IS スカイブルー・ティアーズ   作:ブレイブ(オルコッ党所属)

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第91話【インタビュー】

 

 出会い頭に「あんた好きじゃない」発言されて前途多難過ぎる男。

 どうも、何もかも手に入れてるらしい疾風・レーデルハイトです。

 

 ………………ぐぅの音も出ないな。

 

 こっちは大企業の万全な態勢での潤沢なバックアップがあり。

 更識さんは企業に道半ばで放り投げられ、そして自分でやると引き取った。

 

 んーーーーーーーー。

 

 どうすれば良いの? 

 最初から難易度ハード、いや難易度ルナティックってもんじゃなくね? 

 

 どうしたもんかなマジで。

 

「あっ」

「っ」

 

 と考え事しながら歩いてると通路上で更識妹とエンカウント。

 

「………」

「あ、ちょっと待って!」

 

 考えるより先に足と口が動いた。

 

「待って更識さん!」

「名前で、呼ばないで」

「じゃあ………」

 

 って下の名前も駄目なんだった。

 じゃあなんて呼べば止まる? 

 そこの少女! いや流石にとんちんかん過ぎるだろ。

 

 えーっとえーっと………あっ。

 

「まってくれかんちゃん!!」

「っ!!」

 

 止まった更識さんは振り替えるなりこっちをギロっと睨んだ。

 

「誰から、聞いたの。その呼び方」

「布仏さん」

「………次、そう呼んだら。許さない」

「悪かったよ。気を付ける」

 

 許さない、と来たか。親しくない奴に呼ばれたらそうなるよな。

 分かってて言ったんだけど。

 

 とにかく止まってくれたし。更識さんの意識もこっちに向いたから結果オーライ。

 

「じゃあこれからあんたのことなんて呼べば良い? 名字名前あだ名が駄目ならいよいよあんたのこと『会長の妹さん』って呼ぶことになる」

「それだけは、やめて。名前の方が、マシ」

「オーケー」

 

 それでも名字を呼ばせたくないとは。これは相当だな………。

 

「一つ聞いて良いかな。俺と組みたくないのは俺がレーデルハイト工業から支援を受けてるということでいいのか?」

「だったら、なに」

「なら俺がレーデルハイト工業と契約をしてなかったら組んでくれたの?」

「ありもしないことを言うのは、愚か」

 

 違いないな。

 

「だけど、簪さん。タッグマッチのペアが俺と君な以上。このまま期限が攻めれば自動的にペアが決まるんだぞ?」

 

 今回の趣旨の関係上。ペアが決まらない時はランダムで決められることになっている。

 つまり。

 

「つまり俺と簪さんしかいない以上自動的に俺と簪さんはペアになる」

「なら、なおさら誘う必要は、ない。ほっといて」

「それじゃあ意味ないんだよ」

「どうして」

「どうしてもだ」

 

 あっ、そろそろ時間が。

 

「じゃあまた今度。考えといてくれよ」

「あっ………」

 

 ちょっと話しすぎたかな。

 急がないと。

 

 でも今回は少し進展したんじゃないかな。

 と、思いたい。

 

「………………なんなの、あの人………」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「遅い!!」

「まだ5分前だから許してやれよ」

「いや悪い悪い」

 

 正門前には既に一夏と箒が待機していた。

 

「たるんでるぞ疾風! 寝起きだからといってボサっとするな!」

「いやお前の気合いが入りすぎなんだよ」

「さっさと行くぞ! 時間は有限なんだ」

 

 男2人を置いてスタスタと行く箒に一夏はポカーンとした口を空けていた。

 

「なんか、箒のやる気凄くね?」

「流石箒だな。嫌なインタビューでも一度はやると決めたらやる。それが箒の良いとこだよな」

 

 いや、完全に副産物目当て………だが間違ってもいないからツッコミ辛い。

 

「なにをしてる! 置いてくぞ!!」

「今いく!」

 

