真・女神転生 クロス   作:ダークボーイ

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PART37 MOVEMENT TO RUIN

 

「ガアアアアァァ!」

「グオオオォォ!」

 

 喰奴の咆哮が戦場に響き渡り、その度に彼らの前にいた悪魔が血飛沫を上げる。

 貫かれ、切り裂かれた悪魔に容赦なく喰奴の牙が突き刺さり、その肉体が貪られていった。

 

「……すさまじいな」

「確かに。安定性に問題があるが、戦力としてはこれほど頼りになる存在も無い」

 

 凄惨な喰奴の戦いを見たデモニカ姿の機動班メンバーがぽつりと呟いたのを、間近にいた南条が答える。

 

「あまり距離を取らせないほうがいいね。彼女の歌が聞こえなくなったら危ないし」

「先程から通信は送ってるのだが、返答があるような無いような………」

「大丈夫です。みんな暴走はしてません」

「アレでか………」

 

 ペルソナを発動させながらの尚也の提案に、通信班のメンバーが首を傾げる。

 そこへ、一際重層なデモニカをまとったセラの言葉に、デモニカを着た誰かが半ば呆れるように呟いた。

 デモニカの余剰パーツにプロテクターを追加、専用の通信・拡声ユニットを装備したセラが、エンブリオンの仲間達から目を離さず、時たま歌声を響かせていく。

 

「潜入班からの連絡は?」

「まだ無い。妙だな、そろそろ定時連絡が入る予定なんだが………」

「隠密行動中か、それとも…」

「待て、感有り! だが、これはジャミングされてる!?」

 

 通信班メンバーが予想外の事態に、通信機器を操作して何とか通信を拾おうとする。

 

「電波妨害!? そこまでの装備があったのか!」

「でも、風花ちゃんはペルソナ感応でも通信できたはず! それまで妨害されてるって事は………」

「全員に連絡! 緊急事態発生!」

 

 南条が驚くが、マキが別の可能性を思い出し、尚也は即座に緊急事態と判断。

 用意されていた信号弾が打ち上げられ、全員にその事が知らされる。

 

『イエローシグナル、何が起きた?』

「潜入班に異常が発生した! 今現状を確認してる!」

『まさか、作戦が洩れていたのか!』

「それはありえない! 前にも増して情報封鎖は厳重だったはず!」

 

 ゲイルとロアルドからの通信が入る中、通信班のメンバーが答える中、なんとか潜入班との回線が繋がる。

 

『こ…ら山岸……こえますか。こちら山岸、聞こえますか!』

「聞こえてる! 何があった!」

『地下で神取 鷹久という人に会いました! 何かすごい装置を設置してます! 天野さん達はそのまま神取と交戦中! 私達は脱出途中なんですが…』

 

 風花の必死な声の向こうに、銃声や爆音が響いてくる。

 

『現在、悪魔達の抵抗にあって戦闘中です!』

『来るなら来いホ!』『でも出来ればあんまり来なくていいホ!』

「本当に神取がいたのか!」

『天野さんもエリーさんもそう呼んでました。あんなとんでもない力を持ったペルソナ使い初めてです!』

 

 神取の名を聞いた尚也が通信機を奪い取るようにして聞くが、返答は完全な肯定だった。

 

「脱出は可能か? 難しいならこちらから救援部隊を出す!」

『天田君とコロちゃんが頑張ってます! 高尾先生が脱出用の手があるから時間を稼いでくれって言ってました!』『オレ達もいるホ!』

 

 尚也から次に通信機を奪い取るようにして聞いてきた南条に、風花はなんとか答える。

 

「まずいな……まさか神取がここにいるなんて………」

「救援部隊は必要かもしれん。潜入班の脱出まで時間を稼ぐ必要もある」

「業魔殿に連絡する。サポートが必要になる可能性も高い」

 

 状況の悪化としか言いようの無い状態に、尚也と南条が素早く対策を考慮していき、通信班は業魔殿へと緊急事態のコールを入れる。

 

「どうする、上から人員を回してもらうか?」

「いや、これ以上市街地警備の人員は減らしたくない。ここは彼らに任せて、オレ達で行くべきか………」

「シジマを脅かす者め!」

 

 南条と尚也が対策を協議している所へ、どこからきたのか堕天使 ベリスが馬上から三つ又の矛を突き出してくる。

 突き出された矛先を南条が手にした刀で弾き、即座に尚也が剣を抜き放ってベリスを斬り捨てる。

 

「がはっ……!」

「どうやら、ここも安全とは言い切れなみたいだ………」

「稲葉! 上杉! 敵が洩れてきているぞ!」

「無茶言うな!」「エンブリオンの連中、ハッスルし過ぎで出すぎてるぜ!」

 

 ペルソナを駆使してシジマの軍勢を阻んでいたマークとブラウンだったが、彼らの言う通り、喰奴達は奮戦しながらかなり戦線を進め、結果その隙間から洩れた悪魔達がこちらへと向かってきていた。

 

「エンブリオン! 前に出過ぎだ! 戦線を後退させろ!」

『分かっているが、敵の反撃が厳しい。どうやら誘われたらしい』

『やべえぜブラザー! 増援が更に出てきてる!』

「どうやら、敵の策にはまったのはこちらか………」

「攻撃は続行、こちらも前進して前衛と合流しよう」

「陣地をどうする気だ? こいつを一式動かすには骨だが………」

「アメン・ラー!」『集雷撃!』

「ヤマオカ!」「神等去出八百万撃!」

 

