IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
ひたすら直上に上がっていく。
厚い雲を突き抜け、その先には何をも遮ることのない蒼い空と白い太陽。
そしてその先には暗くて深い黒い青の世界。
成層圏が広がっている。
「来た」
サイレント・ゼフィルスも上がってきている。もうすぐ雲からその姿を出すだろう。
必要以上に噛ました挑発が効いてくれたらしい。これで下を気にすることなく戦える。
『ALERT』
サイレント・ゼフィルスが雲から抜け出したと同時に撃ってきた。
数は2。
右に機体を向けて避ける。
真横を通るレーザー。そのうちの一本が直角で曲がった。
………先程の挑発だが。
半分ぐらい、わりと勢いで言葉を選んだ自覚がある。
数値上俺はセシリアより強い?
こんなの本気で言ってる訳がない。
たった2勝だけ勝ってて意気がる程俺は自分を強いだなんて思っていない。
勿論、街を盾にしたことを非難したのは本当だ。
それは決して許してはならない外道のそれだ。
民間人を盾にして相手の気を削ぐのは極めて合理的だよね、なんてことを言えるほど俺は甘さを捨てれたつもりはない。
俺がサイレント・ゼフィルスに必ず勝てるか。エムは俺より弱いのか。
そんなもん分かるわけない。
もしかしたらオータムなんかよりずっと強いのかもしれない。
それでも負けてやるつもりはない。
放った言葉は勢いでも。そこに込めた決意と覚悟は本物だ。
不意を突いた
示し会わせたようにレーザーの正面に向き、その勢いで振るったボルテックⅡでレーザーを斬り散らした。
細かい光の粒と化したレーザーを前にエムから笑みが消えた。
(こいつ
「おい。今のが本気なんて言わねえだろ」
「!」
サイレント・ゼフィルスと同じ高度まで下り、槍を突き出して言ってやった。
「舐めプしてると喰うぞ、羽虫」
「……言ってろ、雛鳥」
ーーー◇ーーー
「命中! 残り一機!」
「箒!」
「任せろ! ぜあぁぁっ!!」
最後に残ったワルキューレに紅椿が一閃。
両腕のダガーで受け止めたワルキューレだが。箒は接触の瞬間に空裂のビーム斬撃を撃ち、ダガーごとワルキューレを溶断した。
「………ふーーー、これで終わり、よね? 実は生きてたパターンで後ろから撃たれたくないわよ?」
「大丈夫だ、熱源は消えている」
スクラップと化したワルキューレの残骸がアリーナの至るところに点在している。
「ありがとう箒。エネルギー補給助かったよ」
「しかも新武装引っ提げてぶっとい光線まで出して。あんなのあるなら最初から出しなさいよ」
「いや、あれはついさっき使用できるようになって。私も初めて知ったんだ」
「なにそれ?」
「分からん。
「篠ノ之博士のオリジナル。色んな意味で規格外ですね」
IS学園で詳しく調べれば詳細が分かるだろう。少なくともこの場で箒が説明するには難易度が高すぎた。
「あれ? ラウラ何してるの?」
箒たちから離れてラウラは比較的壊れていないワルキューレを解体していた。
「これが何で動いてるか知りたくてな」
「遠隔操作じゃないの?」
「知りたいのは動力だ。ISでもないのにこの小型の体躯で飛行と低出力とはいえレーザーガンをあれだけ撃てた。となると………やはりか」
ワルキューレの装甲をひっぺがし、中から取り出したのは少し黒ずんだクリアブルーの物体だった。
「こいつらの動力は
「
「ISコアの材料ですよ鈴様」
菖蒲が言った通りこの水色の鉱石はISの心臓部であるコアの原材料と同じもの。
篠ノ之束はこれを素材にコアを作り出している。
「
「それでこいつらが動いていたと」
「ああ。だがこのサイズであれだけ動けるとはな」
「というと?」
「こいつは確かにエネルギーを生み出せるが。今の技術力では動力源として運用するには技術不足なんだ」
