IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第74話【シュガー&ビター・オリジン】

 寮の屋上に行き、さっき自販機で買ったミルクティーをシャルロットに上げた。

 シャルロットはミルクティーを一口入れたあと黙って俺を見ていた。

 

「これから言うことは完全にお節介で、信憑性のないことだということを留意しといてくれ」

「う、うん」

 

 恐らく今から話すことはシャルロットにとってのターニングポイントになってしまうだろう。

 それでも話さないと行けないと思った。それがただのエゴだとしても

 

「さっき言ったことを含めて、俺なりに情報を整理したんだが」

「整理? なんのこと?」

「シャルロットが男装してここに来たこと」

 

 買ったココアを一気に半分ほど飲み干し、深呼吸し。俺は話の口火を切った。

 

「はっきり言って。一夏と白式のデータがデュノア社の利益になるとは思えない」

「え?」

 

 唐突に告げられたことにシャルロットは思わず冷や汗をかいた。

 

「そ、そんな筈ない! 一夏と白式のデータがあればデュノア社は立て直せるってお父さんは言ってたんだよ!?」

「白式のデータを第三世代ISに活かせると思うか? その時の白式はワンオフ・アビリティーが使えるだけの高性能機、元の第三世代能力はオミットされてたと聞いてる。それに、白鉄や黒鉄と同じシールドからの攻撃転化能力は既に倉持技研第一研究所を中心に日本の一大プロジェクトの一つとされている」

「それは、確かにそうかもしれないけど………」

 

 仮にこれを使って真似したとしたら。デュノア社は日本政府から激しい追求を受ける。

 そうなれば情報が漏れたのがシャルルだと解れば、そこから芋づる式にデュノア社は干されるだろう。

 

 それに、まだ白鉄系列の第三世代能力は未完成で燃費が劣悪。実用化したとしてもコンペディションを通るとは思えない。

 

「データ取りを目的とするなら、白式よりもブルー・ティアーズと甲龍。もっと言うならヘルハウンドとコールド・ブラッドのデータを取るよう言われる筈。白式だけに固執し、他を無視するというのは明らかに不自然だ」

「………」

「一夏のデータも同じだ。これを使ってどうする? 男性操縦者を増やすとでも言うのか? とても会社を立て直す材料になるとは思えない」

 

 実の娘に男装させてまで得る情報にしてはあまりにもハイリスクノーリターンだ。

 

「仮にその情報で得をするとしたら。裏の組織ぐらいだな。亡国機業(ファントム・タスク)あたりの」

「ま、まさか。デュノア社は、お父さんは裏でテロリストと繋がっていたとでも言うの!?」

 

 思わず狼狽するシャルロット。

 データを盗むということは紛れもなく犯罪行為だが、それが会社の為ではなくテロリストに繋がる物だと認識すればそうもなる。

 

「俺はそうは思わない」

「どういうこと?」

「確かにその考えは浮かんだ。だけどその可能性は低いと俺は考えている。その証拠がシャルロット、いやシャルル・デュノアの存在だ」

「ぼ、僕の?」

 

 青ざめる彼女をなんとか宥め、話を続ける。

 

「時にシャルロット。お前、この学園に来る前に身体検査は受けたか?」

「え、なにそれ?」

「因みに俺はゲノム検査とか色々身体を一通り調べられて男性IS操縦者だと確認されたよ。一度全裸になったこともあったな」

「ぜ、全裸!?」

 

 一夏が男性IS操縦者だとわかってから。各国ではデマや偽物が出たのは少なくなかった。

 動かせない癖に動かせるとホラを吹いたもの。女性が男装して審査を通ろうとしたこともあったが、全て調査の末おじゃんになっている。

 

「まあその反応を見るに、シャルロットはそういう検査は受けてなかったみたいだな。IS学園に入学するというのに検査もなしにそのまま男性として通すなんて。流石におかしいと思わなかったのか?」

「確かに。ある日お父さんに言われて、そのまま入学したときはあっさり通れたなって思ったけども」

 

