真・女神転生 クロス   作:ダークボーイ

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PART66 HACK THE FUTURE

 

「う………」

 

 珠間瑠警察署の仮眠室で休息を取っていたライドウがふと目を覚ます。

 

「気付いたか」

「今のは…」

 

 枕元にいたゴウトが話しかけてくるのに頷きつつ、ライドウは精神を研ぎ澄ませて先程感じた何かを探ろうとする。

 

「止めておけ。どうやら誰かが何か、それもとんでもなくヤバい物に触れたようだ。今感じたのはその僅かな余波に過ぎん」

「一体誰が? 触れた者はタダでは済まないだろうが………」

「分からん。だが相手が巨大過ぎて寝た子を起こす事にならなかったようだ。それともすでに目覚めているのか………今少し休め。どうやら最後の決戦は近そうだ」

 

 ゴウトに促され、ライドウは少しでも力を回復すべく、再び休息を取る事にした。

 

 

 

しばらく後 珠間瑠警察署 署長室

 

「高尾先生が!?」

『はい、先程こちらに運び込まれました。現在診察中の模様』

 

 アーサーからの緊急連絡に、克哉が思わず声を荒げる。

 

「まさかまだ敵の残存兵力が…」

『いいえ、その場にいたマネカタ達からの情報では突然倒れたという事です。診察結果が分かり次第、お伝えします』

 

 アーサーからの連絡が終わると、克哉は大きくため息をつく。

 

「高尾先生まで………ただでさえ疲弊が激しい。あと戦える人材はどれくらい残っている?」

 

 主力クラスの相次ぐ負傷に、克哉は深く考え込む。

 

「か~~つ~~や~~………」

 

 そこに仲魔のピクシーが疲弊しきった様子で窓からふらふらと入ってくる。

 

「見回りおわった~………多分敵はいまはいないよ~………」

「ご苦労だった。君も少し休むといい」

「そう~~する~~」

 

 ピクシーが報告が済ませると、克哉のデスクの上に溜まっている書類を布団代わりに潜り込んで小さな寝息を立て始める。

 

「彼女ですらこの有様か………」

 

 疲弊していない者が誰もいない状況に、克哉は再度大きなため息を漏らす。

 

「ムスビは崩壊、シジマは壊滅状態、ヨスガはカルマ協会とタルタロス、珠間瑠を狙う余力のある者はいないと思いたいが、まだ断言は出来ない………」

 

 克哉は窓から光輝いているカグツチを見ながら考え込む。

 

「現状の打破にはカグツチの開放しかなさそうだが、果たしてそれでどうなるかが分からない………フトミミ氏もそこまで予言出来てはいないし、高尾先生も倒れるようでは、誰も先が読めないか………小岩からはタルタロス最上階にバーが有ったとかいう報告が届いたようだが」

 

 ある意味一番最後に最大の疑問を感じつつ、克哉は溜まった書類に手を伸ばす。

 

「物資の補給も厳しくなってきているか………噂による供給バランスが崩れてきているのか、そもそもこの街の噂システムも変質しているのかもしれん。枯渇しないのが御の字か」

 

 最悪の事態が幾つも思い浮かぶ中、克哉は溜まった書類を少しでも片付けようとする。

 なんとか必要書類だけでも片付けた所で、署長室のドアがノックされた。

 

「どうぞ」

「失礼する」

 

 書類を確認する手を止めず克哉が返答すると、仮面党現代表の杏奈が室内へと入ってくる。

 

「………大分疲れてるようだな」

「そちらもな」

 

 杏奈が克哉を見るなり言った言葉を、克哉はそのまま返す。

 

「警察署内も負傷者だらけか。仮面党も大分負傷者が出ている。自警団もしかりだ。もし再度の襲撃が有ったら、今度こそ持たないかもしれない」

「それはこちらも危惧している。だが多くの市民を抱えている以上、防衛に徹するしかない」

「突入班から何か連絡は?」

「小岩からタルタロスを登ったらバーが有ったとかいう分からない報告が上がってきている。全く意味は分からないが」

「確かにね。まあこれだけぐちゃぐちゃになってるなら、塔の中にバーくらいあっても不思議じゃないわ」

 

 杏奈はそこで克哉のデスクの書類で眠っているピクシーに気付く。

 

「こんな小さいのまで酷使している状況じゃね………さっきあかりがドリンク剤一気飲みしようとしてるのを止めて仮眠を取らせておいたわ」

「交代で休息は取った方がいいだろう。大規模な襲撃は後は無いと思いたい所だが………」

「結局、突入班がカグツチとやらを開放するまで、どうにか持たせるしかないって事ね」

「開放したらどうなるかも不明だがな。ただ下手なコトワリで開放されたら、それこそどんな世界になるか分からない。現状、一番勢力を残しているのヨスガというのが問題だ」

「これ以上タルタロスに向けられる人員もいないし、どうにか踏ん張るしかないのね………」

「ダメ押しするようで悪いが、先程高尾先生が倒れたとの連絡が入った。詳細はまだ不明だが………」

「………悪いニュースしかないのね。いや、達哉が頑張ってムスビのサブリーダー倒してくれたのはいいニュースか」

「当人も救護室送りになったがな。誰も彼も無茶してばかりだ」

「貴方もね。貴方が倒れたら、警察も瓦解するわ。休んだ方がいいかも」

「そちらもな」

 

