IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
「みんな持ったな。はい! せぇぇのっ!!」
「「一夏っ! お誕生日おめでとうっ!!!」」
俺の気合いの入った声を合図に無数のクラッカーと誕生日常套句が部屋に響き渡った。
「うわぷ。あ、ありがとうみんな」
ツンとする火薬の匂いとともに色とりどりの紙吹雪とテープが一斉に一夏に襲いかかった。
だがテープまみれになった一夏も満更でもない顔だ。
「ほら一夏! ケーキの蝋燭消しなさいよ!」
「おう。フーーー」
一夏がホールケーキの蝋燭が消すと口笛や歓声でまた織斑家が揺れた。
そして待ってましたとばかりに各々が料理やらケーキやらを取り分けていく。
「しかし、この人数は何事だ?」
「ハハッ、賑やかだなオイ」
時刻は夕方五時。場所は一夏の家のリビング。
そこそこ広いリビングには無数の人。
いつもの専用機メンバー6人。
生徒会メンバーの3人、そして何故か+αな新聞部エースの黛薫子。
一夏の友達の弾とその妹である五反田蘭、そして初対面の御手洗数馬。
さらには俺の友人である村上と柴田、更に。
「疾風兄!!」
「うおっ楓! 飲み物持ってるんだから突っ込むな!」
「むふー」
俺の胸に頬擦りしてる妹の楓。
そこに俺と一夏を加えた総勢18名という大所帯。
広いはずのリビングはパンク寸前だった。
「今日の疾風兄凄くカッコよかった。IS乗った疾風兄は映像でしか見たことなかったから嬉しい!」
「ありがとう楓」
学園祭は呼べなかったからな。喜んでもらえてなによりだ。
「しかし。やっぱり睨んだ通り美少女揃いだなぁ。この全員が疾風兄を狙ってるのね!」
「残念ながら人気度では一夏の方が上だぞ」
「え? 揃って疾風兄の価値を見いだせないなんて、みんなモグリだね」
こら、初っぱなから失礼なこというんじゃありません。
「んー、それでも一応警告という名の威嚇をしなければならないな。疾風兄の妹として」
「それより楓。その服似合ってるな」
「でしょ!! 疾風兄を骨抜きにするために気合い入れまくったんだから!!」
「メイクも楓に合ってるよ」
「もう! 疾風兄大好き!!」
楓の得意技。感情の
まあ何時もより可愛いのは本当なので許しておくれ。
「あ、そうだ。蘭ちゃん! 蘭ちゃんどこー!?」
俺から離れた楓は弾の妹である蘭ちゃんを探しに行った。
「疾風の妹。凄いブラコンだな」
「まあな。そろそろ兄離れしてほしい」
「来るかなぁ」
………来てくれ。
「ほーら蘭ちゃん! 早く渡さないと!」
「え、でも。流石に」
「いい? 恋する乙女はいつでも真っ向勝負なんだから! ほらっ!」
「うわわっ」
楓に押し出されて蘭ちゃんが一夏の前に出てきた。
「おお、蘭。今日はどうだった? といっても色々大変だったけど」
「い、いえ! とても楽しかったです! それに、カッコよかったです!」
「そうか、良かった」
一夏が笑いかけると蘭ちゃんは赤い頬を更に赤くした。
成る程、この子もか。
「あ、あの私ケーキ焼いてきました! その、レーデルハイトさんのお友達が持ってきたケーキには見劣りすると思いますけど」
「そんなことないぞ。食べてもいいか?」
「是非っ!!」
蘭ちゃんが差し出したケーキに一夏はフォークで切り取る。
ココアスポンジに生クリームとチョコ。リップトリックのケーキと比べたら見劣りすると蘭ちゃんが言ってたが。込められた想いは確実に勝っていることだろう。
「うん! ちょうど良い甘さで美味しい」
「本当ですか!?」
「俺はこのケーキ好きだな」
「す、好き!?」
「ああ。蘭って料理上手だよな。きっと良いお嫁さんになるぞ」
「お、お嫁さん!?」