 尚也の作戦に通信班メンバーが疑問を呈するが、返答は二人そろってのペルソナ発動だった。

 繰り出された雷撃魔法と無数の拳が、こちらに近寄ってきていた悪魔をまとめて吹き飛ばし、クレーターを穿つ。

 

「よし、あそこまで前進、これを繰り返してけば」

「……アンタらのリーダー、大人しそうに見えて結構無茶苦茶だな」

「あははは………」

 

 観測器具や通信設備を持つのを手伝いながらペルソナ使い達が率先してクレーターへと移動、セラを護衛しながら続くデモニカ姿のメンバー達が漏らした言葉に、マキは苦笑しながら殿を勤める。

 

「まずいな、さらに喰奴の人達が孤立化しつつある」

「相当できる指揮官がいるな………恐らく氷川という男当人だろう。短期間に喰奴の特性を完全に見極めてこの作戦を立てたと見える」

 

 自分達の犠牲を無視して、喰奴一人一人に攻撃を密集させる事によって分散、孤立させていく敵の作戦に、尚也と南条も焦りを覚え始める。

 

「向こうだって無限に戦闘員がいる訳じゃないだろう。攻撃の隙を突いて撤退させたらどうだ?」

「それが出来れば、アレ?」

 

 通信班と観測班のメンバーが状況を確認していた時、ふと機器にノイズが走る。

 

「あれ、何か妙な干渉が………」

「え………」

 

 そこでセラがある事を思い出し、上空を見上げる。

 そこに太陽の代わりに浮かぶカグツチは、煌々と満ちた煌天となっていた。

 

「いけない! みんなすぐに戻って! このままだと暴走する!」

「何だと!?」

「そうだった! あれは月齢と同じ効果があるんだった!」

 

 自分達のミスにペルソナ使い達も気付いた時、喰奴の何人かの挙動が変わり始める。

 

「う、ガアアアアアァ!」

 

 最初にヒートが突如として咆哮を始め、周辺にいる悪魔達を無差別に切り裂き、貫き、食い千切り始める。

 

「くっ……は……うあああぁ!」

 

 次はロアルドがいきなり変身を解くが、右腕だけは喰奴のまま、戦闘を続行している。

 

「おい、あれ暴走してないか!?」

「こんな時に!」

「セラちゃん!」

「やってみます」

 

 あからさまに暴走し始めた喰奴達に向かって、セラが歌を響かせていく。

 それが効いたのか、ロアルドは落ち着きを取り戻し始め、再度喰奴へと変身して戦い始めるが、ヒートは勝手に前へと進んでいく。

 

「戻って! そのままじゃ危ない!」

「聞こえてないんじゃ!? もっと前に…」

『こノままデいイ』

 

 尚也とマキが呼びかける中、たどたどしいながらもヒートの返答が通信から響く。

 

「あいつ、わざと暴走しているのか!」

「ヒート! 戻って! 危ない!」

『ガアアアァァ!』

 

 皆が驚く中、セラが必死に呼び止めようとするが、ヒートは構わず敵陣へと突っ込んでいく。

 

「おい! 早く止めないとヤバイぞ!」

「つってもアレどうやって止めるよ………」

「暴走状態を利用して、敵を惹きつけているのか………だがあのままでは孤立する!」

「風花ちゃん! 急いで戻ってこれるか!?」

 

 皆が慌てふためく中、ヒートの狙いを理解した南条と尚也がなんとか手を打とうとするが、ヒートの狙い通り、シジマの悪魔達は暴走を続けるヒートへと集中し始める。

 

『やべえ! ヒートの奴完全に囲まれちまった! 上からも近付けねえ!』

「マーク! ブラウン! オレが行く! 手伝ってくれ!」

「やめろナオ!」「いくらお前でも無理だ!」

『セラのそばを離れるな、そうなったら相手の思惑にハマる』

 

 シエロですら近づけなくなっていく状況に、尚也がヒートの救援に向かおうとするが、他のペルソナ使いやゲイルからも制止される。

 

『サーフ、ロアルド、シエロ、一度退いて態勢を立て直す。そしてヒートを救出する』

「……分かった」

「それまで頑張ってくれよブラザー!」

 

 喰奴達はヒートに集中して薄くなった包囲を後方に突破し態勢の立て直しを図る。

 

「だが妙だ………カグツチの状態は確認してたはずだが………」

 

 ロアルドが上空のカグツチを見ながら呟く。

 

「下がれ! 虎の子を使う!」

 

 疑問を確認する間もなく、機動班メンバーが試作型対悪魔用携行ミサイル(※技術協力・業魔殿)をぶっ放して敵陣に文字通り風穴を開ける。

 

「行く」「分かった」

 

 そこへサーフとゲイルが先陣を斬り、他のクラウドやペルソナ使い達も続く。

 

「何かがおかしい! ヒートを救出したら撤退しよう!」

「潜入班の救出も必要かもしれん。山岸との連絡を途切れさせるな!」

 

 尚也と南条があれこれ叫ぶ中、ふとセラはカグツチを見上げる。

 

「今、何か………」

 