 特に指揮官層の疲労が深刻な事に思わず双方苦笑いする。

 

「取りあえずもう少し持たせてみるわ」

「頼む。最早使えるカードも少なくなってきている。次の襲撃が有るかどうかも不明だが、今の内に休息を取れる者は取らせておいてほしい」

「分かったわ。何とかしてみる。まずは自分達が倒れない事だけど」

「その通りだが、保証は出来ないな………」

 

 さすがに疲労の限界を感じつつ、部屋から出ていく杏奈を見送った克哉はサングラスを外して目じりをもむ。

 

「小岩、こちらはもう限界だ。不本意だがお前達に賭けるしかない………」

 

 誰にともなく呟くと、克哉は少しだけ休息を取ろうと来賓用のソファに横になる。

 間を置かず、その口から寝息が漏れ始めた。

 

 

 

同時刻 タルタロス 302階

 

「本当か?」

「はい、今確認を取りました。高尾先生の容体まで不明ですが、私も何かに接触したような気配を感じました」

 

 風花からの報告に八雲は顔をしかめる。

 

「神憑きがぶっ倒れるって事は、更に上位の何かに接触したか………山岸、お前は間違ってもそれに触れるな。下手したらぶっ倒れるだけじゃすまねえぞ」

「は、はい!」

「更に上位、とは?」

 

 そこで美鶴は思わず八雲に問う。

 

「さあな。神もランクが色々有るそうだ。だが高尾先生についてたアラディアは上位とは言えないかもしれないが、決して下位の神じゃねえ。ひょっとしたら、それが今回の黒幕かもな」

「その、魔王とかそんな感じ?」

「そんな言葉で表せる陳腐な奴だったら話が早いんだが………」

「魔王が陳腐って………」

「この商売やってると色々見るからな。さっきやり合った黒目玉なんかそのいい例だ。あれも一応神だろうしな」

「神なんて名乗った者勝ちだろ。あまり気にすんな」

 

 八雲の説明にドン引く特別課外活動部に、ダンテが笑い飛ばす。

 

「にしても結構階層飛び飛びだな。楽できていいけど」

 

 修二が先程降りた下階からのエレベーターから見えている不安定階層を思い出しながら、上階への道を探す。

 

「上までまともに繋がってるといいけどな。ポータルだかターミナルは一応繋がってるようだが」

 

 八雲が見つけた本来のターミナルとはだいぶ形が変わっている物を見て胡乱な顔をする。

 

「あのマッチョマスターの言う通りなら、ここから上にショートカット出来るはずだが。出来れば屋上まで一気に行きたい所だけど」

「今アナライズしてますが、どうにも上階の一つにだけ繋がってるみたいです」

「飛び飛びか。それでもマシだが」

「じゃ行くよ~♪」

「ちょ…」

 

 ネミッサが我先にターミナルを起動させ、誰かの制止より早く一行が転移する。

 辿り着いた先、冷静な者達は得物や召喚機を構えて周囲を警戒する。

 だがそこでまた奇妙な物が広がっていた。

 

「おいおい、今度はこれか………」

「街、ですよね?」

「だな」

 

 辿り着いた上階に広がるビル街に、八雲が呆れ、啓人が左右を見回すがダンテは手にしたリベリオンを背負い直す。

 

「山岸」

「あの、生体反応有りません。この街、無人です………」

「今度は一体何と繋がったのだ?」

 

 八雲の問いに風花がすぐに答え、美鶴が周辺をよくよく見回す。

 

「またどっかの特異点でも拾ったか。もう無茶苦茶もいい所だな。まあ下にパラダイムXも有った事だし」

「誰かいませんか~?」

「誰もいない」

 

 八雲が頭をかきむしる中、ゆかりが声をかけてみるがチドリがそれより早く自らもアナライズして首を左右に振る。

 町の各所を大型ディスプレイやネオンが照らし出す、無人の繁華街に誰もが首を傾げる。

 

「で、ここから上に繋がってるか?」

「今チェックしてみます」

「また映画館とか探した方いいかな?」

 

 八雲の問いに風花が街をアナライズするが、啓人は思わず下のパラダイムXの事を思い出す。

 

「! 誰か来ます!」

 

 そこで風花が何者かの反応を捕らえ、全員が一斉に臨戦態勢を取る。

 

「どこからだ」

「上」

 

 八雲がナイフとGUMPを同時に構えながらの確認に、同じく反応を捕らえていたチドリが上を指差す。

 

「うわああぁ!」

「うひゃああぁ!」

「ちょっと!」

「あれ~?」

 

 悲鳴と共に落ちてくるらしい人影に、八雲は無造作に落下予定ポイントから避け、ダンテがリベリオンを一閃させて竜巻を起こして落下してくる人影を受け止めようとするが、近すぎて僅かに落下速度が落ちただけで地面へと激突する。

 

「うわ…」

「だ、大丈夫か?」

「あの速度ならギリ大丈夫だな」

 