わーお。二段階攻めの口説き落とし(無自覚)。
蘭ちゃんも赤かった頬が紅に変わり、キャパシティオーバーを引き起こしていた。
まあこんな良い雰囲気を快く思わない物も居るという。
「一夏! あたしの作った誕生日飯を食べなさい!!」
「おうっ!? ら、ラーメンか? てか、お前ほんといきなりだな」
「なに言ってんの。料理は出来立てが一番! 冷めたら台無しよ! ほら食べなさい!」
蘭ちゃんのケーキを一度テーブルに置き、ズイッと渡されたラーメンに箸を通す一夏。
黄金色の油が浮かぶスープに浮かぶ縮れ麺。そこにネギやメンマ、チャーシューと言った引き立て役にして主役陣が一夏の目から食欲を誘った。
「いただきます」
ずずーと勢いよくすすられたラーメン。
その味は見事に一夏の舌を唸らせた。
「どう?」
「美味い。海鮮系の醤油スープに麺がしっかり絡んでる。さっぱりしてるけど薄いわけじゃない。それに麺にコシが会って歯応えがいい」
「麺もスープもチャーシューも私の手作りだからね」
「チャーシューも? あむ、んー、柔らかくて美味い! 脂身も甘いな!」
「そうでしょうそうでしょう!」
一夏の渾身の食レポに鈴はすっかりご満悦だ。
正直横から見てる俺も思わず腹が減る程の代物で、思わず鈴に視線を送った。
「なに、疾風食べたいの?」
「い、いやそんなことないぞ。これは一夏への誕生日プレゼントなんだから俺が手を出す訳には」
「はい、ミニラーメン」
「いただきます! ウマーい!」
即落ち二コマである。
しかもチャーシューもちゃんとついている。
あー、美味いぞぉぉ!
「あんたには世話になったしね。お礼よお礼」
「ありがとう。ほんと美味いよこれ」
「だな。鈴、また料理の腕上げたか?」
「まぁね。目指せ一夏以上の料理スキルよ。それで一夏………私も良いお嫁さんになれそう?」
「ああ、きっとなれるさ」
「そっかそっか………よっしゃ」
一夏から最大限の評価を頂いた鈴は思わず後ろを向いてガッツポーズ。
照れを抑えた良いアプローチだ。そっちも成長してる凰鈴音。
「………鈴さん」
「あれぇ? 蘭居たの? てっきり夢の国にトリップして帰ってこないと思ったわ。まだいていいのよ。一夏は私のラーメンに夢中だから」
「相変わらず失礼な物言いですね鈴さん。少しは胸育ちました? 私に勝てるぐらいに」
「そういうあんたも背伸びた? アタシに勝てるぐらいにぃ」
竜虎相うつ。
お互い譲れない物があるため火花をぶつけ合う二人。
一瞬にして険悪ムードとなった二人に一夏は困惑する。
「いつもああなの?」
「ああ、会えば必ずああなる。なんであの二人は仲良くできないんだ?」
「原因はお前だぞ一夏」
「え、なんで? ケーキもラーメンも残さず食うぞ?」
「おくたばりなさい織斑一夏」
「丁寧語!?」
深く切り込まず浅くなで切りにした俺は鈴に渡されたミニラーメンのスープを飲み干した。
ご馳走さまでした。
ラーメンどんぶりをさげに行こうとしたらシャルロットが新しい皿を出していた。
「あ、一夏。お誕生日おめでとう」
「ありがとうシャル。皿出してくれるのか?」
「料理の種類多いからね。あとケーキ用とかも」
今回の料理は箒とシャルロットを先頭に菖蒲と会長、そして楓までもが補佐に入った。
ホールケーキのみならずリップトリックの多種多様のスイーツを持ってきた最大功労者である柴田も忘れてはならない。
とにかく大人数なので皿が必要になるのだ。
追加で学生寮から皿を追加で持ってきても足りないぐらいにだ。
「はい一夏。誕生日プレゼント」
「おっ。この前言ってた時計か?」
「うん。機能も盛りだくさんな最新モデルのホワイトゴールドカラー。一夏に一番似合いそうなものを選んできたよ」
「ありがとうシャル。でもこれ高かったんじゃないか?」
