IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
【シャルロット、ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ】
「うーん」
「は、疾風? そんなに酷かった?」
「違う」
今日はシャルロットの強化指導。前回の二人から聞いたのかシャルロットも気合い充分で特訓に挑んだ。挑んだのだが。
一通りの模擬戦を通して、シャルロットの改善点、強化案を洗いだそうとする俺は額にシワを寄せて唸っていた。
それはシャルロットが改善点だらけでも、汚点があったというわけではなく。
「シャルロット、はっきり言うぞ」
「う、うん」
「ぶっちゃけ目立った改善点が見当たらない」
「え、えっ?」
本人にとって想定外の返答にシャルロットは一瞬フリーズした。
冗談に聞こえるかもしれないが。これが俺が弾き出したシャルロットとラファールの見解だ。
まずシャルロットは距離を選ばないオールラウンダー。
近中遠距離をそつなくこなせる武装の豊富さ。そしてそれを戦闘に活かせる戦闘能力。
ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡは基本装備を外すことでバススロットを増量し、その中に計20もの武器を持っている。
量産機でも空飛ぶ武器庫と言えるラファール・リヴァイヴだが、シャルロットのラファールは言うなれば空飛ぶ格納庫。
通常なら20も武器があったら持て余し、とっさに武器を間違えたり、コールのウェイトを考えると増やしすぎるのはメリットとは言えない。
だがシャルロットの場合は例外だ。
システムとは別に存在するシャルロット・デュノアの特異技能【
武装のコールを短縮、跳躍することで通常早くても0,5秒かかるそれを0,1、あるいはそれ以上の早さで武装をコールすることが出来る。
分かりやすく言えば瞬きの瞬間に相手のアサルトライフルがショットガンに、ブレードからスナイパーライフルに変わる。もはや魔法、マジックの域に行く技術。
彼女は20の武器を状況に応じて高速切替で立ち回り、弾切れの武装を素早く別武装に、瞬時に防御シールドを三枚重ねられるなど、戦闘におけるロスタイムを限りなく削った戦い方が出来る。
最近だと武装ごとではなくマガジンを量子変換するタクティカルリロードを高速切替で行うから手に終えない。
もし対応できない相手がいるならばそれを想定して予め20のフォルダをカスタムして対応すればいい。
火力がないかと思えば彼女のシールドに仕込まれた第二世代最大火力カテゴリーのリボルバー式パイルバンカー【
俺のブライトネスより高火力のそれは全段直撃すれば並みのISのシールドを7、8割り削れる代物だ。
「実弾が効かない相手用に光学兵器を持った方が良いんじゃないかってアドバイスしようとしたら、しれっとビーム装備こさえてるしさ。【ヴァーチェ】だっけ? デュノア社が最近出したやつ」
「うん。ラウラや疾風には実弾兵装はあまり役にたたないから本社から試験がてら調達して貰ったんだ」
外見的には標準なビームライフルだが、なかなかの高出力で集中照射されたらイーグルのプラズマ・フィールドも抜かれる恐れあり。
「本人の技量よし、ISとの相性よし、おまけにラピッド・スイッチを応用した戦術パターン【
「大丈夫だよ、謝ることじゃないよ疾風」
つまりシャルロットは第二世代、ラファール・リヴァイヴのパイロットにとってこれ以上好条件だということ。
他にいるとしたら同じく
「あえて改善点を上げるとすれば。戦術眼を更に磨くことだな。この前学園祭で襲撃してきた
「うん」
「だからシャルロットには新しい戦術パターンの構築を目的にトレーニング。あとはひたすらバトルして戦術眼を磨きまくる」
読み合いで勝てればシャルロットは有利に立ち回れる
ほんと第二世代ISの希望の華だよ彼女は。
「………やっぱり、第三世代じゃないと器用貧乏にしかならないのかな」