 ペルソナ使い達が思わずたじろぐ中、地面に血その他が広がっていない事を確認した八雲が改めて落ちてきた人影を見る。

 

「う~ん…」「重てぇ…」「何が…」「何かな?」

 

 下から髪を短く刈り込んだスポーツタイプの青年、白スーツの伊達男、赤いスーツの女、そして淡い緑の髪のミニスカ姿の女性が積み重なっていた。

 

「どうやら、こいつらも飛ばされた口か」

「今更か。なんてついてねえ連中だ」

 

 八雲が状況的に自分らと同じと見、ダンテが苦笑する。

 

「あ、あれ八雲さん?」

「き、貴様クラッシャークラウドか!」

 

 そこで一番下にいた青年が八雲の顔を見てその名を呼ぶ。

 すると赤いスーツの女が即座に跳ね上がり、両手に尖った穂先を持つ中国武器、サイを構える。

 

「ま、待てなんかおかしいぞ?」

 

 そこで白スーツの男もまじまじと八雲の顔を見て首を傾げる。

 

「そう言えば、なんか若い………」

「…確かに」

 

 青年と赤いスーツの女の言葉に、八雲が思いっきり顔をしかめる。

 

「つまりそっちからか………オレは葛葉の小岩 八雲。手前らは?」

「ヤタガラス所属サマナーのアロウです」

「ミレディ、元ファントムソサエティ所属」

「サイゾー、フリーサマナーだ」

「私はリンゴ、Aionのエージェントだよ」

 

 それぞれの所属を聞いた八雲の顔が更に引きつっていく。

 

「どういう面子だ?」

「そっちの緑の人以外、私と同じ」

 

 八雲のもっともな問いに、チドリが予想外の答えで答える。

 

「これで何人目だ? 蘇った奴は」

 

 ダンテも気付いたのか、やや視線を鋭く謎の四人組を見つめる。

 

「分かるの? っていうか彼女も…」

「そっちの奴が冥界から連れ帰って来た。意外と根性あるが、お前達は?」

 

 そちらも予想外だったのか、ミレディがやや警戒を解きながら問い返し、八雲が順平を指差しながら教えてやると、ミレディ達は一斉にリンゴを指差す。

 

「………死人返しを三人も連れて何やってんだお前?」

「私はAionのエージェント。Aionが導き出した世界の終わりを止めるために選び出したのがこの三人。それを私がソウルハックして蘇生させたの」

「………うん、お前もろくでもないって事だけは分かった。こっちも人の事言えないが」

 

 リンゴの説明に八雲がちらりとチドリやネミッサの方を見る。

 

「状況が読めないのだけれど、説明願える?」

「時間が無いから簡潔に話すが、いまここにはあちこちの世界からオレらみたいのが集まって世界の危機だか何だかを賭けて戦う羽目になってる。時系列もバラバラでお前達はオレの後の時代の人間のようだ」

 

 ミレディからの質問に八雲がなるべく簡潔に答えると、さすがに予想外の返答に首を傾げられる。

 

「おいおい、タイムトラベルかパラレルワールドって奴?」

「多分その両方」

「あ、オレは一応ここの人間ってか悪魔、一応ここは東京だった所、丸くなってるけど」

「丸く?」

 

 サイゾーが思わず突っ込むが、啓人と修二がそれを補足し、サイゾーの疑問は更に深くなる。

 

「信じられないかもしれないが、ここは塔の内部、そこになぜかこの街が出現した。まあ下の階にも似たようなのがある」

「下はボロボロだったけど、こっちは立派だよね?」

 

 美鶴も説明するが、ゆかりが周囲を見回してながら呟く。

 

「え~と、この人達味方って事でいいんですか?」

「ワンワン!」

「………子供と犬までいるんですか」

「それなりにやるぞこいつら。で、そっちはどうする?」

 

 乾とコロマルが確認を取るのをアロウは思わず逆に確認するが、八雲はそれに問い返す。

 

「どうするも何も、たったこれだけの人数でクラッシャークラウドに敵対する気は無いわ。しかもあっちにハンターダンテまでいるようだし」

「マジか!? 何が起きてんだよ!」

 

 ミレディが思わず吐息を漏らし、サイゾーに至ってはダンテを見て驚愕する。

 

「平たく言えばアポカリプスの真っ最中だ。あと何でそっちの女はオレを妙な呼び方する?」

「それはその………」

「葛葉の小岩 八雲、ダークサマナーよりも危険なサマナー、ファントムでは幹部クラス以下には交戦許可すら下りない相手よ」

「フリーサマナーじゃあんたと敵対したら違約金も何も諦めて逃げろってのが通説になってるぜ」

「オレは破壊神か何かか?」

「破壊神の方が手順踏まなきゃならない分、まだマシね」

「そうだな、なんで葛葉にいるのかが最大の謎って奴だ」

「やべえぞ、あの人年食っても全然変わんねえみてえだ」

「つうかひどくなってる?」

「そこ、お前らもオレを何だと思ってる?」

 

 ミレディとサイゾーの話に、ペルソナ使い達がこそこそ話し合うのを八雲は冷めた目で睨みつける。

 そこでアロウがふと八雲の義手に気付く。

 

