IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第77話【デッドヒート・オブ・ユース】

「どうよ一夏! 甲龍のキャノンボール・ファスト用オートクチュール【(フェン)】の勇姿!!」

「おー! なんかスゲー、尖ってるな!」

「そうでしょうそうでしょう!」

 

 元の特徴的な龍砲を取り外し、増設スラスターを四基積んだその姿は如何にも早そうと言うイメージを見せつけられる。

 妨害目的で横を向いている一回り小さくなった拡散衝撃砲、全方位撃てるのに態々横に向いてるのは実はブラフではなく横に撃つ衝撃砲は前後方向より砲身形成時間が短縮されるらしい。

 追加胸部装甲は大きく前面に突き出たコーン型。もしこれで体当たりされたら痛そうである。

 

「ふふん、この胸部装甲は見かけ倒しじゃないのよ。甲龍の空間圧能力をこの胸部装甲から出すことで空気抵抗を格段に減らすことも出来ちゃうわけよ!」

「おおっ、マジでキャノンボール・ファスト専用なんだ。でもそれ対戦相手である俺に喋って良かったのか?」

「いいのよ! 私が一夏に言いたかったから!」

 

 それだけ今日のあたしは一味違うのよ、と鈴は言いたいのだ。

 

(セシリアと疾風は高機動パッケージだけど。私はキャノンボール・ファスト仕様の特注品! これを使って観客席は勿論のこと一夏の視線も釘付けにしちゃうんだから!)

 

 大会のあとは個人的メインイベントである一夏の誕生日も迫っている。

 ここで一位になって一夏へのアピールに使わせてもらう。

 

「おーい一夏、鈴」

「お、疾風!」

(来たわね疾風! 前にも見せたけど。もう一度私の見姿を拝ませてあげようじゃない)

 

 鈴は精一杯カッコつけて疾風の方に振り向いた。

 特別製のオートクチュールを最大の角度で見せつけることはモデル経験のある鈴には造作もないことだった。

 

「………にゅ?」

 

 鈴は開いた口をキュッと閉めた。

 目の前に現れた疾風とスカイブルー・イーグルは自分の想像していた物とまったく違う代物だったからだ。

 

「おぉっ!? 疾風も新型パッケージなのか!」

「そうなんだよ。どうよっ、俺のスカイブルー・イーグルの決戦コーディネート、その名もアクセル・フォーミュラ! 最高にいかすだろ!」

 

 ハイテンションにISを見せる疾風の姿は甲龍とはまた別ベクトルのシャープ差を誇っていた。

 

 今回のスカイブルー・イーグルのオートクチュールは強襲離脱型のソニック・チェイサーではなく、キャノンボール・ファスト専用パッケージ【アクセル・フォーミュラ】を装備している。

 

 ソニック・チェイサー時の特徴的な尾羽型スラスターはそのままに、肩には旋回よりにチューンされたサブスラスターと回転式プラズマ機銃。

 背中にウェポンベイユニットを装備し。機体速量を損なわないギリギリのペイロードを攻めている。

 

 一対のカスタムウィングは腰よりの位置に再設定。

 

 新武装としてスラスター内蔵型の大型槍のボルテックにインパルスのプラズマ弾発射機構を備えた【ボルテックⅡ】を装備。

 柄部分の長さを変えれるので咄嗟の取り回しの良さもあるぞ。

 

「騙したわね疾風!」

「開幕から酷いなオイ」

 

 鈴が目と口を三角にしてこっちを指差してギャイギャイと威嚇した。

 

「あんたソニック・チェイサーで出るって言ってたじゃない! 新型パッケージなんて聞いてないわよ!?」

 

 どうやら鈴は疾風のスカイブルー・イーグルが臨海学校とIS学園で見せたフォルムと違うことに苦言を申したいらしい。

 

「いやいや、俺は高機動パッケージで出るって言ったけどソニック・チェイサーで出るなんて一言も言った覚えはないぞ凰鈴音くん」

「これ見よがしに眼鏡上げてるんじゃないわよ!」

「ハッハッハ」

 

 これまたご機嫌な疾風になおも鈴は噛みついた。

 もはや意地である。

 