「ん?」
「あ、ごめんね。こんなこと言ったらリヴァイヴに失礼だよね」
専用機メンバーで唯一の第二世代の専用機持ち。
菖蒲が第三世代に乗り換えると聞いてシャルロットにも思うところがあるのだろう。
「確かに第二世代は第三世代と第四世代に比べて突出するものはない。だからと言って第二世代が劣るなんてことはありえない」
「え?」
「白騎士の第零世代に始まり、黎明期を築き上げた第一世代、そして今の地盤を固めた第二世代。たとえ第三世代の思想が固まっても、それで力の優劣が決まるなんてことは絶対にない」
力強く答える俺にシャルロットは目を丸くした。
「シャルロット、IS乗りの強さとして。最大の要素はなんだと思う?」
「えっと………ワンオフ・アビリティー?」
「違う。操縦者自身の強さだ。たとえ第二世代でも第三世代に充分通用する。第三世代は何も絶対の力じゃない、飽くまでISの技術を応用した装備に過ぎない」
実際第二世代が第三世代に勝てることはそう珍しくもないし。
第三世代は特殊な技量を使うからそれに気を取られ過ぎて負けるなんてザラだからな。
「シャルロット、気分を悪くしたら申し訳ないんだが。もしかしてお前、自分だけが第二世代だということに負い目を感じてるんじゃないか?」
「そ、そんなことは………」
普段滅多なことでは動じないシャルロットが珍しく動揺を顔に出した。
「それが悪いことだって言ってる訳じゃないんだ。そういう気持ちも分かるって話。だけど俺がまったくの見当違いのことを言ってしまったのなら訂正する。ごめんシャルロット」
「ううん。謝らなくていいよ。疾風の言ってることも一理あるし」
そう言いつつシャルロットの顔色は優れなかった。
明らかに地雷だったろう。だがそれは分かっていたこと。
だけど根底にあるものを改善しない限り、その先に進むことは難しい。
俺も会長に言われるまでそうだった。
自分のことを過小評価し、本来の自分をだせない故に十二分に実力を発揮することは出来なかった。
「そろそろ良い時間だから昼御飯食べよう。今日は土曜だから、まだ時間はある」
「いいの? 午後は自分のISに時間当てるんじゃ」
「ここまで来たんだ、徹底的に付き合うよ。シャルロットのアフターケアもかねて。俺のせいで気分を害しちゃったし」
「ううん、ありがとう疾風。ごはん食べよっか。お腹すいちゃった」
俺はハンバーガーセットに、今日のスイーツであるベイクドチーズケーキを食べた。
シャルロットからよく毎日ケーキ食べれるねと言われたが。甘いものが好きなんだからしょうがない。
ご飯を食べたあと、アリーナに向かう前にシャルロットに話があると屋上に連れていかれた。
周りに人はいないことを確認したシャルロットはそのままベンチに座り、一マス空けて俺も座る。
「ごめんね、時間使っちゃって」
「いや俺は構わないけど。どうした?」
「うん。前から言おうかなって思ってたけど。疾風に話そうかなって」
「何を?」
「僕の秘密」
言い終わった時シャルロットの肩が少し強ばった気がした。
秘密、それが何かわからないが、重要なことだというのは空気でわかった。
「疾風は知ってる? IS学園で二人目の男性IS操縦者が転入したって話」
「えーっと。確かフランス出身の貴公子風の美少年がIS学園に来たって一時SNSやスレで話題になったけど」
しばらくしてそのスレも消去されたりして有耶無耶になったな。
一夏の存在が公表されてからというもの、至るところから二人目の男性IS操縦者のデマが後をたたなかった。さっきのもそのひとつだが、それはえらくリアリティがあってよく覚えている。
「実はそれ、僕のことなんだ」
「は?」
え、いやいや何を言ってるんだこの子は。
シャルロットはどうみても女性じゃないか。
「ごめん、それってどういう」
「僕は最初、シャルル・デュノアという名前の男性IS操縦者としてこの学園に来たんだ」
「え?」
シャルロットの爆弾発言に脳の処理が追い付かない。
シャルル・デュノアだって?