「所で八雲さん、その腕…」

「これか? さっきオレの影に食わしたから代わりのを付けた」

「オレの知ってる八雲さんは、両腕とも有りましたけど………」

「パラレルって奴だな。ダブったりダブってなかったり色々あるようだ。で、確認だがここはどこだ? 多分お前らに関係有るんだと思うんだが」

「萬世レルム、デビルサマナー専用の街で非戦闘地帯、のはずなんですけど………」

「何でかオレ達以外いねえ………」

「サマナー専用の街? 悪魔召喚プログラムの撒き過ぎだ。オレみたいのを増やしてどうする」

「それ、全く同じ事こちらの八雲さんも言ってました」

「という事は、ここにはサマナー用の設備とかが有るという事か?」

 

 話を聞いていた明彦が無人の店舗を覗きながら問う。

 

「大抵はそろってるわ。あっちにアイテムショップ、そっちにCOMP専門店、サマナーに必要な物は何でも扱ってる」

「ならちょうどいい。山岸、下に連絡してパラダイムXを放棄してこっちに陣地を移動させろ。最後にターミナルの破壊を忘れないようにな」

「分かりました。久慈川さんにリンクします」

 

 八雲が指示を出す中、聞こえてきた単語にミレディが反応する。

 

「陣地って、どういう事?」

「山岸、下のリアルタイム映像」

「あ、はい」

 

 風花がペルソナで下の様子を映し出すと、そこでは押し寄せる悪魔達と喰奴や人外ハンター達が死闘を繰り広げる様子が映し出される。

 

「うげ」

「これは…」

「言ったろ、アポカリプスの真っ最中だ。下から押し寄せてくる連中を足止めしてる間に、オレらが何とかこの塔の上にあるカグツチとかいう物を開放する算段だ」

「カグツチ…まさか東京受胎!? 実行出来たの!? ファントムでも不可能とされた計画よ!?」

「そこら辺がパラレルなんだろ。突っ込んでたらキリがないぞ」

「あと、あっちの連中何してる?」

 

 互いに色々聞きたい事は有ったが、時間の余裕が無さそうなのは気付いていたが、サイゾーがある一点を指差す。

 

「どうや?」

「かなり高度な仕組みです」

「なんとかリンクを…」

 

 そこではロボ三姉妹が、フクロウのようなマスコットを弄繰り回していた。

 

「っとそうだ! フィグ聞こえる!?」

 

 リンゴが慌ててかけよりそのフクロウに声を掛け、アイギスが自分から伸ばしたコードを接続すると、突然そのフクロウが動き出した。

 

「何これ、ロボット?」

「フィグの作ったドローンのミミ」

 

 ゆかりを始め皆も興味深そうにのぞき込む中、ミミが周囲を見回すと、どう見ても飛びそうにないデフォルメした体が宙に浮く。

 

「本体からの断線を確認、システムをサブに移行、疑似サポート起動します」

 

 ミミの口からやや落ち着きのある声が漏れたかと思うと、リンゴ達を見る。

 

「リンゴ聞こえてますか? 私自身とのラインが切れた時用のサブシステムが起動しました。以後ナビの精度が少し落ちます」

「フィグと切れてるって事は、本当にここは違う世界なのかもな~」

「お前みたいのがもう一人いる訳か」

「どうやらそっちの世界も大分愉快な事になってそうだな」

 

 ミミの状態を確認しているリンゴと八雲を見ながら、ダンテがなんとなくそちらの状態を推察する。

 

「つう訳で上に行こうが下に行こうがここに留まろうが、お前達は巻き込まれる訳だがどうする? 一応最終手段として逃げ場所となる所はあるが」

「で、その逃げ場所って今どうなってんだ?」

「何度か襲撃食らって限界状態だ。今残存戦力でギリギリ持たせてる」

「あまり変わらないじゃないの………」

「あの、それならオレ達はここに残ります。この街の事ならそれなりに詳しいので、陣地を張るなら協力出来るかと」

「じゃあ頼む。まず最初にここから上に登る方法があるはずなんだが、心当たりは?」

 

 アロウが率先して協力を申し出るが、八雲の質問に彼らは全員首を傾げる。

 

「上って言われても………」

「つうかホントに今ここ塔の中…あ、天井ある」

「一番高いビルに登ってみるとか」

「いや、でも届かないような…」

「質問変えよう、何かターミナル的な物は?」

「ターミナル………あ」

 

 アロウが何かを思いついたのか、一つの店の中に入っていく。

 

「こりゃCOMPショップか。こんなに売られてるんじゃ世も末だな」

「八雲さん、ここの店長からも難客扱いされてます。払いはいいけど注文が無茶過ぎるって」

「って言うか、この街でも好き好んで貴方に近づく人はいないわ」

「どの店でも払いのいい難客扱いだからな」

「オレはゴ〇ゴか?」

 

 ミレディとサイゾーも頷き、八雲は少し顔をしかめる。

 

「この街で一番のと言ったら………これかと」

 

 アロウがCOMPショップ奥の工房にある一際大きなCOMP調整用のサーバマシンを起動させると、異音と共に設置されていた大型ディスプレイに何か表示されたかと思うと、そこに転移用ターミナルが出現する。