「てかこれ積載量オーバーじゃない! ズルしてんじゃないの!?」

「フッ、甘く見るなよ中国。スカイブルー・イーグルは日々進化、日々技術進歩する! バススロットもほんの少し増えたのさ!」

「そんなのあり!? てかなんか言い回しに暑苦しさを感じる!」

「ハハハッ! 我がレーデルハイト工業に際限と自重と限界などなぁぁい!!」

「暑苦しい!」

 

 この男、新型オートクチュールと会場の熱気に有頂天になっている。

 ISギークソウル&企業戦士パワー最大出力である。

 

「鈴。俺は一つお前に謝罪しなければならない」

「なによ」

「ぶっちゃけその顔が見たくてあえて紛らわしい言い方をしたという側面がほんの少しあったんだ。ハハッ、スマンナ」

「ムガッキュイイイイイ!!」

 

 ミニドラゴンの なきごえ!

 腹黒メガネの とくこうが 上がった!

 

「もう、二人ともなに騒いでいますの? はしたないですわよ」

「セシリア聞いてよ! 疾風のやつ新型パッケージなんかを隠していて………ハァウハッ」

「どうか致しまして?」

 

 鈴はセシリアを見るなり顔芸を披露した。

 

 見るとセシリアのストライク・ガンナーも前とは少し違うシルエットだったのだ。

 新パーツを引っ提げて来たセシリアに鈴は(気分だけ)瞬時加速(イグニッション・ブースト)で詰めよった。

 

「あんたもかぃぃ!!」

「え、え!? 何がですの!? あ、や、やめてくださいまし! 伸びます! ISスーツが伸びます!!」

「伸びろぉ! 伸びてしまえー!」

 

 ご丁寧に腕部装甲を解除した鈴の腕がセシリアの胸ぐらを掴み揺すりに揺すった。

 それと同時に谷間が見えたので疾風は目線を反らした。ハイパーセンサーを発動しそうになったが壮絶なる理性で抑え込んだ。

 

「なあ疾風、なんで鈴はあんなに怒ってるんだ」

「おそらくあれだ。新型パッケージが自分だけだと思っていたのに。立て続けに俺とセシリアの新型パッケージが出てきて自尊心傷つけられたんだろ。ちょっと悪いことしたな」

「本当にそう思ってるか?」

「………6割ぐらい」

「お前にしては上々だな」

「俺のこと段々理解してくれて嬉しいぜ相棒」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

 さてそろそろ止めにいかなければセシリアのISスーツがダルダル通り越して千切れてしまう。

 行くぞイーグル。大丈夫だタブーポイントには触れてないから死にはしないだろうさ。

 なんとなくイーグルが重いのは気のせいだよねきっと。トラウマったイーグル? 

 

「はい鈴。そろそろ止め時だ。観客から丸見えだから」

「焚き付けた奴が言うそれ」

「楊さん来てるんじゃないの?」

「ぬぐっ! し、仕方ないわね。レースで覚えてなさい疾風」

 

 気を付けるとしよう。

 

「しかし完成したんだな【アサルト・ガンナー】。すげー良いじゃん」

「ありがとうございます」

 

 ブルー・ティアーズの新型、というより前回のストライク・ガンナーの改造プランであるアサルト・ガンナー。

 

 本元のストライクガンナーの姿はそのままだが、目玉は両肩に一基ずつ装備されたブースターを兼ねそなえた大型ビット兵器【アルペジオ】。

 

 これはBT能力が向上したセシリア用に作られた高速機動対応型BT兵器だ。

 通常は大出力レーザーの固定砲台&増加スラスターとして機能するが、いざとなれば大出力ブースターを利用した高機動下のオールレンジ攻撃が可能。

 ついにティアーズ・コーポレーションはハイスピード化でのビットを完成させたのだ。サイズは多少大きくなったが。

 

 高速化を想定しているため射出時は牽引用ケーブルを使う。これは再装着をやりやすくすると同時に電源ケーブルを兼ねている為、飛ばしている間電源切れになることはない。

 勿論ケーブルなしでも飛ばせる。

 