ISが生まれる前から存在していたこの鉱石の有用性を見いだした国々が様々な検証を行った。だが結果は散々たる有り様。エネルギーを抽出して使えたとしても電気を使ったほうが明らかに燃費が良く効率的という始末。
だからこそ同じ時結晶でISを動かせる破格なエネルギーを作り出した篠ノ之束に世界中の技術者は暗黙の敗北宣言を出すしかなかった。
「ちょっと待って、それってつまり」
「ああ」
敵は自分たちが思う以上の技術力を持ってるということになる。
専用機持ちが敵の技術力を目の当たりにするなか。各ISに白式から通信が入った。
『みんな、大丈夫か!?』
「一夏か。こちらは今戦闘が終わったところだ」
「箒が絢爛舞踏を使ってくれたんだ」
『良かった。こっちはセシリアをIS学園に運んだところだ』
「IS学園に? なにかあったの?」
『セシリアが怪我をした』
「なっ!?」
「大丈夫だ、ISの保護が機能してたし。命に別状はないってさ」
「良かった………」
全員がホッと胸を撫で下ろした。
「一夏様。疾風様もそこにいるのですか?」
『………疾風は今、サイレント・ゼフィルスと戦ってる』
「え!? もしかして一人で!?」
「あいつ、福音の時といい殿をする趣味でもあるわけ!?」
「そんなことより疾風のところに行かないと!」
『駄目だ』
通信に割って入ったのはIS学園にいる織斑先生だった。
『ISの市街地戦闘、飛行は原則として禁止されている。お前たちは動くな』
「そんな! 疾風様を見殺しにする気ですか!?」
『落ち着け徳川。現在そっちには更識を向かわしている。こちらから指示を来るまで、お前たちはアリーナ内で待機しろ。いいな?』
「……了解」
通信終了。
一同が静まりかえり。菖蒲は胸に手を置いて疾風の無事を祈った。
疾風を外に送り出したのは菖蒲だ。もし自分が送り出したせいで彼の命が脅かされる結果となったら………
「大丈夫だよ菖蒲さん」
「シャルロット様………」
「過去にも疾風は似たようなことがあったけど、その時もなんとかなったんだ」
「そうそう、あいつのことだからきっと大丈夫よ」
「そう、ですね」
皆は信じていた。
疾風・レーデルハイトという男が簡単に負ける男ではないということを。
ーーー◇ーーー
サイレント・ゼフィルスの攻撃は苛烈だった。
ビットとスター・ブレイカーから幾重にも放たれる数多のレーザー。そのうちの何本は
「どうした防戦一方じゃないか! 少しは楽しませて見せろ!」
「おーおー、嬉しそうだな。良かったね」
「まだそんな口を叩ける余裕があるか。だがいつまでもつかな!!」
度々来る避けきれないレーザーをプラズマ・フィールドとプラズマサーベルで払うが、全てを裁ききることは出来ず、二発ほどシールドを掠める。
こちらからも撃っては見るが、シールドビットで防がれ効果はない。
「ははっ! やはり先程弾いたのは紛れか! どうした! もっと足掻いてみせろ!」
「お前なんかキャラ変わってねえ?」
もっと冷徹で虫みたいなやつだと思っていたが。どうやらこっちが素らしい。
一身で受けてみたフレキシブルレーザーだが。一言で言うとエグい。
撃たれたレーザーはエムの好きなタイミングで曲げてくる。そして曲げられたレーザーのホーミング性能は簡単に振りほどくことが出来ないぐらいしつこい。
「安心しろ。あの女みたいに嬲ることはしない。直ぐに方をつけてやる」
「そのわりには仕留めきれてないじゃん。もう5分も立ってるけど」
「減らず口を、貴様だって同じだろう。悔しかったらお前も攻めてみたらどうだ?」
「じゃあそうする」
アクセル・フォーミュラと既存の物を含めた全スラスターを稼働し、
一瞬で生まれた爆発的な速度でサイレント・ゼフィルスの喉元に迫る。
「正面とは芸がないな!」
だがマドカは慌てずじっくりと狙いを定めてレーザーを撃った。
ビットとライフルの計7本のレーザーをしっかり見定めて躱すが、そのうちの3本が軌道を変えてイーグルへの直撃コースへ入った。
レーザーがプラズマ・フィールドの発生圏内の内側に入った。
バチチチン!!