「えっと、えーっと?」
「ごめん、順を追って説明するね。疾風はデュノア社がどういう会社か知ってるよね」
「世界シェア第三位のラファール・リヴァイヴを生産したISの一流企業。この学園のラファールのパーツもデュノア社から来てるんだろ」
「じゃあ第三次イグニッション・プランは?」
「欧州連合が進めている次期主力機、つまり第三世代の量産化プロジェクトの総称だろ? レーデルハイト工業も参加してるから勿論知ってる」
「流石だね」
ちなみに俺のイーグルがその候補に入っている。
プラズマの固定化技術と、AIを導入した自律飛行武装がそれに当たる。
「シャルロットのとこもプランに入ってるだろ?」
「ううん。デュノア社は第三世代の開発につまづいちゃってね。イグニッション・プランから除名されて予算援助をカットされたんだ」
「え!? それ、かなり致命的じゃないか?」
プランの援助は政府から至急される。
ISの開発には多大なる資金が必要とされ、数多くの企業は政府からの援助で成り立っている物が大半だ。
「今のデュノア社はラファール・リヴァイヴのシェアだけでなんとか食い繋いでる。母親の家族が政府のお偉いさんだからそこからも援助して貰ってるみたいだけど、それも限界でね」
「たしかデュノア社ってISを出す前にも一度経営危機にならなかった?」
「うん、だから父さんは政治家の娘であるロゼンダさんと結婚したんだ」
そうだったのか。
「あれ、でもおかしくないか? デュノア社の社長のアルベール・デュノアがロゼンダ女史と結婚したのは14年前。シャルロットと微妙に年齢が合わない」
「それはそうだよ。僕はロゼンダさんの子供じゃないから」
「はい?」
「僕はね、愛人の子なんだ」
「は、ぁっ?」
声を出そうとしたが掠れてしまった。
シャルロットの口から出たのは余りにも浮世離れしていて、なおかつ途轍もなく重いものだった。
「僕は物心ついた時から父親が居なかった。母親と二人で田舎に住んでてね。その時には自分の父親がどういう存在かは知らなかった。でも二年前にお母さんが病気で亡くなって途方にくれた頃に、デュノア社の社長。つまり僕の父親に引き取られたんだ」
「そんなことが」
「引き取られてから色々検査するなかで、僕のIS適正が高いことに目を付けられて非公式でデュノア社のテストパイロットになったんだ」
愛人の子だということが公的に知られれば体制が悪くなるということなんだろう。
「引き取られてからほとんど別邸で軟禁状態でね、プライベートで父にあったのは二回くらい。一度本邸に呼ばれた時にロゼンダさんに殴られたよ。『ジャンヌ・ドルージュの娘がなんでこんなところにいるのよ!?』って、泥棒猫の娘とかも言われたな。酷いよね、僕はなんにも知らないまま連れてこられたのにさ」
思わず耳を塞ぎたくなった。
今話してることもそうだが、シャルロットは自分のことを話してるのに他人事のように話す姿があまりにも辛かった
「シャルロット、なんでそんなことを話す?」
「これは必要なことだから。疾風もさっき言ってたでしょ? 僕は自信が持てないって」
「確かに言った! だけど俺、そんなこと全然知らなくて………」
「知らなかったんだから無理もないよ。でもこれは受け止めなきゃいけなことだから」
「だからって」
「大丈夫。このことは僕のなかである意味吹っ切れたことだから」
俺はシャルロットが辛そうだから止めようとした。
だがシャルロットは話すことをやめる気はさらさら無かった。
彼女の目がそう言ったのだ。
「続けていいかな?」
「あ、ああ。ごめんな遮って。最後まで聞くよ」
「ありがとう。それからしばらくしてデュノア社は経営危機に陥ったんだ」
「それとお前が男装するのと何が関係してるんだ?」