 自分が感じた物の正体をセラ自身が知るのはしばらく後、大き過ぎる衝撃を持ってだった。

 

 

 

「カーラ・ネミ!」『ハマオン!』

「アオーン!」『マハラギオン!』

「撃ちまくるホ!」「弾が残り少なくなってきたホ!」

 

 空いていた一室に立てこもり、乾とコロマルのペルソナ攻撃と、デビルバスターバスターズの銃撃が押し寄せてくるシジマの悪魔達を必死になって押し留めていた。

 

「上もすごい事になってる………加勢よりも全員で脱出を優先させれば………」

「もう少しだけ持たせて!」

 

 風花が地上、地下、そして今の自分達の状況をそれぞれペルソナで確認する中、裕子が床に法陣を描いていた。

 

「いけない、そろそろ回復を…あっ!?」

 

 ペルソナの連続使用で疲弊した乾がポケットからチューインソウルを取り出そうとするが、すでに使い果たした事に気付き愕然とする。

 

「コロマル……」「クゥ~ン」

 

 思わずコロマルにも聞くが、コロマルも力なく首を左右に降る。

 

「風花さん! このままだと…」

「出来たわ! 中に入って!」

 

 不利を乾が叫んだ時、裕子が完成した法陣に皆を引っ張り込む。

 

「アマテラシマススメ オオガミノノタマク ヒトハスナワチ アメガシタノ…」

 

 法陣に全員が入った所で、裕子が柏手を打って祝詞を詠唱し始める。

 

「今だ!」「踏み込め!」

 

 そこへ悪魔達が室内へと押し寄せてくるが、入ってきた所で悪魔達は室内を見渡して首を傾げる。

 

(これって………)

(結界、という物でしょうか? これなら………)

 

 悪魔達が法陣の中にいる自分達にまったく気づいてない事を乾と風花が悟ると、風花はより詳しいアナライズを始める。

 

(地下は、これ本当に一人と戦ってるの? すごい反応………でも、このままここを通り過ぎた悪魔が下に向かったら………)

「風花、あのワープ使えないホ?」「このままじゃまずいホ」

「待って………私だけじゃ無理だけど、アマラ転輪鼓とリンクできれば………その前に下の人達をこっちに……いやそれとも上から誰かを…」

 

 状況打開の手段をどうにか構築しようと、風花は自らのペルソナで幾つもの作業を並列させていく。

 

「風花さん、どうにかなりそうですか?」

「アマラ回廊に転移できれば、後はそのまま外に出れると思うけど………問題は………」

 

 結界内でも油断なく槍を構えたままの乾の問いかけに、風花は作業の手を休めずに答える。

 室内に入ってきていた悪魔達は結局気付かずに部屋から出ていき、皆が一息付きながらも、警戒は続けていた。

 

「この結界はしばらくは持つわ。上の人達が呼べないなら、パオフゥさん達、呼び戻せそう?」

「それが………」

 

 詠唱を終えた裕子が聞いてくるが、風花の顔は曇っている。

 

「すごい事になってます………エスケープロードで呼べるかどうか………」

「あの神取という男、氷川と同じ、いやもっと深い闇のような物を感じたわ………」

「私もです。あの人は一体何をしようとしてるんでしょうか………」

 

 

 

「プロメテウス!」『ワイズマンスナップ!』

「アステリア!」『ツィンクルネビュラ!』

 

 パオフゥとうららのペルソナが放った漆黒の弾丸と猛烈な竜巻が、神取を襲う。

 

「ニャルラトホテプ」

 

 神取は己のペルソナでそれを防ぎ、その隙に死角から舞耶の放った銃撃はX―3が射線上に出現して阻んだ。

 

「ちっ、またか!」

「このマシン、すごい邪魔よ!」

「ふふ、性能は折り紙つきだ」

 

 神取自身の強力なペルソナに加え、的確に姿を光学迷彩で隠してサポートに当たるX―3に、歴戦のペルソナ使い達も苦戦をしいられていた。

 

「ガブリエル!」『アクアダイン!』

 

 隙を見てReverse・Deva SYSTEMに攻撃を加えてみるが、そちらも防護システムが働き、外装に傷がつくかどうかだった。

 

「なんて強固なDefense………!」

「壊されたら困るからな。少しばかり頑丈に作らせてもらった」

「あんた、前より嫌味な男になったんじゃない!?」

「かれこれ二度ほど死んでいるからな。人生観が変わるには十分だ」

「待ちな、そいつは本当かい」

 

 エリーとうららの文句に、微笑しながら答えた神取の言葉に、パオフゥが鋭敏に反応した。

 

「二度って事は、御影町で一度、あの海底遺跡でもう一度、じゃあなんでテメエは今、ここにいる?」

「さて、どうしてだろうかね………」

「どうやら、聞かなきゃならねえ事が増えたみてえだな………」

「しゃべってもらうわよ、力づくでも! アルテミス!」『絶対零度!』

「ニャルラトホテプ」『マハラギオン!』

 

 舞耶のペルソナが氷結魔法を放ち、それに対するように神取のペルソナが火炎魔法を放つ。

 両者の魔法が部屋の中央で激突し、余波が衝撃となって室内で荒れ狂う。

 

(この力、間違いなく本物の神取………二度死んでるってどういう事? 誰か、いや何かが彼を蘇らせた? 何のため?)