「凄い似合ってるよセシリア」

「ありがとうございます。この肩の装備が武骨過ぎるのではと内心不安だったのですが」

「それが、良いんだよ」

「そうですか(疾風の目が輝いていますわ)」

 

 ロマンだよこれは。

 有線大型ビットなんてロマン成分マシマシだぜ。

 

「そしてね。ブルー・ティアーズに新型ライフルが出たと」

「ええ。スターライトMK-Ⅳですわ」

 

 ブルー・ティアーズが元々装備していたスターライトMK-Ⅲの発展モデルであるスターライトMK-Ⅳの最大の特徴は銃身を二つ重ねたダブルバレルライフル。

 従来のレーザー射撃に加えて実弾射撃も可能になり、ついにブルー・ティアーズにも汎用型実弾射撃武装が追加された。

 

 この機能に加え、俺とイーグルの初陣でセシリアが披露したエネルギーチャージからのバーストシュートも問題なく発動出来るようになったらしく。ブルー・ティアーズの戦略性に大幅な強化が加えられた。

 

 と、なんで俺がこんなにブルー・ティアーズの新武装に詳しいかというと。

 

「これもレーデルハイト工業の技術提供のお陰ですわね。ありがとうございます疾風」

「うん。まあ俺は今回アイディア出してないけど。どういたしまして」

 

 仮に俺が出したアイディアだったらあっちの社長がノーサンキューと断ったに違いない。

 いつか俺が考えた装備をセシリアが使ってくれないかなって柄にもないことを考えた。

 

「二人とも準備万端だね」

「あらシャルロットさん」

「シャルロット」

 

 増加ブースターを装備したラファールを展開しているシャルロット。

 継母には会ったのだろうか。

 

 心配そうな顔をしてしまったのか。

 シャルロットからプライベート・チャネルが来た。

 

『心配しないで疾風。僕は大丈夫』

『無理してないか?』

『うん。言いたいことは言えた。これも疾風と、一夏のおかげ』

『そっか』

 

 ならこれ以上俺が言うことはない。

 

「一夏はあっちだよ。声かけに行ったら?」

「そうする。また後でね、二人とも」

 

 スィーとラファールを滑らせるシャルロットを見送ると、セシリアがジーッとこっちを見てることに気づいた。

 

「どうした?」

「いえ、私もそろそろレーンに行こうかと」

「そっか、俺はもうちょっとしたら行くわ」

「わかりました。では」

 

 軽く会釈をしてセシリアはシャルロットのあとを追った。

 これは気付かれたかな、プラチャ使ってたの。まあ内容までは分からないからいいけど。

 

「ん? おーいラウラー」

「うぉっ疾風!?」

 

 フロート移動するラウラを捕まえると突然背後から触ってしまった兎のようにビクゥッ!ってなった。

 な、なんでそんな驚くのラウラさん? 

 

「どうしたラウラ、なんかお前らしくないぞ」

「ああすまん。実は今朝夢見が悪くてな」

「そうなのか? 悪夢って人に話すと楽になるって聞くけど良かったら」

「うーむ。まあお前に関係ないとも言えんしな」

 

 ん、それはどういうこと? 

 

「実はな。疾風にISバトルでボコボコにされる夢を見た」

「え、ええ? それはなんか申し訳ない。なんでそんな」

「前に私が鈴とセシリアを痛め付けたことは話しただろう。その時割って入ったのは一夏だったが、夢の中では疾風とスカイブルー・イーグルだったのだ」

 

 へぇ、それは奇妙というか………ラウラって案外引きずるタイプだったんだな。

 

「リアルな夢だった。疾風はまず始めに部隊や教官のことをネタに私を煽り、冷静さを失った私を容赦なく叩き潰した。あれは異なる世界線の出来事というものなのだろうか、私の懸念は正しかった」

「大丈夫だぞラウラ! 俺はそんな風に思ってないから! だから気にするなよ、なっ?」

「う、うむ」

 

 わりかしあり得そうな感じだからなんとも言えないグアーとした感情が涌き出てきた。

 ああもう本当に怯えた兎みたいに見えるじゃないか。おーよしよし。

 

「一夏のとこ行こうか。一夏と話せば気も楽になるだろ」

「もしかしたら一夏もあの時のことまだ怒っているのでは………」

「一夏ー! ラウラがお前と話がしたいってさー!!」

 

 この子いつも無鉄砲なぐらいポジティブなのにいざネガティブになるととことん沈むタイプだ! 