 

「ビンゴだ。後は…」

「八雲~、あっちの店にアイテムとかいっぱいあった!」

「ネミッサさん、代金は…」

「未来のオレにツケとけ。借用書でも書いとけば問題ないだろ」

 

 攻撃アイテムや回復アイテムを両手いっぱいに抱えるネミッサをカチーヤが止めようとするが、八雲がそこらにあったメモ帳に商品借用の旨と自分のサインを書いてそれぞれの店のレジに張り付けていく。

 

「リンゴ、多数の出現反応有り」

「下から来る人達だって。え~と陣地ってどうすればいい?」

「取りあえずありったけの物資店から持ち出せ。無論未来のオレのツケで」

「ひでえ………全部自分にツケ払いかよ」

「非常時だから仕方ない事か」

 

 ミミからの報告にリンゴがこれからを考えるが、八雲が代わりに指示を出してサイゾーが呆れかえるが、明彦が率先して物資を運び出し始めていた。

 

「必要になりそうな物は補充しとけ。弾と得物はさっき補充出来たが、発破が切れてたからな」

「腕ごと吹っ飛ばすなんて無茶するからですよ………」

「オレが見た八雲さんは退魔仕様ロケット弾をほぼゼロ距離で大型悪魔の口に撃ち込んでたな………」

「全然変わってない………」

「って言うか老けるまでよく生きてたわね…」

「オレ自身そう思う。てっきりどこかで野垂れ死ぬと思ってたが」

「貴方に限ってそれは絶対無い。間違いなく死なば諸共で魔神だろうが邪神だろうが巻き添えにするわ」

「違いねえ」

「う~ん、そんな人ならスカウトしても良かったかな?」

『絶対止めとけ』

 

 物資を持ち出し、必要な物を装備する中交わされる会話はほぼ未来の八雲の事だったが、リンゴの一言にほぼ全員の意見が一致した。

 

「いいんじゃねえか、老けてもロックな生きざまってのも」

「ロック、なのかな………」

「よくてデスメタルかと…」

「確かに…」

 

 ダンテが笑う中、アロウ、啓人、修二の三人が顔を突き合わせ、八雲の方をちらりと見ながら呟く。

 

「ここが新しい陣地ですか。またすごい所ですね」

「うわ、下の街とえらい違い…」

 

 そこへパラダイムxから転移してきた第一陣と共にイザボーとアサヒが周囲を見回していた。

 

「必要物資もかなり有る。片っ端から使え」

「よろしいんですの? 新品に見えますけれど…」

「未来のオレが払うからいい」

「未来?」

 

 八雲が運び出した物資を指差し、イザボーの確認の答えに逆に首を傾げられる。

 

「パラダイムXとのリンクをここと固定しました。エンブリオンの方々が殿で撤退と同時に下のは爆破するそうです」

「どんどん追い詰められてんな。まあその度に色々補充出来るのはいいが」

「でも大丈夫? なんか怪我してる人ばっかだけど」

 

 風花と八雲が陣地の移動状況を確認する中、リンゴが撤退してくるのが怪我人ばかりなのに気付く。

 

「今攻めて来てるのがガチの武闘派ばかりでな。こちらを絞るか食らうかの二者択一だ」

「何それ」

「しかもちとトラップ仕掛けたら、そいつらのボスが完全に逆上したらしい」

「………何したの」

「核弾頭の中身だけすり替えて設置しといた」

 

 八雲の説明にアロウ達が思わず吹き出す。

 

「か、核弾頭って………」

「そんなのどこから…」

「まさかあんた核武装まで…」

「持ち込んだ奴から奪い取ったのを活用しただけだ。解除で数時間は稼げたしな」

「…八雲さん、やはり早く上に行った方が………見つかったらロクな死に方しませんよ」

「デビルサマナーがロクな死に方するはずねえだろ。っと黄泉帰った奴には言うまでもないか」

「ぜってえオレらよかひでえ死に方すっぞ、あの人…」

「そもそも死なせてもらえるのかしら?」

「マガツヒ生絞りコースも有り得るな………」

 

 アロウ達が当人の前であれこれ呟く中、修二もそれに賛同して頷く。

 

「とりあえずその怒り狂ったのがこっち向かってるから、何とかここで押しとどめといてくれ。ダメそうなら珠間瑠に逃げていいぞ」

「すんごい腕持ったオレの元同級生と、人間を悪魔化する方法だかを造ったすんごい天才科学者がタッグ組んで郎党引き連れて昇ってきてる」

「確かにこっちもそっちも似たような状況かな………」

 

 八雲の指示と修二の説明にアロウが思わず漏らす。

 

「状況がま~ったく理解出来ないんだけど、なんかヤバい状況ってのだけは分かった!」

「大丈夫、みんなそうだから」

「そうなの?」

「残念ながら、その通りですわ」

 

 リンゴが理解を放棄したのをゆかりが肯定するが、思わずミレディが聞き返した所でイザボーがうなだれる。

 