 多分IS学園に入学するまで内心穏やかじゃなかったろう。

 それなのにサラッと入れるなんて。世界中の施設と比べてもハイランクで警備の厳しいIS学園にしては緩すぎる。

 

「あと、広告塔って理由も矛盾してるよな」

「どうして?」

「だって。俺、お前に言われるまでシャルル・デュノアなんて名前も、二人目の男性IS操縦者が現れたなんて知らなかったんだぜ?」

 

 仮に本当に二人目の男性IS操縦者シャルル・デュノアが一度でも報道されていたのなら。ISオタクの俺が知らない筈もない。

 

 それに俺が二人目の男性IS操縦者と報道された時は世界中が文字通り沸き上がる程の特大ニュースとして取りだたされていた。

 

「確かにそうだね。僕の情報は世間に公表されていないなら、広告塔になんてなれる筈がない」

「あとはお前が女性としてIS学園に再入学したことだ。おおかたお前が女性だったことは学園にはバレてたんだろう?」

「そ、そうだね。少なくとも織斑先生と学園長は知ってたかな。僕が一夏目当てで来たと言っても分かってたみたいだし」

 

 多分シャルロットが自分から言わなかったとしても、遅かれ早かれ学園側から来ただろうな。

 恐らくシャルル・デュノアがシャルロット・デュノアだということは最初からバレていたことだろう。

 

「でも、それだとおかしくない? 初めから僕の正体が分かっていながら、どうして一夏と同じ部屋にしたの?」

「一夏ならたとえバレてもお前を庇うと思ったから、とか?」

「行きなりボヤけたね」

「も、勿論ちゃんとした理由もある。シャルロットの行動範囲を制限して、周囲にバレることを防いだのかも。あまり動き回ると他の誰かにバレて騒ぎが大きくなる可能性があったし」

 

 仮にシャルロットがセシリアと一緒の部屋だったらどうなってただろう。

 想像するのが少し怖いな。

 

「だけど。それじゃあなんで僕はIS学園に入ることになるの? 結局僕がここに来てもメリットがないのに」

 

 シャルロットの言うとおり。

 さっき説明した中、シャルロットの行動はメリットどころかデメリットだらけ。

 シャルロットがシャルルとして侵入し、他国のISのデータを盗むという条約違反行為が公になれば間違いなくデュノア社は潰れる。

 だがIS学園はデュノア社の企みを公にするどころかシャルル・デュノアをシャルロット・デュノアとして迎え入れた。

 

 つまり、デュノア社社長。アルベール・デュノアの真の目的は。

 

「シャルロットをIS学園に行かせること事態が目的だったんじゃないだろうか」

「えっ?」

「一夏と白式のデータは建前。シャルロットをIS学園で保護させるのが目的だったのかも」

「なんのために?」

「シャルロットを守るためじゃないかと俺は考えてる」

 

 ここからは更に推論だ。

 

「セシリアから聞いたんだけど。デュノア家ってフランスの古い貴族家系って聞いた。そのなかでもデュノア家は貴族の家系を重要視する、言うなれば純血派という風潮があるらしい」

「そんなことが」

「ロゼンダ夫人もデュノアの遠い家系なんだってさ。そんななか、アルベール・デュノアの隠し子であるシャルロットを良い眼でみないだろう」

 

 だからシャルロットの身の安全のためにIS学園に寄越した。

 そう仮定すれば辻褄は会う。

 

 特記事項第21条が適用されれば。シャルロットはデュノア家に戻る必要はなくなる。

 

「それに、アルベール・デュノアとIS学園は裏で繋がったんじゃないか。ここまで綺麗になんのトラブルもなく再入学が決まったんだから」

 

 そうでなければ、ここまでシャルロットがシャルルとしてIS学園に入学など到底不可能だ

 全部デュノア社長の計画。

 これが本当ならとんだ傑物だな。

 

「な、なんで……」

「ん?」

「なんでそんなことをする必要があったの? 僕はあそこでは厄介者なのは分かってた。でも、お父さんが僕にそこまでする必要があると思えない。お父さんにとって僕は愛人の子。………僕は愛されてなんかいないのに」