 あーもうなんだろう! 俺悪くないはずなのに罪悪感がやばいんだけど。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「さて、もうすぐ始まります一年生専用機部門。改めまして司会の小林加奈と申します。そして」

「解説のアリア・レーデルハイトです」

「はい、ありがとうございます。いやー流石にここまで専用機が揃うとカラフルですねアリアさん!」

「そうですね。量産機にはしっかりと構えた堅実なレースが目立ちましたが。専用機は各々の個性が光るので、一癖も二癖もあるレースが見れると思います」

 

 テレビやライブ配信に映っているので最初から仕事モードのアリア社長。当たり障りのないかつしっかり双方にフォローを入れた100点回答を見せた。

 

「IS学園にこれだけ専用機が揃うのは前例のないことのようですね。彼女らの存在があって、今回は一年生レース種目が急遽決まったという話ですから」

「恐らく各首脳陣や開発陣が一際注目するレースでしょう。目の前に並ぶのは各国の最新鋭機、特異技能高速切替(ラピッド・スイッチ)持ち、第四世代IS。そして男性IS操縦者、片方は異例の速さで第二次形態移行(セカンド・シフト)を果たしています」

「期待が高まりますね」

「ええ、誰が一位になってもおかしくはありません」

 

 と、言いつつ。

 

(やっぱりスカイブルー・イーグルのアクセル・フォーミュラを装備した疾風、いい! 言いたい! 私の息子が最高だとオンエアで贔屓したい! 一位を取るのは息子だと言いたい! でもセシリアちゃんも捨てがたいのよね、ワンチャン同着にならないかしら)

 

 内心私情まみれである。

 どう取り繕っても一番応援してるのは自社製品と息子。そしてその幼馴染みで息子のガールフレンド(日本準拠)。

 

 それを尾首にも出さないのは工業の長の賜物。

 だがそう浮かれていられないのも事実。

 それは前日息子に言われたことが原因だった。

 

『今回、またどこかから介入。というよりテロリストが乱入してくる可能性もゼロではないから。母さんも気をつけてくれ』

 

 息子はこういうことに関しては決して冗談は言わない。

 現に学園祭で亡国機業(ファントム・タスク)が強襲している。

 

(ここまで手を出されていない。狙うとしたら最新鋭ISかつルーキーが揃うここ)

 

 もしもの時には自分の出番が来る可能性もある。

 

 アリアは結婚指輪とは別につけているティバイン・エンプレスの待機形態である指輪を見やった。

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「ふぅ」

 

 不安はある、がそれと同時に気分が今まで以上に高揚している。

 

 キャノンボール・ファスト。

 モンド・グロッソでも競技種目とされるこのジャンルで母はあの織斑千冬さえも抜き去って栄光を掴み取った。

 

 今その母親、元イギリス代表アリア・レーデルハイトが特別席で俺を見ている。

 

 母、ではなく越えるべき相手として。俺とスカイブルー・イーグルの躍動をみてもらう。

 

「疾風にぃぃぃ!! がぁぁぁんばれぇぇぇぇーーーー!!!!」

「うん?」

 

 今聞こえたな。

 

 何処だ? 右側から聞こえたけども。

 

 イーグル、楓の顔で顔認証よろしく。

 

『イーグル・アイ、セミアクティブ。楓・レーデルハイトの顔認証と一致する対象を検索。ヒットしました』

 

 ズームしてみるとこっちにブンブンも手を振っている楓の姿が。

 手を振り替えしてやると、楓は

 一瞬フリーズした後に隣の赤毛の女の子の手を握ってブンブン振りまくった。

 おいおいその子知り合いか? 赤の他人じゃないだろうな妹よ。

 

「楓さんは見つかったのですか?」

「うん」

『それでは皆さん、まもなく一年生専用機部門のレースがスタートします。選手は準備をお願いします』

 

 お、ついに始まるな。

 

「疾風」

「うん?」

「負けませんわよ」

「勿論、お前だけには負けないさ」

「望むところですわ」

「コラコラ二人の世界に入らない」

「「あらっ!?」」

 

 あれ、間違ってオープンに? 