「じゃあオレらは更に上に向かう。もう本当に何が出てくるか分かった物じゃないな………」

「バーに街に、次は何でしょうか?」

「ゲーセンとかテーマパークがいいな♪」

「悪魔用かもしれないぜ? っとあんた悪魔だから問題無いか」

「それではあと頼みます」

「チアキの腕には気を付けろ、伸びたり飛ばしたりしてくるから」

 

 八雲を先頭に、登頂班が上の階に続くCOMPショップのターミナルに向かう。

 

「…八雲さん、昔からああだったんだな………」

「ファントムの幹部を何人もやってる大物サマナー、違う意味でそうは見えないけれど」

「ヤベエのは若い頃からってのは分かったぜ………」

「取りあえず、どうする~?」

 

 サマナー達が今の八雲を見て口々に呟く中、リンゴが次々とこちらに撤退してくる者達を見ながら首を傾げる。

 

「状況を把握したい。下の階というのが激戦区なのは間違いないようだが………」

「そりゃこんだけ怪我人続々くればそうでしょうね」

「威力偵察か? まあ確かに敵を生で見る必要は有りそうだが…」

「よし、じゃあ行ってみよ~」

 

 アロウの提案にリンゴがいともあっさり了解する。

 

「で、これどうするのかな?」

「あ、これを回して転移先を指定すれば…」

 

 リンゴが撤退に使われているターミナルを見ていたのを、そばにいたアサヒが説明する。

 だが隣にいたナナシのスマホが光り、そこからダグザが姿を現す。

 

「ほう、また奇妙な者が来たな………人に在らず、悪魔に在らず、むろん神にも在らず………だが死人返しを三人も引き連れる存在とは」

「誰この人?」

「ナナシに憑いてる神様だって」

「神降ろしではなく、神憑きだと? そんな者までいるとは………」

 

 ダグザの姿を見たリンゴの率直過ぎる疑問いアサヒが答えるが、それにアロウが顔をしかめる。

 

「ノゾミさんにも憑いてるし、珠間瑠ってとこにも一人いるって」

「なんちゃって神が憑いてる奴は見た事あるが、どう見てもマジモンだな」

「それが三人、とんだ危険地帯ね」

「ふん、死人返りがそろってよく言う物だ。お前らもただ返されただけではあるまい? その奇異な娘が契約主か。ならこちらの事をどうこう言えた義理もなかろう」

「つまり、その子も私達と同じ口なのね?」

「そう………みたいです。皆さんも何か変な事契約されたんですか?」

「世界破滅回避のための保護対象、だそうだ」

 

 ダグザに見下されている雰囲気を感じつつ、アサヒの確認にアロウが説明する。

 

「ナナシはあれのための神殺しになれとか言われたみたいなんですけど………」

「また無茶ぶりするのと契約したわね。確かに私達も言えた義理はないのだけれど」

「ま、オレらも手前の命をチップにした口だからな。無茶ぶりされても文句は言えねえさ」

「確かに、あの時はそうするしか…」

 

 ミレディが呆れる中、サイゾーが自嘲気味に呟き、当のナナシもうなだれる。

 

「とにかく今は状況の把握だ。残存戦力の撤退を援護しつつ、現状の敵を確認しておくのがいいと思う」

「そだね、何が何だか今一分からないけど、修羅場ってのは確かだし」

「早い所済ませて、こちらの世界に戻らないと」

「違いねえ」

「リンゴ、この場のオペレーターとのデータリンク完了。ナビを再開します」

 

 意見が一致した所で、ミミも活動を再開する。

 

「じゃあ下の階とやらに行ってくる」

「気を付けてね、喰奴の人達って興奮すると仲間でも食べかねないから」

「そんなのまでいるのかよ………」

 

 アサヒの助言に心底呆れつつ、四人は下の階に向かう。

 

「来たぞ!」

「あんた達が八雲さんの後輩?」

 

 ターミナルから転移した先で、最後の撤退準備を進めていた自称特別捜査隊がリンゴ達を出迎える。

 

「今すぐ下の階でフリンさん達がこっちの準備が終わるまで時間稼いでるけど、苦戦してる!」

「爆弾は機動班の人達がセットしてくれてるから、あとはスイッチ入れるだけだけど、みんな逃げた後じゃないと!」

「OK。じゃあ迎えに行ってくる」

 

 りせと悠の説明に頷いたリンゴ達は、階下へと向かう。

 階段を抜けると、すぐそこで戦闘音と咆哮が響きまくっていた。

 

「いい加減に諦めてヨスガの贄となれ!」

「ことわる」

 

 押し寄せるヨスガの悪魔達をフリンが手にした刀で薙ぎ払い、牽制するのを起点としてエンブリオンの喰奴達が襲い掛かる。

 

「ガアアァア!」

「グオオォォォ!」

「絵面がやべえ、ヤバすぎる………」

「言ってる場合じゃない。伏せろ!」

 

 背後から聞こえた声にフリンが伏せた直後、アロウの九〇式召喚獣とサイゾーのトミーガンからの銃撃が押し寄せてきた悪魔達に襲い掛かる。

 

「逃げた連中がまた来たのか!?」

「いや新手…がっ!」

 