 

 うつむくシャルロットの顔はどう受け止めていいか分からないと語っていた。

 

 今まで音信不通だったのに母親が死んだ時に引き取られ、冷遇され、自身を道具として極東の地に放った実の父親。

 困惑するのも無理はないだろう。

 

「デュノア社長の真意は分からない。今言ったことは全部状況を見て立てた俺の推論だ。もしかしたら本当に目障りという理由でIS学園に行かせたのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。会長ならなんか知ってると思うけど。話してくれるかどうか」

「…………」

「それでも、俺はシャルロットに伝えたかった」

「どうして?」

「憎む以外の選択肢があるなら、知らないなんてあんまりだろ」

 

 人の見解なんて簡単には変わらない。

 一度決めつけてしまえばそうとしか見れなくなってしまう。

 

 シャルロットの父親は本当の意味で畜生なのかもしれない。

 でももしそうじゃなかったら? そう考えてしまった。

 

「針ほどの希望的観測だ。所詮子供が考えた絵空事かもしれない。だけど、シャルロットに後悔して欲しくないって思った」

「後悔………」

「俺の言ったことをどう受け止めるかは任せる。だけどシャルロットの問題には時間制限がある。IS学園にいる三年間は安全だけど。その後の対策は考えたのか?」

「ううん」

「今度ロゼンダさんに会うんだろ。だったらちゃんと真っ直ぐ顔を見て聞いてやったらどうだ」

 

 なんのために自分を利用したのかって。

 

「戦ってやろうぜシャルロット、理不尽ってやつに。結果はどうだって、真正面からぶち壊してしまえ」

「戦う、か」

「シャルロット。正直ムカつかないか? 意味分かんないのに殴られたままなんてさ」

 

 うつ向いていたシャルロットは前を向いた。

 そのアメジストのような紫の瞳には、まだ小さい決意の光が見えた気がした。

 

「そうだね。なんかムカついてきたよ。なんで僕がこんな理不尽な目にあわなきゃならないんだろうね?」

「そうだな」

 

 シャルロットは手に持った缶の紅茶をあけ。ゴクゴクと一息に飲み干した

 

「プハァっ! ………ふぅ、ありがとう疾風。なんか目の前の景色がひらけた気分だよ」

 

 そう言ってくれるなら、お節介をやいた甲斐があったという物だ。

 

「正直少し怖いけど。僕も戦ってみるよ疾風」

「そうか。でもシャルロット」

「ん?」

「シャルロットには俺たちが付いてる。みんながシャルロットの味方だということを忘れないでくれ」

「うん、いざというときは頼りにさせてもらうよ」

 

 シャルロットが理不尽な目にあうことなどあいつらは絶対に許さない。

 やろうと思えば国を滅ぼせる戦力が味方にいるってのはなんとも恐ろしいもんだな。

 

「あっ、そうだ。もし社会的に報復したい時は俺とレーデルハイト工業を頼ってよ。シャルル・デュノアのことをネタに告発なり乗っ取るなりしてデュノア社潰すから」

「サラッと僕が恐れたことを提案するんだね!?」

 

 会長にお願いしてあら探ししてもらうのも悪くないかもしれない。

 

「それと身寄りなくなったらレーデルハイト工業で雇ってやるよ。高速切替(ラピッド・スイッチ)持ちなんて稀少だし、あわよくば専用機ごとコアを、フフフフフッ」

「やめよう疾風! 怖い怖い!」

「あ、それとも一夏に嫁入りして家族になった方が手っ取り早いか?」

「疾風っ!!」

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

【ラウラ、シュヴァルツェア・レーゲン】

 

 

 

「やっぱりAICは近接系の大敵だな」

「しかしサイレント・ゼフィルスには意図も簡単に切り払われた。あの時はオータムを最大出力で縛っていたのにだ」

「恐らくだけど。ゼフィルスのバヨネットには力場干渉の力場が発生していたんだろうな」

 