「天野、伏せろ!」「マーヤ!」

 

 幾つもの疑問が舞耶の脳内を駆け巡っていた時、パオフゥの警告が響き、直後にうららが摩耶を押し倒す。

 その二人の上を、姿を消したままのX―3の放った銃弾がかすめていく。

 

「あ、危な~………」「ありがとうらら」

 

 女二人が冷や汗を流す中、パオフゥは神取を睨みつける。

 

「よく分かった物だな」

「はっ、ハイテクが過ぎると、アナクロに気づかねえんだよ」

 

 そう言いながら、パオフゥが指で指弾用のコインを弾く。

 神取が周囲を注意深く見ると、部屋の床の各所に戦闘中に放ったと思われるコインが落ちており、その内の一枚をX―3が踏んづけていた。

 

「なるほど、いざ実戦に出してみれば改良点が次々見つかる物だな」

「これ以上改良されてたまるかよ」

「とっととその変なロボットとあの変な装置ぶっ壊して、アンタふん縛って克哉さん所に連行してやるわよ!」

「全部やるのはかなりdifficultyかもしれませんがね」

「やるしかないわよ、全部ね」

 

 苦戦しながらも、微塵も闘志を揺るがせないペルソナ使い達に、神取が小さく笑みを浮かべるが、そこで彼の懐から電子音が鳴り響く。

 

「ちょっと失礼、私だ。………そうか、そこまでとは。………それは本当か? 生憎とこちらも取り込み中だ。あまり刺激し過ぎない方がいいだろう…………ああ、仮起動は順調だ。では後で」

 

 懐から携帯電話を取り出し、平然と会話している神取に皆が唖然とするが、うららが攻撃をしかけようとしたのをパオフゥが手で制する。

 

「こんな時に電話なんて、ふざけてんの!」

「何、大事な用だったのでね」

「口調から察するに、相手はここのボスの氷川あたりか? なんならもうちょい話しててもよかったぜ、待っててやるからよ」

「こんな所で生盗聴とはね………」

 

 神取の視線はパオフゥの手元、用心して持ってきていたらしい、小型の通信電波傍受式盗聴器に注がれていた。

 

「ああ、幾つか分かった事もあるからな。まずは、そいつを止めるのが先だ!」

 

 パオフゥがそう言いながら、小型盗聴器をしまうと懐の奥に入れておいた奥の手用のコインをそっと取り出し、裏のスイッチを気付かれないように入れながら指弾で投じる。

 

「その程度の攻撃…」

 

 Reverse・Deva SYSTEMの強固な防護システムに指弾程度では問題にならない、と神取は踏んでいたが、コインは防護システムに弾かれる直前、突然爆発する。

 

「爆弾か………こしゃくな真似をする」

「物理攻撃や魔法攻撃が効かなくても、発破なら効くんじゃねえかと思ってよ」

 

 爆発の衝撃で、外装は一部破損したようだが、変わらずに起動している装置に、パオフゥは内心舌打ちする。

 

(このカラクリとこいつが両方いるなんてのは完全に想定外だ………どっちかだけでも潰しておきてえが、手持ちのエモノじゃ無理か?)

「こんにゃろ~!!」

「エリーさん、多分そっちに行った!」

「いえ、そっちですわ!」

 

 神取と対峙するパオフゥの後ろでは、女ペルソナ使いが三人がかりでX―3を攻撃していたが、光学迷彩の発動と解除を交互にする事で巧みに所在を隠すX―3に有効なダメージをなかなか与えられないでいた。

 

『パオフゥさん、皆さん無事ですか!?』

「山岸か、一応無事だ。そっちは?」

 

 聞こえてきたペルソナ通信に、パオフゥが小声で答える。

 

『高尾先生が結界を張ってくれました。それと上も今手が離せないらしくて、増援は………』

「ま、そんなこったろうとは思ったがよ」

『シジマの悪魔達がそちらに向かってます!今撤退準備をします!そこからここまではなんとか転移させられると思いますから!』

「ちょっと待ってろ。このまま帰るのは癪だ」

 

 最後の方をわざと神取に聞かせるように声を大きくすると、パオフゥは懐に残っている爆弾コインをそっと手に握った。

 

「もうお帰りかね? ゆっくりしていけばいい」

「歓迎するには物騒な連中が来てるみてえじゃねえか。こっちもそろそろお暇させて、もらうぜ!」

 

 パオフゥは握った爆弾コインを、両手でそれぞれ持つと片方はReverse・Deva SYSTEMに、もう片方は神取へと向けて同時に指弾として放つ。

 

「ニャルラトホテプ」

 

 爆発する直前、神取はペルソナでガードし、2つのコインは同時に爆発するが神取にダメージは与えられない。

 

「残念だったな」

「イヤ、そうでもねえぜ。一つ分かった事がある」

 

 パオフゥの目はReverse・Deva SYSTEMの下、僅かに床が欠けているのを目ざとく見つけていた。

 

「あいつの下を崩せ!」

「イシス!」「アールマティ!」「ゲンブ!」

『ラストクエイク!』

 

 パオフゥの一言に、女性ペルソナ使い達は素早く己のペルソナを交換、舞耶がエジプト神話でオシリスの妻とされる豊穣神に、エリーがペルシア神話の貞節と敬虔を表す大地の守護天使に、うららが中国神話で北方を守護する黒き亀の守護獣を呼び出し、強力な地変系合体魔法を発動させる。