 先陣をきる箒に連れられてモノレールから地下鉄に乗り換えて最寄り駅で降りた。

 

 そういえばこの三人で学園の外に出るのは初めてだな。

 といっても誰かと外に出たのはセシリアぐらいだったけど。

 

 IS学園はほとんど揃ってるからわざわざ外に行く必要ないし、あと手続きがあるから若干億劫なんだよな。

 

 それにしても。

 

「………」

 

 なんかやる気があるってより。なんか拗ねてないか箒のやつ。

 最初は普通だったが、モノレール降りてからなんかムスッとしてる。

 歩く速度もなんか早いし。俺と一夏もついていくのに少し苦労してる。

 

「おーい」

「………」

「ちょっと待てよ箒」

「なんだ一夏」

「少しゆっくり歩こうぜ。そんな急いでも出版社は逃げねえって」

「ふん。お前たちが軟弱なだけだろう。情けない」

 

 いや、結構競歩的な速度でしたよ箒さん。

 急いで箒の横につき、一夏に聞こえない声で箒に話しかけた。

 

「なあ箒」

「なんだ」

「俺、邪魔かな。まだ時間あるからトイレ行って時間ずらそうか?」

「ひ、必要ない! 一緒にいろ!」

「でもなんか怒ってるだろ。2人っきりになれないからじゃないのか?」

「ち、違う! 疾風は悪くない。そうじゃなくてだな………」

 

 俺じゃないということは一夏か。

 あいつまたデリカシーないこと言ったんじゃないか? 

 今の俺が言うなって奴だけど。

 

 と思ったらひょっこりと一夏が顔を出す。

 

「なあ箒」

「な、なんだ!?」

「その服見たことないな。新しく買ったのか?」

「あ、いや。これは。鷹月と買い物行った時に買ったんだ」

 

 一夏は当たり障りのない服だが、箒はとても力の入った服装をしている。

 黒のセミロングスカートに白ブラウスに赤いパーカーコート。

 箒らしさを出しながらとても女の子らしい格好をしている。

 

 現に待ち行く男どもも通りすがる度に箒をチラ見している。

 

 俺? 俺は安定のパーカーとジーンズです。

 

「凄い似合ってるぞ。胸元のフリルも可愛いし」

「そ、そうか! 実は思いきって買ってみたんだが。私には可愛すぎてちょっと着るのをためらってな」

「そんなことねえって。いやー、昔は服に可愛らしさなどいらん! って言ってたのに。ここ最近一気に女の子っぽくなったよなぁ」

「ふ、ふん。別にお前に褒められてもどうも思わんが。一応礼は言っておこう!」

 

 と、そっぽを向きつつ顔面筋肉崩壊中の篠ノ之箒。

 成る程。下ろし立ての服を褒めてくれなかったら拗ねてたのね。

 

「とにかく待ち合わせまでまだあるんだからゆっくり行こうぜ。急いで転んだら元も子もないだろ?」

「あ、ああ。すまない一夏」

 

 箒の歩調がゆっくり戻るとともに横一列で歩く二人。

 

「い、一夏。寒くないか?」

「そういえば少し冷えるな」

「なら、そのえと………寒いなら………モゴモゴ」

「ん?」

「寒いなら! 手を繋ぐべきではないか!?」

 

 バッと勢いよく出された手とは対照的に箒は真っ赤になった顔を俯かせる。

 

「そうだな。ん」

「あ、あぅ」

 

 なんの照れを見せる間もなく箒の手をとる一夏と自分とは違う手からの熱にフリーズする箒。

 周りからしたら初々しいカップルそのままだった。

 

「一夏。お前の服も………かっこいいぞ」

「ん? なんか言ったか?」

「いやいや! なんでもな………」

「一夏の服もカッコいいんだってさ」

「なっ! 疾風おまえ!」

 

 横やり刺してすまんな箒。

 