 

「あ、わたくし間違ってオープンにしてしまいました」

「おぃぃ!」

 

 なんという凡ミスしてるのセシリアさん。

 そして気づかない俺も俺だよ。

 

 これがもし本当にプライベート・チャットしなきゃならない的な会話だったらどうするつもりなんだいお嬢。

 

「あたしにも目を向けてないと痛い目あうんだからね」

「ああ、教官も見ているからな。こちらも全力を越えさせてもらう」

「今までの僕と同じと思わない方がいいよ。今の僕に迷いはないからね!」

「むっ、シャルロットがシャルロットらしからぬ強気な発言をしているぞ」

「負けられねえな。ということだ、お互い悔いの残らないレースにしようぜ!」

 

 一夏の言葉で締め括られ、オープン・チャネルは終了した。

 

『選手諸君、準備はオーケー? よしオーケーだね。じゃあ始めましょう! 世界で一番エキサイトでクレイジーなレースを!』

 

 司会の言葉で幕が上がった。

 

 全員スタートに目を向け、自身の愛機に火を入れた。

 

 高速機動用ハイパーセンサー、オン。

 各システムオールグリーン。

 アクセル・フォーミュラとスカイブルー・イーグルの接続良好。

 

「さっ、こい!」

 

 満員の観客、画面の外の観客がかぶりつきで見るなか、シグナルランプが点灯した。

 

『3!』

 

 ラファールとレーゲンの増加スラスターが唸り声を上げる。

 

『2!!』

 

 白式、紅椿、甲龍のスラスターの音が研ぎ澄まされる。

 

『1!!!』

 

 イーグルとティアーズのパッケージが蒼の光を輝かせた。

 

『ゴォォォぅ!!!!』

 

 シグナルブルー! 

 

 白・紅・蒼・桃・橙・黒、そして空色が一斉にスタートラインをぶっちぎった。

 

 開始コンマ秒で視界が吹き飛び。

 開始1秒で鮮明化され。

 開始2秒で入り乱れ。

 開始3秒で次のコーナーが見えた。

 

 そして開始5秒で一夏以外の射撃兵装が俺に向いた。

 

 この中で一番得体の知れないのが俺、何をするかわからないのが俺。そして一番警戒する相手が俺。

 だから不確定要素は出来るだけ後ろに追いやる。

 偶然か組んでいたかわからないが、それがみんなの共通認識。

 

 流石にやる。ここで集中砲火を食らえば間違いなく一発は当たってバランスをくじく。出鼻を挫かれれば復帰は厳しい。

 追い付くことに役割が偏り、しばらくはろくに思いどおりにならないだろう。

 

 だけどね。

 

(俺がそれを予測してない訳ないっしょ!)

 

 皆が照準を向けるほんの少しまえにイーグルの身体に蒼雷が走った。

 全員が本能的に危機を感じると同時にスラスターに装備された増加バッテリーが光り、イーグルの全身から電撃の膜がぶち飛ばされた。

 

「ちっ!」

「くぅ!」

 

 スカイブルー・イーグルの全身から発せられた高濃度エレクトリック・マグネチック・パルス、通称EMPが全員のISに襲いかかった。

 

 紅椿とラファールは直前で攻撃から防御にシフト、白式と甲龍は急遽スラスター出力を上げたことでEMP圏外に逃げたことで乗り切った。

 ティアーズとレーゲンにも目立ったズレがないが、やや後方に下がってしまった。

 

 焼けついたEMPカートリッジをカスタムウィングからパージ。

 

 強烈な閃光と衝撃で照準補正と機体維持を揺るがされたISに各自機体を持ち直す為に動いた。

 

 そこに更に追い討ちをかける! 