 室内をすさまじい地震が襲い、室内の機材が飛び跳ね、横転するがReverse・Deva SYSTEMだけは防護システムで状態を維持し続ける。

 が、それよりも先に床の方が持たず、Reverse・Deva SYSTEMの足元が大きく崩落し、それに飲み込まれるReverse・Deva SYSTEMが転倒、さすがにこれは予想外だったのか、エラーを示す電子音が鳴り響く。

 

「ふふ、そう来るか………」

「わりいが、自慢の品は故障しちまったみてえだな………」

「ちょっとパオ! この部屋も崩れてきてる!」

「ちょっとやり過ぎましたわ!」

「ケツまくって逃げるわよ!」

 

 さすがに狭い室内では威力が強すぎたのか、床だけでなく天井まで崩落を始めた事に、女性陣が慌て始める。

 

「山岸! 戻せ!」

『ユノ!』『エスケープロード!』

 

 パオフゥが叫んだ直後、四人のペルソナ使いは光に包まれたかと思うと、室内から消え失せる。

 

「なるほど、そういう事も出来るのか………」

 

 しばらく四人が消えた場所を興味深そうに見ていた神取だったが、間近を崩落した天井の破片が落ちた所で、視線を上へと向ける。

 

「エラーは起きたが、まだ修復は可能だ。一度引っ込めるとするか………」

 

 そう言いながら神取は指を鳴らす。

 すると神取の体とX―3、そして地割れに飲み込まれたReverse・Deva SYSTEMの輪郭がぼやけていき、やがて閃光に包まれてその部屋から全てが消え失せた。

 

 

 

「氷川様、正面からの敵の戦力が思いの外強く、苦戦しております。ご指示を」

「ふむ………」

 

 ニヒロ機構の上層階、階下が見渡せる場所で一進一退を繰り広げる戦闘を見ながら、戦況の報告と指示を仰ぎに来た部下の悪魔とを後ろにしながら、氷川は視線を上のカグツチへと向ける。

 

「苦戦の理由は一つではないな」

「は。カグツチの影響か、凶暴化した者達が同士討ちを………」

「それだ。皇天にはまだ間があったはず」

「おそらく変質してきているのだろうな」

 

 氷川の問に、いつの間にか現れた神取が答える。

 

「なるほど、君が言っていた世界の変質という奴の影響か………だがカグツチに影響があるのなら、創世に支障が出るのではないか?」

「変質と言っても、存在その物が消える事は無い。だが、急いだ方がいいのは確かだ。こちらも襲撃を食らい、Reverse・Deva SYSTEMは修復が必要だ」

「急いでくれたまえ、一刻も早く守護を呼ぶ必要がありそうだ」

 

 そう言いながら、氷川は再度視線を下へと向ける。

 

「全員退かせろ。この皇天は喰奴にも影響が出ている。無理に攻めてくる事は出来まい」

「了解しました」

 

 指示を伝えるべく急いで部下の悪魔が出て行く中、氷川は再度カグツチを見つめる。

 

「シジマの創世、なんとしても果たさねば………」

 

 

 

「おい、藤堂………」

「分かってる」

 

 今まで押し寄せてきていた敵が一斉に退いてくのに気づいた南条と尚也は、頷き合うと尚也は腰から下げておいた信号弾用コンプピストルを上空へと向けて信号弾を放つ。

 

「こっちも撤退だ!」

「潜入班の状態は!」

「今撤退に成功したって連絡が!」

「シエロ! ヒートを下がらせろ!」

「無茶言うなブラザー! セラ早く来て~~!!」

 

 ペルソナ使い達と喰奴達も撤退しようとする中、今だ半暴走状態のヒートが撤退するシジマの悪魔達に追撃をかけようと追いかける。

 

「撤退だヒート! これ以上の戦闘は無意味だ」

「こコで、敵は一匹デも、多くコロす……!」

 

 ゲイルの指示も無視してなおも追撃をかけようとするヒートに、突然ネットが覆いかぶさる。

 

「もう一発!」

「了解!」

 

 通信班が喰奴の暴走時用に用意されていたレッド・スプライト号資材班と葛葉共同開発、対喰奴用捕縛封印ネット弾をもう一発発射、ヒートの動きを封じようとする。

 

「グ、があァァああ!」

「セラ君! 出力最大!」

「はい!」

 

 もがくヒートを見た尚也が叫び、セラがまとったデモニカの通信・拡声システムをMAXにして歌を響かせる。

 

「ぐ、うううう………」

「シエロ!」

「了解ブラザー!」

 

 ネットの中のヒートが人間状態に戻って大人しくなった所を、ゲイルの指示で上空から急降下したシエロがネットごとヒートを強引に撤退させる。

 

「ハッスルし過ぎだぜ、ヒート」

「………かもな」

 

 完全に我を取り戻したヒートが、ネットごと引きずられていく中で憮然として答える。

 

「資材をまとめろ! 向こうの気が変わらない内に!」

「どうやらシジマは守りを固める方針らしい。それが分かっただけでも成果だ」

「後は潜入班が何を掴んできたかだが…」

 

 臨戦態勢のまま、テキパキと皆が協力して撤退準備を進めていく時だった。

 