 学園祭の襲撃者の話を推論を立てながら論議した。

 

 サイレント・ゼフィルス、BT2号機を強奪したテロリスト。本当に何者なのだろうか。

 オータムと違って人となりが見えない以上底が知れない。

 

「ラウラのAICって精度良いよな。雪片弐型の柄部分を止めて零落白夜を通さないって。普通出来ることじゃないよ」

「まあな。部隊の中でAICを、シュヴァルツェア・レーゲンを一番上手く使えたのは私だった。だから私は黒兎隊(シュヴァルツェア・ハーゼ)の隊長となり、代表候補生としてこの学園に来ることが出来た」

 

 俺と同い年なのに軍の隊長を任される。

 普段なんとも素面でボケをかますラウラだが。ことISや軍関係となると俺と同い年に見えない大きな存在に見える。

 

 俺より頭一つ小柄なのにな。

 

「ムッ、今なんか失礼なことを考えたか疾風」

「いやなんも」

 

 勘の良さも一級品だ。

 

「話を続けよう。さっき零落白夜を止めたと言ったがな。最近の一夏は零落白夜の発動タイミングが読めないどころかAICすら切り裂いてくる」

 

 AICはPICを発展させた空間に作用する第三世代兵器。

 慣性停止結界と言われたそれは文字通り物体の慣性を停滞させ、停止に持ち込んで攻撃を止めるもの。

 実弾兵器や近接武装を完全に制止させ、ISに使えば指一本動かせず、一方的に攻撃出来る。

 

 一見タイマンでは無敵に聞こえる能力だが。勿論欠点もある。

 

 空間にエネルギーをかけて作用するのは衝撃砲と同じだが、AICを維持させる為にはその場にとどまる必要があること。

 レーザーやプラズマなど、指向性のある非実態兵器には効果がないこと。

 そして、使用するには膨大なイメージリソースが必要な為。使用するには多量の集中力が必要で、攻撃を受けると解除される。

 

 さらにエネルギーで空間に圧をかけ続ける性質上、零落白夜が当たると力場が消滅する。

 

 ラウラの言った通り、一夏はラウラのAICをある程度見切って消滅させるようになった。まだ確率は安定してはなく、斬ろうとしてAICに捕まったなんてことはあるが。

 

「我が嫁の成長は嬉しいが、ここのところの勝率が下方傾向にある。夫が嫁に遅れを取るなど情けない話だと思わないか?」

「ウン、ソダネー」

「ちゃんと話を聞いてるのかお前は」

「キイテルヨ」

 

 同意したくないダケ。

 

「まあいい。自惚れる訳ではないが、私の基本技術は一定水準に達している。やはりAICの強化が妥当だと思うのだが。どうだろうか」

 

 間違ってはいないと思う。

 ラウラは操縦技術に関して一年のなかでは五指に入る。立ち回り事態はシャルロットと同様高い水準に達している。

 シュヴァルツェア・レーゲンはどの距離にも対応できる武装が基本装備として備わっていて、それを十全に扱えるだけの技量がある。

 

 故にラウラの今後の課題はAICの強化だ。

 

「うん。俺もそう思っていた。その為にも、AICについて何個か聞きたいことがある」

「なんだ?」

「ラウラのAICって前後左右上下何処にでも展開出来る?」

「勿論だ」

「AICの効果範囲はIS一機を包み込めるぐらいの範囲の球体フィールドで間違いないよな?」

「正解だ。イーグル・アイで見たのか?」

「衝撃砲と同じようにな」

 

 改めて思うが。俺のイーグル・アイは不可視能力と相性がいい。まあステルスという訳ではないし、膨大な戦闘データと環境データの詰め合わせによるものが大きいけど。

 

「ラウラってAICを発動するときは手をかざすよな。あれってやっぱりAICのイメージを補助するため?」

「ああ、AICを十全に発動するには強いイメージが必要だ。私が手をかざすのは強く『止まれ!』と念じる必要がある」

「やっぱりそうか。手をかざさずにAICは出来る?」

「出来ないことはない。念じようと思えば止めることは出来るが、瞬間的に発動させるには弱い。何度か手をかざすモーションを省略して使用したことがあるが、戦闘中だと手をかざした方が早く強力なAICを展開出来るという結論に至った」