 

 カーブ手前で背部ウェポンベイから大量のプラズマ・フロートマインがバラ撒かれ、後続にいた四機の目の前で高電圧球が幾重にも展開された。

 

「うおわぁっ!?」

「エグい!」

 

 カーブ地帯は特に機体制御がシビア。そこに大量のプラズマ球が転がるなんて相手からしたらたまったものではない。

 そのままダメージ覚悟で突っ込むか迂回するしかないという選択肢を高速機動下で迫られるのはマジでやられたくないパターンランキングに乗るぐらい厄介なものとなる。

 

「キャノンボール・ファスト専用パッケージの名は伊達ではないわ! ハッハー!!」

「やってくれる!」

 

 レースが1分にして直ぐ様魔境と化した専用機部門。

 前方の白式、甲龍が目の前に迫った。

 

「ハロー二人ともぉぉっ!!」

「うわっ! もう来た!」

「やべぇ! やっぱスイッチ入ってる!」

「当たり前だよなぁ!?」

 

 顔を引くつかせた二人にプラズマバルカンと両肩プラズマ機銃をプレゼント! 

 

「うわっ! こんのっ!」

『甲龍に空間圧確認』

「拡散!」

「ふっとべ!」

 

 こちらをノールックで背面拡散衝撃砲。

 よけることは出来ずボルテックⅡから出したプラズマシールドでノックしてくる衝撃を防いだ。

 お返しにチャージしたプラズマ弾を背部に撃ったが、残念躱される。

 

『ALERT』

「っと!」

 

 背後から3本、いや5本のレーザー。

 背後に広げたフィールド越しに受け止めた。

 

 この新型ビットのアルペジオ。一門かと思ったらビーム砲が二門もついている。

 普段より二回り三回り大きいビットは伊達ではない。

 

「復帰早いな!」

「あなたが何かしでかさない訳がない。警戒しないわけないでしょう!」

「そういうことだ」

 

 背後からレーザー、ビーム、砲弾、徹甲弾がプラズマ・フィールドを激しく揺さぶった。

 

「これしきで挫けると思ったか疾風!」

「少し見立てが甘いんじゃない?」

「なんとも!」

 

 どうやら先ず俺を落とすことを優先したらしい。

 回転式プラズマ機銃を後方に向けるがIS四機全員を相手取るには射撃密度が違いすぎた。

 このままプラズマで受け続けるのはエネルギー的にも状況的にも宜しくない。

 

「なら答えるのが男だよな!」

「なにかするき」

「と思ったら行動してるんだぜ!」

 

 ブースト方向を斜めに、ボルテックⅡを手に回転しながら後ろ四人に突っ込んだ。

 

「なぁっ!?」

「危ないっ!」

 

 ラファールのシールドとレーゲンの肩をかすったイーグルは体勢を建て直したが最下位に、そして全員の後ろについた。

 

「ハハハ! これは予想できたかセシリアぁ!!」

「出来るわけないでしょう!?」

「ほんと無茶苦茶だなお前は!」

「ほらほら前見なきゃ危ないぞ──龍がこっちを見てる」

「「!!」」

 

 前に意識を戻すも時既に遅し、元々俺を狙うために溜めていた甲龍・風の拡散衝撃砲が眼前に放たれた。

 衝撃砲で怯んだ面々の横っ面から打撃と射撃をばらまいて再び四人の前に出た。

 

 だがガクッとイーグルが揺れた。見るとイーグルの尾羽スラスターに見慣れたワイヤーブレードが引っ掛かっていた。

 

「ラウラかっ!」

「特訓の成果を出させてもらった!」

 

 てことは移動中ドンピシャAIC成功したのか! 

 直ぐに身をよじってワイヤーを外すがレーゲンの体勢を崩すには至れなかった。

 箒は展開装甲を一時的に全開にして遅れを取り戻し、セシリアとシャルロットも攻めの手を緩めず下克上を淡々と狙っている。

 

「おいおいこんだけ掻き乱しても脱落者なしかよ!」

 

 確実に全員がスキルアップしていることに喜びを感じるとともに危機感も感じていた。

 

 中盤組とは別のトップ二人も激しいデッドヒートを繰り広げていた。

 一夏は迂闊に後続に手を出さずに白式・雪羅の速度を活かしてとにかく前だけを向いて逃げきりの姿勢、そこで狙いを俺から一夏に変更した鈴が追いかける。

 