「待って………何か来た!」

「何!?」

「エネミー・ソナーに反応あり! 後方に悪魔反応複数接近!」

 

 麻希が叫んだ直後、デモニカのソナーにも反応が入る。

 予期していなかった奇襲に全員が一斉に後方へと振り向く。

 やがて見えてきたのは、天使と鬼族からなる敵群だった。

 

「あの構成、ヨスガか!」

「だがなぜここに?」

 

 それがデータに有ったヨスガのメンバーだと気付いた皆が疑問に思うが、即座にそちらへと臨戦態勢を移行。

 

「どうする藤堂?」

「なるべく戦闘を避けて撤退、と行きたい所だけど………」

「無理だな、あいつらは無意味に好戦的な連中だ。アサクサでだいぶ苦戦させられた………」

 

 徐々に近づいて来るヨスガの軍勢に、交戦経験のあるロアルドが顔を曇らせる。

 

「だが妙だ、人数がそれほど多くない。小隊規模といった所か?」

「威力偵察か、それとも他の目的があるのか。どちらにしろ、突破しなければ帰還は不可能だ」

 

 南条とゲイル、両者共にヨスガの部隊規模に不審を抱きつつ、今は撤退のタイミングを逃すべきではないという点で一致。

 

「シジマの様子は?」

「完全に引っ込んじまったぜ?」

「さっきまであんな派手に暴れてた癖に、付き合い悪ぃ連中だぜ」

 

 戦闘のダメージで少しボロけているマークとブラウンが、シジマの悪魔達が建物内に完全に撤退した事に首を傾げつつも、少し胸を撫で下ろす。

 

「ヨスガと思われる悪魔達に動きあり! 明確な戦闘行動と取れる様子で接近中!」

「遠距離攻撃を中心として、交戦しつつ撤退! 潜入班には予定の場所で合流!」

 

 尚也の号令と同時に、今度は悪魔化を解いたエンブリオンメンバーとデモニカをまとった機動班メンバーが中心となって弾幕を張りながら撤退を開始する。

 

「逃がしません!」「マガツヒよこせ!」

「黙ってな」

 

 杖を手にした天使・プリンシパリティとナギナタを手にした妖鬼・オニが迫ってくるのに、ネットから出してもらったヒートが容赦なく対悪魔用グレネード弾を叩き込む。

 

「新たに反応! 2時方向!」

「アメン・ラー!」『集雷撃!』

「ヤマオカ!」『刹那五月雨撃!』

「まただ! 今度は…」

 

 小規模ながら次々と襲ってくるヨスガの悪魔達に、直に誰もが違和感を感じ始める。

 

「明らかにおかしい。突破、もしくは撃破されると分かっていて、部隊を分散させている」

「ああ、だとしたら目的は…」

「誘導か」

 

 ゲイルと南条の疑問に、ロアルドがそれしか考えられない答えを口にする。

 

「だけど、ペルソナに妙な反応は無いし………」

「けど、何かおかしい………」

「山岸に連絡! 現在地から最大出力で周辺を探ってくれ!」

 

 麻希とセラの困惑した表情にますます疑惑を深めた南条が叫び、通信班が慌てて通信を繋ぐ。

 

「シエロ」

「わかってるぜブラザー!」

 

 続けてゲイルが言おうとする事を悟ったシエロが、再度悪魔化して上空から偵察を試みる。

 

「どうする!?」「なんかヤベえのか!?」

「分からない………けど何かありそうなのは確かだね」

 

 マークとブラウンも困惑するが、尚也は散発的な向こうの攻撃に、今だ確信が持てないまま迎撃しつつ、撤退する足を止めない。

 

「やっぱり妙だぜブラザー! まだ何チームか伏せてるが、こちらが近づくまで動く気配がねえ!」

「やはり罠か」

「だがおかしい。時間稼ぎか、誘導か………どちらとも判断がつかん」

「部隊を分ける」

 

 シエロの報告に更にゲイルと南条が思案し始めた時、唐突にサーフが口を開いた。

 

「そうか、二手に分かれて伏せてるチームに当たれば」

「時間稼ぎならば遅延戦闘に入る、誘導なら慌てて修正に来る」

「決まりだな、こっちとそっちで部隊を二手に分ける。機動班と通信班もそれに応じて二分しよう」

「まあ、あんたらの戦闘力なら部隊分けても問題無さそうだが………」

 

 サーフの一言の意味を悟った南条とゲイルが即座に判断、尚也の指示に全員が従い、喰奴とペルソナ使い、それぞれの部隊が別々の進路を取り始める。

 

「奴ら二手に別れたぞ!」

「構いません、攻撃を続けます」

 

 二手に別れたのも構わず、ヨスガの悪魔達は攻撃を続けてくる。

 

「あいつら、構わずやってきやがるぜ!」

「ギャラリー減っても関係なしってか?」

 

 マークとブラウンが先陣を切ってヨスガの悪魔達を迎え撃つ中、南条は脳内で現状を整理していく。

 

(やはり時間稼ぎ。だが何のためだ? 今回のシジマへの威力偵察は機密を厳重にしておいた、漏洩はまず無い。つまりそれは、ヨスガにとっても突発的、何かを用意する時間は無い。ならば、何を待っている?)