「ラウラが前に言ってたでしょ。こういうのは値段が重要じゃないんだって。一夏が使ってくれたら僕も嬉しいな」
「わかった。さっそくつけてみて良いか?」
「もちろん!」
一夏が箱から時計を出すなか。俺はプライベートチャネルでシャルロットにコソッと話しかけた。
『シャルロット・デュノアさんや』
『なんでしょう疾風・レーデルハイトくん』
『値段は重要じゃないって言ってたけど。あれガチでヤバイ値段のやつじゃね?』
一夏が貰ったホワイトゴールドの腕時計。
気温、湿度、天気、最新ニュースまで見れる超高性能腕時計で。横のボタンを押すと小型空中投影ディスプレイが表示される。
電池は最新式の太陽光電池・体温発電機能電池。更に驚くことに、最新型の小型空気電池ときた。
お値段は、とても学生が出せる代物ではないと言っておこう。
『僕も迷ったんだけどね。一目見たときにこれだ! ってなって。そのあとどの時計を見てもあの時計が頭にチラついて。それでね』
『うわーお』
『勿論あれは代表候補生で稼いだお金だから合法だよ』
『別にそっち方面を考えてないから安心しなさい』
『うん。あっ、勿論一夏には黙っててよね』
『了解』
値段は重要ではないんだ。
込められた想いが重要なのだ。
「つけてみたけど、どうだ?」
「うん! やっぱり似合ってるよ一夏!」
「ありがとう」
「そういえばラウラが後で庭に来てくれって言ってたよ」
「ラウラが? ちょっと行ってみるか」
「おう、行ってら」
流石にご指名となればついていく訳には行くまい。
そこら辺の料理でもつまんでおくかね。
ーーー◇ーーー
「ふぅ」
「お疲れ様です織斑先生」
「ああ」
「終わったんですか?」
「重要な書類はな。まだまだ片付けなければならないものは山積みだが」
セシリア・オルコット、疾風・レーデルハイト、織斑一夏が行った市街地飛行の書類を筆頭に様々な事後処理タスクが山のように積まれている。
警備責任者も楽ではない。
「そっちはどうだ。例の人型ドローンの解析」
「サンプルが多かったのである程度は解析できました」
千冬は渡された電子端末に目を通す。
最後の項目を閲覧し、険しい目付きが更に鋭くなった。
「BT兵器だったか」
「はい。組み込まれた
BTクリスタルとはBT兵器やブルー・ティアーズシステムに使われている脳波送受信媒体だ。
そのBTクリスタルの材料に
といっても。これは
それが人型ドローン改め、人型BT兵器『ワルキューレ』があれ程の戦闘能力を発揮できたカラクリだった。
「
「そして
例えば、ブルー・ティアーズの親元の………
「織斑先生、織斑くんの誕生日パーティーに行かなくて良いんですか? もう始まってる頃ですよね?」
書類を物色していた真耶に千冬は現実に引き戻された。
「いや、まだ片付けなければならない書類が」
「残りは織斑先生の許可がなくても出来る書類ばかりです。後は残った人員で対処します。弟さんのプレゼントも買っているようですし」
「なっ」
何故それを知っているのか、ということを千冬は既で飲み込んだ。
周りを見てみると、他の先生がなんとも生暖かい視線を千冬に向けている。
側にいる山田真耶に至っては満面の笑みを浮かべている。
「行ってみてはいかがですか?」
「………」
ーーー◇ーーー
「おかえり一夏。ラウラはなにくれたの?」
「ナイフだ」
「ナイフ?」
見てみるとそれは刃渡り20cmを越える。バタフライナイフみたいなチャチな代物とはまったく違う、明らかに軍用なナイフだった。
「ラウラが言うには。切断力に長け、耐久性も高く。自分が実戦で使っていた物だって」
「通販番組かな?」
なんだ? ラウラはこれで一夏にナイフ戦でも仕込むつもりなのか?
