へ、へぇ! じゃあ今日はテスト出来ないんじゃ」

 

 鈴は一筋の光明を得たが。

 すまん鈴、そっち方面じゃないんだ。

 

「自分この後第6アリーナに予約いれてるんですよ。自分のISにも高機動パッケージ積んでるんでテストには最適かと思うんですよ」

「ふむ」

「ちょ、ちょっと待って! 今回のパッケージは国の最新技術が使われてるから他企業のテストパイロットに見られるのは」

「いえ、一般のアリーナを使うなら秘匿性もないでしょう。申し出を受けます」

「はがぁ………」

 

 鈴、真っ白に燃え尽きる。

 

「凰候補生」

「ハイ」

「私は(フェン)を第6アリーナまで運びます。あなたは早急に準備をすませるように」

「リョウカイデス」

「ではレーデルハイトさん。宜しくお願いします。あと、もし凰候補生が逃げ出した時は」

「ふん縛ってでも連れてきます」

「感謝します」

 

 会釈をして楊さんはいなくなった。

 

 ロビーに残ったのは制服姿の俺と勝負服姿のあしたの鈴。

 

「鈴、残念だが今日は諦めた方がいい。一夏に連絡いれとけ」

「………ガミ」

「はい?」

「この疫病神ーーー!!」

 

 繰り出されるローリングソバット。

 当たるつもりはなし。

 

「窮地助けたのにこの言われようよ」

「なぁにが窮地よ! 前回もあんたに鉢合わせておじゃんになったじゃないのよ!!」

「関係ねえだろがい。それに今回はトライアル忘れて一夏と出掛けようとしたお前が悪い」

「そ、そんなの知らないわよ!」

 

 何処までも唯我独尊。それは恋する乙女の特権だが、強制イベントからは逃げられない。

 

「ほら、さっさと行くぞ。楊さんに怒られたくなければな」

「なんか機嫌良くなぁい?」

「そんなこたぁない」

 

 嘘である。

 この男。楊麗々元中国代表のサインだけじゃなく最新パッケージを間近で見れることに心踊らせている。

 

 だがそれを表に出すのは流石に不憫だと思い、舌を噛んで耐えているのだった。

 

「あーもう仕方ない!! これ以上楊管理官の機嫌損ねないうちに行くわよ!」

 

 流石鈴。切り替えの速さは代表候補生であるがゆえか、はたまたヤケクソになったのか。

 

「『ごめん急用』………………はぁぁぁぁ」

 

 御愁傷様。

 

「くぅーー! 一夏! この埋め合わせは絶対して貰うんだからねっ!!」

 

 いや一夏は悪くないだろう。

 

 これを口に出さなかったことに俺は自分を褒め称えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ? 男がいると思ったら眼鏡ルーキーじゃねえかよ」

 

 取り出した色紙にニヤニヤしていると聞きなれないが聞いたことのある声が

 

 視線を向けると手にタピオカミルクティーをチャプチャプと揺らすアメリカ代表候補生のダリル・ケイシー先輩が。

 

「あ、ダリル先輩。こんにちは」

「おう。よっこいしょ」

 

 断りも入れずにドカッと向かいに座る豪快さ。なんかアメリカンガールって感じ。

 

 そして座った同時に勢いよく揺れた大きめのバスト。

 改造制服のそれは胸元がガッツリ開いており、赤のレースブラが覗いて大変セクシーだった。

 

「エロガキ」

「み、見せつけといてそれ言いますぅ?」

「ちげーねぇ。どうだ、オレと一発やるか?」

「何がどうだですか。サファイア先輩泣きますよ」

「それもちげーねぇな」

 

 ブラックジョークを流し、ズズーとタピオカを吸い込むケイシー先輩。

 

 三年のダリル・ケイシーと二年のフォルテ・サファイア。

 IS学園で知らぬものはいない学園最強タッグ。

 炎と氷という相反する属性を持ったISが繰り広げる絶対防御から付けられたコンビネームが【イージス】。

 ソロでも相当な実力者だと聞き、二年三年のクラス対抗戦は揃って優勝(会長は生徒会長のため辞退)した。

 

「てかなにそれ」

「これですか? 元中国代表の楊麗々の直筆サインですよ。さっき学園に来てたんですよ」

「へぇ。お前サイン好きなのか。なら俺も書いてやっか?」

「先輩が代表になったら是非」

「このガキ」

 

 挑戦的な目線に先輩はケラケラと笑った。

 

「そうだ。異種多人数ISバトルとクラス対抗戦優勝おめでとう」

「ありがとうございます。ダリル先輩も練習に付き合ってくれてありがとうございます」

「いいってことよ、オレもああいう下しか見てねえやつ好きじゃなかったし。変わりにぶちかましてくれてスカッとした」

「恐縮です」

 

 色紙をバススロットにしまい、クラス対抗戦優勝のスイーツ無料券で買ったタピオカ黒糖ミルクをすする。

 

「そういえば先輩がたはキャノンボール・ファストの専用機枠には出ないんですか? リストになかったので」

「オレとフォルテはそれぞれの学年で出るぞ。更識は例のごとく警備らしいけど」

「そうですか」

「残念そうだな?」

「それはまあ。先輩がたとレース出来るのかなって期待してましたし」

「いっとくけどオレらが出たらワンツーフィニッシュ間違いなしだぜ」

「それを打ち破るのが、燃えるんじゃないですか」

「ハハ、いいね」

 