「南条君!」

「もらったぁ!」

 

 南条の思考は、マキの声と突如として襲いかかってきた鬼女・ヤクシニーの刃で中断される。

 

「せいっ!」

「がはっ!?」

 

 ヤクシニーが斬りかかる瞬間、カウンターで繰り出された日本刀の一撃がヤクシニーの胴を真横に斬り裂き、刀を振り上げた状態のまま地面に倒れ伏す。

 

「何を狙っている?」

 

 ヨスガの目的がどうしても分からないまま、南条は刀を構え、向かってくる悪魔へと対峙した。

 

 

「ガアアァ!」

「ギャアアア!」

「くそ、持ち堪えろ!」

「化け物が!」

 

 文字通りこちらを喰らいに来る喰奴達に、ヨスガの悪魔達もたじろぎながら、それでも攻撃をやめようとはしない。

 

「これは遅滞戦闘か。シエロ」

「上から妙な物は………って、この野郎!」

「食らいなさい!」

 

 ゲイルの声に、上空から様子を探ろうとしたシエロだったが、天使・パワーと天使・ヴァーチャーの攻撃に迎撃せざるをえなくなる。

 

(トラップ、いやシジマとの戦闘中に精密な物を仕掛けられるだけの時間があったとは思えない。ならば、他に考えられる物は何か)

 

 ゲイルは戦闘を行いつつ、アスラAI最高の演算力を駆使し、一つの可能性を導き出す。

 

「ヨスガが第三勢力と同盟を結んだ可能性がある」

「何っ!?」

「それならば全て説明がつく。そして、もしその仮定が正しいのならば、現状で確認されている組織で、それだけの作戦遂行力を持つ組織は一つしかない」

「まさか………!」

 

 ロアルドの狼狽を肯定するように、突然遠方から銃声が鳴り響く。

 

「ちっ!」

「ヒート!」

「大丈夫だ」

 

 銃撃を食らったヒートにシエロが声をかけるが、ヒートは構わず攻撃を続ける。

 だが、悪魔化して通常の弾丸なぞ効かないはずのヒートの体には、はっきりとした弾痕が刻まれていた。

 

「シエロ!」

「いた! 10時方向、カルマ協会の連中だ!」

 

 ゲイルの懸念通り、少し離れた場所から、白い戦闘服に身を包んだカルマ協会の兵達が、こちらへと向かって狙撃態勢を取っているのをシエロが発見する。

 

「野郎!」

「待て」

 

 上空からカルマ協会兵達に攻撃をしかけようとするシエロを、サーフが止める。

 

「なんでだブラザー! おわっと!」

「撃て! 撃て!」

「近寄らせるな!」

 

 突然の制止にシエロが急減速を掛け、そこを狙って放たれた弾丸を慌ててかわす。

 

「敵の狙いがまだ分からない。深追いはせず、撤退を優先させるべきだ」

「めんどくせえ、あれくらいオレが喰ってきてやる」

「駄目だ。撤退が優先だ」

 

 ゲイルの制止を振りきってヒートが向かおうとするが、サーフはそれを強引に止めさせる。

 

「ヒート、私もイヤな予感がする………ここはサーフの言う事を聞いて」

「………ちっ」

 

 セラの説得に、ヒートは舌打ち一つすると突如として変身を解き、腹立ちまぎれか持っていたグレネードランチャーをカルマ協会兵へと速射する。

 

「うわぁ!!」

「撤退! 撤退! 距離を取れ!」

 

 蜘蛛の子を散らすように逃げていくカルマ協会兵達に、ゲイルの疑惑はますます深まっていく。

 

「どういう事だ? なぜ奴らは変身して襲ってこない?」

「アートマだったか? 入れてないとか………」

「いや、カルマ協会兵は全員悪魔化しているはず」

 

 ロアルドも同じ疑問を口にし、同じように首を傾げている機動班のメンバーも困惑していた。

 

『こちらペルソナ班、カルマ協会が仕掛けてきた。だが、様子がおかしい………』

「遠距離からの銃撃のみで悪魔化してこない」

『そうだ、そちらもか』

 

 南条からの通信にゲイルが答え、向こうも確認が取れた事で両者に沈黙が訪れる。

 

『どう考えても罠、だろうね。でも、どんな?』

「分からない、だが危険だ」

 

 尚也とサーフ、二人のリーダーも同じ結論に達し、しかしその目的が分からないまま、やがて敵襲も止み、皆が警戒を続けたまま、集結場所に集合する。

 

「やっほー、無事だった?」

「そちらこそ大丈夫ですか?」

 

 先に来ていた舞耶達が声を掛けてくるが、明らかに全身ボロボロな姿に尚也の顔が引きつる。

 

「待機中の回収部隊に連絡、すぐに来るようにと」

「総員円陣、警戒態勢」

「山岸君、すまないが撤退完了まで周辺を常時アナライズ」

「分かりました」

 

 尚也とサーフが指示を出し、全員が臨戦態勢のまま回収部隊の到着を待つ。

 

「にしても、なんだったんださっきの?」

「ヨスガはともかく、カルマ協会の連中、急にやる気無くしちまったみてえだったよな?」

 

 マークの呟きに、上空にいたシエロも同意する。

 

「周辺、近寄ってくる敵らしき存在は感知できません」

「他に何か反応は?」

「いえ、特には………アレ?」

 

 周辺をアナライズしていた風花だったが、そこでふと何か妙な反応に気付く。

 