「おーい一夏! 誕生日プレゼントだ受けとれ!」
「俺と弾で選んだんだ」
「ありがとう弾! 数馬!」
弾と数馬から貰った袋を開ける一夏。
するとラウラが俺の横によってきた。
「んで、一夏にナイフを送った意味は?」
「刃物を贈る。それは悪運を断ち切り、未来を切り開くという意味がある」
「成る程。確かに一夏向けだ」
「後は………戦士が己の武器を渡すという意味はだな………」
顔を赤くして黙り込むラウラを見て俺はあのナイフに込められた真の意味を理解した。
「ちゃんと伝えないとわかんないぞきっと」
「伝えようとしたのだ。ただ………」
「ただ?」
「照れが先に来て。私が話を断ち切った」
フラグもスパスパ切れる代物らしい。
「おおっ、駄菓子詰め合わせだ!」
「へへっ。実は老舗の駄菓子屋を数馬が見つけてな」
「金をかき集めて買いまくったんだ」
「おおっ。見たことないお菓子まである」
あっちはあっちで楽しそうだ。
うん? 弾がこっちに近づいてきて。
「なあ疾風。虚さんどこ? 一夏知らないらしくてさ」
「え? さっきまで居たんだけど。あ、あそこにいるぞ」
「うおっ、虚さん………どうしよう」
「行けっ」
「だ、だけど」
お目当ての人物を見て足がすくむ弾。
虚先輩も弾に気づいて顔を赤らめた。
双方の事情を知っていると焦れったい現状。だが当人からしたらそれどころではないのだろう。
ならばやることは一つ。
「弾。必勝のアドバイスを教えてやる」
「ひ、必勝? なんだそれは」
「迷わず進め。以上」
「それだけ!?」
「あともう一つある」
「なんだよ」
「つべこべいわず中庭に行け。ほらゴー!」
「お、おう!」
弾をむりくり中庭に放り込んだ。
さて次は。
「虚さん中庭に行ってください。そしてメアドゲットしてください。弾からより虚さんから聞き出せば弾の方も自分に気があるのではと思うはずです、そしてそこから順当に関係を構築するのですレッツゴー」
「ちょ、ちょっと待って。私別に彼に気があるわけでは」
「つべこべ言ってるとあの人がスタンドアップしますよ」
サッと俺と虚さんが会長のほうを向くと。会長は『恋慕』と書かれた扇子を広げて目を細めた。
「………」
「………」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
虚さんも中庭に突入。
ミッションコンプリート。
「なあ疾風、弾の奴どうしたんだ?」
「春が来たんだよ」
「今は秋だぞ?」
「凍えるがいい織斑」
「お前のその脈絡のない罵倒ってほんとなんなんだ?」
知らんぷり。
「あの、レーデルハイトくん」
「疾風で良いよ御手洗さん」
「じゃあ俺も数馬で。弾に春ってほんとか?」
「マッチング率100%レベル」
「マジか。弾もやるなぁ」
「まったくだぜ」
「中々いい雰囲気じゃないか?」
綺羅斗参戦。おまけに現在彼女ありの柴田も参戦。
「これは師匠として見守るしかあるまい、行くぞ」
「不躾だぞ村上。こっそり行こう」
「弾にも春が来たかぁ………」
男子の友情は固い。
三人は友の恋路を見守りに行った。
ついでにのほほんさんもついていった。
「楽しんでおりますか、一夏様」
「菖蒲さん。お陰さまでな」
「それは良かったです。これ、私からのプレゼントです」
IS学園の着物制服とは違う着物を着こんだ菖蒲が取り出したのは長方形の黒い箱だった。
「知り合いの名工に作らせて貰った包丁でございます。お料理が得意と聞きましたので」