 

 流石というかなんというか。

 自分の欠点を明確に理解した上で使用してるんだな。

 

「恐らく一夏は私が手をかざしたところを見て、そこから発生箇所を予測して斬ろうとしてるのだろうな」

「すげーなあいつは」

 

 とにかく成長スピードがえげつない。

 会長の扱きに値を上げる回数も少なくなってきたし。

 みんなが俺にアドバイスして欲しいと言ったのも、一夏に負けたくないからって言ってたし。

 

「疾風、なにかアイディアはないだろうか」

「考えたものだと。移動中でもAICを発動出来ることとか」

「そんなこと出来るのか? 力場定着させるにはその場でとどまる必要がある」

「でも一瞬発動できる。ラウラのAIC発動速度は早いから、移動中に当たる攻撃もピンポイントで止めて防ぐことは出来る………と思う」

「ふむ、それなら停止してる時に他から狙われるリスクも軽減されるな」

「まあ言った通り一瞬だからタイミングがシビア過ぎるから使い物になれるか分からないけど」

「それはこの後試すことにしよう。何事もやってみないことには始まらん」

「そうだな」

 

 仮にこれが実用化されれば。文字通り大きな武器になるだろう。

 すれ違い様に一瞬で止められれば敵の態勢を崩すことも出来るかもしれない。

 それと次に始まるキャノンボール・ファストの時に緊急回避用に活用出来るかもしれない。

 

「あとはあれだな。AICの持続強化。多少の被弾や衝撃があっても動じない強い精神力を鍛える」

「つまりどういうことだ?」

「ド根性」

「いきなり知能指数が下がったな」

 

 真顔で冷静なツッコミをいれんでくれるかい。

 一夏のクソ寒いダジャレじゃないんだからさ

 

「いやいや。AICなんて集中力に物を言わせた代物だ。正に何事にも動じない強靭な精神があれば多少の邪魔なんか意にかえさずAICを維持し続けることも可能だろ。正にド根性だよ」

「………」

「それに俺との戦闘だとAICで止めたとしてもプラズマ放射で捕まえられた試しがないだろう? あれに耐えれる精神力があれば俺でもAICで止めれることが可能だ」

「む、むぅ。確かにそうだな」

 

 よし、なんとか納得してもらえた。

 これで俺がスベったことを言ったという結果は回避された! 

 

「でもあれだな。ワイヤーの先からAIC出たら強いなぁって思うとこある」

「ふむ」

「流石にIS一機丸ごと止めることは出来ないかもしれないけど。空中にピン止め出来たら空中ワイヤーアクション戦法! なんて出来るんじゃないかなって。これならキャノンボール・ファストでも曲がるときにスイングバイの要領で応用出来るし、緊急回避にも役にたつだろ?」

「成る程」

「あ、ごめん。また興奮してしまった。まあ流石に欲張り過ぎだな。忘れて忘れて」

(実は本国のシュヴァルツェア・ツヴァイクは正にワイヤーの先からAICを発生させるのだがな。防御型AICでも出来ないか本国に問い合わせてみるか………)

 

 思案にくれるラウラをよそに準備を終えた俺はラウラにたずねた。

 

「よし、先ずはどっちからやる?」

「移動中のAICだ。あれが出来るか出来ないかで指導方針が決まるだろう」

「了解だ。先ずは一定距離を一定速度でサークルロンド。俺はショットガンを撃つから、当たる瞬間に止めていってくれ」

「分かった、早速始めよう」

 

 バススロットに入れていたショットガンを担いで空中に移動。

 そのままサークルロンドに移行しながらショットガンを撃った。

 

 撃ち出された散弾はそのまま直撃コースに。

 ラウラはAICを展開しようとするが、展開から終了の時間が短く、バラけた弾がレーゲンのシールドを叩いた。

 