 別に突発性難聴コントに業を煮やした訳でも。

 相も変わらずヘタレる箒を見て我慢出来なくなった訳でも。

 目の前で青春繰り広げられてジェラった訳でもないから安心してくれ。

 

「そうなのか? ありがとう箒」

「え、ふぁっあ。うわー!!」

「ほ、箒ーー!?」

 

(箒にとっては)極上の一夏スマイルに遂に箒もキャパオーバーし。一夏の手を振り払って爆走した。

 

 少し発破(?)をかけるだけでこれとは。これでは一夏のことばかり悪く言えないな箒。

 

 つーか。

 

「次曲がるとこ見事に通り過ぎたなアイツ」

「箒! 行きすぎだ! 戻れーー!!」

 

 

 

 ーーー◇ーーー

 

 

 

「広いな」

「ああ」

 

 受付を通って待たされた場所は個室ではなく開放的な空間だった。

 丸テーブルに広めの円上ソファ。

 周りには観葉植物がところかしこに置かれ、窓ガラスは壁一面タイプとなっていて明るさには事欠かない。

 

 スタッフの休憩スペースなのだろうか? 

 だがしっかりと人払いはされている。

 

「どうもー。みんな揃ってるわね」

「はい」

「私はインフィニット・ストライプスの副編集長をやっている黛渚子よ。今日は宜しくね」

「疾風・レーデルハイトです。宜しくお願い致します!」

「ど、どうも織斑一夏です」

「篠ノ之箒です」

 

 黛さんの印象は。黛先輩をそのまま大人にしたような感じ。

 見たままの出来るキャリアウーマン感が服装と雰囲気から出ている。

 格好いい女性という感じ。

 

「早速だけど。インタビューの方に移ってもいいかしら?」

「はい」

 

 黛さんの胸元から取り出されたのは、毎度ご存知ボイスレコーダー。

 いつもお世話になっております。

 

「それじゃ始めに男子二人に質問。女子校に入学した感想は?」

「いきなりそれですか」

「だって気になるじゃない。読者アンケートでもその質問で持ち越しだもの。先ずは織斑くんね」

 

 なんと俗世的な。ほとんど男子の意見だろ。

 さあなんて答える一夏。

 

「えっと。使えるトイレが少ないです」

「プフッ!」

「な、なんだよ疾風」

「いやー、うん流石だわお前」

 

 もう予想100%を攻めてきてる。

 

 黛さんも思わずツボる始末だ。

 

「アハハハハ! 薫子、妹の言う通りね」

「何がです?」

「異性に興味のないハーレムキングだってこと」

「な、何ですかそれ。ハーレムって」

「ハーレムを知らんのか一夏。ハーレムというのは女の子に囲まれて他人から見て羨ましい状況のことを言うんだ」

「いやそれは知ってるって」

「「なんだと!?」」

「なんで箒まで驚くんだよ!」

 

 驚いた。ハーレムという言葉の意味を知ってるのか織斑一夏は(棒)

 

「あ、そうだ黛さん。因みにハーレムキングというのは間違いです。無自覚ハーレム朴念仁大魔王に訂正しといてください」

「おいなんだその酷いあだ名は!」

「異議なし!」

「箒! そんな力強く肯定するな!」

「わかったわ。訂正しとくわね」

「悪ノリしないでください!」

「アハハ。ごめんごめん」

 

 黛のお姉さん。黛先輩と会長を足して割ったような人だな。

 絡みやすく、面白みがあるところとか。

 

「じゃあ次はレーデルハイトくんね。自分以外の生徒はみんな女子。少しはドキドキした?」

「そうですねぇ」

 

 黛さん。というよりこの質問の意図は恐らく「女の園に入ってどんな感じなんだ!?」ということだろう。

 それを踏まえて答えてみることにしよう。

 