「ありがとう菖蒲さん。丁度新しい包丁を買おうと思ったんだ。大切に使わせて頂きます」
「それは良かった。代わりと言ってはなんですが、今度料理を教えて貰っても宜しいでしょうか。まだまだ花嫁修行が必要ですので」
菖蒲がこちらに微笑んだと思うと。俺の横にピトッとくっついてきた。
「菖蒲?」
「まだまだ女を磨かなければなりませんもの。ね、疾風様?」
「あの、あや」
「ちょっと菖蒲さん!?」
大きな声を出して割って入ったのはセシリアだった。
「あらセシリア様。珍しく強引な」
「そ、それは申し訳ないですわ。ではなくて、あなた疾風に断られたのではないのですか?」
「ええ。ですが決して疾風様を諦めた訳ではありませんよ?」
「ほぁっ!?」
予想外の返答に何処から出したかわからん声を上げるセシリア。
という俺もあんぐりと口を開けたままフリーズ。
「一度断られたぐらいで疾風様への想いは冷めませんよ。彼が別の人を好きになろうと、付き合っていないならまだ望みはありますし」
「いやあの菖蒲さん?」
「これからも宜しくお願いしますね。疾風様」
「お、おう」
満面の笑みを浮かべる菖蒲に俺はなす術もなく答えるしかなかった。
徳川菖蒲。ただでは転ばない女。
ほんと強かというかなんというか。
「というわけでセシリア様」
「な、なんです」
「フフッ」
今度は妖しく笑ったあとセシリアの耳元に近づいた。
「ぼやぼやしてると私が取ってしまいますよ?」
「なぁっ!」
「では失礼します。一夏様、お誕生日おめでとうございます」
ペコリと礼をして菖蒲は鈴の元に歩いていった。
「なあ疾風。いったい何の話なんだ?」
「聞くな」
俺も何がなんだかわからないんだから。
ていうかセシリアの反応に既視感を覚えた件について。一夏ラバーズ的な。
いやまてまて。そっち方面で行ったらセシリアもそういうことになるじゃん。
やめろ、自惚れてしまう。
「あ、そうですわ。一夏さん、お誕生日おめでとうございます。こちらプレゼントです」
「ありがとうセシリア。おお、ティーセットだ。しかもなんか、高そうだ」
「お目が高いですわね。これはイギリス王室御用達のメーカー『エインズレイ』の高級セットです。わたくしが普段愛飲してる一等級茶葉もお付けしておりますわ」
「お、おう。これはまた凄いものを。虚さんに教わりながら淹れさせてもらうよ」
セシリアが渡した茶葉は俺も飲んだことがあるが本当に美味しい代物だ。
こちらも相当な値打ちもの。
「セシリア。怪我してるのに来てくれてありがとうな」
「いえ。一夏さんはわたくしの恩人なのですから。出ないわけにはいきませんわ」
あのあと織斑先生と医師に頼みに頼んだセシリアは特別に外出許可を取らせてもらった。
包帯で固定されてる腕があまりにも痛々しく見えてかなわない。
「ほんとうに大丈夫なのかセシリア」
「もう、そんな辛気臭い顔をなさらないで下さいな」
「うん。まあ、また痛くなったらちゃんと言うんだぞ?」
「ええ」
活性化再生治療の痛みは痛み止めでなんとか対応している。
本人は大丈夫と笑ってるが、やはり心配になるわけで。
「ドーン!」
「ぐえふっ!」
唐突に背後から衝撃が!
「なぁに? 祝いの席でそんなしんみりするんじゃないの」
「あの会長。結構いいの入ったんですけど………」
「傷心してる時にアオハルな空気を立て続けに感じたからやつあたりしたの。ごめーんね」
この会長。謝る気ゼロ!