 ヨスガの悪魔カルマ協会の喰奴が撃ち込まれる銃撃に警戒するが、アロウ達の姿と撃ち込まれる銃撃に仲魔の力が宿っている事に気付く。

 

「行くわよ」

「分かった!」

 

 そこにミレディとリンゴが飛び出しサイ型COMPスティグマと剣型COMPアンティキティラを振るう。

 

「君らが増援か」

「今の内に後退を!」

「向こうと距離を取れるか?」

「多分な!」

「サーフ」

「エンブリオン、撤退する」

 

 リロードしながら声を掛けるアロウにフリンが確認を取り、サイゾーが頷くと喰奴達も一斉に撤退を開始する。

 

「へえ、まだ威勢のいいのが残ってたようね………」

「それとも、またどこぞから飛ばさられてきたか」

 

 そこへ千晶とエンジェルが前へと出る。

 その姿を見たリンゴ達が思わず身震いする。

 

「なんて圧だ…」

「魔王が二人もいるじゃねえか! 聞いてねえぞ!」

「リンゴ」

「分かってる」

 

 あまりの二人の放つ威圧感に気おされる中、他の者達の撤退を確認したミレディとリンゴも一度下がる。

 

「何、先程までの勢いは…」

「待て、これは…」

 

 千晶が前へと進み出ようとした時、エンジェルがそれを制す。

 その時になって、リンゴの周囲に四人が放った仲魔達がストックされているのに千晶も気付いた。

 

「なに?」

「行けっ!」

 

 そこでリンゴはストックされていた仲魔達を一斉開放。

 放たれた仲魔達の力がサバトとなってその場を荒れ狂う。

 

「こんな手が!」

「ちっ!」

「うわあぁ!」

「グワァ!」

 

 サバトの前に千晶とエンジェルは何とか堪えるが、食らった部下達が次々と倒れていき、力の暴威が消えた時には四人の姿は消え失せていた。

 

「まさかあんな手があるなんて………」

「悪魔を仲魔でなくスキルとして放つのか。変わっているが、威力はあなどれん。そしてまんまと出し抜かれたな」

「また時間稼ぎか! いつまで逃げ続ける気!」

「カグツチ開放までだろう。急ごう…」

 

 沸点が頂点のままの千晶が怒鳴り散らす中、エンジェルは撤退した者達を追って上階へと抜けるが、そこでは濛々たる炎と煙が立ち込めていた。

 

「爆破の後か………拠点だったようだが、それを潰してまで逃げるとは」

「握り潰す相手が増えていく一方ね………いいわ、全員絞りつくして守護を呼び出すまで…」

 

 元々傷んでいた施設の類が完全に焼け焦げ、崩壊しているのを見ながらエンジェルと千晶は上階への登り口を探しつつ悪態をつく。

 

「なるほど、元はデータ的施設のようだな」

「何よそれ」

「見ろ」

 

 エンジェルが焼け焦げた残骸があちこちノイズ状になっているのを指差す。

 

「こちらでも有った現象だ。データだけの存在が実体化する。どうやらここはそういう特異点だったようだ」

「マガツヒの残滓が残っているようだけど、何かが奪った後もあるわ。下で感じたのはここに出現した何か、守護じゃない物を呼んだ奴がいる?」

 

 ふとそこで、千晶は半ば焼けているが見覚えのある帽子が落ちているのに気付くが、それを無造作に踏み潰す。

 

「そういう事………」

「何か見つけたのか?」

「別に」

 

 特に感慨も受ける事無く、千晶は周囲を睥睨する。

 

「見つけました!」

「こちらです!」

 

 そこで双方の部下の声が上がり、焼け落ちたシアターだった場所に中途半端に残ったスクリーンにある階段を見つける。

 

「妙な造りだと思ってたけど、なんでこんな所に…」

「さてな。ここを作った人間に聞ければ分かるかもしれんぞ。それともここを特異点にしている奴に」

「どうでもいいわ。全軍進撃! 今度こそあいつらからマガツヒを絞りつくせ!」

『オオ!!』

 

 未だ士気は高いまま、ヨスガ、カルマ協会の者達が上階へと向かっていく。

 

「さて、この調子で何かにマガツヒを食われて守護が呼べるのか…」

 

 エンジェルはある懸念を呟きつつも、殺気全開で部下と共に上階へと登る千晶の後を追った。

 

 

 

「やばかった………」

「あんた達、よくあれ相手にして死んでないわね………」

「徹底した機動防御に徹しましたので」

 

 少し対峙しただけでやばいと分かる相手から何とか逃走に成功したアロウとミレディが肩で息をする中、イザボーが説明する。

 

「攻撃特化の者が切り込んでる間に、他の者は銃撃を中心とした敵戦力の消耗にだけ重視させた」

「あんたがその切込み役の中核か」

 

 フリンが刀の状態を確かめつつ追加説明するのを、サイゾーが思わず頷く。

 

「確かにここも世界破滅の危機みたいだね~………」

「破滅というよりは創造の危機らしいが」

「あんな連中に新しい世界なぞ作られたらたまらん」

 

 リンゴもぼやく中、変身を解いたロアルドとゲイルが少しそのぼやきを訂正する。

 