「は?」
だが結果はどうか。
イーグルは機体を器用に捻り、曲げられたレーザーをボルテックⅡ、プラズマサーベル、脚部プラズマブレードで残らず打ち落とした。
エムは
なんてことはない。
エムが呆気に取られるのも束の間、ボルテックをリコールして両腕のプラズマサーベルでエムを切り裂く。
「グッ!」
後退するエム。だが俺はエムを追わず彼女の周りに停滞しているビットを一つ斬り飛ばした。
そのままスカイブルー・イーグル本体のスラスターを吹かし、もう一つのビットに接近。眼前に撃たれるレーザーをかすめ、そのまま蹴り上げた。
残りのビット数、4。
後ろに下がるサイレント・ゼフィルスに本体とは別のアサルト・フォーミュラのスラスターを別個で起動し接近する。
再度レーザーを撃つエム。もう一度直線からランダム曲射を撃つが今度は局所でプラズマフィールドで受け止め。
曲がらないレーザーには見向きもしない。
そうして何度かの攻防の末に、エムはついに確信してしまった。
「貴様、わかるのか!? どのレーザーが曲がるのかが!」
「ああ、アリーナと今のでじっくりと見定めさせてもらったよ」
サイレント・ゼフィルスがレーザーを曲げる時、レーザーのエネルギー総量が僅かながら揺れ、曲がった瞬間に本の少し出力が上がる。
本当に微弱な揺れで普通のISのハイパーセンサーでは察知出来ない。
だが俺のイーグルの目はそれを見抜ける。
三基目のビットをワイヤークローで掴み、プラズマを流し込んで爆発させた。
残りのビット、3。
「どうした、ビットが緩慢になってるぞ」
「調子に乗るなよ!」
「お前が言うか」
不意打ちが効果をなさないと判断したのかビット3基とスター・ブレイカーの射撃全てが
俺は最大出力でフレキシブルを引き離し、レーザーが追従する。
追加で放たれたレーザー、曲がるレーザーの数は総勢10本。
乱数軌道のレーザーが全方位から踊り狂った。
自在に曲がる無数レーザー。
実際目の当たりにすればそれがどれだけ厄介極まりないことがわかる。
だが問題ない。
言い換えればフレキシブルレーザーは異様に曲がる高性能なミサイルと変わらない。
充分な速度があれば振り切り。最終的に曲がるレーザーは俺の元に行き着く。
そして。福音の時と同じく、プラズマネットが有効だということ。
全方位のレーザーの囲いを突抜け、一定範囲に収まったレーザーをプラズマネットで絡めとり、出力が落ちたレーザーは消失した。
矢継ぎ早にアラート。
向いた先にはバーストモードで放たれたゼフィルスの砲撃。
エムは俺を倒すと公言していた。
だがエムははっきり言って慢心していた。
IS学園の生徒の中でも異彩を放つ疾風・レーデルハイトという存在を耳にしてもなお、過酷な鉄火場を経験した自分に劣る筈がないと。
だがそれは誤りだった。
だからこそエムは慢心を捨てた。
先程お遊びのようにセシリアを弄んでいたようにやっていれば、今度は自分がやられると認識したのだ。
故に完璧な射撃タイミング、弾速。避けられない一撃がスカイブルー・イーグルの首をとらえた。
「っ!」
顔面のシールドに直撃。
確実な手応えを感じたエムは先程の歪なものとは違う純粋な笑みを出した。
だが顔面をぶち抜いたと思った相手は衝撃を受け流して空中で宙返りし、なんてことない顔で直進した。
シールドが守ってくれるとはいえ緊迫した戦闘で顔面に弾、ましてやレーザーをくらったらベテランでも少しは怯む。
(恐れがないのかこいつは!?)
そんな気配をまったく感じさせない俺の顔に流石のエムも大きく狼狽えた。
確かにエムは慢心を捨てて全力で倒しにかかった。
だが遅すぎた。
今まで負け知らずのはずだったエムの乱れた意識が整うのを待つには時間が無さすぎたのだ。
そしてその狼狽えは高機動パッケージを持つ俺が近づくには充分だった。
「来るな!!」
「嫌だね」
振りかぶったボルテックⅡをバヨネットで跳ね返したが、俺の左手に光が集まりもう一つの槍であるブライトネスをコールした。
「まだ武装が!?」
単純に使う機会がなかっただけだが、結果オーライだ。
シールド越しの腹に六発の衝撃が走り、殺しきれなかった衝撃がエムの内臓を揺らした。
一瞬の意識の混濁で力なく降りたスター・ブレイカーのライフルを左手で掴み、右手でエムの左手を掴み上げた。
エムはゼフィルスのマニピュレーターの操縦桿を握る自分の手がカタカタと鳴っているのに気づいた。
(ふ、震えている? この私が? こんな生ぬるい温室育ちのルーキー相手に震えているのか? 目の前の男に恐怖してるとでも言うのか!?)