「僕をIS学園に行かせるためだよ。いくら専用機を持つ代表候補生とはいえ、試験運用テストの名目がない以上IS学園の途中入学は出来ないからね。デュノア社は菖蒲さんの徳川財閥ほどIS学園の資金援助に貢献してないから」
確かに鈴やラウラは第三世代のテストの名目(裏で一夏の情報収集)でIS学園に入学出来た。
シャルロットがラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡを持ち込んでも門前払いされることだろう。
「だけど男として動かせるなら。それ事態がテストケースとしてIS学園に行ける。だから僕はシャルル・デュノアという男の子としてIS学園に転入したんだ」
「そんなこと、一企業の力だけじゃ到底出来ることじゃ。まさか」
「そう、フランス政府も絡んでいる」
つまりシャルル・デュノアの編入は国家規模の陰謀。
デュノア社長はリスクがありすぎるその対象をシャルロットに選んだ。
愛人の娘で、たまたまIS適正がある。ただそれだけの理由で。
「男性としてIS操縦者になればそれだけでデュノア社の広告塔にもなるしね。でも本当の目的はそれだけじゃないんだ」
「学園の第三世代ISのデータ収集」
「正解。そのなかでも特異ケースの一夏に接触すること」
「白式と一夏のデータを盗むためか」
「流石疾風。鋭いね」
これでわかった。
なんでシャルロットがこんな淡々と話せるのか。
自分と父親を赤の他人だと思ってるからだ。
そう自分に言い聞かせる為に。
「まあそんな企みもハプニングで一夏にバレておじゃんになったんだけどね。一夏にもこのことは話したよ」
「他に知ってる人は?」
「一夏といつものメンバー。菖浦さんにはまだ話してないかな。あとは学園の上層部」
ということは、勿論会長も知ってるな。
「ああ、これで終わりなんだって思った。正体を偽って入学した以上、もうIS学園には居られない。本国に戻って僕は犯罪者になっちゃうのかなって」
「そんな」
「その時は何もかもどうでもいいとさえ思えた。僕の人生は母さんが死んだとき、とっくに終わったんだって。でもね」
一度区切ったシャルロットは、さっきとは違って何処か嬉しそうに話し出した。
「僕の話を聞いたら一夏がすごい剣幕で怒ってくれたんだ。そんなのおかしい、子供は親の所有物じゃないんだぞ! って」
まったくもってその通りだ。
当たり前のことだが、勘違いしてる親は沢山いる。嘆かわしいことだ。
「一夏は僕を咎めようとしなかった。むしろ僕を助けようとした。凄いよね、僕は一夏の大切なデータを盗もうとして近づいたのにさ」
「ほんとあいつは。どこまでもだな」
まさに究極のお人好し。
あんなやつ、ライトノベルの主人公ぐらいしかいないだろう。
だが一夏は目の前の理不尽に怒れる男だ。
それが人ならばなおさらのこと。
助けたいと思ったらもうあいつは止まらない。
「一夏はここに居ろと言ったんだ。IS学園に居れば三年間は安全だって」
「IS学園特記事項第21条か」
IS学園の生徒はその在学中ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。
本人の同意が無い場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。
これはIS学園が必要以上に他国の干渉を受けない為の措置だ。
IS学園は世界でもっともISコアを保有する機関。今も水面下でIS学園の実権を握ろうと様々な国家が暗躍してるというのが会長の話だった。
「一夏にここに居ろって言われた時ね。本当に嬉しかったんだ。やっと居場所が出来たんだって」
「一夏のいる場所か」
「うん。その時から僕は一夏のことを観察対象とは別の意味で気になって気になってしょうがなかった。そして気付いたんだ。ああ、僕はこの人に恋をしたんだって」