「何か来ます………けどこれは、機械?」

「こちらでも確認したぜ! 偵察機みてえなのが向かってる!」

 

 同じく何かに気付いたシエロが目を凝らすと、そこにはこちらへと向かってくる、小型の無人偵察機の姿が有った。

 

「撃墜しろ」

「了解ブラザー! ジオダイン!」

 

 サーフが即座に撃墜を指示、シエロはためらいなく電撃魔法で小型偵察機を撃墜する。

 だが爆煙の中から、何かが高速で飛び出した。

 

「な…」

「ミサイル!?」

「弾幕を貼るんだ!」

 

 それが小型偵察機の中に仕込まれていた物だと皆が悟り、全員が一斉に飛来するミサイルに向かって攻撃を開始する。

 が、如何な防護機構が働いているのか、そのミサイルは銃弾や魔法の直撃を受けてもこちらへと向かってきていた。

 

「やべ…」

「何がなんでもオチをつけろ!」

「あ………」

 

 全員が焦りを覚えるが、何故かミサイルは高度を下げず、そのまま上空を過ぎ去ろうとする。

 

「おい、スルーかよ!」

「対地ミサイルかもしれん。もう一回来る前に…」

 

 ブラウンが思わず突っ込むが、ロアルドがそれでも用心して撃墜しようとした時だった。

 ミサイルは突然何もない虚空で爆散、同時に眩い閃光を辺りに撒き散らす。

 

「何だこりゃ!」

「スタングレネードだと!」

 

 誰もが閃光に一瞬視界を奪われ、ミサイルから発射された物があった事に気付くのが遅れた。

 

「これは…」

 

 閃光に視界を奪われながら、ペルソナで何かを察知した風花だったが、それを教える前に発射された何かが地面へと突き刺さる。

 

「?」

 

 自分の足元に何かが突き刺さった事をセラは気付いたが、閃光で目を開ける事が出来ず、気付いたのはそれから小さな起動音が響いた事だった。

 

「今、何かがセラさんの足元に!」

「何っ!?」

 

 予想外の事にゲイルも僅かに狼狽しながら、なんとか視界を取り戻そうとする。

 だが皆の視界が晴れるよりも、セラの足元からの起動音がどんどん大きくなっていく方が先だった。

 

「セラちゃん!」

 

 思わず間近にいたマキがセラの腕を掴む。

 僅かに回復した視界でマキが見たのは、光を放つ小型のアマラ転輪鼓だった。

 

「逃げ…」

 

 他の皆が救援に向うよりも早く、小型のアマラ転輪鼓は発動、突如としてセラの足元にアマラ回廊が開く。

 

「セラ!」「園村!」

 

 誰かが叫ぶ中、セラとマキ、二人の姿はアマラ回廊に飲み込まれ、そのまま消える。

 

「させ…」

 

 ヒートが強引に後を追おうとするが、そこで小型のアマラ転輪鼓は自爆。アマラ回廊への入り口は同時に消失した。

 

「セラ~~!!」「そ、園村! オイ、どうなってんだよ!」

 

 ヒートとマークが先程まで二人が立っていた場所に向かって絶叫するが、そこには破砕した破片が転がるのみだった。

 

「そ、そんな………セラちゃんと麻希さんが………」

「上に連絡入れろ! 二人が攫われた!」

 

 パオフゥの言葉に、全員がようやく事態を理解した。

 

「狙いは、セラの身柄を確保する事か………」

「喰奴の暴走を誘発させる気か!」

「いや、それなら殺した方が早い。狙いは他にある」

「園村も一緒だ、そう簡単に殺される事はねえはずだ!」

 

 ゲイル、南条、ロアルド、パオフゥが矢継ぎ早にカルマ協会の狙いを論議するが、大半のメンバー達は呆然とするだけだった。

 

「何を考えている、ジェナ・エンジェル………」

 

 

 

「きゃあっ!」「あうっ!」

 

 短い悲鳴を上げながら、セラをしがみつくようにしてマキは床に転げ落ちる。

 

「おや、オマケがついてきたようだよ」

「構わん、狙いはセラだ」

 

 聞こえてきた声に、マキは起き上がってとっさにセラを背後に匿う。

 その前に立っていたのは、ヨスガのリーダー チアキとカルマ協会のリーダー、ジェナ・エンジェルの二人だった。

 

「貴方達、何が目的!?」

「何、いい方法を教えてもらってね………」

 

 マキの問に、チアキが歪んだ笑みで答える。

 

「待て、確かお前は………そうだ、園村 麻希だったな。DEVA SYSTETMのコアだった人間か」

 

 エンジェルの言葉に、マキの顔色が変わる。

 

「なんでそれを………そうか、貴方神取と!」

「少し情報を共有しただけだ。それに、ちょうどいいバイアスが手に入った」

「バイアス? 何をするつもりなの!」

「セラに本来の仕事をしてもらうだけだ」

「本来の、仕事?」

 

 エンジェルの一言に、背後でセラが身を固くした事にマキは警戒を更に強める。

 

「この世界の中枢、カグツチにアクセスする」

 

 端的に、だがあまりにも危険な計画が、エンジェルの口から語られた………

 

 

 手探りで前へと進もうとする糸達が、突如として闇へと引きずりこまれる。

 はぐれた糸達に待つ物は、果たして………

 

 

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