「ん、会長。立て続けってなんすか」
「あら私の勘違い? なんか二人の距離がガッツリ縮まったような気がしたのだけれど?」
「ふぁっ!?」
「ちょっと生徒会長なにをイタタタ」
「おい大丈夫か!?」
「大丈夫です。ナノマシンの定期的な痛みが来ただけですので」
あービックリした。
前までここまで大袈裟に反応しなかったのに。
………変わったなぁ俺。
「あー、これ以上からかったら馬に蹴られるわね。なので虚ちゃんのとこに行こーっと」
からかうことはやめないのですね。
「ほ、ほら疾風。あなたも一夏さんに用意してるのでしょう?」
「ああそうだった。一夏!」
「おう」
「受けとれ! これが俺が用意した渾身のバースデープレゼントだ!」
すっかり蚊帳の外にされてしまった今回の主役に貢ぎ物を。
バススロットから取り出したるわ菖蒲が出した物より小さめな黒い箱だった。
「開けてもいいか?」
「どうぞ!」
「えーと………おおっ! こ、これはっ!?」
開けた瞬間一夏は思わず大きな声を出してしまった。
その声に皆が振り返るなか。箱の中にあったのは。
「ちっちゃい雪片弐型!?」
「その通り! 一夏の雪片弐型をイーグル・アイのデータを筆頭に設計して作り上げたこの世で一つしかないミニ雪片弐型だ!!」
「おぉ………」
小さいとはいえ精巧に作られた雪片弐型。普段持っている一夏でも感嘆してしまうぐらいの細部の作りに思わずホォッと息を漏らした。
「凄い細かいぞ。ほんとに雪片弐型だ」
「驚くにはまだ早い。刀身を持ったままスライドすると?」
「うおっ! 展開装甲状態!?」
「しかも付属のクリアパーツをつけると」
「零落白夜状態になるのか!」
しかも通常ビームソードのクリアブルーと零落白夜のクリアゴールドバージョンの二種類が付属。
「ん? だけどサイズの割りに重い?」
「材質はIS装甲と同じ素材だ。制作するときに出る破片を使わせてもらった」
「す、すげぇ」
「台座パーツもあるから机の上にでも置いてくれ」
「ありがとう疾風!」
女子目線とは違う男子目線アプローチは一夏のハートはガッチリ掴んだ。
合間合間で苦労して作ったかいがあったぜ。
「す、凄いわね。一夏が玩具を貰った子供みたいよ」
「男の子ならではのプレゼントだね」
「それならナイフも良い勝負ではないか?」
そして想定外過ぎるプレゼントに回りの女子も思わず嫉妬を通り越して感心してしまった。
「オホン」
そんななか割って入ったのは箒だった。
咳払いをして頬を赤くしながらも、真っ直ぐ一夏の目を見た。
「一夏、受けとれ!」
「箒、これは?」
手には大きめの袋。中には包み紙に包まれた何かが覗いていた。
「開けてみろ」
「わかった。おっ、着物だ!」
「実家に良い布があって仕立てて貰った。その、この前夏祭りに行ったときに着物を持ってないと聞いてな」
「触ったらわかるけど本当に良いものじゃないか? サンキュー箒!」
「う、うむ」
渡された着物は落ち着いた色合いで部屋着にも使えそうだった。
一夏は着物の着方の心得があるので、帰ったら早速着替えてみようと思った。
「実はその………その柄は私が持ってるものと対になっていてだな………」
「ん? なんか言ったか?」
「いやなんでも! ………ええい! 着ろ!」
「え、ここで?」
「違う! 正月の初詣にだ! その着物を来て篠ノ之神社の初詣に来い! いいな!?」
「お、おうわかった。約束する」
おおっ。箒の奴照れ隠しを勢いで乗り切った。
さっきの鈴といい、幼馴染み組は間違いなくいろんな意味で成長している。
だが流石に限界が来たのか、箒はそっぽを向いた真っ赤な顔でポニーテールのリボンをいじった。
「そのリボン、俺があげた奴だよな? ずっとつけてくれていて嬉しいぞ」
「べ、別に毎日同じものをつけている訳ではないぞ!?」
「わかってるって。週二日ぐらいだろ?」
「よ、よく見ているな」
「箒のことだからな」
「ぬっ!? そ、そうか………私のことだからか」
「お、おう」
自分を見てくれていることが嬉しかったのか。箒は恥ずかしいやら嬉しいやらで更に顔を真っ赤に染めた。
そんな普段とは違うしおらしさで恥ずかしがる箒を前に調子を崩される一夏も不思議とドキドキするのだった。
が、そんな二人の様子を快く思わない人物が三人。
「「「ジーー」」」