「確かにドキドキしましたね。ときめきではなくて心配のほう」

「心配?」

「はい。今のご時世って男性への風当たりが厳しいとこあるじゃないですか。IS学園は自分にとって憧れの場でしたが。それでも一抹の不安はありましたね。でも、実際クラスの人たちは思ったよりフレンドリーで、早い段階で馴染めたと思います」

「ほお、つまりレーデルハイトくんもハーレムを満喫したと?」

「そんなことありませんよ。さっきも行った通り不用意なことをすればいつ袋叩きにされてもおかしくない針のむしろ的な心持ちでしたし。読者が思い描くような楽な場所ではありませんでしたよ。ハーレムなんて考える暇さえありませんでしたね」

 

 まあ実際はハーレム云々よりIS! IS動かせるヤッター!! な側面が強かったからというのもあるけども。

 

「ふーむ。なんとも現実的な意見ね」

「すいません面白みなくて」

「ううん。リアリティーのある意見は貴重だわ。ありがとうね」

「いえ。でも楽しくやってますよ。IS学園の女子ってノリ良いですし。変に気遣わなくても大丈夫なとこもあるので」

 

 〆にフォローを忘れずに。

 よし。密かに練習していたインタビューのイメトレが機能してるぞ。

 

「さて次は篠ノ之さん。お姉さんについて話してもらえる?」

「っ!!」

 

 グッと尻が浮くところをすんででこらえた箒。

 事前にこういうこと聞かれるかも知れないぞって言っとかなかったらそのまま立ち上がるところだった。

 

「お姉さんの事はどう思ってるのかな? 今でも連絡は取ってるの?」

 

 思わず言葉を詰まらせる箒。

 押し黙る箒を急かすことなく根気よく出るであろう言葉に耳を傾ける黛さんと、心配そうに箒を見る一夏。

 

 箒はしばし沈黙を通したあとゆっくりと深呼吸をした。

 

「ISが出る前は、普通に慕っていました。でもISが世に出て、家族が離れ離れになって、何処に行っても篠ノ之束の妹って言われ続けて。段々姉のことをどう思ってるのかすら分からなくなって」

「分からないことは、怖い?」

「怖い………のでしょうか。それもわからないんです。でも、嫌っているわけでは、ないです。紅椿をくれたことには感謝していますし。あの人の、姉なりの優しさだったのだと、受け止めるようにしています」

 

 メディア向けとかではなく箒の紛れもない本心なのだろう。

 箒は取り繕うことなく自分の思ったことを言える真面目な奴だから。

 

「紅椿を貰った時はどうだった? 他とは違う第四世代の最新鋭機。心踊ったんじゃない?」

「そうですね。ええ、受け取った時は心の底から嬉しかったです。周りの皆に追い付けると思って………親しい人はみんな代表候補生で、専用機持ちでしたので」

「今年の学園での専用機持ちの比率高いそうね」

「はい。私は専用機を持っていないから置いていかれると思って、怖くなりました。今思うと、なんて馬鹿馬鹿しいことを考えていたのかって思いますけど」

 

 チラッと俺を見る箒。

 あの時は本気で怒ったなぁ。平手も打ってしまったし。

 

 でも腹を割って話したおかげで。専用機などなくても一夏や皆との繋がりは切れることはないということを再認識出来た。

 

「紅椿は私が持つには強すぎる力です。でも手放してはいけません。それは力を持つ者の責任ですから。この力に振り回されないように、私は皆と共に日々精進していこうと思っています」

「………うん。素敵なコメントありがとう。ちょっとジーンと来ちゃったな」

「いえ、そんな」

 

 俺も少しだけジンと来た。

 人は失敗する生き物だが、大事なのはそこから何を得るか。

 俺も一夏も箒も。あの時と比べると大なり小なり変わったよなぁ。

 