何処にも居場所がなく、誰にも助けを呼べないシャルロット。
その彼女の居場所であり、救いの手を伸ばした一夏は間違いなく白馬の王子様だったろう。
乗ってるのは白馬じゃなくて白ISだけど………凄いしょうもない。
俺が自己嫌悪してることを知らずにシャルロットは話を続けた。
「それから僕はシャルロット・デュノアという女の子としてIS学園に再入学したんだ。色々考えたけど、ありのままの自分として一夏の側に居たかったんだ」
「恋する少女は無敵だな」
「アハハ、なんか照れるね。そして僕が再入学した少し後に疾風が転入してきたんだ。流石の僕も腰を抜かしそうになったよ」
そりゃあ、そうだ。
男として偽って入った奴が実は女子でしたってカミングアウトした後にモノホンの男性IS操縦者が出たなんて、凄い偶然があったもんだ。
そういえば俺に殺到した奴の中に「実は女の子じゃないの!?」って言ってくる奴がいっぱい居たのはそのせいか。
「だけど、それがさっきアリーナで話していた事とどういう関係が?」
「疾風の言った通り。僕は自分だけが第二世代だということを気にしている。何処まで頑張っても第三世代という結果には勝てないって。それに」
「それに?」
「僕は疾風が羨ましかった。ううん、恨めしいとすら感じていた、嫉妬していたんだ」
自嘲気味に話す彼女の視線はイーグルの待機形態のバッジに向けられていた。
「レーデルハイト工業の社長の一人息子。正真正銘の男性IS操縦者にして第三世代ISの専用機を持ち。家族や従業員に愛されている疾風。ああ、この人は僕が持っていなかった物を全部持ってるんだって思った」
「そんなこと思ってたのか………」
全然知らなかった。
初めてシャルロットに会った時、彼女は笑って歓迎してくれた。
そんな笑顔の裏でそんなことを思っていたとは。
「勿論それは見当違いも甚だしいと気付いたから直ぐにその考えは消えたよ。でも僕、疾風が内心怖かった。僕の過去を知られて、それがデュノア社の取り引き材料にされるんじゃって」
「え!? じゃ、じゃあなんで今俺に話してるんだよ!?」
「菖蒲さんが大怪我しちゃうところだったフェンス落下事件を切っ掛けに、疾風は女性の為の会に宣戦布告したでしょ。しかも誰よりもISとIS学園を好きな彼がそれを投げ売ってでも立ち向かおうとした。その時確信したんだ、疾風も一夏と同じく。友達の為に怒り、理不尽に立ち向かえる人だって。だから話しても良いって思えたんだ」
な、なんだ。
凄い話したと思ったら行きなり褒められて、もう頭がパンクしそうなんだが。
「俺が腹に逸物抱えた外道野郎だったらどうするつもり」
「そう思わないから話したんだよ」
「そ、そうですか」
なんつーか。俺は真にシャルロットに認められたってことになるのか。
てかいつもそんな風に見てたのか。
なんか申し訳ないな。
「あーーー。スッキリした!! ごめんね疾風、いきなりこんな重い話してさ」
「ヘビー過ぎて身長縮んだかと思った」
「フフッ。大丈夫、縮んでないよ」
そう言って向日葵のように笑う彼女に思わずドキッとした。
本音を晒しだした彼女は一皮向けたように強い女性に見えたから。
前よりシャルロットとの心の距離が縮まった気がした。
「そういえばシャルロット。さっきドルージュの娘って言ってたけど」
「それは僕の旧姓。もともとはシャルロット・ドルージュって名前なんだ」
「あれ?あのー、もしかして。今のフランス代表と親戚だったりする?」
「そうだよ」
「うぇい!?」
思わずすっとんきょうな声が出た。
「あれ、言ってなかったっけ? アニエス・ドルージュは僕のお母さんの妹なんだよ」
「初耳だねぇ!」
おいまてシャルロットさん。これ以上とんでも情報持ってきて俺をどうするつもりなの!?