今まで
いつ如何なる時でも獲物を狩る捕食者の側にいたエムが初めて感じた、得体の知れない物への恐怖心抱いた。
自分が狩られる側という、この状況に。
「き、貴様! 離せ! 離せよ!!」
半ば狂乱状態へ陥ったエムは必死に拘束を逃れようと身をよじるためにガチャガチャと操縦桿を動かす。だが自分を掴むイーグルのマニピュレーターはピクリとも動かなかった
「俺はお前を許さない」
「!?」
イーグルに握られたスター・ブレイカーにヒビが入った
「セシリアを傷つけたお前を許さない」
手の中にあるライフルが軋み、銃身がへこんだ。
今まで見たことないぐらい疲弊した彼女。
あと一歩遅かったらセシリアが死んでいた。
あと一歩遅かったらエムはセシリアを殺していた。
痛め付けられたセシリア見た時、これ以上ない程の怒りの感情が沸き上がった。
今までも許せない敵がいた。
仲間を傷つけられたことも何回もあった。
だけどこれまでと違う。今までと違うベクトルの怒りの感情だった。
イギリスの空港でセシリアと離れるとき。強くなろうとした。それは何故か。
いつかISに乗れる日を信じてか。
自分を見下す女尊男卑主義を見返す為か。
その気持ちに嘘はないが。
それは飽くまで後付けだった。
俺があの時強くなろうと決意した、本当の理由。
それはセシリア・オルコットという女の子を守りたいと願ったから!
俺にとっての恩人を。
唯一無二の友人を。
苦楽を共にするライバルを
そして。俺が初めて好きになった女性を!
こいつは弄び、傷つけた!!
「だからお前は今ここで、俺が倒す!!」
俺はライフルを握っていた手に更に力を込め、そのままスター・ブレイカーの銃身を握りつぶした。
(負ける!………い、いま私は何を!?)
反射的に浮かんだ敗北のビジョンに戸惑うエム。そのビジョンを振り払うように声を荒げた。
「ふざけるなぁぁーー!!」
エムは使えなくなったライフルを捨てて距離を取る。
彼女を守るようにサイレント・ゼフィルスのビットが発砲、だがプラズマ・フィールドに防がれた。
「ボルテックⅡ、バーストモード!」
『ready』
穂先を展開。高濃度のプラズマがインパルスのバーストモード以上の出力を誇るプラズマブレードを形成する。
高機動パッケージによる出力粋計算。前パッケージであるソニック・チェイサーと白式・雪羅のデータを応用し、限りなく本物に近づけた二段瞬時加速《ダブル・イグニッション・ブースト》を発動。
エムも迎撃の構え。残ったビットによる
「アクセル・フォーミュラ、リンケージ!」
『ボルテックⅡとの同期完了』
「【
スカイブルー・イーグルとアクセル・フォーミュラのプラズマ発生機構スリットを全開放。
放出されたプラズマはバーストモードのボルテックⅡを気転に収束。青白いプラズマエネルギーはスカイブルー・イーグルを包み。スカイブルー・イーグルそのものを一本のプラズマの槍となる。
今の俺とイーグルが出せる最大火力だった。
「な、なにっ!?」
「うおおおおおぉぉぉぉーーっ!!」
プラズマの塊と化したイーグルは
フレキシブルレーザーとレーザー・ガトリングを全て弾き飛ばし。高性能爆薬を兼ね備えたシールド・ビット、エネルギー・アンブレラさえも無力化。サイレント・ゼフィルスのシールドと激突した。
「ああっ!!」
「フルブラスト!!」
イーグルを覆っていたプラズマエネルギーを全て前方に放出。
巨大なプラズマバンカーとしてサイレント・ゼフィルスに叩き付けた。
「ごはっ!」
「まだぁっ!」
ボルテックⅡを捨ててブライトネスをコール。ランス形状のブライトネスのシャフト部分のスリットを解放。
「堕ちろぉっ!!」
エムの顔面のシールドに突き刺し、装填カートリッジ六発分を一斉解放した。
「っ! かぁ………!」
ダメ押しの一撃に絶対防御発動。
元から入っていたサイレント・ゼフィルスのバイザーのヒビが広がり、右半分が砕け散った。
まだ奴のISは生きている。もうひと押し!
プラズマ・サーベルでサイレント・ゼフィルスのなけなしのシールドを削るために振りかぶった。
だが………
「え?」
バイザーが砕け、右半分があらわになったエムの顔を見て振り下ろす手が止まった。
その顔は、俺がよく知る人に瓜二つというほど似ていたからだ。
「織斑先生?」
「!?」
いや違う!