「回復アイテム向こうにいっぱいあったから、順次取りに来て!」

「こっちには攻撃アイテムもあるわ! 補充急いで!」

 

 アサヒとノゾミが店から持ってきたアイテムを配り、皆がそれを受け取っていく。

 

「弾薬はさっきたっぷり補充出来た」

「その分少し変身を控えた方いいわね」

 

 ヒートとアルジラが手にした銃火器を点検し、再戦に備える。

 

「今の階層が402階? さっきのが250階だから、大分開けてはいるけど、多分屋上も近いはず………」

「つまりここが最終防衛線という事ですわね」

「ふむふむ、じゃあその機動防御とかいうのを繰り返して相手を削ってくと」

 

 りせがマップをアナライズして確認するのを見ながら、イザボーとリンゴの今後を話し合う。

 

「まずは負傷が酷い者を珠間瑠に移送する。頼めるか」

「任せて、ここのターミナルは?」

「あっちのGUMPショップの中です!」

「しっかりしろ、後は任せておけ!」

 

 ゲイルが戦闘困難と思われる者を選別し、りせが珠間瑠への転移作業を準備する中、アロウとガストンが移送者に肩を貸してターミナルへと案内する。

 

「途中までのターミナルも爆破しておいた方がいいな。一定階層まではこちらの休養もかねて手を出さず、準備に専念しよう」

「攻撃アイテムならいっぱいあるしな。ホントにツケ払いにして大丈夫か? あそこの店主払いに厳しいぞ?」

 

 ロアルドが作戦の詳細を詰める中、サイゾーが爆破に使えそうなアイテムを集めつつ、密かに払いを気にする。

 

「それは生き残ってから考えればいい。そもそも肝心の店主が見当たらないようだが」

 

 フリンが街の規模の割に人気が皆無な事に疑問を感じるが、パラダイムXの例も有ったのであまり深くは考えないようにしつつ、アイテム類を補充していく。

 

「無事に元の世界戻れても、あっちの八雲さんに何か言われそうだな………」

「しらばっくれなさい。それしかないわ」

 

 アロウもそこはかとなく心配するが、ミレディが一刀に切り捨てる。

 

「よし、じゃあその下の階の爆破に行こう!」

「ちゃんと計画的にだ」

 

 ありったけの攻撃アイテムを持って意気揚々と下の階に向かおうとするリンゴをロアルドが引き留める。

 

「ターミナルのある階のマップを」

「はい!」

「下の階のは急いだ方がいい」

「設置役と護衛役を選抜する必要がある」

 

 ゲイルに促されてりせがマップを表示し、それぞれのリーダー達があれこれ計画を立てていく。

 

「所で、上に行った連中はどうなるのかな?」

「リンゴ、現状不明です」

 

 リンゴが天井の方を見ながら呟くのを、ミミが能力限界か状況を掴めないのを説明する。

 

「ま、ちゃっちゃと終わらせて、とっとと戻ってこっちの世界を守らないとね」

 

 

 

同時刻 タルタロス 462階

 

「ま、どっかで出てくるとは思ってたが」

「それはそれは、待たせてしまいましたか」

「こっちも忙しゅうてな」

 

 目の前にいる者達に、八雲は呆れつつも警戒を最大にする。

 途中から姿を見せなかった、ストレガの二人に。

 

「こっちも忙しいんだよ。とっととどくか倒されるか、どっちがいい?」

 

 修二を拳を鳴らしながら前へと出ようとするが、八雲がそれを手で制する。

 

「気を付けてください! 何か妙です!」

「タカヤ。貴方、何をしたの?」

 

 ペルソナからの異常な反応に風花が警戒を叫ぶ中、チドリがタカヤを睨みつける。

 

「本当はその気は無かったのですよ。けれど、あちこちで色々していたら、たまたまね」

 

 タカヤが冷めきった口調でしゃべりつつ、両手を広げるとその体から膨大なマガツヒが吹き出す。

 

「な…」

「こいつ、自分を依り代に!」

「ちっ!」

 

 それが何をしようとしているか悟った者達数名が、タカヤが事を起こす前に仕留めようと動く。

 

「させるかい!」

 

 そこでジンが手にしていたスイッチを押すと周辺にセットされていた爆弾が爆破、動いた者達を足止めする。

 

「くそっ!」

「用心深いな」

「あちち!」

 

 ナイフを手にしていた八雲とリベリオンを抜いていたダンテが爆破の手前で足を止める中、ちょびっとだけ巻き込まれた修二が慌てて火を払う。

 

「そう、持っていたのですよ。私はコトワリを。決して報われる事無き、ホロビのコトワリをね………」

 

 タカヤがそこでにやりと笑うと、吹き出したマガツヒが、何かを呼び寄せる。

 

「さあ、最終決戦と行きましょう………」

 

 タカヤが呼び出した何かが、徐々に形を取っていく。

 

「何を呼びやがった………」

 

 八雲がぼやきつつも、仲魔の一斉召喚すべく、GUMPを操作した………

 

 

 紡ぐ糸を僅かに増やしつつ、最後の時は近付く。

 その前に立ちふさがりし物は果たして………

 

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