「このこと一夏たちは知ってるの」
「うーん。もしかしたら言ってないかも」
「シャルロットさーん!」
この子意外ととぼけたとこあるのね。
シャルロットの新しい一面を見れた。
その後、シャルロットとの戦闘訓練はとても身が入った。
彼女の動きに勢いが生まれ、間合いを見計らう
積極的に距離を積めまくってグレー・スケールをぶち当てる戦法と。
とにかく距離を縮めさせない
どちらかと言えば慎重派の彼女の心のうちに貪欲に勝ちにいくという意気込みが見えてきた。
イーグルのプラズマと相性が悪いのにもかからわず10回勝負のうち何回か負けてしまった。
特にプラズマ・フィールドを強引にぶち抜いてパイルバンカーをねじ込まれたときにはかなり恐怖を感じました。
その時凄く良い笑顔だったのでお返しにブライトネスを思いっきり突きだしました。
何故か分からないが彼女にシンパシーを感じた。
結論。シャルロット・デュノアは第二世代とかそういう要素抜きでも強いということを再認識しました。
ーーー◇ーーー
アリーナの使用時間が過ぎたので俺たちは帰路についた。
あの後キャノンボール・ファストの練習をし。終了時間まで模擬戦をやりまくった。
途中一夏や箒がアリーナに来たので二人を誘ってバトルしたり。
慣らし運転のためにアリーナに来た山田先生を捕まえてISバトルをした。
山田先生もボソッと昔の血が騒ぎますと言っていたが、あれはどういうことだろう。
「フーー。こんなに長い時間ISに乗るのも久しぶりだなぁ」
「たまには良いもんだろ」
「そうだね。ありがとう疾風。今日は本当に実りのある1日だった」
昼の大胆カミングアウトからシャルロットはなんかスッキリした顔をした。
多分気のせいレベルの変化だろうけど。俺とシャルロットの間にあった壁がなくなったのが大きな要因だろう。
そういえば俺、他の専用機持ちと比べてシャルロットと面と向かって話したことなかった気がする。多分。
知らず知らずに彼女は俺を一歩引いたところから話してたんだろうなぁ。
「実はね。キャノンボール・ファスト当日にロゼンダさんが来るんだ」
「そうなのか?」
「うん」
ロゼンダ・デュノア。デュノア社社長アルベール・デュノアの妻であり、シャルロットにとっての義理の母親。
「ロゼンダさん、デュノア社の技術主任なんだ。だからデュノア社を代表して視察に来るみたい」
「大丈夫なのか」
「うん。なんだかんだデュノア社から装備提供は来てるから。直接顔を合わせるのは気が引けるけど。あの人も僕と話なんかしなくないだろうし、事務的な話だけで終わると思うけど」
特に気にしてない風に言ってるが、さっきの話を聞いたらそう聞こえる訳もなかった。
「なあシャルロット」
「なに?」
学生寮のロビーに差し掛かったところで俺はシャルロットを引き留めた。
「お前の親父さんは白式と一夏のデータを盗めと言ったんだよな」
「うん」
「他の人のデータは言われてないのか? セシリアや鈴。あと篠ノ之束の妹の箒のことも」
「ううん。お父さん……デュノア社長は一夏のデータだけを取れって。他には触れるなって」
「………」
俺は少しずれた眼鏡を直し、そのまま考え込むように黙った。
その姿にシャルロットは小首をかしげた。
「どうしたの疾風?」
「シャルロット。一ついいかな」
「?」
言おうか言わないか迷っていた。
だが言わないといけない。
そう決心した俺は言の葉を吐いた。
「お前の父親は本当に一夏と白式のデータ目当てに男装させたのか?」
俺の投げ掛けた問いにシャルロットは文字通り目を丸くした。
「ど、どういうこと?」
「ちょっと場所を移そう。ここじゃ誰が聞き耳たててるかわからないし」
それぐらい重要になるだろう。
今から言うことはこれからのシャルロットにとって選択を求められることになるのだから。
二巻を読み返したのですが。これだけ見たらデュノア社長が凄い糞やろうに見える。
そりゃあ数多の二次創作デュノア社長がひどい目にあうわけだよ。