 首元のベルトチョーカーをさするダリル先輩。

 その目には闘志の炎が燃えていた。

 

「どうよ? このあと一戦やるか?」

「いいっすね!」

「よぉし! そうと決まれば早速アリーナ」

「駄目っスよダリル」

 

 立ち上がった俺たちに待ったをかけたのはダウナーな雰囲気の女の子。イージスの片割れであるギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイアだった。

 

「このあと私と映画を見に行く約束じゃないっスか」

「あーーそうだったーー………明日じゃ駄目?」

「駄目っス。もうチケット買ったんだし無駄になるッすよ」

「えーせっかく火ついたのによー。なあレーデルハイト」

 

 まったくです。先輩とガチファイトなんてやらない手はない。が。

 

「俺はいいですよ。また今度やりましょうよ。約束は守らないと駄目ですよ先輩」

「………だよなー」

 

 先約がいるなら引き下がらないと。

 非常に惜しいけど。

 

「むすぅ」

「ほーらそんな顔すんなってフォルテー。ほら、オレのタピオカやるから」

「飲みさしじゃないっスか。貰うけど」

 

 ズーっと吸うフォルテ先輩。

 背丈や猫背なのもあって凄い小動物感。

 

 フォルテ先輩の頬が少し赤いのは間接キスだからか、それとも。

 

「あのー、つかぬことをお聞きしていいですか」

「良いぞ」

「お二人の関係って………噂通りなんです?」

「ああそれか………フォルテ」

「ん? なんス、ムグゥ!?」

「んん!?」

 

 ダリル先輩はしばし考えたあとおもむろにサファイア先輩の唇を奪った。

 

 思わず吹き出しそうになりながらその生々しい光景に目を奪われた。

 

 ………てか長いな! 舌もガッツリ入れてるし!! 

 

「ジュル………プハァ」

「ふぅ。まっ、こんな関係だ」

「ハハ………ご馳走さまです」

 

 クタッと力の抜けたサファイア先輩を抱き止め、ダリル先輩は勝ち誇ったように笑みを浮かべた。

 

「な、何をしてくれてるんスかダリル! 後輩の前でこんなこと!!」

「いや、口で説明すんのもめんどくさいなーって。あ、実質これも口で説明したことになる?」

「ならないっスよ!! ズゾォォーーー!!」

 

 羞恥心が臨界に達したフォルテ先輩はタピオカをグビグビと飲んでいく。

 こっちも気恥ずかしさMAXなのでとりあえずタピオカをすすることにする。

 

「オレからも一つ聞きてえんだけどいいかレーデルハイト」

「はい?」

 

 なんだろう。改まって

 

「今度のキャノンボール・ファスト………荒れるか?」

 

 先輩の言葉に俺とフォルテ先輩のストローが止まった。

 それはキャノンボール・ファストが白熱する、とは別ベクトルだと理解したからだ。

 

「荒れると思いますよ。あそこはここより警備緩いですし」

「へえ、そしたらお前はどうする?」

「そりゃ勿論。叩き潰しますよ」

「ハッ、わかってんじゃねえかよ。行くぞフォルテ」

「あっ、待ってくれっス!」

 

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

 

「なかなか肝が座ってるじゃねえかあのルーキー」

「レーデルハイトっスか? 確かに今のご時世じゃあまり見ないタイプっスね」

 

 デート用の服に着替えながら談笑するイージスコンビ。

 学年が異なるのに同室を許されてるのは専用機の相性と親和性の検証という名目で特例措置として許されている為。

 というのが表向きの噂。

 

「でもそれなら織斑一夏も当てはまるんじゃないっスか? 最近頭角表してるじゃないっスか」

「あれも最初の頃とは見違えてはいるがな。レーデルハイトの奴とはまた違うんだよ。なんつーの? 覚悟決まってるっていうか、ヤる気が違うというか」

「色々容赦ないっスもんね。異種多人数の12対4なんて普通思い付かないっスよ」

 

 とにかく手段を選ばない。

 何事にも貪欲に取り組み、または取り込むその強欲さ。

 それでいて彼の存在は一年専用機持ち全体の認識を変えていった。

 

 その影響を1番に受けたのが織斑一夏。

 誰かを守るという漠然とした指標にどのように行動すれば他者を守ることに伝わるかということが加わり、行動に現実味が現れ始めた。

 それに感化されるように一年専用機持ちも鍛練にも渇が入ってきている。

 

 疾風・レーデルハイトは行動する。

 もはや行動力の化身と言われるぐらい、目の前のタスクを的確に処理していく。そして彼の行動に周りの人も引っ張られていく。

 彼にはその能力があると、三年生で唯一の専用機乗りであるダリル・ケイシーは分析したのだ。

 

 ダリルは首元につけてる自身の愛機、【ヘル・ハウンド】のチョーカーベルト(待機形態)をさすった。

 

(こりゃなめてかかると落とされるのはオレらかもしれねえぞ。スコールおばさん)

 

「ん? 何か言ったっスか?」

「なーんも。ほら早く行こうぜ。映画間に合わなくなる。それともここで一発ヤるか?」

「ヤらないっス!!」

 

 ダリルはフォルテの顔を見て一旦考えるのをやめた。

 

 たとえこれが偽りの日々であろうとも、レイン・ミューゼル(ダリル・ケイシー)は午後から始まる恋人との相瀬に想いを馳せるのであった。

 

 

 




 簪っていざ書いてみると結構癖が強い。
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