「10秒感覚で行くぞ!」

「わかった!」

 

 その後マガジンが切れるまで訓練が続き、実際止めれたのは二割ほど。

 だが止めれることがわかったので今後訓練に入れるとのこと。

 

 次に精神力強化として、俺をAICで止めた状態からイーグルのプラズマ放射を受けながらAICを維持する訓練。

 

 だがやはりどちらも難しい課題だからか、今日は目立った成果は得られなかった。だが兆しが見えたことはラウラにとっては最大の収穫だろう。

 

「じゃあ最後に一回模擬戦して終わりにするか」

「ああ、行くぞ!」

 

 本日の〆として一回フルバトル。

 

 現在のラウラとの戦績は5:5のタイ。だが最近は俺が勝ち星を上げ始めている。

 それもあってラウラも攻めの姿勢で勝ちに来ている。

 

 誰に対してもそうだが。

 負けてられない!! 

 

「そういえば疾風」

「え、なに」

「お前好きな人が出来たのか?」

「んん!?」

「頂く」

「おいちょっ!」

 

 

 

 

『スカイブルー・イーグル リミットダウン』

 

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ラウラさんや。あれはないんじゃないかな。動揺させた隙にAIC決めてからフルフルボッコボッコってあまりにも酷いんじゃないか」

「動揺して反撃すらしなかったお前が悪い」

 

 い、言い返せねぇ………

 

 今日のスイーツ、トルタ・メリンガータをフォークでサックリと切って口に運ぶ。

 

 冷たいメレンゲが口のなかでホロホロと崩れていくのがたまらない。

 

「てかラウラ、なんであんなこと聞いたの」

「皆に一夏との馴れ初めを聞いてるのだろう? なんでも恋とはどういうものかと。お前にも春が来たのだな」

「いや、別に」

「今さら取り繕う必要もあるまい。お前はセ」

「はい、ここ公共の場。不用意なことをいわなぁい!」

「まわりに誰も居ないではないか」

 

 それでも駄目だよ。

 壁に目あり障子にメアリーって言うだろ。

 

 まったくこの子。突拍子もないことをサラッと言うんだから。

 ………突拍子もなくもないこともサラッと言うんだから。

 

「まあいい。この話はまた次の機会に」

「しなくていいよ」

「恋バナは女子の独壇場なのだろう?」

 

 誰から聞いたんだよ。また例の副官か? 

 いや間違っちゃいないけどよ。

 

「お前、シャルロットから出自の話を聞いたんだな」

「うん。確かお前とシャルロットは同室だったな」

「うむ。疾風に話したとシャルロットから聞いた。お前の考えのこともな」

「そうか」

「シャルロットも心なしか表情が明るかった。お前には礼を言う」

「俺がやったのはただのお節介だよ」

 

 自分の考えを言っただけなのだから。

 

「………」

「どうした?」

「シャルロットがお前に自分の過去を話した。男装して入ったことも、自分が(めかけ)の子だということも。お前はそれを話しうるに値すると考えただろうとな」

 

 ラウラはカフェオレを口に含み、ホッと息を吐いた。

 その目に決意の光が見えた。

 

「なら私も話すべきだと思ってな」

「何を?」

「私の過去。そして私がこの学園に来てから、お前が学園に来るまで私が行った蛮行を」

 

 思わずゴクリと唾を飲んだ。

 この空気が、昨日のシャルロットに似ていたのだ。

 

 身構えていると、ラウラは話始めた。

 それは俺の予想を遥かに上回る、浮世離れした言葉だった

 

「疾風。私はな、普通の人間ではない」

「は? 今なんて」

 

 

 

「私は戦うために生み出された試験管ベイビー。人工合成された受精卵から作られ鉄の子宮から生まれた。遺伝子強化素体、アドヴァンスド・チルドレンだ」

 

 

 

 




 サイザリヤのメリンガータって美味しいよね
 期間限定らしいけど、なんでレギュラーにならんのやろ。

 そして疾風はケーキ食い過ぎです。
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