似てるけど本人に比べて少し幼い。
だが本当に似ていたのだ。
「お前、一体」
「そこまでよ、疾風・レーデルハイト」
「うわっ!」
下からエネルギー・フィールドを纏わせた金色のISがエムから俺を退ける。
「随分とボロボロにされたわねエム。撤退するわよ」
「まて、私はまだ負けては」
「少し眠りなさい」
「スコー、る………」
割って入った金色のISは気絶したエムを受け止めた。
「ゴールデン・ドーン。スコール・ミューゼルか」
「あら、私のこと知ってるのね。嬉しいわセカンドマン」
フルフェイスメットの奥で妖艶に笑うスコールを前に俺は冷や汗を流した。
こっちはエネルギーをほぼ使いきってチャージまで時間がかかる。
この状態でこいつを相手にするのか。
「安心なさい。やりあおうなんて思ってないから」
「なんだと?」
「本当はあなたを殺さなきゃいけないんだけど。エムをここまで追い詰めたご褒美。あと、セシリア・オルコットを傷つけたお詫びね」
「見逃すというのか?」
「ええ。その代わり私たちも見逃すこと。もう潮時だし、この子を抱えた状態で更識とやりあうのは面倒だもの」
センサー領域を拡大すると、後方からミステリアス・レイディが近づいて来るのがわかった。
スコールは俺に背を向けて撤退しようとした。
「ま、待て! そいつはなんだ!? なんでそいつは織斑先生、織斑千冬に似ている!?」
「あら、見ちゃったのね。残念ながら答えることは出来ないわ。でも………」
スコールは首だけをこちらに向けた。
その顔は何処か面白そうに見えた。
「その織斑千冬に聞いてみればわかるんじゃないかしら」
「な、なにを」
「フフッ。じゃあね」
スコールの言葉に戸惑う俺を置き去りにスコールは飛び去っていった。
「疾風くん!」
「会長」
入れ違いで追い付いた会長。
全速力で飛ばしてきたのだろう、額に汗が流れるその姿はいつも余裕を保つ会長のイメージと離れていた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「俺は大丈夫です。それより奴らは追わなくていいんですか」
「これ以上の追跡は危険だわ。悔しいけどここで終わり」
「そうですか」
下手に追って下を危険に晒すことは避けたいもんな。
「あっ、セシリアは! IS学園に行ったはずですけど」
「大丈夫よ。さっき織斑先生から連絡が来て、命に別状はないって」
「そうですか………良かったぁ」
安心すると一気に身体の力が抜けた。
PICがなかったらそのまま落ちるレベルで。
「アリーナ内のドローンも掃討済み。みんな良くやってくれたわ。特に疾風くんは大戦果ね」
「いえ」
結局サイレント・ゼフィルスを逃がしてしまった。
勝ったは勝ったが、どうにも後味が悪い。
「だーけーど。緊急事態とはいえあなた達は街中をISで飛び回った。重大な規則違反よ。後で取り調べがあるからそのつもりで」
「ええ、覚悟はしてますよ」
「………まあ、出来るだけ擁護はしてあげるわ。街の被害を防ぐために高所に上がって、海の上にまで持ってきてくれたんだものね」
海の上?
下を見てみると、確かに海の上だった。
戦闘で大幅に移動したんだな。気づかなかった。
「さて、私たちはこのままIS学園に戻りましょ。取り調べもあるし、アリーナの後片付けはあそこにいるメンバーで充分だわ」
「わかりました」
取り調べか、前科つかないといいな………
「あの、会長」
「なに?」
「………織斑先生って、ずっと学園に居たんですよね?」
「ええそうよ。それがどうかした?」
「いえ、なんでもないです」
エムのことを会長に話すか迷ったがやめた。
『その織斑千冬に聞いてみればわかるんじゃないかしら』
先程のスコールの言葉がリフレインする。
織斑先生は何を知ってるんだ。
なんでスコール・ミューゼルがそんなことを言えた?
一夏はこのことを知ってるのだろうか。
「ほら、ボーっとしてないで戻るわよ」
「あ、はい」
今はやめよう。
今日は一夏の誕生日だ。
もしかしたら俺はとんでもない核心に触れてしまってるのではないかと。
そう思ったからだ。
お待たせしました。
疾風VSエム、決着でございます。
最近コロナがまた爆発しはじめてますね。
そのせいでまだまだ離職者が後をたたないとか。苦しいですね。
皆さんも手洗いアルコール、マスクを忘れずに。