「じゃあ次の質問。三人とも晴れて代表候補生になったわけだけど。いきなり言われてびっくりしたんじゃない?」

「ええ。いきなり決まるもんなんだなって」

「私は一応仮ですが。一夏と同じです」

「俺は、なるべくしてなったなって感じです」

 

 遅かれ早かれこうなることはわかっていたし。

 一夏が、現れてから。

 俺がISを動かした時も。

 箒が第四世代ISの紅椿を受領したときにも。

 各国の重鎮が三人の処遇、というより所有権について言い争い。

 相当長い駄弁りの果てに結局日本のIS国際委員会、もといIS学園の預かりとなった。

 というより決め手はIS学園らしいしね。

 

 世界からIS学園の運営と場所を丸投げされた日本は見事それをネタに俺らを手に入れたというわけだ。

 これには某ヤクザA国も苦虫を噛み潰した。ハハッ、ザマァ。

 

「まあ本音を言うなら。自分の力で代表候補生になりたかったですね」

「ふーん。その場合何処の代表候補生になるつもりだったの?」

「ここでなに言っても炎上すると思うのでノーコメントでお願いします」

 

 ここでイギリスとか言っても英国騒ぐし。

 日本と言ったら日本政府調子乗りそうだし。

 

「織斑くんと篠ノ之さんは代表候補生になる気はあったの?」

「そういうのはなんというか。しがらみ的なものを感じてしまっていて。そういうのは軒並み断ってました。正直うんざりしてたと言うか」

「私も紅椿を乗りこなすのに必死でしたし。そういう勧誘も多かったですが全部断りました。生まれ故郷である日本は好きなので、日本以外にならなかったのは正直ホッとしています」

「でもなったからには全力で頑張ろうと思います」

「私もです」

 

 役割を押し付けられた、と言えばそれまでだが。それでもやるからには全力でってのはこいつららしい。

 

「オーケー。じゃあ次の質問だけど、三人の中だと誰が一番強いのかしら?」

「「疾風です」」

「あら即答の上に息ピッタリ。だそうだけど?」

「いや、まあ。数値上では今のところリードしてはいます」

 

 とりあえず濁しておこう。

 下手な謙遜は返って逆効果だというのは学んだけど。

 

「なに言ってんだよ疾風。最近ラウラと同率かそれ以上まで行ってるじゃないか」

「あれは単純に相性が良いだけだし」

「自信を持て疾風。お前は強い」

「待って、頼むからそんなドストレートに褒めないで?」

 

 ガチで恥ずいから。

 

「と、とにかく。俺はまだヒヨッコのヒヨッコです。自分が強いなんて言うのは国家代表にでもなってからにします」

「フフッ。レーデルハイトくんも案外可愛いところあるのね。じゃあ織斑くんと篠ノ之さんだとどっちが強いのかしら?」

「箒です」

「一夏です」

「「なっ」」

 

 お互いに相手の名前を言い合って顔を見合わせた。

 今度も息ピッタリです。

 仲良いなお前ら。

 

「ちょっと待て箒。お前最近絢爛舞踏のコツ掴んで正に八面六臂の大立ち回りでお前の動き捉えるの本当に大変なんだぞ!」

「お前こそ最近ますます零落白夜のキレが良くなってるではないか。少しでも隙を見せたらいつの間にか斬りに来るし。昨日の練習の時は肝を冷やしたぞ!」

「それを言うなら箒も!」

「なら一夏も!」

 

 まずいですねぇ。このままでは現在録音中のボイスレコーダーに二人の痴話喧嘩が延々と残されるという(本人たちにとって)黒歴史案件となってしまう。

 

「よしここはお前たちの二強ということで手を打たないか」

「なんでそうなる!」

 

 説得失敗であります。

 ここはおとなしく引き下がって静観するとしよう。

 お茶美味いなぁ。

 