「一夏ぁ!」

「鈴か! 厄介だなバラける衝撃砲!」

「あんたも荷電粒子砲使ったら!?」

「使うときに使わせて貰うぜ!」

「エリクサー病にならないようにな一夏!」

「「ゲッ! 疾風!!」」

 

 フルスロットルでコーナーで差をつけた俺が一夏と鈴のケツについた。

 そして。

 

「うおっ!」

「んにゃっ!」

 

 俺を狙って撃ってきた四機の流れ弾が二人のISを掠めた。

 

「悪いな! 俺一人じゃ流石にもて余すからさ!」

「あんたってほんとロクなことしない!」

「鈴さん、ご心配なく」

「全員撃ち落とすだけだから!」

 

 最後尾のセシリアがアルペジオを射出。

 シャルロットが銃火器新調。

 スターライトMK-Ⅳとアルペジオの広範囲射撃、そしてシャルロットも持てる火力の全てを前方に向けた。

 

 レーザーと実弾の即席スペシャルタッグの弾幕射撃で前方のISは軒並み体勢を崩された。

 

 まだ一週目、まだあと二週あるというのにもうラストラップ並みの後先考えてないんじゃねえかという程の激戦。

 

 だが高速機動化ということで一発の被弾に相当神経を使う。

 これは全員がそれだけ余裕がないということと、それだけ皆のスキルが高いということに他ならない。

 学園祭の敗北が全員を強くした。その結果が今のキャノンボール・ファストだ。

 

 今ほど全方位に展開できるプラズマ・フィールドがありがたいと思ったことはない。だけど流石に限界がやばい!! 

 

 そして同じく全方位防御が出来る箒が展開装甲シールドでしのぐうちに瞬時にスラスターモードに変更。

 再び全身の展開装甲を咲かせた紅椿がどさくさでトップに躍り出た。

 

 もうすぐ二週目、いやまだ二週目に差し掛かるが、観客のボルテージは天井をぶち抜くほどの勢い。

 

 狂乱の熱気に包まれたバトルレース

 もっと、もっとこのレースを見せてくれと! いま観客の心は一つとなった。

 

 色取り取りのISが織り成す一つのストーリー。まだまだ見ごたえのある一つのレース! 

 

「行かせないぞ箒!」

「悪いが一夏、トップは譲らん!」

「全員撃ち抜きますわ!」

「今見せるときだよリヴァイヴ!」

「まだだ、まだこれからだ!!」

「こんちくしょぉぉぉ!!」

 

 白式の雪片弐型を紅椿の雨月が受け止め。

 セシリアはアルペジオを戻し、シャルロットが新たな銃器を呼び出し。

 レーゲンがワイヤーでスイングバイし、甲龍の胸部装甲が風を切り裂いた。

 

 目の前の光景に俺は心を奪われた。

 こんな楽しいこと、IS以外に出来やしない。

 

 いい、最高だ。

 

「お前ら最高だ!!」

 

 俺はアクセル・フォーミュラの奥の手に手を掛けた。

 出し惜しみなどしない! みんなの全力に答えるなら、こっちもフルスロットルを越える!! 

 

 限界など置き去りにした! 

 ただ今この瞬間を燃やし尽くす! 

 それが弾丸疾走(キャノンボール・ファスト)! 

 

 誰にも。

 誰にもこの祭典を止めることは出来ない。

 

 

 

 

 

 はずだった。

 

 

 

『未確認のIS反応検知』

「「!?」」

 

 ALERTと同時に空から複数の光が降り注いだ。

 

「なっ!?」

「箒!!」

 

 箒を狙ったレーザーを瞬時加速(イグニッション・ブースト)で割り込んだ一夏の霞衣が打ち消した。

 

 セシリアのレーザーではない、だが限りなく酷似したもの。

 突如出現した乱入者を睨み、俺とセシリアがその名を呼んだ。

 

「サイレント」

「ゼフィルス!!」

「フッ」

 

 7機のISを見下ろす襲撃者(サイレント・ゼフィルス)の操者は、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。

 

 




 文章に熱を込め過ぎて一瞬真っ白の灰になった、私です。

 書いててわかったけど。マドカの邪魔者と水さされ感やばい。
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