「はっ!?」
「わっ。どうしたみんな?」
「なんか良い雰囲気じゃない? あたしの時より」
「みんながいる場でそういうの良くないと思う」
「浮気者め。お前と同じナイフで裂いてやろうか」
鋭き眼光が六つ、そしてそれを囲むギャラリー+「修羅場キタコレ」とカメラを押す黛新聞部エース。
最近周りの空気にある程度察知出来るようになった一夏はコマンド「三十六計逃げるに如かず」を発動した。
「あっ! そろそろ飲み物が足りないんじゃないか? 俺買ってくるぜ! 行くぞ疾風!」
「俺も!? ちょっまっ!」
俺を巻き添えにして。
ーーー◇ーーー
「わりぃな疾風、巻き込んじまって」
「いやまぁ。良いけどさ」
あの場で一人で抜け出すことは至難の技だっただろう。
たまたま近くにいた俺を盾にしたって感じだ。
「一人で外に出ていくなんて無鉄砲なこと考えなかったから許してやる」
「連れ出した後にそういえばって感じで気づいたからな」
「70点だなぁ」
「意外に高い」
玄関で靴を履いてる時、一夏に「まだ
あの一言がなかったら着いていこうなんて思わなかったかも。
なので。
『会長』
『大丈夫よ、二人の周りに不振人物はいないわ』
後方から会長が予備対策として周辺警戒をしてくれている。
ISを持っているとはいえ二人だけで大丈夫かと思ったところに会長から言ってくれたのだ。
ついでにみんなが飲みたい物をリストアップしてくれた。ありがたい。
近くの自販機から人数分の缶ジュースやペットボトルを買い込むと、かなりの量になった。
これは一人では厳しかったかも。
「つかさ。お前箒のこと良く見てるよな。リボンの柄なんてわからんだろ」
「え、普通にわかるだろ?」
「いやわからんよ」
なに当たり前のことを的なことを言ってるのかと言う顔をする一夏。
なんだろうな。ISに関して言ってる時の俺ってこんな顔してんのかな。
「お前箒に気があるの?」
「なにそれ」
「恋愛的な意味で好きなのかって話」
「そんなんじゃねえよ」
「逆にお前好きな奴とか、この子と将来的に恋愛的なお付き合いしたいなとかいないの?」
「いない」
間髪入れずに答える一夏。嘘ではなく本心なのだろう。一夏ラバーズの努力もまだまだ一夏に届いてないと見える。
「そっか」
「ああ」
「良かった」
「何が?」
「お前がセシリアのこと気になってるとか言わなくて」
「え?」
何を言ってるのかわからない。って顔をしてるのは見なくてもわかった。
「俺はセシリアが好きだ」
「え、えっ?」
「勿論恋愛的な意味でな」
なので言ってやった。
案の定一夏は状況を飲み込めず止まってしまった。
「ほんとに?」
「ほんと」
「なんで俺にそんなこと言うんだ?」
「お前が万が一セシリアを好きにならないとは限らないからな。だってセシリアは綺麗だし、普通なら周りの男はほっとかないだろ」
「別に俺はセシリアのことは友達としか見てないぞ?」
「わかってる。でもこう言っておけば牽制になるかなって」
我ながら小ズルいことを言ってる自覚はある。
他の男なら言わないが、だが相手は一夏だ。
俺にはないルックスを持ち、様々な女の視線を奪う男。
そしてこんなみみっちいことを考える俺より強い心を持ち、そして気取らない男。
もし一夏がセシリアに好意を持つ、または逆のパターンがあるとしたら。
そんなこと考えたくもない。
間違いなく強敵になるから。
セシリアの内情が不明瞭な以上。
というより不安なのだ。
それほど織斑一夏は男の俺から見てもカッコいい奴なんだから。
「わりぃ。変な話した。このことはくれぐれも内緒にな」
「わかってるよ」
「じゃあ戻るか」
街灯だけが照らす薄暗い道を冷えた飲み物を抱えて歩いた。
今更ながら余計なことを言ったなと反省する俺に、一夏は声をかけた。
「疾風」
「なに?」
「俺は応援するぞ。結構お似合いだと思うし」
「そうか? ありがとう」
「おう」
………杞憂だったかなぁ。
そう思いながら俺たち二人は今だに賑やかなパーティー会場に戻るのだった。
はい。ということで。
第六章【
長かったです。ほんとに。セシリアの
さて。みなさん思ったこともあるでしょう。
あれ?原作みたいにマドカが襲撃してこなかったなと。
第六章は終わりですが。このあとここに書ききれなかったオマケページを書こうと思います。
お楽しみに。