「二人はとても仲が良いのね。切磋琢磨するライバル同士ってところかな?」

「え? あー、まあそんなところです」

「なんだその煮え切らない返事は」

「なんか少し恥ずかしいというか。いや、お前とライバルというのが恥ずかしい訳じゃないからな!?」

「分かっている(まったく、少し驚いてしまったではないか)」

 

 一瞬「えっ」という顔をした箒は直ぐにホッと息を漏らす。

 

 そこからは質問しては答えてを繰り返して順調にインタビューが続いた。

 

「織斑くんってヒーローみたいって言われない?」

「そんなことないですよ。それにヒーローって呼ばれるのは、なんかむず痒いというか」

「じゃあどんなのが良いの?」

「………一兵卒」

「どういうチョイスなんだそれ」

 

 ラウラか? ドイツ軍人の影響か? 

 なんかたまに階級ごっこするよなお前ら。

 

「それでは、戦場の心得をどうぞ!」

「な、仲間は俺が守る!!」

「イエス! かっこいいわね男子!」

「日進月歩。日々精進し、たゆまず前に進むことです」

「うんうん。日々の努力は決して裏切らないわ。ファイト!」

「相手を良く見る、です。考えた作戦が上手く決まるとほんと気持ちいいんですよ」

「聞いたわよ。レーデルハイトくんの作戦のおかげで大立ち回りを演じたって」

「恐縮です」

 

 あぶねぇ。『相手の嫌がることを全力でやる!』って言うとこだった。

 メディア的にアウトよアウト。

 それぐらいは流石にわかるよ俺も。

 

 そこ、なんかホッとした顔してんじゃないよ。

 

 そしてインタビューも終盤に差し掛かって来た頃。また俺に手番が回ってきた。

 

「じゃあ次はレーデルハイトくんに質問ね」

「はい」

「レーデルハイトくんはレーデルハイト工業のテストパイロットって立場でもあるのよね? やっぱり大企業の後ろ楯というのは心強いのかしら?」

「それは」

 

 答えようとして少し言葉が詰まった。

 それはあの会長に似た少女の言葉が頭に引っ掛かったから。

 

『私は貴方のこと、好きじゃない』

『何もかも手に入れてる、貴方なんかと、組みたくない』

 

 このインタビューが掲載されるのはいつなのかわからないが………

 

「確かに心強いです。日本に構えていて、IS学園からでもコンタクトが取れる位置にあるので。支援をダイレクトに受けれるのはありがたいです。自分の為に色々融通を聞かせてくれたり。自分の専用機であるスカイブルー・イーグルを見繕ってくれたりと。本当に頭が上がりません」

「そうね。ほんの少しズルいって思えるぐらい便利よね」

「そうですね。確かに他より有利な面はあると思います」

 

 ゲームで言うなら他より一歩リードしたバフを常時かけられてるようなものだ。

 ズルい。そう、確かにズルいと言っても良いだろう。

 

「ですが。俺はそれをズルとも卑怯とも取るつもりはありません」

「支援を十全に受けれない専用機乗りが居たとしても?」

「たとえ他とは違って生まれた時から備わった立場だとしても。なにかしら因果で男性IS操縦者になって特別視されたとしても。この世界に降り立った以上俺は1人のIS乗りです。レーデルハイト工業の支援は俺の武器。それを周りの目を気にして使わずに腐らせるなんて。宝の持ち腐れも良いところでしょう」

「レーデルハイト工業に頼ることは甘えではなく一つの手段ということかしら」

「はい。ですがその期待と責務に答えなければならないですし。大企業の看板を一身に背負ってますから。実を言うと責任感もプレッシャーも結構かかってるんです。要するに便利なだけじゃないんですよね」

 

 だけどまあ。

 

「いま言ったのは全部自分の立場から見てです。もし俺が第三者の立場から自分を見たら『うわーなんだあれ良いなぁ。羨ましいなぁ畜生ー』って愚痴ってたでしょうね」

「あら正直なのね」

「周りがそう言う理由も分かるんです。俺もISを動かせない時はISを動かせる人たちを見てそんな気持ちになったこともありましたしね」

「そっか。深いコメントをありがとう、レーデルハイトくん」

「いえいえそんな」

 

 言うほど深くはないだろうし。

 結局そのまんまのことしか話せなかったし。

 

「ところで。聞いた話によるとレーデルハイトくんはISが凄く好きなんだとか」

「三度の飯より好きです」

「1日動かせないとおかしくなります」

「語らせたら最後です」

「オーケー。このままだとインタビューページがIS談義で埋まるわね。次行きましょう」

「「懸命な判断です」」

「ハモるなお前ら」

 

 その後は今回のインタビューについてのコメントで〆となった。

 

「はい。インタビュー終了! 三人ともありがとね!」

 

 インタビューは無事に終了。

 長かった、と思う。普段より言葉を選んだからか少し精神的疲労が。

 だがこれはまだ優しい方。行く行くはもっと張り積めたインタビューもあると思うし。

 

「そういえば織斑くんとレーデルハイトくんは生徒会に所属してるわけだけど。楯無ちゃん、イカすでしょ?」

「いや大変ですよ。いつもからかってきて気が休まらないですし。なんていうか、いつもあっちのペースに飲まれちゃって」

「楯無ちゃんから主導権奪うのは難しいわよね」

「でもISの指導は凄く助かってます。最近は箒も一緒に教えてくれて。なっ?」

「ああ、分類の違う第四世代でもちゃんと指導してくれて」

「俺も短期間ですが指導してくれました。彼女の指導はほんと的確で助かりました」

 

 ほんとあの時の指導がなければ今の俺の戦闘スタイルは確立できなかった。

 異種多人数戦も戦えなかっただろうな。

 

「そういえば楯無ちゃんって言ってましたが。会長とはお知り合いなんです?」

「たまーに家に来ることあって。そっからもう意気投合しちゃってね。彼女と話してるとインスピレーションが沸いてくるのよ」

「ほうほう」

 

 波長が合うとそういうのもあるんだな。

 ISの対人練習をすると新しい発想が生まれることがあるのと同じなのかな、

 

「楯無ちゃんから聞いたんだけど。結構無茶振りかましてるらしいじゃない?」

「そうなんですよ。お陰でISの特訓だけでも厳しいのに部活の貸し出し要員に駆り出されて」

「貸し出し要員ね。薫子が新聞部に来てくれないのよぉって嘆いてたわよ」

「それに関してはくじ引きの結果なのでどうしようもないというか」

「あーくじ引きかぁ。薫子ってくじに関しては絶望的にツキがないのよねぇ。貯めに貯めまくった商店街の福引券全部ティッシュに溶かした時は慟哭してたわね」

「慟哭って………。どんだけまわしたんですか」

「30連だったかしら」

 

 うわっキツ。それは慟哭しちゃいますわ。

 

「あっ、ヤバいもうこんな時間。じゃあこれから写真撮影するから地下のスタジオ行きましょ。更衣室があるからそこで着替えてからメイクして、そこから撮影ね」

「えっ、着替えるんですか?」

「うん。スポンサーの服を着せないと私の首が飛ぶのよ」

 

 うわっ。これが縦社会という奴なのか。

 

「因みに俺たち三人のうち誰かがかけてたら」

「考えたくもないわね」

 

 大人って。大変だなぁ。

 

 しかし服かぁ。

 セシリアと買い物する前に服関連に触れるとは。

 

 ………あ、またセシリアのこと考えてしまった。

 

「どうした疾風。眉間なんか抑えて」

「いや、自分の行いに懺悔してるの」

「なんだそりゃ」

 

 なんだろうね本当に。

 

「それじゃあ行きましょうか」

「はい」

 

 とりあえず。奇抜なファッションじゃないことを祈るとしよう。

 なんていらん心配をしながら黛さんの後についていった。

 

 

 

 

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